【0016】
本発明のペプチドの誘導体は、特定のアミノ酸配列で示されるペプチドのC末端が、カルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO
−)、アミド(−CONH
2)またはエステル(−COOR)のいずれであってもよい。エステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC
1−6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC
3−8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC
6−12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C
1−2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C
1−2アルキル基などのC
7−14アラルキル基のほか、ピバロイルオキシメチル基などが挙げられる。アミド体としては、アミド、C
1−6アルキル基の1つまたは2つで置換されたアミド、フェニル基で置換されたC
1−6のアルキル基の1つまたは2つで置換されたアミド、アミド基の窒素原子を含んで5から7員環のアザシクロアルカンを形成するアミド等が挙げられる。
本発明のペプチドがC末端以外にカルボキシル基またはカルボキシレートを有している場合、それらの基がアミド化またはエステル化されているものも本発明のペプチドの誘導体に含まれる。
【実施例】
【0036】
[実験例1]
[ジペプチドの抗ウイルス活性試験]
(1)供試ジペプチド
1)Val−Tyr(商品名:Val−Tyr;SigmaAldrich社製)
2)Ile−Tyr(商品名:H−Ile−Tyr−OH;BACHEM社製)
3)Phe−Tyr(商品名:H−Phe−Tyr−OH;BACHEM社製)
【0037】
(2)抗インフルエンザウイルス活性試験
インフルエンザウイルス感染マウスを用い、ジペプチドの抗インフルエンザウイルス活性について調べた。BALB/cマウス(6週齢、雌)を1群当たり10例用い、下記の5群に分けた。各群のマウスにA型インフルエンザウイルス(A/NWS/33、H1N1亜型)を麻酔下で1回の経鼻接種により感染させた。1回の接種量は、2×10
4PFU(プラーク形成単位)/50μL/マウスとした。各試料をウイルス感染の1週間前から感染後1週間までの計14日間、1日2回(午前9時及び午後6時)経口投与した。尚、タミフルの経口投与は、タミフルを0.05質量%含む生理食塩水を調製して行った。また、ジペプチドの経口投与は、Val−Tyrを0.25質量%含む生理食塩水(第3群)、Ile−Tyrを0.25質量%含む生理食塩水(第4群)、Phe−Tyrを0.25質量%含む生理食塩水(第5群)を各々調製して行った。
第1群:対照(蒸留水) 0.4mL/マウス/day
第2群:タミフル(リン酸オセルタミビル) 0.2mg/マウス/day
第3群:Val−Tyr 1mg/マウス/day
第4群:Ile−Tyr 1mg/マウス/day
第5群:Phe−Tyr 1mg/マウス/day
【0038】
各群のマウスのうち、5例は感染後3日目に気道洗浄液(BALF)及び肺を採取し、ウイルス量をプラークアッセイにより測定した。残り5例について、感染2週間後にBALF及び血清を採取し、BALF及び血清中の中和抗体価を測定した。中和抗体価は以下の方法で測定した。即ち、血清をPBSで適宜希釈し、その0.1mLとインフルエンザウイルス液(200PFU/0.1mL)0.1mLを混合し、37℃で1時間処理した。この混合液0.1mLを35mmディッシュに培養したMDCK細胞に加えて感染させ、2日後に形成されたプラークをクリスタルバイオレット液で染色してプラーク数を測定した。血清の代わりに生理食塩水をウイルス液に加えた対照のプラーク数を100%として50%のプラーク数となる血清希釈倍数を求め、中和抗体価とした。
