【課題を解決するための手段】
【0007】
発明に従う縫合糸アンカーは、硬組織開口の中の硬組織と接する少なくとも表面部分上に熱可塑性を有する材料を備えるか、または好ましくはこれはすべてそのような材料からなり、熱可塑性を有する材料の少なくとも一部はインサイチューで液化され、開口の壁の硬組織に浸透する。縫合糸の遠端は、たとえば遠位縫合糸溝、縫合糸チャネル、またはハトメなどの縫合糸を保持するための縫合糸導管(conduit)、1つよりも多くのそのよう
な導管、またはそのような導管の異なるものの組合せを備える。縫合糸アンカーは、特に、硬組織の中にアンカーを固定するプロセスの最後の段階でアンカーに対して縫合糸を固着するように設計され、縫合糸の固着は、硬組織開口の中でアンカーと硬組織との間で縫合糸をクランプすることによって、または縫合糸導管もしくは複数の縫合糸導管の潰れによってこれを制動するもしくはクランプすることによって、達成される。このことは、縫合糸の固着により、硬組織開口の中に縫合糸アンカーが固定されるもしくはアンカー固定されて液化プロセス(熱、振動)のおそらくは有害な影響から縫合糸を保護することが可能になる、および/またはアンカー固定プロセスの間もしくはおそらくはその後ですら縫合糸の引張りの調節が可能になる固定プロセスに主に依存しないことを意味する。
【0008】
さらに、縫合糸アンカーは、好ましくは遠端部分に構造を備えてもよく、この構造は縫合糸の引張りおよび/または止まり開口の底部に対するアンカー遠端の当接によって広がるまたは径方向に拡張することができ、広がりまたは拡張は硬組織開口の中でのまたはそれを越えての保持を改良する。掲記された広がりは、たとえば、液化プロセスの際にこのアンカー材料が熱の吸収によって機械的に弱まる結果、遠位のアンカーセクションが強制的に離間されてそのためにアンカー遠位部分が広がってしまい得ると、張力を加えられた縫合糸が縫合糸導管に近位のアンカー材料に対してまたはその中に押込まれることによって起こる。さらなる実施形態では、アンカーの部分は圧縮荷重下で潰れることができるように設計され、これによりたとえば縫合糸の引張りの影響下で径方向に拡張することができる。
【0009】
機械的振動エネルギ(特に超音波振動エネルギ)が好ましくはそのために用いられる固定プロセスについては、発明に従う縫合糸アンカーが硬組織開口の中に押込まれ、同時に液化されるべき材料の中に液化エネルギが送られる。この目的のため、押圧力および振動エネルギをアンカーに送出するのに好適な工具が用いられ、工具の遠端は好ましくは縫合糸アンカーの近位面に装着され、工具の近端は振動源に結合される。この固定プロセスは縫合糸アンカーの回転をまったく必要とせず、すなわち、縫合糸アンカーは硬組織開口の中に螺合されず、したがって好ましくはねじのねじ山を備えない。
【0010】
振動源は、特に超音波振動源(たとえば、工具が結合される、おそらくはブースタを備える圧電振動発生器)であり、工具はその近端からその遠位面への振動の送出に好適であり、好ましくはこれにより遠位面が最大の長手方向振幅で振動する。インサイチュー液化のため、工具の遠位面が縫合糸アンカーの近位面に適用される。工具を活性化させて径方向または回転方向に振動させることも可能である。
【0011】
これに代えて、エネルギ源は、好ましくは可視または赤外線周波数範囲のレーザ光を発するレーザであってもよく、工具は、好ましくはガラスファイバを介してこの光をその遠端に送出するように具備される。インサイチュー液化のため、レーザ光は、遠位工具面の近くでまたは縫合糸アンカーの中で吸収される。後者の場合、縫合糸アンカーが備える熱可塑性を有する材料は、そのような吸収を行なう粒子または物質を含有してもよい。さらに、エネルギ源は、遠位工具面の近くまたは縫合糸アンカーの中で、たとえば遠位工具部分で電気抵抗器を加熱するかまたは渦電流を生じさせる電気エネルギ源、およびこれによる熱エネルギ源であってもよい。
【0012】
組織の許容可能な熱負荷と組合せた振動エネルギの助けにより、熱可塑性を有し、かつなすべき確実な嵌合接続の好適な機械的性質を有する材料の好適なインサイチュー液化は、熱可塑性を有し、かつ少なくとも0.5GPaの初期弾性率と、好ましくは2から200kHzの範囲(好ましくは15から40kHz、またはさらに好ましくは20から30kHzの間)の振動周波数と組合せた約350℃までの溶融温度とを有する材料を用いることによって達成可能である。熱可塑性を有する材料が機械的剛性を失わずに振動を伝達する場合は、少なくとも0.5GPaの弾性率が特に必要である。
【0013】
発明に従う縫合糸アンカーに好適な熱可塑性を有する材料は熱可塑性ポリマーであり、それらはたとえば、乳酸および/もしくはグリコール酸系ポリマー(PLA、PLLA、PGA、PLGAなど)、もしくはポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリカプロラクトン(PCL)、多糖類、ポリジオキサン(PD)、ポリ無水物、ポリペプチド、もしくは対応の共重合体もしくは掲記されたポリマーを成分として含有する複合材料などの再吸収可能もしくは分解可能ポリマー、またはポリオレフィン(たとえばポリエチレン)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリアリールケトン、ポリイミド、ポリフェニルスルフィド、もしくは液晶ポリマーLCP、ポリアセタール、ハロゲン化ポリマー、特にハロゲン化ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテル、もしくは同等の共重合体もしくは掲記されたポリマーを成分として含有する複合材料などの再吸収不可能もしくは分解不可能ポリマーである。
