(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タービンロータの径方向に延出するとともに、前縁及び後縁で互いに接続される圧力面側翼壁及び負圧面側翼壁、前記圧力面側翼壁及び負圧面側翼壁の端部のうち、前記タービンロータの径方向の外側に配置された先端部に設けられた天板、前縁側に配置された前縁側領域、及び後縁側に配置された後縁側領域、を含む翼体と、
前記天板の前記後縁側領域のみに設けられ、隙間を介在させた状態でケーシングの内面と対向するように前記タービンロータの径方向の外側に突出し、かつ前縁側から後縁側に延在するチップシニングと、
を備え、
前記前縁側領域は、前記翼体の前記前縁から前記タービンロータの軸線方向での前記翼体の全長の10%以上の長さの範囲内の領域であるタービン動翼。
前記後縁側領域のうち、前記翼体の前記後縁から前記タービンロータの軸線方向での前記翼体の全長の10%の長さとなる位置と前記後縁との間に配置された領域には、前記チップシニングを配置しない請求項1から3のいずれか一項記載のタービン動翼。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、チップシニングは、チップシニングの両側面、及びチップシニングの頂面の3方向から加熱されるため、熱負荷が大きい。
特許文献1の動翼では、負圧面側翼壁に沿って前縁端から後縁領域の始端まで延在するようにチップシニングを設けていた。このため、動翼のチップにおいて熱負荷を受ける部分が多いという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、チップリークの増大を抑制した上で、チップの熱負荷を抑制することの可能なタービン動翼、及びガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係るタービン動翼によれば、タービンロータの径方向に延出するとともに、前縁及び後縁で互いに接続される圧力面側翼壁及び負圧面側翼壁、前記圧力面側翼壁及び負圧面側翼壁の端部のうち、前記タービンロータの径方向の外側に配置された先端部に設けられた天板、前縁側に配置された前縁側領域、及び後縁側に配置された後縁側領域、を含む翼体と、前記天板の前記後縁側領域のみに設けられ、隙間を介在させた状態でケーシングの内面と対向するように前記タービンロータの径方向の外側に突出し、かつ前縁側から後縁側に延在するチップシニングと、を備え
、前記前縁側領域は、前記翼体の前記前縁から前記タービンロータの軸線方向での前記翼体の全長の10%以上の長さの範囲内の領域である。
また、本発明の一態様に係るタービン動翼によれば、タービンロータの径方向に延出するとともに、前縁及び後縁で互いに接続される圧力面側翼壁及び負圧面側翼壁、前記圧力面側翼壁及び負圧面側翼壁の端部のうち、前記タービンロータの径方向の外側に配置された先端部に設けられた天板、前縁側に配置された前縁側領域、及び後縁側に配置された後縁側領域、を含む翼体と、前記天板の前記後縁側領域のみに設けられ、隙間を介在させた状態でケーシングの内面と対向するように前記タービンロータの径方向の外側に突出し、かつ前縁側から後縁側に延在するチップシニングと、を備え、前記翼体は、前記タービンロータの周方向に複数配置されており、前記タービンロータの周方向で隣り合う位置に配置された前記翼体の間には、スロート部が形成されており、前記負圧面側翼壁の負圧面は、前記スロート部に対応するスロート位置を含み、前記前縁側領域は、前記タービンロータの軸線方向において、前記スロート位置から前記前縁側に前記翼体の全長の50%以下となる長さ分移動した位置と前記翼体の前記前縁との間の領域である。
また、本発明の一態様に係るタービン動翼によれば、タービンロータの径方向に延出するとともに、前縁及び後縁で互いに接続される圧力面側翼壁及び負圧面側翼壁、前記圧力面側翼壁及び負圧面側翼壁の端部のうち、前記タービンロータの径方向の外側に配置された先端部に設けられた天板、前縁側に配置された前縁側領域、及び後縁側に配置された後縁側領域、を含む翼体と、前記天板の前記後縁側領域のみに設けられ、隙間を介在させた状態でケーシングの内面と対向するように前記タービンロータの径方向の外側に突出し、かつ前縁側から後縁側に延在するチップシニングと、を備え、前記翼体は、前記タービンロータの周方向に複数配置されており、前記翼体は、キャンバーラインを含み、前記前縁側領域は、前記キャンバーラインのうち、最も前記タービンロータの回転方向に配置された位置と前記翼体の前記前縁との間の領域である。
