(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の路面乃至床面表示材の構成の一例を示す概略断面図である。
図1に表されているように、本発明の路面乃至床面表示材(以下、本発明の表示材と略称することがある。)1は、道または床2の表面に設置されて使用に供されるものであり、下地層3、印刷層4および透明樹脂層5をこの順で有する。透明樹脂層5の表面には、特定の粒径のアルミナ粒子を特定の割合で含有するアルミナ粒子群6が散布固着されている。
【0018】
<道または床2>
本明細書において「道または床」は、人または乗り物が通行しうる場所を意味し、屋内であるか屋外であるかを問わない。具体的には、道路、通路もしくは駐車場の路面、建造物の床(ベランダ、バルコニー、屋上等の床を含む)、階段の踏面等が挙げられる。道または床は、セメントコンクリート、セメントモルタル、アスファルト等で舗装されていることが好ましい。
【0019】
<下地層3>
下地層3は、公知の熱硬化性樹脂を用いて形成される。公知の熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂等が挙げられるが、耐候性の観点から、アクリル樹脂が好ましく、メチルメタクリレート樹脂が特に好ましい。下地層3は、単層構造としてもよく、積層構造としてもよい。
【0020】
下地層3は、後述する印刷層4における印刷画像の色合い等に応じて着色されていることが好ましい。印刷画像が形成されている基材シート(例えば、紙、メッシュなど)が薄いと、下地層3の色が印刷画像の色調に影響を与えるからである。特に、印刷画像をより鮮明に視認できるようにするため、下地層3は白色であることが好ましい。下地層3を白色にする手段としては、例えば酸化チタン等の白色顔料を配合するという手段が挙げられる。下地層3における白色顔料の配合量は、通常、5〜15質量%である。
【0021】
下地層3には、更に、必要に応じて公知の添加剤が含まれていてもよい。公知の添加剤としては、例えば、硬化剤、硬化助剤、滑剤、充填材(ケイ砂、炭酸カルシウム等)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、粘度調節剤等が挙げられる。
【0022】
下地層3の平均厚みは、本発明の表示材の設置環境等に応じて適宜決定すればよいが、通常、0.2〜6.0mmであり、好ましくは0.3〜6.0mmである。特に、道または床2の表面がコンクリートで舗装されており且つ不陸が大きい場合や、道または床2がアスファルト舗装されている場合には、下地層3の厚みは2〜6mmとすることが好ましい。下地層3が薄すぎると、例えば大型車両の通行により高負荷がかかった時に表示材が破損する虞がある。また、下地層3が厚すぎると、材料コストが高くなるだけでなく、骨液分離による樹脂浮きにより硬化収縮が起こり表層のクラック等を招く虞がある。
【0023】
下地層3は後述する印刷層4より大きく作成することが好ましく、印刷層4の大きさ等にもよるが、例えば下地層、印刷層ともに四角形である場合、下地層が有する各辺の長さが印刷層の有する各辺の長さよりもそれぞれ5〜15mm大きめに作成しておくことが好ましい。
【0024】
<印刷層4>
下地層3の上には印刷層4が設けられている。印刷層4は、基材シートに、文字、図形、模様、絵柄等を印刷したものである。基材シートとしては通液性を有するシート、具体的には、織布、不織布、紙、メッシュなどからなるシートを用いる。織布および不織布は、木綿、絹等の天然繊維や、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、ガラス繊維などからなる。紙は、例えば木材パルプからなる。メッシュは、例えばステンレス、鉄、銅、ニッケル、チタン等の金属からなる。基材シートとしては、織布またはメッシュが好ましく、特にメッシュが好ましい。
【0025】
