(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
160℃下で24時間の放置前後において粘度 1.0(105Pa.s)になる場合の加熱温度の差が30〜60℃の範囲であるトナーを用いて画像形成するプリンタ部と、
前記トナーを加熱して定着させる定着器と、
前記定着器の表面温度を測定する温度センサと、
前記定着器の前記表面温度を制御するとともに、前記定着器の待機温度を、前記プリンタ部が形成したトナーの定着温度よりも10℃〜60℃低い温度に制御する温度制御部と、
前記定着器のウォーミングアップ時の前記温度センサにトナーが付着していない状態での標準検出温度と、ウォーミングアップ時の前記温度センサにトナーが付着している状態での検出温度と、を比較した結果に基づき、前記温度センサによる検出温度に対し補正を行う温度補正部と、
を備える画像形成装置。
160℃下で24時間の放置前後において粘度 1.0(105Pa.s)になる場合の加熱温度の差が30〜60℃の範囲であるトナーを用いて画像形成するプリンタステップと、
定着器によって前記トナーを加熱して定着させる定着ステップと、
前記定着器の表面温度を測定する温度センサが行う温度測定ステップと、
前記定着器の前記表面温度を制御するとともに、前記定着器の待機温度を、前記プリンタステップにおいて形成したトナーの定着温度よりも10℃〜60℃低い温度に制御する温度制御ステップと、
前記定着器のウォーミングアップ時の前記温度センサにトナーが付着していない状態での標準検出温度と、ウォーミングアップ時の前記温度センサにトナーが付着している状態での検出温度と、を比較した結果に基づき、前記温度センサによる検出温度に対し補正を行う温度補正ステップと、
を有する画像形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の画像形成装置及び画像形成方法を、図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
まず、結晶性ポリエステルを使ったトナーによるプリント時に、定着器に傷が発生するメカニズムについて説明する。本発明者らは、結晶性ポリエステルを使ったトナーでは、サーミスタに付着したトナーが、定着器が定着温度付近で長時間加熱されることにより、トナーの熱特性が変化することが見出した。通常のプリント動作(記録紙への定着を行っている状態)においてはサーミスタに付着、堆積したトナーが、サーミスタへの付着とサーミスタからの離脱を繰り返すが、印字動作を行わず定着器が定着温度付近で待機する状態が長い場合は、サーミスタに堆積したトナーは長時間定着装置から加熱されることになる。この場合にサーミスタに堆積したトナーの熱特性が通常のトナーよりも粘度が高い方向に不可逆的に硬化する。この硬化現象により、トナーがヒートローラを傷付け、傷に入り込んだトナーにより画像スジ等の画像弊害が発生する。
【0010】
図1は、第1の実施形態の画像形成装置100の全体構成例を示す外観図である。画像形成装置100は、例えば複合機である。画像形成装置100は、ディスプレイ110、コントロールパネル120、プリンタ部130、シート収容部140及び画像読取部200を備える。なお、画像形成装置100のプリンタ部130は、トナー像を定着させる装置であってもよいし、インクジェット式の装置であってもよい。
【0011】
画像形成装置100は、トナー等の現像剤を用いてシート上に画像を形成する。シートは、例えば紙やラベル用紙である。シートは、その表面に画像形成装置100が画像を形成できる物であればどのような物であってもよい。トナーは所定の環境に晒されることで粘度が硬化する低融点トナーがある。所定の環境とは、例えば、ヒートローラ近傍のように、長時間、高温に置かれる環境等である。長時間は、例えば24時間である。高温は、例えば定着温度の160である。低融点トナーは例えば、結晶性PESが用いられたトナーである。
【0012】
ディスプレイ110は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の画像表示装置である。ディスプレイ110は、画像形成装置100に関する種々の情報を表示する。
【0013】
コントロールパネル120は、複数のボタンを有する。コントロールパネル120は、ユーザの操作を受け付ける。コントロールパネル120は、ユーザによって行われた操作に応じた信号を、画像形成装置100の制御部に出力する。なお、ディスプレイ110とコントロールパネル120とは一体のタッチパネルとして構成されてもよい。