また、本発明の一態様に係るタービン動翼によれば、タービンロータの径方向に延出するとともに、前縁及び後縁で互いに接続される圧力面側翼壁及び負圧面側翼壁、前記圧力面側翼壁及び負圧面側翼壁の端部のうち、前記タービンロータの径方向の外側に配置された先端部に設けられた天板、前縁側に配置された前縁側領域、及び後縁側に配置された後縁側領域、を含む翼体と、前記天板の前記後縁側領域のみに設けられ、隙間を介在させた状態でケーシングの内面と対向するように前記タービンロータの径方向の外側に突出し、かつ前縁側から後縁側に延在するチップシニングと、を備え、前記前縁側領域は、前記負圧面側翼壁の負圧面のうち、最も前記タービンロータの回転方向に配置された位置と前記翼体の前記前縁との間の領域である。
【0010】
ところで、翼体の前縁側領域の温度は、翼体の後縁側領域の温度よりも低くなる。このため、翼体の前縁側領域を構成する金属の熱伸び量は、翼体の後縁側領域を構成する金属の熱伸び量と比較して小さくなる。したがって、ケーシングと翼体の前縁側領域とが接触する可能性は低い。よって、ケーシングと翼体の前縁側領域との接触を抑制する観点からは、前縁側領域にチップシニングを設ける必要はない。
【0011】
そして、翼体の後縁側領域のみにチップシニングを設け、かつ翼体の前縁側領域にチップシニングを設けないことにより、チップシニングの形成領域が少なくなる。これにより、チップが受ける熱負荷を小さくすることができる。
【0012】
また、翼体の前縁側領域の圧力面と負圧面との圧力差は、後縁側領域の圧力面と負圧面との圧力差よりも小さく、前縁側領域のチップリークは元々少ないため、前縁側領域におけるチップシニングの効果は小さい。
したがって、翼体の前縁側領域にチップシニングを設けていなくてもタービン動翼のチップリークが増加する可能性は低い。
【0013】
本発明によれば、天板の後縁側領域のみに設けられ、ロータの径方向の外側に突出し、かつ前縁側から後縁側に延在するチップシニングを有することで、チップシニングによるチップリークの抑制効果の小さい前縁側領域にチップシニングが配置されることがなくなるため、チップシニングの形成領域を少なくすることが可能となる。
これにより、チップリークの増大を抑制した上で、チップシニングの熱負荷を抑制することができる。
また、翼体の前縁からタービンロータの軸線方向での翼体の全長の10%以上の長さの範囲内は、チップシニングの効果が小さい。よって、この範囲内の領域を、チップシニングを形成しない前縁側領域とすることができる。
また、例えば、スロート位置から前縁側に翼体の全長の50%よりも長い長さ分移動した位置と翼体の前縁との間を前縁側領域とすると、チップシニングが形成される後縁側領域が大きくなるため、チップの熱負荷を十分に抑制することが困難な可能性がある。
そこで、スロート位置から前縁側に翼体の全長の50%以下の長さ分移動した位置と翼体の前縁との間を前縁側領域とすることで、チップの熱負荷を十分に抑制することができる。
また、例えば、キャンバーラインのうち、最もロータの回転方向に配置された位置よりも前縁側の位置から前縁までの領域を前縁側領域とすると、チップシニングが形成されない領域が少なくなるため、チップの熱負荷を抑制することが困難となる可能性がある。一方、キャンバーラインのうち、最もロータの回転方向に配置された位置よりも後縁側の位置から前縁までの領域を前縁側領域とすると、チップシニングが形成される領域が少なくなるため、チップリークが増加する可能性がある。したがって、キャンバーラインのうち、最もロータの回転方向に配置された位置と翼体の前縁との間の領域を前縁側領域とすることで、チップの熱負荷を抑制した上で、チップリークの増加を抑制することができる。
また、例えば、負圧面側翼壁の負圧面のうち、最もタービンロータの回転方向に配置された位置よりも前縁側の位置から前縁までの領域を前縁側領域とすると、チップシニングが形成されない領域が少なくなるため、チップの熱負荷を抑制することが困難となる可能性がある。一方、負圧面側翼壁の負圧面のうち、最もタービンロータの回転方向に配置された位置よりも後縁側の位置から前縁までの領域を前縁側領域とすると、チップシニングが形成される領域が少なくなるため、チップリークが増加する可能性がある。したがって、負圧面側翼壁の負圧面のうち、最もタービンロータの回転方向に配置された位置と翼体の前縁との間の領域を前縁側領域とすることで、チップの熱負荷を抑制した上で、チップリークの増加を抑制することができる。
【0014】
また、上記本発明の一態様に係るタービン動翼において、前記チップシニングは、前記天板のうち、前記負圧面側翼壁側に位置する外周部に配置させてもよい。
