特許第6871781号(P6871781)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871781
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】鉄筋籠の杭頭定着保持構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/34 20060101AFI20210426BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   E02D5/34 Z
   E04G21/12 105B
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-69955(P2017-69955)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-172868(P2018-172868A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2020年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 聡
(72)【発明者】
【氏名】藤原 寅士良
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一
(72)【発明者】
【氏名】八木 政行
(72)【発明者】
【氏名】堀田 智弘
(72)【発明者】
【氏名】川村 大士
(72)【発明者】
【氏名】小林 昌巳
(72)【発明者】
【氏名】山野辺 慎一
(72)【発明者】
【氏名】池松 建治
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−198565(JP,A)
【文献】 実開平06−035325(JP,U)
【文献】 特開平05−214813(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2018−0069564(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2018−0038951(KR,A)
【文献】 特開平09−296444(JP,A)
【文献】 特開2006−089960(JP,A)
【文献】 特開平11−036293(JP,A)
【文献】 特開2010−168734(JP,A)
【文献】 特開2000−045270(JP,A)
【文献】 特開2007−205125(JP,A)
【文献】 特開昭50−020515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/34
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に適宜間隔をあけて配設された複数のフレキシブル鉄筋と、前記複数のフレキシブル鉄筋に巻き付けられた1又は複数の帯筋とを有する鉄筋籠を杭孔に建て込んだ状態で保持する鉄筋籠の杭頭定着保持構造であって、
前記複数のフレキシブル鉄筋のうち、前記鉄筋籠の上端側において上方に突出している少なくとも1本のフレキシブル鉄筋が、前記杭孔の上部開口に予め設置されている略円筒状の口元管の内周面に固定されており、
前記口元管の内周面に固定されている前記フレキシブル鉄筋は、前記鉄筋籠の上端側を拡開した状態で固定されていることを特徴とする鉄筋籠の杭頭定着保持構造。
【請求項2】
前記口元管の内周面に拡開した状態で固定されている前記フレキシブル鉄筋には、前記鉄筋籠に内接するように環状の補強筋が配設されていることを特徴とする請求項に記載の鉄筋籠の杭頭定着保持構造。
【請求項3】
前記口元管の内周面には、前記フレキシブル鉄筋が固定される鉄筋固定部が設けられており、
前記鉄筋固定部には前記フレキシブル鉄筋の上端部が挿し入れられる小孔又はスリットが形成されており、