【0039】
表1に、BALF中及び肺内のウイルス量を示す。表2に、BALF中及び血清中のウイルスに対する中和抗体価を示す。
【0040】
【表1】
【0041】
表1の結果から、抗ウイルス薬のタミフル群だけでなく、ジペプチド群のBALF中及び肺内のウイルス量は対照群に比べて低い値を示した。
【0042】
【表2】
【0043】
表2の結果は、抗ウイルス薬のタミフル群では何れの指標においても対照群に比べて明らかに低い値であり、インフルエンザウイルスに対する抗体産生量が少ないこと示している。一方、ジペプチド群では何れの指標においても対照群に対し高い値を示した。この結果は、Val−Tyr、Ile−Tyr又はPhe−Tyr等の疎水性アミノ酸−チロシンを摂取することにより、インフルエンザウイルスに対する抗体が効率よく産生され、体内での当該ウイルスの増殖を抑制したことを示している。また、この結果は、ジペプチドの摂取による抗インフルエンザウイルス活性の効果がタミフルとは異なるメカニズムによるものであることと、最初の感染だけではなく、将来、再びインフルエンザウイルスに暴露されたときにも抗原抗体反応によりその予防効果を発揮できる可能性があることを示している。
【0044】
(3)抗単純ヘルペスウイルス活性試験
性器ヘルペスウイルスである単純ヘルペスウイルス2型(HSV−2)の感染マウスを用い、ジペプチドの抗単純ヘルペスウイルス活性について調べた。BALB/cマウス(6週齢、雌)を1群当たり5例用い、下記の5群に分けた。各群のマウスに単純ヘルペスウイルス2型(HSV−2 UW268株)を1回、局所に接種し、感染させた。1回の接種量は、1×10
3PFU(プラーク形成単位)/20μL/マウスとした。ウイルス接種の6日前及び1日前に、それぞれ、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル(medroxyprogesterone 17−acetate)(3mg/マウス)をマウスに皮下注射した。各試料をウイルス感染の1週間前から感染後1週間までの計14日間、1日2回(午前9時及び午後6時)経口投与した。尚、アシクロビルの経口投与は、アシクロビルを0.25質量%含む生理食塩水を調製して行った。また、ジペプチドの経口投与は、Val−Tyrを0.05質量%含む生理食塩水(第3群)、Val−Tyrを0.25質量%含む生理食塩水(第4群)、Ile−Tyrを0.05質量%含む生理食塩水(第5群)、Ile−Tyrを0.25質量%含む生理食塩水(第6群)、Phe−Tyrを0.05質量%含む生理食塩水(第7群)、Phe−Tyrを0.25質量%含む生理食塩水(第8群)を各々調製して行った。
第1群:対照(蒸留水) 0.4mL/マウス/day
第2群:アシクロビル 1mg/マウス/day
第3群:Val−Tyr 0.2mg/マウス/day
第4群:Val−Tyr 1mg/マウス/day
第5群:Ile−Tyr 0.2mg/マウス/day
第6群:Ile−Tyr 1mg/マウス/day
第7群:Phe−Tyr 0.2mg/マウス/day
第8群:Phe−Tyr 1mg/マウス/day
【0045】
ウイルス接種の3日後に、マウスの局所を冷PBSで洗浄し、その中のウイルス量をプラークアッセイにより測定した。また、ウイルス接種の日から、その14日後まで、死亡例や性器ヘルペスの発症の程度を下記基準に基づく「1」〜「5」のlesion scoreにより記録した。
1:腫脹あり
2:腫脹及び発赤あり
3:液滲出あり
4:後ろ足麻痺
5:死亡
【0046】
表3に、局所洗浄液中のウイルス量を示す。