【0014】
プリンタ部130は、画像読取部200によって生成された画像情報又は通信路を介して受信された画像情報に基づいて、シート上に画像を形成する。プリンタ部130は、例えば以下のような処理によって画像を形成する。プリンタ部130の画像形成部は、画像情報に基づいて感光体ドラム上に静電潜像を形成する。プリンタ部130の画像形成部は、静電潜像に現像剤を付着させることによって可視像を形成する。現像剤の具体例として、トナーがある。プリンタ部130の転写部は、可視像をシート上に転写する。プリンタ部130の定着部は、シートに対して加熱及び加圧を行うことによって、可視像をシート上に定着させる。なお、画像が形成されるシートは、シート収容部140に収容されているシートであってもよいし、手指しされたシートであってもよい。
【0015】
シート収容部140は、プリンタ部130における画像形成に用いられるシートを収容する。
【0016】
画像読取部200は、読み取り対象の画像情報を光の明暗として読み取る。画像読取部200は、読み取られた画像情報を記録する。記録された画像情報は、ネットワークを介して他の情報処理装置に送信されてもよい。記録された画像情報は、プリンタ部130によってシート上に画像形成されてもよい。
【0017】
図2は、第1の実施形態の画像形成装置100が備える定着装置130aの構成例を示す図である。定着装置130aは、プリンタ部130が備える。定着装置130aは、温度制御部152、温度センサ131、熱源132、ヒートローラ133及びプレスローラ134を備える。定着装置130aは、シートに付着したトナーを溶かす。定着装置130aは、溶かしたトナーに圧力を加えることでシートに付着させる。温度制御部152は、制御部150(
図3参照)が備える。
【0018】
温度制御部152は、ヒートローラ133の温度を所定の温度範囲に制御する。温度制御部152は、温度センサ131から受け付けた温度情報に基づいて、熱源132への電力供給量を上昇させるか又は下降させるかの判定を行う。温度制御部152は判定結果に基づいて、熱源132からの供給電力を決定する。所定の温度範囲とは、定着時には、目標定着温度範囲内であり、プリンタ部130が画像形成を行っていない待機時には、待機温度範囲に制御する。本実施形態では、目標定着温度は160度°とした。
【0019】
温度センサ131は、ヒートローラ133の温度を測定する。温度センサ131は、例えば接触式サーミスタである。温度センサ131は、ヒートローラ133に接触する接触面の表面温度を測定する。温度センサ131は、測定した温度を温度制御部152に出力する。
【0020】
熱源132は、発熱することでヒートローラ133を加熱する。熱源132は、例えばハロゲンランプである。熱源132は、温度制御部152が決定した温度に基づいて発熱量を変化させる。熱源132は、ヒートローラ133の内部に配置される。
【0021】
ヒートローラ133は、ヒートローラ133とプレスローラ134との間を通過するシートに付着したトナーを表面温度により溶かす。ヒートローラ133は、熱源132によって加熱される。画像形成中の場合、ヒートローラ133の表面温度は定着温度が維持される。スタンバイ状態の場合、ヒートローラ133の表面温度は定着温度以下の温度が維持される。ヒートローラ133は、回転することでシートを通過させる。
【0022】
プレスローラ134は、ヒートローラ133とプレスローラ134との間を通過するシートに圧力を与える。プレスローラ134が圧力を与えることによって、ヒートローラ133によって溶かされたトナーをシートに定着させる。プレスローラ134は、回転することでシートを通過させる。
【0023】
図3は、第1の実施形態の画像形成装置100が定着処理を行うための機能構成を表す機能ブロック図である。画像形成装置100は、ディスプレイ110、コントロールパネル120、定着装置130a及び制御部150を備える。定着装置130aは、温度センサ131、熱源132、ヒートローラ133及びプレスローラ134を備える。以下、
図1、
図2にて説明済みの機能については説明を省略する。
【0024】