【0014】
分解可能な材料の具体的な実施形態は、すべてBoehringerの、(たとえば30%までの二相リン酸カルシウムで充填された)LR706 PLDLLA 70/30、R208
PLDLA 50/50、L210S、およびPLLA100%Lのようなポリ乳酸である。好適な分解可能ポリマー材料の一覧は、Erich Wintermantel und Suk-Woo Haa, "Medizinaltechnik mit biokompatiblen Materialien und Verfahren", 3. Auflage, Springer, Berlin 2002(以下、「Wintermantel」と称する)、200ページに見出すこともできる。PGAおよびPLAの情報については202ページ以降を参照。PCLについては207ページを参照。PHB/PHV共重合体については206ページを参照。ポリジオキサノンPDSについては209ページを参照。さらなる生体再吸収可能材料の考察は、たとえば、CA Bailey et al., J Hand Surg [Br] 2006 Apr;31(2):208-12に見出すことができる。
【0015】
分解不可能な材料の具体的な実施形態は、ポリエーテルケトン(PEEK Optima、グレー
ド450および150、Invibio Ltd)、ポリエーテルイミド、ポリアミド12、ポリア
ミド11、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリオキシメチレン、またはポリカーボネート−ウレタン(たとえば、DSMによるBionate、特にタイプ65Dおよび75D)である。ポリマーおよび用途の概略の表がWintermantelの150ページに列挙されている。具体例は、Wintermantelの161ページ以
降(PE、Hostalen Gur 812, Hoechst AG)、164ページ以降(PET)、169以降(PA、すなわちPA6およびPA66)、171以降(PTFE)、173以降(PMMA)、180(PUR、表を参照)、186以降(PEEK)、189以降(PSU)、191以降(POM−ポリアセタール、商品名Delrin、TenacもProtecによる内蔵式プ
ロテーゼ(endoprostheses)で用いられている)に見出すことができる。
【0016】
熱可塑性を有する材料は、さらなる機能を果たす異相(foreign phases)または化合物をさらに含有してもよい。特に、熱可塑性材料は、(たとえばリン酸カルシウムセラミックまたはガラスからなる)添加されるファイバまたはウィスカによって強化されてもよく、そのようなものは複合材料の代表である。熱可塑性を有する材料は、インサイチューで拡張するまたは溶解する(細孔を作製する)成分(たとえばポリエステル、多糖類、ヒドロゲル、リン酸ナトリウム)、インプラントを不透明にし、これによりX線で見えるようにする化合物、またはインサイチューで放出されて、たとえば治癒および再生の促進などの治療効果を有する化合物(たとえば、成長因子、抗生物質、炎症抑制剤、または酸分解という悪影響に対するリン酸ナトリウムまたは炭酸カルシウムなどのバッファ)をさらに含有してもよい。熱可塑性材料が再吸収可能である場合、そのような化合物の放出は遅延される。装置が振動エネルギの助けによってではなく電磁放射の助けによってアンカー固定される場合は、熱可塑性を有する液化可能材料は、特定的な周波数範囲(特に可視または赤外線周波数範囲の)そのような放射を吸収することができる(粒子状または分子状の)化合物を局所的に含有してもよい。それらはたとえば、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸ナトリウム、酸化チタン、マイカ、飽和脂肪酸、多糖類、グルコース、またはその混合物である。
【0017】
用いられる充填剤は、分解可能ポリマーで用いるべき分解可能骨刺激充填剤を含んでもよく、これらは、β−リン酸三カルシウム(TCP)、ヒドロキシアパタイト(HA、<90%の結晶性);またはTCP、HA、DHCP、バイオグラスの混合物を含む(Wintermantelを参照)。分解不可能なポリマーのための、部分的にしか分解可能でないまたはほとんど分解可能でないオッセオインテグレーション刺激充填剤は、バイオグラス、ヒドロキシアパタイト(>90%の結晶性)、HAPEX(登録商標)である。SM Rea et al., J Mater Sci Mater Med. 2004 Sept; 15(9):997-1005を参照。ヒドロキシアパタイト
については、L. Fang et al., Biomaterials 2006 Jul; 27(20):3701-7、M. Huang et al., J Mater Sci Mater Med 2003 Jul;14(7):655-60、およびW. Bonfield and E. Tanner,
