(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基準部材は、異なる高さの複数の平坦部を有し各々の平坦部には前記ステージの位置を示すマークパターンが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の三次元積層造形装置。
造形容器に収容された粉末材料を支持するとともに前記粉末材料の積層と共に高さを変化させることで粉末材料の表面位置を一定の高さに保つステージと、前記ステージ上に設置され前記粉末材料の表面に焦点合わせて走査された電子ビームに対して所定の反射電子信号を発生させることで前記粉末材料の表面における照射位置のずれ量を示す基準部材と、前記基準部材から反射される反射電子を検出する電子検出器と、を備えた三次元積層造形装置の照射位置ずれ検出方法であって、
前記電子ビームの焦点を前記粉末材料の表面に合わせるステップと、
前記粉末材料の表面に合わせた電子ビームで前記基準部材を走査しつつ反射電子を検出するステップと、
前記反射電子の検出量の変化から前記粉末材料の表面の位置における前記基準部材の位置を検出するステップと、
前記基準部材の初期位置と前記基準部材の位置の検出値と差から前記粉末材料の表面における照射位置のずれ量を検出するステップと、
を有することを特徴とする三次元積層造形装置の照射位置ずれ検出方法。
前記ステージの水平方向の位置の検出は、前記電子ビームの位置を変化させながら複数回走査させて前記基準部材のナイフエッジを横切る際の反射電子強度の変化を複数回取得するステップと、
前記反射電子強度の変化率が最大となる前記電子ビームの照射位置を前記粉末材料の表面の高さにおける前記基準部材の位置として検出するステップと、
により行うことを特徴とする請求項9に記載の三次元積層造形装置の照射位置ずれ検出方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、実施形態に係る三次元積層造形装置100の構成例を示す図であり、
図2は三次元積層造形装置100の構成部材である、造形容器73、基準部材90および校正マーク67、ならびに粉末供給部64の配置位置の例を示す平面図である。
【0015】
三次元積層造形装置100は、電子ビームカラム200、造形部300、及び制御部400を備える。
【0016】
三次元積層造形装置100の電子ビームカラム200からは、電子ビームEBが出力される。その電子ビームEBは制御部400が出力する制御信号によって制御され、造形部300に設置された粉末層62の表面63の所定範囲に照射される。
【0017】
粉末層62は、例えば金属材料の粉末からなり、電子ビームEBで照射することによって溶融凝固して断面層65が形成される。その断面層65を積層してゆくことによって三次元構造物66の造形を行う。
【0018】
電子ビームカラム200には、電子ビームEBを出力する電子源12が設けられている。電子源12は、熱又は電界の作用によって電子を発生させる。電子源12から発生した電子は、予め定められた加速電圧(一例として、60KV)で、−Z方向に加速され、光軸Cに沿って電子ビームEBとして出力される。なお、電子源12は、複数あってもよい。
【0019】
このようにして電子源12から出力された電子ビームEBは、電磁レンズ13によって収束される。電磁レンズ13は、例えば電子ビームカラム200内に巻き回された複数段の電磁コイルよりなり、制御部400によって制御された電流を流すことによって、電磁レンズ13のレンズ強度を設定する。造形を行う際には、照射位置に応じてあらかじめ設定されたレンズ強度に基づいて、電子ビームEBは、常に粉末層62の表面63の高さで収束するように制御される。
【0020】
電磁レンズ13によって収束される電子ビームEBは、電磁偏向器14によって偏向されて所定の照射位置に照射される。電磁偏向器14はX方向及びY方向の偏向に係る2組の偏向コイルを備えている。制御部400は、これらの偏向コイルに流す電流の大きさを設定することによって、電子ビームEBの照射位置を設定する。
【0021】
