【実施例】
【0017】
次に、上述した実施形態に対応する具体的な実施例について、
図2乃至
図23を用いて説明する。なお以下に説明する実施例は、道路に含まれる車線ごとの接続状態等を示す車線(レーン)ネットワーク情報の自動生成に本願を適用した場合の実施例である。
【0018】
また、
図2は実施例に係る車線ネットワーク生成装置の概要構成を示すブロック図であり、
図3は実施例に係る車線ネットワーク生成処理を示すフローチャートであり、
図4は実施例に係るオルソ画像データ等を例示する図であり、
図5は実施例に係るオルソ画像データと道路リンクとの関係等を例示する図である。また、
図6は実施例に係る上下線確率を説明するための図であり、
図7は実施例に係る長線等を例示する図であり、
図8は実施例に係る長線等の状況を例示する図であり、
図9は実施例に係る長線等の詳細を例示する図であり、
図10は実施例に係る横断歩道のデータ等を例示する図である。更に、
図11は実施例に係る車線ネットワーク等を例示する図であり、
図12は実施例に係る垂直ネットワーク等を示す図であり、
図13は実施例に係るラインスコアの算出等を例示する図であり、
図14は実施例に係る幅員スコアを説明する図である。更にまた、
図15は実施例に係るラインスコア等を示す図であり、
図16は実施例に係る垂直ネットワークスコア等を示す図であり、
図17は実施例に係るレーンラインの算出等を示す図であり、
図18は実施例に係るレーンスコアを例示する図であり、
図19は実施例に係る車線境界線の欠損等がある場合の車線ネットワークの生成を説明する図(I)である。また、
図20は実施例に係る車線境界線の欠損等がある場合の車線ネットワークの生成を説明する図(II)であり、
図21は実施例に係る車線境界線の欠損等がある場合のレーンスコア等を例示する図であり、
図22は実施例に係る車線境界線の欠損等がある場合の車線ネットワークを例示する図であり、
図23は実施例に係る交差点内の車線ネットワークを例示する図である。このとき
図2では、
図1に示した実施形態に係る車線情報生成装置Sにおける各構成部材に対応する実施例の構成部材それぞれについて、当該車線情報生成装置Sにおける各構成部材と同一の部材番号を用いている。
【0019】
図2に示すように、実施例に係る車線ネットワーク生成装置SVは、CPU、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等からなる処理部10と、外部の例えばインターネット等のネットワーク等との間のデータの授受を制御するインターフェース11と、キーボード及びマウス等からなる操作部12と、液晶ディスプレイ等からなるディスプレイ13と、HDD(Hard Disc Drive)又はSSD(Solid State Drive)等からなる記録部14と、を備えて構成されている。また処理部10は、実施形態に係る車線情報取得手段1及び道路情報取得手段1−1の一例としての抽出部1と、検出部2と、実施形態に係る生成手段3の一例としての生成部3と、を備えて構成されている。このとき、上記抽出部1、検出部2及び生成部3のそれぞれは、処理部10を構成するCPU等のハードウェアロジック回路により実現されてもよいし、後述する実施例に係る車線ネットワーク生成処理に対応するプログラムを当該CPU等が読み出して実行することにより、ソフトウェア的に実現されるものであってもよい。また
図2に破線で示すように、抽出部1及び生成部3により、実施形態に係る車線情報生成装置Sの一例を構成している。また、抽出部1が本願に係る「道路標示抽出手段」の一例に相当し、インターフェース11が本願に係る「移動情報取得手段」の一例に相当し、生成部3が本願に係る「移動態様情報生成手段」の一例に相当する。
【0020】
以上の構成において、実施例に係る車線ネットワーク生成処理の対象となる航空写真のデータは、航空機により撮影された航空写真のデータから生成されたオルソ画像データとして、例えば記録部14に予め記録されているか、又は、インターフェース11を介して外部から取得される。一方操作部12は、当該操作部12において車線ネットワーク生成装置SVに対する指示操作が行われると、当該指示操作に対応する操作信号を生成して処理部10に出力する。これらにより処理部10は、抽出部1、検出部2及び生成部3により、ディスプレイ13上に必要な情報を表示しつつ、上記オルソ画像データを用いて実施例に係る車線ネットワーク生成処理を行う。ここで実施例に係る車線ネットワークとは、従来からの道路リンクにより示される道路に含まれる車線の状況を当該車線ごとに示すネットワークである。この場合の「車線の状況」とは、例えば、一つの道路にいくつ(何本)の車線が含まれているか、や、一つの道路における車線数の変更の状況、或いは、他の道路の車線とどのように接続されているか、等の状況をいう。そして実施例に係る車線ネットワークは、現在研究が進められている自動運転への活用等を目標の一つとしたものである。
