(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871793
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】フェノール誘導体の選択的メチル化方法。
(51)【国際特許分類】
C07C 37/20 20060101AFI20210426BHJP
C07C 39/15 20060101ALI20210426BHJP
C07C 39/07 20060101ALI20210426BHJP
C07C 39/06 20060101ALI20210426BHJP
C07C 39/14 20060101ALI20210426BHJP
C07C 41/30 20060101ALI20210426BHJP
C07C 43/205 20060101ALI20210426BHJP
C07C 46/00 20060101ALI20210426BHJP
C07C 50/18 20060101ALI20210426BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20210426BHJP
【FI】
C07C37/20
C07C39/15
C07C39/07
C07C39/06
C07C39/14
C07C41/30
C07C43/205 D
C07C46/00
C07C50/18
!C07B61/00 300
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-75965(P2017-75965)
(22)【出願日】2017年4月6日
(65)【公開番号】特開2018-177660(P2018-177660A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年12月5日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年10月30日 日本病院薬剤師会東海ブロック・日本薬学会東海支部合同学術大会2016で発表
(73)【特許権者】
【識別番号】000228198
【氏名又は名称】エヌ・イーケムキャット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】門口 泰也
(72)【発明者】
【氏名】服部 倫弘
(72)【発明者】
【氏名】澤間 善成
(72)【発明者】
【氏名】佐治木 弘尚
【審査官】
中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭52−153920(JP,A)
【文献】
特開昭59−101435(JP,A)
【文献】
特開昭61−007226(JP,A)
【文献】
特開昭63−027447(JP,A)
【文献】
特開昭55−124730(JP,A)
【文献】
特開昭52−125132(JP,A)
【文献】
特表2001−505871(JP,A)
【文献】
米国特許第05723694(US,A)
【文献】
米国特許第02401608(US,A)
【文献】
韓国特許第10−1990−0003297(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580/JSTChina
(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール誘導体を、パラジウム触媒および酢酸銀の存在下でホルムアルデヒドと反応させることを特徴とするフェノール誘導体のオルト位および/またはパラ位を選択的にメチル化する方法。
【請求項2】
フェノール誘導体が、フェノール性水酸基を有するものである請求項1に記載のフェノール誘導体のオルト位および/またはパラ位を選択的にメチル化する方法。
【請求項3】
フェノール誘導体が、更にフェノール性水酸基のオルト位に置換基を有するものである請求項2に記載のフェノール誘導体のオルト位および/またはパラ位を選択的にメチル化する方法。
【請求項4】
300℃以下で反応させるものである請求項1〜3の何れかに記載のフェノール誘導体のオルト位および/またはパラ位を選択的にメチル化する方法。
【請求項5】
更に、塩基の存在下で反応させるものである請求項1〜4の何れかに記載のフェノール誘導体のオルト位および/またはパラ位を選択的にメチル化する方法。
【請求項6】
更に、酸の存在下で反応させるものである請求項1〜5の何れかに記載のフェノール誘導体のオルト位および/またはパラ位を選択的にメチル化する方法。
【請求項7】
反応を不活性ガス雰囲気下で行うものである請求項1〜6の何れかに記載のフェノール誘導体のオルト位および/またはパラ位を選択的にメチル化する方法。
【請求項8】
更に、N−メチルピロリドンの存在下で反応させるものである請求項1〜7の何れかに記載のフェノール誘導体のオルト位および/またはパラ位を選択的にメチル化する方法。
【請求項9】
フェノール誘導体を、請求項1〜8の何れかに記載のフェノール誘導体のオルト位および/またはパラ位を選択的にメチル化する方法でメチル化することを特徴とするフェノール誘導体のオルト位および/またはパラ位がメチル化された化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール誘導体の選択的メチル化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
Friedel-Craftsアルキル化反応をはじめとする、芳香環に直接アルキル基を導入する反応は、天然物や医薬品の合成に広く利用されている。特に芳香族メチル化反応では、ヨードメタン、炭酸ジメチル及び硫酸ジメチルが求電子的なメチル源として使用されているが、基質芳香環に水酸基が含まれる場合、オルト位、パラ位及び水酸基へのメチル化が併発し、その制御は困難である。(非特許文献1)
【0003】
一方、ホルムアルデヒドをフェノール誘導体に対する求電子的炭素源として使用した報告例もあるが、オルト位とパラ位へのヒドロキシメチル化が優先して進行し、メチル基の導入は困難であった。(非特許文献2)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】F. Cavani, et al., J. Catal., 2008, 256, 215-225.
