特許第6871836号(P6871836)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本航空電子工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6871836-容量検出装置、抵抗検出装置 図000008
  • 特許6871836-容量検出装置、抵抗検出装置 図000009
  • 特許6871836-容量検出装置、抵抗検出装置 図000010
  • 特許6871836-容量検出装置、抵抗検出装置 図000011
  • 特許6871836-容量検出装置、抵抗検出装置 図000012
  • 特許6871836-容量検出装置、抵抗検出装置 図000013
  • 特許6871836-容量検出装置、抵抗検出装置 図000014
  • 特許6871836-容量検出装置、抵抗検出装置 図000015
  • 特許6871836-容量検出装置、抵抗検出装置 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871836
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】容量検出装置、抵抗検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/26 20060101AFI20210426BHJP
   G01R 27/02 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   G01R27/26 C
   G01R27/02 R
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-190629(P2017-190629)
(22)【出願日】2017年9月29日
(65)【公開番号】特開2019-66268(P2019-66268A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2020年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】市川 真太郎
【審査官】 永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−214923(JP,A)
【文献】 特開2012−181143(JP,A)
【文献】 特開平9−243397(JP,A)
【文献】 米国特許第5777482(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/00
G01R 29/00
G01R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理量の変化によって静電容量の差が変化する第1容量センサと第2容量センサの静電容量の差を検出する容量検出装置であって、
発振信号を生成する発振部と、
前記第1容量センサを用いて前記発振信号を微分した第1微分信号を生成する第1微分部と、
前記第2容量センサを用いて前記発振信号を微分した第2微分信号を生成する第2微分部と、
前記第1微分信号の絶対値と前記第2微分信号の絶対値との差に対応した差動増幅信号を生成する差動増幅部と、
積分制御信号とサンプルホールド制御信号を生成する制御部と
前記差動増幅信号を積分した積分信号を生成し、前記積分信号を前記積分制御信号にしたがってリセットする積分部と、
前記積分信号の値を前記サンプルホールド制御信号に従って保持するサンプルホールド部と、
を備え、
前記サンプルホールド制御信号は、前記発振信号の複数周期ごとに前記積分信号の値を保持するように前記サンプルホールド部を制御する信号であり、前記積分制御信号は、積分信号の値を保持した後に前記積分信号をリセットするように前記積分部を制御する信号である
ことを特徴とする容量検出装置。
【請求項2】
物理量の変化によって抵抗の差が変化する第1抵抗センサと第2抵抗センサの抵抗の差を検出する抵抗検出装置であって、
発振信号を生成する発振部と、
前記第1抵抗センサを用いて前記発振信号を微分した第1微分信号を生成する第1微分部と、
前記第2抵抗センサを用いて前記発振信号を微分した第2微分信号を生成する第2微分部と、
前記第1微分信号の絶対値と前記第2微分信号の絶対値との差に対応した差動増幅信号を生成する差動増幅部と、
積分制御信号とサンプルホールド制御信号を生成する制御部と