【0021】
次に、実施例に係る車線ネットワーク生成処理について、具体的に
図2乃至
図23を用いて説明する。
【0022】
実施例に係る車線ネットワーク生成処理は、例えば操作部12における開始操作により開始される。そして
図3に対応するフローチャートを示すように、実施例に係る車線ネットワーク生成処理が開始されると、当該車線ネットワーク生成処理の対象となる上記オルソ画像データが、例えば記録部14から、又はインターフェース11を介して取得される(ステップS1)。このとき当該オルソ画像データは、例えば
図4(a)に例示するような航空写真の画像データであり、交差点CRで交差する道路Rの画像と共に、道路を跨ぐ歩道橋のような構造物BRが映っている。また、当該道路R上に存在する乗用車CやバスBのほか、分離帯P等も映っている。このようなオルソ画像データが入力されると、次に処理部10の抽出部1は、例えばセグメンテーション処理やマスク処理により、道路R及び交差点CRに相当する路面エリアを当該オルソ画像データから抽出する(ステップS2)。このステップS2の結果としては、例えば
図4(b)に示すような路面エリアのみがオルソ画像データから抽出される。次に抽出部1は、路面エリアのみとなったオルソ画像データから、道路R及び交差点CRの表面に描かれている道路標示を抽出する(ステップS3)。ステップS3で抽出される道路標示(いわゆる路面ペイント)とは、通常は各車線の中央に白色等のペイントを用いて描かれている標示であり、進行方向を示す矢印標示や、行先標示、横断歩道標示、又は「バス優先」といった文字標示等が含まれる。この場合の道路標示のデータは、例えば
図4(d)に白点で示す当該道路標示の位置データに加えて、向きのデータ、スケールのデータ、及び類似値のデータ等を含んでいる。
【0023】
次に抽出部1は、いわゆるポリライン化等の処理により、路面エリアのみのオルソ画像データから道路R等を構成する線分からなる骨格ラインを抽出する(ステップS4)。ステップS4の処理は、路面エリアのみのオルソ画像データを細線化又は細分化する処理である。このステップS4の結果としては、例えば
図4(b)に示す路面エリアのみのオルソ画像データに対応した
図4(c)に示すような骨格ラインのデータが生成される。この骨格ラインのデータはいわゆるベクトルデータである。
【0024】
次に抽出部1は、
図5に例示するように、オルソ画像データに映っている道路Rに対応する道路リンクRLのデータ(
図5(a)参照)と、ステップS4で抽出した骨格ラインに含まれる各ライン(線分。
図5(b)参照。)と、を比較し、骨格ラインにおいて道路リンクRLの周辺且つそのリンク方向に平行なライン及び垂直なラインをそれぞれ抽出し、その比較対象となった道路リンクRLのデータに紐付ける(ステップS5)。このとき
図5(b)に例示する場合は、例えば交差点手前の横断歩道を示す道路標示は道路リンクRLに平行な線分からなっており、道路リンクRLに垂直なラインとしては例えば一時停止線に相当するラインが挙げられる。次に抽出部1は、上り線及び下り線の道路リンクRLと各ラインを紐付ける(ステップS6)。このとき抽出部1は、相対距離に起因したいずれかの道路リンクへの振り分けの困難性を考慮して、全てのラインについて、道路リンクRLとの関係における上下線確率(上り線に対応するラインである確率又は下り線に対応するラインである確率)を算出する(ステップS6)。
【0025】
ここで上記上下線確率とは、例えば
図6(a)に示す一条道路(即ち原則として上り線と下り線からなる、一本の道路リンクRLに対応する道路)の場合は、道路ラインRLから遠ざかる位置にあるラインほど、上り線又は下り線である確率が高くなるが、道路リンクRLに相当する道路Rの中央部にいくほど、そのラインが上り線内に存在する確率と下り線内に存在する確率とは等しくなる(
図6(a)参照)。一方、例えば
図6(b)に示す二条道路(即ち原則として複数の車線にそれぞれ対応し且つ相互にリンク方向が反対である二本の道路リンクRLに対応する道路)の場合は、二本の道路
リンクRLの外側は上り線又は下り線である確率が百パーセントとなるが、二本の道路