【非特許文献2】R. W. Martin, J. Am. Chem. Soc., 1951, 73, 3952-3954.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、フェノール誘導体を選択性良くメチル化する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、ホルムアルデヒドを炭素源とするフェノール誘導体のメチル化反応に、パラジウム触媒を用いると選択性良くオルト位および/またはパラ位をメチル化が進行することを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明はフェノール誘導体を、パラジウム触媒の存在下でホルムアルデヒドと反応させることを特徴とするフェノール誘導体のオルト位および/またはパラ位を選択的にメチル化する方法である。
【0008】
また、本発明はフェノール誘導体を、上記のフェノール誘導体のオルト位および/またはパラ位を選択的にメチル化する方法でメチル化することを特徴とするフェノール誘導体のオルト位および/またはパラ位がメチル化された化合物の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法を用いれば、フェノール誘導体を選択性良くオルト位および/またはパラ位をメチル化できる。ここで選択性良くとは、フェノール性水酸基そのものや他の置換基が反応せずにフェノール性水酸基のオルト位および/またはパラ位にメチル基を収率良く導入できることである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のフェノール誘導体のオルト位および/またはパラ位を選択的にメチル化する方法(以下、「本発明方法」という)は、フェノール誘導体を、パラジウム触媒の存在下で、ホルムアルデヒドと反応させる。以下、本発明方法の構成について説明する。
【0011】
(フェノール誘導体)
本発明方法で基質として用いるフェノール誘導体は、オルト位および/またはパラ位へメチル基が導入できるフェノール誘導体であれば特に限定されない。このようなフェノール誘導体としては、例えば、フェノール性水酸基を有するものが好ましく、フェノール性水酸基を有し、更に、フェノール性水酸基のオルト位に置換基を有するものが好ましい。また、フェノール誘導体は縮環していてもよく、フェニル基やアルキル基で置換されていても良い。
【0012】
具体的なフェノール誘導体としては、例えば、下記化学式におけるR
1、R
3、R
5のうち少なくとも一つが水素である化合物であり、R
1〜R
5のいずれかがアルキル基、アリール基、ベンジル基等で置換されていてもよく、縮環していても良い化合物である。
【化1】
【0013】
(パラジウム触媒)
本発明方法で用いるパラジウム触媒は、ホルムアルデヒドから炭素を供給し、フェノール誘導体のメチル化が進行するものであれば特に限定されず、例えば、酢酸パラジウム、プロピオン酸パラジウム、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、ビス(ジメチルグリオキシマト)パラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウム等が挙げられ、特に酢酸パラジウムが好ましい。このようなパラジウム触媒は、例えば、エヌ・イー ケムキャット(株)から、酢酸パラジウム(Sタイプ)、酢酸パラジウム(Nタイプ)、プロピオン酸パラジウム、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、ビス(ジメチルグリオキシマト)パラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウム等の商品名で販売されているものを用いることができる。これらパラジウム触媒は1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。なお、このパラジウム触媒は本発明方法を行っている間、系内に存在していれば良いが、例えば、炭素源としてのホルムアルデヒドに対して、1〜50mol%、好ましくは5〜20mol%である。
【0014】
(ホルムアルデヒド)
本発明方法で炭素源として用いるホルムアルデヒドは、本発明方法を行っている間、系内に存在していれば良いが、例えば、フェノール誘導体の置換されるメチル基の数に対して1から10等量、好ましくは2〜5等量である。
【0015】
(反応条件)
本発明方法における反応条件は、ホルムアルデヒドから炭素を供給し、フェノール誘導体のメチル化が進行するものであれば特に限定されないが、例えば、300℃以下で 1時間以上が好ましく、90〜180℃で 1〜48時間がより好ましく、110〜150℃で18〜30時間が特に好ましい。また、反応の際には撹拌を行うことが好ましい。
【0016】
(雰囲気)
本発明方法での反応雰囲気は、特に限定されないが、例えば、アルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気または水素等の還元雰囲気で行われることが好ましく、特に不活性ガス雰囲気下が好ましい。また、本発明方法において、反応雰囲気の圧力は特に限定されないが、0.8〜2atmが好ましい。
【0017】
(塩基)
本発明方法は、フェノール類のベンゼン環の求核性向上のため、更に塩基の存在下で行うことが好ましい。このような塩基としては、特に限定されないが、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム等が好ましく、特に炭酸ナトリウムが好ましい。これら塩基は1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。この塩基は、本発明方法を行っている間、系内に存在していれば良いが、例えば、基質に対して1〜10等量が好ましく、1.5〜3等量がより好ましい。