前記小孔又は前記スリットに挿し入れられた前記フレキシブル鉄筋における前記鉄筋固定部よりも上の位置には、前記小孔の径又は前記スリットの幅よりも大きな固定具が取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄筋籠の杭頭定着保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、場所打ち杭を構築するための鉄筋籠の杭頭定着保持構造であって、フレキシブル鉄筋を用いた鉄筋籠の杭頭定着保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、場所打ち杭に用いる鉄筋籠を杭孔に建て込んだ後、杭孔内にコンクリートを打設するまでの間、杭孔に建て込まれている鉄筋籠を保持するため、杭孔の上部開口にカンザシ鋼材などの固定架台を仮設し、その固定架台に鉄筋籠の上端部を固定するようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−36293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、杭孔内にコンクリートを打設して場所打ち杭を構築した後、カンザシ鋼材などの固定架台は撤去することになるので、仮設の設備を設置したり撤去したりすることは作業時間のロスになっていると問題視されることがある。つまり、その作業時間のために工期や工費が増大して施工コスト増を招いてしまうという課題がある。
本発明者らは、仮設の設備を使わずに、杭孔に建て込んだ鉄筋籠を保持する手法について鋭意検討を行った結果、作業効率よく場所打ち杭を構築することが可能な技術を見出した。
【0005】
本発明の目的は、作業効率よく場所打ち杭を構築することができる鉄筋籠の杭頭定着保持構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明は、
周方向に適宜間隔をあけて配設された複数のフレキシブル鉄筋と、前記複数のフレキシブル鉄筋に巻き付けられた1又は複数の帯筋とを有する鉄筋籠を杭孔に建て込んだ状態で保持する鉄筋籠の杭頭定着保持構造であって、
前記複数のフレキシブル鉄筋のうち、前記鉄筋籠の上端側において上方に突出している少なくとも1本のフレキシブル鉄筋が、前記杭孔の上部開口に予め設置されている略円筒状の口元管の内周面に固定されており、
前記口元管の内周面に固定されている前記フレキシブル鉄筋は、前記鉄筋籠の上端側を拡開した状態で固定されているようにした。
【0007】
かかる構成の鉄筋籠の杭頭定着保持構造は、杭孔の上部開口に予め設置されている口元管の内周面に、鉄筋籠の上端側で上方に突出しているフレキシブル鉄筋を固定することによって容易に組み上げることができる。
フレキシブル鉄筋は可撓性を有しているので、鉄筋籠と口元管とが離れているような場合でも、フレキシブル鉄筋を曲げて口元管に寄せるようにして固定することができる。
つまり、杭孔に建て込んだ鉄筋籠を保持するのに、杭孔に予め設置されている口元管を利用するのであれば、カンザシ鋼材のような仮設の設備を設置したり撤去したりするような作業時間のロスを省くことができるので、作業効率よく場所打ち杭を構築することができる。また、作業時間のロスを省くことができれば、工期の短縮や工費の縮減を図って場所打ち杭の施工コストを低減することができる。
なお、口元管はライナープレートであってもよい。
【0008】
またフレキシブル鉄筋が鉄筋籠の上端側を拡開した状態で口元管の内周面に固定されていれば、場所打ち杭の上端面における口元管の中心側に広い領域を確保し易くなるので、場所打ち杭の上端面に接続するように構築する柱などの構造物の設計の自由度が上がる。
特に、全てのフレキシブル鉄筋が鉄筋籠の上端側を拡開した状態で固定されていれば、場所打ち杭の上端面により広い領域を確保できるので、場所打ち杭の上端面に接続するように構築する柱などの構造物の設計の自由度がより一層上がる。
【0009】
また、望ましくは、
前記口元管の内周面に拡開した状態で固定されている前記フレキシブル鉄筋には、前記鉄筋籠に内接するように環状の補強筋が配設されているようにする。
鉄筋籠の上端を拡開するようにフレキシブル鉄筋が湾曲されていると、鉄筋籠に腹圧力が作用する。鉄筋籠の外周側が圧縮となる腹圧力に対しては、鉄筋籠の外周側に配設されている帯筋が補強筋として機能するので、鉄筋籠の内周側に、例えば帯筋よりも大きな径を有する環状の補強筋を内接させるように配設することで、鉄筋籠の内周側が圧縮となる腹圧力に対して抗することが可能になる。
【0010】
また、望ましくは、
前記口元管の内周面には、前記フレキシブル鉄筋が固定される鉄筋固定部が設けられており、
前記鉄筋固定部には前記フレキシブル鉄筋の上端部が挿し入れられる小孔又はスリットが形成されており、
前記小孔又は前記スリットに挿し入れられた前記フレキシブル鉄筋における前記鉄筋固定部よりも上の位置には、前記小孔の径又は前記スリットの幅よりも大きな固定具が取り付けられているようにする。
