(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも、タッチペンが接触する書き味向上層と、カラーフィルタを有する表示体モジュールと、前記書き味向上層および前記表示体モジュールの間における任意の位置に設けられた光拡散層とを備え、
前記書き味向上層から前記光拡散層までのトータルヘイズが、12%以上、45%以下であり、
前記光拡散層と前記カラーフィルタとの距離が、4mm以下である
ことを特徴とする位置検出機能付き画像表示装置。
前記書き味向上層のタッチペンが接触する表面に対し、ペン先直径0.5mmのハードフェルト芯のタッチペンのペン先を荷重3.92Nの加圧条件で垂直方向に接触させ、前記書き味向上層の表面と平行な任意の一方向に速度100mm/分で移動させながらペン先抵抗力を測定し、得られた移動距離−ペン先抵抗力のチャートをフーリエ変換し、変換して得られた周波数−振幅チャートから取得される、周波数1〜2Hzの範囲における振幅の平均値が、1.0以上、10以下であり、前記振幅のピーク数が、4以上、30以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の位置検出機能付き画像表示装置。
前記書き味向上層が、硬化性成分と、微粒子とを含有するコーティング組成物を硬化させてなる層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の位置検出機能付き画像表示装置。
前記光拡散層が、粘着成分と、光拡散微粒子とを含有する粘着性組成物から形成される層であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の位置検出機能付き画像表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の一実施形態に係る位置検出機能付き画像表示装置(以下「タッチパネル」という場合がある。)は、少なくとも、タッチペンが接触する書き味向上層と、カラーフィルタを有する表示体モジュールと、上記書き味向上層および上記表示体モジュールの間における任意の位置に設けられた光拡散層とを備える。以下に、具体例を示しつつ説明する。
【0018】
〔第1の実施形態〕
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係るタッチパネル1Aは、タッチペンが接触する書き味向上層10と、書き味向上層10のタッチペンが接触しない側(
図1中、下側)に位置し、書き味向上層10が形成された基材フィルム21と、基材フィルム21を貼合するための第1の粘着剤層22aと、第1の粘着剤層22aを介して上記基材フィルム21が貼合されたカバー材23と、カバー材23を貼合するための第2の粘着剤層22bと、第2の粘着剤層22bを介してカバー材23に貼合された第1のタッチセンサー24aと、第1のタッチセンサー24aを貼合するための第3の粘着剤層22cと、第3の粘着剤層22cを介して第1のタッチセンサー24aに貼合された第2のタッチセンサー24bと、第2のタッチセンサー24bを貼合するための粘着性を有する光拡散層30と、光拡散層30を介して第2のタッチセンサー24bが貼合された表示体モジュール4とを備えて構成される。
【0019】
表示体モジュール4としては、カラーフィルタを有するものであれば、特に限定されず、通常は、液晶(LCD)モジュール、発光ダイオード(LED)モジュール、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)モジュール等が使用される。
図1には、一例として、液晶モジュールが示される。本実施形態における表示体モジュール4は、上記光拡散層30に隣接する第1のガラス基板41aと、第1のガラス基板41aの下側に位置するモジュール粘着剤層42と、モジュール粘着剤層42の下側に位置する第1の偏光板43aと、第1の偏光板43aの下側に位置する第2のガラス基板41bと、第2のガラス基板41bの下側に位置するカラーフィルタ44と、カラーフィルタ44の下側に位置する液晶層45と、液晶層45の下側に位置する第3のガラス基板41cと、第3のガラス基板41cの下側に位置する第2の偏光板43bと、第2の偏光板43bの下側に位置するバックライト47とを備えて構成される。
【0020】
1.物性
本実施形態に係るタッチパネル1Aにおいては、書き味向上層10から光拡散層30までのトータルヘイズが、12%以上、45%以下である。上記トータルヘイズが12%以上であることにより、タッチパネルにおけるギラツキを抑制することができる。また、上記トータルヘイズが45%以下であることにより、表示画像の白茶けやボヤケを抑制することができ、表示画像の視認性を良好に維持することができる。なお、本実施形態に係るタッチパネル1Aにおける書き味向上層10から光拡散層30までのトータルヘイズは、書き味向上層10、基材フィルム21、第1の粘着剤層22a、カバー材23、第2の粘着剤層22b、第1のタッチセンサー24a、第3の粘着剤層22c、第2のタッチセンサー24b、および光拡散層30の積層体全体のヘイズ(内部ヘイズおよび外部ヘイズの合計)である。また、本明細書におけるヘイズは、JIS K7136:2000に準じて測定した値とする。
【0021】
ギラツキ抑制の観点から、上記トータルヘイズは、14%以上であることが好ましく、特に16%以上であることが好ましく、さらには18%以上であることが好ましい。また、表示画像の視認性の観点から、上記トータルヘイズは、42%以下であることが好ましく、特に40%以下であることが好ましく、さらには38%以下であることが好ましい。
【0022】
また、本実施形態に係るタッチパネル1Aにおいては、光拡散層30とカラーフィルタ44との距離が、4mm以下である。なお、光拡散層30とカラーフィルタ44との距離とは、光拡散層30におけるカラーフィルタ44側の面と、カラーフィルタ44における光拡散層30側の面との間の距離をいうものとする。上記距離が4mmを超えると、表示画像に白茶けやボヤケが発生し、表示画像の視認性が低下する。すなわち、上記距離が4mm以下であることにより、表示画像の視認性を良好に維持することができる。
【0023】
表示画像の視認性の観点から、上記距離は、3mm以下であることが好ましい。一方、上記距離の下限値は特に限定されないが、通常は0.005mm以上であり、好ましくは0.01mm以上である。
【0024】
なお、上記のトータルヘイズに関する物性および光拡散層30とカラーフィルタ44との距離に関する構成は、書き味向上層10によるタッチペンの書き味を損なうことがない。
【0025】
さらに、本実施形態に係るタッチパネル1Aにおいては、上記書き味向上層10のタッチペンが接触する表面に対し、ペン先直径0.5mmのハードフェルト芯のタッチペンのペン先を荷重3.92Nの加圧条件で垂直方向に接触させ、書き味向上層10の表面と平行な任意の一方向に速度100mm/分で移動させながらペン先抵抗力(mN)を測定し、得られた移動距離(mm)−ペン先抵抗力(mN)のチャートをフーリエ変換し、変換して得られた周波数(Hz)−振幅チャート(−)から取得される、周波数1〜2Hzの範囲における振幅の平均値が、1.0以上、10以下であることが好ましく、振幅のピーク数(振幅数)が、4以上、30以下であることが好ましい(このペン摺動試験による物性を、以下「書き味物性」という場合がある)。なお、フーリエ変換は、ソフトウエア(マイクロソフト社製,製品名「Excel」)を使用して行うものとする。振幅の平均値および振幅数が上記の範囲にあることにより、タッチペンによる書き味に、好ましい抵抗感・摩擦感が付与される。これらの感覚が相俟って、タッチペンの書き味が、鉛筆で紙に書くときの感覚に近くなり、優れたものとなる。
【0026】
周波数1〜2Hzの範囲における振幅について規定したのは、筆記する際の振動を、様々な周波数を有する複数の振動の重ね合わせとしてとらえたときに、特に「書き味」として人が認識する特徴的な振動が周波数1〜2Hzの範囲の振動であることを、本発明者らが経験的に見出したことによるものである。
【0027】
なお、タッチペンとしては、例えば、ペン先直径が0.1〜5mmのハードフェルト芯のタッチペンの他、ポリアセタール芯のタッチペンなどを使用することができ、いずれのタッチペンを使用しても、上記の効果が得られる。
【0028】
ここで、「ペン先抵抗力」とは、上記の条件でタッチペンを移動させた際に、ペン先にかかる抵抗力をいう。また、上記「ピーク数」は、周波数1〜2Hzの範囲における振幅1.5以上のピーク数をいう。
【0029】
タッチペンによる書き味の観点から、上記振幅の平均値は、特に1.5以上であることが好ましい。また、上記振幅の平均値は、特に4以下であることが好ましい。上記振幅数は、5以上であることがより好ましく、特に6以上であることが好ましく、さらには8以上であることが好ましい。また、上記振幅数は、特に20以下であることが好ましく、さらには15以下であることが好ましい。
【0030】
タッチペンによる書き味をより向上させる観点から、上記振幅の最大値(最大振幅値)は、1.3以上であることが好ましく、特に2.0以上であることが好ましく、さらには2.4以上であることが好ましい。また、上記振幅の最大値は、10以下であることが好ましく、特に8以下であることが好ましく、さらには5以下であることが好ましい。
【0031】
上記の移動距離(mm)−ペン先抵抗力(mN)のチャートの具体的な取得方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0032】
2.各部材
(1)書き味向上層
本実施形態における書き味向上層10は、基材フィルム21に直接タッチペンを使用した場合よりも、タッチペンの書き味を向上させた層である。書き味向上層10は、基材フィルム21の一方の面側に、コーティング組成物によって形成されたコート層であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0033】
(1−1)書き味向上層の材料