制御部400は、造形データをもとに、粉末層62の表面63における電子ビームの照射位置を設定する。そして、電磁偏向器14のX方向及びY方向の偏向に係る2組の偏向コイルに電流を出力し、断面層65の部分を電子ビームEBで照射しつつ走査させる。
【0022】
造形部300には、粉末材料を収容する造形容器73を備えている。この造形容器73は、ステージ72と側壁73aとを有しており、その側壁73aに囲まれた部分に粉末供給部64から粉末材料が供給される。粉末供給部64は、
図2に示すように例えばX方向に駆動する駆動部64aによって所定の可動範囲を往復移動する。粉末材料は粉末供給部64の摺り切り動作によって平坦化されて、ステージ72の上面と略平行な粉末層62を形成する。粉末層62の上面であって、電子ビームで照射される面を表面63と呼ぶ。
【0023】
ステージ72の高さは、駆動部77と駆動棒76とによってZ軸方向に可動となっている。ステージ72のZ軸方向の高さは、三次元構造物66を覆う粉末層62の表面63が電子ビームEBで照射されるときに一定の高さになるように設定される。
【0024】
電子ビームの照射によって溶融凝固された粉末層62の一部は断面層65を形成し、三次元構造物66に積層される。積層される断面層65以外の粉末層62は、三次元構造物66の周りに粉末材料のまま蓄積される。
【0025】
造形容器73の周囲にはヒーター78が設けられており、粉末材料及び三次元構造物66を粉末材料の融点以下の所定の温度に加熱することで、三次元構造物66の熱歪による変形や精度の低下を防ぐ。
【0026】
造形容器73の上端部の周辺には、校正マーク67が設けられている。この校正マーク67は、造形容器73の縁の位置を示すとともに、電磁偏向器14の偏向範囲を設定し、照射位置を校正するために用いられる。
【0027】
電子ビームカラム200の底部には、複数の電子検出器15が設けられている。電子検出器15は、偏向範囲決定用の校正マーク67から反射された反射電子を検出する。また、電子検出器15は、後に説明する基準部材90によるステージ72の位置の検出にも利用される。
【0028】
電子ビームEBが通過する電子ビームカラム200の内部空間、および電子ビームEBによって照射される粉末層62の表面付近の空間は所定の真空度に排気される。電子ビームEBは、大気中では気体分子と衝突してエネルギーを失ってしまうからである。三次元積層造形装置100は、電子ビームEBの通過経路を排気するために排気ユニット80を備える。
【0029】
図3は、造形容器73、基準部材90、及び校正マーク67を
図2のAA線に沿って切断して示す断面図である。
【0030】
基準部材90は、側部を電子ビームEBで走査することにより所定の反射信号を出力して、粉末材料の表面の高さにおける基準位置を示す。粉末材料の表面の高さにおける基準位置は、ステージ72の位置ずれや傾きを反映したものであり、照射位置のずれ量の検出に利用できる。
【0031】
以下、本実施形態の基準部材90とその設置部分の構造について説明する。
【0032】
図2に示すように、粉末供給部64と干渉しない部分のステージ72には、基準部材90が設置されている。特に限定されるものではないが、本実施形態において基準部材90は、造形容器73の側壁73aの外側に設置されている。
【0033】
図3に示すように、ステージ72は、造形容器73の側壁73aに囲まれた部分の底部を構成する造形物支持部72aと、造形容器73の側壁73aの外側に位置する基準部材設置部72bとを有しており、造形物支持部72aと基準部材設置部72bとはステージ72の下方で分岐した支柱76を介して一体的に繋がっている。なお、造形物支持部72aと基準部材設置部72bとを区別しないときには、両方合わせてステージ72と呼ぶことにする。造形物支持部72aと基準部材設置部72bとは、平行であって同じ高さに形成されている。
【0034】
造形物支持部72aはシール部材74aを介して造形容器73の側壁73aと接する。また、基準部材設置部72bはシール部材74bを介して造形容器73の側壁73a及び造形部の側壁73bと接する。シール部材74a及びシール部材74bは、ステージ72と側壁73a、73bとの間で金属粉末や空気が漏れることを防止するシール部材である。また、ステージ72は、シール部材74a、74bを介して側壁73a、73bと接することにより、ステージ72の側方(X方向及びY方向)への移動が規制されている。