制御部150は、画像形成装置100の各部の動作を制御する。制御部150は、例えばCPU(Central Processing Unit)及びRAM(Random Access Memory)を備えた装置により実行される。制御部150は、画像形成プログラムを実行することによって、画像形成制御部151及び温度制御部152として機能する。画像形成制御部151は、コントロールパネル120から受け付けた指示に基づいて、プリンタ部130に画像形成処理をさせる。
【0025】
図4は、第1の実施形態の画像形成装置100による定着処理の流れを示すフローチャートである。画像形成装置100は、スタンバイ状態で待機する(ACT101)。画像形成装置100のコントロールパネル120は、ユーザから画像形成の指示を受け付ける(ACT102)。温度制御部152は、熱源132を発熱させることで、ヒートローラ133を加熱する(ACT103)。温度センサ131は、ヒートローラ133の表面温度を取得する(ACT104)。温度制御部152は、取得した表面温度と定着温度とが等しい、又は許容できる温度範囲内か否かを判定する(ACT105)。表面温度と定着温度とが等しくない、又は許容できる温度範囲内ではない場合(ACT105:NO)、処理はACT103へ遷移する。表面温度と定着温度とが等しい、又は許容できる温度範囲内である場合(ACT105:YES)、プリンタ部130は画像形成処理を行う(ACT106)。画像形成処理が終了すると、画像形成装置100はスタンバイ状態に遷移する(ACT107)。
【0026】
ここでトナーについて説明する。トナーA、トナーB及びトナーCを以下の方法で用意した。なお、トナーBは、トナーAを、160℃で24時間放置したものであるため、説明を省略する。
トナーA;
ポリエステル樹脂(バインダー) 80重量部
結晶性ポリエステル樹脂 10重量部
エステルワックス 3重量部
着色剤(MA−100) 6重量部
帯電制御剤(Al+Mgを含むポリサッカライド化合物) 1重量部
上記材料をヘンシェルミキサーにて混合した後、二軸押し出し機により溶融混練をした。得られた溶融混練物を冷却後、ハンマーミルで粗粉砕し、次いでジェット粉砕機で微粉砕、分級を行い、体積平均径7μmの粉体を得た。この粉体100重量部に対し、下記添加剤をヘンシェルミキサーにより添加混合してトナーを製造した。
平均一次粒子径が30nmの疎水性シリカ 1重量部
平均一次粒子径が20nmの疎水性酸化チタン 0.5重量部
トナーC;
トナーCは、トナーAが含有するポリエステル樹脂を75重量部及び結晶性ポリエステル樹脂を15重量部に変えた以外は、トナーAと同様に製造したもので、さらに、160度の環境に24時間放置したものである。
【0027】
図5は、トナーA、トナーB及びトナーCの温度変化に伴う粘度変化を測定した測定結果を表すグラフである。グラフの横軸は、トナーの加熱温度を表す。グラフの縦軸は、トナーの粘度を表す。熱履歴によりトナーが硬化する特性は、熱履歴を受ける前後で、各トナーの粘度がどの程度異なるかをみることで特定できる。本実施形態では、トナーを160度の環境に24時間放置する前と放置した後の粘度測定結果から、トナーの粘度が1.0(10
5Pa.s)となる温度差で表している。粘度1.0(10
5Pa.s)は、トナーによりヒートローラ133の表面を傷つけることがない大きさという観点で選定した。トナーの粘度は、島津製作所製のフローテスタCFT500Dを用いて以下の条件にて測定された。
昇温速:2.5度/分、試験荷重:10kg、予熱時間:300秒、ダイ穴径:1.0mm、ダイ長さ:1.0mm。
【0028】
トナーAは、160度の環境に24時間放置する前の低融点トナーである。矢印301は、トナーAが粘度1.0(10
5Pa.s)となる温度を表す。矢印301によると、温度が90度のときにトナーAは粘度が1.0(10
5Pa.s)となる。トナーBを160度の環境に24時間放置した後のトナーAである。矢印302は、トナーBが粘度1.0(10
5Pa.s)となる温度を表す。矢印302によると、温度が150度のときにトナーBは粘度が1.0(10
5Pa.s)となる。従って、低融点トナーが放置前後で、粘度が1.0(10
5Pa.s)となる温度差は、150度−90度=60度となる。トナーCは、トナーBとは異なるトナーである。矢印303は、トナーCが粘度1.0(10
5Pa.s)となる温度を表す。矢印303によると、温度が200度のときにトナーCは粘度が1.0(10
5Pa.s)となる。従って、低融点トナーと比較して粘度が1.0(10
5Pa.s)となる温度差は、200度−90度=110度となる。
【0029】