本実施形態に係るタッチパネル1Aの書き味向上層10は、基材フィルム21に直接タッチペンを使用した場合よりも、タッチペンの書き味を向上させることができ、かつ、光学特性が良好な材料からなれば、いかなる材料から形成されてもよいが、前述した書き味物性を満たす材料からなることが好ましい。本実施形態における書き味向上層10は、好ましくは、以下に説明するコーティング組成物Cを硬化させることにより形成される。コーティング組成物Cによれば、前述した書き味物性を満たす書き味向上層10を形成し易い。
【0034】
本実施形態におけるコーティング組成物Cは、硬化性成分と、微粒子とを含有することが好ましい。
【0035】
(1−1−1)硬化性成分
硬化性成分は、活性エネルギー線や熱等のトリガーによって硬化する成分であり、例えば、活性エネルギー線硬化性成分、熱硬化性成分等が挙げられる。本実施形態では、形成される書き味向上層10の硬度や、基材フィルム21の耐熱性等の観点から、活性エネルギー線硬化性成分を使用することが好ましい。
【0036】
活性エネルギー線硬化性成分としては、活性エネルギー線の照射により硬化して所定の硬度を発揮し、かつ微粒子との関係で前述した書き味物性を達成できるものが好ましい。
【0037】
具体的な活性エネルギー線硬化性成分としては、多官能性(メタ)アクリレート系モノマー、(メタ)アクリレート系プレポリマー、活性エネルギー線硬化性ポリマー等が挙げられるが、中でも多官能性(メタ)アクリレート系モノマーおよび/または(メタ)アクリレート系プレポリマーであることが好ましく、多官能性(メタ)アクリレート系モノマーであることがより好ましい。多官能性(メタ)アクリレート系モノマーおよび(メタ)アクリレート系プレポリマーは、それぞれ単独で使用してもよいし、両者を併用してもよい。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0038】
多官能性(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
一方、(メタ)アクリレート系プレポリマーとしては、例えば、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系等のプレポリマーが挙げられる。
【0040】
ポリエステルアクリレート系プレポリマーとしては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0041】
エポキシアクリレート系プレポリマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。
【0042】
ウレタンアクリレート系プレポリマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0043】
ポリオールアクリレート系プレポリマーは、例えば、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0044】
以上のプレポリマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
また、活性エネルギー線硬化性成分として、有機無機ハイブリッド樹脂を使用することも好ましい。有機無機ハイブリッド樹脂としては、シリカ微粒子に、シランカップリング剤などを介して、重合性不飽和基を有する有機化合物を結合させてなる物質が好ましく挙げられる。なお、有機無機ハイブリッド樹脂が含有するシリカ微粒子は、シリカゾルとしてバインダーの機能を有しており、後述する微粒子には含まれないものとする。
【0046】
有機無機ハイブリッド樹脂を使用すると、シリカゾルの作用により、前述した書き味物性が得られ易くなる。そのため、後述する微粒子として、球状の有機系微粒子を使用しても、当該書き味物性が得られ易く、それにより、形成される書き味向上層10の光学特性を良好なものにすることができる。
【0047】
(1−1−2)微粒子
微粒子は、無機系微粒子および有機系微粒子のいずれであってもよい。例えば、書き味向上層10に高い表面硬度を付与する観点からは、無機系微粒子が好ましく、書き味向上層10の光学特性をより高くする観点からは、有機系微粒子が好ましい。また、微粒子の形状は球状であってもよいし、非球状であってもよい。非球状である場合には、不定形であってもよいし、針状、鱗片状といったアスペクト比が高い形状であってもよい。ここでいう「不定形」とは、球状や楕円形状のような規則的な形状ではなく、不規則な多数の角部または面を有する形状をいう。なお、微粒子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
無機系微粒子としては、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化アンチモン、酸化セリウム等の金属酸化物;フッ化マグネシウム、フッ化ナトリウム等の金属フッ化物などからなる微粒子が挙げられる。上記の中でも、高い表面硬度を付与し、かつ光学特性への影響が少ない点からシリカおよび酸化アルミニウムが好ましく、特にシリカが好ましく、さらには不定形のシリカが好ましい。なお、無機系微粒子の表面は、有機化合物等によって化学修飾されていてもよい。
【0049】
有機系微粒子としては、例えば、シリコーン系微粒子、メラミン系樹脂微粒子、アクリル系樹脂微粒子(例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂微粒子等)、アクリル−スチレン系共重合体微粒子、ポリカーボネート系微粒子、ポリエチレン系微粒子、ポリスチレン系微粒子、ベンゾグアナミン系樹脂微粒子などが挙げられる。それらの樹脂は、架橋されていてもよい。上記の中でも、光学特性および硬度の観点から、アクリル系樹脂微粒子が好ましく、特にポリメチルメタクリレート樹脂微粒子が好ましく、さらには球状のポリメチルメタクリレート樹脂微粒子が好ましく、真球状の架橋ポリメチルメタクリレート樹脂微粒子が最も好ましい。
【0050】
本実施形態では、前述した書き味物性を得るために、平均粒径0.5μm以上、15μm以下の不定形微粒子か、平均粒径1.7μm以上、15μm以下の球状微粒子を使用することが好ましい。
【0051】
不定形微粒子の平均粒径は、0.5μm以上であることが好ましく、特に0.75μm以上であることが好ましく、さらには1.0μm以上であることが好ましい。また、不定形微粒子の平均粒径は、15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、特に6μm以下であることが好ましく、さらには3μm以下であることが好ましい。不定形微粒子の平均粒径が上記の範囲にあることにより、前述した書き味物性が得られ易い。なお、本明細書における微粒子の平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって測定した値とする。
【0052】
球状微粒子の平均粒径は、1.7μm以上であることが好ましく、特に2.0μm以上であることが好ましく、さらには2.5μm以上であることが好ましい。また、球状微粒子の平均粒径は、15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、特に7μm以下であることが好ましく、さらには5μm以下であることが好ましい。球状微粒子の平均粒径が上記の範囲にあることにより、前述した書き味物性が得られ易い。
【0053】
上記微粒子の粒度分布については、書き味向上層10が前述の書き味物性を形成する観点から、下記の式で示される粒径の変動係数(CV値)が、20%以上であることが好ましく、特に40%以上であることが好ましく、さらには70%以上であることが好ましい。また、同様の観点から、上記CV値は、200%以下であることが好ましく、特に175%以下であることが好ましく、さらには150%以下であることが好ましい。
粒径の変動係数(CV値)(%)=(標準偏差粒径/平均粒径)×100
なお、粒径の変動係数(CV値)は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製,製品名「LA−920」)によって測定した値とする。
【0054】
コーティング組成物C中における不定形微粒子の含有量は、3質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることが好ましく、特に5質量%以上であることが好ましく、さらには7質量%以上であることが好ましい。また、不定形微粒子の含有量は、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることが好ましく、特に30質量%以下であることが好ましく、さらには20質量%以下であることが好ましい。不定形微粒子の含有量が上記の範囲にあることにより、前述した書き味物性が得られ易い。
【0055】
コーティング組成物C中における球状微粒子の含有量は、3質量%以上であることが好ましく、特に4質量%以上であることが好ましく、さらには5質量%以上であることが好ましい。また、球状微粒子の含有量は、40質量%以下であることが好ましく、特に35質量%以下であることが好ましく、さらには30質量%以下であることが好ましい。球状微粒子の含有量が上記の範囲にあることにより、前述した書き味物性が得られ易い。
【0056】
(1−1−3)光重合開始剤
上記活性エネルギー線硬化性成分を硬化させるための活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、コーティング組成物Cは、光重合開始剤を含有することが好ましい。このように光重合開始剤を含有することにより、活性エネルギー線硬化性成分を効率良く重合させることができ、また重合硬化時間および紫外線の照射量を少なくすることができる。
【0057】
このような光重合開始剤としては、例えば、ベンソイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
コーティング組成物C中における光重合開始剤の含有量は、活性エネルギー線硬化性成分100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.1質量部以上であることが好ましく、さらには1質量部以上であることが好ましい。また、光重合開始剤の含有量は、20質量部以下であることが好ましく、特に10質量部以下であることが好ましく、さらには5質量部以下であることが好ましい。