【0015】
このように、チップシニングは、天板のうち、負圧面側翼壁側に位置する外周部に配置させることで、圧力面側翼壁側にチップシニングを配置させたときよりもチップリークの増大を抑制することができる。
【0016】
また、上記本発明の一態様に係るタービン動翼において、前記翼体は、該翼体の内側に設けられ、冷却媒体が流れる冷却流路と、前記冷却媒体を該翼体の外側に吐出させる複数の冷却孔と、を備えており、前記複数の冷却孔は、前記翼体の前記後縁側領域のみに設けてもよい。
【0017】
このように、翼体の後縁側領域のみに複数の冷却孔を設けることで、後縁側領域のみに形成されたチップシニングだけを積極的に冷却して、3面加熱されるチップシニングが溶融すること(減肉すること)を抑制すればよく、チップシニングがない前縁側領域はあまり冷却しなくてすむので、チップ冷却する冷却空気を低減することができる。
【0018】
また、本発明の一態様に係るタービン動翼によれば、前記翼体は、該翼体の内側に設けられ、冷却媒体が流れる冷却流路と、前記冷却媒体を該翼体の外側に吐出させる冷却孔と、を備えており、前記冷却孔は、前記翼体の前記前縁側領域及び前記後縁側領域にそれぞれ複数設けられており、前記前縁側領域に設けられた冷却孔の密度は、前記後縁側領域に設けられた冷却孔の密度よりも低くてもよい。
【0019】
このように、翼体の前縁側領域及び後縁側領域にそれぞれ複数の冷却孔を設けるとともに、前縁側領域に設けられた冷却孔の密度を後縁側領域に設けられた冷却孔の密度よりも低くすることで、チップシニングがない前縁側領域はあまり冷却しなくてすむので、チップ冷却する冷却空気を低減することができる。
【0020】
また、本発明の一態様に係るタービン動翼によれば、前記翼体は、該翼体の内側に設けられ、冷却媒体が流れる冷却流路と、前記冷却媒体を前記翼体の外側に吐出させる冷却孔と、を備えており、前記冷却孔は、前記翼体の前記前縁側領域及び前記後縁側領域にそれぞれ設けられており、前記前縁側領域に設けられた冷却孔の径は、前記後縁側領域に設けられた冷却孔の径よりも小さくしてもよい。
【0021】
このように、翼体の前縁側領域及び後縁側領域にそれぞれ冷却孔を設け、前縁側領域に設けられた冷却孔の径を後縁側領域に設けられた冷却孔の径よりも小さくすることで、温度が上昇しやすい翼体の後縁側領域を積極的に冷却して、3面加熱されるチップシニングが溶融すること(減肉すること)を抑制すればよく、チップシニングがない前縁側領域はあまり冷却しなくてすむので、チップ冷却する冷却空気を低減することができる。
【0034】
また、本発明の一態様に係るタービン動翼によれば、前記後縁側領域のうち、前記翼体の前記後縁から前記タービンロータの軸線方向での前記翼体の全長の10%の長さとなる位置と前記後縁との間に配置された領域には、前記チップシニングを配置しなくてもよい。
【0035】
ここで、後縁側領域のうち、翼体の後縁からロータの軸線方向での翼体の全長の10%の長さまでの範囲内となる領域での圧力面と負圧面との圧力差は、該領域を除いた後縁側領域での圧力面と負圧面との圧力差と比較して十分に小さい。
したがって、翼体の後縁からロータの軸線方向での翼体の全長の10%の長さまでの範囲内となる領域にチップシニングを設けなくてもチップリークの増加を抑制することができる。
【0036】
また、本発明の一態様に係るタービン動翼によれば、前記チップシニング及び前記翼体は、金属製基材を加工することで一体形成されており、前記翼体を構成する前記金属製基材の外面のみを覆う遮熱コーティング層を有してもよい。
【0037】
このように、翼体を構成する金属製基材の外面のみを覆う遮熱コーティング層を有することで、チップシニングによる相手側の被切削性を確保することができる。
【0038】
また、本発明の一態様に係るガスタービンによれば、燃焼用空気を吸入して圧縮空気を生成する圧縮機と、前記圧縮空気に燃料を噴射して燃焼させ、燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動されるタービンと、を備え、前記タービンは、所定方向に延在する前記タービンロータと、前記タービンロータの周方向及び軸線方向に複数配置された上記タービン動翼と、隙間を介在させた状態で前記チップシニングと対向する分割環を含み、かつ前記タービンロータ及び複数の前記タービン動翼を収容するケーシングと、を含んでもよい。
【0039】