前記差動増幅信号を積分した積分信号を生成し、前記積分信号を前記積分制御信号にしたがってリセットする積分部と、
前記積分信号の値を前記サンプルホールド制御信号に従って保持するサンプルホールド部と、
を備え、
前記サンプルホールド制御信号は、前記発振信号の複数周期ごとに前記積分信号の値を保持するように前記サンプルホールド部を制御する信号であり、前記積分制御信号は、積分信号の値を保持した後に前記積分信号をリセットするように前記積分部を制御する信号である
ことを特徴とする抵抗検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量の変化によって静電容量の差が変化する第1容量センサと第2容量センサの静電容量の差を検出する容量検出装置、および物理量の変化によって抵抗の差が変化する第1抵抗センサと第2抵抗センサの抵抗の差を検出する抵抗検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の容量検出装置と抵抗検出装置が、物理量の変化によって生じた静電容量または抵抗の差を検出する技術として知られている。そして、特許文献1の容量検出装置と抵抗検出装置は、アナログスイッチのチャージインジェクションの変動によって生じるノイズを低減し、検出精度を高めている。図6に特許文献1の図8に示された容量検出装置の構成を示す。図7に特許文献1の図9に示された第1微分部、第2微分部、第1積分部、第2積分部の具体的な構成例を示す。図8に特許文献1の図10に示されたタイミングチャートを示す。
【0003】
特許文献1の容量検出装置200は、物理量の変化によって静電容量の差が変化する第1容量センサ121aと第2容量センサ121bの静電容量の差を検出する。なお、以下では第1容量センサ121aと第2容量センサ121bの静電容量が逆に変化する例を示す。容量検出装置200は、発振部110、第1微分部120a、第2微分部120b、第1積分部230a、第2積分部230b、差動増幅部240、サンプルホールド部150、制御部280、フィルタ部190を備える。発振部110は、発振信号を生成する。
【0004】
第1微分部120aは、第1容量センサ121aを用いて発振信号を微分した第1微分信号を生成する。例えば、第1容量センサ121aと固定抵抗122aを用いて微分回路を形成すればよい。図7の第1微分部120aの場合、発振信号が矩形波であり電圧がVボルト変化した場合ならば、Q点での電圧は、
【0005】
【数1】
【0006】
のようになる。ただし、Vは発振信号の電圧、Cは第1容量センサ121aの静電容量、Rは固定抵抗122aの抵抗、tは発振信号の電圧が変化してからの時間である。第2微分部120bは、第2容量センサ121bを用いて発振信号を微分した第2微分信号を生成する。例えば、第2容量センサ121bと固定抵抗122bを用いて微分回路を形成すればよい。図7の第2微分部120bの場合、発振信号が矩形波であり電圧がVボルト変化した場合ならば、Q点での電圧は、
【0007】
【数2】
【0008】
のようになる。ただし、Vは発振信号の電圧、Cは第2容量センサ121bの静電容量、Rは固定抵抗122bの抵抗、tは発振信号の電圧が変化してからの時間である。固定抵抗122aと122bの抵抗を同じにしているので、静電容量が大きいほど幅の広い信号が出力される。例えば、電圧がVe−1まで減衰する時間は、t=RCまたはt=RCである。図8の例では、第1容量センサの静電容量Cの方が第2容量センサの静電容量Cよりも大きい場合を示している。したがって、第1微分信号の方が第2微分信号よりも幅が広い。
【0009】
第1積分部230aは、少なくともあらかじめ定めた位相のときに第1微分信号から第2微分信号を引いた値に対応した信号となる第1積分信号を生成する。なお、あらかじめ定めた位相とは、発振信号の1周期ごとにどこかのタイミングという意味である。また、第1積分部230aは、第1積分信号を積分制御信号にしたがってリセットする。第1積分部230aは、例えば、ダイオード131、132、抵抗133、オペアンプ134、コンデンサ135、アナログスイッチ136を用いて図7のように構成すればよい。図7の積分部230aの場合、ダイオード131は、第1微分信号のうち負の電圧となる部分のみをオペアンプ134側に伝達する。ダイオード132は、第2微分信号のうち正の電圧となる部分のみをオペアンプ134側に伝達する。したがって、S点での電圧は図8のように、発振信号の半周期分は第1微分信号となり、残りの半周期分は第2微分信号となり、正負は反対となる。
【0010】
