特許第6871827号(P6871827)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871827
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】ボイラ構造
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/10 20060101AFI20210426BHJP
   F22B 37/22 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   F22B37/10 N
   F22B37/22 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-166244(P2017-166244)
(22)【出願日】2017年8月30日
(65)【公開番号】特開2019-45024(P2019-45024A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱パワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(74)【代理人】
【識別番号】100098017
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 宏嗣
(72)【発明者】
【氏名】児玉 泰孝
(72)【発明者】
【氏名】菊原 誠治
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌光
(72)【発明者】
【氏名】野ヶ峯 翔
(72)【発明者】
【氏名】堀 正和
(72)【発明者】
【氏名】町田 孝洋
(72)【発明者】
【氏名】竹内 直樹
(72)【発明者】
【氏名】立平 和樹
【審査官】 古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−024906(JP,A)
【文献】 特開2000−246079(JP,A)
【文献】 特開平09−126406(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02159506(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/10,37/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶前側の火炉から缶後側の後部伝熱部へ流通する燃焼ガスによって被加熱流体を加熱するボイラ構造であって、
前記火炉及び前記後部伝熱部の上方を区画する天井壁の一部を構成し、前記火炉の上方から前記後部伝熱部の上方まで前後方向に延びて、前側から後側への被加熱流体の流通を許容する前側天井壁管と、
前記後部伝熱部の上方で幅方向に延びて、前記前側天井壁管の下流側の端部が接続される前側天井壁出口管寄せと、
前記天井壁の一部を構成し、前記後部伝熱部の上方に配置されて前記前側天井壁出口管寄せから後方へ延びて、前記前側天井壁出口管寄せから後方への被加熱流体の流通を許容する後側天井壁管と、
前記後部伝熱部の後方を区画する後壁の一部を構成し、前記後側天井壁管の後端から曲折して下方へ延びて、前記後側天井壁管の後端から下方への被加熱流体の流通を許容する後部伝熱部後壁管と、
前記後部伝熱部の内部で前後方向と交叉して前記後部伝熱部の内部を前後に仕切る隔壁の一部を構成し、上下方向に延びて上方から下方への被加熱流体の流通を許容する後部伝熱部隔壁管と、を備えた
ことを特徴とするボイラ構造。
【請求項2】
缶前側の火炉から缶後側の後部伝熱部へ流通する燃焼ガスによって被加熱流体を加熱するボイラ構造であって、
前記火炉及び前記後部伝熱部の上方を区画する天井壁の一部を構成し、前記火炉の上方から前記後部伝熱部の上方まで前後方向に延びて、前側から後側への被加熱流体の流通を許容する前側天井壁管と、