このような構成とされたガスタービンは、チップリークの増大を抑制した上で、チップ(シニング)全体としての熱負荷を低下することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、チップリークの増大を抑制した上で、チップ(シニング)全体としての熱負荷を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施形態について詳細に説明する。
【0043】
(第1の実施形態)
図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係るガスタービン10について説明する。
図1では、説明の便宜上、ガスタービン10の構成要素ではない発電機15も図示する。
図1において、O
1はロータ30の軸線(以下、「軸線O
1」という)を示している。ロータ30の軸線O
1は、タービンロータ31の軸線でもある。以下の説明において、「タービンロータ31の軸線O
1」という場合がある。また、
図1に示す圧縮機11に記載された矢印は、圧縮空気の流れ方向を示している。
【0044】
ガスタービン10は、圧縮機11と、燃焼器12と、タービン13と、を有する。
圧縮機11は、圧縮機ロータ21と、複数の圧縮機動翼段23と、圧縮機ケーシング24と、複数の圧縮機静翼段25と、を有する。
【0045】
圧縮機ロータ21は、円筒形状とされた回転体である。圧縮機ロータ21は、外周面21aを有する。圧縮機ロータ21は、タービン13を構成するタービンロータ31と連結されている。圧縮機ロータ21は、タービンロータ31とともに、ロータ30を構成している。圧縮機ロータ21は、軸線O
1回りに回転する。
【0046】
複数の圧縮機動翼段23は、軸線O
1方向に間隔を空けた状態で、圧縮機ロータ21の外周面21aに配列されている。圧縮機動翼段23は、圧縮機ロータ21の外周面21aの周方向に間隔を空けて配列された複数の圧縮機動翼27を有する。複数の圧縮機動翼27は、圧縮機ロータ21とともに回転する。
【0047】
圧縮機ケーシング24は、複数の圧縮機動翼27の先端部との間に隙間を介在させた状態で、圧縮機ロータ21及び複数の圧縮機動翼段23を収容している。
圧縮機ケーシング24は、軸線O
1を中心軸とする筒状の部材である。圧縮機ケーシング24は、内周面24aを有する。
【0048】
複数の圧縮機静翼段25は、軸線O
1方向に間隔を空けた状態で、圧縮機ケーシング24の内周面24aに配列されている。複数の圧縮機静翼段25は、軸線O
1方向から見て、圧縮機動翼段23と圧縮機静翼段25とが交互に配置されるように配列されている。
圧縮機静翼段25は、圧縮機ケーシング24の内周面24aの周方向に間隔を空けて配列された複数の圧縮機静翼28を有する。
上記構成とされた圧縮機11は、燃焼用空気を吸入して圧縮空気を生成する。圧縮機11により生成された圧縮空気は、燃焼器12内に流れ込む。
【0049】
燃焼器12は、圧縮機11とタービン13の間に設けられている。燃焼器12は、圧縮機11で生成された圧縮空気に燃料を噴射させることで、燃焼ガスを生成する。燃焼器12により生成された高温の燃焼ガスは、タービン13内に導入され、タービン13を駆動させる。
【0050】
タービン13は、タービンロータ31と、複数のタービン動翼段33と、タービンケーシング34と、複数のタービン静翼段35と、を有する。
【0051】
タービンロータ31は、円筒形状とされた回転体である。タービンロータ31は、外周面31aを有する。タービンロータ31は、軸線O
1回りに回転する。
【0052】
複数のタービン動翼段33は、軸線O
1方向に間隔を空けた状態で、タービンロータ31の外周面31aに配列されている。タービン動翼段33は、タービンロータ31の外周面21aの周方向に間隔を空けて配列された複数のタービン動翼37を有する。複数のタービン動翼37は、タービンロータ31とともに回転する。
【0053】
タービンケーシング34は、複数のタービン動翼37の先端部との間に隙間を介在させた状態で、タービンロータ31及び複数のタービン動翼段33を収容している。
タービンケーシング34は、軸線O
1を中心軸とする筒状の部材である。タービンケーシング34は、内周面34aを有する。
タービンケーシング34は、隙間を介在させた状態で、複数のタービン動翼37の先端部と対向する分割環41を有する。
【0054】
複数のタービン静翼段35は、軸線O
1方向に間隔を空けた状態で、タービンケーシング34の内周面34aに配列されている。複数のタービン静翼段35は、軸線O
1方向から見て、タービン動翼段33とタービン静翼段35とが交互に配置されるように配列されている。
