(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[水処理カートリッジ]
本発明の水処理カートリッジは、シャワーヘッド内に収納されるカートリッジ本体と、カートリッジ本体内に収納される浄化剤とを備えている。本発明の水処理カートリッジにおけるカートリッジ本体内には、浄化剤が充填された第1流路と、浄化剤が存在しない第2流路とが形成されている。
【0012】
以下、本発明の水処理カートリッジの一例を示して説明する。本実施形態の水処理カートリッジ100は、
図1〜5に示すように、カートリッジ本体102と、カートリッジ本体102内に収納された浄化剤104と、スペーサー部材106と、を備えている。水処理カートリッジ100は、シャワーヘッドにおけるヘッド部内に収納される。
【0013】
図1及び
図2に示すように、カートリッジ本体102は、円筒状の胴部110と、胴部110の一方の開口端を閉じるように設けられた平面視形状が円板状の第1板部112と、胴部110の他方の開口端を閉じるように設けられた底面視形状が円板状の第2板部114と、を備えている。水処理カートリッジ100がシャワーヘッドのヘッド部内に収納された状態では、第1板部112が一次側を向き、第2板部114が二次側に向いていてもよく、第1板部112が二次側を向き、第2板部114が一次側に向いていてもよい。
【0014】
第1板部112は、第1板部112を外部側から正面視したときの中央部が外部側に突き出るように湾曲した形状になっている。同様に、第2板部114は、第2板部114を外部側から正面視したときの中央部が外部側に突き出るように湾曲した形状になっている。第1板部及び第2板部をこのように湾曲させることで、水処理カートリッジをコンパクト化しつつ、充分な量の浄化剤を充填することが容易になる。
【0015】
第1板部112には、第1板部112を外部側から正面視したときの中央部に円形状の窪部115が形成され、その周りに複数の開口116が形成されている。また、第2板部114には、第2板部114を外部側から正面視したときの中央部に円形状の窪部117が形成され、その周りに複数の開口118が形成されている。水処理カートリッジ100をシャワーヘッドのヘッド部内に収納した状態においては、第1板部112の開口116又は第2板部114の開口118のいずれか一方から原水が流入し、内部を通過して他方の開口から流出するようになっている。
【0016】
この例の開口116及び開口118の正面視形状は、円形状である。なお、第1板部及び第2板部に形成される開口の正面視形状は、円形状には限定されず、例えば、楕円状、矩形状等であってもよい。
複数の開口116は、第1板部112を外部側から正面視したときに、中央部から径方向の外側に向かって放射状に広がるように複数列に並んで配置されている。同様に、複数の開口118は、第2板部114を外部側から正面視したときに、中央部から径方向の外側に向かって放射状に広がるように複数列に並んで配置されている。なお、開口116及び開口118の数及び配置は、特に限定されず、水の流入又は流出がスムーズに行えるように適宜設定すればよい。第1板部112に形成される開口116の正面視形状、数及び配置と、第2板部114に形成される開口118の正面視形状、数及び配置は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0017】
図3〜5に示すように、第1板部112の内側には、第1板部112の内壁面112aにおける胴部110の傍から胴部110に沿って円環状に立ち上がる第1突出部120が設けられている。
第1突出部120の断面形状は略三角形状であり、後述するスペーサー部材106の筒の長さ方向の第1端面106aが当接する、胴部110に対して垂直な当接面120aを有している。第1突出部120の断面形状は、スペーサー部材106をしっかりと当接させてカートリッジ本体102内で安定に保持できる形状であれば、三角形状には限定されず、矩形状等であってもよい。
【0018】
第2板部114の内側にも同様に、第2板部114の内壁面114aにおける胴部110の傍から胴部110に沿って円環状に立ち上がる第2突出部122が設けられている。