リンクRLの間の領域では距離に応じて上り線である確率又は下り線である確率が異なってくる(
図6(b)参照)。
【0026】
次に抽出部1は、操作部12における設定操作等に基づいて、骨格ライン化された道路R(
図4(c)、
図5(b)又は
図7(a)参照)のうち、実施例に係る車線ネットワーク生成処理の対象となる区間を一又は複数設定する(ステップS7)。次に抽出部1は、操作部12における操作に基づいて、設定した(ステップS7参照)区画のうちいずれか一の区画が選択されたか否かを判定する(ステップS8)。ステップS8の判定において、例えば交差点CR内以外の全ての区画についての車線ネットワーク生成処理が終了している等の理由によりいずれの区画も選択されない場合(ステップS8:NO)、処理部10は後述するステップS15に移行して交差点CR内の車線ネットワーク生成処理を行う。一方ステップS8の判定において、いずれか一の区画が選択された場合(ステップS8:YES)、次に抽出部1は、ステップS8で選択された区画に含まれている各ラインについて、それぞれの実際の長さに基づいた区分を行う。ここで、骨格ラインに含まれているラインの実際の(現実の)長さの検出は、例えばオルソ画像データの細線化(上記ステップS4参照)の後にベクトルデータ化することにより可能となる。またこれ以外の方法として、元のオルソ画像データ(航空写真)のスケール(縮尺)及び画像内のピクセル(画素)からメートルに変換してもよいし、当該変換をすることなくピクセル空間での距離を算出する方法でも可能である。但しこの場合も、単純にピクセル距離ではなく、サブピクセルで処理して精度を向上させる必要があると考えられる。より具体的に抽出部1は、
図7(a)に示す骨格ラインとして抽出された各ラインを、各道路Rの外側線(道路以外の領域との境界線)を示す外側線OL(
図7(b)参照)と、道路に平行且つ実測8.5メートル以上の長さを有する長線LL(
図7(c)参照)と、道路に平行且つ実測8.5メートル未満の長さを有する短線SL(
図7(d)参照)と、道路に垂直な垂直線VL(
図7(e)参照)と、に区分する。このとき、長線LLと短線SLとを分けるための閾値である「8.5メートル」とは、道路構造令における高速道路の車線境界線(破線)の長さが8メートルとされていることから、それよりも少し長い閾値を設けたものである。そして、これら外側線OL、長線LL、短線SL及び垂直線VLを骨格ライン化されたデータ上で見ると、例えば交差点CRだと当該長線LL等が
図8に例示するように分布していることになる。そして当該交差点CR部分を拡大し、オルソ画像データとしての実際の航空写真(
図9(b)参照)と比較すると、
図9(a)に例示するように、構造物BRに相当するライン50、車線境界線に相当するライン51、画像データ上の雑音に相当するライン52、上記分離帯Pに相当するライン53、一時停止線に相当するライン54、自転車横断帯に相当するライン55、バス等によるノイズに相当するライン56、道路標示に相当するライン57、車線境界線に相当するライン58及び横断歩道に相当するライン59等が含まれていることが判る。
【0027】
次に抽出部1は、骨格ラインに上記ステップS9で区分した短線SLとして含まれている各ライン(
図10(a)参照)から、平行且つ予め設定された密度以上の密度で等間隔で並んでいる短線SLを、横断歩道を示すライン59として検出する(ステップS10)。これは、横断歩道を示すライン59は、実施例に係る車線ネットワークには含まれないからである。
【0028】
以上のステップS10までの処理を前提として、以下に説明する処理が処理部10の検出部2等において順次実行されることにより、実施例に係る車線ネットワーク生成処理が行われる。そして当該車線ネットワーク生成処理の結果としては、例えば
図11(a)に示す骨格ラインに含まれる各ラインのデータから、
図11(b)に例示するような車線ネットワークLNWが生成される(ステップS11乃至ステップS15)。なお以下の説明では、上記ステップS7において設定された車線ネットワーク生成処理の対象となる区間が
図9(a)に示す破線楕円で囲まれた領域内の、
図12(a)に示す破線長方形で示された区間であるとする。
【0029】
上述したステップS1乃至ステップS10が終了したら、次に処理部10の検出部2は、
図12(a)において破線長方形で示されている区間に相当するベクトルデータVD(骨格ラインのデータ)を対象として、実施例に係る垂直ネットワークを用いた車線ネットワークの生成を行う(ステップS11)。このとき検出部2及び生成部3は、上記垂直線VL及び横断歩道を構成する短線SL(