【0059】
(1−1−4)その他の成分
コーティング組成物Cは、前述した成分以外に、各種添加剤を含有してもよい。各種添加剤としては、例えば、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、老化防止剤、熱重合禁止剤、着色剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、消泡剤、濡れ性改良剤、塗面改良剤等が挙げられる。
【0060】
(1−2)書き味向上層の厚さ
書き味向上層10の厚さは、下限値として、0.5μm以上であることが好ましく、0.7μm以上であることがより好ましく、特に1.0μm以上であることが好ましく、さらには1.3μm以上であることが好ましい。書き味向上層10の厚さの下限値が上記であることにより、前述した書き味物性が満たされ易くなるとともに、良好な耐擦傷性が得られる。また、書き味向上層10の厚さは、上限値として、20μm以下であることが好ましく、特に15μm以下であることが好ましく、さらには10μm以下であることが好ましい。書き味向上層10の厚さの上限値が上記であることにより、製造過程に起因する残留溶剤や気泡の混入が効果的に防止され、良好な書き味向上層10を得ることができるとともに、前述した書き味物性が満たされ易くなる。
【0061】
(2)基材フィルム
基材フィルム21としては、タッチペンが使用されるタッチパネル用として適したものから適宜選択すればよく、好ましくは書き味向上層10と親和性の良好なプラスチックフィルムを選択する。
【0062】
かかるプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルぺンテンフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリウレタン樹脂フィルム、ノルボルネン系重合体フィルム、環状オレフィン系重合体フィルム、環状共役ジエン系重合体フィルム、ビニル脂環式炭化水素重合体フィルム等のプラスチックフィルムまたはそれらの積層フィルムが挙げられる。中でも、前述した書き味向上層10との組み合わせにおいて、タッチペンの書き味を良好に維持することのできるポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン系重合体フィルム等が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0063】
また、上記基材フィルム21においては、その表面に設けられる層(書き味向上層10、後述する粘着剤層等)との密着性を向上させる目的で、所望により片面または両面に、プライマー処理、酸化法、凹凸化法等により表面処理を施すことができる。酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等が挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理法は基材フィルム21の種類に応じて適宜選ばれる。一例として、プライマー処理により易接着層を形成したプラスチックフィルム、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく用いられる。
【0064】
基材フィルム21の厚さは、15〜300μmであることが好ましく、特に30〜200μmであることが好ましく、さらには90〜150μmであることが好ましい。
【0065】
(3)粘着剤層
第1の粘着剤層22a、第2の粘着剤層22bおよび第3の粘着剤層22cは、それぞれ所望の粘着剤または粘着シートによって形成すればよい。これらの粘着剤層を構成する粘着剤としては、光学用途として通常使用されるものを使用することができ、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、所望の粘着性を発現し、光学特性や耐久性に優れたアクリル系粘着剤が好ましい。
【0066】
第1の粘着剤層22a、第2の粘着剤層22bおよび第3の粘着剤層22cの厚さは、それぞれ5〜1000μmであることが好ましく、特に7〜500μmであることが好ましく、さらには10〜250μmであることが好ましい。
【0067】
(4)カバー材
カバー材23は、タッチパネル1Aのタッチセンサー24a,24bや表示体モジュール4を保護するものであり、通常、ガラス板またはプラスチック板を主体として構成される。ガラス板としては、特に限定されることなく、例えば、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、アルミノケイ酸ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等が挙げられる。プラスチック板としては、特に限定されることなく、例えば、ポリメチルメタクリレート等からなるアクリル板、ポリカーボネート板などが挙げられる。
【0068】
なお、上記ガラス板やプラスチック板の片面または両面には、ハードコート層、反射防止層、防眩層等の機能層が設けられていてもよいし、ハードコートフィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム等の光学部材が積層されていてもよい。
【0069】
本実施形態において、上記カバー材23は、第2の粘着剤層22b側の面に、印刷層等による段差を有していてもよい(図示せず)。この印刷層は、平面視にて額縁状に形成されることが一般的である。
【0070】
カバー材23の厚さは、10〜3000μmであることが好ましく、特に25〜2000μmであることが好ましく、さらには50〜1500μmであることが好ましい。
【0071】
(5)タッチセンサー
第1のタッチセンサー24aおよび第2のタッチセンサー24bは、タッチパネル1Aにおいて、タッチ箇所の位置を検出する機能を担うものである。
【0072】
タッチセンサー24a,24bは、通常、透明フィルムと、パターニングされた透明導電膜とから構成されることが好ましいが、これに限定されるものではない。透明フィルムと透明導電膜との位置関係は特に限定されない。
【0073】
透明フィルムとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリプロピレンフィルム等が使用される。
【0074】
透明導電膜としては、例えば、白金、金、銀、銅等の金属、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化亜鉛、二酸化亜鉛等の酸化物、スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛ドープ酸化インジウム、フッ素ドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛等の複合酸化物、カルコゲナイド、六ホウ化ランタン、窒化チタン、炭化チタン等の非酸化化合物などからなるものが挙げられ、中でもスズドープ酸化インジウム(ITO)からなるものが好ましい。
【0075】
タッチセンサー24a,24bの厚さは、それぞれ10〜300μmであることが好ましく、特に15〜250μmであることが好ましく、さらには20〜200μmであることが好ましい。
【0076】
(6)光拡散層
本実施形態における光拡散層30は、第2のタッチセンサー24bと表示体モジュール4とを貼合するための粘着性を有するものであり、好ましくは光拡散性を有する粘着剤から構成される。かかる粘着性を有する光拡散層を「粘着性光拡散層」と称することもできる。
【0077】
(6−1)光拡散層の材料
光拡散層30は、粘着成分と光拡散微粒子とを含有する粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という。)から形成されることが好ましい。
【0078】
粘着成分としては、タッチパネル等において所望の粘着性を発揮し、光透過性を有し、上記光拡散微粒子による効果を阻害しないものであれば、特に限定されない。かかる粘着成分としては、例えば、アクリル系粘着成分、ゴム系粘着成分、シリコーン系粘着成分、ポリウレタン系粘着成分、ポリエステル系粘着成分等が挙げられるが、中でも上記の観点からアクリル系粘着成分が好ましい。
【0079】
アクリル系粘着成分としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を含有するものが好ましく、特に、架橋剤(B)によって架橋された(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が好ましい。なお、本明細書において、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
【0080】
(6−1−1)(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマーとして、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することが好ましい。これにより、得られる光拡散層30は、好ましい粘着性を発現することができる。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、架橋剤(B)と反応する官能基を有するモノマー(反応性官能基含有モノマー)と、所望により用いられる他のモノマーとの共重合体であることが特に好ましい。
【0081】
アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。中でも、粘着性をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数が1〜8の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルおよび(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが特に好ましい。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを30〜95質量%含有することが好ましく、特に40〜90質量%含有することが好ましく、さらには50〜85質量%含有することが好ましい。
