特許第6871760号(P6871760)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6871760-抗ウイルス作用促進用組成物 図000010
  • 特許6871760-抗ウイルス作用促進用組成物 図000011
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871760
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】抗ウイルス作用促進用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/05 20060101AFI20210426BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20210426BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20210426BHJP
   A61K 36/03 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   A61K38/05
   A61P31/16
   A61P31/22
   A61K36/03
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-40152(P2017-40152)
(22)【出願日】2017年3月3日
(65)【公開番号】特開2018-52910(P2018-52910A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年11月6日
(31)【優先権主張番号】特願2016-188318(P2016-188318)
(32)【優先日】2016年9月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】吉永 恵子
【審査官】 柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−539069(JP,A)
【文献】 特開2003−246796(JP,A)
【文献】 J. Biol. Chem., (1990), 265, [21], p.12178-12183
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00−38/58
A61K 41/00−45/08
A61K 48/00
A23L 5/40−5/49
A23L 31/00−33/29
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
A61K 36/00−36/05
A61K 36/06,36/07−36/9068
C07K 1/00−19/00
A61P 1/00−43/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリン−チロシン、イソロイシン−チロシン又はフェニルアラニン−チロシンの配列を有するジペプチド又はその薬理学的に許容される塩を有効成分とする抗インフルエンザウイルス作用又は抗単純ヘルペスウイルス作用促進用組成物。
【請求項2】
わかめ由来のペプチドを有効成分とし、わかめ由来のペプチドがバリン−チロシン、イソロイシン−チロシン又はフェニルアラニン−チロシンの配列を有するジペプチド又はその薬理学的に許容される塩を含有する、抗インフルエンザウイルス作用又は抗単純ヘルペスウイルス作用促進用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ウイルス作用促進用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザは、インフルエンザウイルスが気道粘膜の上皮細胞で感染及び増殖し、上気道に炎症を引き起こす結果として発症する。インフルエンザによる年間死亡者数は、世界で約25〜50万人と推計されており、その社会的影響は大きく、社会及び/又は経済活動における損失や医療費の増加も無視できない。
【0003】
また、単純ヘルペスウイルス(HSV:Herpes simplex virus)は世界的に広く浸透したウイルスで、感染様式はHSVによる皮疹や口唇ヘルペスを発症した患者の唾液との密接な接触、性器ヘルペスからの母子感染あるいは性的感染によると考えられている。HSVとしては、単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)や単純ヘルペスウイルス2型(HSV−2)が挙げられる。HSV−1は、主な病態として口唇ヘルペスや角膜ヘルペス、ヘルペス脳炎、HSV−2は、陰部ヘルペスや皮膚粘膜病変等を招き、いずれもQOLの低下を招く。