図10(b)参照)は、処理の対象外とする。
【0030】
ここで実施例に係る垂直ネットワークNとは、
図12(b)に例示するように、相隣接する二つのライン(骨格ラインのデータとしてのライン)L同士を結ぶ線分であって、その両端に、各ラインL上にあるノードNDを有する線分である。
【0031】
ステップS11として先ず初めに検出部2は、例えば
図12(c)に示すように、対象となる区間内にある複数のラインLA等の中から一つの対象ラインLXを選び、並行している道路リンクRLのリンク方向に垂直な方向に対象ラインLXを移動させたとき(
図12(c)ハッチング部分参照)に接触する他のラインLA、ラインLC、ラインLD及びラインLEそれぞれとの対象ラインLXと間に垂直ネットワークNを設定する。このとき検出部2は、
図12(d)又は
図12(e)に例示するように、相隣接する二つのラインLA及びラインLBを道路リンクRLの方向へ平行投影したときに交差する領域(
図12(d)及び
図12(e)におけるハッチング部分参照)の中心位置と各ラインLA及びラインLBとの交点をノードNDの位置として、垂直ネットワークNを設定する。なお検出部2は、対象ラインLXから見て他のラインLCにより遮蔽されているラインLF(
図12(c)参照)については、ベクトルデータVDとしてのノイズであるとして、垂直ネットワークNの設定の対象外とする。そして、
図12(a)に破線長方形で示す対象区間に含まれる各ラインLA乃至ラインLLについてそれぞれ垂直ネットワークNを設定すると、
図13(a)に例示する垂直ネットワークN1乃至垂直ネットワークN13が設定される。
【0032】
次に検出部2は、相隣接するラインL自体の実際の長さから、各ラインLが車線境界線に対応している状態(即ち車線境界線らしさ)を示すパラメータの一つである「ラインスコア」を、ラインLごとに算出する。より具体的に検出部2は、各ラインLについて、垂直ネットワークNにノードNDを介して接続する二つのラインLにおいて、±0.5メートルの範囲でそれぞれの長さが近い値である場合、それぞれのラインLのラインスコアを1点加算する。この長さによる各ラインLのラインスコアについては、同じ長さのラインLが相隣接しているほど(即ち、当該二つのラインLにおける車線境界線らしさが高いほど)高いスコアとなる。例えば
図13(b)に示すラインLAとラインLBとに着目した場合、実際の長さが順に1.5メートルと1.0メートルであったとすると、これらラインLAとラインLBについて、それぞれラインスコアが1点加算される。また同様に、
図13(c)に示すラインLBとラインLCとに着目した場合、実際の長さが順に1.0メートルと0.8メートルであったとすると、これらラインLBとラインLCについても、それぞれラインスコアが1点加算される。これらの結果、ラインLAについてはラインスコアが1点加算され、ラインLBについてはラインスコアが合計2点加算され、ラインLCについてはラインスコアが1点加算される。なお、各ラインLそれぞれの長さによるラインスコアの値を、以下適宜「条件1」と称する。
【0033】
次に検出部2は、相隣接するラインLの間隔(幅員)からも、各ラインLの車線境界線らしさを算出する。より具体的に検出部2は、
図14(a)に示す道路構造令第5条第4項に規定されている車線の幅員に基づいて定義された
図14(b)に示す幅員クラスWを用いて、各ラインLの車線境界線らしさを算出する。なお
図14(b)に例示する場合は、±10パーセントの余裕を持たせて各幅員クラスWの定義が規定されている。また
図14にそれぞれ記載されているデータは、例えば記録部14に予め記録されているものを用いればよい。そして検出部2は、複数の垂直ネットワークNに接続しているラインLのそれぞれについて、幅員クラスW0と幅員クラスW9に該当するもの以外の垂直ネットワークNの数を「n」とし、同じ幅員クラスに属する垂直ネットワークNの最大数をm(m>1)としたとき、「m/n」の値をラインスコアに加算する。この幅員スコアWによる各ラインLのラインスコアについては、同じ幅員クラスに属するラインLが相隣接しているほど(即ち、当該二つのラインLにおける車線境界線らしさが高いほど)高いスコアとなる。例えば
図13(d)に示すラインLXに着目した場合、ラインLAに対する幅員スコアWとラインLBに対する幅員スコアWとが異なっており、有効な垂直ネットワークNが二つであるので、幅員クラスWによるラインスコアは0/2=0.0が加算される。また、例えば