【0083】
上記反応性官能基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシル基を有するモノマー(カルボキシル基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましく挙げられる。
【0084】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)における水酸基の架橋剤(B)との反応性および他の単量体との共重合性の点から(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルアミノエチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成するモノマーとして反応性官能基含有モノマーを含有する場合、その含有量は、5〜35質量%であることが好ましく、特に10〜30質量%であることが好ましく、さらには20〜25質量%であることが好ましい。
【0088】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。他のモノマーとしては、反応性を有する官能基を含まないモノマーが好ましい。かかる他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0090】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は10万〜200万であることが好ましく、特に20万〜130万であることが好ましく、さらには30万〜80万であることが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0091】
粘着性組成物Pにおいて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
(6−1−2)架橋剤(B)
粘着性組成物Pの粘着成分が、重合体を構成するモノマー単位として反応性官能基含有モノマーを含む(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)とを含有する場合、当該粘着性組成物Pを加熱等すると、架橋剤(B)は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成する反応性官能基含有モノマーの反応性官能基と反応する。これにより、架橋剤(B)によって(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が架橋された構造が形成され、光拡散層30の強度や耐久性が向上する。
【0093】
架橋剤(B)としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性官能基と反応するものであればよく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。上記の中でも、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性官能基が水酸基の場合、水酸基との反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性官能基がカルボキシル基の場合、カルボキシル基との反応性に優れたエポキシ系架橋剤を使用することが好ましい。なお、架橋剤(B)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0094】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートおよびトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0095】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が挙げられる。
【0096】
粘着性組成物P中における架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.001〜10質量部であることが好ましく、特に0.01〜5質量部であることが好ましく、さらには0.02〜1質量部であることが好ましい。
【0097】
(6−1−3)光拡散微粒子
光拡散微粒子としては、前述したトータルヘイズを上記の範囲にすることができるものであればよく、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク、二酸化チタン等の無機系微粒子;ポリメタクリル酸メチル樹脂等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリル酸メチル−ポリスチレン共重合体、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂等の有機系の透光性微粒子;シリコーン樹脂のような、無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子(例えばモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製のトスパールシリーズ)などが挙げられる。中でも、アクリル樹脂微粒子、ポリメタクリル酸メチル−ポリスチレン共重合体微粒子、および無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子は、上記粘着成分に対する分散性が優れ、均一な光学特性が得られることから好ましい。以上の光拡散微粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
光拡散微粒子の形状としては、光拡散が均一な球状、特に真球状の微粒子が好ましい。光拡散微粒子のレーザー回折法による平均粒径は、0.1μm以上であることが好ましく、特に1μm以上であることが好ましく、さらには2μm以上であることが好ましい。また、上記平均粒径は、20μm以下であることが好ましく、特に10μm以下であることが好ましく、さらには8μm以下であることが好ましい。平均粒径が上記の範囲内にあることで、光拡散層30の光透過性を妨げることなく、トータルヘイズ値を前述した範囲にし易くすることができる。
【0099】
なお、上記レーザー回折法による平均粒径は、微粒子1.2gとイソプロピルアルコール98.8gとを十分に撹拌したものを測定用試料とし、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって測定した値である。
【0100】
粘着性組成物Pが粘着成分として(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を含有する場合、光拡散微粒子の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.1質量部以上であることが好ましい。また、光拡散微粒子の含有量は、15質量部以下であることが好ましく、特に10質量部以下であることが好ましく、さらには5質量部以下であることが好ましい。光拡散微粒子の含有量が上記の範囲内にあることで、光拡散層30の光透過性を妨げることなく、トータルヘイズ値を前述した範囲にし易くすることができる。また、光拡散層30に隣接する他の部材に対して粘着性を十分に発揮し易くなり、不要意に剥れてしまうといった不具合の発生を防止することができる。なお、粘着成分がアクリル系粘着成分以外の場合でも、光拡散微粒子の含有量は、粘着成分100質量部に対して上記の範囲であることが好ましい。
【0101】
(6−1−4)各種添加剤
粘着性組成物Pは、所望により、各種添加剤、例えばシランカップリング剤、屈折率調整剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤等を含有してもよい。
【0102】
(6−2)粘着性組成物の製造
粘着性組成物Pは、粘着成分と、光拡散微粒子と、所望により添加剤とを混合することにより製造することができる。粘着成分が(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を含有する場合には、先に(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製し、所望により架橋剤(B)を配合する。
【0103】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、重合体を構成するモノマー単位の混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法等により行うことができる。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0104】
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2'−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等が挙げられる。
【0105】
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0106】
なお、上記重合工程において、2−メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
【0107】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の溶液に、光拡散微粒子、および所望により架橋剤(B)、添加剤を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された粘着性組成物P(塗布液)を得る。
【0108】