第2積分部230bは、少なくとも第1積分部230aと同じタイミングのときに第2微分信号から第1微分信号を引いた値に対応した信号となる第2積分信号を生成する。また、第2積分部230bは、第2積分信号を積分制御信号にしたがってリセットする。第2積分部230bは、例えば、ダイオード231、232、抵抗133、オペアンプ134、コンデンサ135、アナログスイッチ136を用いて図7のように構成すればよい。図7の積分部230bの場合、ダイオード231は、第1微分信号のうち正の電圧となる部分のみをオペアンプ134側に伝達する。ダイオード232は、第2微分信号のうち負の電圧となる部分のみをオペアンプ134側に伝達する。したがって、S点での電圧は図8のように、発振信号の半周期分は第2微分信号となり、残りの半周期分は第1微分信号となり、正負は反対となる。抵抗133、オペアンプ134、コンデンサ135、アナログスイッチ136の部分は第1積分部230aと同じである。
【0011】
ダイオード131、132とダイオード231、232の向きが逆になっていることから、第1積分部230aのS点に第1微分信号が伝達されているときは第2積分部230bのS点には第2微分信号が伝達され、S点に第2微分信号が伝達されているときはS点には第1微分信号が伝達される。差動増幅部240は、第1積分信号と第2積分信号との差に対応した積分信号を生成する。
【0012】
サンプルホールド部150は、積分信号の値をサンプルホールド制御信号に従って保持する。なお、保持のタイミングは、第1積分信号が第1微分信号から第2微分信号を引いた値に対応した信号となるタイミング(図8の場合は、積分を開始したときから1周期の整数倍のタイミング、言い換えると、積分を開始したときと同じ位相のとき)とすればよい。
【0013】
制御部280は、発振信号の複数周期ごとに積分信号の値を保持するサンプルホールド制御信号を生成し、積分信号の値を保持した後に積分信号をリセットする積分制御信号を生成する。図8の例では発振信号の4周期分を積分しており、サンプルホールド制御信号によって4周期分を積分したところで、サンプルホールド部150が積分信号の値を保持している。そして、積分制御信号が第1積分部230aと第2積分部230bのアナログスイッチ136をON状態にし、コンデンサ135の電荷を放電することで、第1積分信号と第2積分信号がリセットされ、積分信号もリセットされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2011−214923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、さらなる検出精度の向上が求められており、特に、静電容量または抵抗の差がほとんどないときの検出精度(感度限界)の向上が求められている。
【0016】
本発明では、容量検出装置と抵抗検出装置の感度限界に影響を与えている原因を分析し、その原因に応じた対策を施すことで容量検出装置と抵抗検出装置の高精度化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の容量検出装置は、物理量の変化によって静電容量の差が変化する第1容量センサと第2容量センサの静電容量の差を検出する。本発明の抵抗検出装置は、物理量の変化によって抵抗の差が変化する第1抵抗センサと第2抵抗センサの抵抗の差を検出する。本発明の容量検出装置と抵抗検出装置は、発振部、第1微分部、第2微分部、差動増幅部、制御部、積分部、サンプルホールド部を備える。第1微分部は、第1容量センサまたは第1抵抗センサを用いて発振信号を微分した第1微分信号を生成する。第2微分部は、第2容量センサまたは第2抵抗センサを用いて発振信号を微分した第2微分信号を生成する。差動増幅部は、第1微分信号の絶対値と第2微分信号の絶対値との差に対応した差動増幅信号を生成する。制御部は、積分制御信号とサンプルホールド制御信号を生成する。積分部は、差動増幅信号を積分した積分信号を生成し、積分信号を積分制御信号にしたがってリセットする。サンプルホールド部は、積分信号の値をサンプルホールド制御信号に従って保持する。サンプルホールド制御信号は、発振信号の複数周期ごとに積分信号の値を保持するようにサンプルホールド部を制御する信号である。積分制御信号は、積分信号の値を保持した後に積分信号をリセットするように積分部を制御する信号である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の容量検出装置と抵抗検出装置によれば、第1微分信号の絶対値と第2微分信号の絶対値との差に対応した差動増幅信号を積分するので、静電容量または抵抗に差がほとんどないときの差動増幅信号と積分信号を常にほとんど0にできる。