特許第6871751号(P6871751)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871751
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】クライオポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 37/16 20060101AFI20210426BHJP
   F04B 37/08 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   F04B37/16 C
   F04B37/08
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-20601(P2017-20601)
(22)【出願日】2017年2月7日
(65)【公開番号】特開2018-127927(P2018-127927A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2019年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 走
【審査官】 上野 力
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−019987(JP,A)
【文献】 特開2011−167647(JP,A)
【文献】 特開2009−062891(JP,A)
【文献】 特開2014−227989(JP,A)
【文献】 特開平03−151577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 37/16
F04B 37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温冷却ステージおよび低温冷却ステージを備える冷凍機と、
前記高温冷却ステージに熱的に結合され、クライオポンプ吸気口から軸方向に筒状に延在する放射シールドと、
前記低温冷却ステージに熱的に結合され前記放射シールドに囲まれた低温クライオパネル部と、を備え、
前記低温クライオパネル部の上部構造は、前記クライオポンプ吸気口と前記低温冷却ステージとの間で軸方向に配列された複数の上部クライオパネルと、軸方向に柱状に配列された複数の伝熱体と、を備え、各上部クライオパネルが金属で形成され、各伝熱体が金属で形成され、前記複数の上部クライオパネルおよび前記複数の伝熱体が前記上部構造の中心部で軸方向に積み重ねられ
前記低温クライオパネル部の下部構造は、複数の下部クライオパネルと、前記低温冷却ステージから軸方向下方に延びているパネル取付部材と、を備え、前記複数の下部クライオパネルが前記パネル取付部材を介して前記低温冷却ステージに取り付けられていることを特徴とするクライオポンプ。
【請求項2】
前記上部クライオパネルは、第1金属で形成され、前記伝熱体は、第2金属で形成され、前記第1金属は、前記第2金属と異なることを特徴とする請求項1に記載のクライオポンプ。
【請求項3】
前記第1金属は、第1の熱伝導率を有し、前記第2金属は、第2の熱伝導率を有し、前記第2の熱伝導率は、前記第1の熱伝導率より小さいことを特徴とする請求項2に記載のクライオポンプ。
【請求項4】
前記複数の上部クライオパネルは、第1の熱容量を有し、前記複数の伝熱体は、第2の熱容量を有し、前記第2の熱容量は、前記第1の熱容量より小さいことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のクライオポンプ。
【請求項5】
前記複数の伝熱体は、軸方向に円柱状に配列され、前記複数の伝熱体の各々が円形状端面を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のクライオポンプ。
【請求項6】
少なくとも1つの上部クライオパネルは、伝熱体の円形状端面に相当する大きさの中心円盤と、前記中心円盤から前記クライオポンプ吸気口に向けて傾斜した円錐状クライオパネル面と、を備えることを特徴とする請求項5に記載のクライオポンプ。
【請求項7】
少なくとも1つの上部クライオパネルは、伝熱体の円形状端面より大径の平坦円盤であることを特徴とする請求項5または6に記載のクライオポンプ。
【請求項8】
前記低温クライオパネル部の上部構造は、前記複数の上部クライオパネルおよび前記複数の伝熱体を軸方向に貫通する締結部材を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のクライオポンプ。
【請求項9】
前記伝熱体の中心部は固形物とされていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のクライオポンプ。
【請求項10】
前記低温クライオパネル部の上部構造は、上部クライオパネルと伝熱体との間に介在層を備えることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のクライオポンプ。
【請求項11】
前記伝熱体の外径は、前記上部クライオパネルの外径の1/2より小さく、1/10より大きいことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のクライオポンプ。
【請求項12】
前記複数の上部クライオパネルおよび前記複数の伝熱体は、クライオポンプ中心軸上に配置され、前記低温冷却ステージは、前記クライオポンプ中心軸から外れて配置されている請求項1から11のいずれかに記載のクライオポンプ。
