(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1に示す燃料電池システム1は、燃料電池10と、燃料タンク12と、燃料ポンプ14と、ブロワ16と、凝縮器18と、水タンク20と、水ポンプ22と、外部燃料タンク24と、外部燃料ポンプ26と、イオン交換装置30と、循環ポンプ36とを備えている。上記の燃料電池システム1の構成のうち、燃料電池10と、燃料タンク12と、燃料ポンプ14と、ブロワ16と、凝縮器18と、水タンク20と、水ポンプ22と、イオン交換装置30と、循環ポンプ36とは、装置筐体11に収容され、外部燃料タンク24と、外部燃料ポンプ26とは、装置筐体11外に設置されている。
【0018】
燃料電池10は、ダイレクトメタノール型の燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)である発電セル101が積層された発電装置であり、家庭・産業用の電源等として用いられる。この燃料電池10は、積層された複数の発電セル101と、複数の発電セル101をその積層方向に挟む一対の集電体102と、発電セル101及び一対の集電体102を発電セル101の積層方向に挟む一対のエンドプレート103とを備えている。
【0019】
発電セル101は、膜電極接合体104を含んでいる。膜電極接合体104は、水素イオン(陽イオン)伝導性を有する略矩形の高分子電解質膜105と、略矩形のアノード触媒層106と、カソード触媒層107を含み、さらに図示は省略するが、略矩形のアノードガス拡散層とカソードガス拡散層を含む。アノード触媒層106とアノードガス拡散層がアノード(燃料極)を構成し、カソード触媒層107とカソードガス拡散層がカソード(空気極)を構成する。
【0020】
高分子電解質膜105としては、特に限定されるものではなく、通常の高分子電解質形燃料電池に搭載される高分子電解質膜を使用することができる。例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸からなる高分子電解質膜(例えば、米国DuPont社製のNafion(商品名)、旭化成(株)製のAciplex(商品名)、ジャパンゴアテックス(株)製のGSIIなど)を使用することができる。
【0021】
アノード触媒層106およびカソード触媒層107は、例えば白金系の金属触媒などの電極触媒と、当該電極触媒を担持する導電性炭素粒子(カーボン粉末)と、水素イオン伝導性を有する高分子電解質とで構成されている。
【0022】
アノード触媒層106およびカソード触媒層107における担体である導電性炭素粒子としては、導電性を有する細孔の発達したカーボン材料を用いるのが好ましく、例えばカーボンブラック、活性炭、カーボンファイバーおよびカーボンチューブなどを使用することができる。カーボンブラックとしては、例えばチャネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックおよびアセチレンブラックなどが挙げられる。また、活性炭は、種々の炭素原子を含む材料を炭化処理および賦活処理することによって得ることができる。
【0023】
アノード触媒層106およびカソード触媒層107における電極触媒としては、白金または白金合金を用いるのが好ましい。白金合金としては、白金以外の白金族の金属(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム)、鉄、チタン、金、銀、クロム、マンガン、モリブデン、タングステン、アルミニウム、ケイ素、レニウム、亜鉛およびスズからなる群より選択される1種以上の金属と、白金との合金であるのが好ましい。特に、本実施形態のアノード触媒層106にあっては、中間生成物である一酸化炭素が白金触媒を被毒するのを抑えるため、耐一酸化炭素被毒性を有するルテニウムを含んでいることが好ましい。上記白金合金には、白金と上記金属との金属間化合物が含有されていてもよい。さらに、白金からなる電極触媒と白金合金からなる電極触媒を混合して得られる電極触媒混合物を用いてもよい。
【0024】
アノード触媒層106およびカソード触媒層107の外側に配置されるアノードガス拡散層およびカソードガス拡散層(いずれも図示を省略する)としては、当該分野において公知の種々のガス拡散層を用いることができる。これらのガス拡散層を構成する基材としては、ガス透過性を持たせるために、発達したストラクチャー構造を有するカーボン微粉末、造孔材、カーボンペーパーまたはカーボンクロスなどを用いて作製された、導電性多孔質基材を用いることができる。また、排水性を向上させるために、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)などのフッ素樹脂を代表とする撥水性材料(高分子)を上記基材の内部に分散させて、上記基材は撥水処理を施されていてもよい。さらに、電子伝導性を持たせるために、カーボン繊維、金属繊維またはカーボン微粉末などの電子伝導性材料で上記基材を構成してもよい。なお、カソード側およびアノード側において同じガス拡散層を用いても異なるガス拡散層を用いてもよい。
