特許第6871748号(P6871748)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871748
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】帯電防止コーティング層
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/16 20060101AFI20210426BHJP
   C08F 220/00 20060101ALI20210426BHJP
   C09D 133/02 20060101ALI20210426BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20210426BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   C09K3/16 102J
   C09K3/16 102K
   C09K3/16 104E
   C09K3/16 108D
   C09K3/16 107D
   C08F220/00
   C09D133/02
   C09D133/04
   C09D5/00 Z
【請求項の数】9
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-17435(P2017-17435)
(22)【出願日】2017年2月2日
(65)【公開番号】特開2017-145401(P2017-145401A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2019年10月4日
(31)【優先権主張番号】特願2016-24290(P2016-24290)
(32)【優先日】2016年2月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】冨田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】島田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 伸哉
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−082621(JP,A)
【文献】 特開2008−019411(JP,A)
【文献】 特開2009−179727(JP,A)
【文献】 特開2010−077374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K
C08F
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対カチオンがメチルエチルイミダゾリウムカチオンであり、対カチオンを除く不飽和カルボン酸塩の炭素数が3〜10である不飽和カルボン酸塩(a01)由来の構成単位(a1)及び炭素数が3〜10である不飽和カルボン酸(a02)由来の構成単位(a2)を必須構成単位とする共重合体(A)並びに架橋剤(C)を含有し、架橋剤(C)がポリ(2〜5)エポキシド及びオキサゾリン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、共重合体(A)及び架橋剤(C)の合計重量に対して一般式(1)で示される基(q)の含有率が15〜85重量%であり、帯電防止コーティング層形成性組成物中の下記一般式(7)で示されるオニウムアンモニウム塩(E65)の含有量が前記共重合体(A)と(E65)との固形分重量比{(A):(E65)}で100:0〜100:0.5である、帯電防止コーティング層形成性組成物(X)。
【化1】
[Qは対カチオンである。]
【化2】
[一般式(2)中、R〜Rは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エーテル基、アルデヒド基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、及びスルホニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で水素原子が置換されていてもよい炭素数1〜20の鎖状炭化水素基、又は酸素原子、イオウ原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含有していてもよい環状炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよく、またR〜Rの2つの基が互いに結合して環構造を形成していてもよい。Zは、窒素、又はリン原子を表す。]
【化3】
[一般式(3)中、R〜Rは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エーテル基、アルデヒド基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、及びスルホニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で水素原子が置換されていてもよい炭素数1〜20の鎖状炭化水素基、又は酸素原子、イオウ原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含有していてもよい環状炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよく、またR〜Rの2つの基が互いに結合して環構造を形成していてもよい。]
【化4】
[一般式(4)中、Rは、それぞれヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、エーテル基及びアルデヒド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で水素原子が置換されていてもよい炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子を表す。R〜R12は、それぞれヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、エーテル基及びアルデヒド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で水素原子が置換されていてもよい炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子を表す。R〜R12の一部または全てが相互に結合して環を形成していてもよい。]
【化5】
[一般式(5)中、R13は、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、エーテル基及びはアルデヒド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で水素原子が置換されていてもよい炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子を表す。R14〜R17は、それぞれヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、エーテル基及びアルデヒド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で水素原子が置換されていてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を表す。R14〜R17の一部または全てが相互に結合して環を形成していてもよい。]
【化6】
[一般式(7)中、Qは上記一般式(2)〜一般式(5)のいずれかで示されるカチオンである。Yは共役塩基であるアニオンを表す。]
【請求項2】
共重合体(A)がさらに炭素数が4〜24である不飽和カルボン酸エステル(a03)由来の構成単位(a3)を構成単位とする共重合体である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
不飽和カルボン酸塩(a01)が、アクリル酸塩及び/又はメタアクリル酸塩(a011)である請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
不飽和カルボン酸エステル(a03)が下記の一般式(6)で示されるアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル(a031)である請求項2又は3に記載の組成物。
【化7】
[一般式(6)中、R19は水素原子又はメチル基であり、R18は炭素数1〜18の炭化水素基である。]
【請求項5】
さらに媒体(D)を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の帯電防止コーティング層形成性組成物から形成される帯電防止コーティング層。
【請求項7】
基材の少なくとも片面の少なくとも一部に請求項に記載の帯電防止コーティング層を有する帯電防止コーティングフィルム。
【請求項8】
基材の少なくとも片面の少なくとも一部に請求項に記載の帯電防止コーティング層を有する帯電防止コーティングシート。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載の帯電防止コーティング層形成性組成物を基材上に塗布した後、加熱する又は光照射する又は電子線照射する工程を有する帯電防止コーティング層の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基材フィルムに帯電防止性を付与することができる帯電防止コーティング層に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、帯電防止コーティングとしては、界面活性剤を塗膜中に含有させる方法(例えば特許文献1)、金属酸化物や、ポリアニリン、ポリチオフェンなどの導電性高分子、カーボンブラックなどの導電性塗料のコーティングなど(例えば特許文献2)が知られている。
しかしながら界面活性剤を含有したコーティングは、帯電防止剤のブリードアウトにより表面が汚染される、帯電防止性が経時的に劣化する等の問題がある。また、導電性塗料のコーティングでは、帯電防止性が満足できても透明性がなく透明性が必要な用途には使用できない、塗膜がはがれやすいなどの欠点がある。また、これらの帯電防止剤を添加したコーティング中には電子機器内部の腐食、動作不良、誤作動を生じさせる可能性がある不純物が多く含まれるものがあり、電子機器用途等への適用は困難で表面汚染を発生させずに表面抵抗率1011Ω/□未満の帯電防止性を実現することは非常に難しいという問題点がある。
【0003】
これらの問題に対して、例えばアクリル共重合体の分子鎖及び/または分子末端に第4級アンモニウム塩などを含有する帯電防止性を有する樹脂で構成されるコーティングがある(例えば特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−6064号公報
【特許文献2】特開2006−044257号公報
【特許文献3】特開平10−55894号公報
