(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インフレータと折りたたまれたエアバッグとを保持したエアバッグモジュールを、取付プレートを介してステアリングホイールに取付けるようにしたエアバッグ装置であって、
前記取付プレートは、前記エアバッグモジュールが取付けられる第1取付部と、前記ステアリングホイールに取付けられる第2取付部と、を有し、
前記取付プレートには、前記第1取付部と第2取付部との間に位置するようにして、その外周縁部から内方側へ伸びるスリットが形成され、
前記第2取付部と前記第1取付部との間に、該第2取付部が該第1取付部に対して前記ステアリングホイール側にオフセットされるように段差部が形成され
前記第2取付部は、前記ステアリングホイールから一体的に伸びるフック部が挿通される開口部と、該開口部に挿通された前記フック部を係止するロックバネと、を有する構造とされ、
前記ロックばねは、前記フック部の伸び方向と直交する方向に伸びて、前記取付プレートのうち前記段差部によって形成される段差空間に位置するように配設され、
前記第2取付部が、前記開口部に挿通されると共に前記フック部が挿通される筒状の本体部と、該開口部のうち前記ステアリングホイール側の開口縁部に着座されるフランジ部と、を有するガイド部材を有しており、
前記ロックばねが、前記取付プレートを挟んで前記フランジ部とは反対側において前記本体部に保持されている、
ことを特徴とするエアバッグ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エアバッグモジュールをステアリングハンドルに取付ける場合、通常は、取付プレートを利用して行われる。すなわち、取付プレートに構成された第1取付部に対してあらかじめエアバッグモジュールが取付けられた状態で、取付プレートに構成された第2取付部によって取付プレートをステアリングハンドルに取付けるようにされる。そして、第2取付部でのステアリングハンドルに対する取付構造は、固定具(例えばボルトなナット)を用いた固定や、特許文献1に記載のようにスナップイン方式での取付構造とすることも行われている。
【0005】
エアバッグが膨張展開される初期時には、その反動により、取付プレートをステアリングハンドル側に押圧する荷重が作用する。この一方、エアバッグが膨張展開される後期には、取付プレートに対してステアリングハンドルから離間する方向の引張力が作用する。
【0006】
上記のように、取付プレートに対してステアリングハンドルから離間する方向の引張力は、取付プレートのステアリングハンドルに対する取付けが解除される方向の力となるので、好ましくないものとなる。
【0007】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、エアバッグが膨張展開されたときに、取付プレートとステアリングハンドルとの取付部位に作用する取付解除方向の力を低減できるようにしたエアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような
第1の解決手法を採択してある。すなわち、請求項1に記載のように、
インフレータと折りたたまれたエアバッグとを保持したエアバッグモジュールを、取付プレートを介してステアリングホイールに取付けるようにしたエアバッグ装置であって、
前記取付プレートは、前記エアバッグモジュールが取付けられる第1取付部と、前記ステアリングホイールに取付けられる第2取付部と、を有し、
前記取付プレートには、前記第1取付部と第2取付部との間に位置するようにして、その外周縁部から内方側へ伸びるスリットが形成さ
れ、
前記第2取付部と前記第1取付部との間に、該第2取付部が該第1取付部に対して前記ステアリングホイール側にオフセットされるように段差部が形成され
前記第2取付部は、前記ステアリングホイールから一体的に伸びるフック部が挿通される開口部と、該開口部に挿通された前記フック部を係止するロックバネと、を有する構造とされ、
前記ロックばねは、前記フック部の伸び方向と直交する方向に伸びて、前記取付プレートのうち前記段差部によって形成される段差空間に位置するように配設され、
前記第2取付部が、前記開口部に挿通されると共に前記フック部が挿通される筒状の本体部と、該開口部のうち前記ステアリングホイール側の開口縁部に着座されるフランジ部と、を有するガイド部材を有しており、
前記ロックばねが、前記取付プレートを挟んで前記フランジ部とは反対側において前記本体部に保持されている、
ようにしてある。
【0009】