【0025】
このような発電セル101を備える燃料電池10は、アノード供給口10Aと、アノード排出口10Bと、カソード供給口10Cと、カソード排出口10Dとを備えている。アノード供給口10Aは、燃料ポンプ14を介して燃料タンク12に連通されており、アノードに液体燃料を供給する供給口である。また、アノード排出口10Bは、燃料タンク12に連通されており、アノードの生成物を排出する排出口である。また、カソード供給口10Cは、ブロワ16を介してシステム外部に連通されており、カソードに酸化剤(空気)を供給する供給口である。また、カソード排出口10Dは、凝縮器18を介して水タンク20に連通されており、カソードの生成物を排出する排出口である。
【0026】
燃料タンク12には、数重量%に希釈化されたメタノール水溶液(MeOH)からなる液体燃料が貯蔵されている。システムが起動すると、燃料ポンプ14により、液体燃料が燃料タンク12からアノード供給口10Aを通じてアノード(燃料極)に供給され、ブロワ16により、外部から酸化剤がカソード供給口10Cを通じてカソード(空気極)に供給される。
【0027】
アノードでは、下記(1)式で示すように、触媒による酸化反応により二酸化炭素、水素イオン、及び電子が生成される。アノードで生成された電子が外部の回路を通ることで、ユーザ側の電子機器等の外部負荷に電力が供給される。一方、アノードで生成された水素イオンは、高分子電解質膜を経過してカソードに移動する。カソードでは、下記(2)式で示すように、触媒による酸素の還元反応により水が生成される。
CH
3OH+H
2O→CO
2+6H
++6e
− … (1)
3/2O
2+6H
++6e
−→3H
2O … (2)
【0028】
燃料電池10のアノードで生じた生成物(二酸化炭素など)及び未反応のメタノールは、アノード排出口10Bから排出されて燃料タンク12に戻される。燃料タンク12に戻されたメタノールは、燃料タンク12に留まり、一方、燃料タンク12に戻された二酸化炭素は、システム外部に放出される。燃料電池10のカソードで生じた生成物に含まれる水蒸気は、カソード排出口10Dから排出され、凝縮器18において液化され、水タンク20に送られる。
【0029】
水タンク20は、燃料電池10のカソードで生成される水を収容しており、水ポンプ22を介して燃料タンク12に連通されている。水ポンプ22は、水タンク20に貯蔵された水を燃料タンク12に供給している。また、外部燃料タンク24は、高濃度のメタノール水溶液を収容しており、外部燃料ポンプ26を介して燃料タンク12に連通している。外部燃料タンク24に貯蔵された高濃度のメタノール水溶液が、外部燃料ポンプ26により燃料タンク12に供給されると共に、水タンク20に貯蔵された水が、水ポンプ22により燃料タンク12に供給されることにより、数重量%の濃度に希釈化されたメタノール水溶液が、燃料タンク12に収容される。
【0030】
因みに、本実施形態において、燃料電池システムを構成する各種機器等を繋ぐ流路は、燃料電池システムの大きさやレイアウト等に応じて、配管又は通路などの具体的構造を採用することができる。この場合、配管又は通路としては、メタノールに対して耐腐食性を有することが好ましく、例えば金属材料を用いることが好ましい。
【0031】
図2は本発明の一実施の形態に係るイオン交換装置を示す斜視図、
図3は
図2のIII-III線に沿った断面図である。
【0032】
図1〜
図3に示すイオン交換装置30は、燃料タンク12に貯蔵された液体燃料に含まれるイオン系不純物を吸着除去する装置である。このイオン交換装置30は、
図1に示すように、燃料電池11を介さずに燃料タンク12に貯蔵された液体燃料が循環する循環流路34に設けられている。循環流路34の両端は、燃料タンク12に連通しており、燃料タンク12の表面に接続されている。また、循環流路34の両端は、燃料タンク12内に貯蔵された液体燃料の液面以下の高さとなる位置に配されている。このため、燃料タンク12内に貯蔵された液体燃料が直接、循環流路34の供給管341に供給され、また、循環流路34の排出管342から排出される。この循環流路34には、循環ポンプ36が設けられている。循環ポンプ36により、燃料タンク12に貯蔵された液体燃料がイオン交換装置30に供給され、イオン交換装置30から排出された液体燃料が燃料タンク12に戻され、燃料タンク12とイオン交換装置30との間を液体燃料が循環する。
【0033】
なお、イオン系不純物としては、燃料電池10における発電反応により生成され、燃料電池システム1の系内に混入したアルミニウムイオン(Al
3+)、ニッケルイオン(Ni
2+)、鉄イオン(Fe
2+)、クロムイオン(Cr
3+)等の酸性などの陽イオン系不純物(陽イオン不純物)や、外部燃料タンク24から送られる高濃度のメタノール水溶液に混入、又は、ブロワ16を通じて外部から燃料電池システム1の系内に混入した塩素イオン(Cl
−)といったハロゲン化物イオン等の塩基性などの陰イオン系不純物(陰イオン不純物)が挙げられる。
【0034】
イオン交換装置30は、