こうすることで、鉄筋籠の上端側のフレキシブル鉄筋の上端部が、口元管の内周面に設けられている鉄筋固定部に係止されるようなるので、杭孔に建て込んだ鉄筋籠を好適に保持することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、作業効率よく場所打ち杭を構築することができる鉄筋籠の杭頭定着保持構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1の鉄筋籠の概略図であり、側面視した鉄筋籠(a)と、上面視した鉄筋籠(b)を示している。
図2】鉄筋籠の杭頭定着保持構造に利用する口元管を示す斜視図(a)と、本実施形態の鉄筋籠の杭頭定着保持構造を示す斜視図(b)である。
図3】実施形態2の鉄筋籠の建込手順によって鉄筋籠の杭頭定着保持構造を組み上げる過程を示す説明図(a)(b)である。
図4】実施形態2の鉄筋籠の建込手順によって鉄筋籠の杭頭定着保持構造を組み上げる過程を示す説明図(c)(d)である。
図5】鉄筋籠の杭頭定着保持構造の変形例を一部断面視して示す説明図である。
図6】鉄筋籠の杭頭定着保持構造に利用する口元管の変形例を示す斜視図である。
図7】口元管の変形例を示す上面図(a)と、その口元管を利用した鉄筋籠の杭頭定着保持構造を示す上面図(b)と、その杭頭定着保持構造の一部を拡大して示す斜視図(c)である。
図8】実施形態2の鉄筋籠の概略図であり、鉄筋籠を伸展させた状態(a)と上面視したその鉄筋籠(b)、また鉄筋籠の伸展途中あるいは収縮途中の状態(c)と、鉄筋籠を収縮させた状態(d)を示している。
図9】実施形態1の鉄筋籠の建込手順によって鉄筋籠の杭頭定着保持構造を組み上げる過程を示す説明図(a)(b)(c)である。
図10】実施形態1の鉄筋籠の建込手順によって鉄筋籠の杭頭定着保持構造を組み上げる過程を示す説明図(d)(e)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係る鉄筋籠の杭頭定着保持構造の実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0014】
(実施形態1)
実施形態1の鉄筋籠30は、図1(a)(b)に示すように、周方向に適宜間隔をあけて配設された複数のフレキシブル鉄筋10と、複数のフレキシブル鉄筋10に巻き付けられたスパイラル状の帯筋20とを備えている。
【0015】
フレキシブル鉄筋10は、ストランド鉄筋とも称される可撓性を有する鉄筋であり、例えば、帯筋20と同程度の曲率に曲げても強度に問題が生じない材料からなる鉄筋である。このフレキシブル鉄筋10には、例えば、PC鋼より線、ワイヤーロープの他、炭素繊維、グラスファイバー、アラミド繊維などの材料を撚り合わせたものを用いることができる。
帯筋20は、図1に示すように、複数のフレキシブル鉄筋10の周囲に鉄筋をスパイラル状に巻き付けたものである。
【0016】
このような鉄筋籠30を杭孔Hに建て込んだ後、杭孔H内にコンクリートを打設するまでの間、鉄筋籠30を杭孔Hに建て込んだ状態で保持するための構造が、鉄筋籠の杭頭定着保持構造100である。
本実施形態の鉄筋籠の杭頭定着保持構造100は、杭孔Hの上部開口に予め設置されている略円筒状の口元管50を利用する。
口元管50は、削孔する地盤の口元が崩壊し易い場合に使用する鋼製の円筒部材である。また、口元管50は地盤の崩壊を防ぐ機能だけでなく、削孔ビットが地中に進入する際のガイドとしての機能も有している。
【0017】
口元管50は、図2(a)に示すように、口元管本体51と、口元管本体51(口元管50)の内周面に設けられている鉄筋固定部52とを備えている。
鉄筋固定部52は、口元管本体51の内周面に溶接などによって固設された円環状の平板部材であり、フレキシブル鉄筋10が挿し入れられる小孔52aが形成されている。
なお、本実施形態の鉄筋籠30は、8本のフレキシブル鉄筋10を備えているので、口元管50の鉄筋固定部52には、8つの小孔52aが形成されている。
【0018】
本実施形態の鉄筋籠の杭頭定着保持構造100は、図2(b)に示すように、鉄筋籠30の上端側において上方に突出しているフレキシブル鉄筋10の上端部11が口元管50の内周面に固定されるように、口元管50の鉄筋固定部52に固定されている。
具体的には、フレキシブル鉄筋10の上端部11には、雄ネジが形成されている先端金具11aが固設されており、その先端金具11aを鉄筋固定部52の下側から小孔52aに挿し入れ、その小孔52aから上方に突き出た先端金具11aに、小孔52aの径よりも大きなナットなどの固定具11bを螺着することで、フレキシブル鉄筋10の上端部11が口元管50の内周面に固定されるようになっている。
特に、口元管50の内周面に固定された8本のフレキシブル鉄筋10は、鉄筋籠30の上端側を拡開した状態で固定されている。
【0019】