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0109】
このようにして調製された塗布液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物Pの濃度が10〜40質量%となるように希釈する。なお、塗布液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物Pがコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。
【0110】
(6−3)光拡散層の厚さ
光拡散層30の厚さ(JIS K7130に準じて測定した値)は、下限値として、5μm以上であることが好ましく、特に7.5μm以上であることが好ましく、さらには10μm以上であることが好ましい。また、上限値として、500μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましく、特に100μm以下であることが好ましく、さらには50μm以下であることが好ましい。光拡散層30の厚さの下限値が上記であることにより、所望の粘着性と光学特性とを両立することができる。一方、光拡散層30の厚さの上限値が上記であることにより、得られるタッチパネル1Aが不要に厚くなることを抑制することができる。なお、光拡散層30は単層で形成してもよいし、複数層を積層して形成することもできる。
【0111】
(7)表示体モジュール
本実施形態における表示体モジュール4は、一例として前述した構成を有する液晶モジュールである。表示体モジュール4、または表示体モジュール4を構成する各部材、すなわち、第1のガラス基板41a、モジュール粘着剤層42、第1の偏光板43a、第2のガラス基板41b、カラーフィルタ44、液晶層45、第3のガラス基板41c、第2の偏光板43b、およびバックライト47は、公知のものを使用することができる。
【0112】
前述した通り、本実施形態に係るタッチパネル1Aにおいては、光拡散層30とカラーフィルタ44との距離が4mm以下である。上記表示体モジュール4を使用した場合、当該距離は、第1のガラス基板41a、モジュール粘着剤層42、第1の偏光板43aおよび第2のガラス基板41bの合計厚さとなる。第1のガラス基板41aおよび第2のガラス基板41bの厚さは、通常、それぞれ0.1〜3000μmであり、好ましくは0.3〜1500μmである。モジュール粘着剤層42の厚さは、通常、1〜1000μmであり、好ましくは5〜750μmである。第1の偏光板43aの厚さは、通常、1〜1000μmであり、好ましくは3〜750μmである。光拡散層30とカラーフィルタ44との距離が4mm以下になるように、上記各部材の厚さを適宜選定する。
【0113】
3.タッチパネルの製造方法
本実施形態に係るタッチパネル1Aは、常法によって製造することができるが、好ましい製造方法の一例について説明する。
【0114】
(1)書き味向上層の形成
基材フィルム21上に書き味向上層10を形成する。具体的には、書き味向上層10用のコーティング組成物、好ましくはコーティング組成物Cと、所望により溶剤とを含有する塗布液を基材フィルム21に対して塗布し、硬化させて書き味向上層10を形成する。
【0115】
溶剤は、塗工性の改良、粘度調整、固形分濃度の調整等のために使用することができ、硬化性成分等が溶解し、微粒子等が分散するものであれば、特に限定なく使用できる。
【0116】
溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソロブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソロブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソロブ)、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類などが挙げられる。
【0117】
コーティング組成物の塗布液の塗布は、常法によって行えばよく、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法によって行えばよい。コーティング組成物の塗布液を塗布したら、塗膜を40〜120℃で30秒〜5分程度乾燥させることが好ましい。
【0118】
コーティング組成物Cのようにコーティング組成物が活性エネルギー線硬化性の場合、コーティング組成物の硬化は、コーティング組成物の塗膜に対して紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射することによって行う。紫外線照射は、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプ等によって行うことができ、紫外線の照射量は、照度50〜1000mW/cm
2、光量50〜1000mJ/cm
2程度が好ましい。一方、電子線照射は、電子線加速器等によって行うことができ、電子線の照射量は、10〜1000krad程度が好ましい。
【0119】
(2)光拡散層の形成
光拡散層30は、好ましくは剥離シートの剥離面(剥離性を有する面)上に形成し、光拡散層シートとする。本実施形態における光拡散層30は、好ましくは粘着性組成物Pから形成される。したがって、好ましくは、粘着性組成物Pと所望により溶剤とを含有する塗布液を、剥離シートの剥離面に塗布し、加熱処理を行って塗布層を形成する。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記塗布層が光拡散層30となり、光拡散層シートが得られる。なお、上記加熱処理は、粘着性組成物Pの溶剤等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
【0120】
粘着性組成物Pが(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を含有する場合、上記加熱処理の加熱温度は、50〜150℃であることが好ましく、特に70〜120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、30秒〜10分であることが好ましく、特に50秒〜2分であることが好ましい。加熱処理後、必要に応じて、常温(例えば、23℃、50%RH)で1〜2週間程度の養生期間を設けてもよい。この養生期間が必要な場合は、養生期間経過後、養生期間が不要な場合には、加熱処理終了後、光拡散層30が形成される。
【0121】
なお、粘着性組成物Pと混合する溶剤や粘着性組成物Pを含む塗布液の塗布方法は、書き味向上層10用のコーティング組成物の溶剤や塗布液の塗布方法と同様である。
【0122】
(3)粘着剤層の形成
第1の粘着剤層22a、第2の粘着剤層22bおよび第3の粘着剤層22cは、好ましくは剥離シートの剥離面上に形成し、粘着シートとする。例えば、各粘着剤層用の粘着性組成物と所望により溶剤とを含有する塗布液を、剥離シートの剥離面に塗布し、乾燥させて、粘着剤層を形成して粘着シートを得る。
【0123】
(4)各部材の積層
各部材の積層は、圧着ローラーを用いて手作業で行ってもよいし、ラミネーター装置を用いて自動で行ってもよい。各部材を積層する順序は特に限定されず、以下に示す方法はあくまでも一例である。
【0124】
最初に、第1の粘着剤層22aの粘着シートにおける当該第1の粘着剤層22aを、書き味向上層10が形成された基材フィルム21における当該書き味向上層10側とは反対側の面に積層する。そして、剥離シートを剥離して、露出した第1の粘着剤層22aをカバー材23に貼合する。
【0125】
一方、第3の粘着剤層22cの粘着シートにおける当該第3の粘着剤層22cを、第1のタッチセンサー24aに積層する。そして、第3の粘着剤層22cの粘着シートの剥離シートを剥離して、露出した第3の粘着剤層22cを第2のタッチセンサー24bに貼合する。次いで、第1のタッチセンサー24aにおける第3の粘着剤層22c側とは反対側の面に、第2の粘着剤層22bの粘着シートにおける当該第2の粘着剤層22bを貼合する。また、第2のタッチセンサー24bにおける第3の粘着剤層22c側とは反対側の面に、光拡散層シートの光拡散層30を貼合する。
【0126】
次に、第2の粘着剤層22bの粘着シートから剥離シートを剥離し、露出した第2の粘着剤層22bを、カバー材23における第1の粘着剤層22a側とは反対側に貼合する。最後に、光拡散層シートから剥離シートを剥離し、露出した光拡散層30を、表示体モジュール4の第1のガラス基板41aに貼合する。これにより、
図1に示されるタッチパネル1Aが製造される。
【0127】
以上説明したタッチパネル1Aは、タッチペンによる書き味に優れるとともに、ギラツキが抑制され、かつ、表示画像の視認性が良好である。
【0128】
〔第2の実施形態〕
前述した第1の実施形態に係るタッチパネル1Aでは、光拡散層30は、表示体モジュール4に隣接する位置に設けられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、書き味向上層10と表示体モジュール4との間における任意の位置に設けられてよい。
【0129】
例えば、
図2に示す第2の実施形態に係るタッチパネル1Bのように、光拡散層30が基材フィルム21とカバー材23との間に設けられていてもよい。この場合、第1の実施形態に係るタッチパネル1Aにおいて、第1の粘着剤層22aが光拡散層30に置き換わり、光拡散層30が存在していた位置には、第4の粘着剤層22dが設けられることとなる。第4の粘着剤層22dは、前述した第1の粘着剤層22a、第2の粘着剤層22bまたは第3の粘着剤層22cと同様の構成とすることができる。
【0130】
ここで、本実施形態に係るタッチパネル1Bにおいても、書き味向上層10から光拡散層30までのトータルヘイズ(本実施形態では、書き味向上層10、基材フィルム21および光拡散層30のトータルヘイズ)が、12%以上、45%以下であり、光拡散層30とカラーフィルタ44との距離が、4mm以下である必要がある。
【0131】