第2突出部122の断面形状は略三角形状であり、後述するスペーサー部材106の長さ方向の第2端面106bが当接する、胴部110に対して垂直な当接面122aを有している。第2突出部122の断面形状は、スペーサー部材106の第2端面106bをしっかりと当接させてカートリッジ本体102内でスペーサー部材106を安定に保持できる形状であれば、三角形状には限定されず、矩形状等であってもよい。
【0019】
また、全ての開口116、開口118を覆うように、内壁面112a及び内壁面114aにフィルタを取り付けてもよい。これにより浄化剤の微粉漏れを抑制することができるとともに、流量が低い場合でも水処理カートリッジ内を原水で満たすことができ、より浄水効果を安定させることができる。
【0020】
第1板部112の外壁面112bにおける外周縁部には、全周にわたって円環状の凹条からなる段差127が形成されている。同様に、第2板部114の外壁面114bにおける外周縁部には、全周にわたって円環状の凹条からなる段差128が形成されている。これらの段差127,128は、後述のように、シャワーヘッド内に収納した際の水処理カートリッジ100を安定させるために利用される。
【0021】
この例のカートリッジ本体102は、第1部材130と第2部材132に分割できるようになっている。第1部材130は、第1板部112と、胴部110の第1板部112側の部分を形成する側壁部134とで形成された部材である。第2部材132は、第2板部114と、胴部110の第2板部114側の部分を形成する側壁部136とで形成された部材である。
【0022】
第2部材132の側壁部136の先端部分は、径方向の外側から内側に向かって窪むように厚みが薄くなっており、該先端部分の外周面に径方向の外側に向かって突出する凸条138が周方向に全周にわたって設けられている。第1部材130の側壁部134の先端部分は、径方向の内側から外側に向かって窪むように厚みが薄くなっており、該先端部分の内周面に凸条138が嵌まり込む凹条140が周方向に全周にわたって設けられている。
【0023】
凸条138が凹条140に嵌まり込むように第1部材130を第2部材132に装着することで、第1部材130の側壁部134と第2部材132の側壁部136で胴部110が形成され、カートリッジ本体102が形成される。
【0024】
カートリッジ本体102の材質としては、特に限定されず、シャワーヘッドに収納される水処理カートリッジに用いられる公知の材料を採用できる。具体的には、例えば、ポリプロピレン、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ABS、ASA、PMP等の耐熱性の樹脂等が挙げられる。
【0025】
カートリッジ本体102の製造方法は、特に限定されず、射出成形等の公知の成形方法等を採用できる。
【0026】
カートリッジ本体102内には、筒状のスペーサー部材106が設けられている。スペーサー部材106は、
図6に示すように、一対の板状の第1平面部150a及び第2平面部150bと、一対の板状の第1湾曲部152a及び第2湾曲部152bとを備えている。第1平面部150aと第2平面部150bとは、互いの面が対向するように平行して配置されている。第1湾曲部152aは、第1平面部150a及び第2平面部150bの一方の端部同士を繋ぐように設けられ、平面視で外側に円弧状に突き出るように湾曲している。第2湾曲部152bは、第1平面部150a及び第2平面部150bの他方の端部同士を繋ぐように設けられ、平面視で外側に円弧状に突き出るように湾曲している。
【0027】
スペーサー部材106を筒の長さ方向の第1端面106a側から見た平面視形状は、長方形の両側の短辺が外側に円弧状に突き出た形状になっている。第1湾曲部152aと第2湾曲部152bの第1端面106a側から見た円弧形状は、カートリッジ本体102の第1突出部120と第2突出部122の円環形状の一部と一致するようになっている。
【0028】