図2及び
図3に示すように、容器本体31と、容器本体31に収容されたイオン交換樹脂32とを含んでいる。容器本体31は、円筒形状を有し、その長手方向の両端が循環流路34に接続されている。イオン交換樹脂32は、容器本体31の内部に充填されている。このイオン交換樹脂32は、陽イオン交換樹脂321と、陰イオン交換樹脂322とを含んでいる。
【0035】
本実施形態では、陽イオン交換樹脂321は粒状とされており、スチレン系の樹脂母体(具体的には、スチレンとジビニルベンゼンとの共重合体)に、イオン交換基として、スルホン酸基を含む樹脂材料を含んでいる。
【0036】
このスルホン酸基は、例えば、酸性等の陽イオン系不純物に対してイオン交換反応が可能であり、陽イオン交換樹脂321に液体燃料が接触すると、液体燃料中の陽イオン系不純物が吸着除去され、代わりにプロトン(水素イオン)が液体燃料中に排出される。なお、陽イオン交換樹脂321に含まれる樹脂材料のイオン交換基は、陽イオン系不純物に対してイオン交換反応性を有するものであれば、特にスルホン酸基に限定されるものではない。例えば、陽イオン交換樹脂321に含まれる樹脂材料のイオン交換基として、樹脂材料に存在する水素部が陽イオン系不純物に対してイオン交換反応性を有するものを用いてもよい。また、陽イオン交換樹脂321の樹脂母体も、特に上述に限定されるものではない。
【0037】
陰イオン交換樹脂322は粒状とされており、スチレン系の樹脂母体(具体的には、スチレンとジビニルベンゼンとの共重合体)に、イオン交換基として、メトキシ基を含む樹脂材料を含んでいる。
【0038】
このメトキシ基は、例えば、塩基性などの陰イオン系不純物に対してイオン交換反応が可能であり、陰イオン交換樹脂322に液体燃料が接触すると、陰イオン系不純物が吸着除去され、代わりに加水分解により生じたメタノールが液体燃料中に排出される(下記(3)式参照)。なお、陰イオン交換樹脂322の樹脂母体は、特に上述に限定されるものではない。
R
1−OCH
3+Cl
−+H
+→R
1−Cl+CH
3OH … (3)
但し、上記(3)式において、R
1は樹脂母体の炭化水素骨格を表す。
【0039】
なお、陰イオン交換樹脂322に含まれる樹脂材料のイオン交換基は、陰イオン系不純物に対してイオン交換反応性を有するものであれば、特に上述に限定されるものではなく、例えば、イオン交換基として水酸基を含むイオン交換樹脂を陰イオン交換樹脂322として用いてもよい。
【0040】
本実施形態では、一つの容器本体31に、陽イオン交換樹脂321と陰イオン交換樹脂322とを混合して充填しているが、これら陽イオン交換樹脂321と陰イオン交換樹脂322とを別々の容器に充填してもよい。
【0041】
なお、このような本実施形態の陰イオン交換樹脂322は、以下の製造方法により製造される。まず、スチレン−ジビニルベンゼンの共重合体を樹脂母体とし、交換基として塩素基を含む樹脂材料を用意する。そして、メトキシドナトリウム(CH
3ONa)を上記の樹脂材料に投入する。これにより、下記(4)式に示すように、樹脂材料中の塩素基とメトキシ基が交換される。その後、純水により上記の樹脂材料を洗浄した後、乾燥させる。以上により、本実施形態の陰イオン交換樹脂322が得られる。なお、陰イオン交換樹脂322の製造方法は、特に上述に限定されない。
R
2−Cl+CH
3ONa→R
2−OCH
3+Cl
−+Na
+ … (4)
但し、上記(4)式において、R
2は樹脂母体の炭化水素骨格を表す。
【0042】
本実施形態の燃料電池システムは、以下の効果を奏する。
【0043】
本実施形態では、イオン交換装置30を燃料タンク12に貯蔵された液体燃料が循環する循環流路34に設けている。このため、液体燃料に混入したイオン系不純物を、循環流路34に設けられたイオン交換装置30により除去することができる。この場合、液体燃料は、循環流路34によって、燃料タンク12とイオン交換装置30との間で循環するため、イオン交換装置30を複数回通過する可能性が高くなる。このため、燃料タンク12から燃料電池10に対して液体燃料が供給される前に、上述したイオン交換蔵置30により液体燃料に混入したイオン系不純物を十分に除去することができるため、液体燃料に同伴してイオン系不純物が燃料電池10のアノードに到達してしまうのを抑制することができる。これにより、燃料電池10の電池性能が低下するのを抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態では、燃料タンク12から燃料電池10のアノード供給口10Aまでの流路上にイオン交換装置30を設けていない。このため、燃料タンク12から燃料電池10のアノード供給口10Aまでの流路上にイオン交換装置30を設けた場合に、燃料タンク12から燃料電池10のアノード供給口10Aまでの間で起こり得る圧力損失の増大が生じ難く、燃料電池10のアノードに対してより安定した燃料供給を維持することができる。これにより、燃料電池10での発電反応がより一層安定して行われるため、燃料電池10の電池性能が低下するのをさらに抑制することができる。
【0045】