タービン静翼段35は、タービンケーシング34の内周面34aの周方向に間隔を空けて配列された複数のタービン静翼38を有する。
【0055】
図2〜
図5を参照して、第1の実施形態のタービン動翼37の構成について説明する。
図2において、C1は翼体43の前縁側領域(以下、「前縁側領域C1」という)、C2は翼体43の後縁側領域(以下、「後縁側領域C2」という)、C3は後縁側領域C2のうち,後縁43B側に位置する領域(以下、「領域C3」という)、Dはタービンロータ31の回転方向(以下、「D方向」という)、Eは分割環41とタービン動翼37との間を流れる燃焼ガスの移動方向(以下、「E方向」という)をそれぞれ示している。
【0056】
図2において、L
1は、軸線O
1方向における翼体43の先端部の全長(以下、「全長L
1という」を示している。
L
2は、翼体43の前縁側領域C1に対応する部分の軸線O
1方向の長さ(以下、「長さL
2」という)を示している。
また、L
3は、翼体43の後縁側領域C2のうち、圧力面46aと負圧面47aとの圧力差が小さい領域C3に対応する翼体43の長さ(以下、「長さL
3」という)を示している。翼体43の長さL
3は、翼体43の後縁43Bを基準としたときの長さである。
【0057】
図3及び
図4では、冷却流路52を簡略化して図示している。
図5において、P
1は前縁側領域C1での圧力面46aと負圧面47aとの圧力差(以下、「圧力差P
1」という)、P
2は後縁側領域C2での圧力面46aと負圧面47aとの圧力差(以下、「圧力差P
2」という)、P
3は領域C3での圧力面46aと負圧面47aとの圧力差(以下、「圧力差P
3」という)をそれぞれ示している。また、
図5に示す符号L
1〜L
3は、
図2に示す符号L
1〜L
3と同一のものを示している。
【0058】
第1の実施形態のタービン動翼37は、翼体43と、チップシニング45と、を有する。
翼体43は、前縁43Aと、後縁43Bと、圧力面側翼壁46と、負圧面側翼壁47と、天板49と、冷却流路52と、前縁側領域C1と、後縁側領域C2と、冷却孔53と、を有する。
【0059】
圧力面側翼壁46及び負圧面側翼壁47は、タービンロータ31の径方向に延出している。圧力面側翼壁46及び負圧面側翼壁47は、それぞれ湾曲した形状とされている。圧力面側翼壁46及び負圧面側翼壁47は、前縁43A及び後縁43Bで互いに接続されている。
【0060】
圧力面側翼壁46は、圧力面側翼壁46の外周面となる圧力面46aを有する。負圧面側翼壁47は、負圧面側翼壁47の外周面となる負圧面47aを有する。
図1に示すガスタービン10が駆動して、タービンロータ31が回転すると、負圧面47aは、圧力面46aよりも低い圧力を受ける。
【0061】
天板49は、圧力面側翼壁46及び負圧面側翼壁47の端部(基端部及び先端部)のうち、タービンロータ31の径方向の外側に配置された先端部に設けられている。
【0062】
上述した圧力面側翼壁46、負圧面側翼壁47、及び天板49は、金属製基材56と、遮熱コーティング層58(Thermal Barrier Coating層(TBC層))と、を含んだ構成とされている。
【0063】
金属製基材56は、耐熱性に優れた金属材料で構成されている。金属製基材56は、外面56aを有する。
遮熱コーティング層58は、翼体43を構成する金属製基材56の外面56aを被覆している。遮熱コーティング層58は、高温の燃焼ガスから金属製基材56を保護する機能を有する。
【0064】
遮熱コーティング層58としては、例えば、遮熱層と、結合層と、が積層された2層積層体を用いることが可能である。結合層は、遮熱層と金属製基材56との間の熱膨張差を緩和させて、遮熱層と金属製基材56との密着性を向上させるための層である。
【0065】
遮熱層としては、例えば、熱伝導率の小さいセラミックス製の遮熱層(例えば、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)層)を用いることが可能である。また、結合層としては、例えば、MCrAlYと呼ばれる結合層を用いることが可能である。
【0066】
冷却流路52は、圧力面側翼壁46、負圧面側翼壁47、及び天板49の内側(翼体43の内側)に設けられている。冷却流路52には、高温雰囲気下に配置される翼体43を冷却するための冷却媒体が流れている。
【0067】
前縁側領域C1は、翼体43の前縁43Aからタービンロータ31の軸線O
1方向での翼体43の全長L
1の10%(コード(Chord)長の10%に対応)以上の長さL
2の範囲内の領域とされている。
一般的に翼体43の前縁43Aからタービンロータ31の軸線O