図13(e)に示すラインLXに着目した場合、ラインLAに対する幅員スコアWとラインLBに対する幅員スコアWとが同じであり、有効な垂直ネットワークNが二つであるので、幅員クラスWによるラインスコアは2/2=1.0が加算される。更に、例えば
図13(f)に示すラインLXに着目した場合、三種類の幅員スコアWが対応するが、幅員スコアW2の垂直ネットワークNが三つで数が最も多く、有効な垂直ネットワークNが(幅員スコアW0の垂直ネットワークNを除いた)四つであるので、幅員クラスWによるラインスコアは3/4=0.75が加算される。なお、各ラインLそれぞれの幅員クラスWによるラインスコアの値を、以下適宜「条件2」と称する。
【0034】
そして検出部2は、上記条件1及び上記条件2によるラインスコアをラインLごとに加算し、ラインスコアを集計する。このとき、
図13(a)及び
図15(a)に例示する各ラインLA乃至ラインLLの場合、それぞれの集計結果は
図15(b)に示すものとなる。
【0035】
次に検出部2は、各ラインL間の幅員について、当該幅員らしさをしめすパラメータである垂直ネットワークスコアを各垂直ネットワークNについて算出する。より具体的に当該垂直ネットワークスコアは、
図14(b)に示す幅員スコアと上記集計された(
図15(b)参照)ラインスコアを加算して垂直ネットワークNごとに垂直ネットワークスコアを算出する。このとき、当該垂直ネットワークスコアが負数となる垂直ネットワークN(
図16に例示する場合は、垂直ネットワークN1、垂直ネットワークN6及び垂直ネットワークN7)は、以後の車線ネットワーク生成処理には用いられない。これにより、真に車線に対応している垂直ネットワークNのみを車線ネットワーク生成処理の対象とすることができる。より具体的に例えば、
図16(a)に例示するラインLA乃至ラインLL及び垂直ネットワークN1乃至垂直ネットワークN13において、ラインLDとラインLEを接続する垂直ネットワークN3に着目すると、幅員クラスW1でありラインLDのラインスコアが「2」でラインLEのラインスコアが「3」であるので、当該垂直ネットワークN3の垂直ネットワークスコアは「7」となる。以下同様にして、各垂直ネットワークNについて算出された垂直ネットワークスコアが
図16(b)に例示されている。
【0036】
次に処理部10の生成部3は、これまで検討してきた垂直ネットワークNにおいて互いに接続されている垂直ネットワークNを一つのグループとしてグループ化する。即ち
図17(a)に例示するグループG1乃至グループG3を形成する。これら各グループにおいては、それぞれの両端の垂直ネットワークN2、垂直ネットワークN5、垂直ネットワークN10、垂直ネットワークN11及び垂直ネットワークN13が、道路における外側線OLに対応するラインLA、ラインLB、ラインLC及びラインLLにそれぞれ接続しており、更に垂直ネットワークスコアが負数であった垂直ネットワークN7を経由して垂直ネットワークN8がラインLBに接続している。そして各グループG1乃至グループG3にそれぞれ含まれている各垂直ネットワークNは
図17(a)に例示するように道路を横断しており、当該各垂直ネットワークNの数は、車線数そのものとなる。
【0037】
次に生成部3は、上記各グループG1乃至グループG3に含まれる垂直ネットワークNを用いて、各グループG1乃至グループG3を接続する車線に相当するレーンラインを算出する。より具体的に生成部3は、
図17(b)及び
図17(c)に例示するように、対象となる垂直ネットワークNXを一つ定め、その中心から隣接するグループGに含まれる全ての垂直ネットワークNへの方向を算出し、平行する道路リンクRLのリンク方向に最も近い当該方向を、その垂直ネットワークNXを始点とするレーンラインLL(即ち一本の車線)とする。なお
図17(b)及び
図17(c)に例示する場合は、破線で示されている方向はレーンラインとしては採用されない。
【0038】
以上の
図12乃至
図17を用いて説明した一連の処理により、実施例に係るレーンラインLLA乃至レーンラインLLGが
図17(d)に例示するように算出され、これらにより、実施例に係る車線ネットワークが生成される(ステップS11)。
【0039】
次に生成部3は、各ラインL及び各垂直ネットワークNについて、上記車線境界線らしさ及び上記幅員らしさの総合評価に当たるレーンスコアを算出する。より具体的に
図18(a)に例示する場合において、各レーンラインLLA乃至レーンラインLLGのそれぞれにつき、接続する垂直ネットワークNの垂直ネットワークスコアの合計値を「S」とし、各車線に含まれるレーンラインLLの数を「LL」とし、各車線に含まれる垂直ネットワークNの数を「LN」とし、各車線に含まれる同一の幅員クラスの最大数を「W」とし、上記レーンスコアを(S/LL)×(W/LN)として算出する。例えば、