ここで、陰イオン系不純物を吸着除去するイオン交換樹脂として、例えば、イオン交換基として塩素基を含むものが知られている。イオン交換基として塩素基を含むイオン交換樹脂を用いると、イオン交換時に吸着除去するイオン系不純物の代わりに塩素イオンが液体燃料中に排出されるが、この塩素イオンが燃料電池の触媒層に到達すると、微細な触媒粒子に対してすきま腐食が発生する場合がある。特に、カソード側の触媒層にルテニウムが含有している場合、液体燃料中の塩素イオンが作用して、ルテニウムが溶出してしまうおそれがあり、触媒層に不可逆的な損傷が生じるおそれがある。
【0046】
また、イオン交換基として塩素基を含むイオン交換樹脂では、イオン交換時に排出された塩素イオンが、燃料電池システムの系内に用いられる各種金属配管を腐食させ、腐食した金属配管から溶出した金属イオンがイオン系不純物として液体燃料中に混入してしまい、これがアノード側もしくはカソード側の触媒層に到達するようになり、燃料電池の触媒の反応場が占有された結果、触媒の反応を阻害させ、燃料電池の発電効率が低下するおそれがある。
【0047】
なお、イオン交換基として、塩素基以外の、例えば、硝酸基や硫酸基等を含むものを用いた場合では、イオン交換時に生じる硝酸や硫酸が不純物として液体燃料に混入することで、これがアノード側もしくはカソード側の触媒層に到達するようになり、燃料電池の触媒の反応場が占有された結果、触媒の反応を阻害させ、燃料電池の発電効率の低下を招くおそれがある。
【0048】
また、燃料電池のカソードの生成物である水を燃料タンクに供給し、高濃度のメタノール水溶液を希釈する希釈水として再利用する燃料電池システムの場合、液体燃料に混入したイオン系不純物がシステム内を循環するため、液体燃料中の不純物濃度が燃料電池システムの運転時間に比例して増大してしまう。このため、液体燃料にイオン系不純物が混入した場合の燃料電池の電池性能の低下が生じ易い。
【0049】
これに対し、本実施形態では、イオン交換基としてメトキシ基を含むイオン交換樹脂322を含むイオン交換装置30を用いている。この場合、メトキシ基が陰イオン系不純物に対してイオン交換反応性を有するため、液体燃料がイオン交換装置30を通過すると、陰イオン系不純物がイオン交換樹脂322に固定され、代わりにメタノールが排出される。このため、液体燃料中の陰イオン系不純物が吸着除去されると共に、イオン交換時に新たな不純物が生成されることを抑制できる。これにより、燃料電池10の発電効率の低下を抑制でき、延いては、燃料電池10の電池性能の劣化を抑制することができる。
【0050】
なお、本実施形態では、イオン交換時にメタノールが排出されるため、液体燃料のメタノール濃度が変化してしまうおそれがある。しかしながら、このイオン交換装置30で生じるメタノール量は数ppm程度であり、燃料タンク12に貯蔵される液体燃料の量が十分大きいことを考慮すると、イオン交換時に排出されるメタノールにより起こり得る液体燃料のメタノール濃度変化の影響は非常に小さい。
【0051】
因みに、仮にイオン交換装置30を燃料タンク12とアノード供給口10Aとの間に設けると、イオン交換装置30で生じたメタノールが、燃料タンク12とアノード供給口10Aとの間の流路に直接供給されるため、燃料電池10のアノードに送られる液体燃料のメタノール濃度が局所的に高い状態となったり、低い状態となったりする可能性がある。この場合、燃料電池10のアノードへのメタノールの供給が不安定となり、燃料電池10の発電効率の低下を招くおそれがある。
【0052】
これに対して、本実施形態では、燃料タンク12に貯蔵された液体燃料をイオン交換装置30に供給し、イオン交換装置30から排出された液体燃料を燃料タンク12に供給する循環流路34にイオン交換装置30を設けている。この場合、イオン交換装置30で生じたメタノールが燃料タンク12に貯蔵される液体燃料中に十分に分散された後、燃料電池10のアノードに供給されるので、メタノール濃度が変動する等の要因によって、当該アノードへのメタノールの供給が不安定となる可能性は低い。このため、燃料電池10の発電効率の低下を抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態では、液体燃料を燃料電池10に供給していない場合でも、循環流路34を単独で循環させることで、燃料タンク12に貯蔵される液体燃料に含まれるイオン系不純物を除去することができる。このため、燃料電池システム1の動作状態に関わらず、イオン交換装置30を稼働させることができるため、イオン交換装置30の積算稼働時間をより長時間確保することができる。
【0054】
本実施形態における「燃料電池システム1」が本発明における「燃料電池システム」の一例に相当し、本実施形態における「燃料電池10」が本発明における「燃料電池」の一例に相当し、本実施形態における「燃料タンク12」が本発明における「燃料タンク」の一例に相当し、本実施形態における「燃料ポンプ14」が本発明における「液体燃料供給手段」の一例に相当し、本実施形態における「ブロワ16」が本発明における「酸化剤供給手段」の一例に相当し、本実施形態における「イオン交換装置30」が本発明における「除去手段」の一例に相当し、本実施形態における「循環流路34」が本発明における「循環流路」の一例に相当する。