次に、鉄筋籠30を杭孔Hに建て込む手順について説明し、その鉄筋籠30を杭孔Hに保持する鉄筋籠の杭頭定着保持構造100について説明する。
【0020】
場所打ち杭の施工現場では、図3(a)に示すように、場所打ち杭を造成する箇所を掘削して杭孔Hが形成されており、その杭孔Hの上部開口には口元管50が設置されている。
また、杭孔Hの直上に帯筋巻付装置4が設けられた帯筋巻付架台5が設置され、さらにその上部に吊ワイヤードラムなどの降下装置6が設けられた建込架台7が設置されている。
また、杭孔Hの周囲には、フレキシブル鉄筋10を巻き取ったドラム装置8が設置されている。このドラム装置8には予め、少なくとも杭孔Hの深さに相当する長さ(つまり、場所打ち杭の設計長さ)のフレキシブル鉄筋10が巻き取られている。
なお、その長手方向に沿って8本のフレキシブル鉄筋10が配設されている鉄筋籠100を組み立てて建て込む場合、8機のドラム装置8が設置されている。
【0021】
そして、図3(a)に示すように、各ドラム装置8から繰り出されたフレキシブル鉄筋10の端部に円環状の下部フレーム13を取り付ける。下部フレーム13は、複数のフレキシブル鉄筋10を周方向に所定間隔に配列させ、鉄筋籠の形状を確保するために用いる周知の部材である。
この下部フレーム13に降下装置6のワイヤーが繋がれている。
【0022】
次いで、図3(b)に示すように、各ドラム装置8からフレキシブル鉄筋10をそれぞれ繰り出し、下部フレーム13とともにフレキシブル鉄筋10を杭孔H内に送り込む。
また、フレキシブル鉄筋10を杭孔H内に送り込みつつ、その杭孔H内に送り込まれる複数のフレキシブル鉄筋10の周囲に帯筋巻付装置4によって帯筋20をスパイラル状に巻き付ける。
このとき、降下装置6によって下部フレーム13を杭孔Hの底に向けて降下させている。なお、フレキシブル鉄筋10を杭孔H内に送り込む過程で、複数のフレキシブル鉄筋10を周方向に所定間隔に配列させる周知の中間フレームを適宜取り付け、その環状の中間フレームによって鉄筋籠の内部空間を確保するようにしてもよい。
【0023】
そして、図4(c)に示すように、鉄筋籠30の下端部が杭孔Hの底面の近傍に達し、設計した長さの鉄筋籠30を形成すれば、鉄筋籠30の建て込みは実質終了する。
本実施形態では、鉄筋籠30の下端部が杭孔Hの底面近傍に達した際に、口元管50の鉄筋固定部52よりも僅かに下側となる位置まで帯筋20を巻き付けておく。また、鉄筋籠100の下端部が杭孔Hの底面近傍に達した際に、口元管50の鉄筋固定部52よりも僅かに下側となる位置のフレキシブル鉄筋10に環状の上部フレーム14を取り付けておく。
【0024】
次いで、口元管50の鉄筋固定部52に対応する位置に調整したフレキシブル鉄筋10の上端部11に先端金具11aを固設する。
その先端金具11aを固設したフレキシブル鉄筋10の上端部11を鉄筋固定部52の小孔52aに下側から挿し入れ、鉄筋固定部52よりも上の位置に突き出た上端部11の先端金具11aに固定金具11bを取り付けて(図2(b)参照)、図4(d)に示すように、フレキシブル鉄筋10の上端部11を口元管50の内周面に固定する。
こうして、杭孔Hに建て込んだ鉄筋籠30の上端を口元管50に固定してなる鉄筋籠の杭頭定着保持構造100を構成し、この杭頭定着保持構造100によって鉄筋籠30を杭孔H内に保持させて、鉄筋籠30の建て込みを終える。
そして、建込架台7等を撤去し、鉄筋籠30が建て込まれて保持されている杭孔H内にコンクリートを打設することによって、場所打ち杭を構築することができる。
【0025】
このように、本実施形態の鉄筋籠の杭頭定着保持構造100は、杭孔Hの上部開口に予め設置されている口元管50の内周面に、鉄筋籠30の上端に相当するフレキシブル鉄筋10の上端部11を固定することによって容易に組み上げることができる。
特に、この杭頭定着保持構造100に利用する口元管50は、地盤を削孔して杭孔Hを形成するのに使用したため、杭孔Hの上部開口に予め設置されており、また、杭孔H内に建て込まれた鉄筋籠30とともにコンクリートによって埋め込まれるものであるので、杭孔Hに建て込んだ鉄筋籠30を保持するために設置したり、使用後に撤去したりする仮設の設備ではない。
つまり、杭孔Hに建て込んだ鉄筋籠30を保持するのに、杭孔Hに予め設置されている口元管50を利用するのであれば、仮設の設備を設置したり撤去したりするような作業時間のロスを省くことができるので、作業効率よく場所打ち杭を構築することができる。また、作業時間のロスを省くことができれば、工期の短縮や工費の縮減を図って場所打ち杭の施工コストを低減することができる。
【0026】