図3〜5に示すように、スペーサー部材106は、カートリッジ本体102内においてスペーサー部材106の筒の長さ方向が第1板部112から第2板部114に向かう方向に沿うように設けられる。カートリッジ本体102内では、スペーサー部材106の第1板部112側の第1端面106aにおける第1湾曲部152aと第2湾曲部152bの部分が、第1板部112の内壁面112aから立ち上がる第1突出部120の当接面120aに当接している。また、スペーサー部材106の第2板部114側の第2端面106bにおける第1湾曲部152aと第2湾曲部152bの部分が、第2板部114の内壁面114aから立ち上がる第2突出部122の当接面122aに当接している。これにより、カートリッジ本体102内でスペーサー部材106が安定して保持されている。
この例では、カートリッジ本体102内で、胴部110の周回りにスペーサー部材106を回転させることができるようになっている。
【0029】
スペーサー部材106が設けられることで、カートリッジ本体102の内部には、胴部110においてスペーサー部材106の内側の第1流路154と、スペーサー部材106の外側の第2流路156とが形成される。カートリッジ本体102における胴部110の内壁面110aとスペーサー部材106の第1平面部150aとの間の空間と、内壁面110aとスペーサー部材106の第2平面部150bとの間の空間とが第2流路156となる。
【0030】
スペーサー部材106の内側の第1流路154には、浄化剤104が充填されている。一方、スペーサー部材106の外側の第2流路156は、浄化剤104が充填されていない。このように、水処理カートリッジ100においては、カートリッジ本体102内に、浄化剤104が充填された第1流路154と、浄化剤104が存在しない第2流路156とが形成されている。カートリッジ本体102内でスペーサー部材106が胴部110の周回りに回転すると、第1流路154と第2流路156の位置もそれにともなって回転する。
【0031】
本発明の水処理カートリッジでは、この例のように、カートリッジ本体内にスペーサー部材を設けて第1流路と第2流路を形成することが好ましい。これにより、既存のカートリッジ本体を流用して、カートリッジ本体内に第1流路と第2流路とを容易に形成することができる。また、スペーサー部材の内側に浄化剤を充填して第1流路とすることで、カートリッジ本体内で浄化剤が偏在することを抑制しやすい。また、スペーサー部材の形状は上述の形状に限定されず、例えば、円筒状、四角筒状、三角筒状であってもよい。
【0032】
第1流路154の断面積S1と第2流路156の断面積S2との合計に対する、第1流路154の断面積S1の割合は、60〜95%が好ましく、65〜90%がより好ましく、70〜85%がさらに好ましい。前記割合が前記範囲内であれば、圧力損失を低減しつつ、充分な浄化効果を維持することが容易になる。
なお、第1流路154の断面積S1とは、水処理カートリッジ100がシャワーヘッド内に収納されるときの第1流路154における最も一次側において、第1流路154を一次側から二次側に向かう方向に対して垂直な方向に切断した断面の面積を意味する。同様に、第2流路156の断面積S2とは、水処理カートリッジ100がシャワーヘッド内に収納されるときの第2流路156における最も一次側において、第2流路156を一次側から二次側に向かう方向に対して垂直な方向に切断した断面の面積を意味する。例えば、この例の水処理カートリッジ100を第1板部112が一次側となるようにシャワーヘッド内に収容する場合、第1流路154の断面積S1は、スペーサー部材106における第1端面106a側の開口面積である。また、第2流路156の断面積S2は、第1突出部120の内側の縁で形成される円の面積から、スペーサー部材106の第1端面106aの外側の縁で形成される円の面積を差し引いた面積である。
【0033】
第1流路の断面積と第2流路の断面積との合計に対する、第1流路の断面積の割合は、シャワーヘッド内に水処理カートリッジが収納されたときの一次側から二次側に向かう方向におけるどの位置においても、60〜95%の範囲を満たしていることが好ましい。この例の水処理カートリッジ100では、カートリッジ本体102の胴部110が円筒状であり、スペーサー部材106が筒の長さ方向における形状が同じ筒状である。そのため、水処理カートリッジ100では、第1流路の断面積と第2流路の断面積との合計に対する、第1流路の断面積の割合が、シャワーヘッド内に収納されたときの一次側から二次側に向かう方向におけるすべての位置で同じになっている。