前記後部伝熱部の上方で幅方向に延びて、前記前側天井壁管の下流側の端部が接続される前側天井壁出口管寄せと、
前記天井壁の一部を構成し、前記後部伝熱部の上方に配置されて前記前側天井壁出口管寄せから後方へ延びて、前記前側天井壁出口管寄せから後方への被加熱流体の流通を許容する後側天井壁管と、
前記後部伝熱部の後方を区画する後壁の一部を構成し、前記後側天井壁管の後端から曲折して下方へ延びて、前記後側天井壁管の後端から下方への被加熱流体の流通を許容する後部伝熱部後壁管と、を備え
前記前側天井壁出口管寄せとの接続部における前記後側天井壁管の外径は、前記前側天井壁出口管寄せとの接続部における前記前側天井壁管の外径よりも小さい
ことを特徴とするボイラ構造。
【請求項3】
請求項に記載のボイラ構造であって、
前記前側天井壁出口管寄せは、前記後部伝熱部隔壁管よりも前方に配置され、
前記後部伝熱部隔壁管の上流側の端部は、前記前側天井壁出口管寄せに接続される
ことを特徴とするボイラ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ボイラ炉壁の取合構造が記載されている。このボイラでは、天井壁管は、その前後の両端部がそれぞれ管寄せに接続され、垂直壁管の狭小隙間を貫通して取合を構成している。
【0003】
特許文献2には、ボイラの被加熱流体の流路が記載されている。このボイラでは、水が、スパイラル状に設置された火炉下部周壁管により火炉内での熱吸収を行いながら高温水となって上昇し、さらに、火炉の上部に設けられた火炉上部壁を上昇した後、ボイラの管前部上方の汽水分離器に流入する。汽水分離器で分離された蒸気は、天井壁入口管寄せに供給され、天井壁管を経て天井壁出口管寄せに至る間に、熱吸収により加熱される。天井壁出口管寄せに集まった過熱蒸気は、後部伝熱壁入口連絡管を通り、後部伝熱壁の上部に配置された入口管寄せに流入し、該入口管寄せから後部伝熱壁の管内に流入して下降流となる。なお、同公報には、複数の伝熱壁の上部に複数の入口管寄せが配置され、この複数の入口管寄せと天井壁出口管寄せとが連絡管によって連結された状態が図示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−286604号公報
【0005】
【特許文献2】特開2000−130701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ボイラを組み立てる際には、溶接の熱等によって壁管が変形する可能性があるので、特許文献1に記載のボイラのように、天井壁管が後垂直壁管の狭小隙間を挿通して天井壁管と後垂直壁管とが交差するボイラでは、ボイラの組み立て時に天井壁管と後垂直壁管との交差部分で天井壁管と後垂直壁管とが接触してしまうおそれがある。天井壁管と後垂直壁管とが接触した場合には、天井壁管または後垂直壁管の表面を削るなどして、天井壁管と後垂直壁管との間に隙間を確保する必要が生じるので、ボイラを組み立てる際の作業性が低下するおそれがある。
【0007】
また、天井壁管と後垂直壁管との交差部分から炉内ガスが炉外に漏出しないように、耐火材やケーシング等で当該交差部分周辺をカバーするなどしてガスシールを確実に施す必要がある。さらに天井壁出口管寄せが後垂直壁管よりも缶後ろ側に突き出しているので、これをカバーするようにボイラの上方を覆うペントハウスケーシングを缶後方に延長して設置する必要がある。
【0008】
また、特許文献2に記載のボイラでは、複数の伝熱壁の上部に複数の入口管寄せが配置され、この複数の入口管寄せと天井壁出口管寄せとが連絡管によって連結される。このように、天井壁管と各伝熱壁との間には、少なくとも天井壁出口管寄せ、連絡管、及び入口管寄せが必要であるので、部品点数が多く、製造コストが増大する可能性がある。
【0009】