【特許文献4】特開2008−19411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらのコーティングは表面固有抵抗値が10Ω/□未満の高い帯電防止性能と、コーティングの密着性と硬度、透明性を両立させることは困難であった。
本発明の課題は、帯電防止性に優れる上、基材との密着性とコーティングの硬度、透明性のバランスに優れた帯電防止コーティング層を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、対カチオンがメチルエチルイミダゾリウムカチオンであり、対カチオンを除く不飽和カルボン酸塩の炭素数が3〜10である不飽和カルボン酸塩(a01)由来の構成単位(a1)及び炭素数が3〜10である不飽和カルボン酸(a02)由来の構成単位(a2)を必須構成単位とする共重合体(A)並びに架橋剤(C)を含有し、架橋剤(C)がポリ(2〜5)エポキシド及びオキサゾリン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、共重合体(A)及び架橋剤(C)の合計重量に対して一般式(1)で示される基(q)の含有率が15〜85重量%であり、帯電防止コーティング層形成性組成物中の下記一般式(7)で示されるオニウムアンモニウム塩(E65)の含有量が前記共重合体(A)と(E65)との固形分重量比{(A):(E65)}で100:0〜100:0.5である、帯電防止コーティング層形成性組成物(X);
【化1】
[Qは対カチオンである。]
【化2】
[一般式(2)中、R〜Rは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エーテル基、アルデヒド基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、及びスルホニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で水素原子が置換されていてもよい炭素数1〜20の鎖状炭化水素基、又は酸素原子、イオウ原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含有していてもよい環状炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよく、またR〜Rの2つの基が互いに結合して環構造を形成していてもよい。Zは、窒素、又はリン原子を表す。]
【化3】
[一般式(3)中、R〜Rは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エーテル基、アルデヒド基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、及びスルホニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で水素原子が置換されていてもよい炭素数1〜20の鎖状炭化水素基、又は酸素原子、イオウ原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含有していてもよい環状炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよく、またR〜Rの2つの基が互いに結合して環構造を形成していてもよい。]
【化4】
[一般式(4)中、Rは、それぞれヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、エーテル基及びアルデヒド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で水素原子が置換されていてもよい炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子を表す。R〜R12は、それぞれヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、エーテル基及びアルデヒド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で水素原子が置換されていてもよい炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子を表す。R〜R12の一部または全てが相互に結合して環を形成していてもよい。]
【化5】
[一般式(5)中、R13は、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、エーテル基及びはアルデヒド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で水素原子が置換されていてもよい炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子を表す。R14〜R17は、それぞれヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、エーテル基及びアルデヒド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で水素原子が置換されていてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を表す。R14〜R17の一部または全てが相互に結合して環を形成していてもよい。]
【化6】
[一般式(7)中、Qは上記一般式(2)〜一般式(5)のいずれかで示されるカチオンである。Yは共役塩基であるアニオンを表す。]
該帯電防止コーティング層形成性組成物から形成される帯電防止コーティング層;該帯電防止コーティング層を有する帯電防止コーティングフィルム;帯電防止コーティング層を有する帯電防止コーティングシート;該帯電防止コーティング層形成性組成物を基材上に塗布した後、加熱する又は光照射する又は電子線照射する工程を有する帯電防止コーティング層の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の帯電防止コーティング層は、帯電防止性に優れる上、基材との密着性とコーティングの硬度、透明性のバランスに優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の帯電防止コーティング層形成性組成物(X)は、
対カチオンが一般式(2)〜一般式(5)のいずれかで示され、対カチオンを除く不飽和カルボン酸塩の炭素数が3〜10である不飽和カルボン酸塩(a01)由来の構成単位(a1)及び炭素数が3〜10である不飽和カルボン酸(a02)由来の構成単位(a2)を必須構成単位とする共重合体(A)並びに架橋剤(C)を含有し、共重合体(A)及び架橋剤(C)の合計重量に対して一般式(1)で示される基(q)、以下オニウムカルボキシレート基(q)とも記載する、この基の含有率が15〜85重量%であることを特徴とする。
【0009】
炭素数が3〜10である不飽和カルボン酸(a02)としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、3−アリルオキシプロピオン酸等が挙げられ、これらの中でアクリル酸、メタクリル酸が好ましい。 以下、本発明において(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味し、以下同様の記載法を用いる。
対カチオンを除く不飽和カルボン酸塩の炭素数が3〜10である不飽和カルボン酸塩(a01)としては、上記不飽和カルボン酸(a02)の塩が挙げられ、これらの中でアクリル酸塩、メタクリル酸塩が好ましい。
【0010】
共重合体(A)及び架橋剤(C)中のオニウムカルボキシレート基(q)の重量%は、帯電防止性の観点から15〜85重量%であり、好ましくは30〜80%、更に好ましくは40〜70%である。
オニウムカルボキシレート基(q)の重量%が15%未満であると、コーティング剤として基材に塗布しても十分な帯電防止性を付与することができない。85重量%を超えると架橋点の数が足りず、帯電防止コーティングとして使用することができない。
【0011】
共重合体(A)及び架橋剤(C)を含有する帯電防止コーティング層形成性組成物(X)中のオニウムカルボキシレート基(q)の重量%は逆エプトン法による滴定から、分析することができる。
具体的には本発明の帯電防止コーティング層形成性組成物(X)の溶液に水とメチレンブルー指示薬を加え、0.0035Mラウリル硫酸ナトリウム滴定用溶液で滴定し、下層が上層より淡色となる点を終点とする。ラウリル硫酸ナトリウム滴定用溶液の終点までの滴定量および空試験の滴定量から一般式(3)で示される基の1kg当たりのモル含量(qA)および、一般式(3)で示される基の重量%(qB)の含有量を以下の式で算出する。
計算式1;
(qA)(モル/1000g)=[本試験の滴定量(L)−空試験の滴定量(L)]×ラウリル硫酸ナトリウム滴定用溶液の濃度(mol/L)×40/サンプル量(g)
計算式2;
(qB)(重量%)=(qA)×(オニウムカルボキシレート基の分子量+44)/1000
【0012】
本発明における不飽和カルボン酸塩(a01)として、不飽和カルボン酸(a02)を、一般式(2)〜(5)で表されるオニウムカチオン(Q)で中和された塩が挙げられる。
(a01)中のQはオニウムカチオンであり、一般式(2)で表されるような4級アンモニウムイオン、4級ホスホニウムイオン、ピリジニウムイオン、ピペリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、一般式(3)で表されるようなスルホニウムイオン、一般式(4)で表されるようなイミダゾリウムイオン、テトラヒドロピリジニウムイオン、一般式(5)で表されるようなピラゾリウムイオンなどが挙げられる。
共重合体(A)は、不飽和カルボン酸塩(a01)と不飽和カルボン酸(a02)を必須構成単位、不飽和カルボン酸エステル(a03)と下記の重合性単量体(a04)を任意の構成単位とした共重合体である。
また本発明における不飽和カルボン酸エステル(a03)は、炭素数が4〜24であり、具体例としてアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。
これらの中で、一般式(6)として表される(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【化6】
[一般式(6)中、R19は水素原子又はメチル基であり、R18は炭素数1〜18の炭化水素基である。]
【0013】
共重合体(A)の製造法は限定されないが、以下の(1)又は(2)の方法で製造することができる。(1)の製造方法が好ましい。
(1) 不飽和カルボン酸(a02)、必要な場合一般式(6)で示される不飽和カルボン酸エステル(a03)と重合性単量体(a04)とを(共)重合させ、得られた(共)重合体(A1)とオニウム塩(z)を溶媒の存在下または非存在下で加熱し反応させることにより、オニウムカルボキシレート基(q)を有する共重合体(A)が得られる。
【0014】
(共)重合の反応温度は特に限定されないが、好ましくは50〜150℃である。また、反応時間は特に限定されないが、好ましくは3〜50時間である。また、必要により被着体汚染がない範囲で公知の硬化促進触媒(例えば、2−メチルイミダゾール)を用いてもよい。
【0015】