印刷は、グラビア印刷、平板印刷、フレキソ印刷、ドライオフセット印刷、パット印刷、スクリーン印刷等の公知の印刷方法を、本発明の表示材の用途や基材シートの材質に応じて適宜選択して行われる。印刷層4は、単層構造としてもよく、積層構造としてもよい。
【0026】
<透明樹脂層5>
本発明において、印刷層4は透明樹脂層5で覆われている。既に説明したように、この透明樹脂層5上にアルミナ粒子群6が散布固着され、その結果、アルミナ粒子群6を構成するアルミナ粒子が透明化している。
【0027】
透明樹脂層形成用樹脂としては、公知の透明樹脂を使用することができる。即ち、ポリウレタン樹脂(一般的な屈折率:1.49)やアクリル樹脂(一般的な屈折率:1.49〜1.53)、フッ素樹脂(一般的な屈折率:1.35)のような、アルミナの屈折率(一般的な屈折率:1.79)との差が大きな透明樹脂を使用してもよいし、不飽和ポリエステル樹脂(一般的な屈折率:1.6)、エポキシ樹脂(一般的な屈折率:1.55〜1.61)等、アルミナとの屈折率差が小さい透明樹脂を使用してもよい。このように透明樹脂が有する屈折率は、本発明の効果が損なわれない限りこれに限定されないが、好ましくは、JIS K0062−1992に準じた方法で測定したときに1.3〜1.7である。
【0028】
尚、本明細書において、「透明」とは、JIS K 7105に従って測定された全光線透過率が90%以上であることを意味する。
【0029】
透明樹脂としては、アルミナ粒子の透明化が起こりやすく、しかも耐候性および耐久性にも優れているという観点から、アクリル樹脂を使用することが好ましく、メチルメタクリレート樹脂を使用することが特に好ましい。
【0030】
透明樹脂層5は、単層構造としてもよく、積層構造としてもよい。また、透明樹脂層5には、必要に応じて硬化剤等の公知の添加剤が配合されていてもよい。
【0031】
<アルミナ粒子群6>
アルミナ粒子群6を構成するアルミナ粒子は、本発明の効果を損なわないという条件の下、単結晶/多結晶を問わず従来公知のアルミナを必要に応じて粉砕整粒して得られるものである。入手容易性及び製造コストの観点から、酸法で得られるアルミナ;バイヤー法(アルカリ法)で得られるアルミナ;バイヤー法で作られた仮焼アルミナを造粒、乾燥、焼成して得られる焼結アルミナ;原料を電気炉で溶融後結晶固化して得られる電融アルミナ;バイヤー法で作られた仮焼アルミナを原料にし、これを溶融・冷却凝固して得られる白色電融アルミナ;金属を高温で気化、酸化させて得られるアルミナ;を、必要に応じて粉砕整粒したものを用いることが好ましく、本発明の効果が最大限に発揮されるという観点から、白色電融アルミナを必要に応じて粉砕整粒したものを用いることが特に好ましい。
【0032】
アルミナ粒子群6は、粒径0.1mm以上1.0mm未満の小アルミナ粒子6aと粒径1.0〜1.2mmの大アルミナ粒子6bを合計で90〜100質量%含んでいる。本発明の表示材は、道や床のような、人や車両が通行したり雨風に曝されたりする過酷な環境下に適用するものであるところ、粒径が0.1mm未満の微細アルミナ粒子を透明樹脂層上に多量に散布すると、微細アルミナ粒子間に泥等の汚れが詰まりやすくなり、一方、粒径が1.2mmより大きい巨大アルミナ粒子が多いと、かかる巨大アルミナ粒子の角に汚れが付着しやすくなり、所謂エッジ汚れが起きやすくなる。このように、微細アルミナ粒子や巨大アルミナ粒子を多量に使用すると、本発明の表示材の表面に汚れが付着しやすくなり、これによって、本発明の効果(印刷画像の視認性および耐滑り性)が損なわれる。また、微細アルミナ粒子は、透明樹脂層外部に露出する部分が少ないことから、微細アルミナ粒子の過度の使用は耐滑り性の低下につながる。更にまた、巨大アルミナ粒子は透明樹脂層から剥離しやすく、耐久性を低下させる。このような理由により、本発明においては、上記のように小アルミナ粒子6aと大アルミナ粒子6bを多く含み、微細アルミナ粒子や巨大アルミナ粒子の含有量が抑制されているアルミナ粒子群6を使用することが重要である。より効果的に汚れを防止する観点からは、アルミナ粒子群6における大アルミナ粒子6bの含有量を抑制し、小アルミナ粒子6aの含有量を多くすることが好ましく、具体的には、小アルミナ粒子6aと大アルミナ粒子6bの合計の含有割合が90〜100質量%であるとともに、大アルミナ粒子6bの含有割合が10質量%以下(0%を含む)であることが好ましく、特に、小アルミナ粒子6aと大アルミナ粒子6bの合計の含有割合が90〜100質量%であるとともに、大アルミナ粒子6bの含有割合が0.1〜10質量%であることが好ましい。尚、粒径は、例えばTyler標準フルイを用いて測定される。