【0004】
このようなウイルス感染症に対し、例えばインフルエンザの治療薬としては、ノイラミニダーゼ阻害薬であるザナミビル、オセルタミビル等が用いられるが、これらは、薬剤耐性株の出現や、副作用、発病後2日以内の投与が望まれる等の問題がある。
【0005】
一方、ワカメから抽出した蛋白質を蛋白質分解酵素等で処理して得られるペプチドは、安全性に優れ、日常的に長期にわたり服用及び/又は摂取が可能なものであるとともに、アンジオテンシン変換酵素阻害作用があることが知られている(特許文献1〜3)。しかし、このワカメ由来のペプチドの抗ウイルス作用については明らかとなっていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−128694号公報
【特許文献2】特開2002−138100号公報
【特許文献3】特開2001−064299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、安全性に優れ、日常的に長期にわたり服用及び/又は摂取が可能な抗ウイルス作用促進用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題に対して鋭意検討を行った結果、特定の配列を有するペプチドの服用又は摂取により、上記課題が解決されることを見出し、この知見に基づいて本発明を成すに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の(1)〜(6)からなっている。
(1)チロシンをC末端に有するアミノ酸残基数が2〜10のペプチド若しくはその誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分とする抗ウイルス作用促進用組成物。
(2)疎水性アミノ酸−チロシンの配列をC末端に有するペプチド若しくはその誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分とする抗ウイルス作用促進用組成物。
(3)疎水性アミノ酸−チロシンの配列を有するジペプチド若しくはその誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分とする抗ウイルス作用促進用組成物。
(4)疎水性アミノ酸がバリン、イソロイシン又はフェニルアラニンである(2)又は(3)に記載の抗ウイルス作用促進用組成物。
(5)わかめ由来のペプチドを有効成分とする抗ウイルス作用促進用組成物。
(6)前記ウイルスが、インフルエンザウイルス又は単純ヘルペスウイルスである前記(1)〜(5)のいずれかに記載の抗ウイルス作用促進用組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の抗ウイルス作用促進用組成物は、種々のウイルスに対して抗ウイルス作用を促進する効果を有する。
本発明の抗ウイルス作用促進用組成物は、日常的に長期間にわたり摂取しても安全性に全く問題は無い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、ジペプチド(Ile−Tyr又はPhe-Tyr)投与群、対照群及びアシクロビル投与群マウスについてHSV−2接種の日からその14日後までの症状スコア(lesion score)の平均値を示すグラフである。
【0012】
図2図2は、わかめ由来ペプチド(1mg/day、5mg/day又は10mg/day)投与群、対照群及びアシクロビル投与群マウスについてHSV−2接種の日からその14日後までのlesion scoreの平均値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の抗ウイルス作用促進用組成物は、チロシンをC末端に有するアミノ酸残基数が2〜10(好ましくは2〜5、より好ましくは2〜3、最も好ましくは2)のペプチド若しくはその誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分とする。
【0014】