図18(a)に例示するレーンラインLLA乃至レーンラインLLCからなる車線のレーンスコアは、
{(4+7+6+6)/3}×(4/4)=7.6
となり、
図18(a)に例示するレーンラインLLD及びレーンラインLLEからなる車線のレーンスコアは、
{(7+7+7)/2}×(3/3)=10.5
となり、
図18(a)に例示するレーンラインLLF及びレーンラインLLGからなる車線のレーンスコアは、
{(5+5+5)/2}×(3/3)=7.5
となる。なお生成部3は、
図18(b)に示すように、上記ステップS3で抽出していた道路標示の位置RPに基づき、道路標示の中心付近を通る車線ほど正しいであろうとの仮定のもと、道路標示スコアを算出してこれを上記レーンスコアに加算してもよい。即ち、道路標示の検出位置を中心とした半径50センチメートル程度の円を道路標示円として仮定し、道路標示円とレーンラインLLとが交差又は接触している場合には、レーンラインLLと道路標示円の中心との最短距離が短いほど、道路標示スコアを高くしてレーンスコアに加算するのが好ましい。
【0040】
次に生成部3は、ステップS11までで生成されたレーンラインLLをそれぞれに含む車線について、元のオルソ画像データの段階で車線境界線が擦れる又は消失している等の理由により、例えば、その車線が含まれている道路の幅より狭く、且つ幅員クラスW7以上(例えば二車線分)の広い幅員があるか否かを判定する(ステップS12)。
【0041】
ステップS12の判定において、当該広い幅員がない場合(ステップS12:NO)、生成部3は後述するステップS13に移行する。一方ステップS12の判定において、上記のような広い幅員があった場合(ステップS12:YES)、生成部3は次に、当該幅員に対応した仮想のライン(線分)を骨格ラインのベクトルデータVDに追加し、当該追加後のベクトルデータVDを用いて、上記ステップS11と同様の車線ネットワーク生成処理(第2パターンの車線ネットワーク生成処理)を行う(ステップS14)。
【0042】
ここで、上述したような車線境界線の擦れ等が生じている場合、例えば
図19(a)に破線楕円で例示するように、対応するオルソ画像データにも対応するラインが表れないことになる。そしてこのようなオルソ画像データから抽出部1により上記ラインLを抽出すると、その結果としては
図19(b)に例示するようなラインLA乃至ラインLIが抽出される。そしてこれらに対してステップS11と同様の垂直ネットワークNの設定を生成部3により行うと、結果としては
図19(c)に例示する垂直ネットワークN1乃至垂直ネットワークN14が設定される。このとき、これら垂直ネットワークN1乃至垂直ネットワークN14についての幅員クラス及び幅員スコアは、それぞれ
図19(d)に示すようになる(
図14も合わせて参照)。次に、
図19(c)に例示する各ラインL及び各垂直ネットワークNに対してステップS11と同様のグループ化を生成部3により行うと、結果として
図20(a)に示すグループG1乃至グループG4が形成される。そして、当該グループ化の結果に対してステップS11と同様のレーンラインLLの算出を行うと、結果としては
図20(b)に例示するレーンラインLLA乃至レーンラインLLGが算出される。
【0043】
そこで上記ステップS14では、
図20(a)の状態で幅員が広い垂直ネットワークN2、垂直ネットワークN3及び垂直ネットワークN5のそれぞれを、仮に長さ方向に二等分し、元の垂直ネットワークN2を垂直ネットワークN2−1と垂直ネットワークN2−2に分け、元の垂直ネットワークN3を垂直ネットワークN3−1と垂直ネットワークN3−2に分け、更に元の垂直ネットワークN5を垂直ネットワークN5−1と垂直ネットワークN5−2に分ける(
図14(b)における「組み換え」欄参照)。そして
図20(c)に例示するように、垂直ネットワークN2、垂直ネットワークN3及び垂直ネットワークN5それぞれの二等分点を通る仮ラインLB’、仮ラインLC’及び仮ラインLD’を設定し、それらを含む各ラインL及び各垂直ネットワークNを用いて改めてレーンラインLLを算出する。この場合は、
図20(d)に例示するレーンラインLLA乃至レーンラインLLIが改めて算出される。そして、これに基づいてステップS11と同様のレーンスコアまでを算出すると、その結果は
図21に例示するものとなる(ステップS14)。
【0044】