1方向での翼体43の全長の10%以上の長さの範囲内は、チップシニング45の効果が小さい。よって、この範囲内の領域を、チップシニング45を形成しない前縁側領域C1とすることができる。
【0068】
冷却孔53は、天板49の後縁側領域C2のみに複数設けられており、天板49の前縁側領域C1には設けられていない。複数の冷却孔53は、冷却流路52と連通している。複数の冷却孔53は、天板49と分割環41との間に形成された隙間に冷却媒体を吐出する。
【0069】
このように、天板49の後縁側領域C2のみに複数の冷却孔53を設けることで、翼体43の後縁側領域C2のみに複数の冷却孔53を設けることで、後縁側領域C2のみに形成されたチップシニング45だけを積極的に冷却して、3面加熱されるチップシニング45が溶融すること(減肉すること)を抑制すればよく、チップシニング45がない前縁側領域C1はあまり冷却しなくてすむので、チップ冷却する冷却空気を低減することができる。
【0070】
チップシニング45は、翼体43を形成する際に使用する金属製基材56の一部を除去することで形成されている。つまり、チップシニング45は、翼体43と一体とされている。
チップシニング45は、天板49の後縁側領域C2のみに設けられている。チップシニング45は、後縁側領域C2の一方の端(後縁43B)から他方の端(前縁側領域C1と対向する端)まで延在している。チップシニング45は、天板49のうち、負圧面側翼壁47側に位置する外周部に配置されている。
【0071】
ガスタービン10の駆動時において、分割環41と翼体43の前縁側領域C1とが接触する可能性は低いため、接触による分割環41及び翼体43の損傷を抑制するチップシニング45を前縁側領域C1に設ける必要はない。
【0072】
そして、翼体43の後縁側領域C2のみにチップシニング45を設け、翼体43の前縁側領域C1にチップシニング45を設けないことで、チップシニング45の形成領域が少なくなる。これにより、熱負荷を受けるチップシニング45の領域を小さくすることが可能となるので、3面加熱されるチップシニング45が溶融すること(減肉すること)を抑制するための冷却空気を削減することができる。
【0073】
また、
図5に示すグラフから分かるように、翼体43の前縁側領域C1の圧力面46aと負圧面47aとの圧力差P
1は、後縁側領域C2の圧力面46aと負圧面47aとの圧力差P
2よりも小さい。
【0074】
チップシニング45は、冷却流路52に連通し、かつ冷却媒体を吐出する冷却孔59を有する。このような構成とされた冷却孔59をチップシニング45に設けることで、高温雰囲気下に配置されるチップシニング45を直接冷却することができる。
【0075】
チップシニング45の表面には、遮熱コーティング層58(TBC層)が形成されていない。このように、チップシニング45の表面にTBC層を形成しないことで、チップシニング45と分割環41とが接触した際のチップシニング45による相手側の被切削性を確保することができる。
【0076】
第1の実施形態のタービン動翼37によれば、天板49の後縁側領域C2のみに設けられ、タービンロータ31の径方向の外側に突出し、かつ前縁43A側から後縁43B側に延在するチップシニング45を有することで、チップシニング45によるチップリークの抑制効果の小さい前縁側領域C1にチップシニング45が配置されることがなくなるため、チップシニング45の形成領域を少なくすることが可能となる。
これにより、チップリークの増大を抑制した上で、3面加熱されるチップシニング45が溶融すること(減肉すること)を抑制するための冷却空気を削減することができる。
【0077】
また、上述した第1の実施形態のタービン動翼37を含むガスタービン10によれば、チップリークの増大を抑制した上で、チップシニング45の熱負荷を抑制することができるとともに、チップシニング45を冷却する冷却空気を削減することができる。
【0078】
なお、
図2では、一例として、チップシニング45を後縁43Bまで配置させた場合を例に挙げて説明したが、翼体43の後縁43Bからタービンロータ31の軸線O
1方向における翼体43の全長L
1の10%の長さL
3までの範囲内の領域C3には、チップシニング45を配置しなくてもよい。
【0079】
図5に示すように、領域C3での圧力面46aと負圧面47aとの圧力差P
3は、領域C3を除いた後縁側領域C2での圧力面46aと負圧面47aとの圧力差P
2と比較して十分に小さい。したがって、翼体43の後縁43Bから長さL
3までの範囲内となる領域C3にチップシニング45を設けなくてもチップリークの増加を抑制することができる。