また、本発明の抗ウイルス作用促進用組成物は、Val−Tyr(バリン−チロシン)、Ile−Tyr(イソロイシン−チロシン)又はPhe−Tyr(フェニルアラニン−チロシン)等の疎水性アミノ酸(例えば、フェニルアラニン(Phe)、トリプトファン(Trp)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、プロリン(Pro)、メチオニン(Met)、バリン(Val)及びアラニン(Ala)からなる群より選択される1のアミノ酸)−チロシン(Tyr)の配列をC末端に有するペプチド若しくはその誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分とする。該ペプチドのアミノ酸残基数は、通常2以上、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜5、更に好ましくは2〜3、最も好ましくは2である。ペプチドのアミノ酸残基数が2の場合、本発明の抗ウイルス作用促進用組成物は、Val−Tyr、Ile−Tyr又はPhe−Tyr等の疎水性アミノ酸−チロシンの配列を有するジペプチド若しくはその誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分とするものである。以下、本明細書では、Val−Tyr、Ile−Tyr又はPhe−Tyr等の上記例示した疎水性アミノ酸−チロシンの配列を有するジペプチドを、単に疎水性アミノ酸−チロシンとも表記する。
【0015】
本発明で用いられるVal−Tyr、Ile−Tyr又はPhe−Tyr等の疎水性アミノ酸−チロシンの配列をC末端に有するペプチドは、化学的に合成したものでもよく、例えば有機化学的な合成方法によりアミノ酸を段階的に導入する方法、加水分解酵素の逆反応を利用したペプチド合成法、遺伝子工学的方法等によって製造することができる。
【0016】
本発明のペプチドの誘導体は、特定のアミノ酸配列で示されるペプチドのC末端が、カルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO)、アミド(−CONH)またはエステル(−COOR)のいずれであってもよい。エステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC1−6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6−12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1−2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1−2アルキル基などのC7−14アラルキル基のほか、ピバロイルオキシメチル基などが挙げられる。アミド体としては、アミド、C1−6アルキル基の1つまたは2つで置換されたアミド、フェニル基で置換されたC1−6のアルキル基の1つまたは2つで置換されたアミド、アミド基の窒素原子を含んで5から7員環のアザシクロアルカンを形成するアミド等が挙げられる。
本発明のペプチドがC末端以外にカルボキシル基またはカルボキシレートを有している場合、それらの基がアミド化またはエステル化されているものも本発明のペプチドの誘導体に含まれる。
【0017】
本発明のペプチドの誘導体には、N末端のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC2−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、N末端側が生体内で切断され生成したグルタミル基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば、−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC2−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているものも含まれる。
【0018】
本発明のペプチドの誘導体を構成するアミノ酸は、側鎖が任意の置換基で修飾されていてもよい。置換基は特に限定されないが、例えば、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、リン酸基などが挙げられる。また、側鎖の置換基は、保護基で保護されていてもよい。さらに、糖鎖が結合した糖ペプチドも本発明のペプチドの誘導体に含まれる。
【0019】