次に生成部3は、上記ステップS12の判定まで、又は上記ステップS14までに生成された車線ネットワークについて、最終的な評価を行い、実施例に係る車線ネットワークとしてインターフェース11を介して外部に出力するか、又は記録部14に記録する(ステップS13)。このステップS13として具体的に生成部3は、上記ステップS12の判定において上記広い幅員がない場合(ステップS12:NO)、上記ステップS11までの処理により生成された車線ネットワークをその区間の車線ネットワークとして出力等し、その後、次の区間についての車線ネットワークの生成を行うべく、上記ステップS8に戻る。一方ステップS14を経た場合に生成部3は、ステップS14で生成された上記レーンスコアを比較し、
図22(a)に示すように、その値が高い方(
図22(a)に例示する場合は、
図20(d)に対応する車線ネットワーク)を出力等し、その後、次の区間についての車線ネットワークの生成を行うべく、上記ステップS8に戻る。なお、上記ステップS13の判定に、使用者による目視判定を併用してもよい。
【0045】
なお上述した実施例においては、広い幅員があった場合は、仮ラインLA’等を生成してこれを補間し、当該補間の有無に応じて算出されたレーンラインLLA等についてのレーンスコアを比較して最終的な車線ネットワークを出力した。しかしながらこれ以外に、例えば
図22(b)に例示するように、広い幅員がある状態で上記仮ラインLA’等を生成することなく算出したレーンラインLLA等について、並行する道路リンクRLのリンク方向との角度α1乃至角度α4を算出し、これらの合計値を、仮ラインLA’等による補間の有無により比較し、当該角度の合計値が小さい方(即ち、道路リンクRLのリンク方向との角度差が小さい方)を車線ネットワークとして出力等するように構成してもよい。
【0046】
次に、上記ステップS8の判定においていずれの区画も選択されない場合(ステップS8:NO)、処理部10は複数の道路Rが交差する交差点CR内における車線ネットワークを生成する(ステップS15)。このステップS15については後ほど詳述する。その後処理部10は、例えば車線ネットワーク生成装置SVの電源がオフとされる等の理由により、実施例に係る車線ネットワーク生成処理を終了するか否かを判定する(ステップS16)。ステップS16の判定において当該車線ネットワーク生成処理を終了する場合(ステップS16:YES)、処理部10はそのまま当該車線ネットワーク生成処理を終了する。一方ステップS16の判定において当該車線ネットワーク生成処理を継続する場合(ステップS16:NO)、処理部10は上記ステップS1に戻って上述してきた一連の処理を繰り返す。
【0047】
次に、上記ステップS15における交差点内の車線ネットワーク生成処理について、具体的に説明する。当該車線ネットワーク生成処理としては、具体的には以下の四通りの方法が考えられる。
【0048】
(I)
道路リンクRLにおける接続関係を参照する方法
即ち処理部10は、第1の方法として、
図23に例示する交差点CRに接続される車線ネットワークのグループがグループG1乃至グループG4まであったとする。このとき、当該交差点CRに接続する道路についての道路リンクRLがある場合は、グループG同士の大まかな接続関係(各グループG間の繋がり)を決定する。より具体的に例えば、
図23に例示するグループG1乃至グループG4が「交差点CRで十字路を構成している」と決定する。また例えば、グループG1に含まれるレーンラインLLとグループG2に含まれるレーンラインLLとが交差点CRで接続されており、それに対する立体交差又は地下道としてグループG3に含まれるレーンラインLLとグループG4に含まれるレーンラインLLとが接続されていると決定する。
【0049】
(II)
レーンラインにおける上り/下りの属性を利用する方法
即ち処理部10は、
図23に例示する場合における第2の方法として、交差点CRに接続する道路についての道路リンクRLがある場合は、当該道路リンクRLにおける二条道路(
図6(b)参照)における上り属性及び下り属性をレーンラインLLに転写し、上り車線同士及び下り車線同士が接続可能であると決定する。なお第2の方法としては、道路リンクRLを利用する以外の方法でレーンラインLLの上り属性及び下り属性が設定されている場合は、それに基づいて、上り車線同士及び下り車線同士が接続可能であると決定してもよい。
【0050】
(III)
道路標示を利用する方法
即ち処理部10は、