図6は、第1の実施形態の画像形成装置100で通紙試験を行った場合の試験結果を表す図である。通紙試験は右の条件で行われた。通紙試験では、160度の環境に24時間放置された前後の粘度変化が60度であるトナーAが用いられた(実施例1〜実施例3、比較例1〜比較例4)。通紙試験では、画像形成装置100として、東芝製MFP e−STUDIO 5008Aが用いられた。通紙試験では、印字率8%として画像形成された。
【0030】
通紙試験では、ヒートローラ133の温度がスタンバイ状態から定着温度に到達するまでの復帰時間を右の基準で判定した。復帰時間が10秒以下の場合、◎と判定する。復帰時間が20秒以下の場合、○と判定する。復帰時間が21秒以上の場合、×と判定する。
【0031】
通紙試験では、ヒートローラ133に傷が発生し、画像に弊害が発生するレベルを以下基準で判定した。通紙枚数が30万枚以上の場合、◎と判定する。通紙枚数が15万枚以上30万枚未満の場合、○と判定する。通紙枚数が15万枚未満の場合、×と判定する。
【0032】
通紙試験では、復帰時間と通紙枚数との判定結果に基づいて、最終判定を行う。最終判定は、復帰時間と通紙枚数とのいずれか一つが×と判定された場合、最終判定は×と判定される。復帰時間と通紙枚数とのいずれにも×と判定されなかった場合、最終判定は○と判定される。
【0033】
図6の実施例1は、画像形成時の定着温度160度に対し、スタンバイ状態時の温度は30度低い、130度として通紙試験を行った結果を表す。スタンバイ状態時の温度から定着温度への復帰時間は、15秒であった。したがって、復帰時間は○とした。また、
図2に示す定着装置130aのヒートローラ133への傷の確認を行いながら通紙した結果、29万枚地点にてヒートローラ133への傷が発生した。したがって、ヒートローラ傷は○とした。復帰時間及びヒートローラ傷の結果より、最終判定は〇とした。
【0034】
図6の実施例2は、画像形成時の定着温度160度に対し、スタンバイ状態時の温度は60度低い、100度として通紙試験を行った結果を表す。スタンバイ状態時の温度から定着温度への復帰時間は、18秒であった。したがって、復帰時間は○とした。また、
図2に示す定着装置130aのヒートローラ133への傷の確認を行いながら通紙した結果、35万枚地点にてヒートローラ133への傷が発生した。したがって、ヒートローラ傷は◎とした。復帰時間及びヒートローラ傷の結果より、最終判定は〇とした。
【0035】
図6の実施例3は、画像形成時の定着温度160度に対し、スタンバイ状態時の温度は10度低い、150度として通紙試験を行った結果を表す。スタンバイ状態時の温度から定着温度への復帰時間は、10秒であった。したがって、復帰時間は◎とした。また、
図2に示す定着装置130aのヒートローラ133への傷の確認を行いながら通紙した結果、16万枚地点にてヒートローラ133への傷が発生した。したがって、ヒートローラ傷は○とした。復帰時間及びヒートローラ傷の結果より、最終判定は〇とした。
【0036】
図6の比較例1は、画像形成時の定着温度160度に対し、スタンバイ状態時の温度も同じ、160度として通紙試験を行った結果を表す。スタンバイ状態時の温度から定着温度への復帰時間は、0秒であった。したがって、復帰時間は◎とした。また、
図2に示す定着装置130aのヒートローラ133への傷の確認を行いながら通紙した結果、12万枚地点にてヒートローラ133への傷が発生した。したがって、ヒートローラ傷は×とした。復帰時間及びヒートローラ傷の結果より、最終判定は×とした。
【0037】
図6の比較例2は、画像形成時の定着温度160度に対し、スタンバイ状態時の温度は8度低い、152度として通紙試験を行った結果を表す。スタンバイ状態時の温度から定着温度への復帰時間は、6秒であった。したがって、復帰時間は◎とした。また、
図2に示す定着装置130aのヒートローラ133への傷の確認を行いながら通紙した結果、14万枚地点にてヒートローラ133への傷が発生した。したがって、ヒートローラ傷は×とした。復帰時間及びヒートローラ傷の結果より、最終判定は×とした。
【0038】
図6の比較例3は、画像形成時の定着温度160度に対し、スタンバイ状態時の温度は62度低い、98度として通紙試験を行った結果を表す。スタンバイ状態時の温度から定着温度への復帰時間は、22秒であった。したがって、復帰時間は×とした。また、