このようにして、ステージ72はシール部材74a、74bを介して側壁73a、73bによって支持されつつ上下方向(Z方向)に移動する。
【0035】
しかしながら、ステージ72と側壁73a、73bとの機械的な精度によるガタツキや熱膨張による精度低下が生じることがあり、造形している間にステージ72に位置ずれや傾きが生じるおそれもある。
【0036】
このようなステージ72の位置ずれや傾きが生じると、粉末層62の高さで形成され、三次元構造物66の一部となる断面層65に、XY面内方向の位置ずれが生じて、三次元構造物66の表面に段差が現れたり、造形物66がステージ72の傾斜に合わせて傾斜したりしてしまうことがある。このように、従来の三次元積層造形装置では、三次元構造物の精度は、ステージ72の機械的な精度によって制約されてしまうという問題があった。
【0037】
そこで本実施形態では、ステージ72の位置ずれや傾きによる造形物66の精度低下を防ぐために、ステージ72の上面に固定された基準部材90を用いて粉末層62の表面位置63における照射位置のずれ量を検出する。
【0038】
予め決まった形状を有する基準部材90は、ステージ72の一部である基準部材設置部72bの上面に固定され、ステージ72と一体的にZ軸方向に移動する。ステージ72の位置ずれ及び傾きが発生している場合、その影響を受けて基準部材90は、粉末層62の表面63の高さでXY面内方向に位置ずれする。三次元積層造形装置100は、粉末層62の表面63と同じZ軸方向の高さで、基準部材90の所定の構造のXY方向位置(基準位置と呼ぶ)を電子ビームEBを用いて測定する。そして、ステージ72の位置ずれ及び傾きに起因する上記の位置ずれ量を、電子ビームの照射位置のずれ量として検出する。
【0039】
基準部材90の長さは、ステージ72を最も下げた場合であっても、その上端部が粉末層62の表面よりも高い位置するべく、ステージ72の可動範囲よりも長く形成されている。そして、基準部材90の側部には、粉末層62の表面に焦点合わせした電子ビームEBで走査したときに特徴的な反射電子信号を出力する基準部材90の構造の一例としてナイフエッジ91(
図4参照)が形成されている。
【0040】
したがって、粉末層62の高さよりも上に伸び出た基準部材90の側部を電子ビームEBで走査することで、ステージ72の上面をZ軸方向に移動させた場合に対応する基準位置を検出できる。
【0041】
このように、基準部材90の上端が粉末層62よりも高い位置にあるため、ステージ72の繰り下げ量にかかわらず、常に基準部材90の側部が表れ、ステージ72の高さの変化にかかわらずにステージ72の位置ずれ及び傾きに起因する電子ビームの照射位置のずれを検出できる。
【0042】
基準部材90のナイフエッジ91は、ステージ72の表面に対して所定角度で上方に伸びていればよい。あらかじめ決まった形状を有する基準部材90は、ステージ72の表面からの高さに依存して、決まったエッジ位置を有することになるからである。以降の明細書では、基準部材90は、ステージ72の表面に対して垂直に延びるナイフエッジ91を有する場合について説明する。
【0043】
図4は、基準部材90と電子検出器15を示す斜視図である。
【0044】
図4に示す基準部材90は、三角柱として形成されており、ステージ72の上面に垂直な向きに固定されている。基準部材90の側部にはZ方向に平行な3つの平面があり、それらの平面同士は鋭角又は直角を為して接している。本実施形態では、これらの平面の接する辺の何れか一つをナイフエッジ91として基準位置を指示する標識として用いる。
【0045】
基準部材90のナイフエッジ91は、側面91a及び側面91bに挟まれた辺として形成されている。基準部材90はステージ72上に設定された水平方向(XY方向)の位置の基準として設定された基準座標(X0,Y0)にナイフエッジ91が一致するように位置決めされて固定されている。
【0046】