【0034】
この例では、カートリッジ本体102の第1板部112の内壁面112aを第1板部112側から見たときに、第1板部112の内壁面112aにおける第2流路156に対応する領域に4つの開口116が形成されている。カートリッジ本体102内でスペーサー部材106が胴部110の周回りに回転しても、第1板部112の内壁面112aにおける第2流路156に対応する領域には、常に開口116が2個以上形成されることが好ましく、4〜12個形成されることがより好ましい。これにより、圧力損失を低減し、浄化効果を安定して維持する効果が充分に得られやすくなる。
【0035】
この例では、
図3〜5に示すように、浄化剤104は、不織布からなる袋体108内に収納された状態で、スペーサー部材106の内側、すなわち第1流路154に充填されている。本発明では、このように、浄化剤は不織布からなる袋体108内に収納された状態で第1流路に充填されていることが好ましい。これにより、第1流路に充填した浄化剤が第1流路から過度に流出し、予期せず第2流路に浄化剤が流入することを抑制しやすい。また、第1流路内で浄化剤が偏ることを抑制しやすい。
【0036】
袋体108を形成する不織布の材質としては、特に限定されず、水処理カートリッジに通常使用されるものを使用でき、例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン等が挙げられる。不織布の材質は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0037】
浄化剤104としては、脱塩素剤が好ましい。脱塩素剤としては、特に限定されず、例えば、亜硫酸カルシウム、アスコルビン酸、活性炭等が挙げられる。なかでも、脱塩素剤としては、塩素除去性能及び取扱い性の点から、亜硫酸カルシウムが特に好ましい。脱塩素剤としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
なお、浄化剤104は、脱塩素剤には限定されず、例えば、軟水化処理材であってもよい。軟水化処理剤としては、イオン交換樹脂、イオン交換繊維、キレート繊維等が挙げられる。陽イオン交換樹脂としては、例えば、スルホン酸基等の強酸基を有する強酸性陽イオン交換樹脂、カルボキシ基等の弱酸基を有する弱酸性陽イオン交換樹脂等が挙げられる。軟水化処理剤としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
浄化剤には、公知の機能付加材を含有させてもよい。機能付加材としては、例えば、臭気除去剤(ジビニルベンセン系ポリマー等)、保湿剤(植物エキス、ヒアルロン酸、コラーゲン等)、清涼剤(メントール、ミョウバン等)、芳香剤(ローズウッド、ジャスミン、ラベンダー等)等が挙げられる。機能付加材としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
水処理カートリッジ内の浄化剤の充填量は、10〜20gが好ましく、12〜16gがより好ましい。浄化剤の充填量が下限値以上であれば、充分な浄化効果が得られやすい。浄化剤の充填量が上限値以下であれば、水処理カートリッジのコンパクト化が容易になる。
【0041】
以上説明したように、本発明の水処理カートリッジにおいては、カートリッジ本体内に、浄化剤が充填された第1流路と、浄化剤が存在しない第2流路とが形成されている。浄化剤が充填された第1流路と浄化剤の存在しない第2流路が形成されることで、圧力損失を低減し、浄化効果を安定して維持することができる。また、本発明では、第2流路(バイパス流路)をカートリッジ本体内に形成するため、カートリッジ本体の外側を特殊な形状にする必要がなく外形の自由度が高いことから、水処理カートリッジのデザイン性は損なわれない。また、バイパス流路を形成するための特殊な構造を有しないシャワーヘッドであっても、圧力損失を充分に低減でき、浄化効果を安定して維持することができる。