【請求項13】
前記複数の上部クライオパネルおよび前記複数の伝熱体は、前記クライオポンプ中心軸に垂直な方向に延在する伝熱ブロックにより前記低温冷却ステージに固定されている請求項12に記載のクライオポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クライオポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
クライオポンプは、極低温に冷却されたクライオパネルに気体分子を凝縮または吸着により捕捉して排気する真空ポンプである。クライオポンプは半導体回路製造プロセス等に要求される清浄な真空環境を実現するために一般に利用される。クライオポンプのアプリケーションの1つに、例えばイオン注入工程のように、排気すべき気体の大半を例えば水素等の非凝縮性気体が占める場合がある。非凝縮性気体は極低温に冷却された吸着領域に吸着させることによって初めて排気することができる。
【0003】
クライオポンプは通例、冷凍機の高温冷却ステージによって冷却される高温クライオパネル部と、冷凍機の低温冷却ステージによって冷却される低温クライオパネル部とを備える。高温クライオパネル部は輻射熱から低温クライオパネル部を保護するために設けられている。低温クライオパネル部は複数のクライオパネルを含み、これらクライオパネルは取付構造を介して低温冷却ステージに取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−237262号公報
【特許文献2】特開2009−62890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、クライオポンプについて鋭意研究を重ねた結果、以下の課題を認識するに至った。たいていのクライオポンプにおいては高温クライオパネル部および低温クライオパネル部が円盤や円筒、円錐など軸対称の形状に基づき設計されている。それにもかかわらず、クライオパネル取付構造は矩形や直方体などの非軸対称形状を基調とする。このことが、取付構造の簡素化や小型化の制約となっている。取付構造が複雑な形状をもちサイズが増せば、その分、クライオパネルを配置するスペースが削られる。その結果クライオパネル面積が減りクライオポンプの排気性能(例えば、非凝縮性気体の吸蔵量、排気速度)は下がる。したがって、既存のクライオパネル取付構造の設計には、排気性能の向上を目指すうえで、改善の余地があった。
【0006】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、クライオポンプの排気性能を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によると、クライオポンプは、高温冷却ステージおよび低温冷却ステージを備える冷凍機と、前記高温冷却ステージに熱的に結合され、クライオポンプ吸気口から軸方向に筒状に延在する放射シールドと、前記低温冷却ステージに熱的に結合され前記放射シールドに囲まれた低温クライオパネル部であって、複数のクライオパネルと、軸方向に柱状に配列された複数の伝熱体と、を備え、前記複数のクライオパネルおよび前記複数の伝熱体が軸方向に積み重ねられている低温クライオパネル部と、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、クライオポンプの排気性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係るクライオポンプを概略的に示す。
図2】実施の形態に係る第2段クライオパネルアセンブリの上部クライオパネルを模式的に示す斜視図である。
図3】実施の形態に係る第2段クライオパネルアセンブリの下部クライオパネルを模式的に示す上面図である。
図4】実施の形態に係る第2段クライオパネルアセンブリの上部構造を模式的に示す断面図である。
図5】実施の形態に係る第2段クライオパネルアセンブリの上部構造を模式的に示す分解斜視図である。
図6】実施の形態に係る第2段クライオパネルアセンブリの上部クライオパネルの他の例を模式的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0012】
図1は、実施の形態に係るクライオポンプ10を概略的に示す。図2は、実施の形態に係る第2段クライオパネルアセンブリの上部クライオパネルを模式的に示す斜視図である。図3は、実施の形態に係る第2段クライオパネルアセンブリの下部クライオパネルを模式的に示す上面図である。
【0013】
クライオポンプ10は、例えばイオン注入装置、スパッタリング装置、蒸着装置、またはその他の真空プロセス装置の真空チャンバに取り付けられて、真空チャンバ内部の真空度を所望の真空プロセスに要求されるレベルまで高めるために使用される。クライオポンプ10は、排気されるべき気体を真空チャンバから受け入れるためのクライオポンプ吸気口(以下では単に「吸気口」ともいう)12を有する。吸気口12を通じて気体がクライオポンプ10の内部空間14に進入する。
【0014】