【0033】
アルミナ粒子群6の散布固着量は、50〜500g/m
2であり、好ましくは100〜350g/m
2の量である。アルミナ粒子群の使用量が少なすぎると、耐滑り性が不十分となる虞がある。アルミナ粒子群の使用量が多すぎると、アルミナ粒子同士が重なり合う結果、光の透過量が減ったり反射量が増えたりして印刷画像の視認性が損なわれる虞がある。また、アルミナ粒子間に汚れが詰まりやすくなったり、アルミナ粒子の角にエッジ汚れが溜まりやすくなる虞もある。
【0034】
アルミナ粒子群6を構成するアルミナ粒子の形状は、光の透過と反射をコントロールする観点、および、耐滑り性を一層向上させる観点から、多角形状などの球状以外の形状が好ましい。
【0035】
本発明においては、上述の小アルミナ粒子と大アルミナ粒子の含有割合を満たす市販のアルミナ粒子をそのままアルミナ粒子群として用いてもよいが、市販のアルミナ粒子2種以上を混合して上記の含有割合を満たすアルミナ粒子群を調整し、これを用いてもよい。混合は、製造に先立って予め行っておいてもよく、本発明の表示材の製造現場で行ってもよい。
【0036】
<トップコート層7>
本発明の表示材1においては、アルミナ粒子の剥離を防止する観点から、透明樹脂層5に散布固着されたアルミナ粒子群6の上に、更にトップコート層7を設けることが好ましい。
【0037】
トップコート層形成用樹脂としては、前述した公知の透明樹脂を使用することができる。耐候性の観点からは、アクリル樹脂を使用することが好ましく、特に、メチルメタクリレート樹脂を使用することが好ましい。接着性の観点からは、透明樹脂層と同種の透明樹脂を用いることが好ましい。トップコート層7には、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて硬化剤等の公知の添加剤が配合されていてもよい。
【0038】
トップコート層形成用樹脂においては、透明樹脂層形成用樹脂と同じ理由により、JIS K0062−1992に準じた方法で測定された屈折率が、1.3〜1.7であることが好ましい。
【0039】
トップコート層7は、透明樹脂層に散布固着されたアルミナ粒子由来の凹凸が損なわれないようにして設けることが好ましく、具体的には、その目付量が100〜300g/m
2、特に150〜200g/m
2となるように設けることが好ましい。
【0040】
<製造方法>
上記のような構造を有する本発明の表示材は、公知の方法により製造される。例えば、前処理として、道または床2の表面から塵、埃、油脂、泥、水等の異物を除去し、必要に応じて、さらに表面の汚れや付着物を除去する。道または床2の表面がセメントコンクリートやセメントモルタルで舗装されている場合には、ライナックス、区画線除去機等の表面処理機を用いることが好ましい。道または床2の表面がアスファルトで舗装されている場合には、ワイヤーブラシを装着したポリッシャー等を用いることが好ましい。旧塗膜等がある場合には、研磨機等を使用して除去することが好ましい。研摩粉等は、公知の手段で除去すればよく、例えば掃除機等で除去すればよい。
【0041】
次いで、必要に応じてアクリル系プライマー、エポキシ系プライマー等の公知のプライマーを塗布する。例えば道または床2がアスファルト舗装されている場合には、プライマーを塗布しなくても良いが、道または床2がコンクリート舗装されている場合には、プライマーを塗布することが好ましい。
【0042】