そこで、本発明は、ボイラを組み立てる際の作業性が向上し、且つ製造コストを低減することが可能なボイラ構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、缶前側の火炉から缶後側の後部伝熱部へ流通する燃焼ガスによって被加熱流体を加熱するボイラ構造であって、前側天井壁管と前側天井壁出口管寄せと後側天井壁管と後部伝熱部後壁管とを備える。前側天井壁管は、火炉及び後部伝熱部の上方を区画する天井壁の一部を構成し、火炉の上方から後部伝熱部の上方まで前後方向に延びて、前側から後側への被加熱流体の流通を許容する。前側天井壁出口管寄せは、後部伝熱部の上方で幅方向に延びて、前側天井壁管の下流側の端部が接続される。後側天井壁管は、天井壁の一部を構成し、後部伝熱部の上方に配置されて前側天井壁出口管寄せから後方へ延びて、前側天井壁出口管寄せから後方への被加熱流体の流通を許容する。後部伝熱部後壁管は、後部伝熱部の後方を区画する後壁の一部を構成し、後側天井壁管の後端から曲折して下方へ延びて、後側天井壁管の後端から下方への被加熱流体の流通を許容する。
【0011】
上記構成では、後部伝熱部の後方を区画する後壁の一部を構成する後部伝熱部後壁管が、天井壁の一部を構成する後側天井壁管の後端から曲折して下方へ延びるので、天井壁管(後側天井壁管)と後壁管(後部伝熱部後壁管)とが交差しない。このため、天井壁管と後壁管とが交差する場合とは異なり、天井壁管と後壁管との間に隙間を確保する必要が無いので、ボイラを組み立てる際の作業性が向上する。
【0012】
また、天井壁管と後垂直壁管との交差部分から炉内ガスが炉外に漏出しないように、耐火材やケーシング等で当該交差部分周辺をカバーするなど、ガスシールを確実するための追加の部材および施工が不要となる。
【0013】
また、後側天井壁管が、前側天井壁出口管寄せから後方へ延び、後部伝熱部後壁管が、後側天井壁管の後端から曲折して下方へ延びる。このため、後壁管(後部伝熱部後壁管)の上流側の端部に後壁入口管寄せを設け、該後壁入口管寄せと天井壁の出口側の管寄せとを連絡管で接続する場合とは異なり、後壁入口管寄せ及び前記連絡管を設けなくてもよいので、材料費を削減して製造コストを低減することができる。
【0014】
また、後部伝熱部後壁管は、前側天井壁出口管寄せから延びる後側天井壁管の後端から曲折して下方へ延びる。このため、被加熱流体は、前側天井壁出口管寄せに集められてから、後側天井壁管へ分配され、後側天井壁管から後部伝熱部後壁管へ流入する。このように、被加熱流体は、管寄せ(前側天井壁出口管寄せ)に集められてから後側天井壁管を介して後部伝熱部後壁管へ流入するので、後部伝熱部後壁管の上流側の端部に管寄せ(後壁入口管寄せ)を設け、該管寄せに被加熱流体を集めてから被加熱流体を後部伝熱部後壁管へ流入させる場合と同様に、管寄せによって良好に被加熱流体を後部伝熱部後壁管側へ分配することができる。
【0015】
また、天井壁の下流側の天井壁出口管寄せを後壁よりも後方に配置する場合とは異なり、後方への天井壁の突出を抑えることができ、ボイラの上方を覆うペントハウスケーシングを後垂直壁管よりも缶後ろ側に大きく延長しなくても済むので、その分だけボイラを小さくすることができる。
【0016】
本発明の第の態様のボイラ構造は、後部伝熱部隔壁管を備える。後部伝熱部隔壁管は、後部伝熱部の内部で前後方向と交叉して後部伝熱部の内部を前後に仕切る隔壁の一部を構成し、上下方向に延びて上方から下方への被加熱流体の流通を許容する。
【0017】
上記構成では、後部伝熱部の内部で前後方向と交叉して後部伝熱部の内部を前後に仕切る隔壁の一部を構成する後部伝熱部隔壁管を備え、後部伝熱部隔壁管は、上下方向に延びて上方から下方への被加熱流体の流通を許容するので、後部伝熱部隔壁管を前側天井壁出口管寄せに接続することができる。後部伝熱部隔壁管を前側天井壁出口管寄せに接続した場合には、後部伝熱部隔壁管の上端部に隔壁管入口管寄せを設けなくてもよいので、更に材料費を削減して製造コストを低減することができる。