なお以下では、クライオポンプ10の構成要素の位置関係をわかりやすく表すために、「軸方向」、「径方向」との用語を使用することがある。クライオポンプ10の軸方向は吸気口12を通る方向(すなわち、図において中心軸Cに沿う方向)を表し、径方向は吸気口12に沿う方向(中心軸Cに垂直な方向)を表す。便宜上、軸方向に関して吸気口12に相対的に近いことを「上」、相対的に遠いことを「下」と呼ぶことがある。つまり、クライオポンプ10の底部から相対的に遠いことを「上」、相対的に近いことを「下」と呼ぶことがある。径方向に関しては、吸気口12の中心(図において中心軸C)に近いことを「内」、吸気口12の周縁に近いことを「外」と呼ぶことがある。なお、こうした表現はクライオポンプ10が真空チャンバに取り付けられたときの配置とは関係しない。例えば、クライオポンプ10は鉛直方向に吸気口12を下向きにして真空チャンバに取り付けられてもよい。
【0015】
また、軸方向を囲む方向を「周方向」と呼ぶことがある。周方向は、吸気口12に沿う第2の方向であり、径方向に直交する接線方向である。
【0016】
クライオポンプ10は、冷凍機16、第1段クライオパネル18、第2段クライオパネルアセンブリ20、及び、クライオポンプハウジング70を備える。第1段クライオパネル18は、高温クライオパネル部または100K部とも称されうる。第2段クライオパネルアセンブリ20は、低温クライオパネル部または10K部とも称されうる。
【0017】
冷凍機16は、例えばギフォード・マクマホン式冷凍機(いわゆるGM冷凍機)などの極低温冷凍機である。冷凍機16は、二段式の冷凍機である。そのため、冷凍機16は、第1冷却ステージ22及び第2冷却ステージ24を備える。冷凍機16は、第1冷却ステージ22を第1冷却温度に冷却し、第2冷却ステージ24を第2冷却温度に冷却するよう構成されている。第2冷却温度は第1冷却温度よりも低温である。例えば、第1冷却ステージ22は65K〜120K程度、好ましくは80K〜100Kに冷却され、第2冷却ステージ24は10K〜20K程度に冷却される。
【0018】
また、冷凍機16は、第2冷却ステージ24を第1冷却ステージ22に構造的に支持するとともに第1冷却ステージ22を冷凍機16の室温部26に構造的に支持する冷凍機構造部21を備える。そのため冷凍機構造部21は、径方向に沿って同軸に延在する第1シリンダ23及び第2シリンダ25を備える。第1シリンダ23は、冷凍機16の室温部26を第1冷却ステージ22に接続する。第2シリンダ25は、第1冷却ステージ22を第2冷却ステージ24に接続する。室温部26、第1シリンダ23、第1冷却ステージ22、第2シリンダ25、及び第2冷却ステージ24は、この順に直線状に一列に並ぶ。
【0019】
第1シリンダ23及び第2シリンダ25それぞれの内部には第1ディスプレーサ及び第2ディスプレーサ(図示せず)が往復動可能に配設されている。第1ディスプレーサ及び第2ディスプレーサにはそれぞれ第1蓄冷器及び第2蓄冷器(図示せず)が組み込まれている。また、室温部26は、第1ディスプレーサ及び第2ディスプレーサを往復動させるための駆動機構(図示せず)を有する。駆動機構は、冷凍機16の内部への作動気体(例えばヘリウム)の供給と排出を周期的に繰り返すよう作動気体の流路を切り替える流路切替機構を含む。
【0020】
冷凍機16は、作動気体の圧縮機(図示せず)に接続されている。冷凍機16は、圧縮機により加圧された作動気体を内部で膨張させて第1冷却ステージ22及び第2冷却ステージ24を冷却する。膨張した作動気体は圧縮機に回収され再び加圧される。冷凍機16は、作動気体の給排とこれに同期した第1ディスプレーサ及び第2ディスプレーサの往復動とを含む熱サイクルを繰り返すことによって寒冷を発生させる。
【0021】
図示されるクライオポンプ10は、いわゆる横型のクライオポンプである。横型のクライオポンプとは一般に、冷凍機16がクライオポンプ10の中心軸Cに交差する(通常は直交する)よう配設されているクライオポンプである。
【0022】
第1段クライオパネル18は、放射シールド30と入口クライオパネル32とを備え、第2段クライオパネルアセンブリ20を包囲する。第1段クライオパネル18は、クライオポンプ10の外部またはクライオポンプハウジング70からの輻射熱から第2段クライオパネルアセンブリ20を保護するための極低温表面を提供する。第1段クライオパネル18は第1冷却ステージ22に熱的に結合されている。よって第1段クライオパネル18は第1冷却温度に冷却される。第1段クライオパネル18は第2段クライオパネルアセンブリ20との間に隙間を有しており、第1段クライオパネル18は第2段クライオパネルアセンブリ20と接触していない。第1段クライオパネル18はクライオポンプハウジング70とも接触していない。
【0023】
放射シールド30は、クライオポンプハウジング70の輻射熱から第2段クライオパネルアセンブリ20を保護するために設けられている。放射シールド30は、吸気口12から軸方向に筒状(例えば円筒状)に延在する。放射シールド30は、クライオポンプハウジング70と第2段クライオパネルアセンブリ20との間にあり、第2段クライオパネルアセンブリ20を囲む。放射シールド30は、クライオポンプ10の外部から内部空間14に気体を受け入れるためのシールド主開口34を有する。シールド主開口34は、吸気口12に位置する。
【0024】
放射シールド30は、シールド主開口34を定めるシールド前端36と、シールド主開口34と反対側に位置するシールド底部38と、シールド前端36をシールド底部38に接続するシールド側部40と、を備える。シールド側部40は、軸方向にシールド前端36からシールド主開口34と反対側へと延在し、周方向に第2冷却ステージ24を包囲するよう延在する。
【0025】
シールド側部40は、冷凍機構造部21が挿入されるシールド側部開口44を有する。シールド側部開口44を通じて放射シールド30の外から第2冷却ステージ24及び第2シリンダ25が放射シールド30の中に挿入される。シールド側部開口44は、シールド側部40に形成された取付穴であり、例えば円形である。第1冷却ステージ22は放射シールド30の外に配置されている。