【0055】
図4は本発明の他の実施の形態に係る燃料電池システムの一部を示すブロック図である。なお、上述の実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略して、上述の実施形態においてした説明を援用する。
【0056】
図4に示す燃料電池システム1Bでは、循環流路34Bに供給側フィルタ38と、循環ポンプ36と、濃度センサ40と、イオン交換装置30Bとが設けられている。これら供給側フィルタ38と、循環ポンプ36と、濃度センサ40と、イオン交換装置30Bとは、循環流路34Bの上流側から下流側に向けて順に配されている。
【0057】
イオン交換装置30Bは、容器本体31Bと、イオン交換樹脂32とを含んでいる。容器本体31Bは、竪型の円筒形状とされている。この容器本体31B内には、粒状の複数のイオン交換樹脂32が収容されている。複数のイオン交換樹脂32は、容器本体31Bに収容された液体燃料中に沈没している。また、複数のイオン交換樹脂32は、容器本体31B内の底部に堆積して粒子層323を形成している。この粒子層323の上面323aは、容器本体31Bに収容された液体燃料の液面よりも低い位置に配されている。
【0058】
また、容器本体31B内には、容器本体31Bに収容された液体燃料の液面よりも上側に容器内空間311が存在している。なお、燃料電池システム1Bでは、稼働状態に応じて、容器本体31Bに収容された液体燃料の液量の増減に伴い、当該液体燃料の液面が上下に移動することにより、これによって、容器内空間311の体積が変化するようになっている。
【0059】
循環流路34Bは、容器本体31Bに対して液体燃料を供給する供給管341と、容器本体31Bから液体燃料を排出する排出管342とを含んでいる。
【0060】
供給管341は、容器本体31Bの上端から容器本体31B内に挿通されている。供給管341の一端341aは、容器本体31Bに収容される液体燃料の液面よりも低い位置に配されており、さらに、粒子層323の上面323aの高さ以下の高さ位置に配されている。排出管341の他端は、燃料タンク12に連通している。
【0061】
排出管342も、容器本体31Bの上端から容器本体31B内に挿通されている。この排出管342の一端342aは、容器本体31Bの上端よりも低い位置であって、供給管341の一端341aよりも高い位置に配されている。なお、排出管342の一端342aの位置は、容器本体31Bの下端以外から容器本体31B内に挿通されるのであれば、特に上述に限定されない。また、容器本体31Bの側面に排出管342の一端342aを設ける場合、樹脂が十分に攪拌され、拡散移動する要件としては、排出管342の一端342aの取付け位置の高さが粒子層323の上面323aよりも高い位置にあることがより好ましい。排出管342の他端は、燃料タンク12に連通している。
【0062】
さらに、燃料電池システム1Bでは、排出管342に排出側フィルタ343が設けられている。この排出側フィルタ343は、燃料タンク12から供給された、燃料電池10の化学反応(例えば、上記(1)式や上記(2)式における反応などが挙げられる。以下、当該反応を含めた化学反応を単に化学反応と示す場合がある。)に寄与しない或いは化学反応を阻害する阻害物を吸着除去するフィルタである。この排出側フィルタ343としては、プラスチック状シートを用いることができる。本実施形態では、排出側フィルタ343は、環状(リング状)とされており、排出管342の一端342a以外に設けられ、さらに、容器本体31B内に設けられている。なお、この排出側フィルタ343は、2本の排出管342の一端がそれぞれ上記の排出側フィルタ343の両端に接続される様に設けられていても良い。この場合、排出側フィルタ343に接続されている2本の排出管342のうち、容器本体31Bの下側に設けられた排出管を取り外すことで、排出側フィルタ343が排出管342の一端342aに設けられている構成を取る事が可能となる。
【0063】
このような燃料電池システム1Bでは、容器本体31Bに対して液体燃料が供給されると、上述したように、液容器本体31Bに収容された液体燃料の液量の増加に伴い、当該液体燃料の液面が徐々に上昇する。そして、液体燃料の液面が排出管342の一端342aに到達すると、毛細管現象が作用することによって、排出管342内に液体燃料が導入され、液体燃料が燃料タンク12に戻される。これによって、燃料タンク12とイオン交換装置30Bとの間で液体燃料の循環が行われる。なお、排出管342の一端342aが容器本体31Bの上端の高さよりも高さの低い位置に配置されていることで、少なくとも容器本体31B内に突出する排出管342の長さ分だけ、容器内空間311の高さが確保されている。
【0064】
本実施形態の燃料電池システム1Bは、以下の効果を奏する。
図5は本発明の他の実施の形態に係るイオン交換装置の作用を説明するためのブロック図である。