本発明のペプチドまたはその誘導体は、元のペプチドの特性が保持される限り、D−アミノ酸を含んでもよく、非天然アミノ酸を含んでもよい。また、本発明のペプチドまたはその誘導体は、元のペプチドの特性が保持される限り、ペプチドに他の物質を連結してもよい。ペプチドに連結可能な他の物質としては、例えば、他のペプチド、脂質、糖または糖鎖、アセチル基、天然または合成のポリマー等が挙げられる。また、本発明のペプチドは、元のペプチドの特性が保持される限り、ペプチドに、糖鎖付加、側鎖酸化、リン酸化等の修飾を行ってもよい。
【0020】
薬理学的に許容される塩としては、例えば、塩酸、硫酸、燐酸、乳酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、リンゴ酸、クエン酸、オレイン酸、パルミチン酸などの酸との塩;ナトリウム、カリウム、カルシウムなどのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の、またはアルミニウムの水酸化物または炭酸塩との塩;トリエチルアミン、ベンジルアミン、ジエタノールアミン、t−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、アルギニンなどとの塩などが挙げられる。
【0021】
また、本発明で用いられるVal−Tyr、Ile−Tyr又はPhe−Tyr等の疎水性アミノ酸−チロシンの配列をC末端に有するペプチドは、食品等に由来するものであってもよく、特に、わかめに由来するペプチド(以下、わかめ由来ペプチドという)であってもよい。
【0022】
本発明で言うところのわかめとは、分類学的にはコンブ目チガイソ科ワカメ属に属する海藻類である。わかめの種類としては、ワカメ(Undaria pinnatifida)、ヒロメ(U.undarioides)、アオワカメ(U.peterseniana)があり、本発明ではいずれも好ましく用いられる。また、わかめの部位に特に制限はなく、葉、芽かぶ等のいずれを用いても良い。また、わかめの形態としては、例えば乾燥わかめ(例えば乾燥カットわかめ、素干しわかめ等)、ボイル塩蔵わかめ、塩蔵わかめ、生わかめ等のいずれでもよく、葉の厚さや色あるいは原料産地等も問わない。
【0023】
本発明で用いられるわかめ由来ペプチドは、例えば、わかめから分離した蛋白質を蛋白質分解酵素で処理して得られる処理物から分取すること等により得られる。
【0024】
わかめから蛋白質を分離する方法に特に制限はないが、例えば、わかめをアルギン酸リアーゼで処理し、これを遠心分離処理して上清を廃棄し沈殿物を回収することにより、粘質多糖類を除去し、蛋白質を分離する方法が挙げられる。
【0025】
蛋白質分解酵素による処理では、わかめから分離した蛋白質に蛋白質分解酵素を添加し、蛋白質の分解を行う。蛋白質分解酵素としては、例えば、プロテアーゼ、トリプシン、パンクレアチン、キモトリプシン、ペプシン、パパイン等が挙げられ、中でもプロテアーゼが好ましく用いられる。
【0026】
上記のアルギン酸リアーゼ及び蛋白質分解酵素による酵素使用量、処理の温度及びpHは常識的に許容される範囲内の条件であれば良いが、その酵素の至適使用量、至適温度、至適pHで行うことが反応時間の短縮や酵素の安定性上望ましい。
【0027】
蛋白質分解酵素による処理により得られる処理物からペプチドを分取する方法に特に制限はないが、例えば、該処理物を遠心分離し、未分解の蛋白質を除去して上清を得た後、該上清を限外濾過膜で処理し、分子量1万以下のペプチドを得る方法が挙げられる。
【0028】
上記方法により得られるわかめ由来ペプチドは、特開2003−128694号公報に記載されるように、特定の複数種類のジペプチドを含有するものであり、少なくともVal−Tyr、Ile−Tyr及びPhe−Tyr等の疎水性アミノ酸−チロシンを含有するものである。
【0029】
本発明の抗ウイルス作用促進用組成物は、上記ペプチドをそのまま、あるいは製薬学的に許容される添加物、食品素材、食品原料、さらに必要に応じて食品添加物等を適宜混合し、常法に従い、例えば、抗ウイルス作用の促進を目的とする医薬品、医薬部外品、化粧品、生活用品又は飲食品(健康食品、特定保健用食品又は機能性表示食品を含む)として製造される。該医薬品又は医薬部外品としては、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、マイクロカプセル、ソフトカプセル、ハードカプセル、シロップ剤、エリキシル剤、注射剤、点滴等経口的又は非経口的形態の製剤が挙げられる。該化粧品としては、例えば、口紅、乳液、化粧水、保湿パック、美容液、ファンデーション等が挙げられる。