オニウム塩(z)が、第4級アンモニウム・炭酸エステル塩もしくはアミジニウム・炭酸エステル塩(z1)であることが好ましく、この場合も(A1)と(z1)を溶媒の存在下または非存在下で反応させ、アニオン交換反応で副生する炭酸ガスを反応系から適宜除くことにより、共重合体(A)が得られる。
【0016】
(2) オニウムカルボキシレート基(q)を有する、不飽和カルボン酸塩(a01)と不飽和カルボン酸(a02)、もしくはオニウムカルボキシレート基(q)を有する、不飽和カルボン酸塩(a01)と不飽和カルボン酸(a02)と必要なら不飽和カルボン酸エステル(a03)と重合性単量体(a04)を構成単位として、共重合させる方法である。
【0017】
共重合体(A)において、不飽和カルボン酸エステル(a03)を共重合成分としてもよいし、また下記の重合性単量体(a04)を共重合成分としてもよい。(a03)の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基[n−、iso−又はt−ブチル基、n−、sec−、iso−又はネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、セチル基及びステアリル基等のアルキル基並びにオレイル基等のアルケニル基]、脂環式炭化水素基(シクロヘキシル基等)、芳香脂肪族炭化水素基(ベンジル基及びフェネチル基等)、芳香族炭化水素基(フェニル基等)が挙げられる。これらの内、好ましいのは炭素数1〜12のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基及びエチル基である。(a1)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0018】
(a04)としては、以下の重合性単量体(1)〜(10)等が挙げられる。(a04)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0019】
(1)ビニル系炭化水素(炭素数2〜20):
(1−1)脂肪族ビニル系炭化水素:炭素数2〜20のアルケン類[エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン及び前記以外のα−オレフィン等];炭素数4〜20のアルカジエン類[ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン及び1,7−オクタジエン等]等。
(1−2)脂環式ビニル系炭化水素:モノ又はジシクロアルケン及びアルカジエン類[シクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン等];テルペン類(ピネン及びリモネン等)等。
(1−3)芳香族ビニル系炭化水素(炭素数8〜20):スチレン及びそのハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキル及びアルケニル)置換体(α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン及びトリビニルベンゼン等);インデン及びビニルナフタレン等。
【0020】
(2)重合性不飽和カルボン酸(炭素数4〜130)及びこれらの塩:
炭素数4〜12の重合性不飽和モノカルボン酸[クロトン酸、桂皮酸及びビニル安息香酸等];炭素数4〜12の重合性不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸及びメサコン酸等);前記炭素数4〜12の重合性不飽和ジカルボン酸のモノハイドロカルビル(炭素数1〜18)エステル;コハク酸の水酸基含有単量体モノエステル[炭素数8〜130、例えば2−ヒドロキシアルキル(炭素数2〜4)(メタ)アクリレートの無水コハク酸開環付加体、ポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(炭素数2〜4)グリコールモノ(メタ)アクリレートの無水コハク酸開環付加体及び2−ヒドロキシアルキル(アルキル基の炭素数2〜4)(メタ)アクリレートのカプロラクトン(1〜5モル)付加体の無水コハク酸開環付加体];並びにこれらの塩等。
【0021】
(3)スルホン基含有ビニル系単量体、ビニル系硫酸モノエステル化物及びこれらの塩:
炭素数2〜14のアルケンスルホン酸[ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸及びメチルビニルスルホン酸等];スチレンスルホン酸及びその炭素数1〜24のアルキル置換体[α−メチルスチレンスルホン酸等];スルホアルキル(炭素数1〜8)(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミド[スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸及び2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等];アルキル(炭素数3〜18)(メタ)アリルスルホコハク酸エステル;ポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(炭素数2〜4:オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン:単独、ランダム、ブロックでもよい)モノ(メタ)アクリレートの硫酸エステル[ポリ(n=5〜15)オキシプロピレンモノメタクリレート硫酸エステル等];並びにこれらの塩。
【0022】
(4)燐酸基含有ビニル系単量体及びその塩:
(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1〜24)燐酸モノエステル[2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート及びフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等];(メタ)アクリロイルオキシアルカン(炭素数1〜24)ホスホン酸類[2−アクリロイルオキシエタンホスホン酸等];並びにこれらの塩等。
【0023】
前記(2)〜(4)の塩としては、アルカリ金属塩(ナトリウム塩及びカリウム塩等)及びアルカリ土類金属塩(カルシウム塩及びマグネシウム塩等)等の塩が挙げられる。
【0024】
(5)水酸基含有ビニル系単量体:
(5−1)炭素数2〜6のジオールの不飽和カルボン酸モノエステル[ヒドロキシアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート{ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート(以下、HEAと略記)、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等}及びそのラクトン(炭素数4〜20、例えばブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン及びラウロラクトン)1〜5モル付加体等];
(5−2)ポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(炭素数2〜4)(メタ)アクリレート[ポリ(n=10)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレート等];
(5−3)ポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(炭素数2〜4)(メタ)アリルエーテル[ポリ(n=10)オキシエチレン(メタ)アリルエーテル等];
(5−4)炭素数3〜8の不飽和アルコール[(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、1−ブテン−3−オール及び2−ブテン−1,4−ジオール等];
(5−5)炭素数8〜15のスチレン化合物[ヒドロキシスチレン等];
(5−6)炭素数5〜30のアルケニルエーテル[ヒドロキシアルキル(炭素数2〜6)アルケニル(炭素数3〜6)エーテル{2−ヒドロキシエチルプロぺニルエーテル等};蔗糖アリルエーテル等];
(5−7)炭素数4〜10の水酸基含有(メタ)アクリルアミド[N−メチロール(メタ)アクリルアミド等]等。
【0025】
(6)含窒素ビニル系単量体:
(6−1)アミド基含有ビニル系単量体(炭素数3〜30):(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレン−ビス(メタ)アクリルアミド、桂皮酸アミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジベンジル(メタ)アクリルアミド、メタクリルホルムアミド、N−メチルN−ビニルアセトアミド及びN−ビニルピロリドン等;
(6−2)ニトリル基含有ビニル系単量体(炭素数3〜15):(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン及びシアノアルキル(炭素数1〜4)(メタ)アクリレート等;
(6−3)ニトロ基含有ビニル系単量体(炭素数炭素数8〜16):ニトロスチレン等;
(6−4)炭素数4〜10の水酸基含有(メタ)アクリルアミドのアルキル(炭素数1〜4)エーテル化物[N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等];
(6−5)炭素数5〜15の1級、2級アミノ基含有(メタ)アクリレート[アミノアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート{アミノエチル(メタ)アクリレート等}、アルキル(炭素数1〜6)アミノアルキル(炭素数1〜6)(メタ)アクリレート{t−ブチルアミノエチルメタクリレート等}等];
(6−6)炭素数5〜10の1級又は2級アミノ基含有アクリルアミド[N−アミノアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリルアミド{N−アミノエチル(メタ)アクリルアミド等}及びアルキル(炭素数2〜6)アミノアルキル(炭素数1〜6)(メタ)アクリルアミド{t−ブチルアミノエチルアクリルアミド等}等]。
【0026】
(7)エポキシ基含有ビニル系単量体:グリシジル(メタ)アクリレート等。
(8)ハロゲン含有ビニル系単量体:
塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アリルクロライド、クロルスチレン、ブロムスチレン、ジクロルスチレン、クロロメチルスチレン、テトラフルオロスチレン、クロロプレン、フッ素化オレフィン(炭素数2〜10、フッ素原子数1〜20)及びフッ素化アルキル(炭素数2〜10、フッ素原子数1〜20)(メタ)アクリレート等。
【0027】
(9)ビニルエステル類:
炭素数2〜6の不飽和アルコール[ビニルアルコール、(メタ)アクリルアルコール及びイソプロペニルアルコール等]又はヒドロキシスチレンと炭素数1〜12のモノ又はポリカルボン酸とのエステル(酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、メチル−4−ビニルベンゾエート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート及びアセトキシスチレン等);アルキル(メタ)アクリレート(アルキルの炭素数1〜3又は19〜30)[メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート及びエイコシル(メタ)アクリレート等];多価(2〜3)アルコール不飽和カルボン酸エステル[エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等]等。
【0028】
(10)その他のビニル系単量体:
(10−1)ビニル(チオ)エーテル(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、2−メトキシエチルビニルエーテル、メトキシブタジエン、2−ブトキシエチルビニルエーテル、3,4−ジヒドロ1,2−ピラン、2−ブトキシ−2’−ビニロキシジエチルエーテル、2−エチルメルカプトエチルビニルエーテル、フェノキシスチレン、ジビニルサルファイド、p−ビニルジフェニルサルファイド及びエチルビニルサルファイド等);
(10−2)アリルエーテル[ポリ(ジ〜テトラ)(メタ)アリロキシアルカン(炭素数2〜6)類{ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン及びテトラメタアリロキシエタン等}等];
(10−3)ビニルケトン(ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン及びビニルフェニルケトン等);
(10−4)ビニルスルホン(ビニルエチルスルフォン、ジビニルスルフォン及びジビニルスルフォキシド等);
(10−5)ポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(炭素数2〜4)不飽和カルボン酸ジエステル[ポリ(n=10)オキシエチレンマレイン酸ジエステル等]等。
【0029】
(a04)の内、帯電防止性の観点から好ましいのは、炭素数4〜12の重合性不飽和モノカルボン酸、炭素数4〜12の重合性不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1〜18)エステル、コハク酸の水酸基含有単量体モノエステルである。
【0030】
(共)重合体(A1)の構成単位となる、不飽和カルボン酸(a02)由来の構成単位(a2)と不飽和カルボン酸エステル(a03)由来の構成単位(a3)の重量比は、帯電防止性の観点から、(a2)と(a3)の合計に対する(a2)の量が、好ましくは20〜100重量%、さらに好ましくは40〜80重量%である。
重合性単量体(a04)由来の構成単位(a4)の重量比は、(a2)と(a4)の合計に対して、好ましくは0〜30重量%、さらに好ましくは10〜20重量%である。
【0031】
(A1)の製造方法は特に限定されず公知の方法を用いることができるが、ラジカル重合法が好ましく、溶液重合法が分子量を調節しやすいため好ましい。
溶液重合において用いられる溶媒としては、エステル〔C(以下、炭素数をCと記載する。)2〜8、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル〕、アルコール(C1〜8、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、オクタノール)、炭化水素(C4〜8、例えばn−ブタン、シクロヘキサン、トルエン)、ケトン(C3〜9、例えばメチルエチルケトン(以下、MEKと略記することがある))等が挙げられる。
【0032】
不飽和カルボン酸(a02)とオニウム塩(z)を溶媒の存在下または非存在下で、加熱し反応させることにより、オニウムカルボキシレート基(q)を有する不飽和カルボン酸塩(a01)が得られる。反応温度は特に限定されないが、好ましくは10〜100℃である。また、反応時間は特に限定されないが、好ましくは1〜50時間である。
【0033】
[第4級アンモニウム塩、アミジニウム塩(z)]
オニウム塩(z)が、第4級アンモニウム・炭酸エステル塩もしくはアミジニウム・炭酸エステル塩(z1)であることが好ましく、この場合も(a02)と(z1)を同様に溶媒の存在下または非存在下で反応させ、アニオン交換反応で副生する炭酸ガスを反応系から適宜除くことにより、不飽和カルボン酸塩(a01)が得られる。
本発明における(z)には、3級アミンもしくはアミジン(z0)にアルキル化剤を用いて4級化することにより得られるものが含まれる。
【0034】
3級アミン(z0)としては、脂肪族アミン(C3〜20、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、ジエチル−1−プロピルアミン、ジデシルメチルアミン等)、芳香環含有アミン(C6〜20、例えばトリフェニルアミン、N−エチル−N−プロピルアニリン)、脂環含有アミン(C8〜20、例えば、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン)、複素環含有アミン(C5〜20、例えばN−メチルピロリジン、N−エチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N−メチルヘキサメチレンイミン、N−エチルヘキサメチレンイミン、N−メチルホルモリン、N,N’−ジメチルピペラジン等)等が挙げられる。
【0035】
アミジン(z0) のうち鎖状のものの具体例としては、N,N−ジメチル−N’−ベンジルフォルムアミジン、N−メチル−N,N’−ジベンジルフォルムアミジン、N,N−ジメチル−N’−ベンジルアセトアミジン、N,N−ジメチル−N’−フェニルアセトアミジン、N−メチル−N,N’−ジベンジルアセトアミジンなどが挙げられる。
【0036】
アミジン(z0) のうち環状のものの具体例としては、イミダゾール環、2−イミダゾリン環もしくはテトラヒドロイミダゾリン環を有する化合物が挙げられ、これらの具体例は下記のとおりである。
(1)イミダゾール単環化合物
イミダゾール同族体:1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、1−メトキシエチルイミダゾール、1−フェニル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−メチル−2−フェニルイミダゾール、1−メチル−2−ベンジルイミダゾール、1,4−ジメチルイミダゾール、1,5−ジメチルイミダゾール、1,2,4−トリメチルイミダゾール、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾールなど
オキシアルキル誘導体:1−メチル−2−オキシメチルイミダゾール、1−メチル−2−オキシエチルイミダゾール、1−メチル−4−オキシメチルイミダゾール、1−(β−オキシエチル)−イミダゾール、1−メチル−2−エトキシメチルイミダゾール、1−エトキシメチル−2−メチルイミダゾールなど
ニトロおよびアミノ誘導体:1−メチル−4(5)ニトロイミダゾール、1,2−ジメチル−4(5)−ニトロイミダゾール、1,2−ジメチル−5(4)−アミノイミダゾール、1−メチル−4(5)−(2−アミノエチル)イミダゾール、1−(β−アミノエチル)イミダゾールなど。
【0037】
(2)ベンゾイミダゾール化合物: 1−メチルベンゾイミダゾール、1−メチル−2−ベンジルベンゾイミダゾール、1−メチル−5(6)−ニトロベンゾイミダゾールなど。
(3)2−イミダゾリン環を有する化合物: 1−メチルイミダゾリン、1,2−ジメチルイミダゾリン、1,2,4−トリメチルイミダゾリン、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾリン、1−メチル−2−フェニルイミダゾリン、1−メチル−2−ベンジルイミダゾリン、1−メチル−2−オキシエチルイミダゾリン、1−メチル−2−ヘプチルイミダゾリン、1−メチル−2−ウンデシルイミダゾリン、1−メチル−2−ヘプタデシルイミダゾリン、1−(β−オキシエチル)−2−メチルイミダゾリン、1−メチル−2−エトキシメチルイミダゾリン、1−エトキシメチル2−メチルイミダゾリンなど。
(4)テトラヒドロピリミジン環を有する化合物: 1−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5をはじめとして、特公昭46−37503号公報に記載されているものなど。
【0038】
3級アミン(z0)のうち好ましいのは、脂肪族アミンである。さらに好ましいのは、トリ−n−ブチルアミン、デシルジメチルアミン、ジデシルメチルアミンおよびこれらの混合物である。
【0039】
アミジン(z0)のうち好ましいのは、環状アミジンである。さらに好ましいのは、イミダゾール環、2−イミダゾリン環もしくはテトラヒドロイミダゾリン環を有する化合物;特に、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、1−メトキシエチルイミダゾール、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾール、1−メチルベンゾイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾリン、1,2,4−トリメチルイミダゾリン、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾリン、1−メチル−2−ヘプチルイミダゾリン、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7および1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5およびこれらの混合物である。
【0040】
上記3級アミン(z0)は、1、2級アミンをアルキル化剤で3級化することによっても得ることができる。
【0041】
1、2級アミンとしては、下記のものが挙げられる。
1級アミンとしては、脂肪族アミン(C1〜20、例えばエチルアミン、オクチルアミン、ドデカアミン)、芳香族アミン(C6〜20、例えばアニリン、ナフチルアミン)、脂環式アミン(C6〜20、例えばシクロヘキシルアミン)、およびこれらの混合物;2級アミンとしては、脂肪族アミン(C2〜20、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン)、芳香族アミン(C7〜20、例えばN−メチルアニリン、ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン)、脂環式アミン(C7〜20、例えばN−メチルシクロヘキシルアミン)、複素環式アミン(C5〜20、例えばN−メチル−2−フリルアミン等)、およびこれらの混合物。
【0042】
アルキル化剤としては、ハロゲン化炭化水素[ハロゲン化アルキル(C1〜8、例えばメチルクロライド、エチルクロライド、ブチルブロマイド、メチルアイオダイド)、芳香環含有ハライド(C6〜8、例えばフェニルブロマイド、ベンジルクロライド)等]、炭酸ジアルキルエステル(アルキル基はC3〜8、例えば炭酸ジメチル、炭酸ジエチル)、ジアルキル硫酸エステル(C2〜8、例えば硫酸ジメチル、硫酸ジエチル)、有機リチウム化合物(C4〜8、例えばブチルリチウム、フェニルリチウム)、グリニャール試薬(上記のハロゲン化炭化水素とマグネシウムを反応させたもの等)等が挙げられる。これらのうち被着体汚染の観点から好ましいのは炭酸ジアルキルエステルである。