【0065】
本実施形態では、供給管341から容器本体31Bに供給される液体燃料の流入の勢いによって、
図5中の矢印で示す液体燃料及びイオン交換樹脂32の循環流れが生じる。この循環流れによって、容器本体31B内でイオン交換樹脂32が巻上げられ、イオン交換樹脂32が撹拌される。これにより、特に、供給管341近傍のイオン交換樹脂32において、高濃度のイオン系不純物に接するイオン交換樹脂32が連続的に入れ替わるように拡散移動することによって、例えば、後述するカラムタイプのイオン交換装置などで起こり得る、複数のイオン交換樹脂32の一部が局所的に片寄ってイオン系不純物を吸着除去することを抑制でき、代わりに複数のイオン交換樹脂32が均等にイオン系不純物の吸着除去に寄与することができる。この結果、燃料電池システム1Bにおいてイオン系不純物を効率的に除去することができる。
【0066】
ここで、イオン交換装置として、例えば、液体燃料の供給口としての容器入口と液体燃料の排出口としての容器出口とが対向している構成であって、この容器入口と容器出口との間において、イオン交換樹脂が筒状容器内に詰まっているもの(いわゆる、カラムタイプのイオン交換装置)では、イオン系不純物を含む液体燃料がイオン交換樹脂に染み込んで浸透していくため、容器入口付近に存在するイオン交換樹脂が優先して比較的高濃度のイオン系不純物と接触し易くなる。このため、容器入口付近のイオン交換樹脂が劣化し易く、容器入口付近のイオン交換樹脂のイオン交換性が低くなる傾向がある。この場合、イオン系不純物が、容器入口付近に存在するイオン交換樹脂を通過して容器出口付近にまで到達し易くなり、結果として、イオン系不純物がイオン交換装置で除去されず通過してしまうおそれがあり、延いては、燃料電池の電池性能の低下を招くおそれがある。また、カラムタイプのイオン交換装置では、複数の球状のイオン交換樹脂のうち、一粒の球状のイオン交換樹脂に着目した場合、容器入口側に存在する球状の上側の部位に液体燃料が接触し易くなる傾向があり、また、球状の下側の部位に液体燃料が接触し難くなる傾向がある。また、カラムタイプのイオン交換装置では、容器内全体にわたってほぼ隙間なくイオン交換樹脂が充填されているため、容器内においてイオン交換樹脂が移動できる余地は少ない。この場合、隣接するイオン交換樹脂の互いに接触する部分が液体燃料に露出し難いため、当該接触部分がイオン系不純物の吸着除去に十分に寄与することができない。
【0067】
これに対して、本実施形態では、イオン交換樹脂32が液体燃料中を拡散移動しているため、複数のイオン交換樹脂32間でのイオン交換反応性のばらつきが抑えられ、複数のイオン交換樹脂32が比較的均等にイオン系不純物の吸着除去に寄与することができる。これによって、イオン系不純物がイオン交換樹脂32に吸着除去されずにイオン交換装置30Bを通過してしまうのを抑制することができ、燃料電池10の電池性能の低下を抑制することができる。また、本実施形態では、イオン交換樹脂32を液体燃料中で拡散移動させているため、一のイオン交換樹脂32においても、イオン系不純物の吸着除去に十分に寄与できない部分が生じることを抑制することができる。特に、供給管341の一端341a近傍における比較的高濃度のイオン系不純物を、経年劣化等によるイオン交換反応性が相対的に大きく低下したイオン交換樹脂32により吸着されることを抑制でき、代わりにイオン交換反応性が相対的に大きく低下していないイオン交換樹脂32により吸着させることができるようになるため、イオン系不純物の除去をより効率的に行うことができる。
【0068】
また、本実施形態では、容器本体31B内には、容器本体31Bに収容された液体燃料の液面よりも上側に容器内空間311が存在している。この場合、容器本体31B内で液体燃料が波打つ余地が存在するため、液体燃料が撹拌され易くなる。これによって、イオン交換樹脂32の拡散移動が促進されるため、イオン系不純物の除去をより効率的に行うことができる。なお、燃料電池システム1Bの運転状態(容器本体31Bに液体燃料が十分に供給された状態)において、排出管342の一端342aの高さ位置と、容器本体31Bに収容された液体燃料の液面の高さ位置とが実質的に一致していると、容器本体31B内の内圧の上昇が抑えられ、容器本体31B内に収容された液体燃料が撹拌され易くなるため好ましい。
【0069】
また、本実施形態では、複数のイオン交換樹脂32は、容器本体31Bの底部に堆積して粒子層323を形成しており、この粒子層323の上面323aが、容器本体31Bに収容された液体燃料の液面よりも低い位置に配されている。このため、液体燃料中においてイオン交換樹脂32が拡散移動する余地が存在するため、イオン交換樹脂32が撹拌され易くなる。これによって、イオン系不純物の除去をより一層効率的に行うことができる。なお、上述した粒子層323は、粒子層323の最外側に位置するイオン交換樹脂32と容易本体31Bの内面(側端)との間に隙間が形成されない程度に充填されており、容器本体31Bの中心部から容器本体31Bの側端近傍まで、容器本体31Bの幅方向全体に亘って設けられている。このため、供給管341の一端341aから供給された液体燃料が、容器本体31Bの側端近傍に到達した際においても、イオン交換樹脂32が存在している為、イオン系不純物の除去をさらに一層効率的に行うことができる。