該生活用品としては、衛生用品、洗剤、家庭用日用品、オーラルケア用品、トイレタリー用品、家庭用化学製品等であってもよく、例えば、絆創膏、マスク、包帯、医療用テープ、洗濯用洗剤、台所用洗剤、手ぬぐい、タオル、スポンジ、歯磨剤、歯ブラシ、洗口液、口中清涼剤、スキンケアクリーム、アロマ用品、殺虫剤、防虫剤等が挙げられる。該飲食品としては、例えば、固形食品、クリーム状又はジャム様の半固形食品、ゲル状食品、飲料等あらゆる食品形態をとることが可能である。具体的には、例えば、清涼飲料、サプリメント、クッキー、プリン、ゼリー菓子、キャンディ、ドロップ、チューインガム、チョコレート、ヨーグルト、アイスクリーム、マーガリン、ショートニング、マヨネーズ又はドレッシング等が挙げられる。
【0030】
上記医薬品、医薬部外品又は飲食品の製造に用いられる添加物、食品素材、食品原料又は食品添加物としては、例えば、賦形剤(乳糖、デキストリン、コーンスターチ、結晶セルロース等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等)、崩壊剤(カルボキシメチルセルロースカルシウム、無水リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム等)、結合剤(デンプン糊液、ヒドロキシプロピルセルロース液、アラビアガム液等)、溶解補助剤(アラビアガム、ポリソルベート80等)、甘味料(砂糖、果糖、ブドウ糖液糖、ハチミツ、アスパルテーム等)、着色料(β−カロテン、食用タール色素、リボフラビン等)、保存料(ソルビン酸、パラオキシ安息香酸メチル、亜硫酸ナトリウム等)、増粘剤(アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム等)、酸化防止剤(BHT、BHA、アスコルビン酸、トコフェロール等)、香料(ハッカ、ストロベリー香料等)、酸味料(クエン酸、乳糖、DL−リンゴ酸等)、調味料(DL−アラニン、5´−イノシン酸ナトリウム、L−グルタミン酸ナトリウム等)、乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等)、pH調整剤(クエン酸、クエン酸三ナトリウム等)、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類等が挙げられる。
【0031】
本発明の抗ウイルス作用促進用組成物を医薬品、医薬部外品、化粧品、生活用品又は飲食品として使用する場合、上記した添加物、食品素材、食品原料又は食品添加物の他に、薬剤学的又は食品衛生学的に許容される他の素材を常法により適宜添加混合してもよい。このようなものとしては特に限定されず、例えば、コーティング剤、吸収促進剤、安定化剤、漢方薬(生薬エキス)等が挙げられる。
【0032】
本発明の抗ウイルス作用促進用組成物は、種々のウイルスに対して抗ウイルス作用(例えば、宿主細胞に感染したウイルスの細胞内における増殖を抑制する作用等)を示す。本発明の抗ウイルス作用促進用組成物は、特にインフルエンザウイルス及び単純ヘルペスウイルス(好ましくは単純ヘルペスウイルス2型)に抗ウイルス作用を示す。
【0033】
本発明の抗ウイルス作用促進用組成物は、ウイルスによって引き起こされる疾患全般に適用可能と考えられ、例えば、感冒、インフルエンザ、咽頭炎、喉頭炎、気管支炎等の呼吸器系ウイルス性疾患、麻疹、耳下腺炎、風疹、突発性発疹、水痘・帯状疱疹、結節等の皮膚疾病、口唇ヘルペス、性器ヘルペス等の粘膜疾病、B型肝炎、C型肝炎等の肝炎、バーキットリンパ腫、肝細胞癌、子宮頸癌、成人T細胞白血病、カポジ肉腫等のウイルス性腫瘍、ヒト免疫不全症候群、風疹ウイルスによる発熱及び皮膚病変等に有効と考えられる。
【0034】
本発明の抗ウイルス作用促進用組成物を経口的に摂取する場合、摂取量は、感染症による症状、摂取する対象の性別、年齢等によって異なるが、例えば、成人1日当たりの用量は、有効成分であるペプチド(例えば、わかめ由来ペプチド)の乾燥物換算量で約0.01〜500mg/体重1kg、好ましくは約0.05〜100mg/体重1kgの範囲である。この用量を、一日のうち1回で摂取しても良いし、又は数回に分けて摂取してもよい。但し、実際の用量は、目的や摂取者の状況(性別、年齢、健康状態等)を考慮して決められるべきである。
【0035】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
[実験例1]
[ジペプチドの抗ウイルス活性試験]
(1)供試ジペプチド