【0080】
また、第1の実施形態では、一例として、翼体43の後縁側領域C2のみに複数の冷却孔53を設けた場合を例に挙げて説明したが、冷却孔53を設ける位置はこれに限定されない。
例えば、同一の孔径とされた冷却孔を、翼体43の前縁側領域C1及び後縁側領域C2にそれぞれ複数設け、前縁側領域C1に設けられた冷却孔の密度を、後縁側領域C2に設けられた冷却孔の密度よりも低くてもよい。
【0081】
このような構成とすることで、チップシニング45がない前縁側領域はあまり冷却しなくてすむので、チップ冷却する冷却空気を低減することができる。
【0082】
また、翼体43の前縁側領域C1及び後縁側領域C2にそれぞれ冷却孔を設け、前縁側領域C1に設けられた冷却孔の径を後縁側領域C2に設けられた冷却孔の径よりも小さくしてもよい。
【0083】
このような構成とすることで、温度が上昇しやすい翼体の後縁側領域を積極的に冷却して、3面加熱されるチップシニング45が溶融すること(減肉すること)を抑制すればよく、チップシニング45がない前縁側領域はあまり冷却しなくてすむので、チップ冷却する冷却空気を低減することができる。
【0084】
(第2の実施形態)
図6を参照して、第2の実施形態のガスタービン65について説明する。
図6では、
図1〜
図5に示す構造体と同一構成部分には同一符号を付す。
図6において、L
4はスロート位置69Aから前縁43A側に翼体43の全長の50%以下の長さ分移動した位置から前縁43Aまでの長さ(以下、「長さL
4」という)を示している。また、
図6において、
図1〜
図5に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0085】
第2の実施形態のガスタービン65は、第1の実施形態で説明したタービン動翼37に替えて、タービン動翼67を有すること以外は、第1の実施形態のガスタービン10と同様に構成されている。
【0086】
タービン動翼67は、第1の実施形態で説明したタービン動翼37を構成する前縁側領域C1及び後縁側領域C2に替えて、前縁側領域F1及び後縁側領域F2を有するとともに、後縁側領域F2にチップシニング45を配置させたこと以外は、タービン動翼37と同様に構成されている。
【0087】
タービンロータ31の周方向で隣り合う位置に配置された翼体43の間には、スロート部69が形成されている。
ここでのスロート部69とは、タービンロータ31の周方向で隣り合う位置に配置された2つの翼体43間に形成される流路が、一方の翼体43の負圧面47aと他方の翼体43の圧力面46aとに接触する仮想内接円を描いたときに内接円直径で示される幅の流路のことをいう。
図6では、説明の便宜上、スロート部69を直線で図示している。
【0088】
なお、スロート部69が形成される位置は、タービン動翼67の形状によって異なる。
図6に示すスロート部69の形成位置は、一例であり、
図6に示す位置に限定されない。
【0089】
タービン動翼67を構成する負圧面側翼壁47の負圧面47aは、スロート部69に対応するスロート位置69Aを有する。
【0090】
前縁側領域F1は、スロート位置69Aから前縁43A側に翼体43の全長L
1の50%以下の長さ分移動した位置69Bと翼体43の前縁43Aとの間に配置された領域(言い換えれば、長さL
4に対応する領域)である。
後縁側領域F2は、位置69Bから後縁43Bまでの間に配置された領域である。後縁側領域F2は、領域C3を含む。チップシニング45は、後縁側領域F2に設けられている。
前縁側領域F1の圧力面46aと負圧面47aとの圧力差P
1は、後縁側領域F2の圧力面46aと負圧面47aとの圧力差P
2よりも小さい。
【0091】
例えば、スロート位置69Aから前縁43A側に翼体43の全長L
1の50%よりも長い長さ分移動した位置と前縁43Aとの間を前縁側領域とすると、チップシニング45が形成される後縁側領域が大きくなるため、チップの熱負荷を十分に抑制することが困難な可能性がある。
【0092】
そこで、第2の実施形態のタービン動翼67のように、スロート位置69Aから前縁43A側に翼体43の全長L
1の50%以下の長さ分移動した位置69Bと翼体43の前縁43Aとの間を前縁側領域F1とすることで、チップの熱負荷を十分に抑制することができる。
【0093】
なお、第2の実施形態のタービン動翼67は、第1の実施形態のタービン動翼37と同様な効果を得ることができる。
また、第2の実施形態のタービン動翼67では、後縁側領域F2を構成する領域C3にもチップシニング45を設けた場合を例に挙げて説明したが、領域C3には、チップシニング45を設けなくてもよい。