図2に示す定着装置130aのヒートローラ133への傷の確認を行いながら通紙した結果、36万枚地点にてヒートローラ133への傷が発生した。したがって、ヒートローラ傷は◎とした。復帰時間及びヒートローラ傷の結果より、最終判定は×とした。
【0039】
図6の比較例4は、画像形成時の定着温度160度に対し、スタンバイ状態時の温度は80度低い、80度として通紙試験を行った結果を表す。スタンバイ状態時の温度から定着温度への復帰時間は、25秒であった。したがって、復帰時間は×とした。また、
図2に示す定着装置130aのヒートローラ133への傷の確認を行いながら通紙した結果、39万枚地点にてヒートローラ133への傷が発生した。したがって、ヒートローラ傷は◎とした。復帰時間及びヒートローラ傷の結果より、最終判定は×とした。
【0040】
図6の比較例5は、トナーとしてトナーCの160℃24時間放置する前のトナーを用い、画像形成時の定着温度160度に対し、スタンバイ状態時の温度を30度低い130度として通紙試験を行った結果を表す。スタンバイ状態時の温度から定着温度への復帰時間は、15秒であった。したがって、復帰時間は〇とした。また、
図2に示す定着装置130aのヒートローラ133への傷の確認を行いながら通紙した結果、10万枚地点にてヒートローラ133への傷が発生した。したがって、ヒートローラ傷は×とした。復帰時間及びヒートローラ傷の結果より、最終判定は×とした。
【0041】
通紙試験によると、スタンバイ状態のヒートローラの温度は、定着温度よりも-10度から-60度の範囲を維持することで、温度センサ131に堆積した低融点トナーが、ヒートローラ133から受ける熱影響を軽減できる。その中でも、スタンバイ状態のヒートローラ133の表面温度は、定着温度よりも-20度から-40度の範囲を維持することが望ましい。
【0042】
このような構成をとることにより、温度制御部152は、スタンバイ状態のヒートローラの温度を定着温度よりも-10度から-60度の範囲を維持できる。これによって、温度センサ131に堆積した低融点トナーが、ヒートローラ133から受ける熱影響を軽減できる。したがって、低融点トナーの粘度が硬化し、ヒートローラ133を傷つけることを減らすことができ、より不具合の少ない画像を形成することができる。さらに、温度制御部152は、スタンバイ状態のヒートローラの温度を定着温度よりも-20度から-40度の範囲を維持することで、低融点トナーが、ヒートローラ133から受ける熱影響をさらに軽減できる。
【0043】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態における画像形成装置100について説明する。この実施形態で用いられるトナーは、上述のトナーAである。スタンバイ温度を定着温度よりも下げる点は第1の実施形態と同じである。
図7は、第2の実施形態の画像形成装置100が定着処理を行うための機能構成を表す機能ブロック図である。画像形成装置100は、制御部150の代わりに制御部150aを備える点で第1の実施形態とは異なるが、それ以外の構成は同じである。以下、第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0044】
制御部150aは、画像形成装置100の各部の動作を制御する。制御部150aは、例えばCPU及びRAMを備えた装置により実行される。制御部150aは、画像形成プログラムを実行することによって、画像形成制御部151、温度制御部152及び温度補正部153として機能する。
【0045】
温度補正部153は、温度センサ131によって測定された温度とウォームアップ時間差とに基づいて補正温度を決定する。温度センサ131にトナーが付着すると、温度センサ131にトナーが付着していない状態での標準測定温度と比べて測定温度の精度が下がる。したがって、温度センサ131が定着温度を測定するまでの時間が、トナーが付着していない状態よりも長くなる。ウォームアップ時間差は、トナーが付着していない状態で定着温度へ到達するまでの時間とトナーが付着している状態で定着温度へ到達するまでの時間との差を表す。補正温度は、温度センサ131の検知感度が下がった場合に、測定された温度を補正して決定された温度である。温度制御部152は、補正温度に基づいて熱源132の温度を決定する。
【0046】
図8は、ウォーミングアップ時間と温度センサ131の測定温度との関係を表すグラフである。グラフの横軸は、ウォーミングアップ時間を表す。ウォーミングアップ時間は、ヒートローラ133の加熱開始からの経過時間を表す。グラフの縦軸は、温度センサ131の測定温度を表す。測定温度Dは、温度センサ131にトナー付着がない基準状態での測定温度を表す。測定温度Eは、温度センサ131にトナー付着がある状態での測定温度を表す。設定温度は、画像形成時の定着温度を表す。