1)Val−Tyr(商品名:Val−Tyr;SigmaAldrich社製)
2)Ile−Tyr(商品名:H−Ile−Tyr−OH;BACHEM社製)
3)Phe−Tyr(商品名:H−Phe−Tyr−OH;BACHEM社製)
【0037】
(2)抗インフルエンザウイルス活性試験
インフルエンザウイルス感染マウスを用い、ジペプチドの抗インフルエンザウイルス活性について調べた。BALB/cマウス(6週齢、雌)を1群当たり10例用い、下記の5群に分けた。各群のマウスにA型インフルエンザウイルス(A/NWS/33、H1N1亜型)を麻酔下で1回の経鼻接種により感染させた。1回の接種量は、2×10PFU(プラーク形成単位)/50μL/マウスとした。各試料をウイルス感染の1週間前から感染後1週間までの計14日間、1日2回(午前9時及び午後6時)経口投与した。尚、タミフルの経口投与は、タミフルを0.05質量%含む生理食塩水を調製して行った。また、ジペプチドの経口投与は、Val−Tyrを0.25質量%含む生理食塩水(第3群)、Ile−Tyrを0.25質量%含む生理食塩水(第4群)、Phe−Tyrを0.25質量%含む生理食塩水(第5群)を各々調製して行った。
第1群:対照(蒸留水) 0.4mL/マウス/day
第2群:タミフル(リン酸オセルタミビル) 0.2mg/マウス/day
第3群:Val−Tyr 1mg/マウス/day
第4群:Ile−Tyr 1mg/マウス/day
第5群:Phe−Tyr 1mg/マウス/day
【0038】
各群のマウスのうち、5例は感染後3日目に気道洗浄液(BALF)及び肺を採取し、ウイルス量をプラークアッセイにより測定した。残り5例について、感染2週間後にBALF及び血清を採取し、BALF及び血清中の中和抗体価を測定した。中和抗体価は以下の方法で測定した。即ち、血清をPBSで適宜希釈し、その0.1mLとインフルエンザウイルス液(200PFU/0.1mL)0.1mLを混合し、37℃で1時間処理した。この混合液0.1mLを35mmディッシュに培養したMDCK細胞に加えて感染させ、2日後に形成されたプラークをクリスタルバイオレット液で染色してプラーク数を測定した。血清の代わりに生理食塩水をウイルス液に加えた対照のプラーク数を100%として50%のプラーク数となる血清希釈倍数を求め、中和抗体価とした。
【0039】
表1に、BALF中及び肺内のウイルス量を示す。表2に、BALF中及び血清中のウイルスに対する中和抗体価を示す。
【0040】
【表1】
【0041】
表1の結果から、抗ウイルス薬のタミフル群だけでなく、ジペプチド群のBALF中及び肺内のウイルス量は対照群に比べて低い値を示した。
【0042】
【表2】
【0043】
表2の結果は、抗ウイルス薬のタミフル群では何れの指標においても対照群に比べて明らかに低い値であり、インフルエンザウイルスに対する抗体産生量が少ないこと示している。一方、ジペプチド群では何れの指標においても対照群に対し高い値を示した。この結果は、Val−Tyr、Ile−Tyr又はPhe−Tyr等の疎水性アミノ酸−チロシンを摂取することにより、インフルエンザウイルスに対する抗体が効率よく産生され、体内での当該ウイルスの増殖を抑制したことを示している。また、この結果は、ジペプチドの摂取による抗インフルエンザウイルス活性の効果がタミフルとは異なるメカニズムによるものであることと、最初の感染だけではなく、将来、再びインフルエンザウイルスに暴露されたときにも抗原抗体反応によりその予防効果を発揮できる可能性があることを示している。
【0044】
(3)抗単純ヘルペスウイルス活性試験
性器ヘルペスウイルスである単純ヘルペスウイルス2型(HSV−2)の感染マウスを用い、ジペプチドの抗単純ヘルペスウイルス活性について調べた。BALB/cマウス(6週齢、雌)を1群当たり5例用い、下記の5群に分けた。各群のマウスに単純ヘルペスウイルス2型(HSV−2 UW268株)を1回、局所に接種し、感染させた。1回の接種量は、1×10PFU(プラーク形成単位)/20μL/マウスとした。ウイルス接種の6日前及び1日前に、それぞれ、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル(medroxyprogesterone 17−acetate)(3mg/マウス)をマウスに皮下注射した。各試料をウイルス感染の1週間前から感染後1週間までの計14日間、1日2回(午前9時及び午後6時)経口投与した。尚、アシクロビルの経口投与は、アシクロビルを0.25質量%含む生理食塩水を調製して行った。また、ジペプチドの経口投与は、Val−Tyrを0.05質量%含む生理食塩水(第3群)、Val−Tyrを0.25質量%含む生理食塩水(第4群)、Ile−Tyrを0.05質量%含む生理食塩水(第5群)、Ile−Tyrを0.25質量%含む生理食塩水(第6群)、Phe−Tyrを0.05質量%含む生理食塩水(第7群)、Phe−Tyrを0.25質量%含む生理食塩水(第8群)を各々調製して行った。