本実施形態に係るタッチパネル1Bにおける光拡散層30は、基本的には第1の実施形態に係るタッチパネル1Aの光拡散層30と同様の構成とすることが好ましい。ただし、粘着性組成物P中における光拡散微粒子は、シリコーン樹脂のような、有機と無機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる光拡散微粒子であることが好ましい。また、粘着性組成物P中における光拡散微粒子の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.1質量部以上であることが好ましく、さらには0.5質量部以上であることが好ましい。また、上記光拡散微粒子の含有量は、15質量部以下であることが好ましく、特に12質量部以下であることが好ましく、さらには10質量部以下であることが好ましい。光拡散微粒子の含有量が上記の範囲内にあることで、光拡散層30の光透過性を妨げることなく、トータルヘイズ値を前述した範囲にし易くすることができる。また、光拡散層30に隣接する他の部材に対して粘着性を十分に発揮し易くなり、不用意に剥れてしまうといった不具合の発生を防止することができる。
【0132】
本実施形態に係るタッチパネル1Bの製造は、基本的には第1の実施形態に係るタッチパネル1Aと同様にして行うことができる。光拡散層30の基材フィルム21への積層は、第1の実施形態に係るタッチパネル1Aと同様に、光拡散層シートを使用して行うことができる。
【0133】
また、タッチパネル中における光拡散層30の位置は、第1の実施形態に係るタッチパネル1Aおよび第2の実施形態に係るタッチパネル1Bの中における位置には限定されない。例えば、第1の実施形態に係るタッチパネル1Aにおける第2の粘着剤層22bまたは第3の粘着剤層22cが光拡散層に置き換わってもよい。この場合、第1の実施形態に係るタッチパネル1Aにおける光拡散層30は、第1〜第3の粘着剤層22a〜22cと同様の粘着剤層とすることができる。
【0134】
また、例えば、書き味向上層10に隣接するように、書き味向上層10と基材フィルム21との間に光拡散層30が設けられてもよい。かかるタッチパネルは、基本的には第1の実施形態に係るタッチパネル1Aと同様に製造することができるが、基材フィルム21上に光拡散層30を積層した後、その光拡散層30上に書き味向上層10を形成する点が異なる。光拡散層30の基材フィルム21への積層は、第1の実施形態に係るタッチパネル1Aと同様に、光拡散層シートを使用して行うことができる。書き味向上層10と基材フィルム21との間に光拡散層30が設けられる場合、光拡散層30は粘着性を有していなくてよい。この場合、例えば、書き味向上層10と同様に、活性エネルギー線硬化性成分、熱硬化性成分等の硬化性成分と微粒子とを含有するコーティング組成物を使用して光拡散層30を形成してもよい。
【0135】
〔第3の実施形態〕
前述した第1の実施形態に係るタッチパネル1Aでは、位置検出機能は、表示体モジュール4の外側に存在する第1のタッチセンサー24aおよび第2のタッチセンサー24bが担っているが、本発明はこれに限定されるものではなく、表示体モジュールが位置検出機能を有するものであってもよい。
【0136】
例えば、
図3に示す第3の実施形態に係るタッチパネル1Cのように、書き味向上層10と、書き味向上層10のタッチペンが接触しない側(
図3中、下側)に位置し、書き味向上層10が形成された基材フィルム21と、基材フィルム21を貼合するための粘着剤層22と、粘着剤層22を介して上記基材フィルム21が貼合されたカバー材23と、カバー材23を貼合するための粘着性を有する光拡散層30と、光拡散層30を介してカバー材23が貼合された、位置検出機能を有する表示体モジュール5とを備えて構成されてもよい。
【0137】
表示体モジュール5としては、カラーフィルタおよび位置検出機能(タッチセンサー)を有するものであれば、特に限定されず、通常は、液晶(LCD)モジュール、発光ダイオード(LED)モジュール、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)モジュール等が使用される。
図3には、一例として、液晶モジュールが示される。本実施形態における表示体モジュール5は、上記光拡散層30に隣接する第1のガラス基板51aと、第1のガラス基板51aの下側に位置する第1のモジュール粘着剤層52aと、第1のモジュール粘着剤層52aの下側に位置する第1の偏光板53aと、第1の偏光板53aの下側に位置する第2のガラス基板51bと、第2のガラス基板51bの下側に位置するカラーフィルタ54と、カラーフィルタ54の下側に位置する液晶層55と、液晶層55の下側に位置する第2のモジュール粘着剤層52bと、第2のモジュール粘着剤層52bの下側に位置する第1のタッチセンサー56aと、第1のタッチセンサー56aの下側に位置する第3のモジュール粘着剤層52cと、第3のモジュール粘着剤層52cの下側に位置する第2のタッチセンサー56bと、第2のタッチセンサー56bの下側に位置する第4のモジュール粘着剤層52dと、第4のモジュール粘着剤層52dの下側に位置する第3のガラス基板51cと、第3のガラス基板51cの下側に位置する第2の偏光板53bと、第2の偏光板53bの下側に位置するバックライト57とを備えて構成される。
【0138】
本実施形態に係るタッチパネル1Cの製造は、基本的には第1の実施形態に係るタッチパネル1Aと同様にして行うことができる。
【0139】
〔第4の実施形態〕
前述した第3の実施形態に係るタッチパネル1Cでは、光拡散層30は、表示体モジュール5に隣接する位置に設けられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、書き味向上層10と表示体モジュール5との間における任意の位置に設けられてよい。
【0140】
例えば、
図4に示す第4の実施形態に係るタッチパネル1Dのように、光拡散層30が基材フィルム21とカバー材23との間に設けられていてもよい。この場合、第3の実施形態に係るタッチパネル1Cにおいて、粘着剤層22が光拡散層30に置き換わり、光拡散層30が粘着剤層22に置き換わることとなる。この粘着剤層22は、第3の実施形態に係るタッチパネル1Cの粘着剤層22と同様の構成とすることができる。
【0141】
本実施形態に係るタッチパネル1Dの製造は、基本的には第2の実施形態に係るタッチパネル1Bと同様にして行うことができる。
【0142】
〔第5の実施形態〕
上述した第1〜第4の実施形態に係るタッチパネル1A〜1Dでは、カバー材23は1枚しか存在しないが、光拡散層30とカラーフィルタ54との距離を調節するために、あるいは、書き味向上層10から光拡散層30までのトータルヘイズを調節するために、カバー材(および粘着剤層)を複数設けてもよい。例えば、
図5に示す第5のタッチパネル1Eのように、カバー材を2枚、粘着剤層を2層設けてもよい。具体的は、第5のタッチパネル1Eは、書き味向上層10と、書き味向上層10のタッチペンが接触しない側(
図5中、下側)に位置し、書き味向上層10が形成された基材フィルム21と、基材フィルム21の下側に位置する、粘着性を有する光拡散層30と、光拡散層30を介して上記基材フィルム21が貼合された第1のカバー材23aと、第1のカバー材23aの下側に位置する第1の粘着剤層22aと、第1の粘着剤層22aの下側に位置する第2のカバー材23bと、第2のカバー材23bの下側に位置する第2の粘着剤層22bと、第2の粘着剤層22bを介して第2のカバー材23bが貼合された、位置検出機能を有する表示体モジュール5とを備えて構成されている。第1のカバー材23aは、前述したカバー材23のように印刷層等による段差を有していてもよい。一方、第1のカバー材23a以外のカバー材(本実施形態では、第2のカバー材23b)は、通常は、印刷層等による段差を有しない。なお、第5のタッチパネル1Eは、第4のタッチパネル1Dを基準にした変形例であるが、これに限定されるものではない。
【0143】
また、タッチパネル中における光拡散層30の位置は、第5の実施形態に係るタッチパネル1Eの中における位置には限定されない。例えば、第5の実施形態に係るタッチパネル1Eにおける第1の粘着剤層22aまたは第2の粘着剤層22bが光拡散層30に置き換わり、光拡散層30が第1の粘着剤層22aまたは第2の粘着剤層22bと同様の粘着剤層に置き換わってもよい。
【0144】
さらに、カバー材および粘着剤層の数は、光拡散層30とカラーフィルタ54との距離、および書き味向上層10から光拡散層30までのトータルヘイズが所定の範囲にあれば、特に限定されない。例えば、後述する、
図6に示す第6のタッチパネル1Fのように、カバー材を3枚、粘着剤層を3層設けてもよい。
【0145】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0146】
例えば、基材フィルム21の表面が、前述した書き味物性を満たす場合には、コート層としての書き味向上層10は必ずしも必要ではなく、この場合、基材フィルム21自体が書き味向上層となる。
【実施例】
【0147】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0148】
〔実施例1〕
(1)書き味向上層の形成
硬化性成分としての有機無機ハイブリッド樹脂(荒川化学工業社製,製品名「オプスターZ7530」)100質量部(固形分換算値を表す。以下、その他の成分についても同様とする。)と、平均粒径3μmの真球状架橋ポリメチルメタクリレート微粒子10質量部と、光重合開始剤としての1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン5質量部とを混合し、コーティング組成物を得た。そのコーティング組成物をプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈し、塗布液を調製した。
【0149】
基材フィルムとしての易接着層付きポリエステルフィルム(東洋紡社製,製品名「コスモシャインA4300」,厚さ:125μm)の易接着層側の面に、上記で得られた塗布液をワイヤーバー#14で塗布し、70℃で1分間乾燥させた。次いで、大気下にて、紫外線照射装置(ジーエスユアサコーポレーション社製,製品名「窒素パージ小形コンベア式UV照射装置CSN2−40」)により下記の条件で紫外線を照射して、厚さ5μmの書き味向上層を形成し、書き味向上層および基材フィルムからなる積層体を得た。