【0018】
本発明の第の態様のボイラ構造は、上記第の態様のボイラ構造であって、前側天井壁出口管寄せが、後部伝熱部隔壁管よりも前方に配置され、後部伝熱部隔壁管の上流側の端部が、前側天井壁出口管寄せに接続される。
【0019】
上記構成では、前側天井壁出口管寄せが、後部伝熱部隔壁管よりも前方に配置されるので、前側天井壁出口管寄せから前方へ延びる連絡管等の長さを抑えることができ、材料費を削減して製造コストを低減することができる。
【0020】
また、後部伝熱部隔壁管の上流側の端部が、前側天井壁出口管寄せに接続されるので、後部伝熱部隔壁管の上端部に隔壁管入口管寄せを設けなくてもよく、材料費を削減して製造コストを低減することができる。
【0021】
本発明の第の態様のボイラ構造は、前側天井壁出口管寄せとの接続部における後側天井壁管の外径が、前側天井壁出口管寄せとの接続部における前側天井壁管の外径よりも小さい。

【0022】
上記構成では、前側天井壁出口管寄せとの接続部における後側天井壁管の外径が、前側天井壁出口管寄せとの接続部における前側天井壁管の外径よりも小さい。すなわち、前側天井壁出口管寄せとの接続部における前側天井壁管の外径が、前側天井壁出口管寄せとの接続部における後側天井壁管の外径よりも大きい。
【0023】
天井壁管は、天井壁全体としての使用物量(質量)の低減を図るため、次のような設計が行われることがある。即ち、隣接する管同士の間隔(管中心軸の間隔)をボイラ前方から後方まで同一とし、ガス温度の高いボイラ前方は個々の管の外径を大きなものとして、隣接する管同士の隙間に形成されるメンブレンバーの幅が細くなるようにしてメンブレンバーの焼損を防止する。一方、ガス温度の低下するボイラ後方では、個々の管の外径をボイラ前方よりも小さく、メンブレンバーの幅を太くすることで天井壁管としての使用物量(質量)を低減するというものである。
【0024】
ここで、略水平方向に延びる天井壁管において、外径が大きい(太い)管と小さい(細い)管との接続部ではボイラの運転停止時にドレンの滞留が発生しやすい問題があった。上記した本発明の第4の態様のボイラ構造によれば、外径が大きい(太い)管と小さい(細い)管との接続部が前側天井壁出口管寄せに設定されるので、当該部で発生したドレンを前側天井壁出口管寄せの下方に接続したドレン抜き管を通じて、例えば、後部伝熱部隔壁管へ排出させることができるのでドレンの滞留を解消できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ボイラを組み立てる際の作業性が向上し、且つ製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係るボイラ構造を説明するための概略側面図である。
図2】水壁の概略説明図である。
図3】ボイラの火炉側上方からの概略斜視図である。
図4図3のボイラの要部の拡大図である。
図5】ボイラの後部伝熱部の上部の概略斜視図である。
図6】他の実施形態に係るボイラ構造を説明するための概略側面図である。
図7】他の実施形態に係るボイラ構造の前側天井壁出口管寄せの周辺の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、FRは缶前側の方向(以下、缶前方向という。)を、UPは上方をそれぞれ示す。また、以下の説明において、前方は缶前方向を、後方は缶後側の方向(以下、缶後方向という。)をそれぞれ意味する。
【0028】
図1に示すように、ボイラ10は、缶前側に配置される火炉11と、缶後側に配置される後部伝熱部12とを備え、火炉11から後部伝熱部12へ流通する燃焼ガスによって被加熱流体(ボイラ水または蒸気)を加熱する。火炉11及び後部伝熱部12は、複数の水壁13(図2参照)によって構成され、互いに前後に隣接して配置される。火炉11及び後部伝熱部12の上方は、ペントハウスケーシング8によって覆われる。図2に示すように、火炉11及び後部伝熱部12を構成する各水壁13は、被加熱流体が流通する円管状の複数の伝熱管14と、隣接する伝熱管14の間に配置されて隣接する伝熱管14同士を互いに接続する複数のメンブレンバー15とによって略板状に形成される。すなわち、伝熱管14は、水壁13の一部を構成する。なお、火炉11や後部伝熱部12の内部に配置される水壁13のうち、燃焼ガスを通過させたい領域には、メンブレンバー15が設けられない。