第1群:対照(蒸留水) 0.4mL/マウス/day
第2群:アシクロビル 1mg/マウス/day
第3群:Val−Tyr 0.2mg/マウス/day
第4群:Val−Tyr 1mg/マウス/day
第5群:Ile−Tyr 0.2mg/マウス/day
第6群:Ile−Tyr 1mg/マウス/day
第7群:Phe−Tyr 0.2mg/マウス/day
第8群:Phe−Tyr 1mg/マウス/day
【0045】
ウイルス接種の3日後に、マウスの局所を冷PBSで洗浄し、その中のウイルス量をプラークアッセイにより測定した。また、ウイルス接種の日から、その14日後まで、死亡例や性器ヘルペスの発症の程度を下記基準に基づく「1」〜「5」のlesion scoreにより記録した。
1:腫脹あり
2:腫脹及び発赤あり
3:液滲出あり
4:後ろ足麻痺
5:死亡
【0046】
表3に、局所洗浄液中のウイルス量を示す。図1に、lesion scoreの記録結果を平均値で示す。表4に、第1、2、6、及び8群の感染後14日目のマウスの生存率を示す。
【0047】
【表3】
【0048】
表3の結果から、抗ウイルス薬のアシクロビル群だけでなく、第5群を除くジペプチド群の局所洗浄液中のウイルス量は対照群に比べて明らかに低い値を示した。
【0049】
【表4】
【0050】
図1及び表4の結果から、抗ウイルス薬のアシクロビル群及びジペプチド群のうち第6群及び第8群では、対照群に比べて、HSV−2感染による性器ヘルペスの発症程度が少なく、生存率が高いことが明らかである。
【0051】
[実験例2]
[わかめ由来ペプチドの抗ウイルス活性試験]
【0052】
(1)わかめ由来ペプチドの製造
乾燥わかめ100gに2Lの0.1Mクエン酸緩衝液を加えpHを7.0に調整し、これにアルギン酸リアーゼ(商品名:アルギン酸リアーゼS;ナガセケムテックス社製)100Uを加えた後、45℃で3時間処理した。その後、得られた処理物を3000×gで5分間遠心分離し、上清を廃棄し沈殿物を回収し、わかめから分離された蛋白質を含有する組成物を35g得た。
次に、上記組成物に対し、1500gの蒸留水を加え、ホモジナイズした後、10000Uのプロテアーゼ(商品名:プロテアーゼS「アマノ」;天野エンザイム社製)を加え、pHを8.0に調製した後、72℃にて18時間処理した。その後3000×gで5分間、遠心分離し上清を回収した。回収した上清は、限外濾過膜(商品名:FB02−FC−FUS0181;ダイゼン・メンブレン・システムズ社製)で限外濾過し、透過液を回収した後、凍結乾燥機(型式:RLE II−103;共和真空社製)を用いて、−40℃で2時間予備凍結した後、真空度4Paの条件下、棚温40℃で約12時間かけて凍結乾燥した。得られた凍結乾燥物を0.2mmのスクリーンを用いて粉砕し、粉末状のわかめ由来ペプチド10gを得た。
【0053】
(2)抗インフルエンザウイルス活性試験
インフルエンザウイルス感染マウスを用い、わかめ由来ペプチドの抗インフルエンザウイルス活性について調べた。BALB/cマウス(6週齢、雌)を1群当たり10例用い、下記の5群に分けた。各群のマウスにA型インフルエンザウイルス(A/NWS/33、H1N1亜型)を麻酔下で1回の経鼻接種により感染させた。1回の接種量は、2×10PFU(プラーク形成単位)/50μL/マウスとした。各試料をウイルス感染の1週間前から感染後1週間までの計14日間、1日2回(午前9時及び午後6時)経口投与した。尚、タミフルの経口投与は、タミフルを0.05質量%含む生理食塩水を調製して行った。また、わかめ由来ペプチドの経口投与は、わかめ由来ペプチドを2.5質量%含む生理食塩水(第3群)、わかめ由来ペプチドを1.25質量%含む生理食塩水(第4群)、わかめ由来ペプチドを0.25質量%含む生理食塩水(第5群)を各々調製して行った。
第1群:対照(蒸留水) 0.4mL/マウス/day
第2群:タミフル(リン酸オセルタミビル) 0.2mg/マウス/day
第3群:わかめ由来ペプチド 10mg/マウス/day
第4群:わかめ由来ペプチド 5mg/マウス/day