図23に例示する場合における第3の方法として、交差点CRに接続する道路についての道路リンクRLがある場合に、その道路リンクRLを参照して決定したグループG間の接続状態と、各レーンラインLLにおける上り属性又は下り属性と、道路標示としての方向標示(矢印マーク)で示される方向と、に基づいて、交差点CR内で接続可能なレーンラインLLを推測する。より具体的に例えば、
図23に例示するグループG2の一番左の車線に直進・左折を示す矢印標示がある場合は、グループG2の一番左のレーンラインLLがグループG1とグループG3に接続すると決定する。この場合は、結果的に一つのグループGから複数のグループGへの接続についての決定ができることになる。
【0051】
(IV)
プローブ情報の利用
即ち処理部10は、
図23に例示する場合における第4の方法として、交差点CRを通過する車両等の軌跡をいわゆるプローブ情報の収集により決定し、その中から規則性を検出して(又は、各軌跡を代表する軌跡を求めて)、各グループGの接続関係の決定に用いる。この場合は、交差点CR内におけるより現実に近い車線(曲線の走行ライン)及びその形状を決定することができる。
【0052】
以上それぞれ説明したように、実施例に係る車線ネットワーク生成処理によれば、交差する複数の道路Rについての車線ネットワークと、各道路R間の関係を示す道路リンクRLと、をそれぞれ取得し、それらに基づいて、道路Rが交差する位置における各車線の道路間の関係を示す車線ネットワークを生成する。よって、例えば交差点等、道路Rが交差する位置における各車線の接続状態を示す車線ネットワークを、各道路Rについて車線ネットワーク及び道路リンクRLを用いて自動的且つ正確に生成することができる。
【0053】
また、各道路リンクRLが各道路R自体にもそれぞれ対応しており、各道路リンクRLに基づいて、当該各道路リンクRLがそれぞれ対応する各道路Rの上り車線をそれぞれ示す車線ネットワーク同士を接続して交差する位置での各上り車線に対応する車線ネットワークを生成する。また、各道路ネットワークがそれぞれ対応する各道路Rの下り車線をそれぞれ示す車線ネットワーク同士を接続して交差する位置での各下り車線に対応する車線ネットワークを生成する。よって、車線ごとの上り又は下りを考慮して車線ネットワークを生成するので、道路Rが交差する位置における車線を正確に示す車線ネットワークを生成することができる。
【0054】
更に、道路Rを撮像した実画像に対応するオルソ画像データから道路標示を抽出し、その道路標示に更に基づいて車線ネットワークを生成する場合には、車線の中心線上に描かれている道路標示に基づいて車線ネットワークをより正確に生成することができる。
【0055】
更にまた、交差する位置を移動した車両のプローブ情報に更に基づいて車線ネットワークを生成する場合には、実際に移動した車両の移動態様を示すプローブ情報を用いることで、車線ネットワークをより正確に生成することができる。
【0056】
また、道路Rが交差する位置において各道路Rにより交差点又は立体交差が形成されている場合でも、当該交差点又は当該立体交差における各車線の接続状態を示す車線ネットワークを自動的且つ正確に生成することができる。
【0057】
なお、上述した実施例の他に実施例に係る車線ネットワーク生成処理に用い得る技術としては、例えば以下の技術が挙げられる。
・曲線補間や走行画像等に基づいて生成した仮想軌跡を利用して、交差点CR内や遮蔽部(高架下やトンネル等)内の車線ネットワークを生成することができる。
・いわゆるリアルタイム評価値変動法を用いることで、複数の車線ネットワークの中から実際の車線の状態に合っているものを残し、その道路に隣接する道路における車線ネットワークについて、当該残った車線ネットワークとの接続関係も考慮し評価値を変動させる。これにより、車線ネットワークの候補としての確度を向上させることができる。
・いわゆる機械学習法を導入する。即ち、複数の車線ネットワークの候補を入力し、使用者の目視による正しい車線ネットワークを決定して出力するか、又はその正しい編集を決定して出力するニューラルネットワーク学習を活用する。この場合、十分に学習されたならば、評価値による候補の優先順位ではなく、ニューラルネットワークの出力結果を最上位の結果としてもよい。
【0058】
更にまた、
図3に示したフローチャートに相当するプログラムを、光ディスク又はハードディスク等の記録媒体に記録しておき、或いはインターネット等のネットワークを介して取得しておき、これを汎用のマイクロコンピュータ等に読み出して実行することにより、当該マイクロコンピュータ等を実施例に係る処理部10として機能させることも可能である。