つまり、静電容量または抵抗に差がほとんどないときは、差動増幅部と積分部が有するオペアンプの出力を常にほとんど0にできるので、オペアンプ内に使用されているトランジスタのPN接合に流れる電流をほとんど0にできる。よって、PN接合に流れる電流の1/2乗に比例して生じるショットノイズを低減できる。よって、容量検出装置と抵抗検出装置を高精度化でき、特に、静電容量または抵抗の差がほとんどないときの検出精度(感度限界)を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の容量検出装置と抵抗検出装置の機能構成例を示す図。
図2】本発明の容量検出装置の第1微分部、第2微分部、差動増幅部、積分部の具体的な構成例を示す図。
図3】静電容量または抵抗に差がある場合の各部での信号の様子を示すタイミングチャートを示す図。
図4】静電容量または抵抗に差がない場合の各部での信号の様子を示すタイミングチャートを示す図。
図5】本発明の抵抗検出装置の第1微分部、第2微分部、差動増幅部、積分部の具体的な構成例を示す図。
図6】特許文献1の図8に示された容量検出装置の構成を示す図。
図7】特許文献1の図9に示された第1微分部、第2微分部、第1積分部、第2積分部の具体的な構成例を示す図。
図8】特許文献1の図10に示されたタイミングチャートを示す図。
図9】特許文献1の容量検出装置200の第1容量センサ121aと第2容量センサ121bの静電容量に差がない場合のタイミングチャートを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【実施例1】
【0021】
<分析>
まず、特許文献1の容量検出装置200の感度限界に影響を与えている原因について分析する。図9に容量検出装置200の第1容量センサ121aと第2容量センサ121bの静電容量に差がない(同じ)場合のタイミングチャートを示す。静電容量が同じなので、第1積分信号、第2積分信号は1周期ごとに0(ゼロ)になるが、周期の途中では0以外の値となっている。つまり、第1積分部230aと第2積分部230bが有するオペアンプ134が0以外の出力になるので、オペアンプ134内のトランジスタのPN接合に電流が流れ、第1積分信号と第2積分信号にショットノイズが含まれることになる。差動増幅部240は、第1積分信号と第2積分信号との差に対応した積分信号を生成するので、積分信号内の信号成分は0になるが、ノイズ成分であるショットノイズが残ってしまう。このように、第1容量センサ121aと第2容量センサ121bの静電容量が同じときの積分信号の信号成分は0だが、第1積分部230aと第2積分部230bで生じたショットノイズが残るため、SN比が非常に悪くなり、感度限界に影響を与えていたと考えられる。
【0022】
<構成>
図1に本発明の容量検出装置の機能構成例を、図2に本発明の容量検出装置の第1微分部、第2微分部、差動増幅部、積分部の具体的な構成例を示す。図3は静電容量に差がある場合の各部での信号の様子を示すタイミングチャート、図4は静電容量に差がない場合の各部での信号の様子を示すタイミングチャートである。なお、ここでは第1容量センサ121aと第2容量センサ121bの静電容量が逆に変化する例を示すが、必ずしも逆に変化する必要は無い。物理量の変化によって第1容量センサ121aと第2容量センサ121bの静電容量の差が変化すればよい。容量検出装置500は、物理量の変化によって静電容量の差が変化する第1容量センサと第2容量センサの静電容量の差を検出する。容量検出装置500は、発振部110、第1微分部120a、第2微分部120b、差動増幅部540、積分部530、サンプルホールド部150、制御部280、フィルタ部190を備える。なお、発振部110、第1微分部120a、第2微分部120b、サンプルホールド部150、制御部280、フィルタ部190は、特許文献1の容量検出装置200と同じでよいが、本発明の構成の一部なので再度説明する。発振部110は、発振信号を生成する。例えば、矩形波を生成すればよいが、発振信号を矩形波に限定する必要は無い。
【0023】
第1微分部120aは、第1容量センサ121aを用いて発振信号を微分した第1微分信号を生成する。例えば、第1容量センサ121aと固定抵抗122aを用いて微分回路を形成すればよい。図2の第1微分部120aの場合、発振信号が矩形波であり電圧がVボルト変化した場合ならば、Q点での電圧は、