【0070】
また、本実施形態では、供給管341の一端341aが、粒子層323の上面323aよりも低い位置に配されている。このため、供給管341の一端341aとイオン交換樹脂32との距離がより近くなり、供給管341の一端341aから吹き出す液体燃料が勢いを維持したままイオン交換樹脂32に到達し易くなるため、イオン交換樹脂32がより一層巻上げられ易くなる。これによって、イオン交換樹脂32の撹拌がさらに促進され、イオン系不純物の除去をより一層効率的に行うことができる。また、上述した供給管341の一端341aは、粒子層323の内部に挿通されて配されている。これにより、の一端341aとイオン交換樹脂32との距離がより一層近くなるので、上述した、イオン交換樹脂32がより一層巻上げられ易くなる効果がより一層得られやすくなる。したがって、イオン交換樹脂32の撹拌がより一層促進され、イオン系不純物の除去をさらに一層効率的に行うことができる。
【0071】
なお、供給管341の一端341a近傍でのイオン交換樹脂32の撹拌効果をより高める観点から、供給管341を回転させる機構をさらに設けてもよい。
【0072】
また、本実施形態では、排出管342に排出側フィルタ343を設けていることで、燃料タンク12から供給された、燃料電池10の化学反応に寄与しない或いは化学反応を阻害する阻害物を吸着除去することができる。これによって、上述した阻害物が燃料電池10に供給されにくくなる分、燃料電池10における化学反応の阻害を抑制でき、燃料電池特性の低下を抑制できる。
【0073】
また、本実施形態では、排出側フィルタ343が、排出管342の一端342a以外であって、容器本体31B内に設けられている。このため、排出管342の一端342aが排出側フィルタ343に覆われることなく容器本体31B内に露出するため、容器本体31B内に収容される液体燃料が排出管342内に導かれ易くなる。これによって、循環流路34Bにおいて、液体燃料を効率的に循環させることができる。
【0074】
本実施形態における「供給管341」が本発明における「第1の流路」の一例に相当し、本実施形態における「排出管342」が本発明における「第2の流路」の一例に相当し、本実施形態における「容器内空間311」が本発明における「容器内空間」の一例に相当し、本実施形態における「粒子層323」が本発明における「粒子層」の一例に相当し、本実施形態における「排出側フィルタ343」が本発明における「フィルタ」の一例に相当する。
【0075】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0076】
例えば、上述の実施形態では、液体燃料としてメタノールを含む場合について説明したが、特にこれに限定されず、プロトン移動型の液体燃料電池であれば本発明を適用することができる。例えば、液体燃料として蟻酸を含むものを用いた場合、下記(5)式及び(6)式に示す反応が燃料電池のアノード及びカソードで生じ、燃料電池が発電する。この場合においても、燃料電池システムに上記のイオン交換装置を適用することで、新たな不純物の排出を抑制しつつ、イオン系不純物を吸着除去することができる。これにより、燃料電池の電池性能の低下を抑制することができる。
HCOOH → CO
2 + 2H
++ 2e
― … (5)
1/2 O
2 + 2H
++ 2e
― → H
2O … (6)
【実施例】
【0077】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。以下の実施例及び比較例は、上述した実施形態における燃料電池の電池性能の劣化の抑制効果を確認するためのものである。
【0078】
<実施例1>
実施例1では、上述したメタノールを含む液体燃料を用いる、燃料電池システムであって、燃料タンクから燃料電池のアノード供給口に対して5L/minの流量で液体燃料を供給できる燃料電池システムにおいて、両端が燃料タンクに連通する循環流路を設け、この循環流路に上述したイオン交換装置を設けたものを準備した。ここで、このイオン交換装置は、上述した実施形態におけるイオン交換装置と同じく、容器本体と、イオン交換樹脂とを含んでいる。また、容器本体には、竪型の円筒形状の容器を使用した。また、イオン交換樹脂には、陽イオン交換樹脂として複数の粒状の樹脂材料を含んだものを使用した。なお、この樹脂材料としては、スチレン系の樹脂母体(具体的には、スチレンとジビニルベンゼンとの共重合体)を備え、さらに、この樹脂材料のイオン交換基としては、当該樹脂材料に存在する水素部が陽イオン系不純物に対してイオン交換反応性を有するものを使用した。この実施例1において、液体燃料中に塩化カルシウムを溶解させ、この液体燃料を循環流路に5L/minの流量で供給させた。この実施例1において、燃料電池のアノード排出口から排出される液体燃料のカルシウム濃度を測定した。実施例1における、液体燃料中のカルシウム濃度の、燃料電池システムの運転開始からの時間経過に対する変化を表1に示す。なお、表1では、カルシウム濃度として、燃料電池システムの運転開始時(運転開始からの経過時間が0の場合)の測定値を100とした場合の相対値を示している。