【0029】
図1に示すように、ボイラ10に給水されたボイラ水は、節炭器(図示省略)等を流通した後、火炉11の下方の水冷壁入口管寄せ1に分配され、水冷壁入口管寄せ1から火炉11の下部の火炉下部周壁2(水壁13)や、火炉11の上部の火炉上部壁3(水壁13)を流通し、火炉上部壁3の上端の火炉上部壁出口管寄せ4から火炉出口管寄せ(図示省略)を介してボイラ10の缶前側の上方の汽水分離器5に流入する。汽水分離器5で分離された蒸気は、天井壁入口管寄せ6に供給される。天井壁入口管寄せ6に供給された蒸気は、火炉11及び後部伝熱部12の上方を区画する天井壁7(水壁13)を後方へ流通して分配され、後部伝熱部12の前部壁16(水壁13)、後部壁(後壁)17(水壁13)、一対の側部壁18(水壁13、図3参照)、及び隔壁19(水壁13)を下方へ流通する。なお、図3及び図4の各水壁13では、伝熱管14及びメンブレンバー15の図示を省略している。
【0030】
図1図3、及び図4に示すように、後部伝熱部12の上方には、円管状の前側天井壁出口管寄せ20が配置される。前側天井壁出口管寄せ20は、後部伝熱部12の前部壁16よりも後方、且つ隔壁19よりも前方(本実施形態では、隔壁19の前側近傍)に配置され、前後方向及び上下方向と交叉する幅方向(以下、単に幅方向という。)に延びる。
【0031】
図3図4及び図5に示すように、天井壁7は、上下方向と交叉して火炉11及び後部伝熱部12の上方を区画する水壁13であって、前側天井壁出口管寄せ20よりも前方に配置される前側天井壁7aと、前側天井壁出口管寄せ20よりも後方に配置される後側天井壁7bとを有する。前側天井壁7aは、前後方向に延びる前側天井壁管21(伝熱管14)を有する。後側天井壁7bは、前後方向に延びる後側天井壁管22(伝熱管14)を有する。
【0032】
前側天井壁管21は、火炉11の上方で火炉11の前後に亘って延び、且つ火炉11の上方から連続して後部伝熱部12の上方の前側天井壁出口管寄せ20まで延びる。前側天井壁管21の上流側の端部21aは天井壁入口管寄せ6に接続され(図1参照)、下流側の端部21bは前側天井壁出口管寄せ20に接続される。天井壁入口管寄せ6に供給された蒸気は、前側天井壁管21の上流側の端部21aから前側天井壁管21に流入し、前側天井壁管21を前側から後側へ向かって流通し、下流側の端部21bから前側天井壁出口管寄せ20に流入する。前側天井壁出口管寄せ20に流入した蒸気は、前側天井壁出口管寄せ20から少なくとも前部壁16側、後部壁17側、一対の側部壁18側、及び隔壁19側へ分配される。
【0033】
後側天井壁管22は、上流側の端部22aが前側天井壁出口管寄せ20に接続され、後部伝熱部12の上方で前側天井壁出口管寄せ20から後方へ延び、後部伝熱部12の後端で下方へ曲折して後部壁17の後部壁管(後部伝熱部後壁管)25(伝熱管14)の上端に連続する。すなわち、後側天井壁管22は、後部壁17の後部壁管25と一体的に形成される。
【0034】