図8によると設定温度は160度である。測定温度Dが設定温度である160度に到達するまでの時間を(t-D)で表す。測定温度Eが設定温度である160度に到達するまでの時間を(t-E)で表す。
【0047】
図8によると、設定温度は160度である。
図8によると、測定温度Dが160度に到達するまでの時間(t-D)は、16秒である。
図8によると、測定温度Eが160度に到達するまでの時間(t-E)は、19秒である。温度センサ131にトナー付着がある状態では、温度センサ131が、160度を測定するまで3秒の遅れが生じることがわかる。したがって、ウォームアップ時間差は3秒であることがわかる。
【0048】
図9は、ウォームアップ時間差ごとのヒートローラ補正温度の一具体例を表す図である。温度補正部153は、ウォームアップ時間差に基づいて、補正温度を決定する。例えば、ウォームアップ時間差が3秒である場合、ヒートローラ補正温度は−30度である。したがって、温度補正部153は、温度センサ131にトナー付着がある状態では、温度センサ131の測定温度に30度を加えた温度を測定温度とする。
図9のウォームアップ時間差とヒートローラ補正温度とは、異なる数値が用いられてもよい。例えば、ウォームアップ時間差が2の場合、ヒートローラ補正温度として、−5度が用いられてもよい。
【0049】
図10は、第2の実施形態の画像形成装置100による定着処理の流れを示すフローチャートである。画像形成装置100は、スタンバイ状態で待機する(ACT101)。
画像形成装置100のコントロールパネル120は、ユーザから画像形成の指示を受け付ける(ACT102)。温度制御部152は、熱源132を発熱させることで、ヒートローラ133を加熱する(ACT103)。温度センサ131は、ヒートローラ133の表面温度を取得する(ACT104)。温度補正部153は、取得された表面温度に基づいて補正温度を決定する(ACT201)。温度制御部152は、補正温度と定着温度とが等しいか否かを判定する(ACT202)。補正温度と定着温度とが等しくない場合(ACT202:NO)、処理はACT103へ遷移する。補正温度と定着温度とが等しい場合(ACT202:YES)、プリンタ部130は画像形成処理を行う(ACT203)。画像形成処理が終了すると、画像形成装置100はスタンバイ状態となる(ACT204)。
【0050】
図11は、第2の実施形態の画像形成装置100で通紙試験を行った場合の試験結果を表す図である。通紙試験は第1の実施形態で行われた際の条件と同じ条件で行われた。
【0051】
図11の実施例4は、ウォームアップ時間差が1の場合、ヒートローラ補正温度を−10度として通紙試験を行った結果を表す。
図2に示す定着装置130aのヒートローラ133への傷の確認を行いながら通紙した結果、26万枚地点にてヒートローラ133への傷が発生した。したがって、ヒートローラ傷は○とした。最終判定は〇とした。
【0052】
図11の実施例5は、ウォームアップ時間差が2の場合、ヒートローラ補正温度を−20度として通紙試験を行った結果を表す。
図2に示す定着装置130aのヒートローラ133への傷の確認を行いながら通紙した結果、28万枚地点にてヒートローラ133への傷が発生した。したがって、ヒートローラ傷は○とした。最終判定は〇とした。
【0053】
このような構成をとることにより、温度補正部153は、測定温度に補正を加えることで、適切なヒートローラの表面温度を測定できる。したがって、温度センサ131に堆積した低融点トナーは、ヒートローラ133から受ける熱影響を軽減できる。さらに、画像形成装置100は、スタンバイ状態からの復帰時間を短縮できる。したがって、低融点トナーの粘度が硬化し、ヒートローラ133を傷つけることを減らすことができ、より不具合の少ない画像を形成することができる。さらに、画像形成処理に伴うユーザの待ち時間を減らすことができる。
【0054】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、温度制御部152を持つことにより、より不具合の少ない画像を形成することができる。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。