[紫外線照射条件]
・光源:高圧水銀灯
・ランプ電力:1.4kW
・コンベアスピード:1.2m/min
・照度:100mW/cm
2
・光量:240mJ/cm
2
【0150】
書き味向上層の厚さについては、上記積層体の総厚を、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG−01J」)を用いて測定し、得られた積層体の総厚と、上記基材フィルムの厚さとの差を、書き味向上層の厚さとして算出した。
【0151】
(2)光拡散層の形成
アクリル酸n−ブチル60質量部、アクリル酸メチル20質量部およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル20質量部を溶液重合法により共重合させて、アクリル酸エステル共重合体を調製した。このアクリル酸エステル共重合体の分子量を以下の方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)50万であった。
【0152】
上記重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC−8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL−H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0153】
上記工程で得られたアクリル酸エステル共重合体100質量部と、架橋剤としてトリメチロールプロパン変性トリレンジイソジアネート(トーヨーケム社製,製品名「BHS−8515」)0.25質量部と、平均粒径2.0μmの真球状シリコーン微粒子(無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子)(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製,製品名「トスパール120」)0.5質量部とを混合し、酢酸エチルで希釈することにより、粘着性組成物の塗布液を得た。
【0154】
上記で得られた粘着性組成物の塗布液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,SP−PET3811,厚さ:38μm)の剥離処理面にナイフコーターで塗布したのち、90℃で1分間加熱処理して、厚さ10μmの光拡散層を形成し、光拡散層シートを得た。
【0155】
光拡散層の厚さについては、上記光拡散層シートの総厚を、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG−01J」)を用いて測定し、得られた光拡散層シートの総厚と、上記剥離シートの厚さとの差を、光拡散層の厚さとして算出した。
【0156】
(3)粘着剤層の形成
上記光拡散層に使用したアクリル酸エステル共重合体100質量部と、架橋剤としてトリメチロールプロパン変性トリレンジイソジアネート(トーヨーケム社製,製品名「BHS−8515」)0.25質量部とを混合し、酢酸エチルで希釈することにより、粘着性組成物の塗布液を得た。
【0157】
上記で得られた粘着性組成物の塗布液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(リンテック社製,SP−PET3811,厚さ:38μm)の剥離処理面にナイフコーターで塗布したのち、90℃で1分間加熱処理して、厚さ100μmの粘着剤層を形成し、粘着シートを得た。
【0158】
粘着剤層の厚さについては、上記粘着シートの総厚を、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG−01J」)を用いて測定し、得られた粘着シートの総厚と、上記剥離シートの厚さとの差を、粘着剤層の厚さとして算出した。
【0159】
(4)各部材の積層
以下に示すように各部材を積層して、
図5に示す構成(構成1E)を有するタッチパネルを製造した。各部材の積層は、圧着ローラー(2kg,サンプル接触部の材質:ゴム)を用いて手作業で行った。
【0160】
(a)最初に、書き味向上層および基材フィルムからなる積層体における基材フィルムと、光拡散層シートの光拡散層とを積層した。
(b)次いで、上記光拡散層シートの剥離シートを光拡散層から剥離して、露出した光拡散層と第1のカバー材(コーニング社製,製品名「イーグルXG」,厚さ700μm)とを積層した。
(c)次いで、上記第1のカバー材と、粘着シートの粘着剤層(厚さ100μm)とを積層した。この粘着剤層は、
図5における第1の粘着剤層22aに該当する。
(d)次いで、上記粘着シートの剥離シートを粘着剤層(第1の粘着剤層22a)から剥離して、露出した粘着剤層(第1の粘着剤層22a)と第2のカバー材(コーニング社製,製品名「イーグルXG」,厚さ1100μm)とを積層した。
(e)次いで、上記第2のカバー材と、粘着シートの粘着剤層(厚さ100μm)とを積層した。この粘着剤層は、
図5における第2の粘着剤層22bに該当する。
(f)最後に、上記粘着シートの剥離シートを粘着剤層(第2の粘着剤層22b)から剥離して、露出した粘着剤層(第2の粘着剤層22b)と、カラーフィルターから表示体モジュール表面までの距離が1mmである表示体モジュール(解像度:264ppi)とを積層し、
図5に示す構成(構成1E)のタッチパネルを得た。
【0161】
〔実施例2〕
書き味向上層および光拡散層の材料、配合比および厚さを表1に示すように変更するとともに、第1のカバー材の厚さを1100μmに変更し、第1の粘着剤層22aに該当する粘着剤層の厚さおよび第2の粘着剤層22bに該当する粘着剤層の厚さをそれぞれ400μmに変更する以外、実施例1と同様にしてタッチパネルを作製した。
【0162】
〔実施例3,4〕
書き味向上層および光拡散層の材料、配合比および厚さを表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にしてタッチパネルを作製した。
【0163】
〔実施例5〕
書き味向上層および光拡散層の材料、配合比および厚さを表1に示すように変更するとともに、タッチパネルの構成を
図4に示す構成(構成1D)に変更し、粘着剤層の厚さを300μmに変更する以外、実施例1と同様にしてタッチパネルを作製した。
図4に示す構成のタッチパネルは、以下のようにして製造した。
【0164】
(a)最初に、書き味向上層および基材フィルムからなる積層体における基材フィルムと、光拡散層シートの光拡散層とを積層した。
(b)次いで、上記光拡散層シートの剥離シートを光拡散層から剥離して、露出した光拡散層とカバー材(コーニング社製,製品名「イーグルXG」,厚さ700μm)とを積層した。
(c)次いで、上記カバー材と、粘着シートの粘着剤層(厚さ300μm)とを積層した。
(d)最後に、上記粘着シートの剥離シートを粘着剤層から剥離して、露出した粘着剤層と、カラーフィルターから表示体モジュール表面までの距離が1mmである表示体モジュール(解像度:264ppi)とを積層し、
図4に示す構成(構成1D)のタッチパネルを得た。
【0165】
〔実施例6〕
書き味向上層および光拡散層の材料、配合比および厚さを表1に示すように変更する以外、実施例5と同様にしてタッチパネルを作製した。
【0166】
〔比較例1〕
書き味向上層および光拡散層の材料、配合比および厚さを表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にしてタッチパネルを作製した。
【0167】
〔比較例2〕
書き味向上層および光拡散層の材料、配合比および厚さを表1に示すように変更する以外、実施例5と同様にしてタッチパネルを作製した。
【0168】
〔比較例3〕
書き味向上層および光拡散層の材料、配合比および厚さを表1に示すように変更するとともに、タッチパネルの構成を
図6に示す構成(構成1F)に変更し、第1のカバー材の厚さを1100μmに変更し、粘着剤層の厚さを300μmおよび200μmに変更する以外、実施例1と同様にしてタッチパネルを作製した。
【0169】
ここで、
図6に示されるタッチパネル1Fは、書き味向上層10と、書き味向上層10のタッチペンが接触しない側(
図6中、下側)に位置し、書き味向上層10が形成された基材フィルム21と、基材フィルム21の下側に位置する、粘着性を有する光拡散層30と、光拡散層30を介して上記基材フィルム21が貼合された第1のカバー材23a(厚さ:1100μm)と、第1のカバー材23aの下側に位置する第1の粘着剤層22a(厚さ:300μm)と、第1の粘着剤層22aの下側に位置する第2のカバー材23b(厚さ:1100μm)と、第2のカバー材23bの下側に位置する第2の粘着剤層22b(厚さ:200μm)と、第2の粘着剤層22bの下側に位置する第3のカバー材23c(厚さ:1100μm)と、第3のカバー材23cの下側に位置する第3の粘着剤層22c(厚さ:200μm)と、第3の粘着剤層22cを介して第3のカバー材23cが貼合された、位置検出機能を有する表示体モジュール5とを備えて構成されている。
【0170】
図6に示す構成のタッチパネル1Fは、以下のようにして製造した。
(a)最初に、書き味向上層および基材フィルムからなる積層体における基材フィルムと、光拡散層シートの光拡散層とを積層した。
(b)次いで、上記光拡散層シートの剥離シートを光拡散層から剥離して、露出した光拡散層と第1のカバー材(コーニング社製,製品名「イーグルXG」,厚さ1100μm)とを積層した。
(c)次いで、上記第1のカバー材と、粘着シートの粘着剤層(厚さ300μm)とを積層した。この粘着剤層は、
図6における第1の粘着剤層22aに該当する。
(d)次いで、上記粘着シートの剥離シートを粘着剤層(第1の粘着剤層22a)から剥離して、露出した粘着剤層(第1の粘着剤層22a)と第2のカバー材(コーニング社製,製品名「イーグルXG」,厚さ1100μm)とを積層した。