【0024】
【数3】
【0025】
のようになる。ただし、Vは発振信号の電圧、Cは第1容量センサ121aの静電容量、Rは固定抵抗122aの抵抗、tは発振信号の電圧が変化してからの時間である。
【0026】
第2微分部120bは、第2容量センサ121bを用いて発振信号を微分した第2微分信号を生成する。例えば、第2容量センサ121bと固定抵抗122bを用いて微分回路を形成すればよい。図2の第2微分部120bの場合、発振信号が矩形波であり電圧がVボルト変化した場合ならば、Q点での電圧は、
【0027】
【数4】
【0028】
のようになる。ただし、Vは発振信号の電圧、Cは第2容量センサ121bの静電容量、Rは固定抵抗122bの抵抗、tは発振信号の電圧が変化してからの時間である。固定抵抗122aと122bの抵抗を同じにしているので、静電容量が大きいほど幅の広い信号が出力される。例えば、電圧がVe−1まで減衰する時間は、t=RCまたはt=RCである。図3の例では、第1容量センサの静電容量Cの方が第2容量センサの静電容量Cよりも大きい場合を示している。したがって、第1微分信号の方が第2微分信号よりも幅が広い。
【0029】
差動増幅部540は、第1微分信号の絶対値と第2微分信号の絶対値との差に対応した差動増幅信号を生成する。差動増幅部540は、例えば、ダイオード541、542、641、642、抵抗543、544、643、644、オペアンプ545を用いて図2のように構成すればよい。図2の差動増幅部540の場合、ダイオード541、542、641、642は整流回路の役目を果たしている。具体的には、第1微分信号と第2微分信号が正のときは、S点が第2微分信号の電圧、S点が第1微分信号の電圧となり、オペアンプ545からの出力は、(第1微分信号−第2微分信号)に対応した信号となる。一方、第1微分信号と第2微分信号が負のときは、S点が第1微分信号の電圧、S点が第2微分信号の電圧となり、オペアンプ545からの出力は、(−第1微分信号+第2微分信号)に対応した電圧となる。つまり、差動増幅部540は、(|第1微分信号|−|第2微分信号|)に対応した差動増幅信号を生成する。
【0030】
積分部530は、差動増幅信号を積分した積分信号を生成する。また、積分部530は、積分信号を積分制御信号にしたがってリセットする。積分部530は、例えば、抵抗133、オペアンプ134、コンデンサ135、アナログスイッチ136を用いて図2のように構成すればよい。積分部530が電圧を積分するときは、アナログスイッチ136はOFFの状態であり、コンデンサ135に電荷をためることによって、オペアンプ134の出力側に差動増幅信号の積分値が出力される。図2の回路の場合にはオペアンプ134の出力電圧はオペアンプ545の出力電圧と正負が反対になるので、図3のように正の差動増幅信号が入力されるときは負の積分信号が出力される。
【0031】
サンプルホールド部150は、積分信号の値をサンプルホールド制御信号に従って保持する。なお、保持のタイミングは、積分を開始したときから1周期の整数倍のタイミングとすればよい。フィルタ部190は、スイッチングノイズなどを除去する。なお、図1ではフィルタ部190も具備しているが、フィルタ部190は必要に応じて具備すればよい。
【0032】
制御部280は、サンプルホールド制御信号と積分制御信号を生成する。サンプルホールド制御信号は、発振信号の複数周期ごとに積分信号の値を保持するようにサンプルホールド部150を制御する信号である。積分制御信号は、積分信号の値を保持した後に積分信号をリセットするように積分部530を制御する信号である。図3,4の例では発振信号の4周期分を積分しており、サンプルホールド制御信号によって4周期分を積分したところで、サンプルホールド部150が積分信号の値を保持している。そして、積分制御信号が積分部530のアナログスイッチ136をON状態にし、コンデンサ135の電荷を放電することで、積分信号がリセットされる。なお、この例では4周期分ごとに積分信号の値を保持するサンプルホールド制御信号を生成したが、他の複数周期でもよい。複数周期分を積分することにより積分信号の値が大きくなるので、積分信号に対するアナログスイッチ136で生じるチャージインジェクションの変動の割合を小さくできる。したがって、容量検出装置500は、特許文献1の容量検出装置200と同じようにアナログスイッチ136で生じるチャージインジェクションの変動によるノイズを低減できる。
【0033】