【0094】
(第3の実施形態)
図7を参照して、第4の実施形態のガスタービン80について説明する。
図7において、
図1〜
図4に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
ガスタービン80は、タービン動翼37に替えて、タービン動翼81を有すること以外は、第1の実施形態のガスタービン10と同様に構成されている。
【0095】
タービン動翼81は、第1の実施形態のタービン動翼37を構成する前縁側領域C1及び後縁側領域C2に替えて、前縁側領域G1及び後縁側領域G2を有すること以外は、タービン動翼37と同様に構成されている。
【0096】
翼体43は、キャンバーライン83を含む。キャンバーライン83は、翼体43を平面視した状態で圧力面46aと負圧面47aから等しい距離にある点を結ぶことで形成される線である。
【0097】
前縁側領域G1は、キャンバーライン83のうち、最もタービンロータ31の回転方向(D方向)に配置された位置83Aと翼体43の前縁43Aとの間の領域である。
後縁側領域G2は、翼体43のうち、位置83Aから後縁43Bまでの領域である。後縁側領域G2は、領域C3を含む。チップシニング45は、後縁側領域G2に設けられている。
【0098】
例えば、キャンバーライン83のうち、位置83Aよりも前縁43A側の位置から前縁43Aまでの領域を前縁側領域とすると、チップシニング45が形成されない領域が少なくなるため、チップの熱負荷を抑制することが困難となる可能性がある。
【0099】
一方、位置83Aよりも後縁43B側の位置から前縁43Aまでの領域を前縁側領域とすると、チップシニング45が形成される領域が少なくなるため、チップリークが増加する可能性がある。
【0100】
第3の実施形態のタービン動翼81によれば、キャンバーライン83のうち、最もタービンロータ31の回転方向に配置された位置と翼体43の前縁43Aとの間の領域を前縁側領域H1とすることで、3面加熱されるチップシニング45が溶融すること(減肉すること)を抑制するための冷却空気を削減することができる。
【0101】
また、第3の実施形態のタービン動翼81では、後縁側領域H2を構成する領域C3にもチップシニング45を設けた場合を例に挙げて説明したが、領域C3には、チップシニング45を設けなくてもよい。
【0102】
(第4の実施形態)
図8を参照して、第4の実施形態のガスタービン90について説明する。
図8において、
図1〜
図5に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
ガスタービン90は、タービン動翼37に替えて、タービン動翼91を有すること以外は、第1の実施形態のガスタービン10と同様に構成されている。
【0103】
タービン動翼91は、第1の実施形態のタービン動翼37を構成する前縁側領域C1及び後縁側領域C2に替えて、前縁側領域I1及び後縁側領域I2を有すること以外は、タービン動翼37と同様に構成されている。
【0104】
翼体43の負圧面47aは、最もタービンロータ31の回転方向(D方向)に配置された位置91Aを有する。
前縁側領域I1は、翼体43のうち、位置91Aと翼体43の前縁43Aとの間の領域とされている。後縁側領域I2は、翼体43のうち、位置91Aと後縁43Bとの間に配置された領域である。後縁側領域I2は、領域C3を含む。
チップシニング45は、後縁側領域I2に設けられている。
【0105】
例えば、位置91Aよりも前縁43A側の位置から前縁43Aまでの領域を前縁側領域とすると、チップシニング45が形成されない領域が少なくなるため、チップの熱負荷を抑制することが困難となる可能性がある。
【0106】
一方、位置91Aよりも後縁43B側の位置から前縁43Aまでの領域を前縁側領域とすると、チップシニング45が形成される領域が少なくなるため、チップリークが増加する可能性がある。
【0107】
第4の実施形態のタービン動翼91によれば、位置91Aと翼体43の前縁43Aとの間の領域を前縁側領域I1とすることで、3面加熱されるチップシニング45が溶融すること(減肉すること)を抑制するための冷却空気を削減することができる。
【0108】
なお、第4の実施形態のタービン動翼91では、後縁側領域H2を構成する領域C3にもチップシニング45を設けた場合を例に挙げて説明したが、領域C3には、チップシニング45を設けなくてもよい。
【0109】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。