【0043】
上記オニウム塩(z)のうち、被着体汚染の少なさの観点から好ましいのは第4級アンモニウム・炭酸エステル塩もしくはアミジニウム・炭酸エステル塩(z1)である。
【0044】
(z1)は、3級アミンもしくはアミジン(z0)を上記炭酸ジアルキルエステルを用いて4級化することにより得られ、(z1)を構成するカチオンは、前記一般式(1)におけるカチオンと同じである。
【0045】
本発明の帯電防止コーティング層形成性組成物は、オニウムカルボキシレート基(q)を有する共重合体(A)を必須成分として含有することを特徴とする。
本発明の帯電防止コーティング層形成性組成物(X)は、更に媒体(D)を含有することができる。帯電防止コーティング層形成性組成物(X)が媒体(D)を含有することで、帯電防止コーティング層形成性組成物(X)の粘度低下や状態変化を行うことによるハンドリング性向上を行うことができる。
【0046】
媒体(D)としては、水及び有機溶剤[炭素数2〜8のエステル(酢酸エチル、プロピオン酸エチル及び酢酸ブチル等)、炭素数1〜8のアルコール(メタノール、エタノール及びオクタノール等)、炭素数6〜10の炭化水素(シクロヘキサン、トルエン及び軽ナフサ等)及び炭素数3〜9のケトン(メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等)等]が挙げられる。(D)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
共重合体(A)製造時の溶媒を媒体(D)として使用することもできる。また、共重合体(A)製造時の溶媒を除去し、媒体(D)を加えて本発明の共重合体(A)を製造することもできる。
【0047】
本発明の帯電防止コーティング層形成性組成物(X)の用途に応じて媒体(D)は適宜選択することができ、帯電防止コーティング層形成性組成物(X)、粘着剤組成物における性能(塗工性能、粘着剤物性)を阻害しない媒体(D)を選択することが好ましい。
特に、後述する架橋剤(C)としてポリ(2〜5)イソシアネート(C11)を用いる時は、活性水素を有する官能基(カルボキシル基、水酸基、アミノ基、ヒドロキシメチル基等)を有する媒体(D)の使用量は少ないほうが好ましく、活性水素を有する官能基(カルボキシル基、水酸基、アミノ基、ヒドロキシメチル基等)を有する媒体(D)を含有しないことがさらに好ましい。
【0048】
本発明の帯電防止コーティング層形成性組成物(X)中には、ハンドリング性の観点から前記媒体(D)を含有していることが好ましく、(X)中に(D)が含有される場合は(X)中の(A)の量が10〜70重量%の範囲になるように媒体(D)の量を調整することがより好ましい。
【0049】
本発明の帯電防止コーティング層形成性組成物(X)は、共重合体(A)と架橋剤(C)を混合して使用するものである。該帯電防止コーティング層形成性組成物(X)は、混合と同時に徐々に架橋が進行するので、塗布する場合は使用直前に混合し、速やかに塗布することが好ましい。
本発明のコーティング層、コーティングフィルムおよびコーティングシートは、共重合体(A)と架橋剤(C)を含有する帯電防止コーティング層形成性組成物(X)を架橋させて製造する。
【0050】
架橋剤(C)は、カルボキシル基と反応性を有する基を2個以上有する化合物であり、
イソシアネート、エポキシ、ヒドラジド、カルボジイミド、オキサゾリニルおよびアジリジニル基を分子中に2個以上有する有機化合物(C1)、および価数が2〜4である多価金属キレート化合物(C2)が好ましい。
【0051】
(C1)の官能基当たりの分子量は、帯電防止コーティング層の硬化性と硬度の観点から、好ましい下限は分子量40、さらに好ましくは60、上限はMw20,000、さらに好ましくは10,000、とくに好ましくは5,000である。
(C2)の多価金属の1価当たりの分子量は、帯電防止コーティング層の硬化性と硬度の観点から、好ましい下限は40、さらに好ましくは50、上限は140、さらに好ましくは130、とくに好ましくは110である。
(C1)には、ポリ(2〜5)イソシアネート(C11)、ポリ(2〜5)エポキシド(C12)、ヒドラジド(C13)、オキサゾリン化合物(C14)およびアジリジン化合物(C15)が含まれる。
【0052】
ポリイソシアネート(C11)としては、C(NCO基中の炭素を除く、以下同様)2〜18の脂肪族ポリイソシアネート、C4〜15の脂環式ポリイソシアネート、C6〜20の芳香族ポリイソシアネート、C8〜15の芳香脂肪族ポリイソシアネート、およびこれらのポリイソシアネートの変性物からなる群より選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。
【0053】
脂肪族ポリイソシアネート(以下PIと略記)としては、ジイソシアネート(以下DIと略記)[エチレンDI、テトラメチレンDI、ヘキサメチレンDI(HDI)、ドデカメチレンDI、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンDI、リジンDI、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等]、トリイソシアネート(以下TIと略記)[1,6,11−ウンデカンTI、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレンTIおよびリジンエステルTI(リジンとアルカノールアミンとの反応生成物のホスゲン化物)、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート、2−および/または3−イソシアナトプロピル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等]、および上記DIの、後述する変性物等が挙げられる。
これらのうち入手のしやすさおよび工業的観点から好ましいのは、テトラメチレンDIおよびHDIである。
【0054】
脂環式PIとしては、DI[イソホロンDI(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンDI(水添MDI)、シクロヘキシレンDI、メチルシクロヘキシレンDI(水添TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、ノルボルナンDI等]、TI[ビシクロヘプタンTI等]、および上記DIの、後述する変性物等が挙げられる。
これらのうち入手のしやすさおよび工業的観点から好ましいのは、IPDI、水添MDIおよび水添TDIである。
【0055】
芳香族PIとしては、DI〔トリレンDI(TDI)[2,4−および2,6−TDI並びにこれらの混合物]、ジフェニルメタンDI(MDI)[4,4’−および2,4’−MDI並びにこれらの混合物]、ナフチレンDI(NDI)等〕、2官能および3官能以上のPIの混合物[粗製TDI、粗製MDI(ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート)等]、および上記DIの、後述する変性物等が挙げられる。
これらのうち入手のしやすさおよび工業的観点から好ましいのは、TDI、MDIおよびNDIである。
【0056】
芳香脂肪族PIとしては、DI[キシリレンDI(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンDI(TMXDI)、ジイソシアナトエチルベンゼン等]、上記DIの後述する変性物等が挙げられる。
これらのうち入手のしやすさおよび工業的観点から好ましいのは、XDIおよびTMXDIである。
【0057】
上記PIの変性物としては、上記に例示したPIのNCO基の一部をカルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、ウレア、ビュレット、イソシアヌレートおよび/またはウレタン基等に変性した化合物が挙げられる。
【0058】
上記PIの変性物のうち、ウレタン基変性物としては、過剰量の上記に例示したPIと、活性水素化合物とを反応させて得られるNCO末端ウレタンプレポリマー(遊離のPIが含まれる擬プレポリマーを含む)が挙げられる。
該活性水素化合物としては、低分子多価(2価〜4価またはそれ以上)アルコールおよび2〜3価のポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(C2〜4)等が挙げられる。
【0059】
低分子多価(2価〜4価またはそれ以上)アルコールとしては、2〜3価アルコール〔脂肪族アルコール〔2価[C2〜20、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール、ネオペンチルグリコール(以下それぞれEG、DEG、PG、BD、HG、MPD、NPGと略記)、1,9−ノナンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン]、3価[C3〜8、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン(以下それぞれGR、TMPと略記)等]〕;脂環式アルコール[C4〜20、例えば1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、2,2−ビス(4,4’−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン];芳香環含有アルコール[C8〜15、例えばm−およびp−キシリレングリコール、1,4−ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン]等〕および4価またはそれ以上の多価アルコール[C5〜10またはそれ以上、例えばペンタエリスリトール、α−メチルグルコシド、ソルビトール、キシリット、マンニット、グルコース、フルクトース、ショ糖、ジペンタエリスリトール、ポリグリセリン(重合度2〜20)等]が挙げられる。
2〜3価のポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(C2〜4)としては 上記低分子多価アルコールおよび/または多価フェノール(C6〜20、例えばカテコール、レゾルシノール、ビスフェノールA、−Sおよび−F)にアルキレンオキシド(C2〜4、以下AOと略記)を付加させて得られるポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0060】