【0026】
シールド側部40は、冷凍機16の取付座46を備える。取付座46は、第1冷却ステージ22を放射シールド30に取り付けるための平坦部分であり、放射シールド30の外から見てわずかに窪んでいる。取付座46は、シールド側部開口44の外周を形成する。第1冷却ステージ22が取付座46に取り付けられることによって、放射シールド30が第1冷却ステージ22に熱的に結合されている。
【0027】
このように放射シールド30を第1冷却ステージ22に直接取り付けることに代えて、ある実施形態においては、放射シールド30は、追加の伝熱部材を介して第1冷却ステージ22に熱的に結合されていてもよい。伝熱部材は、例えば、両端にフランジを有する中空の短筒であってもよい。伝熱部材は、その一端のフランジにより取付座46に固定され、他端のフランジにより第1冷却ステージ22に固定されてもよい。伝熱部材は、冷凍機構造部21を囲んで第1冷却ステージ22から放射シールド30に延在してもよい。シールド側部40は、こうした伝熱部材を含んでもよい。
【0028】
図示される実施形態においては、放射シールド30は一体の筒状に構成されている。これに代えて、放射シールド30は、複数のパーツにより全体として筒状の形状をなすように構成されていてもよい。これら複数のパーツは互いに間隙を有して配設されていてもよい。例えば、放射シールド30は軸方向に2つの部分に分割されていてもよい。この場合、放射シールド30の上部は、両端が開放された筒であり、シールド前端36とシールド側部40の第1部分とを備える。放射シールド30の下部も両端が開放された筒であり、シールド側部40の第2部分とシールド底部38とを備える。シールド側部40の第1部分と第2部分との間には周方向に延びるスリットが形成されている。このスリットが、シールド側部開口44の少なくとも一部を形成してもよい。あるいは、シールド側部開口44は、その上半分がシールド側部40の第1部分に形成され、下半分がシールド側部40の第2部分に形成されてもよい。
【0029】
放射シールド30は、第2段クライオパネルアセンブリ20を囲むガス受入空間50を、吸気口12とシールド底部38との間に形成する。ガス受入空間50は、クライオポンプ10の内部空間14の一部であり、第2段クライオパネルアセンブリ20に径方向に隣接する領域である。
【0030】
入口クライオパネル32は、クライオポンプ10の外部の熱源(例えば、クライオポンプ10が取り付けられる真空チャンバ内の熱源)からの輻射熱から第2段クライオパネルアセンブリ20を保護するために、吸気口12(またはシールド主開口34、以下同様)に設けられている。また、入口クライオパネル32の冷却温度で凝縮する気体(例えば水分)がその表面に捕捉される。
【0031】
入口クライオパネル32は、吸気口12において第2段クライオパネルアセンブリ20に対応する場所に配置されている。入口クライオパネル32は、吸気口12の開口面積の中心部分を占有し、放射シールド30との間に環状の開放領域51を形成する。軸方向に見たときの入口クライオパネル32の形状は、例えば円盤状である。入口クライオパネル32は、吸気口12の開口面積の多くとも1/3、または多くとも1/4を占めてもよい。このようにして、開放領域51は、吸気口12の開口面積の少なくとも2/3、または少なくとも3/4を占めてもよい。開放領域51は、吸気口12においてガス受入空間50に対応する場所にある。開放領域51はガス受入空間50の入口であり、クライオポンプ10は、開放領域51を通じてガス受入空間50にガスを受け入れる。
【0032】
入口クライオパネル32は、入口クライオパネル取付部材33を介してシールド前端36に取り付けられる。入口クライオパネル取付部材33は、シールド主開口34の直径に沿ってシールド前端36に架け渡された直線状(または十字状)の部材である。こうして入口クライオパネル32は放射シールド30に固定され、放射シールド30に熱的に結合されている。入口クライオパネル32は第2段クライオパネルアセンブリ20に近接しているが、接触はしていない。
【0033】
第2段クライオパネルアセンブリ20は、クライオポンプ10の内部空間14の中心部に設けられている。第2段クライオパネルアセンブリ20は、上部構造20aと下部構造20bとを備える。第2段クライオパネルアセンブリ20は、軸方向に配列された複数のクライオパネル60を備える。複数のクライオパネル60は軸方向に互いに間隔をあけて配列されている。
【0034】
第2段クライオパネルアセンブリ20の上部構造20aは、複数の上部クライオパネル60aと、複数の伝熱体(伝熱スペーサともいう)62と、を備える。複数の伝熱体62は、軸方向に柱状に配列されている。複数の上部クライオパネル60aおよび複数の伝熱体62は、吸気口12と第2冷却ステージ24との間で軸方向に積み重ねられている。こうして上部構造20aは、第2冷却ステージ24に対し軸方向上方に配置されている。上部構造20aは、伝熱ブロック63を介して第2冷却ステージ24に固定され、第2冷却ステージ24に熱的に結合されている。よって、上部構造20aは第2冷却温度に冷却される。
【0035】
第2段クライオパネルアセンブリ20の下部構造20bは、複数の下部クライオパネル60bと、第2段パネル取付部材64と、を備える。第2段パネル取付部材64は、第2冷却ステージ24から軸方向に下方に向けて延びている。複数の下部クライオパネル60bは、第2段パネル取付部材64を介して第2冷却ステージ24に取り付けられている。こうして、下部構造20bは、第2冷却ステージ24に熱的に結合され、第2冷却温度に冷却される。