(e)次いで、上記第2のカバー材と、粘着シートの粘着剤層(厚さ200μm)とを積層した。この粘着剤層は、
図6における第2の粘着剤層22bに該当する。
(f)次いで、上記粘着シートの剥離シートを粘着剤層(第2の粘着剤層22b)から剥離して、露出した粘着剤層(第2の粘着剤層22b)と第3のカバー材(コーニング社製,製品名「イーグルXG」,厚さ1100μm)とを積層した。
(g)次いで、上記第3のカバー材と、粘着シートの粘着剤層(厚さ200μm)とを積層した。この粘着剤層は、
図6における第3の粘着剤層22cに該当する。
(h)最後に、上記粘着シートの剥離シートを粘着剤層(第3の粘着剤層22c)から剥離して、露出した粘着剤層(第3の粘着剤層22c)と、カラーフィルターから表示体モジュール表面までの距離が1mmである表示体モジュール(解像度:264ppi)とを積層し、
図6に示す構成(構成1F)のタッチパネルを得た。
【0171】
〔比較例4〕
実施例1で使用した光拡散層を実施例1で使用した粘着剤層(厚さ10μm)に変更し、タッチパネルの構成を
図7に示す構成(構成1G)に変更する以外、実施例1と同様にしてタッチパネルを作製した。
【0172】
ここで、
図7に示されるタッチパネル1Gは、書き味向上層10と、書き味向上層10のタッチペンが接触しない側(
図7中、下側)に位置し、書き味向上層10が形成された基材フィルム21と、基材フィルム21の下側に位置する第1の粘着剤層22a(厚さ:10μm)と、第1の粘着剤層22aの下側に位置する第1のカバー材23aと、第1のカバー材23aの下側に位置する第2の粘着剤層22b(厚さ:100μm)と、第2の粘着剤層22bの下側に位置する第2のカバー材23bと、第2のカバー材23bの下側に位置する第3の粘着剤層22c(厚さ:100μm)と、第3の粘着剤層22cを介して第2のカバー材23bが貼合された、位置検出機能を有する表示体モジュール5とを備えて構成されている。
【0173】
図7に示す構成のタッチパネル1Gは、以下のようにして製造した。
(a)最初に、書き味向上層および基材フィルムからなる積層体における基材フィルムと、粘着シートの粘着剤層(厚さ10μm)とを積層した。この粘着剤層は、
図7における第1の粘着剤層22aに該当する。
(b)次いで、上記粘着シートの剥離シートを粘着剤層(第1の粘着剤層22a)から剥離して、露出した粘着剤層(第1の粘着剤層22a)と第1のカバー材(コーニング社製,製品名「イーグルXG」,厚さ700μm)とを積層した。
(c)次いで、上記第1のカバー材と、粘着シートの粘着剤層(厚さ100μm)とを積層した。この粘着剤層は、
図7における第2の粘着剤層22bに該当する。
(d)次いで、上記粘着シートの剥離シートを粘着剤層(第2の粘着剤層22b)から剥離して、露出した粘着剤層(第2の粘着剤層22b)と第2のカバー材(コーニング社製,製品名「イーグルXG」,厚さ1100μm)とを積層した。
(e)次いで、上記第2のカバー材と、粘着シートの粘着剤層(厚さ100μm)とを積層した。この粘着剤層は、
図7における第3の粘着剤層22cに該当する。
(f)最後に、上記粘着シートの剥離シートを粘着剤層(第3の粘着剤層22c)から剥離して、露出した粘着剤層(第3の粘着剤層22c)と、カラーフィルターから表示体モジュール表面までの距離が1mmである表示体モジュール(解像度:264ppi)とを積層し、
図7に示す構成(構成1G)のタッチパネルを得た。
【0174】
〔参考例1〕
書き味向上層および光拡散層の材料、配合比および厚さを表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にしてタッチパネルを作製した。
【0175】
ここで、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
A:有機無機ハイブリッド樹脂(荒川化学工業社製,製品名「オプスターZ7530」)
B:多官能ウレタンアクリレート(荒川化学工業社製,製品名「ビームセット575CB」)
C:平均粒径3μmの真球状架橋ポリメチルメタクリレート微粒子(CV値:32%)
D:平均粒径4.5μmの不定形シリカ微粒子(CV値:35%)
E:平均粒径1.5μmの不定形シリカ微粒子(CV値:88%)
F:平均粒径1.5μmの真球状架橋ポリメチルメタクリレート微粒子(CV値:23%)
G:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(光重合開始剤)
H:アクリル酸n−ブチル60質量部、アクリル酸メチル20質量部およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル20質量部を溶液重合法により共重合して得られたアクリル酸エステル共重合体(Mw:50万)
I:平均粒径2.0μmの真球状シリコーン微粒子(無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子)(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製,製品名「トスパール120」)
J:平均粒径3.5μmの真球状ポリメタクリル酸メチル−ポリスチレン共重合体微粒子
K:トリメチロールプロパン変性トリレンジイソジアネート(トーヨーケム社製,製品名「BHS−8515」)(架橋剤)
【0176】
〔試験例1〕(光拡散層とカラーフィルタとの距離の計算)
実施例および比較例で製造したタッチパネルにおいて、光拡散層とカラーフィルタとの距離を計算した。なお、前述した通り、実施例および比較例で使用した表示体モジュール(解像度:264ppi)において、カラーフィルタから表示体モジュールの表面(粘着剤層が貼付される面)までの距離は1mmであった。結果を表2に示す。
【0177】
〔試験例2〕(ヘイズ値の測定)
実施例および比較例で製造したタッチパネルにおける、書き味向上層から光拡散層までのトータルヘイズ(%)および内部ヘイズ(%)を、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH2000」)を用いて、JIS K7105に準じて測定した。結果を表2に示す。
【0178】
具体的には、実施例および比較例における製造途中で得た、書き味向上層、基材フィルム、光拡散層(比較例4では粘着剤層)および剥離シートの積層体のヘイズを測定し、当該ヘイズから剥離シートのヘイズを差し引くことにより、トータルヘイズを算出した。
【0179】
また、上記積層体の書き味向上層の上に、実施例・比較例で使用した粘着シート(粘着剤層+剥離シート)を貼付し、当該粘着シートを含めたヘイズを測定した。そして、当該ヘイズから、粘着シートのヘイズおよび剥離シートのヘイズを差し引くことにより、内部ヘイズを算出した。
【0180】
〔試験例3〕(ペン摺動試験)
実施例および比較例で製造したタッチパネルを、書き味向上層側を上にしてガラス基板上に載置した。その書き味向上層表面に対し、ペン先直径0.5mmのハードフェルト芯のタッチペン(ワコム社製,製品名「ACK−2003」)のペン先を、荷重3.92Nの加圧条件で垂直方向(ペン先の軸心が書き味向上層の表面に対して垂直となる方向)に接触させながら、書き味向上層の表面と平行な任意の一方向に速度100mm/分で移動させた。なお、上記タッチペンは測定専用台車に取り付け、当該台車を移動させることにより、タッチペンを書き味向上層上にて摺動させた。
【0181】
移動時のペン先抵抗力を万能試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロン」)を用いて測定し、移動距離(mm)−ペン先抵抗力(mN)のチャートを得た。そして、得られた移動距離(mm)−ペン先抵抗力(mN)のチャートを、ソフトウエア(マイクロソフト社製,製品名「Excel」)によってフーリエ変換し、周波数(Hz)−振幅(−)チャートを得た。当該周波数(Hz)−振幅(−)チャートから、周波数1〜2Hzの範囲における振幅の平均値、最大値(最大振幅値)およびピーク数(振幅数)を求めた。結果を表2に示す。
【0182】
〔試験例4〕(書き味の官能評価)
実施例および比較例で製造したタッチパネルを、書き味向上層側を上にしてガラス基板上に載置した。その書き味向上層表面に対し、パネラーが、ペン先直径0.5mmのハードフェルト芯のタッチペン(ワコム社製,製品名「ACK−2003」)のペン先を接触、摺動させ、書き味を評価した。
【0183】
評価においては、5枚重ねの紙(コクヨS&T社製,製品名「キャンパスノートA罫 ノ−201A」)に鉛筆(三菱鉛筆社製,製品名「三菱鉛筆ユニ B」)を用いて筆圧約400g重で筆記した際の書き味に近いものを良好とし、当該書き味から離れたものを不良とした。なお、評価は3人のパネラーが行い、3人とも良好と感じたものを◎とし、1人〜2人が良好と感じたものを○とし、3人とも不良と感じたものは×とした。結果を表2に示す。
【0184】
〔試験例5〕(ギラツキの評価)
実施例および比較例で製造したタッチパネルにおける表示体モジュール(タブレット端末)を全面緑色表示(RGB値(R,G,B)=0,128,0)にし、以下の基準にて、目視によりギラツキの評価を行った。結果を表2に示す。
◎:ギラツキが確認されなかった。
○:僅かにギラツキは確認されたが、実用上問題ない程度のギラツキであった。
×:ギラツキが確認された。
【0185】
〔試験例6〕(表示画像視認性の評価)
実施例および比較例で製造したタッチパネルにおける表示体モジュール(タブレット端末)を全面緑色表示(RGB値(R,G,B)=0,128,0)にし、以下の基準にて、目視により表示画像視認性の評価を行った。結果を表2に示す。
◎:表示画像の視認性低下が確認されなかった。
○:表示画像の視認性低下(白茶けや画像のボヤケなど)が僅かに確認された(実用上問題なし)。
×:表示画像の視認性低下(白茶けや画像のボヤケなど)が確認された。
【0186】
【表1】
【0187】
【表2】
【0188】
表2から明らかなように、実施例で製造したタッチパネルは、ギラツキが抑制され、かつ、表示画像の視認性が良好であるとともに、タッチペンによる書き味にも優れていた。