後部伝熱部12の前部壁16は、前後方向と交叉する水壁13であって、上下方向に延びる伝熱管14(図示省略)を有し、後部伝熱部12の前方を区画する。前部壁16の伝熱管14は、前側天井壁7aの隣接する2つの前側天井壁管21の間のメンブレンバー15に設けられた開口(図示省略)を挿通し、前側天井壁管21は、前部壁16の隣接する2つの伝熱管14の間を挿通する。前部壁16の伝熱管14と前側天井壁管21とは、互いに幅方向に離間した状態で交差する。前部壁16の上端は、前側天井壁7aよりも上方に配置される。前部壁16の伝熱管14の上端は、前部壁16の上方で幅方向に延びる前部壁入口管寄せ23に接続される。前部壁入口管寄せ23は、複数の連絡管9によって前側天井壁出口管寄せ20に接続される。前側天井壁出口管寄せ20から前部壁16側へ分配された蒸気は、連絡管9を流通して前部壁入口管寄せ23へ流入し、前部壁入口管寄せ23から前部壁16の伝熱管14を上方から下方へ流通する。なお、図3及び図4では、前側天井壁出口管寄せ20と前部壁入口管寄せ23とを2本の連絡管9で接続しているが、これに限定されるものではなく、前側天井壁出口管寄せ20と前部壁入口管寄せ23とを3本以上の連絡管9で接続してもよい。また、隣接する2つの前側天井壁管21の間を挿通する前部壁16の伝熱管14の数は、1本であってもよいし、複数本であってもよい。
【0035】
後部伝熱部12の後部壁17は、前後方向と交叉する水壁13であって、上下方向に延びる後部壁管25を有し、後部伝熱部12の後方を区画する。後部壁管25は、後側天井壁管22の後端から連続して曲折して下方へ延びる。すなわち、後部壁管25は、後側天井壁管22と一体的に形成される。前側天井壁出口管寄せ20から後部壁17側へ分配された蒸気は、後側天井壁管22の上流側の端部22aから後側天井壁管22に流入し、後側天井壁管22を前側から後側へ向かって流通して後部壁17の後部壁管25へ流入し、後部壁管25を上方から下方へ流通する。
【0036】
後部伝熱部12の幅方向の両側の一対の側部壁18は、幅方向と交叉する水壁13であって、上下方向に延びる伝熱管14(図示省略)を有し、後部伝熱部12の幅方向両側を区画する。一対の側部壁18の上端は、天井壁7よりも上方に配置される。一対の側部壁18の伝熱管14の上端は、一対の側部壁18の上方で前後方向に延びる一対の側部壁入口管寄せ24に接続される。一対の側部壁入口管寄せ24は、複数の連絡管9によって前側天井壁出口管寄せ20に接続される。前側天井壁出口管寄せ20から一対の側部壁18側へ分岐された蒸気は、連絡管9を流通して一対の側部壁入口管寄せ24へ流入し、一対の側部壁入口管寄せ24から一対の側部壁18の伝熱管14を上方から下方へ流通する。なお、図3及び図4では、前側天井壁出口管寄せ20と各側部壁入口管寄せ24とを片側2本(計4本)の連絡管9で接続しているが、これに限定されるものではなく、前側天井壁出口管寄せ20と各側部壁入口管寄せ24とを片側3本以上の連絡管9で接続してもよい。
【0037】
後部伝熱部12の隔壁19は、前後方向と交叉する水壁13であって、上下方向に延びる隔壁管(後部伝熱部隔壁管)26(伝熱管14)を有し、後部伝熱部12の内部空間27を前後に仕切る。隔壁管26は、後側天井壁7bの隣接する2つの後側天井壁管22の間のメンブレンバー15に設けられた開口(図示省略)を挿通し、後側天井壁管22は、隣接する2つの隔壁管26の間を挿通する。隔壁管26と後側天井壁管22とは、互いに幅方向に離間した状態で交差する。隔壁19の上端側は、後側天井壁7bよりも上方に配置される。隔壁管26の上端側は、後側天井壁管22よりも上方で曲折し、隔壁管26の上流側の端部26aが前下方の前側天井壁出口管寄せ20に接続される。前側天井壁出口管寄せ20から隔壁19側へ分岐された蒸気は、隔壁管26の上流側の端部26aから隔壁管26へ流入し、隔壁管26を上方から下方へ流通する。なお、図5では、隣接する2つの後側天井壁管22の間に隔壁管26が1本挿通する状態が図示されているが、隣接する2つの後側天井壁管22の間を挿通する隔壁管26の数は、複数本であってもよい。
【0038】
前側天井壁出口管寄せ20の外周面20aのうちの下側の略半分の領域は、後部伝熱部12の内部空間27に面して配置される。また、前側天井壁出口管寄せ20の外周面20aのうちの上側の略半分の領域は、天井壁7よりも上方のペントハウスケーシング8(図1参照)内のケーシング内空間28(後部伝熱部12の外部空間)に面して配置される。