上記例示したPIはブロック剤でブロックされていてもよい。ブロック剤としては、例えばフェノール化合物(C6〜24、例えばフェノール、クレゾール、キシレノール、トリメチルフェノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、クロロフェノール、ニトロフェノール、チモール、モノ−、ジ−およびトリ−α−フェニルエチルフェノールおよびt−ブチルフェノール);活性メチレン化合物[C4〜20、例えばアセト酢酸エステル(アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチル等)、マロン酸ジエステル(マロン酸ジエチル、マロン酸エチルブチル、マロン酸エチルベンジル等)、アセチルアセトン、ベンズイミダゾールおよび1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン];ラクタム(C4〜12、例えばε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタムおよびβ−プロピオラクタム);オキシム(C3〜12、例えばアセトオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、マルドオキシム、アセトアルドオキシム、ベンゾフェノンオキシムおよびジエチルグリオキシム);アルコール(C1〜24、例えばメタノール、エタノール、n−ブタノール、t−ブチルアルコール、t−アミルアルコール、ジメチルエチニルカルビノール、ジメチルフェニルカルビノール、メチルジフェニルカルビノール、トリフェニルカルビノール、1−ニトロ−t−ブチルカルビノール、1−クロロ−t−ブチルカルビノールおよびトリフェニルシリノール);2級芳香族アミン(C6〜20、例えばジフェニルアミン、o−、m−、p−ジトルイルアミン、N−ナフチルトルイジン、N−ナフチルキシリジン、フェニルα−ナフチルアミン、フェニルβ−ナフチルアミン、カルバゾール、2,2’−ジニトロジフェニルアミンおよび2,2’−ジクロロフェニルアミン);メルカプト化合物(C1〜18、例えば2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトチアゾリン、ドデシルメルカプタン、エチル2−メルカプトチアゾール、2−メルカプト5−クロロベンゾチアゾール、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、フェニルメルカプタン、トルイルメルカプタン、エチルフェニルメルカプタンおよびエチニルジメチルチオカルビノール);イミダゾール化合物(C3〜10、例えばイミダゾールおよび2−エチルイミダゾール);酸アミド(C3〜50、例えばアセトアニリド、アクリルアミドおよびダイマー酸アミド);酸イミド(C4〜10、例えばコハク酸イミド、フタル酸イミドおよびグルタル酸イミド)および重亜硫酸塩が挙げられる。
【0061】
上記NCO末端ウレタンプレポリマーにおいて、PI中のNCO基と活性水素の当量比(NCO/活性水素当量比)は、通常1.1/1〜100/1、好ましくは2/1〜80/1、さらに好ましくは3/1〜60/1である。該ウレタンプレポリマー中のNCO含量(重量%)は、通常3〜35%である。
【0062】
ポリエポキシド(C12)としては、グリシジル型ポリエポキシド(C121)(エポキシ当量80〜2,500)および非グリシジル型ポリエポキシド(C122)(エポキシ当量43〜10,000)が挙げられる。
(C121)としては、グリシジルエーテル〔多価フェノール(前記)のグリシジルエーテル(ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテルおよびピロガロールトリグリシジルエーテル等)、低分子多価アルコール(前記)のグリシジルエーテル(EG−、PG−およびNPGジグリシジルエーテル、TMP−およびGRトリグリシジルエーテル等)、ポリエーテルポリオール(前記)のグリシジルエーテル[ポリエチレングリコール(以下PEGと略記)(Mw200〜2,000)、ポリプロピレングリコール(以下PPGと略記)(Mw200〜2,000)およびビスフェノールAのAO1〜20モル付加物のジグリシジルエーテル等]〕;グリシジルエステル[ポリカルボン酸(n=2〜4またはそれ以上)のグリシジルエステル(アジピン酸、フタル酸およびダイマー酸のジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル等];グリシジルアミン〔1級アミン(C2〜10、例えばヘキサメチレンジアミン、アニリン、トルイジン、キシリレンジアミン)またはポリ(n=2〜4またはそれ以上)アミンのグリシジル化物[N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルキシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルヘキサメチレンジアミン]等が挙げられる。
【0063】
(C122)としては、脂肪族ポリエポキシド〔C4〜20、例えばエポキシ化(ポリ)アルカジエン[エポキシ化ブタジエン、エポキシ化ポリ(n=2〜4またはそれ以上)ブタジエン、エポキシ化油脂(エポキシ化大豆油等)等]等〕および脂環式ポリエポキシド(リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド等)が挙げられる。
【0064】
ヒドラジド(C13)としては、ポリカルボン酸[C2〜15、例えば脂肪族(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸)、芳香族(フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)等]のジヒドラジド、アルキレン(C2〜6)ジヒドラジド(エチレン−1,2−およびプロピレン−1,3−ジヒドラジド等)等が挙げられる。
【0065】
カルボジイミド(C14)としては、C8〜26の芳香族ポリイソシアネート、C4〜22の脂肪族ポリイソシアネート、C8〜18の脂環式ポリイソシアネート又はC10〜18の芳香脂肪族ポリイソシアネートを重合して得られる脂肪族ポリカルボジイミド[ポリ(ヘキサメチレンカルボジイミド)等]、脂環式ポリカルボジイミド[ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)等]及び芳香族ポリカルボジイミド[ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)及びポリ(ジイソプロピルフェニルカルボジイミド)等]が挙げられる。
【0066】
オキサゾリン化合物(C15)としては、C3〜10、例えば2−オキサゾリン、およびその2−アルキル(C1〜4)置換体、例えば2−メチル−、2−エチル−2−、2−イソプロピル−2−および2−n−プロピル−2−オキサゾリンが挙げられる。
【0067】
アジリジン化合物(C16)としては、C10〜50、例えばポリ(n=2〜4またはそれ以上)アミンの誘導体[1,1’−(メチレン−ジ−p−フェニレン)ビス−3,3−アジリジニル尿素、1,1’−(ヘキサメチレン)ビス−3,3−アジリジニル尿素等]、低分子多価アルコール(前記)のポリ(2−アジリジニルプロピオネート)[エチレンビス−(2−アジリジニルプロピオネート)、トリメチロールプロパン−トリス−(2−アジリジニルプロピオネート)、2,4,6−トリアジリジニル−1,3,5−トリアジン等]が挙げられる。
【0068】
金属キレート化合物(C2)には、多価(2〜4価)金属[IIA族(Mg、Ca等)、IIB族(Zn等)、IIIA族(Al等)、IVA族(Sn、Pb等)、遷移金属(Ti、Zr、マンガン、Fe、Co、Ni、Cu等)等]のキレート化合物(βジケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル等のキレーターとのキレート化合物){例えばアルミニウムキレート化合物〔アルミニウムアセチルアセトナート[川研ファインケミカル(株)製「アルミキレートA(W)」等]等〕}が含まれる。
共重合体(A)に(C2)を加えると(C2)中のキレート配位子がはずれ、多価金属が共重合体(A)のカルボキシル基に配位して架橋が行なわれる。
【0069】
架橋剤(C)は、共重合体(A)中のカルボキシル基と反応させて架橋させる。また、共重合体(A)中の(a4)の構成単位中に含まれるカルボキシル基や水酸基、アミノ基、ヒドロキシメチル基などの活性水素と反応させてもよい。架橋剤(C)の使用量は、共重合体(A)中の活性水素と該活性水素と反応する(C1)の官能基、または(C2)の価数の当量比で表した場合、コーティングの硬度と密着性の観点から、(A)/〔(C1)または(C2)〕の当量比が、好ましくは1/0.1〜1/2、さらに好ましくは1/0.2〜1/1.5となる量である。
また、本発明の帯電防止コーティング層形成性組成物(X)中の共重合体(A)と架橋剤(C)の量比は、コーティングの硬度と密着性の観点から、共重合体(A)と架橋剤(C)の固形分重量比で、(A):(C)=100:0.1〜100:30が好ましく、(A):(C)=100:1〜100:20がより好ましい。
【0070】
本発明の帯電防止コーティング層形成性組成物(X)には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて充填剤(E1)、顔料(E2)、紫外線吸収剤(E3)、酸化防止剤(E4)、シランカップリング剤(E5)および共重合体(A)以外の帯電防止剤(E6)からなる群から選ばれる添加剤(E)の少なくとも1種をさらに加えることができる。(E1)〜(E4)の具体例としては、特開2008−7702号公報に記載のものが使用できる。
【0071】
シランカップリング剤(E5)としては、重合性不飽和基含有ケイ素化合物(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等)、エポキシ基含有ケイ素化合物[3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等]、アミノ基含有ケイ素化合物[3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等]、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等、およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0072】
帯電防止剤(E6)としては、ポリエーテルポリオール(E61)、界面活性剤(E62)、金属系導電性充填剤(E63)、カーボンブラック(E64)、重量平均分子量が5000未満の第4級アンモニウム塩(E65)等が挙げられる。
【0073】
(E61)〜(E64)は少量でも帯電防止剤のブリードアウトが懸念されるため、使用量は制限され、使用しないことが好ましい。
【0074】
(E65)の具体例としては、下記一般式(7)で示されるオニウムアンモニウム塩(E65)であり、前記のオニウムアンモニウム塩(z)と同様のものが使用できる。
【0075】
【化7】
【0076】
(一般式(7)中、Qは式(2)〜式(5)のいずれかのカチオンである。Yは共役塩基であるアニオンを表す。)
【0077】
(E65)のうち、被着体汚染の少なさの観点から好ましいのは、Yは−11.93未満のHammett酸度関数(H)を有する超強酸の共役塩基であるアニオンである。
【0078】
の共役酸である超強酸は、100%硫酸より強い酸強度を有する酸(「超強酸・超強塩基」田部浩三、野依良治著、講談社サイエンティフィック刊、p1参照)であり、Hammettの酸度関数(H)が100%硫酸の−11.93未満のものであり、プロトン酸及びプロトン酸とルイス酸の組み合わせからなる酸が挙げられる。