【0042】
なお、本発明の水処理カートリッジは、前記した水処理カートリッジ100には限定されない。例えば、カートリッジ本体の胴部は、円筒状には限定されず、シャワーヘッドにおける水処理カートリッジの収納部の形状に応じて適宜設定すればよく、四角筒状等であってもよい。
本発明の水処理カートリッジは、スペーサー部材がカートリッジ本体内に一体的に形成されたものであってもよい。また、本発明の水処理カートリッジは、シャワーヘッドのグリップ部に収納されるものであってもよい。
【0043】
[シャワーヘッド]
本発明のシャワーヘッドは、本発明の水処理カートリッジが収納されたシャワーヘッドである。本発明のシャワーヘッドは、本発明の水処理カートリッジが収納されている以外は、公知の態様を採用できる。
以下、本発明のシャワーヘッドの一例として、前記した水処理カートリッジ100が収納されたシャワーヘッドを示して説明する。
【0044】
本実施形態のシャワーヘッド1は、
図7に示すように、シャワーヘッド本体10と、シャワーキャップ12と、水処理カートリッジ100と、パッキン16と、を備えている。
【0045】
シャワーヘッド本体10は、グリップ18と、グリップ18の先端に設けられたヘッド部20とを備えている。
グリップ18としては、特に限定されず、把持可能な筒状で、下端部をシャワーホース等と接続できるようになっているものが挙げられる。
【0046】
ヘッド部20は、正面視形状が円形状で、グリップ18に対して正面側に突き出るように設けられている。ヘッド部20の内部には、グリップ18内の流路18aと連通する空洞部分からなる、水処理カートリッジ100を収納する収納部22が形成されている。
【0047】
ヘッド部20内の収納部22よりも背面側には、収納部22に収納された水処理カートリッジ100に当接して支持する板状の支持部24が複数設けられている。複数の支持部24は、ヘッド部20を正面視したときの内周壁沿いに中心に向かって突出するように、内周壁に沿って間隔を空けて設けられている。収納部22に水処理カートリッジ100が収納された状態では、支持部24におけるヘッド部20の正面側の先端部が水処理カートリッジ100に当接するようになっている。
なお、支持部の形状は、板状には限定されない。また、支持部の数は、特に限定されず、適宜決定することができる。例えば、ヘッド部20内の収納部22よりも背面側において、ヘッド部20を正面視したときの内周壁沿いに全周にわたって連続して形成された1つの支持部が設けられていてもよい。
【0048】
ヘッド部20における正面側の先端部28は、円筒状の第1周壁部30と、第1周壁部30を囲う円筒状の第2周壁部32とからなり、全周にわたって二重構造となっている。すなわち、ヘッド部20の先端部28は、ヘッド部20を正面視したときに、内側から第1周壁部30と第2周壁部32がこの順に設けられた二重構造になっている。第1周壁部30と第2周壁部32とは互いに離間して設けられ、それらの間に隙間が形成されている。
【0049】
内側の第1周壁部30の外壁面には、周方向に延びる複数の凸条34が部分的に設けられている。また、第1周壁部30の外壁面における凸条34よりも先端側には、全周にわたって溝36が設けられている。溝36には、Oリング38が装着されている。
【0050】
シャワーキャップ12は、円筒状の側壁部40と、側壁部40の先端開口部を閉じるように設けられた円板状の散水板42とを備えている。側壁部40における散水板42と反対側の後端側部分における内壁面には、ヘッド部20の第1周壁部30に設けられた複数の凸条34にそれぞれ対応する複数の凹部44が部分的に設けられている。側壁部40の内壁面を正面視したときの凹部44の形状は、側壁部40における散水板42と反対側の縁から散水板42に向かって延び、さらに周方向に垂直に屈曲した形状になっている。
【0051】