【0036】
第2段クライオパネルアセンブリ20においては、少なくとも一部の表面に吸着領域66が形成されている。吸着領域66は非凝縮性気体(例えば水素)を吸着により捕捉するために設けられている。吸着領域66は例えば吸着材(例えば活性炭)をクライオパネル表面に接着することにより形成される。吸着領域66は、吸気口12から見えないように、上方に隣接するクライオパネル60の陰となる場所に形成されていてもよい。例えば、吸着領域66はクライオパネル60の下面(背面)の全域に形成されている。吸着領域66は、上部クライオパネル60aの上面及び/または下面に形成されていてもよい。吸着領域66は、下部クライオパネル60bの上面及び/または下面に形成されていてもよい。
【0037】
また、第2段クライオパネルアセンブリ20の少なくとも一部の表面には凝縮性気体を凝縮により捕捉するための凝縮領域が形成されている。凝縮領域は例えば、クライオパネル表面上で吸着材の欠落した区域であり、クライオパネル基材表面例えば金属面が露出されている。クライオパネル60(例えば、上部クライオパネル60a)の上面外周部は凝縮領域であってもよい。
【0038】
図1および図2に示されるように、上部クライオパネル60aは、逆円錐台状であり、軸方向に見たとき円形状となるよう配置されている。上部クライオパネル60aの中心は中心軸C上に位置する。上部クライオパネル60aは、すり鉢状、深皿状、またはボール状の形状を有するということもできる。上部クライオパネル60aは、上端部74において大きな寸法を有し(すなわち大径であり)、下端部76においてそれよりも小さな寸法を有する(すなわち小径である)。上部クライオパネル60aは、上端部74と下端部76とをつなぐ傾斜領域78を備える。傾斜領域78は、逆円錐台の側面にあたる。よって、上部クライオパネル60aは、上部クライオパネル60aの上面の法線が中心軸Cに交差するように傾斜されている。上部クライオパネル60aは、複数の貫通穴80を下端部76に有する。貫通穴80は、上部クライオパネル60aを伝熱体62(または伝熱ブロック63)に取り付けるために設けられている。
【0039】
一枚目の上部クライオパネル60aが最も小径である。一枚目の上部クライオパネル60aは軸方向に最も上方に位置し、入口クライオパネル32に最も近い。二枚目の上部クライオパネル60aは、一枚目の上部クライオパネル60aよりもやや大径である。3枚目、4枚目、5枚目の上部クライオパネル60aについても同様である。より下方の上部クライオパネル60aは、その上方に隣接する上部クライオパネル60aと比べて僅かに大径である。
【0040】
一枚目および二枚目の上部クライオパネル60aの傾斜領域78は平行である。また、3枚目から5枚目の上部クライオパネル60aの傾斜領域78は平行である。一枚目の上部クライオパネル60aの傾斜角度は、3枚目の上部クライオパネル60aの傾斜角度に比べて浅い。3枚目、4枚目、5枚目の上部クライオパネル60aは、入れ子状に配置されている。より上方の上部クライオパネル60aの下部が、その下方に隣接する上部クライオパネル60aへと入り込んでいる。
【0041】
上部構造20aの更なる詳細は後述する。なお、上部構造20aの具体的構成は上述のものに限られない。たとえば、上部構造20aは、任意の枚数の上部クライオパネル60aを有してもよい。上部クライオパネル60aは、平板、円錐状、またはその他の形状を有してもよい。たとえば、一枚目の上部クライオパネル60aは、平板、例えば円盤であってもよい。
【0042】
図3に示されるように、下部クライオパネル60bは、平板であり、例えば円盤状である。下部クライオパネル60bは、上部クライオパネル60aよりも大径である。ただし、下部クライオパネル60bには第2段パネル取付部材64への取付のために、外周の一部分から中心部へと切欠部82が形成されている。なお、下部クライオパネル60bは、上部クライオパネル60aと同様に逆円錐台状であってもよいし、円錐状またはその他の形状であってもよい。
【0043】
上部クライオパネル60aは、下部クライオパネル60bとは異なり、切欠部82を有しない。よって、上部クライオパネル60aは、有効なクライオパネル面積(すなわち吸着領域66及び/または凝縮領域)をより広く取ることができる。
【0044】
吸着領域66においては、多数の活性炭の粒がクライオパネル60の表面に密に並べられた状態で不規則な配列で接着されている。活性炭の粒は例えば円柱形状に成形されている。なお吸着材の形状は円柱形状でなくてもよく、例えば球状やその他の成形された形状、あるいは不定形状であってもよい。吸着材のパネル上での配列は規則的配列であっても不規則な配列であってもよい。
【0045】
クライオポンプハウジング70は、第1段クライオパネル18、第2段クライオパネルアセンブリ20、及び冷凍機16を収容するクライオポンプ10の筐体であり、内部空間14の真空気密を保持するよう構成されている真空容器である。クライオポンプハウジング70は、第1段クライオパネル18及び冷凍機構造部21を非接触に包含する。クライオポンプハウジング70は、冷凍機16の室温部26に取り付けられている。
【0046】
クライオポンプハウジング70の前端によって、吸気口12が画定されている。クライオポンプハウジング70は、その前端から径方向外側に向けて延びている吸気口フランジ72を備える。吸気口フランジ72は、クライオポンプハウジング70の全周にわたって設けられている。クライオポンプ10は、吸気口フランジ72を用いて真空排気対象の真空チャンバに取り付けられる。