上記解決手法によれば、スリットの形成によって、第1取付部と第2取付部との間での荷重伝達が低減されることになる。これにより、エアバッグが膨張展開された後期時に、第1取付部に作用する運転席側に向かう方向(ステアリングハンドルから離間する方向)の引張力が、低減された状態で第2取付部に対して伝達されることになり、第2取付部での取付状態を確実に確保しておく上で好ましいものとなる。また、エアバッグモジュールをステアリングハンドルに取付けた状態での車両の走行中に、ステアリングハンドルから第2取付部に入力される震動を、エアバッグモジュール側へ極力伝達させないようにする上でも好ましいものとなる。
以上に加えて、エアバッグが膨張展開された初期時に、ステアリングハンドル側に向けてのエアバッグモジュール側からの押圧力を、段差部での変形により低減した状態で第2取付部に伝達させて、第2取付部での取付状態を確実に確保しておく上で好ましいものとなる。また、エアバッグモジュールをスナップイン方式でもって簡単にステアリングハンドルに取付けられるようにしつつ、段差空間をロックばねの配設空間として有効利用することができる。また、段差空間内にロックばねを配設することにより、膨張展開されるエアバッグによってロックばねが不用意に押圧されてしまうような事態を防止あるいは抑制して、ロックばねによる係止作用を確実に維持させておく上で好ましいものとなる。さらに、ガイド部材を利用してフック部をスムーズに取付プレート側へと挿入されるようにしつつ、ロックばねの保持用としてフック部を有効利用することができる。
【0010】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような第2の解決手法を採択してある。すなわち、請求項2に記載のように、
インフレータと折りたたまれたエアバッグとを保持したエアバッグモジュールを、取付プレートを介してステアリングホイールに取付けるようにしたエアバッグ装置であって、
前記取付プレートは、前記エアバッグモジュールが取付けられる第1取付部と、前記ステアリングホイールに取付けられる第2取付部と、を有し、
前記取付プレートには、前記第1取付部と第2取付部との間に位置するようにして、その外周縁部から内方側へ伸びるスリットが形成され、
前記第1取付部が前記取付プレートの周方向に間隔をあけて複数形成され、
前記周方向に隣り合う2つの前記第1取付部の間に、1つの前記第2取付部が位置され、
前記スリットは、細長く伸びると共に前記周方向に隣り合う2つの前記第1取付部の間に形成されて、前記1つの第2取付部を前記周方向両側から挟むように一対設けられている、
ようにしてある。上記解決手法によれば、スリットの形成によって、第1取付部と第2取付部との間での荷重伝達が低減されることになる。これにより、エアバッグが膨張展開された後期時に、第1取付部に作用する運転席側に向かう方向(ステアリングハンドルから離間する方向)の引張力が、低減された状態で第2取付部に対して伝達されることになり、第2取付部での取付状態を確実に確保しておく上で好ましいものとなる。また、エアバッグモジュールをステアリングハンドルに取付けた状態での車両の走行中に、ステアリングハンドルから第2取付部に入力される震動を、エアバッグモジュール側へ極力伝達させないようにする上でも好ましいものとなる。以上に加えて、第1取付部と第2取付部との間での荷重伝達をより十分に低減して、請求項1に対応した効果を十分に発揮させる上で好ましいものとなる。
【0011】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような第3の解決手法を採択してある。すなわち、請求項3に記載のように、
インフレータと折りたたまれたエアバッグとを保持したエアバッグモジュールを、取付プレートを介してステアリングホイールに取付けるようにしたエアバッグ装置であって、
前記取付プレートは、前記エアバッグモジュールが取付けられる第1取付部と、前記ステアリングホイールに取付けられる第2取付部と、を有し、
前記取付プレートには、前記第1取付部と第2取付部との間に位置するようにして、その外周縁部から内方側へ伸びるスリットが形成され、
前記第2取付部と前記第1取付部との間に、該第2取付部が該第1取付部に対して前記ステアリングホイール側にオフセットされるように段差部が形成され、
前記スリットは、前記取付プレートの前記第1取付部が形成された本体領域と前記第2取付部が構成されるオフセット領域との間において荷重伝達が低減されるように細長く伸びると共に、前記段差部によってオフセットされた段差空間と連通するように形成されている、