Materials World 1997 Jan; 5 no. 1 :18-20も参照。生物に作用する充填剤の実施形態
およびそれらの考察は、たとえば、X. Huang and X. Miao, J Biomater App. 2007 Apr; 21(4):351-74), JA Juhasz et al. Biomaterials, 2004 Mar; 25(6):949-55に見出すことができる。粒子状の充填剤の種類は、粗い種類:5−20μm(含有量、優先的には10−25体積%)、サブミクロン(優先的には板状のアスペクト比>10、10−50nm、含有量0.5から5体積%の沈殿物からのようなナノ充填剤)を含む。実験は、超音波振動エネルギの助けによる液化により液化された材料がたとえば有望な海綿骨の小柱構造としての構造に浸透することができる能力を損なわずに比較的高度に熱可塑性ポリマーが充填可能になることを示す。
【0018】
発明に従う縫合糸アンカーは、熱可塑性を有する材料に加えて、熱可塑性を有しないまたは固定プロセス条件下でのインサイチュー液化に好適でない熱可塑性を有する材料(液化不可能材料)からなる部分(たとえばコア)も備えてもよい。そのような部分は、生体再吸収可能または生体再吸収不可能であり得る任意の好適な材料(たとえば、ポリマー、
金属、セラミック、ガラス)からなってもよい。生体再吸収不可能または生体分解不可能なそのような部分は、オッセオインテグレーションを進めるように装備される表面(たとえばそれ自体公知の表面構造または被覆)を備えてもよく、その場合、骨組織と接すると、特に熱可塑性を有する材料が生体再吸収可能または生体分解可能であるならば、オッセオインテグレーションによってアンカー固定機能が徐々に引継がれる必要がある。生体再吸収可能な好適な液化不可能材料は、たとえば、ヒドロキシアパタイトまたはリン酸カルシウムで充填されたポリ乳酸(PLA)、特に60%のリン酸三カルシウムで充填されたPLLAである。
【0019】
振動工具は、長さ約200mm以上すらに非常に細く設計することができる。したがって、発明に従う縫合糸アンカーおよび方法は、特に侵襲が最小限の外科手術に好適であるが、観血手術にも適用可能である。振動工具は好ましくは、工具材料の振動波長の半分に対応する長さ、または整数の因数で乗算されたこの半分の波長の長さを有する。たとえば、グレード5のチタンから作られる工具および20kHzの振動周波数についての理論的半波長は126.5mmであり、25kHzの振動周波数については101.2mmである。
【0020】
上述のような発明に従う装置および方法は、ヒトまたは動物の患者における実質的にすべての外科手順に特に適用可能であり、その外科手順において、縫合糸は硬組織に装着され、これに対して固着される必要がある。実施形態のうちいくつかは、機械的強度がほとんどない硬組織において特に有利である。同様に、発明に従う縫合糸アンカーおよび方法は、縫合糸を、硬組織の特徴に匹敵する特徴を有する置換材料にまたは一部が硬組織で一部が置換用の材料にもしくはさらなるインプラント(たとえば内蔵式プロテーゼ)に装着するのに適用可能であり、インプラントはたとえばアンダーカット開口(undercut opening)を好適に具備する必要がある。
【0021】
そのような適用例の例は、いわゆるノットレス単列手順(knot-less single row procedure)での骨組織への軟組織(特に靭帯、腱、軟骨組織)の固定、たとえば下にある骨組織(または対応の内蔵式プロテーゼ)への回旋腱板の固定、アキレス腱修復、寛骨臼もしくは肩関節臼への寛骨臼唇の再装着、またはいわゆる二列手順(double row procedure)(
図1を参照)における横方向アンカーとしてである。後者の場合、内側列の(縫合糸固着なしの)アンカーの固定のためにも同じ固定プロセスを用いることが有利である。そのような内側アンカーを固定するための好ましい装置および方法は、たとえば、同じ優先権を主張する同時係属中の出願に開示されている。しかしながら、発明に従う縫合糸アンカーおよび方法は、(たとえば二列手順における内側アンカーのための)硬組織への縫合糸の摺動可能な装着のためにも用いられてもよい。
【0022】
発明に従うアンカーおよび方法のさらなる例示的な適用例は、たとえばヒトの肩関節に関するもの:バンカート修復術もしくはSLAP損傷(上方関節唇)の修復、ヒトの手に関するもの:「スキーヤー母指」(急性症状)もしくは「ゲームキーパー母指」(慢性症状)の治療としてのUCL修復(肘関節の内側側副靭帯)、SL再建(舟状月状靭帯)、TFCC修復(三角線維軟骨複合体)、または中手指節関節のカプセル式再装着、ヒトの肘に関するもの:肘関節の内側側副靭帯再建(トミージョン手術)、ヒトの足に関するもの:ブロムストローム修復、腓骨支帯修復もしくは外反母趾再建、ならびにヒトの膝に関するもの:腸脛靭帯腱固定である。一般的に述べると、発明に従う縫合糸アンカーおよび方法は、ヒトの手および手首(指節間、中指節(metaphalangeal)、および中手指節関節の靭帯と手根靭帯)ならびにヒトの足および足首の関節の靭帯に関する修復外科手術において特に有利に適用可能である。
【0023】
発明に従う縫合糸アンカーおよび方法を添付の図と関連してさらに詳細に説明する。