【0047】
上記の構成のクライオポンプ10の動作を以下に説明する。クライオポンプ10の作動に際しては、まずその作動前に他の適当な粗引きポンプで真空チャンバ内部を1Pa程度にまで粗引きする。その後、クライオポンプ10を作動させる。冷凍機16の駆動により第1冷却ステージ22及び第2冷却ステージ24がそれぞれ第1冷却温度及び第2冷却温度に冷却される。よって、これらに熱的に結合されている第1段クライオパネル18、第2段クライオパネルアセンブリ20もそれぞれ第1冷却温度及び第2冷却温度に冷却される。
【0048】
入口クライオパネル32は、真空チャンバからクライオポンプ10に向かって飛来する気体を冷却する。入口クライオパネル32の表面には、第1冷却温度で蒸気圧が充分に低い(例えば10−8Pa以下の)気体が凝縮する。この気体は、第1種気体と称されてもよい。第1種気体は例えば水蒸気である。こうして、入口クライオパネル32は、第1種気体を排気することができる。第1冷却温度で蒸気圧が充分に低くない気体の一部は、吸気口12から内部空間14へと進入する。あるいは、気体の他の一部は、入口クライオパネル32で反射され、内部空間14に進入しない。
【0049】
内部空間14に進入した気体は、第2段クライオパネルアセンブリ20によって冷却される。第2段クライオパネルアセンブリ20の表面には、第2冷却温度で蒸気圧が充分に低い(例えば10−8Pa以下の)気体が凝縮する。この気体は、第2種気体と称されてもよい。第2種気体は例えばアルゴンである。こうして、第2段クライオパネルアセンブリ20は、第2種気体を排気することができる。
【0050】
第2冷却温度で蒸気圧が充分に低くない気体は、第2段クライオパネルアセンブリ20の吸着材に吸着される。この気体は、第3種気体と称されてもよい。第3種気体は例えば水素である。こうして、第2段クライオパネルアセンブリ20は、第3種気体を排気することができる。したがって、クライオポンプ10は、種々の気体を凝縮または吸着により排気し、真空チャンバの真空度を所望のレベルに到達させることができる。
【0051】
次に、実施の形態に係る第2段クライオパネルアセンブリ20の上部構造20aについてより詳細に説明する。図4は、実施の形態に係る第2段クライオパネルアセンブリ20の上部構造20aを模式的に示す断面図である。図5は、実施の形態に係る第2段クライオパネルアセンブリ20の上部構造20aを模式的に示す分解斜視図である。
【0052】
上述のように、第2段クライオパネルアセンブリ20の上部構造20aは、複数の上部クライオパネル60aと、複数の伝熱体62と、を備える。複数の伝熱体62は、軸方向に柱状に配列されている。実施の形態に係る第2段クライオパネル支持構造は、複数の伝熱体62を備え、複数の上部クライオパネル60aを支持するクライオパネル支持柱を備える。上部構造20aは、中心軸Cに関して軸対称に構成されている。
【0053】
複数の上部クライオパネル60aおよび複数の伝熱体62は、軸方向に積み重ねられている。複数の上部クライオパネル60aおよび複数の伝熱体62は、隣り合う2つの上部クライオパネル60aの間に少なくとも1つの伝熱体62が位置するように、軸方向に積み重ねられている。複数の上部クライオパネル60aおよび複数の伝熱体62は、軸方向に交互に積み重ねられている。このような積み重ね構成は、組み立て作業を容易にする利点がある。また、クライオポンプ10に搭載される上部クライオパネル60aの枚数を調整することも容易である(積み重ねるクライオパネルの数を変えるだけでよい)。
【0054】
個々の伝熱体62は、円柱形状を有する。伝熱体62は、比較的短い円柱形状とされ、伝熱体62の径より軸方向高さが小さくてもよい。
【0055】
複数の伝熱体62は、軸方向に円柱状に配列され、複数の伝熱体62の各々が円形状端面を有する。このようにすれば、伝熱体62の寸法(例えば半径)を比較的小さくしながら、伝熱体62の断面積(軸方向に垂直な断面)を比較的大きくすることができる。伝熱体62の寸法が小さければ、吸着領域66(及び/または凝縮領域)の面積を大きくすることができ、クライオポンプ10の排気性能の向上につながる。断面積が大きければ、軸方向の伝熱量を大きくすることができる。これは、複数の伝熱体62ひいては第2段クライオパネルアセンブリ20の上部構造20aの冷却時間の短縮に役立つ。
【0056】
伝熱体62の軸方向高さが、隣り合う2つの上部クライオパネル60aの軸方向距離を規定する。伝熱体62の軸方向高さを小さくすることにより、上部クライオパネル60aを密に配列することができる。このように伝熱体62が軸方向に薄くなったとしても、伝熱体62の断面積(軸方向に垂直な断面)は保持されるので、伝熱体62の伝熱量に顕著な影響はない。
【0057】
上部クライオパネル60aは、伝熱体62の円形状端面に相当する大きさの中心円盤(すなわち、下端部76)と、中心円盤から吸気口12に向けて傾斜した円錐状クライオパネル面(すなわち、傾斜領域78)と、を備える。上部クライオパネル60aの中心円盤は、伝熱体62への取付面となる。円錐状クライオパネル面は、伝熱体62の円形状端面の輪郭線から斜め上方に向けて延びている。伝熱体62と同様に中心円盤の径は比較的小さいので、円錐状クライオパネル面を比較的大きくとることができる。また、円錐状クライオパネル面は同じ外径の円形に比べて、クライオパネル面積を大きくすることができる。こうして、上部クライオパネル60aの吸着領域66(及び/または凝縮領域)の面積を大きくすることができる。
【0058】