次いで、下地層3を形成するために、未硬化の熱硬化性樹脂および必要に応じて適宜使用される添加剤からなる下地層形成用樹脂組成物を塗布する。プライマーを設けた場合であれば、プライマーの表面が固化したことを確認した後に下地層形成用樹脂組成物の塗布を行うことが好ましい。下地層形成用樹脂組成物には、白色顔料や添加剤を配合しておいてもよい。なお、既に述べた通り、道または床2の表面がコンクリートで舗装され且つ不陸が大きい場合やアスファルトで舗装されている場合は、下地層3の厚みは2〜6mmとすることが好ましいのであるが、この場合の下地層形成用樹脂組成物の塗布量としては、3.2〜10.2kg/m
2が好ましい。
【0043】
下地層形成用樹脂組成物の硬化を確認した後、予め印刷を施しておいた基材シートを設置し、印刷層4を形成する。
【0044】
次いで、透明樹脂層5を形成するために、未硬化の透明樹脂および必要に応じて適宜使用される添加剤を含む透明樹脂層形成用樹脂組成物を、基材シートに樹脂が含浸するように塗布する。透明樹脂層形成用樹脂組成物の塗布量は、200〜600g/m
2が好ましく、400〜500g/m
2が特に好ましい。塗布量が少なすぎると、アルミナ粒子を透明樹脂層が強固に保持できない虞ある。塗布量が多すぎると、樹脂浮きによる硬化収縮による表層のクラック等を招く虞がある。
【0045】
透明樹脂層形成用樹脂組成物の硬化開始後完全硬化前に、アルミナ粒子群6を散布する。散布は、アルミナ粒子が部分的に透明樹脂層5に埋まるようにして行う。尚、アルミナ粒子群6の散布に際しては、本発明の効果が損なわれないという条件の下、公知の骨材(炭酸カルシウム、珪砂、ガラス、セラミック、ゴムチップ、木片)を散布してもよく、また、防汚性向上の観点から酸化チタンを散布したり、あるいは、遮熱性付与のためにガラスビーズを散布してもよい。これらは、アルミナ粒子群6と一緒に散布してもよいが、アルミナ粒子群6の散布の前後に散布してもよい。
【0046】
アルミナ粒子群6の散布は、公知の手段により行えばよく、例えば手撒きや、ふるい、吹付用のリシンガン等で行えばよい。アルミナ粒子群6は均一に散布されるようにすることが好ましい。
【0047】
トップコート層7を設ける場合には、透明樹脂層5およびアルミナ粒子群6の表面にトップコート層形成用樹脂組成物を塗布する。塗布量としては、150〜200g/m
2が好ましい。トップコート層形成用樹脂組成物の塗布は、透明樹脂層5が完全に硬化したことを確認してから行うことが好ましい。
【0048】
尚、上述のプライマーの塗布、下地層形成用樹脂組成物の塗布、透明樹脂層形成用樹脂組成物の塗布およびトップコート形成用樹脂組成物の塗布は、ローラー、刷毛、コテ、ヘラ又はこれらに準ずる施工機械を用いて行えばよい。
【0049】
また、各層の間には、必要に応じて公知の接着剤を塗布してもよい。
【0050】
本発明の表示材のサイズや設置環境等によっては、上述のように道または床2の上で直接表示材1を製造せずに、予め型内で本発明の表示材1を製造しておき、次いで、道または床2に公知のプライマーを塗布し、得られた本発明の表示材1をその上に設置してもよい。
【0051】
例えば本発明の表示材1を小面積とする場合等であれば、道または床2の表面からの異物の除去に先立って、道または床2のうち表示材1を設けるべき部分の周囲をポリエチレン性のマスキングフィルム等を使用してマスキングし、更に、汚損を防止するためにポリエチレン製等のシートで被覆して保護しておくとよい。
【0052】
<路面乃至床面表示材1>
かくして得られる本発明の路面乃至床面表示材1は、印刷画像を鮮明に視認することができ、且つ、優れた耐滑り性を有している。耐滑り性は、ASTM E303に準拠した方法により測定した値が、歩道部分では、40BPN以上(湿潤条件)、車道部分では、60BPN以上(湿潤条件)であることが好ましい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例および比較例を参照して本発明をさらに説明する。本発明の技術的範囲は、これらによって限定されるものではない。
【0054】
<実施例1>