ようにしてある。上記解決手法によれば、スリットの形成によって、第1取付部と第2取付部との間での荷重伝達が低減されることになる。これにより、エアバッグが膨張展開された後期時に、第1取付部に作用する運転席側に向かう方向(ステアリングハンドルから離間する方向)の引張力が、低減された状態で第2取付部に対して伝達されることになり、第2取付部での取付状態を確実に確保しておく上で好ましいものとなる。また、エアバッグモジュールをステアリングハンドルに取付けた状態での車両の走行中に、ステアリングハンドルから第2取付部に入力される震動を、エアバッグモジュール側へ極力伝達させないようにする上でも好ましいものとなる。以上に加えて、エアバッグが膨張展開された初期時に、ステアリングハンドル側に向けてのエアバッグモジュール側からの押圧力を、段差部での変形により低減した状態で第2取付部に伝達させて、第2取付部での取付状態を確実に確保しておく上で好ましいものとなる。
【0012】
前記第2の解決手法を前提とした好ましい態様は、次のとおりである。すなわち、
前記第1取付部および前記第2取付部がそれぞれ前記取付プレートの周方向に間隔をあけて複数形成されている、ようにすることができる(請求項4対応)。
【0013】
前記第3の解決手法を前提とした好ましい態様は、次のとおりである。すなわち、
前記第2取付部は、前記ステアリングホイールから一体的に伸びるフック部が挿通される開口部と、該開口部に挿通された前記フック部を係止するロックバネと、を有する構造とされ、
前記ロックばねは、前記フック部の伸び方向と直交する方向に伸びて、前記取付プレートのうち前記段差部によって形成される段差空間に位置するように配設されている、
ようにしてある(請求項5対応)。この場合、エアバッグモジュールをスナップイン方式でもって簡単にステアリングハンドルに取付けられるようにしつつ、段差空間をロックばねの配設空間として有効利用することができる。また、段差空間内にロックばねを配設することにより、膨張展開されるエアバッグによってロックばねが不用意に押圧されてしまうような事態を防止あるいは抑制して、ロックばねによる係止作用を確実に維持させておく上で好ましいものとなる。
【0014】
前記第1の解決手法を前提とした好ましい態様は、次のとおりである。すなわち、
前記ガイド部材が、前記エアバッグモジュールをダイナミックダンパとして機能させるためのダンパーゴムを介して前記開口部に嵌合されている、ようにしてある(請求項6対応)。この場合、極めて簡単な構造により、エアバッグモジュールをダイナミックダンパとして機能させて、ステアリングハンドルの震動低減の上で好ましいものとなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エアバッグが膨張展開されたときに、取付プレートとステアリングハンドルとの取付部位に作用する取付解除方向の力を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1において、1はステアリングハンドルの芯金であり、そのボス部1aに対して、エアバッグモジュール10が後述のようにして取付けられる。
【0018】
図2に示すように、上記ボス部1aには、複数(実施形態では3個)のフック部2が、後方(ステアリングハンドルが車両に組み付けられた状態における後方)に向けて突出形成されている。フック部2は、実施形態では芯金1と一体成形されている(例えば鋳造)。各フック部2は、先細状の拡大先端部2aを有して、この拡大先端部aが係止爪として機能するように設定されている。また、各フック部2の側面のうち、周方向所定位置が、平坦面2bとして形成されている。
【0019】
フック部2の外周には、コイルばねからなるリターンスプリング3が嵌合される。リターンスプリング3のフック部2からの抜けが、フック部2の拡大先端部2aによって規制される。また、ボス部1aの所定位置には、ホーンセンサ4が保持されている。
【0020】
エアバッグモジュール10は、取付プレート12を介して、芯金1に取付けられる。このため、取付プレート12には、エアバッグモジュール10に対する取付部となる第1取付部K1と、ステアリングハンドルの芯金1に対する取付部となる第2取付部K2と、が構成されている。
【0021】
取付プレート12は、例えば鉄系金属板をプレス加工する等により形成されて、実施形態では外周が円形となるように形成されている。エアバッグモジュール取付用となる第1取付部K1は、取付プレート12の周方向に略等間隔に複数(実施形態では4箇)設けられている。この第1取付部K1での固定は、実施形態では、ボルト15Aとナット15Bとを利用した強固な固定とされている(