伝熱体62の(円形状端面の)外径は、上部クライオパネル60aの(上端部74の)外径の1/2より小さく、1/3より小さく、または1/4より小さくてもよい。伝熱体62の外径は、上部クライオパネル60aの外径の1/10より大きく、または1/5より大きくてもよい。
【0059】
第2段クライオパネルアセンブリ20の上部構造20aは、上部クライオパネル60aと伝熱体62との間に介在層84を備える。介在層84は、良好な熱接触を確実にするために、軸方向に隣り合う上部クライオパネル60aと伝熱体62との間に挟み込まれる。より正確には、介在層84は、上部クライオパネル60aの中心円盤と伝熱体62の円形状端面との間に挟み込まれる。介在層84は、上部クライオパネル60aおよび伝熱体62よりも柔軟な材料で形成されている。介在層84は、例えばインジウムシート(インジウムで形成されているシート状の部材)である。介在層84の径は、伝熱体62の径よりやや大きく、上部クライオパネル60aの中心円盤の径よりやや小さくてもよい。
【0060】
第2段クライオパネルアセンブリ20の上部構造20aは、複数の上部クライオパネル60aおよび複数の伝熱体62を軸方向に貫通する複数の締結部材86を備える。上部クライオパネル60a、伝熱体62、および介在層84が、締結部材86によって伝熱ブロック63に固定される。上部構造20aは、締結部材86によって第2冷却ステージ24に固定されてもよい。このようにすれば、複数の上部クライオパネル60aおよび複数の伝熱体62をまとめて一度に締結固定できるので、製造(組立作業)が容易である。
【0061】
図示の例においては、3本の締結部材86が使用される。上部クライオパネル60aの中心円盤には中心を囲んで周方向に6個の貫通穴80が形成されている。これら貫通穴80は同じ径方向位置で等角度間隔(60度おき)に配置されている。伝熱体62および介在層84にも同様に貫通穴が形成されている。これら貫通穴80に締結部材86が挿入される。締結部材86は例えば長ねじであり、貫通穴80はねじ穴である。締結部材86は例えばステンレス鋼で形成されている。6個の貫通穴80は1つおきに使用され、3本の締結部材86は120度おきに配置される。使用されない貫通穴80は、伝熱体62の軽量化に役立つ。
【0062】
伝熱体62の中心部は固形物とされ、貫通穴(すなわち空隙)が設けられていない。そのため、伝熱体62の中心部は伝熱経路として働く。これも、伝熱体62の伝熱量を大きくすることに役立ちうる。
【0063】
複数の上部クライオパネル60aは、第1の熱伝導率を有する第1の材料で形成されている。複数の伝熱体62は、第2の熱伝導率を有する第2の材料で形成されている。第2の熱伝導率は、第1の熱伝導率より小さい。第1の材料及び/または第2の材料は、金属材料であってもよい。第1の材料は、銅(純銅、例えばタフピッチ銅)である。第2の材料は、アルミニウム(例えば、純アルミニウム)である。
【0064】
第1の材料は、第1の密度を有し、第2の材料は、第2の密度を有し、第2の密度は、第1の密度より小さくてもよい。
【0065】
上部クライオパネル60aは、第1の材料で形成されたクライオパネル基板と、第1の材料と異なる材料で形成されクライオパネル基板を被覆する被覆層(例えばニッケル層)と、を備えてもよい。同様に、伝熱体62は、第2の材料で形成された本体と、第2の材料と異なる材料で形成され本体を被覆する被覆層(例えばニッケル層)と、を備えてもよい。
【0066】
クライオパネルは典型的に銅で作られる。銅は一般に利用可能な最も高い熱伝導率をもつ材料の1つである。ただし銅は比較的密度が大きいので、クライオパネルは重くなりがちであり、その結果、クライオパネルの熱容量も大きくなりがちである。
【0067】
クライオパネルとともに伝熱体62も銅で作られた場合、高い熱伝導率のために、より低い温度まで上部クライオパネル60aを冷やせるという利点がある。その一方で、第2段クライオパネルアセンブリ20の上部構造20aは重くなり、熱容量が大きくなり、その結果、冷やすのに比較的長い時間を要することになる。ところが、本実施の形態においては、伝熱体62の材料として、銅ほど高い熱伝導率を有しないが、比較的高い熱伝導率を有しかつ比較的小さい密度を有する金属材料(例えばアルミニウム)を採用することができる。熱伝導性と軽量化によって、伝熱体62は冷却時間が短縮される。なお、伝熱体62は、銅で作られてもよい。
【0068】
複数の上部クライオパネル60aは、第1の熱容量を有し、複数の伝熱体62は、第2の熱容量を有し、第2の熱容量は、前記第1の熱容量より小さい。ここで、第1の熱容量は、複数の上部クライオパネル60aの合計の熱容量であり、第2の熱容量は、複数の伝熱体62の合計の熱容量である。このようにすれば、伝熱体62は熱容量が比較的小さいので、比較的短い時間で冷やすことができる。
【0069】
複数の伝熱体62のすべてが同じ材料(例えば、第2の材料)で形成されている。ただし、これは必須ではない。複数の伝熱体62の少なくとも一部(例えば、少なくとも1つの伝熱体62)が第2の材料で形成され、複数の伝熱体62の他の一部(例えば、残りの伝熱体62)が第2の材料と異なる材料(例えば、第1の材料)で形成されていてもよい。このようにして、複数の伝熱体62の少なくとも一部の熱伝導率が、複数の伝熱体62の他の一部の熱伝導率より大きく、または小さくてもよい。複数の伝熱体62の少なくとも一部の密度が、複数の伝熱体62の他の一部の密度より大きく、または小さくてもよい。複数の伝熱体62の少なくとも一部の熱容量が、複数の伝熱体62の他の一部の熱容量より大きく、または小さくてもよい。