また、フレキシブル鉄筋10が鉄筋籠30の上端側を拡開した状態で口元管50の内周面に固定されていれば、場所打ち杭の上端面における口元管50の中心側に広い領域を確保することができるので、場所打ち杭の上端面に接続するように構築する柱などの構造物の設計の自由度が上がるというメリットがある。
【0027】
このように、本実施形態の鉄筋籠の杭頭定着保持構造100は、作業効率よく場所打ち杭を構築するのに有効な技術である。
また、本実施形態の鉄筋籠の杭頭定着保持構造100によれば、工期の短縮や工費の縮減を図って場所打ち杭の施工コストを低減することができる。
【0028】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、図5に示すように、口元管50の内周面(鉄筋固定部52)に拡開した状態で固定されているフレキシブル鉄筋10には、鉄筋籠30に内接する環状の補強筋40が配設されていることが好ましい。
鉄筋籠30の上端を拡開するようにフレキシブル鉄筋10が湾曲されていると、鉄筋籠30に腹圧力が作用する。
鉄筋籠30の外周側が圧縮となる腹圧力に対しては帯筋20が補強筋として機能するので、鉄筋籠30の内周側に、例えば帯筋20よりも大きな径を有する環状の補強筋40を配設することで、鉄筋籠30の内周側が圧縮となる腹圧力に対して抗することが可能になる。
【0029】
また、図6に示すように、口元管本体51の内周面に複数の鉄筋固定部52が固設されて、各鉄筋固定部52には小孔52aが2つ形成されている態様でもよい。
そして、図6に示すように、口元管本体51の内周面に4つの鉄筋固定部52を固設した口元管50を使用すればよい。
勿論、小孔52aが1つ形成されている鉄筋固定部52が口元管本体51の内周面に8つ固設されている口元管50であってもよい。
【0030】
また、図7(a)(b)(c)に示すように、口元管本体51の内周面に固設されている鉄筋固定部52に、フレキシブル鉄筋10が挿し入れられるスリット52bが形成されている口元管50であってもよい。図7(a)(b)に示す口元管50の鉄筋固定部52には、8つのスリット52bが形成されている。
このスリット52bは、鉄筋固定部52の内縁から外縁に向かう方向に延在している。本実施形態のスリット52bは、鉄筋固定部52の内縁から外縁に向かってクランク状に曲がって延在している。また、スリット52bの幅は、例えば、フレキシブル鉄筋10の太さと略同じ寸法を有している。
そして、フレキシブル鉄筋10の上端部11には、スリット52bの幅よりも大きな上端固定具12が固設されており、そのフレキシブル鉄筋10を鉄筋固定部52の内縁の側方からスリット52bに挿し入れ、上端固定具12を鉄筋固定部52の上面に掛け置くように係止することで、フレキシブル鉄筋10の上端部11が口元管50の内周面に固定されるようになっている。
このようにして口元管50の内周面に固定された8本のフレキシブル鉄筋10は、鉄筋籠30の上端側を拡開した状態で固定されている。
【0031】
(実施形態2)
次に、本発明に係る鉄筋籠の杭頭定着保持構造の実施形態2について説明する。なお、実施形態1と同一部分には同符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0032】
実施形態2の鉄筋籠30は、図8(a)(b)に示すように、周方向に適宜間隔をあけて配設された複数のフレキシブル鉄筋10と、複数のフレキシブル鉄筋10に巻き付けられた複数の帯筋20とを備えている。
【0033】
帯筋20は、例えば、鉄筋が環状に曲げられて両端部が溶接にて接合されたものである。この帯筋20は、溶接閉鎖型の帯鉄筋であることが好ましい。
また、帯筋20は、鉄筋籠30の組み立て精度を確保するため、真円であることが好ましい。
【0034】
フレキシブル鉄筋10は、ストランド鉄筋とも称される可撓性を有する鉄筋であり、例えば、帯筋20と同程度の曲率に曲げても強度に問題が生じない材料からなる鉄筋である。
このフレキシブル鉄筋10には、例えば、PC鋼より線、ワイヤーロープの他、炭素繊維、グラスファイバー、アラミド繊維などの材料を撚り合わせたものを用いることができる。
【0035】
フレキシブル鉄筋10と帯筋20は、例えば、特開2006−89960号公報などに開示されている回転結合治具(図示省略)によって繋がれている。
回転結合治具は、フレキシブル鉄筋10と帯筋20の交差部に取り付けられ、フレキシブル鉄筋10と帯筋20との交差角を調整可能に結合している部材である。
そして、図8(a)に示した鉄筋籠30をねじるようにフレキシブル鉄筋10を円弧状に曲げると、フレキシブル鉄筋10と帯筋20の交差角が小さくなり、図8(c)(d)に示すように、フレキシブル鉄筋10が螺旋状になるとともに帯筋20の配筋間隔が徐々に縮まり、鉄筋籠30の長さを短くすることが可能になっている。