図1に、lesion scoreの記録結果を平均値で示す。表4に、第1、2、6、及び8群の感染後14日目のマウスの生存率を示す。
【0047】
【表3】
【0048】
表3の結果から、抗ウイルス薬のアシクロビル群だけでなく、第5群を除くジペプチド群の局所洗浄液中のウイルス量は対照群に比べて明らかに低い値を示した。
【0049】
【表4】
【0050】
図1及び表4の結果から、抗ウイルス薬のアシクロビル群及びジペプチド群のうち第6群及び第8群では、対照群に比べて、HSV−2感染による性器ヘルペスの発症程度が少なく、生存率が高いことが明らかである。
【0051】
[実験例2]
[わかめ由来ペプチドの抗ウイルス活性試験]
【0052】
(1)わかめ由来ペプチドの製造
乾燥わかめ100gに2Lの0.1Mクエン酸緩衝液を加えpHを7.0に調整し、これにアルギン酸リアーゼ(商品名:アルギン酸リアーゼS;ナガセケムテックス社製)100Uを加えた後、45℃で3時間処理した。その後、得られた処理物を3000×gで5分間遠心分離し、上清を廃棄し沈殿物を回収し、わかめから分離された蛋白質を含有する組成物を35g得た。
次に、上記組成物に対し、1500gの蒸留水を加え、ホモジナイズした後、10000Uのプロテアーゼ(商品名:プロテアーゼS「アマノ」;天野エンザイム社製)を加え、pHを8.0に調製した後、72℃にて18時間処理した。その後3000×gで5分間、遠心分離し上清を回収した。回収した上清は、限外濾過膜(商品名:FB02−FC−FUS0181;ダイゼン・メンブレン・システムズ社製)で限外濾過し、透過液を回収した後、凍結乾燥機(型式:RLE II−103;共和真空社製)を用いて、−40℃で2時間予備凍結した後、真空度4Paの条件下、棚温40℃で約12時間かけて凍結乾燥した。得られた凍結乾燥物を0.2mmのスクリーンを用いて粉砕し、粉末状のわかめ由来ペプチド10gを得た。
【0053】
(2)抗インフルエンザウイルス活性試験
インフルエンザウイルス感染マウスを用い、わかめ由来ペプチドの抗インフルエンザウイルス活性について調べた。BALB/cマウス(6週齢、雌)を1群当たり10例用い、下記の5群に分けた。各群のマウスにA型インフルエンザウイルス(A/NWS/33、H1N1亜型)を麻酔下で1回の経鼻接種により感染させた。1回の接種量は、2×10
4PFU(プラーク形成単位)/50μL/マウスとした。各試料をウイルス感染の1週間前から感染後1週間までの計14日間、1日2回(午前9時及び午後6時)経口投与した。尚、タミフルの経口投与は、タミフルを0.05質量%含む生理食塩水を調製して行った。また、わかめ由来ペプチドの経口投与は、わかめ由来ペプチドを2.5質量%含む生理食塩水(第3群)、わかめ由来ペプチドを1.25質量%含む生理食塩水(第4群)、わかめ由来ペプチドを0.25質量%含む生理食塩水(第5群)を各々調製して行った。
第1群:対照(蒸留水) 0.4mL/マウス/day
第2群:タミフル(リン酸オセルタミビル) 0.2mg/マウス/day
第3群:わかめ由来ペプチド 10mg/マウス/day
第4群:わかめ由来ペプチド 5mg/マウス/day
第5群:わかめ由来ペプチド 1mg/マウス/day
【0054】
各群のマウスのうち、5例は感染後3日目に気道洗浄液(BALF)及び肺を採取し、ウイルス量をプラークアッセイにより測定した。残り5例について、感染2週間後にBALF及び血清を採取し、BALF及び血清中の中和抗体価を測定した。中和抗体価は以下の方法で測定した。即ち、血清をPBSで適宜希釈し、その0.1mLとインフルエンザウイルス液(200PFU/0.1mL)0.1mLを混合し、37℃で1時間処理した。この混合液0.1mLを35mmディッシュに培養したMDCK細胞に加えて感染させ、2日後に形成されたプラークをクリスタルバイオレット液で染色してプラーク数を測定した。血清の代わりに生理食塩水をウイルス液に加えた対照のプラーク数を100%として50%のプラーク数となる血清希釈倍数を求め、中和抗体価とした。