【0070】
伝熱体62の材料が、伝熱体62の場所(例えば、軸方向高さ)に応じて選択されてもよい。例えば、複数の伝熱体62のうち低温冷却ステージに比較的近い位置に配置される1以上の伝熱体62が第1の材料で形成され、比較的遠い位置に配置される他の1以上の伝熱体62が第2の材料で形成されてもよい。言い換えると、複数の伝熱体62のうち第1の伝熱体62が第1の材料で形成され、第2の伝熱体62が第2の材料で形成されてもよい。第1の伝熱体62は第1の軸方向高さに配置され、第2の伝熱体62は第2の軸方向高さに配置され、第1の軸方向高さが第2の軸方向高さよりも低温冷却ステージに近くてもよい。第1及び第2の伝熱体62は、軸方向においてクライオポンプ吸気口と低温冷却ステージとの間に配置されていてもよい。
【0071】
なお、伝熱ブロック63は、第1の材料で形成されていてもよい。または、伝熱ブロック63は、第2の材料で形成されていてもよい。
【0072】
実施の形態に係るクライオポンプ10においては、上部クライオパネル60aと伝熱体62の軸方向の積み重ね構成が採用されている。これにより、第2段クライオパネルアセンブリ20の上部構造20aがクライオパネル取付構造も含めて軸対称に構成されている。非対称な取付構造をもつ典型的なクライオポンプとは異なり、上部クライオパネル60aの有効なクライオパネル面積(すなわち吸着領域66及び/または凝縮領域)をより広くすることができる。こうした設計を適用したあるクライオポンプにおいては、第2段クライオパネルアセンブリ20の吸着領域66をおよそ15%増やすことができる。これにより、非凝縮性気体の吸蔵量がおよそ15%増加される。また、非凝縮性気体の排気速度は、およそ2%増えると見積もられる。このように、クライオポンプ10の排気性能が向上される。
【0073】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0074】
上述の実施の形態においては、少なくとも1つの上部クライオパネル60aが逆円錐台状である。しかしながら、図6に示されるように、少なくとも1つの上部クライオパネル60aは、伝熱体62の円形状端面より大径の平坦円盤であってもよい。このように、上部クライオパネル60aは、平板であり、例えば円盤状であってもよい。上部クライオパネル60aは、複数の貫通穴80を備えてもよい。
【0075】
上述の実施の形態においては、上部構造20aを例として説明したが、上述の構成は、下部構造20bに適用することもできる。その場合、文脈の許す限り、上部構造20aを「下部構造20b」、上部クライオパネル60aを「下部クライオパネル60b」と読み替えればよい。
【0076】
本発明の実施形態は以下のように表現することもできる。
【0077】
1.高温冷却ステージおよび低温冷却ステージを備える冷凍機と、
前記高温冷却ステージに熱的に結合され、クライオポンプ吸気口から軸方向に筒状に延在する放射シールドと、
前記低温冷却ステージに熱的に結合され前記放射シールドに囲まれた低温クライオパネル部であって、複数のクライオパネルと、軸方向に柱状に配列された複数の伝熱体と、を備え、前記複数のクライオパネルおよび前記複数の伝熱体が軸方向に積み重ねられている低温クライオパネル部と、を備えることを特徴とするクライオポンプ。
【0078】
2.前記複数のクライオパネルは、第1の熱伝導率を有する第1の材料で形成され、前記複数の伝熱体の少なくとも一部は、第2の熱伝導率を有する第2の材料で形成され、前記第2の熱伝導率は、前記第1の熱伝導率より小さいことを特徴とする実施形態1に記載のクライオポンプ。
【0079】
3.前記複数のクライオパネルは、第1の熱容量を有し、前記複数の伝熱体は、第2の熱容量を有し、前記第2の熱容量は、前記第1の熱容量より小さいことを特徴とする実施形態1または2に記載のクライオポンプ。
【0080】
4.前記複数の伝熱体は、軸方向に円柱状に配列され、前記複数の伝熱体の各々が円形状端面を有することを特徴とする実施形態1から3のいずれかに記載のクライオポンプ。
【0081】
5.少なくとも1つのクライオパネルは、伝熱体の円形状端面に相当する大きさの中心円盤と、前記中心円盤から前記クライオポンプ吸気口に向けて傾斜した円錐状クライオパネル面と、を備えることを特徴とする実施形態4に記載のクライオポンプ。
【0082】
6.少なくとも1つのクライオパネルは、伝熱体の円形状端面より大径の平坦円盤であることを特徴とする実施形態4または5に記載のクライオポンプ。
【0083】
7.前記低温クライオパネル部は、前記複数のクライオパネルおよび前記複数の伝熱体を軸方向に貫通する締結部材を備えることを特徴とする実施形態1から6のいずれかに記載のクライオポンプ。
【0084】
8.前記複数のクライオパネルおよび前記複数の伝熱体は、前記クライオポンプ吸気口と前記低温冷却ステージとの間で軸方向に積み重ねられていることを特徴とする実施形態1から7のいずれかに記載のクライオポンプ。
【0085】
9.前記低温クライオパネル部は、クライオパネルと伝熱体との間に介在層を備えることを特徴とする実施形態1から8のいずれかに記載のクライオポンプ。
【符号の説明】
【0086】
10 クライオポンプ、 12 吸気口、 16 冷凍機、 20 第2段クライオパネルアセンブリ、 20a 上部構造、 22 第1冷却ステージ、 24 第2冷却ステージ、 30 放射シールド、 60 クライオパネル、 62 伝熱体、 84 介在層、 86 締結部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6