図示のように、基準部材90のナイフエッジ91は電子ビームEBで走査させたときに特徴的な反射電子信号を出力させるべく、電子ビームEBの光軸Cを向くように配置されている。なお、ナイフエッジ91を為す角の中心は、必ずしも電子ビームEBの光軸Cを向いている必要はない。
【0047】
また、基準部材90の向きは、ナイフエッジ91付近を電子ビームEBで照射した際に、ナイフエッジ91に隣接する2つの側面91a、91bが電子ビームEBで照射することができ、且つ電子検出器15から見て側面91a、91bがナイフエッジ91の陰に隠れない向きに配置すると好適である。
【0048】
反射電子は電子ビームEBの入射方向と逆向きに放出されるものが多いため、電子検出器15は、図示のように基準部材90のナイフエッジ91と対向する向きに配置することが好ましい。これにより、電子ビームEBがナイフエッジ91を横切る際に反射電信号に生じる特徴的な強度変化を電子検出器15で検出することができ、ナイフエッジ91の位置の検出に好適である。
【0049】
図5は、
図4の基準部材90をXY平面に沿って切断し、ナイフエッジ91の先端付近を拡大して示す断面図である。
【0050】
ナイフエッジ91の先端は必ずしも鋭利な刃先のように形成する必要はなく、
図5に示すように、電子ビームEBの焦点位置でのビーム径よりも狭い幅の平坦な先端部91dとして形成してもよい。このような形状とした場合であっても、反射電子信号への影響はわずかである一方でナイフエッジ91が破損しにくくなり好適である。
【0051】
特に限定されるものではないが、平坦部91dの幅は、例えば幅50μm程度又はそれ以下とすることができる。また、ナイフエッジ91に隣接する2つの側面91a、91bの開き角は、90度以下とすると好適である。このような角度条件に設定することで、ナイフエッジ91を横切るように電子ビームEBを照射した際の強度変化が明確に表れて基準位置の検出精度を高めることができる。
【0052】
基準部材90は、ステージ72上に距離を開けて複数本設けてもよい。複数本の基準部材90を設けることにより、局所的な歪や収縮膨張を含めたより複雑な照射位置のずれの検出も可能となる。
【0053】
なお、基準部材90は
図4に示すような三角柱に限定されるものではなく、ナイフエッジが表れているのであれば、断面が四角形や多角形の角柱状であってもよい。
【0054】
以下、粉末層62の表面におけるナイフエッジ91の位置の検出方法について説明する。
【0055】
図6は、
図4の基準部材90のナイフエッジ91による基準位置の検出方法を示す斜視図であり、
図7は電子ビームEBの走査に伴う基準部材90の反射電子信号の強度の変化を示す図である。
【0056】
ナイフエッジ91による基準位置の検出は、粉末層62に対する電子ビームEBを照射して断面層65を形成する前に行うことで、ステージ72の平面方向の位置ずれや、傾きを検出する。
【0057】
そのためには、基準部材90のナイフエッジ91の中でも、高さ方向(Z方向)の位置が粉末層62の表面63の高さと一致する部分のナイフエッジ91のX方向及びY方向の位置座標を検出することが求められる。
【0058】
そこで、本実施形態ではナイフエッジ91の走査に先立って、電子ビームEBの焦点位置を粉末層62の表面63の高さに合わせておく。
【0059】
つぎに、
図6に示すように電子ビームEBをナイフエッジ91の周辺で走査させる。なお、図示の例では、基準部材90のX方向を向いたナイフエッジ91を利用して基準位置を検出する例で説明するが、これに限られるものではない。
【0060】
破線で示す面は、電子ビームEBの焦点位置である粉末層62の表面63と同じ高さの面を示している。電子ビームEBは、常に表面63の位置に焦点が合わされた状態で走査を行う。
【0061】
図示の例の場合では、電子ビームEBを+Y方向に連続的に移動させてナイフエッジ91を横切るように走査させた後、−X方向又は+X方向に所定の送り距離ΔXだけ移動させる。その後、電子ビームEBを−Y方向に連続的に走査させてナイフエッジ91を横切るように移動させる。
【0062】
以上のような走査を、X方向に複数回移動させながら繰り返す。
【0063】