【0036】
以下に、実施形態2の鉄筋籠30を杭孔Hに建て込む手順について説明し、その鉄筋籠30を杭孔Hに保持する鉄筋籠の杭頭定着保持構造100について説明する。
上述した実施形態1の鉄筋籠30は、場所打ち杭の施工現場にて組み立てつつ杭孔Hに建て込むタイプのものであったが、実施形態2の鉄筋籠30は、工場にて製造した鉄筋籠30を場所打ち杭の施工現場に搬入して杭孔Hに建て込むタイプのものである。
【0037】
鉄筋籠30は、場所打ち杭の長さに対応させて工場で製造される。
工場にて製造された鉄筋籠30は、その長さが短く縮小された状態で所定のバンド部材で結束されて、場所打ち杭の施工現場に搬入される。
場所打ち杭の施工現場では、図9(a)に示すように、場所打ち杭を造成する箇所を掘削して杭孔Hが形成されており、その杭孔Hの上部開口には口元管50が設置されている。また、杭孔Hの直上には建込架台1が設置されている。
そして、クローラクレーンなどの建設機械3を用いて、縮小された状態の鉄筋籠30を建込架台1に設けられているウインチなどの昇降装置2に吊り込む。
【0038】
図9(b)に示すように、縮小されている鉄筋籠30を建込架台1の昇降装置2に吊り込んだ後、鉄筋籠30を縮小した状態に結束しているバンド部材(図示省略)を取り外して、鉄筋籠30を伸展させる。
次いで、図9(c)に示すように、鉄筋籠30を伸展させつつ、その鉄筋籠30を昇降装置2によって杭孔H内に降下させていく。
【0039】
そして、図10(d)に示すように、鉄筋籠30を設計した長さに伸展させて、鉄筋籠30の下端部が杭孔Hの底面の近傍に達すれば、鉄筋籠30の建て込みは実質終了する。
本実施形態では、鉄筋籠30の下端部が杭孔Hの底面近傍に達した後、僅かに鉄筋籠30を縮めるように昇降装置2によって鉄筋籠30を杭孔H内に降下させ、鉄筋籠30の上端に相当するフレキシブル鉄筋10の上端部11を口元管50の鉄筋固定部52に位置合わせする。
【0040】
次いで、昇降装置2によって鉄筋籠30を僅かに上昇させつつ、フレキシブル鉄筋10の上端部11を鉄筋固定部52の小孔52aに下側から挿し入れ、鉄筋固定部52よりも上の位置に突き出た上端部11の先端金具11aに固定金具11bを取り付けて(図2(b)参照)、図10(e)に示すように、フレキシブル鉄筋10の上端部11を口元管50の内周面に固定する。
こうして、杭孔Hに建て込んだ鉄筋籠30の上端を口元管50に固定してなる鉄筋籠の杭頭定着保持構造100を構成し、この杭頭定着保持構造100によって鉄筋籠30を杭孔H内に保持させて、鉄筋籠30の建て込みを終える。
そして、建込架台1を撤去し、鉄筋籠30が建て込まれて保持されている杭孔H内にコンクリートを打設することによって、場所打ち杭を構築することができる。
【0041】
このような建て込み手順によっても、杭孔Hの上部開口に予め設置されている口元管50の内周面に、鉄筋籠30の上端に相当するフレキシブル鉄筋10の上端部11を固定することができ、鉄筋籠30を杭孔Hに建て込んだ状態で保持する鉄筋籠の杭頭定着保持構造100を容易に組み上げることができる。
【0042】
以上のように、本実施形態の鉄筋籠の杭頭定着保持構造100は、杭孔Hに建て込んだ鉄筋籠30を保持するのに、杭孔Hに予め設置されている口元管50を利用することによって、仮設の設備を設置したり撤去したりするような作業時間のロスを省くことができるので、作業効率よく場所打ち杭を構築することができる。
【0043】
なお、以上の実施の形態においては、8本のフレキシブル鉄筋10を備えている鉄筋籠30を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、鉄筋籠30におけるフレキシブル鉄筋10の数は任意であり、鉄筋籠30のサイズに応じてその数を適宜調整すればよい。
【0044】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0045】
1 建込架台
2 昇降装置
3 建設機械
4 帯筋巻付装置
5 帯筋巻付架台
6 降下装置
7 建込架台
8 ドラム装置
10 フレキシブル鉄筋
11 上端部
11a 先端金具
11b 固定具
12 上端固定具
13 下部フレーム
14 上部フレーム
20 帯筋
30 鉄筋籠
40 補強筋
50 口元管
51 口元管本体
52 鉄筋固定部
52a 小孔
52b スリット
100 鉄筋籠の杭頭定着保持構造
H 杭孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10