【0055】
表5に、BALF中及び肺内のウイルス量を示す。表6に、BALF中及び血清中のウイルスに対する中和抗体価を示す。
【0056】
【表5】
【0057】
表5の結果から、抗ウイルス薬のタミフル群だけでなく、わかめ由来ペプチド群のBALF中及び肺内のウイルス量は対照群に比べて明らかに低い値を示した。
【0058】
【表6】
【0059】
表6の結果は、抗ウイルス薬のタミフル群では何れの指標においても対照群に比べて明らかに低い値であり、インフルエンザウイルスに対する抗体産生量が少ないこと示している。一方、わかめ由来ペプチド群では何れの指標においても対照群に対し高い値を示した。この結果は、わかめ由来ペプチドを摂取することにより、インフルエンザウイルスに対する抗体が効率よく産生され、体内での当該ウイルスの増殖を抑制したことを示している。また、この結果は、わかめ由来ペプチドの摂取による抗インフルエンザウイルス活性の効果がタミフルとは異なるメカニズムにあることと、最初の感染だけではなく、将来、再びインフルエンザウイルスに暴露されたときにも抗原抗体反応によりその予防効果を発揮できる可能性があることを示している。
【0060】
(3)抗単純ヘルペスウイルス活性試験
性器ヘルペスウイルスである単純ヘルペスウイルス2型(HSV−2)の感染マウスを用い、わかめ由来ペプチドの抗単純ヘルペスウイルス活性について調べた。BALB/cマウス(6週齢、雌)を1群当たり5例用い、下記の5群に分けた。各群のマウスに単純ヘルペスウイルス2型(HSV−2 UW268株)を1回、局所に接種し、感染させた。1回の接種量は、1×10
3PFU(プラーク形成単位)/20μL/マウスとした。ウイルス接種の6日前及び1日前に、それぞれ、medroxyprogesterone 17−acetate(3mg/マウス)をマウスに皮下注射した。各試料をウイルス感染の1週間前から感染後1週間までの計14日間、1日2回(午前9時及び午後6時)経口投与した。尚、アシクロビルの経口投与は、アシクロビルを0.25質量%含む生理食塩水を調製して行った。また、わかめ由来ペプチドの経口投与は、わかめ由来ペプチドを2.5質量%含む生理食塩水(第3群)、わかめ由来ペプチドを1.25質量%含む生理食塩水(第4群)、わかめ由来ペプチドを0.25質量%含む生理食塩水(第5群)を各々調製して行った。
第1群:対照(蒸留水) 0.4mL/マウス/day
第2群:アシクロビル 1mg/マウス/day
第3群:わかめ由来ペプチド 10mg/マウス/day
第4群:わかめ由来ペプチド 5mg/マウス/day
第5群:わかめ由来ペプチド 1mg/マウス/day
【0061】
ウイルス接種の3日後に、マウスの局所を冷PBSで洗浄し、その中のウイルス量をプラークアッセイにより測定した。また、ウイルス接種の日から、その14日後まで、死亡例や性器ヘルペスの発症の程度を下記基準に基づく「1」〜「5」のlesion scoreにより記録した。
1:腫脹あり
2:腫脹及び発赤あり
3:液滲出あり
4:後ろ足麻痺
5:死亡
【0062】
表7に、局所洗浄液中のウイルス量を示す。
図2に、lesion scoreの記録結果を平均値で示す。表8に、感染後14日目のマウスの生存率を示す。
【0063】
【表7】
【0064】
表7の結果から、抗ウイルス薬のアシクロビル群だけでなく、わかめ由来ペプチド群の局所洗浄液中のウイルス量は対照群に比べて明らかに低い値を示した。
【0065】
【表8】
【0066】
図2及び表8の結果から、抗ウイルス薬のアシクロビル群及びわかめ由来ペプチド群では、対照群に比べて、HSV−2感染による性器ヘルペスの発症程度が少なく、生存率が高いことが明らかである。