【0079】
プロトン酸の超強酸の具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸(H=−14.10)、ペンタフルオロエタンスルホン酸(H=−14.00)等が挙げられる。
【0080】
プロトン酸とルイス酸の組み合わせに用いられるプロトン酸としては、ハロゲン化水素(フッ化水素、塩化水素、臭化水素及びヨウ化水素)が挙げられ、ルイス酸としては三フッ化硼素、五フッ化リン、五フッ化アンチモン、五フッ化砒素及び五フッ化タウリン等が挙げられる。
プロトン酸とルイス酸の組み合わせは任意であるが、組み合わせて得られる超強酸の具体例としては、四フッ化硼素酸、六フッ化リン酸、塩化フッ化硼素酸、六フッ化アンチモン酸、六フッ化砒酸及び六フッ化タウリン等が挙げられる。
【0081】
として、一般式(7)で表される重量平均分子量が5000未満のオニウム塩(E65)の耐熱性の観点から好ましいのは、Hammettの酸度関数(H)が−12.00以下の超強酸の共役塩基、更に好ましいのはトリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、四フッ化硼素酸、六フッ化リン、塩化フッ化硼素酸、六フッ化アンチモン、六フッ化砒素又は六フッ化タウリンの共役塩基、特に好ましいのは、トリフルオロメタンスルホン酸、四フッ化硼素酸又は六フッ化リン酸の共役塩基、最も好ましいのはトリフルオロメタンスルホン酸又は四フッ化硼素酸の共役塩基である。
【0082】
帯電防止コーティング層形成性組成物(X)中の(E65)の含有量は、耐汚染性の観点から、共重合体(A)と重量平均分子量が5000未満のオニウム塩(E65)の固形分重量比で、(A):(E65)=100:0〜100:5が好ましく、(A):(E65)=100:0〜100:3がより好ましく、(A):(E65)=100:0〜100:0.5が更に好ましい。
【0083】
本発明のコーティング層、コーティングフィルムおよびコーティングシートに使用する粘着剤組成物は、本発明の共重合体(A)と架橋剤(C)および必要により添加剤(E)を通常の混合装置(撹拌機を備えた混合槽、スタティックミキサー等)で均一に混合することにより製造することが好ましい。(C)はフィルムやシートに塗布する直前に混合するほうが好ましく、(E)は本発明の帯電防止コーティング層形成性組成物(X)の製造の段階(製造前の原料、製造途中の反応物または製造後の生成物)において加えてもよい。
【0084】
本発明の帯電防止コーティング層、は、本発明の帯電防止コーティング層形成性組成物(X)を種々の塗工装置を用いて基材の少なくとも片面の少なくとも一部に直接塗布し、加熱して溶媒あるいは分散媒の乾燥を行うとともに、共重合体(A)と架橋剤(C)の反応を進行させ、必要に応じてさらに養生を行って架橋させる方法により製造することができる。
また、帯電防止コーティングフィルムおよび帯電防止コーティングシートは、本発明の帯電防止コーティング層形成性組成物を種々の塗工装置を用いて基材の少なくとも片面の少なくとも一部に直接塗布し、加熱して溶媒あるいは分散媒の乾燥を行うとともに、共重合体(A)と架橋剤(C)の反応を進行させ、必要に応じてさらに養生を行って架橋させる方法、または離型フィルム等にコーティング組成物を同様に塗布した後、乾燥して得られたコーティング層を、基材の少なくとも片面に転写する方法によりフィルム状、シート状あるいはテープ状などの形態に製造することができる。
【0085】
本発明の帯電防止コーティング層形成性組成物(X)を硬化させる際の加熱手段としては、熱風(60〜150℃)、(近)赤外線および高周波等が挙げられる。
【0086】
塗工方法は特に限定されず、例えばスパイラル塗工、ロール塗工、スロットコート塗工、コントロールシーム塗工及びビード塗工等の公知の塗工方法を用いることができる。塗工装置としては、グラビアコータ、ロールコータ(グラビアロール及びリバースロール等)、リバースコータ、ドクターブレード、バーコータ、コンマコータ、ファウンテンダイコータ、リップコータ、ナイフコータ、カーテンコーター、ビード、スパイラル、スプレー、スロット及び押出機(単軸、二軸押出機及びニーダールーダー)等が挙げられる。
【0087】
本発明の帯電防止コーティングフィルムおよび帯電防止コーティングシートは、本発明の帯電防止コーティング層形成性組成物(X)から形成されるコーティング層を有し、通常、コーティング層と基材からなる。
【0088】
基材の材質としては、ガラス、各種プラスチック[ポリオレフィン(ポリエチレン及びポリプロピレン等)、ポリウレタン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリ塩化ビニル、レーヨン、ポリカーボネート、及びポリアミド等]、紙(和紙及びクレープ紙等)金属及び木材等が挙げられる。これらの被着体のうち、帯電しやすいものについては、種々の帯電防止剤を添加または塗布することにより帯電防止性を付与したものであることが望ましい。
【0089】
基材の形状としては、フィルム、シート、フラットヤーン、板、フォーム、織布及び不織布等が挙げられる。
【0090】
本発明の帯電防止コーティング層形成性組成物(X)およびコーティング組成物は、偏光板、位相差板、光拡散板等の各種光学部材の表面保護、および液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等の各種の画像表示装置の表面保護を目的とした表面保護フィルム、ダイシングテープ、キャリアテープ等の電子部品加工用テープ、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、光拡散フィルム、さらにはこれらが積層されているものなどの光学部材や液晶パネル、各種の光源や拡散板など液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等の各種画像表示装置を構成する部材として、好適に用いられる。また、ステンレス鋼板、プラスチック板および塗装面の表面保護用、包装用(プラスチックケースの梱包、包装など)、マスキング用(ガラスシーリング、建築養生など)、医療用(絆創膏など)および事務用などの各種用途にも好適に用いられる。
【実施例】
【0091】
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中の部は重量部、モル%以外の%は重量%を表す。なお、以下において実施例1、3及び5は参考例1〜3を意味する。
【0092】
[第4級アンモニウム・炭酸エステル塩(z1)の製造]
製造例1
撹拌式オートクレーブにジデシルメチルアミン311部、炭酸ジメチル90部および溶媒としてメタノール64部を仕込み、反応温度110℃にて12時間反応させた後、50℃、減圧下でメタノールを留去して、ジデシルジメチルアンモニウム・モノメチル炭酸塩(z1−1)401部を得た。(z1−1)の固形分濃度は58%であった。
【0093】
[イミダゾリウム・炭酸エステル塩(z2)の製造]
製造例2
撹拌式オートクレーブにエチルイミダゾール96部、炭酸ジメチル90部および溶媒としてメタノール64部を仕込み、反応温度110℃にて12時間反応させた後、50℃、減圧下でメタノールを留去して、メチルエチルイミダゾリウム・モノメチル炭酸塩(z2−1)186部を得た。(z2−1)の固形分濃度は45%であった。
【0094】
[共重合体(A−1)を含有する溶液(AD−1)の製造]
製造例3
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素ガス導入管を備えた反応容器に、IPA375部を仕込み、80℃に昇温した。次いで滴下ロートに、メタクリル酸メチル300部、アクリル酸450部、IPA375部、および2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3.75部を仕込み均一混合液を得た。該滴下ロートを反応容器に取り付け、窒素ガスを通じながら3時間かけて反応容器内に連続的に滴下してラジカル重合させ、カルボン酸基を有する共重合体(A1−1)の溶液を得た。(A1−1)の溶液の固形分濃度は51%、(A1−1)のMwは1.2万であった。
(A1−1)の溶液100部に、ジデシルジメチルアンモニウム・モノメチル炭酸塩(z1−1)209部を添加し、室温にて2時間反応させ、副生する炭酸ガスを除くことによって、ジデシルジメチルアンモニウムカルボキシレート基を有する共重合体(A−1)の溶液(AD−1)を得た。(AD−1)の固形分濃度は45%、であった。
【0095】
[共重合体(A−1)を含有する溶液(AD−2)の製造]
製造例4
(A1−1)の溶液100部に、メチルエチルイミダゾリウム・モノメチル炭酸塩(z2−1)123部を添加し、室温にて2時間反応させ、副生する炭酸ガスを除くことによって、メチルエチルイミダゾリウムカルボキシレート基を有する共重合体(A−2)の溶液(AD−2)を得た。(AD−2)の固形分濃度は51%であった。
【0096】
[共重合体(A−3)を含有する溶液(AD−3)の製造]
製造例5
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素ガス導入管を備えた反応容器に、IPA375部を仕込み、80℃に昇温した。次いで滴下ロートに、メタクリル酸メチル100部、アクリル酸400部、IPA250部、および2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5部を仕込み均一混合液を得た。該滴下ロートを反応容器に取り付け、窒素ガスを通じながら3時間かけて反応容器内に連続的に滴下してラジカル重合させ、カルボン酸基を有する共重合体(A1−3)の溶液を得た。(A1−3)の溶液の固形分濃度は52%であった。
(A1−3)の溶液100部に、ジデシルジメチルアンモニウム・モノメチル炭酸塩(z1−1)281部を添加し、室温にて2時間反応させ、副生する炭酸ガスを除くことによって、ジデシルジメチルアンモニウムカルボキシレート基を有する共重合体(A−3)の溶液(AD−3)を得た。(AD−3)の固形分濃度は34%であった。
【0097】
[共重合体(A−4)を含有する溶液(AD−4)の製造]
製造例6
(A1−1)の溶液100部に、メチルエチルイミダゾリウム・モノメチル炭酸塩(z2−1)53部を添加し、室温にて2時間反応させ、副生する炭酸ガスを除くことによって、メチルエチルイミダゾリウムカルボキシレート基を有する共重合体(A−4)の溶液(AD−4)を得た。(AD−4)の固形分濃度は44%であった。
【0098】
[共重合体(A−5)を含有する溶液(AD−5)の製造]
製造例7
ポリアクリル酸[和光純薬工業(株)製]100部にメタノール100部を加え溶解させたのち、デシルジメチルアンモニウム・モノメチル炭酸塩(z1−1)185部を添加し、室温にて2時間反応させ、副生する炭酸ガスを除くことによって、ジデシルジメチルアンモニウムカルボキシレート基を有する(メタ)アクリレート共重合体(A−5)の溶液(AD−5)を得た。(AD−5)の固形分濃度は38%であった。
【0099】
[共重合体(A−6)を含有する溶液(AD−6)の製造]