【0039】
図1に示すように、ペントハウスケーシング8は、前後方向と交叉する後面部8aを有する。ペントハウスケーシング8の後面部8aは、後側天井壁7bと後部伝熱部12の後部壁17との角部である曲折部29よりも後方に配置され、曲折部29よりも下方から上方へ延びて、後部伝熱部12の上方空間(ケーシング内空間28)を後方から覆う。
【0040】
上記のように構成されたボイラ10では、後側天井壁管22は、後部伝熱部12の上方に配置される前側天井壁出口管寄せ20から後方へ延び、後部伝熱部12の後端で下方へ曲折して後部壁17の後部壁管25の上端に連続する。このように、後側天井壁管22と後部壁管25とが一体的に形成されて連続して延びるので、後側天井壁管22と後部壁管25とが交差しない(交差する位置に配置されない)。このため、天井壁7の伝熱管14と後部壁17の伝熱管14とを交差させて、天井壁7の伝熱管14と後部壁17の伝熱管14との間に両者の接触を回避するための隙間を確保する場合とは異なり、ボイラ10を組み立てる際の伝熱管14の変形による伝熱管14同士の接触を確実に防止することができ、ボイラ10の組み立て作業の作業性が向上する。
【0041】
また、後側天井壁管22と後部壁管25とを連続させて一体的に形成する。このため、天井壁7の伝熱管14と後部壁17の伝熱管14とを交差させる場合に比べて、各伝熱管14の長さを短縮することができ、材料費を抑えて製造コストを低減することができる。
【0042】
また、後側天井壁管22と後部壁管25とを連続させて一体的に形成するので、後部壁17の上端に後部壁入口管寄せを設け、該後部壁入口管寄せと天井壁7の出口管寄せとを連絡管で接続する場合とは異なり、後部壁入口管寄せ及び前記連絡管を設けなくてもよいので、材料費を抑えて製造コストを低減することができる。
【0043】
また、隔壁19の隔壁管26の上流側の端部26aが、前側天井壁出口管寄せ20に接続されるので、隔壁管26の上端部に隔壁管入口管寄せを設けなくてもよく、更に材料費を抑えて製造コストを低減することができる。
【0044】
また、前側天井壁出口管寄せ20が、後部伝熱部12の後部壁17よりも前方に配置されるので、前側天井壁出口管寄せ20が後部伝熱部12の後部壁17よりも後方に配置される場合に比べて、前側天井壁出口管寄せ20から前側へ向かって延びる連絡管9(前部壁16の前部壁入口管寄せ23との連絡管9)の長さを短縮することができる。このため、材料費を抑えて製造コストを低減することができる。
【0045】
従って、本実施形態によれば、ボイラ10を組み立てる際の作業性が向上し、且つ製造コストを低減することができる。
【0046】
また、前側天井壁管21を流通した蒸気は、前側天井壁出口管寄せ20に集められてから、後側天井壁管22へ分配され、後側天井壁管22から後部壁管25へ流入する。このように、蒸気は、管寄せ(本実施形態では、前側天井壁出口管寄せ20)に集められてから後側天井壁管22を介して後部壁管25へ流入するので、後部壁管25の上流側の端部に管寄せ(後壁入口管寄せ)を設け、該管寄せに蒸気を集めてから後部壁管25へ流入させる場合と同様に、管寄せ(本実施形態では、前側天井壁出口管寄せ20)によって蒸気を良好に後部壁管25側へ分配することができる。
【0047】
また、後部伝熱部12の上方を区画する後側天井壁管22と後部伝熱部12の後方を区画する後部壁管25とが連続するので、例えば、後側天井壁管22と後部壁管25との間に、後部伝熱部12の外部に配置される管寄せや連絡管などが設けられる場合に比べて、後側天井壁管22から後部壁管25へ流通する蒸気の温度低下を抑制することができる。
【0048】
また、後側天井壁管22と後部壁管25とが交差しないので、従来技術のように交差部分から炉内ガスが炉外に漏出しないように、耐火材やケーシング等で当該交差部分周辺をカバーするなど、ガスシールを確実するための追加の部材および施工が不要となる。