【0079】
<比較例1>
比較例1では、循環流路にイオン交換装置を設けずに、代わりに、燃料タンクと燃料電池のアノード供給口との間にイオン交換装置を設けた点以外は、実施例1と同様にして燃料電池システムを準備した。
【0080】
この比較例1に係る燃料電池システムについても、実施例1と同様にして試験を行った。比較例1における、液体燃料中のカルシウム濃度の、燃料電池システムの運転開始からの時間経過に対する変化を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
<実施例1、比較例1の評価>
表1に示すように、燃料タンクに貯蔵された液体燃料が循環する循環流路を設け、イオン交換装置をこの循環流路に設けた実施例1においては、循環流路にイオン交換装置を設けず、代わりに、燃料タンクと燃料電池のアノード供給口との間にイオン交換装置を設けた比較例1と比較して、時間経過に対して液体燃料中のカルシウム濃度が格段に低下しており、実施例1においてイオン系不純物が十分に除去されていることが確認できる。
【0083】
この実施例1の結果から、燃料タンクに貯蔵された液体燃料が循環する循環流路を設け、イオン交換装置をこの循環流路に設けたことで、燃料電池の電池性能の低下の抑制を適切に実現できるものであることが確認できる。
【0084】
<実施例2>
実施例2では、上述したメタノールを含む液体燃料を用いる、プロトン移動型の燃料電池システムにおいて、イオン交換装置として、スチレンとジビニルベンゼンとの共重合体を樹脂母体とし、イオン交換基としてメトキシ基を含む陰イオン交換樹100gをカラムに充填したものを準備した。この実施例2において、液体燃料中に塩素イオンを100ppm混入し、塩素イオンが混入した液体燃料を10mL/mの流量で循環した。この場合、燃料タンクに貯蔵される液体燃料における塩素濃度を測定した。この液体燃料における塩素濃度の、燃料電池に対して液体燃料の供給を開始し、イオン交換装置に対して液体燃料の供給を開始したとき(以下、燃料電池システムの運転開始ともいう。)からの時間経過に対する変化を
図6に示す。
【0085】
また、この実施例2において、燃料電池システムの運転開始時の燃料電池の出力、燃料電池システムの運転開始から1時間後の出力、燃料電池システムの運転開始から5時間後の出力、及び、燃料電池システムの運転開始から10時間後の出力をそれぞれ測定した。燃料電池システムの運転開始時の燃料電池の出力を1とした場合、燃料電池システムの運転開始から各時間経過後の出力の相対値の結果を、表2に示す。
【0086】
<比較例2>
比較例2では、イオン交換装置を設けていないこと以外は、実施例2に係る燃料電池システムと同様にして燃料電池システムを準備した。
【0087】
この比較例2に係る燃料電池システムについても、実施例2と同様にして試験を行った。液体燃料における塩素濃度の燃料電池システムの運転開始からの時間経過に対する変化を
図6に示す。また、この比較例2において、燃料電池システムの運転開始時の燃料電池の出力、燃料電池システムの運転開始から1時間後の出力、燃料電池システムの運転開始から5時間後の出力、及び、燃料電池システムの運転開始から10時間後の出力をそれぞれ測定した。燃料電池システムの運転開始時の燃料電池の出力を1とした場合、燃料電池システムの運転開始から各時間経過後の出力の相対値の結果を、表2に示す。
【0088】
【表2】
【0089】
<実施例2、比較例2の評価>
図6に示すように、イオン交換基としてメトキシ基を含むイオン交換樹脂を含むイオン交換装置を備える実施例2においては、イオン交換装置を備えない比較例2と比較して、時間経過に対して液体燃料における塩素濃度が格段に低下しており、実施例2においてイオン系不純物が除去されていることが確認できる。
【0090】
また、表2に示すように、イオン交換基としてメトキシ基を含むイオン交換樹脂を含むイオン交換装置を備える実施例2においては、イオン交換装置を備えない比較例2と比較して、燃料電池の出力低下の度合いが小さいことが確認できる。
【0091】
ここで、比較例2の結果より、イオン交換装置を用いない場合には、燃料電池システムの運転開始からの時間経過に対する燃料電池の出力低下の度合いが大きいものであったが、その原因としては、液体燃料に含まれる塩素イオンが燃料電池の触媒層に付着、置換したことで、燃料電池の出力特性が低下したことによると考えられる。なお、比較例2に係る燃料電池システムでは、その運転を停止した後に運転を再開しても、燃料電池の出力は十分に回復せず、燃料電池(特に、触媒層)に不可逆的な損傷が生じたものと考えられる。
【0092】
すなわち、実施例2の結果から、イオン交換基としてメトキシ基を含むイオン交換樹脂を含むイオン交換装置を備えることで、燃料電池の電池性能の低下の抑制を適切に実現できるものであることが確認できる。