図3、
図4参照)。
【0022】
取付プレート12に形成されたステアリングハンドルへの取付用となる第2取付部K2は、実施形態では、スナップイン方式での取付構造が採択されている。すなわち、第2取付部K2は、取付プレート12の周方向に間隔をあけて複数(実施形態では3個)設けられている。この第2取付部K2は、第1取付部K1よりも若干径方向外側に位置するように位置設定されている。
【0023】
第2取付部K2について、以下に説明する。まず、
図6に示すように、取付プレート12には、フック部2に対応させて、複数の取付孔12aが形成されている。この取付孔12aには、
図5、
図8に示すように、環状のダンパーゴム20が嵌合、保持されている。このダンパーゴム20の外周には、例えば金属あるいは硬質合成樹脂からなる環状のスペーサ21が嵌合されている。スペーサ21により、ダンパーゴム20が過剰に震動することを制限し、ダンパーゴム20の拡径方向への弾性変形や変動が規制される。
【0024】
取付孔12aに対応させて、フック部2が挿入される筒状のガイド部材30が設けられている。ガイド部材30の詳細が、
図5、
図8に示される。ガイド部材30は、ダンパーゴム20内をがたつきなく挿通可能な筒状の本体部31と、その一端部側に形成されたフランジ部32と、を有する。上記本体部31を、前方側(ステアリングハンドル側)からダンパーゴム20内に挿入したとき、フランジ32が取付孔12a(ダンパーゴム20)の縁部に当接することにより、それ以上の挿入が規制される(
図8参照)。なお、ガイド部材30の先端には開口部31cが形成されているが、先端が閉じられた形状とすることもできる。
【0025】
ガイド部材30の本体部31の両側面には、後述するロックばねを保持するために、保持孔31aと31bとが形成されている。また、ガイド部材30の先端部(フランジ部32とは反対側の端部)は、挿入されたフック部2の先端部を覆うように略キャップ状に形成されている。
【0026】
ガイド部材30には、ロックばね40が保持されている。ロックばね40は、取付プレート12を挟んで、ガイド部材30のフランジ部32とは反対側の位置に配設される。ロックばね40は、実施形態では、
図5、
図7に示すように、ばね材をU字状に曲げ加工することにより形成された芯材41と、芯材41をほぼ全体的に被覆する被覆材42とにより構成されている。被覆材42は、例えば軟質あるいは硬質の合成樹脂により形成されている。
【0027】
ロックばね40(の芯材41)は、互いに対向して伸びる一対の棒状部40a、40bと、一対の棒状部40aと40bとの板部同士を連結する連結部40cとを有する。棒状部40aに比して、棒状部40bが長く形成されている。そして、ロックばね40(の被覆材42)には、その長手方向に間隔をあけて一対の係止爪部40dが形成されている。
【0028】
一対の棒状部40a、40bは、ガイド部材30の本体部31の側面に保持されている。すなわち、一方の棒状部40aが、本体部31に形成された保持孔31aに嵌合されて、その係止爪部40dによって本体部31をその径方向から支持している。この嵌合状態で、係止爪部40dの係止作用によって、本体部31に対して、一対の棒状部40a、40bがその長手方向に相対変位することが規制される。
【0029】
ロックばね40のうち他方の棒状部40bが、本体部31に形成された保持孔31bに嵌合されて、ガイド部材31内に大きく突出している(
図8参照)。すなわち、他方の棒状部40bは、ガイド部材31内を横断するように(フック部2の挿入軌跡と干渉するように)配設されている。外力を受けない状態において、一対の棒状部40aと40bとの間隔が、フック部2の拡大先端部2aの最大幅よりも小さく、かつフック部2のうち平坦面2b部分での幅よりも若干大きくなるように設定されている。なお、保持孔31a、31bに対する棒状部40a、40bの嵌合は、隙間を有する嵌合とされて、ガイド部材30に対してロックばね40がわずかに動き得るようにされている。
【0030】
次に、エアバッグモジュール10をステアリングハンドル(の芯金1)に対して取付ける手順について説明する。なお、エアバッグモジュール10は、第1取付部K1でもって取付プレート12に対して固定された状態とされる。取付プレート12に対して、ダンパーゴム20、スペーサ21、ガイド部材30、ロックばね40があらかじめ組み付けられた状態とされる。また、ステアリングハンドル側では、フック部2にリターンスプリング3が嵌合された状態とされ、またホーンセンサ4が固定された状態とされる。