【0049】
また、天井壁7の下流側の端部を後部伝熱部12の後部壁17よりも後方に配置する場合とは異なり、後方への天井壁7の突出を抑えることができるので、その分だけペントハウスケーシング8の後面部8aの位置を前方へ配置してボイラ10のサイズ(大きさ)を小さく抑えることができる。
【0050】
なお、本実施形態では、前側天井壁出口管寄せ20を、後部伝熱部12の前部壁16よりも後方、且つ隔壁19よりも前方に配置したが、前側天井壁出口管寄せ20を配置する位置は、これに限定されるものではない。例えば、図6に示すように、前側天井壁出口管寄せ20を、隔壁19よりも後方、且つ後部壁17よりも前方に配置してもよい。この場合、隔壁19の上方に幅方向に延びる隔壁入口管寄せ30を設け、隔壁管26と隔壁入口管寄せ30とを接続し、隔壁入口管寄せ30と前側天井壁出口管寄せ20とを連絡管9で接続してもよい。この場合であっても、後側天井壁管22は、前側天井壁出口管寄せ20から後方へ延び、後部伝熱部12の後端で下方へ曲折して後部壁17の後部壁管25の上端に連続するので、後側天井壁管22と後部壁管25とを連続させて一体的に形成することができ、上述したように、ボイラ10を組み立てる際の作業性が向上し、且つ製造コストを低減することができる。
【0051】
また、本実施形態では、前側天井壁出口管寄せ20の外周面20aのうちの下側の略半分の領域を、後部伝熱部12の内部空間27に面するように配置し、上側の略半分の領域を、ペントハウスケーシング8内のケーシング内空間28に面するように配置したが、これに限定されるものではなく、前側天井壁出口管寄せ20全体をペントハウスケーシング8内のケーシング内空間28に配置してもよい。
【0052】
また、図7に示すように、大径の前側天井壁管21と、前側天井壁管21よりも小径の後側天井壁管22とを前側天井壁出口管寄せ20に接続してもよい。前側天井壁出口管寄せ20と前側天井壁管21との接続部である前側天井壁管21の下流側の端部21bの外径r1は、前側天井壁出口管寄せ20と後側天井壁管22との接続部である後側天井壁管22の上流側の端部22aの外径r2よりも大きい(r1>r2)。このような構成では、ガス温度の高い缶前側の前側天井壁管21の外径r1が大きい(太い)ので、隣接する管同士の隙間に形成されるメンブレンバー15の幅を細くして、メンブレンバー15の損傷を防止することができる。また、ガス温度の低下する缶後側の後側天井壁管22の外径r2が小さい(細い)ので、後側天井壁管22としての使用物量(質量)を低減することができる。また、この場合、図7に示すように、前側天井壁出口管寄せ20の下面から下方へ延びて隔壁19の隔壁管26へ接続されるドレン抜き管31を設けてもよい。このような構成では、大径の前側天井壁管21と小径の後側天井壁管22との間に前側天井壁出口管寄せ20を配置するので、ドレンを前側天井壁出口管寄せ20に集めることができる。そして、前側天井壁出口管寄せ20に集められたドレンを、ドレン抜き管31を通じて隔壁19の隔壁管26へ排出することができる。このため、例えば、前側天井壁出口管寄せ20を設けることなく、大径の前側天井壁管21と小径の後側天井壁管22とを直接的に接続した場合とは異なり、大径の前側天井壁管21と小径の後側天井壁管22との接続部分で発生し易いドレンの滞留を防止することができる。
【0053】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0054】
7:天井壁
10:ボイラ
11:火炉
12:後部伝熱部
17:後部壁(後壁)
19:隔壁
20:前側天井壁出口管寄せ
21:前側天井壁管
21b:前側天井壁管の下流側の端部
22:後側天井壁管
25:後部壁管(後部伝熱部後壁管)
26:隔壁管(後部伝熱部隔壁管)
26a:隔壁管の上流側の端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7