側壁部40における散水板42と反対側の後端側部分は、シャワーキャップ12がヘッド部20の正面側に装着される際に、ヘッド部20の第1周壁部30と第2周壁部32の間に挿入される。このとき、ヘッド部20の第1周壁部30に設けられた凸条34が凹部44に嵌まるように側壁部40の後端側部分を第1周壁部30と第2周壁部32の間に挿入する。そして、シャワーキャップ12を周方向に回転させ、凸条34を凹部44における周方向に延びる部分の奥側へと移動させる。このように凸条34が凹部44に嵌まり込むことで、シャワーキャップ12がヘッド部20に装着された状態でロックされる。
また、この状態では、シャワーキャップ12の側壁部40とヘッド部20の第1周壁部30との間がOリング38によって水密に封じられる。
【0052】
本発明では、シャワーキャップのヘッド部への装着構造は、この例のようなバヨネット式であることが好ましい。シャワーキャップの装着構造がバヨネット式であれば、螺合による装着に比べてシャワーキャップの装着及び取り外しが容易になる。そのため、カートリッジ交換の際に手に石鹸やシャンプー等が付着していても、容易にシャワーキャップを取り外してカートリッジ交換を行うことができる。
【0053】
散水板42には、複数の散水孔42aが形成されている。散水板42における散水孔42aの数は特に限定されず、適宜決定できる。また、散水板42における散水孔42aの分布パターンも特に限定されず、公知のパターンを採用できる。
【0054】
シャワーヘッド本体10及びシャワーキャップ12の材質としては、特に限定されず、シャワーヘッドに用いられる公知の材質を採用できる。具体的には、例えば、ポリプロピレン、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、ABS、ASA、PMP等の軟化点が80℃以上の耐熱性の樹脂や、ステンレス等の金属等が挙げられる。
シャワーヘッド本体10及びシャワーキャップ12の製造方法は、特に限定されず、公知の成形方法等を採用できる。
【0055】
この例では、ヘッド部20内の収納部22に、第1板部112が一次側に向くように水処理カートリッジ100が収納されている。また、この状態では、ヘッド部20内に設けられた支持部24の先端部が段差127に嵌まるように水処理カートリッジ100に当接されることで、水処理カートリッジ100が支持されている。
本発明では、このように、水処理カートリッジにおけるヘッド部内で一次側に向けられる側の外面に段差を設け、前記ヘッド部内に設けた支持部を該段差に当接させて水処理カートリッジを支持するようにすることが好ましい。これにより、ヘッド部内で水処理カートリッジが安定して保持される。
【0056】
この例の水処理カートリッジ100では、第2板部114が一次側に向くように水処理カートリッジ100をヘッド部20内に収納した場合でも、支持部24が段差128に嵌まるように当接することで、水処理カートリッジ100が安定して保持される。
【0057】
パッキン16は、環状で、内側に平面部が形成されたパッキンである。パッキン16は、ヘッド部20内における水処理カートリッジ100の一次側と二次側を水密に隔離する役割を果たす。
この例のパッキン16は、円環状で、円環に垂直な断面形状が五角形状になっている。このように、パッキン16は、5つの平面部を有し、そのうちの内側の2つの平面部16a,16bが断面においてV字状に突き出すように形成されているV型パッキンである。なお、パッキンの断面形状は、内側に平面部が形成されたものであれば、五角形状には限定されず、例えば、四角形状や六角形状等であってもよい。
【0058】
パッキン16は、この例では、シャワーキャップ12側の平面部分が、シャワーキャップ12における散水板42の周縁に形成されたフランジ部に密着するように固定されている。また、水処理カートリッジ100がヘッド部20内に収納された状態でシャワーキャップ12が装着されたときには、パッキン16は、その内側における背面側の平面部16aが水処理カートリッジ100における胴部110の第2板部114寄りに密着するように、全周にわたって圧着される。これにより、ヘッド部20内における水処理カートリッジ100の一次側と二次側とが水密に隔離され、ヘッド部20内で原水が水処理カートリッジ100の外側を通って散水板42側に回り込むことが防止される。