【0031】
上述の前準備が完了した状態で、取付プレート12つまりエアバッグモジュール10を、ステアリングハンドル(の芯金1)に対して接近させて、フック部2をガイド部材30内に挿入させていく。
【0032】
ダンパーゴム20内に挿入されたフック部2は、やがてその拡大先端部2aが、ロックばね40における一対の棒状部40aと40bとの間隔が大きくなるように弾性変形させつつ、拡大先端部2aが一対の棒状部40a、40bを乗り越える。拡大先端部2aが一対の棒状部40a、40bを乗り越えた時点で、ロックばね40は、一対の棒状部40aと40bとの間隔が小さくなるように弾性復帰される。これにより、フック部2は、その拡大先端部2a部分でもってロックばね40に係止されて、ガイド部材30からの抜けが規制される。
【0033】
ロックばね40によってフック部2の抜けが規制された状態で、エアバッグモジュール10のステアリングハンドル(に芯金1)に対する組付が完了される。すなわち、取付孔12a(ダンパーゴム20)に対してフック部2を挿入するというスナップイン方式で、エアバッグモジュール10が簡単にステアリングハンドルに取付けられることになる。このとき、フック部2の平坦面2bにロックばね40(の棒状部40a)が対向して、回り止めが行われる。
【0034】
エアバッグモジュール10は、フック部2の長手方向に所定範囲だけ相対変位可能とされる。そして、リターンスプリング3によって、通常は、後方側のストローク端に位置される(
図8参照)。この状態で、運転者が、リターンスプリング3の付勢力に抗してエアバッグモジュール10を押圧操作(前方へ向けて押す操作)すると、エアバッグモジュール10が前方へ移動して、取付板部12に設けた押圧部(図示略)が、ステアリングハンドル側に設けたホーンセンサ4に当接して、ホーンが作動される(警報音の発生)。
【0035】
走行中、ステアリングハンドルが振動すると、ダンパーゴム20の弾性とエアバッグモジュール10を質量体とを利用したダイナミックダンパ機能が発揮されて、ステアリングハンドルの振動が低減される。取付板部12とロックばね40との間に隙間が設定されていることから、ステアリングハンドルからの振動が、フック部2(これを覆うガイド部材30)を介してロックばね40に伝達することを防止しつつ、ダンパーゴム20の弾性変形を利用したダイナミックダンパ機能が確保される。
【0036】
スペーサ21によって、ダンパーゴム20が過剰に震動し不必要に拡径方向に弾性変形することが規制され、ダイナミックダンパ機能を効果的に得ることが可能となる。
【0037】
ここで、本実施形態では、ガイド部材30のうち本体部31の外周面に、その全周にわたって延びる環状の凸部31dを形成してある(
図5、
図8参照)。この凸部31dがダンパーゴム20の内周面に当接して、ガイド部材30の位置決めがより十分に行われる。
【0038】
図8に示すように、本体部31の外周面とダンパーゴム20の内周面との間には、凸部31dの周囲において隙間S1が形成される。この隙間S1の形成によって、周方向のダンピング可動域が拡大されて、ダイナミックダンパ性能を向上できる。なお、凸部31dの形成位置は、ダンパーゴム20の軸線方向略中間位置に形成しておくのが好ましい(ダンパーゴム20の軸線方向において、凸部31dを境にして隙間S1を略等しい長さで存在させる)。なお、本実施形態では、取付板部12に対して、外周縁部に開口されるスリット12cを周方向に間隔をあけて複数形成してある。
【0039】
本実施形態ではさらに、ガイド部材30におけるフランジ部32部分において、ダンパーゴム20との間に隙間S2を形成してある。すなわち、フランジ部32は、ダンパーゴム20に対向する面が、径方向外側に向かうにつれて徐々にダンパーゴム20から離間するように傾斜されていて、隙間S2がくさび形状として形成されている。この隙間S2の形成により、ダンパーゴム20の可動域を広げて、ダイナミックダンパ性能を向上できる。
【0040】
図10は、エアバッグモジュール10とその周囲構造の一例を示すもので、第2取付部K2の構造としては、後述する
図9に示すものを採択してある。図中、61はインフレータ、62は折りたたまれたエアバッグ、63は折りたたまれたエアバッグを覆う外カバーである。外カバー63が、運転席に着座された運転者から目視される部材となり、ホーンを作動させるときに押圧される部材となる。インフレータ61と折りたたまれたエアバッグの基部が、第1取付部K1でもって、固定具(ボルト15A、ナット15B)により共締め状態でもって固定される。また、外カバー63は、取付プレート12に形成された取付孔12h(例えば