屋外にあるコンクリート舗装のフラットな道または床の一部(四角形)を施工面とし、かかる施工面の周囲をマスキングし、更にその上を、周囲の汚損を防止するためにシートで被覆して保護した。マスキングは、ガムテープを貼着して行った。汚染防止のためのシートとしては、ポリエチレンシートを用いた。
【0055】
次に、前処理として、施工面上の油脂、泥、水等の異物を除去し、さらに表面の汚れや付着物を除去した。具体的には、ハンディ研削機ウルトラディスクサンダーを用いて前処理を行った。研磨粉等は、掃除機等で除去した。
【0056】
次に、プライマーを塗布する工程を行った。具体的には、三井化学産資(株)製アクリル系樹脂シリカルMP2(コンクリート用プライマー)500gに硬化剤シリカルBPO(有機過酸化物)を15g添加し、ローラーを用いて200g/m
2塗布した。プライマーが表面硬化した後、下地層を3mm厚で作成した。具体的には、三井化学産資(株)製シリカルMC3(ベース用樹脂)2kgに白色顔料を200g、シリカルBPO(有機過酸化物)を60g添加し、さらに三井化学産資(株)製シリカルSL(流しのべセルフレベリング用混合ケイ砂)を5kg添加し、撹拌して下地層形成用樹脂組成物を調整し、コテを用いてこれを5.4kg/m
2塗布した。
【0057】
下地層の硬化を確認した後、印刷層および透明樹脂層を準備した。尚、下地層の各辺はそれぞれ印刷層より10mm程度大きめに作成しておいた。印刷層の厚みは約0.3mmであった。三井化学産資(株)製アクリル樹脂シリカルMT3(クリアートップコート用樹脂)1kgにシリカルBPO(有機過酸化物)を25g添加して透明樹脂層形成用樹脂組成物を調整し、印刷層に含浸させながら、これを500g/m
2塗布した。
【0058】
さらに樹脂が硬化する前に、粒径0.1mm以上1.0mm未満の小アルミナ粒子を100質量%含むアルミナ粒子群を250g/m
2散布した。アルミナ粒子群の散布は、手撒きで、なるべく均一に行った。アルミナ粒子群中に含まれるアルミナ粒子は、いずれも白色電融アルミナであった。
【0059】
透明樹脂層の硬化を確認した後、トップコート層形成用樹脂組成物を塗布した。具体的には、三井化学産資(株)製アクリル樹脂シリカルMT3(クリアートップコート用樹脂)にシリカルBPO(有機過酸化物)を添加してトップコート層形成用樹脂組成物を調整し、ローラーを用いてこれを150g/m
2塗布した。この作成した試験体(路面乃至床面表示材)について、耐久性、汚れ性、視認性、滑り抵抗性についての評価を行った。
【0060】
(耐久性)
得られた路面乃至床面表示材を、3か月放置し、アルミナ骨材の剥離状態を目視により評価した。
評価基準○:剥離がほとんどない。
△:部分的に剥離箇所がみられる。10〜50質量%程度。
×:50質量%以上のアルミナが剥離している。
【0061】
(汚れ性)
得られた路面乃至床面表示材を3か月放置し、色差計(コニカミノルタ製色差計Color Reader CR−10)で未放置サンプルとの差を測定し、ΔLを算出した。
評価基準○:ΔLの値が、12未満
△:ΔLの値が、12以上20未満
×:ΔLの値が、20以上
【0062】
<実施例2>
アルミナ粒子群として、粒径0.1mm以上1.0mm未満の小アルミナ粒子を90質量%含有し、且つ、粒径1.0mm以上1.2mm以下の大アルミナ粒子を10質量%含有するアルミナ粒子群を使用した点以外は、実施例1と同様にして路面乃至床面表示材を作成した。更に、実施例1と同様の方法により、耐久性および汚れ性を評価した。尚、本実施例で用いたアルミナ粒子は、実施例1の場合と同様にいずれも白色電融アルミナであった。
【0063】
<比較例1>
アルミナ粒子群として、粒径0.1mm未満の微細アルミナ粒子を30質量%、粒径0.1mm以上1.0mm未満の小アルミナ粒子を70質量%含有するアルミナ粒子群を使用した点以外は、実施例1と同様にして路面乃至床面表示材を作成した。更に、実施例1と同様の方法により、耐久性および汚れ性を評価した。尚、本比較例で用いたアルミナ粒子は、実施例1の場合と同様にいずれも白色電融アルミナであった。
【0064】
<比較例2>