第5群:わかめ由来ペプチド 1mg/マウス/day
【0054】
各群のマウスのうち、5例は感染後3日目に気道洗浄液(BALF)及び肺を採取し、ウイルス量をプラークアッセイにより測定した。残り5例について、感染2週間後にBALF及び血清を採取し、BALF及び血清中の中和抗体価を測定した。中和抗体価は以下の方法で測定した。即ち、血清をPBSで適宜希釈し、その0.1mLとインフルエンザウイルス液(200PFU/0.1mL)0.1mLを混合し、37℃で1時間処理した。この混合液0.1mLを35mmディッシュに培養したMDCK細胞に加えて感染させ、2日後に形成されたプラークをクリスタルバイオレット液で染色してプラーク数を測定した。血清の代わりに生理食塩水をウイルス液に加えた対照のプラーク数を100%として50%のプラーク数となる血清希釈倍数を求め、中和抗体価とした。
【0055】
表5に、BALF中及び肺内のウイルス量を示す。表6に、BALF中及び血清中のウイルスに対する中和抗体価を示す。
【0056】
【表5】
【0057】
表5の結果から、抗ウイルス薬のタミフル群だけでなく、わかめ由来ペプチド群のBALF中及び肺内のウイルス量は対照群に比べて明らかに低い値を示した。
【0058】
【表6】
【0059】
表6の結果は、抗ウイルス薬のタミフル群では何れの指標においても対照群に比べて明らかに低い値であり、インフルエンザウイルスに対する抗体産生量が少ないこと示している。一方、わかめ由来ペプチド群では何れの指標においても対照群に対し高い値を示した。この結果は、わかめ由来ペプチドを摂取することにより、インフルエンザウイルスに対する抗体が効率よく産生され、体内での当該ウイルスの増殖を抑制したことを示している。また、この結果は、わかめ由来ペプチドの摂取による抗インフルエンザウイルス活性の効果がタミフルとは異なるメカニズムにあることと、最初の感染だけではなく、将来、再びインフルエンザウイルスに暴露されたときにも抗原抗体反応によりその予防効果を発揮できる可能性があることを示している。
【0060】
(3)抗単純ヘルペスウイルス活性試験
性器ヘルペスウイルスである単純ヘルペスウイルス2型(HSV−2)の感染マウスを用い、わかめ由来ペプチドの抗単純ヘルペスウイルス活性について調べた。BALB/cマウス(6週齢、雌)を1群当たり5例用い、下記の5群に分けた。各群のマウスに単純ヘルペスウイルス2型(HSV−2 UW268株)を1回、局所に接種し、感染させた。1回の接種量は、1×10PFU(プラーク形成単位)/20μL/マウスとした。ウイルス接種の6日前及び1日前に、それぞれ、medroxyprogesterone 17−acetate(3mg/マウス)をマウスに皮下注射した。各試料をウイルス感染の1週間前から感染後1週間までの計14日間、1日2回(午前9時及び午後6時)経口投与した。尚、アシクロビルの経口投与は、アシクロビルを0.25質量%含む生理食塩水を調製して行った。また、わかめ由来ペプチドの経口投与は、わかめ由来ペプチドを2.5質量%含む生理食塩水(第3群)、わかめ由来ペプチドを1.25質量%含む生理食塩水(第4群)、わかめ由来ペプチドを0.25質量%含む生理食塩水(第5群)を各々調製して行った。
第1群:対照(蒸留水) 0.4mL/マウス/day
第2群:アシクロビル 1mg/マウス/day
第3群:わかめ由来ペプチド 10mg/マウス/day
第4群:わかめ由来ペプチド 5mg/マウス/day
第5群:わかめ由来ペプチド 1mg/マウス/day
【0061】
ウイルス接種の3日後に、マウスの局所を冷PBSで洗浄し、その中のウイルス量をプラークアッセイにより測定した。また、ウイルス接種の日から、その14日後まで、死亡例や性器ヘルペスの発症の程度を下記基準に基づく「1」〜「5」のlesion scoreにより記録した。
1:腫脹あり
2:腫脹及び発赤あり
3:液滲出あり
4:後ろ足麻痺
5:死亡
【0062】
表7に、局所洗浄液中のウイルス量を示す。図2に、lesion scoreの記録結果を平均値で示す。表8に、感染後14日目のマウスの生存率を示す。
【0063】
【表7】
【0064】
表7の結果から、抗ウイルス薬のアシクロビル群だけでなく、わかめ由来ペプチド群の局所洗浄液中のウイルス量は対照群に比べて明らかに低い値を示した。
【0065】
【表8】
【0066】
図2及び表8の結果から、抗ウイルス薬のアシクロビル群及びわかめ由来ペプチド群では、対照群に比べて、HSV−2感染による性器ヘルペスの発症程度が少なく、生存率が高いことが明らかである。
図1
図2