製造例8
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素ガス導入管を備えた反応容器に、IPA375部を仕込み、80℃に昇温した。次いで滴下ロートに、メタクリル酸メチル300部、メタクリル酸450部、IPA375部、および2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3.75部を仕込み均一混合液を得た。該滴下ロートを反応容器に取り付け、窒素ガスを通じながら3時間かけて反応容器内に連続的に滴下してラジカル重合させ、カルボン酸基を有する共重合体(A1−4)の溶液を得た。(A1−4)の溶液の固形分濃度は50%、(A1−4)のMwは5.0万であった。
(A1−4)の溶液100部に、メチルエチルイミダゾリウム・モノメチル炭酸塩(z2−1)262部を添加し、室温にて2時間反応させ、副生する炭酸ガスを除くことによって、メチルエチルイミダゾリウムカルボキシレート基を有する共重合体(A−6)の溶液(AD−6)を得た。(AD−6)の固形分濃度は36%であった。
【0100】
[共重合体(A−2)を含有する水溶液(AD−7)の製造]
製造例9
撹拌機、温度計、減圧ポンプを備えた反応容器に、(A1−1)の溶液100部を仕込んだ。イオン交換水200部を加え、80℃で減圧しIPAとメタノールを揮発させた。この操作をもう一度繰り返し、メチルエチルイミダゾリウムカルボキシレート基を有する共重合体(A−2)の水溶液(AD−7)を得た。(AD−7)の固形分濃度は20%であった。
【0101】
[比較用の共重合体(A’−1)を含有する溶液(AD’−1)の製造]
比較製造例1
ポリアクリル酸[和光純薬工業(株)製]100部にメタノール100部を加え溶解させたのち、ジデシルジメチルアンモニウム・モノメチル炭酸塩(z1−1)455部を添加し、室温にて2時間反応させ、副生する炭酸ガスを除くことによって、ジデシルジメチルアンモニウムカルボキシレート基を有する(メタ)アクリレート共重合体(A’−1)の溶液(AD’−1)を得た。(AD’−1)の固形分濃度は53%であった。
【0102】
[比較用の共重合体(A’−2)を含有する溶液(AD’−2)の製造]
比較製造例2
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素ガス導入管を備えた反応容器に、IPA375部を仕込み、80℃に昇温した。次いで滴下ロートに、メタクリル酸メチル600部、アクリル酸150部、IPA375部、および2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5部を仕込み均一混合液を得た。該滴下ロートを反応容器に取り付け、窒素ガスを通じながら3時間かけて反応容器内に連続的に滴下してラジカル重合させ、カルボン酸基を有するメタクリレート共重合体(A1’−2)の溶液を得た。(A1’−2)の溶液の固形分濃度は50%であった。
(A1’−2)の溶液100部に、ジデシルジメチルアンモニウム・モノメチル炭酸塩(z1−1)28部を添加し、室温にて2時間反応させ、副生する炭酸ガスを除くことによって、ジデシルジメチルアンモニウムカルボキシレート基を有する(メタ)アクリレート共重合体(A’−2)の溶液(AD’−2)を得た。(AD’−2)の固形分濃度は35%であった。
【0103】
実施例1
上記共重合体(A−1)を含有する溶液(AD−1)100部に、架橋剤(C)としてクレゾールノボラック型エポキシ架橋剤 [日本化薬(株)製、商品名「EOCN−104S」](C−1)のMEK溶液(固形分濃度50%)17部、MEK150部を添加し、均一に混合して配合液(X−1)を作成した。この配合液をポリエステルフィルム[東レ(株)製、商品名「ルミラー」タイプT]基材に乾燥後膜厚が10μmになるように塗工し、130℃で2分間熱風乾燥させ、コーティングフィルムを得た。
【0104】
実施例2
上記共重合体(A−2)を含有する溶液(AD−2)100部に、架橋剤(C)としてソルビトールグリシジルエーテル型エポキシ架橋剤 [ナガセケムテックス(株)製、商品名「デナコールEX−1610」] (C−2)13部、メタノール209部を添加し、均一に混合して配合液(X−2)を作成した。この配合液をポリエステルフィルム[東レ(株)製、商品名「ルミラー」タイプT]基材に乾燥後膜厚が10μmになるように塗工し、130℃で2分間熱風乾燥させ、コーティングフィルムを得た。
【0105】
実施例3
上記共重合体(A−3)を含有する溶液(AD−3)100部に、架橋剤(C)としてクレゾールノボラック型エポキシ架橋剤 [日本化薬(株)製、商品名「EOCN−104S」] (C−1)のMEK溶液(固形分濃度50%)8部、MEK82部を添加し、均一に混合して配合液(X−3)を作成した。この配合液をポリエステルフィルム[東レ(株)製、商品名「ルミラー」タイプT]基材に乾燥後膜厚が10μmになるように塗工し、130℃で2分間熱風乾燥させ、コーティングフィルムを得た。
【0106】
実施例4
上記共重合体(A−4)を含有する溶液(AD−4)100部に、架橋剤(C)としてソルビトールグリシジルエーテル型エポキシ架橋剤 [ナガセケムテックス(株)製、商品名「デナコールEX−1610」] (C−2)17部、メタノール187部を添加し、均一に混合して配合液(X−4)を作成した。この配合液をポリエステルフィルム[東レ(株)製、商品名「ルミラー」タイプT]基材に乾燥後膜厚が10μmになるように塗工し、130℃で2分間熱風乾燥させ、コーティングフィルムを得た。
【0107】
実施例5
上記共重合体(A−5)を含有する溶液(AD−5)100部に、架橋剤(C)としてソルビトールグリシジルエーテル型エポキシ架橋剤 [ナガセケムテックス(株)製、商品名「デナコールEX−1610」] (C−2)15部、メタノール152部を添加し、均一に混合して配合液(X−5)を作成した。この配合液をポリエステルフィルム[東レ(株)製、商品名「ルミラー」タイプT]基材に乾燥後膜厚が10μmになるように塗工し、130℃で2分間熱風乾燥させ、コーティングフィルムを得た。
【0108】
実施例6
上記共重合体(A−6)を含有する溶液(AD−6)100部に、架橋剤(C)としてソルビトールグリシジルエーテル型エポキシ架橋剤 [ナガセケムテックス(株)製、商品名「デナコールEX−1610」] (C−2)8部、メタノール113部を添加し、均一に混合して配合液(X−6)を作成した。この配合液をポリエステルフィルム[東レ(株)製、商品名「ルミラー」タイプT]基材に乾燥後膜厚が10μmになるように塗工し、130℃で2分間熱風乾燥させ、コーティングフィルムを得た。
【0109】
実施例7
上記共重合体(A−2)を含有する水溶液(AD−7)100部に、架橋剤(C)としてソルビトールグリシジルエーテル型エポキシ架橋剤 [ナガセケムテックス(株)製、商品名「デナコールEX−1610」] (C−2)5部、イオン交換水20部を添加し、均一に混合して配合液(X−7)を作成した。この配合液をポリエステルフィルム[東レ(株)製、商品名「ルミラー」タイプT]基材に乾燥後膜厚が10μmになるように塗工し、130℃で2分間熱風乾燥させ、コーティングフィルムを得た。
【0110】
実施例8
上記共重合体(A−2)を含有する溶液(AD−2)100部に、架橋剤(C)としてオキサゾリン含有架橋剤 [日本触媒(株)製、商品名「WS−500」] (C−3)44部、メタノール199部を添加し、均一に混合して配合液(X−8)を作成した。この配合液をポリエステルフィルム[東レ(株)製、商品名「ルミラー」タイプT]基材に乾燥後膜厚が10μmになるように塗工し、130℃で2分間熱風乾燥させ、コーティングフィルムを得た。
【0111】
比較例1
上記(メタ)アクリレート共重合体(A’−1)の溶液(AD’−1)100部に、架橋剤(C)としてクレゾールノボラック型エポキシ架橋剤 [日本化薬(株)製、商品名「EOCN−104S」] (C−1)のMEK溶液(固形分濃度50%)2部、MEK53部を添加し、均一に混合して配合液(X’−1)を作成した。この配合液をポリエステルフィルム[東レ(株)製、商品名「ルミラー」タイプT]基材に乾燥後膜厚が10μmになるように塗工し、130℃で2分間熱風乾燥させ、コーティングフィルムを得た。
【0112】
比較例2
上記共重合体(A’−2)を含有する溶液(AD’−2)100部に、架橋剤(C)としてクレゾールノボラック型エポキシ架橋剤 [日本化薬(株)製、商品名「EOCN−104S」] (C−1)のMEK溶液(固形分濃度50%)22部、MEK55部を添加し、均一に混合して配合液(X’−2)を作成した。この配合液をポリエステルフィルム[東レ(株)製、商品名「ルミラー」タイプT]基材に乾燥後膜厚が10μmになるように塗工し、130℃で2分間熱風乾燥させ、コーティングフィルムを得た。
【0113】
該コーティングフィルムについて、下記の性能評価方法に従って評価した。得たサンプルの内容を表1に示す。また、評価結果を表1に示す。
【0114】
【表1】
表1中、オニウムカルボキシレート基(q)の重量%は以下の式で求めた。
計算式3;
(q)(重量%)=(共重合体Aの固形分重量)(g)×(共重合体Aの分子量に対するオニウムカルボキシレート基の分子量の重量%)(%)/[(共重合体Aの固形分重量)(g)+(架橋剤Cの固形分重量)(g)]
【0115】
(1)帯電防止性(表面抵抗率)
23℃×65%RHの条件で12時間、粘着剤層試験片を静置した後に、JIS−K6911に記載の方法で表面抵抗率を評価した。
【0116】
(2)コーティングの基材に対する密着性
コーティングフィルムにセロテープ(登録商標)を貼り付けてはがしたときのはがれの有無を肉眼で観察し、下記の基準で評価した。
○ :はがれなし
△ :一部はがれる
× :顕著にはがれる
【0117】
膜の硬度
コーティングフィルムを爪で引っかいたときの傷の有無を肉眼で観察し、下記の基準で評価した。
○ :ほぼ傷がつかない
△ :少し傷がつく
× :容易に傷がつく
【0118】
(4)透明性
透明性はコーティングフィルム試験片を色彩濁度同時測定器 NIPPON DENSHOKU COH400(日本電色工業株式会社製)にてヘイズを測定した。上記の方法で作成したサンプルのヘイズ値からPETフィルムのヘイズ値を差し引いたものを測定値とした。ヘイズは値が小さいほど透明性が良いことを示す。
【0119】
表2の結果から、(X)中のオニウムカルボキシレート基(q)部分の重量%が15%〜85%である帯電防止コーティング層形成性組成物(X)を用いて製造した帯電防止コーティング層は、帯電防止性に優れ、基材との密着性とコーティングの硬度、透明性のバランスに優れていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の帯電防止コーティング層形成性組成物および帯電防止コーティング層は、偏光板、位相差板、光拡散板等の各種光学部材、ステンレス、プラスチック等の表面保護フィルム、ダイシングテープ、キャリアテープ等の電子部品加工用テープ、偏光板、位相差板、光拡散板等の各種光学部材および液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等の各種画像表示装置の幅広い用途に用いることができる。