1回の走査において、基準部材90から放出される反射電子の強度は、電子検出器15と基準部材90の側面91a、91bとのなす角度に応じて変化する。その走査において、電子ビームEBがナイフエッジ91を通過するときに反射電子の強度が大きく変化する。
【0064】
図中のP1に示す位置で走査した場合には、電子ビームEBの照射位置の移動に伴って、最初に図中の手前の側面91aから放出された反射電子が電子検出器15によって検出される。その後、ナイフエッジ91を経て図中の奥側の面91bから放出された反射電子が電子検出器15(
図4参照)によって検出される。ナイフエッジ91では、電子ビームEBが通過する際に反射電子に大きな強度変化が生じる。
【0065】
その結果、
図7の符号P1のような反射電信号が得られる。
【0066】
図7において、符号P1におけるX方向の走査位置では、反射電子信号の強度変化も緩やかなものとなる。これは、
図6に示すように符号P1に沿って走査される電子ビームEBは、ナイフエッジ91を横切る位置では焦点位置から外れており、ナイフエッジ91の周辺が比較的広い電子ビームEBによって照射されるためである。すなわち、ナイフエッジ91の位置において
図6の手前側の面91aからの反射電子と奥側の面91bからの反射電子とが電子検出器15によって検出される。その結果、
図7の符号P1の曲線に示すように、ナイフエッジ91を通過する際の反射電子信号の強度変化が電子ビームEBの照射スポットの直径に相当する範囲で緩やかに変化する。この走査位置P1のようにナイフエッジ91を通過する位置において、電子ビームEBの焦点が表面位置63からずれている場合には、照射スポットの直径が相対的に大きくなり、反射電子信号の強度変化が緩やかになる。
【0067】
図6において、焦点位置が外れている符号P2の位置での電子ビームEBの走査でも同様であり、
図7の符号P2の反射電子信号の強度変化も緩やかとなる。
【0068】
一方、
図6において符号P0の走査位置では、ナイフエッジ91の位置と電子ビームEBの焦点位置である表面63の位置とが一致している。このとき、ナイフエッジ91を通過する際の電子ビームEBの照射スポットの直径は非常に小さなものとなる。ナイフエッジ91を通過する際の反射電子信号の強度変化が非常に狭い範囲で発生する。したがって、
図7の符号P0を付した反射電子信号に示すように、急峻な強度変化を示す。
【0069】
反射電子信号の強度変化が最も急峻な反射電子信号が得られるX方向の走査位置を検出することにより、粉末層62の高さにおける基準部材90のナイフエッジ91のX方向の基準位置座標X0を検出できる。また、
図7の符号P0の反射電子信号の変化率が最大値を示すY方向の照射位置からY方向の基準位置座標Y0を検出できる。
【0070】
図8は、反射電子信号の変化率の最大値とそれに基づく基準部材90のナイフエッジ91の位置の検出方法を示す図である。
【0071】
本実施形態では、X方向の走査位置ごとの反射電子信号の変化率の絶対値を求める。そして、
図8に示すように、反射電子信号の変化率の絶対値の最大値と電子ビームEBのX方向の走査位置との関係を表す近似曲線を求める。その近似曲線の最大値を示す位置から粉末層62の表面63の位置におけるナイフエッジ91のX座標である基準位置の座標X0を正確に求めることができる。
【0072】
また、Y方向の走査位置についても同様に、反射電子信号の変化率の絶対値の最大値と電子ビームEBのY方向の走査位置との関係を表す近似曲線を求める。その近似曲線の最大値を示す位置から粉末層62の表面63の位置におけるナイフエッジ91のY座標である基準位置の座標Y0を正確に求めることができる。
【0073】
また、上記の方法で求めた基準位置の座標(X0,Y0)と、ステージ72上の基準位置の初期値との差を求めることで、粉末層62の表面63の位置における照射位置のずれ量が求まる。ここで、ステージ72上の基準位置の初期値とは、ステージ72がXY方向の位置ずれ及び傾きを発生しないでZ軸方向に平行に移動する場合に、粉末層62の高さにおけるナイフエッジ91の位置座標に相当する。基準位置の初期値は、基準部材90の形状、及びステージ72の上面に固定されるナイフエッジ91の向きなどをもとに、予め求められて、制御部400内に初期設定される。