アルミナ粒子群として、粒径0.1mm以上1.0mm未満の小アルミナ粒子を70質量%、粒径1.2mmより大きい巨大アルミナ粒子を30質量%含有するアルミナ粒子群を使用した点以外は、実施例1と同様にして路面乃至床面表示材を作成した。更に、実施例1と同様の方法により、耐久性および汚れ性を評価した。尚、本比較例で用いたアルミナ粒子は、実施例1の場合と同様にいずれも白色電融アルミナであった。
【0065】
表1では、アルミナ骨材の粒子割合の違いによる耐久性・汚れ性評価結果を示した。アルミナ骨材の散布量は250g/m
2で一定である。実施例1,2では耐久性、汚れ性の評価は良好であるが、比較例1のように、粒子径0.1mm未満の微細アルミナ粒子が多いと、アルミナ粒子間に汚れが詰まりやすくなった。比較例2のように粒子径1.2mmより大の巨大アルミナ粒子が多いと、アルミナ粒子の剥離や、アルミナ粒子の角にエッジ汚れが溜まりやすくなった。
【表1】
【0066】
<実施例3>
アルミナ粒子群として、粒径0.1mm以上1.0mm未満の小アルミナ粒子を90質量%含有し、且つ、粒径1.0mm以上1.2mm以下の大アルミナ粒子を10質量%含有するアルミナ粒子群を使用し、且つ、アルミナ粒子群の散布量を100g/m
2とした点以外は、実施例1と同様にして路面乃至床面表示材を作成した。尚、本実施例で用いたアルミナ粒子は、実施例1の場合と同様にいずれも白色電融アルミナであった。
【0067】
以下の方法により、視認性および滑り抵抗性を評価した。
(視認性)
得られた路面乃至床面表示材の視認性は、以下の評価基準に従って評価した。
評価基準◎:印字がはっきり見える。
○:印字が見える。
△:印字の一部が見えにくい。
×:印字が見えない。
【0068】
(滑り抵抗性)
得られた路面乃至床面表示材の滑り抵抗性(湿潤状態)を、ASTM E303に準拠した方法により測定した。
【0069】
<実施例4>
アルミナ粒子群の散布量を150g/m
2とした点以外は、実施例3と同様にして路面乃至床面表示材を作成した。更に、実施例3と同様の方法により視認性および滑り抵抗性を評価した。
【0070】
<実施例5>
アルミナ粒子群の散布量を200g/m
2とした点以外は、実施例3と同様にして路面乃至床面表示材を作成した。更に、実施例3と同様の方法により視認性および滑り抵抗性を評価した。
【0071】
<実施例6>
アルミナ粒子群の散布量を250g/m
2とした点以外は、実施例3と同様にして路面乃至床面表示材を作成した。更に、実施例3と同様の方法により視認性および滑り抵抗性を評価した。
【0072】
<実施例7>
アルミナ粒子群の散布量を350g/m
2とした点以外は、実施例3と同様にして路面乃至床面表示材を作成した。更に、実施例3と同様の方法により視認性および滑り抵抗性を評価した。
【0073】
<実施例8>
アルミナ粒子群の散布量を500g/m
2とした点以外は、実施例3と同様にして路面乃至床面表示材を作成した。更に、実施例3と同様の方法により視認性および滑り抵抗性を評価した。
【0074】
<比較例3>
アルミナ粒子群の散布量を1000g/m
2とした点以外は、実施例3と同様にして路面乃至床面表示材を作成した。更に、実施例3と同様の方法により視認性および滑り抵抗性を評価した。
【0075】
<比較例4>
アルミナ粒子群の散布量を2000g/m
2とした点以外は、実施例3と同様にして路面乃至床面表示材を作成した。更に、実施例3と同様の方法により視認性および滑り抵抗性を評価した。
【0076】
表2では、アルミナ骨材の粒子の散布量による視認性とすべり抵抗性の評価結果を示した。実施例3〜7のように、アルミナの散布量によりすべり抵抗性を調整することができる。
また、比較例3,4に示したように、アルミナの散布量が1000g/m
2になると視認性が低下し、2000g/m
2まで散布してしまうと印字が見えなくなってしまう。
【表2】
【0077】
このように、アルミナの散布量により滑り抵抗性の調整を容易に行うことができ、また同時に優れた視認性を確保することができる。