【0018】
(酸)
本発明方法は、更に酸の存在下で行うことが好ましい。このような酸としては、特に限定されないが、例えば、トリフルオロ酢酸、酢酸、トリクロロ酢酸等が好ましく、特にトリフルオロ酢酸が好ましい。これら酸は1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。この酸は、本発明方法を行っている間、系内に存在していれば良いが、例えば、基質に対して0.1〜3等量が好ましく、0.3〜2等量がより好ましい。なお、本発明方法においては、系内に上記塩基と、酸を組み合わせて存在させることが好ましい。
【0019】
(酸化剤)
本発明方法は、反応が進行した後に還元されているパラジウムを再び酸化するため、更に酸化剤の存在下で行うことが好ましい。このような酸化剤は、パラジウム触媒が反応系中で還元された後、酸化できるものであれば特に限定されないが、例えば、酢酸銀が好ましい。これら酸化剤は1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。この酸化剤は、本発明方法を行っている間、系内に存在していれば良いが、例えば、基質に対して0.5〜3等量が好ましく、1〜2等量がより好ましい。
【0020】
(溶媒)
本発明方法は、均一系触媒を用いた反応のため、更に溶媒の存在下で行うことが好ましい。このような溶媒は、特に限定されないが、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトン、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒が好ましく、特にN−メチルピロリドンが好ましい。これら溶媒は1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。この溶媒は、本発明方法を行っている間、系内に存在している試薬を適度に溶解させるだけの量を用いれば良いが、例えば、基質に対して1〜100等量が好ましく、20〜60等量がより好ましい。
【0021】
本発明方法の反応終了後は、分液等による分離操作や乾燥操作、ろ過や濃縮操作等をしても良く、更に、シリカゲルクロマトグラフィー、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等で精製操作をしても良い。
【0022】
以上説明した本発明方法によれば、フェノール誘導体から、フェノール誘導体のオルト位および/またはパラ位がメチル化された化合物を得ることができる。なお、フェノール誘導体のオルト位および/またはパラ位を選択的にメチル化されたかどうかは、公知の方法、例えば、
1H−NMR等で確認することができる。
【0023】
このような化合物は、化合物中に水酸基とメチル基の両方を有するため、例えば、種々の医薬、農薬、その他種々の工業分野に利用することができる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0025】
実 施 例 1
フェノール誘導体のメチル化:
内容量17mLの試験管中で、基質であるオルトフェニルフェノール(250μmol)、酢酸パラジウム(Pd(OAc)
2)(エヌ・イー ケムキャット(株)製:酢酸パラジウム(Sタイプ))(5.3mg:25.0μmol)、酢酸銀(AgOAc)(46mg:275μmol)及び炭酸ナトリウム(Na
2CO
3)(53.0mg:500μmol)をN−メチルピロリドン(NMP)(1.0mL)に懸濁し、ホルムアルデヒド水溶液(37wt%:0.5mL:1.60mmol)とトリフルオロ酢酸(TFA)(28.7μL:375μmol)を添加後、アルゴン(Ar)雰囲気下、120℃で加熱し、攪拌した。24時間後、酢酸エチル(AcOEt)(30mL)と水(25mL)を加え二層に分離後、有機層を水(10mL×2)で洗浄し、合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)で精製すると、水酸基のオルト位とパラ位にメチル基が導入された、2,4−ジメチル5−フェニルフェノールが表1の収率で得られた。なお、反応式は以下の式で示される。
【0026】
【数1】
【0027】
【表1】
【0028】
実 施 例 2
フェノール誘導体のメチル化:
溶媒を表2に記載のものに変更する以外は、実施例1の例1と同様にしてフェノール誘導体のメチル化を行った。なお、反応式は以下の式で示される。
【0029】
【数2】
【0030】
【表2】
【0031】
ジメチル化反応は非プロトン性極性溶媒中で効率良く進行し、特にN−メチルピロリドン中ではジメチル体が選択的に得られ、モノメチル体は全く観測されなかった。
【0032】
実 施 例 3
フェノール誘導体のメチル化:
雰囲気を表3に記載のものに変更する以外は、実施例1の例1と同様にしてフェノール誘導体のメチル化を行った。なお、反応式は以下の式で示される。
【0033】
【数3】
【0034】
【表3】
【0035】
実 施 例 4
フェノール誘導体のメチル化:
基質溶媒を表4に記載のものに変更する以外は、実施例1の例1と同様にしてフェノール誘導体のメチル化を行った。なお、反応式は以下の式で示される。
【0036】
【数4】
【0037】
【表4】
*1
1H−NMRにより算出
*2 反応温度140℃
【0038】
以上の通り、種々のフェノール誘導体のオルト位および/またはパラ位を選択的にメチル化することができた。特に、フェノール性水酸基のオルト位に置換基を有するフェノール誘導体のメチル化が収率良くできた。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の触媒は、種々の医薬、農薬、その他種々の工業分野において有用なフェノール誘導体のオルト又はパラ位にメチル基が結合した化合物を温和な条件で安全に製造するのに有用である。
以 上