この例では、パッキン16における背面側の平面部にヘッド部20の第1周壁部30の先端部がめり込むように圧着されている。そのため、ヘッド部20とシャワーキャップ12の隙間から水が漏れることがより安定して抑制されている。
【0059】
このように、シャワーヘッド1においては、グリップ18の流路18aを通じてヘッド部20内まで流入してきた原水の全量が水処理カートリッジ100内に流入する。第1板部112に形成された開口116からカートリッジ本体102内に流入した原水は、カートリッジ本体102内において第1流路154と第2流路156に分かれる。第1流路154においては浄化剤104で原水が浄化されて第2板部114側へと到達する。一方、第2流路156には浄化剤104が存在しないため、原水がそのまま第2板部114側へと到達する。そして、第1流路154と第2流路156のそれぞれを通過してきた水が第2板部114に形成された開口118から水処理カートリッジ100の外側に流出し、散水板42の散水孔42aからシャワー状に散水される。
【0060】
本発明では、水処理カートリッジ内に第2流路(バイパス流路)を形成するため、この例のように、シャワーヘッド内に流入してきた原水の全量が水処理カートリッジの内部を通過するように、水処理カートリッジがシャワーヘッド内に収納されることが好ましい。これにより、浄化剤による充分な浄化効果を得ることが容易になる。また、本発明の水処理カートリッジと、第2流路(バイパス流路)がない従来の水処理カートリッジを併用できるようにすることで、バイパス流路を形成するか否かを水処理カートリッジの選択により簡便に選ぶことができる。
【0061】
シャワーヘッド1においては、水処理カートリッジ100がシャワーヘッド本体10のヘッド部20内に収納されているため、シャワーキャップ12を取り外すことでカートリッジ交換やメンテナンスを容易に行うことができる。
【0062】
以上説明した本発明のシャワーヘッドは、本発明の水処理カートリッジを備えるため、バイパス流路を形成するための特殊な構造を有しなくても圧力損失が充分に低減され、浄化効果を安定して維持される。
なお、本発明のシャワーヘッドは、前記したシャワーヘッド1には限定されない。例えば、ヘッド部20内の背面側の内壁面を正面視したときの中心部から正面に向かって突出する支柱を設け、該支柱の先端部が水処理カートリッジ100の窪部115に嵌まり込んで水処理カートリッジ100を支持するようにしてもよい。
また、シャワーヘッド1におけるパッキン16の代わりにOリングを用いたシャワーヘッドであってもよい。
【実施例】
【0063】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[実施例1]
図1〜5に例示した水処理カートリッジ100を用い、浄化剤104として亜硫酸カルシウム(製品名「亜硫酸カルシウム(細粒)」、富田製薬社製)12gを不織布からなる袋体内に収納した状態でスペーサー部材106の内側に充填し、カートリッジ本体102内に、浄化剤104が充填された第1流路154と、浄化剤104が存在しない第2流路156とを形成した。この水処理カートリッジ100を、
図7に示すように、第1板部112がヘッド部20の背面側、第2板部114が散水板42側を向くようにヘッド部20の収納部22に収納してシャワーヘッド1を得た。
【0064】
[比較例1]
カートリッジ本体102内にスペーサー部材106を設けずに浄化剤104を収納した以外は、実施例1と同様にしてシャワーヘッドを得た。
【0065】
[遊離残留塩素低減能力試験]
各例のシャワーヘッドについて、流量を8L/分に一定にして通水を行い、遊離残留塩素除去率(JWPAS J.210)を測定した。遊離残留塩素除去率は、通水後の水中に含まれる遊離残留塩素濃度をDPD吸光光度法にて測定して算出した。原水としては、遊離残留塩素濃度1±0.1mg/L、水温40±3℃に調整した水を用いた。実施例1については、同じ試験を合計3回、比較例1については同じ合計2回実施した。結果を
図8に示す。
【0066】
図8に示す通り、通過水中の遊離残留塩素が0.5mg/Lを超えるまでの積算流量は、比較例1が1,600L程度であったのに対し、実施例1では3,000Lを超えており、脱塩効果がより安定して維持された。