【0074】
以下、積層造形装置100の動作について説明する。
【0075】
図9は、積層造形装置100の動作を示すフローチャートである。
【0076】
積層造形装置100は、三次元構造物66の造形に先立って、電子ビームEBの校正を行う(ステップS510)。
【0077】
電子ビームEBの校正は、電子ビームEBの電磁レンズ13のレンズ強度を調整して焦点位置を合わせこむとともに、電子ビームEBの位置合わせを行う。その電子ビームEBの位置合わせは、偏向器14への制御信号を入力して電子ビームEBを偏向させて校正マーク67を検出して行う。その結果に基づき偏向器14への入力値と電子ビームの照射位置との関係を校正することで電子ビームEBの位置合わせを行う。
【0078】
つぎに、制御部400の制御の下でステージ72の高さを調整する(ステップS520)。ここでは、駆動部77を駆動させてステージ72を、1層の粉末層62の高さの分だけ−Z方向に移動させる動作を行う。
【0079】
その後、造形容器73に粉末層62を供給する(ステップS530)。粉末材料が粉末供給部64の摺り切り動作によって平坦化されつつステージ72の上方に供給され、ステージ72と略平行な粉末層62を形成する。
【0080】
つぎに、照射位置のずれを測定し、三次元積層造形装置100は、電子ビームEBの照射位置の補正を行う(ステップS540)。ステージ72は、ステップS520の−Z方向へ移動することにより、XY方向の位置ずれや傾きなどが発生し得る。
【0081】
そこで、本実施形態では、
図5〜
図7を参照して説明した方法によりステージ72の−Z方向の移動による照射位置のずれを測定し、照射位置の補正を行う。
【0082】
以下、具体的な照射位置のずれの測定及び照射位置の補正について説明する。
【0083】
図10は、三次元積層造形装置100における照射位置のずれを測定及び照射位置の補正(
図9のステップS540)の動作を示すフローチャートである。
【0084】
まず、ステップS541において、三次元積層造形装置100は、電子ビームEBで基準部材90の走査を行う。すなわち、電子ビームEBの焦点位置を粉末層62の表面に合わせた状態で電子ビームEBを偏向させて基準部材90のターゲット部位であるナイフエッジ91の走査を行う。ここでは、
図6に示すように、検出対象とするナイフエッジ91を横切る所定範囲を走査範囲に設定し、その範囲を電子ビームEBで走査する。
【0085】
つぎに、ステップS542に移行し、電子ビームEBの走査によって発生する反射電子を電子検出器15で検出する。電子検出器15の検出結果である反射電子の強度は、電子ビームEBの照射位置と対応付けられて反射電子信号として制御部400内の記憶部に格納する。
【0086】
つぎに、ステップS543において、制御部400が基準位置であるナイフエッジ91の位置を検出する。ここでは、
図7及び
図8を参照しつつ説明した方法により、反射電子信号の検出電子強度の変化率を求め、その変化率が最大値を示す位置からナイフエッジ91の位置を検出する。
【0087】
つぎに、ステップS544において、制御部400がステージ72の−Z方向の移動に起因する照射位置のずれ量を決定する。すなわち、制御部400は、初期設定された基準部材90の基準位置の座標(基準部材の初期位置)と、ステップS543で検出したナイフエッジ91の位置座標との差分をとることにより、ステージ72の位置ずれ及び傾きに起因する照射位置のずれ量(ΔX,ΔY)を算出する。
【0088】
その後、ステップS545において、制御部400が電子ビームEBの照射位置の補正を行う。ここでは、制御部400に格納された照射データの座標値にステップS544で算出した照射位置のずれ量(ΔX,ΔY)を加算処理することにより、電子ビームEBの照射位置の補正を行う。
【0089】
以上により、
図9のステップS540における電子ビームEBの照射位置の補正が完了する。
【0090】
つぎに、
図9のステップS550に移行し、三次元積層造形装置100は補正された照射データに基づいて粉末層62の表面63に電子ビームEBを照射して粉末層62を溶融凝固させる。これにより、断面層65が形成され、三次元構造物の一層分の造形が完了する。