さらに、容量検出装置500は、第1微分信号の絶対値と第2微分信号の絶対値との差に対応した差動増幅信号を積分するので、静電容量に差がほとんどないときの差動増幅信号と積分信号を常にほとんど0にできる。つまり、静電容量に差がほとんどないときは、差動増幅部540と積分部530が有するオペアンプ545、134の出力を常にほとんど0にできるので、オペアンプ内に使用されているトランジスタのPN接合に流れる電流をほとんど0にできる。よって、PN接合に流れる電流の1/2乗に比例して生じるショットノイズを低減できる。よって、容量検出装置500は特許文献1の容量検出装置よりも精度を向上でき、特に、静電容量の差がほとんどないときの検出精度(感度限界)を向上できる。
【0034】
[変形例]
実施例1では、物理量の変化によって静電容量の差が変化する場合を説明した。しかし、図2の第1微分部120a、第2微分部120bの抵抗の差を変化させても、同じように物理量の変化を検出できる。そこで、本変形例では、物理量の変化によって抵抗の差が変化する第1抵抗センサと第2抵抗センサの抵抗の差を検出する抵抗検出装置について説明する。なお、本変形例では第1抵抗センサと第2抵抗センサの抵抗は逆に変化する例を示す。本変形例の抵抗検出装置の機能構成を図1に、抵抗に差がある場合のタイミングチャートを図3に、抵抗に差がない場合のタイミングチャートを図4に示す。また、第1微分部、第2微分部、積分部の具体的な構成例を図5に示す。抵抗検出装置600も、発振部110、第1微分部120a、第2微分部120b、差動増幅部540、積分部530、サンプルホールド部150、制御部280、フィルタ部190を備える。実施例1の容量検出装置500との違いは、第1微分部320aと第2微分部320bだけであり、その他の構成は容量検出装置500と同じである。
【0035】
第1微分部320aが、第1抵抗センサ322aを用いて発振信号を微分した第1微分信号を生成する。例えば、第1抵抗センサ322aと静電容量が固定されたコンデンサ321aを用いて微分回路を形成すればよい。図5の第1微分部320aの場合、発振信号が矩形波であり電圧がVボルト変化した場合ならば、Q点での電圧は、
【0036】
【数5】
【0037】
のようになる。ただし、Vは発振信号の電圧、Cはコンデンサ321aの静電容量、Rは第1抵抗センサ322aの抵抗、tは発振信号の電圧が変化してからの時間である。
【0038】
第2微分部320bが、第2抵抗センサ322bを用いて発振信号を微分した第2微分信号を生成する。例えば、第2抵抗センサ322bと静電容量が固定されたコンデンサ321bを用いて微分回路を形成すればよい。図5の第2微分部320bの場合、発振信号が矩形波であり電圧がVボルト変化した場合ならば、Q点での電圧は、
【0039】
【数6】
【0040】
のようになる。ただし、Vは発振信号の電圧、Cはコンデンサ321bの静電容量、Rは第2抵抗センサ322bの抵抗、tは発振信号の電圧が変化してからの時間である。コンデンサ321aと321bの静電容量を同じにしているので、抵抗が大きいほど幅の広い信号が出力される。例えば、電圧がVe−1まで減衰する時間は、t=RCまたはt=RCである。図3の例では、第1抵抗センサの抵抗Rの方が第2抵抗センサの抵抗Rよりも大きい場合に相当する。したがって、第1微分信号の方が第2微分信号よりも幅が広い。
【0041】
このように本変形例の抵抗検出装置と実施例1の容量検出装置の相違点は、発振信号を微分する微分回路の時定数を変化させるのが、抵抗か静電容量かという点だけである。したがって、実施例1と同じように抵抗検出装置600も特許文献1の抵抗検出装置よりも精度を向上でき、特に、抵抗の差がほとんどないときの検出精度(感度限界)を向上できる。
【符号の説明】
【0042】
110 発振部 120a,320a 第1微分部
120b,320b 第2微分部 121a 第1容量センサ
121b 第2容量センサ 122a,122b 固定抵抗
131,132,231,232,541,542,641,642 ダイオード
133,543,544,643,644 抵抗
134,545 オペアンプ 135 コンデンサ
136 アナログスイッチ 150 サンプルホールド部
190 フィルタ部 200,500 容量検出装置
230a 第1積分部 230b 第2積分部
240 差動増幅部 280 制御部
321a,321b コンデンサ 322a 第1抵抗センサ
322b 第2抵抗センサ 530 積分部
540 差動増幅部 600 抵抗検出装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9