図6参照)を利用して取付プレート12に固定される。このような取付プレート12に対するエアバッグモジュール10の取付構造そのものは、第2取付部K2の構造以外はよく知られたものなので、これ以上の説明は省略する。
【0041】
次に、取付プレート12についてさらに説明する。まず、取付プレート12の外周縁部のうち、第2取付部K2(取付孔12a)が構成される部分が、ステアリングハンドル側に向けてオフセットされるように段差が形成されている。すなわち、
図8において、段差による縦壁部が符号12dで示され、ステアリングハンドル側にオフセットされて取付孔12aが形成された面が符号12eで示される。また、この段差によるオフセット量を、
図8において符号αで示してある。
【0042】
ロックばね40は、上記段差(オフセット量α)を形成したことによる段差空間内に位置するように配設されている。つまり、上記段差空間を、フック部2(ガイド部材30)の伸び方向と直交する方向に伸びるように配設されたロックばねの収納空間として有効利用してある。また、エアバッグが膨張展開されたときの初期時、すなわちエアバッグ62が外カバー63を押し開ける際に、第1取付部K1から前方(ステアリングハンドル側)に向けて作用する応圧力が、ロックばね40に作用することが防止される。
【0043】
取付プレート2には、周方向に間隔をあけて複数のスリット12cが形成されている。各スリット12cは、各取付孔12aを左右から(取付プレート12の周方向から)挟むように、各取付孔12a毎に左右一対形成されている。各スリット12cは、その一端が取付プレート12の外周面に開口される切欠形状とされている。また、スリット12cの他端側は、取付プレート12の径方向内方側へと伸びて、第1取付部K1と第2取付部K2との間に位置するように細長く伸びている。
【0044】
上記スリット12cの形成によって、取付プレート12は、第1取付部K1が形成された本体領域D1に対して、第2取付部K2が構成されるオフセット領域D2が、ステアリングハンドルの軸方向つまりフック部2やガイド部材30の伸び方向に塑性変形されやすい形態とされている。
【0045】
前方衝突時におけるエアバッグの膨張展開の後期に、この膨張展開されるエアバッグが運転席側に突出することによって、取付プレート12の第1取付部K1に対して、運転席側に向かう方向(ステアリングハンドルから離間する方向)の引張力が作用する。この引張力は、第2取付部K2においては、フック部2がガイド部材30から抜け出る方向の引張力となる。
【0046】
スリット12cにより、第1取付部K1が形成された本体領域D1と第2取付部K2が構成されたオフセット領域D2との間での荷重伝達が低減されることになる。つまり、第1取付部K1に入力される上記引張力が、第2取付部K2では低減されて伝達されて、フック部2からガイド部材30が抜け出ることが防止されることになる。また、スリット12cを形成しておくことにより、ステアリングホイールからの振動がエアバッグモジュール10側へ伝達されることをも低減する上で好ましいものとなる。
【0047】
図9は、本発明の第2の実施形態を示すものであり、前記実施形態と同一構要素には同一符号を付してその重複した説明は省略する。本実施形態では、前記実施形態のものから、ダンパーゴム20、スペーサ21を除去した構成とされている。本実施形態では、前記実施形態のものに比して、ダイナミックダンパ機能を有しない一方、より簡易な構成となっている。
【0048】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能である。第2取付部K2の構造としては、スナップイン方式に限らず、固定具(例えばボルト、ナット)を利用した固定構造とすることもできる。スリット12cの形状や長さは適宜設定することができ、要は、第1取付部K1と第2取付部K2との間でもって荷重伝達を低減するような位置や長さであればよい。ダンパーゴム20を、ガイド部材30の外周に嵌合しておくこともできる(例えばガイド部材30の外周に環状の保持溝を形成して、この保持溝にダンパーゴム20を嵌合させておく)。フック部2は、芯金1と別部材で形成して、固定具によって芯金1に一体化することもできる。ガイド部材30は、フック部2の拡大先端部2aを覆うことのない形状に設定することもできる。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。