【0091】
その後、ステップS560において、三次元積層造形装置100は、全層の造形が完了したか判断する。ステップS560において、三次元積層造形装置100が全層の造形が完了していないと判断した場合には、ステップS520に戻り、次の層の造形を行う。
【0092】
一方ステップS560において、三次元積層造形装置100が全層の造形が完了したと判断した場合には、造形動作を終了する。
【0093】
以上のように、三次元積層造形装置100は、電子ビームEBの照射に先立って、ステージ72の移動に伴う位置ずれ及び傾きによる照射位置のずれ量を検出し、照射位置の補正を行なう。
【0094】
これにより、本実施形態の三次元積層造形装置100によれば、ステージ72の機械的精度の制約を超えて高精度な造形物を造形することができる。
【0095】
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態に係る基準部材190の斜視図である。
【0096】
図11に示す基準部材190は、第1実施形態の基準部材90(
図3参照)と同様に、ステージ72の上に設置されるものである。
【0097】
本実施形態の基準部材190は、Z方向の高さが異なる複数の平坦部を備えており、それらが階段状に配置されている。図示の例では、基準部材190は高さがZ1の平坦部92と、それよりも高い位置に設けられた高さがZ2の平坦部94と、さらに高い位置に設けられた高さZ3の平坦部96との3つの平坦部を備えている。
【0098】
各々の平坦部92、94、96の中心には、位置決め用のマークパターン92a、94a、96aがそれぞれ設けられている。
【0099】
基準部材190は、金属などの導体で形成されてなり、マークパターン92a、94a、96aは例えば幅及び深さが数十μm程度の溝を十字形に刻んだパターンとして形成されている。電子ビームEBでマークパターン92a、94a、96aを走査することで、各平坦部92、94、96による基準位置がそれぞれ求まる。
【0100】
Z軸方向の高さZ1、Z2及びZ3に対する電子ビームEBの照射位置のずれ量の検出は、粉末層62を溶融凝固させて三次元構造物66を積層造形する動作に入る前に、予めマークパターン92a、94a、96aの高さにステージ72を移動し、それぞれの高さでマークパターン92a、94a、96aのXY方向の位置を電子ビームによって検出することによって行う。すなわち、電子ビームEBの照射位置のずれ量の検出は、
図9のフローチャートでは、電子ビームEBの校正(ステップS510)が終了した直後に行う。
【0101】
本実施形態では、ステージ72の高さに応じてマークパターン92a、94a、96aのマーク位置検出結果を使い分けることで、ステージ72のZ方向の移動が大きな場合であっても照射位置のずれ量を補正できる。
【0102】
ステージ72の上面のZ方向の位置が、初期位置である高さ0から−Z1までの移動範囲に含まれる場合には、予め登録されていたマークパターン92aの位置座標と実際に測定したマークパターン92aの測定値との差分から照射位置のずれ量を検出して照射位置の補正を行う。
【0103】
なお、制御部400には、初期値として、基準部材190の設置位置によって設定されたマークパターン92aの位置座標(X1、Y1)が予め格納されていてよい。この位置座標(X1,Y1)と、ステージ72の繰り下げ動作を行った後のマークパターン92aの位置座標の測定値との差分から、補正すべき照射位置のずれ量が求まる。
【0104】
また、ステージ72の位置が−Z1〜−Z2の範囲については、基準部材190の平坦部94のマークパターン94aを用いて照射位置のずれ量の測定を行う。
【0105】
さらに、ステージ72の位置が−Z2〜−Z3の範囲については、基準部材190の平坦部96のマークパターン96aを用いて照射位置のずれ量の測定を行う。
【0106】
このように、本実施形態の基準部材190では、高さの異なる複数の平坦部を用いて、ステージ72の所定の高さ範囲毎にマークパターンを使い分けることで、Z方向に大きく移動するステージ72であっても、照射範囲のずれ量を検出し、照射範囲の補正を行うことができる。