特許第6871841号(P6871841)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6871841粒子線治療システム、粒子線治療システムの制御装置、及び粒子線治療システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871841
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】粒子線治療システム、粒子線治療システムの制御装置、及び粒子線治療システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   A61N5/10 S
   A61N5/10 H
【請求項の数】15
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2017-218541(P2017-218541)
(22)【出願日】2017年11月13日
(65)【公開番号】特開2019-88414(P2019-88414A)
(43)【公開日】2019年6月13日
【審査請求日】2020年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【弁理士】
【氏名又は名称】新畠 弘之
(72)【発明者】
【氏名】長本 義史
(72)【発明者】
【氏名】金井 芳治
【審査官】 高松 大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−237687(JP,A)
【文献】 特開2015−159060(JP,A)
【文献】 特開2009−219696(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0239329(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/065163(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104023791(CN,A)
【文献】 特開平06−019520(JP,A)
【文献】 特許第5042082(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子線を加速する加速装置と、
前記加速された粒子線を輸送する輸送装置と、
前記輸送された粒子線を患者に照射する照射装置と、
前記加速装置、前記輸送装置、及び前記照射装置の内の少なくとも一つに電力を供給する電源と、
前記加速装置、前記輸送装置、前記照射装置及び前記電源の内の少なくともいずれかを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記照射装置が照射する粒子線の照射状態に影響を与える可能性のある外部事象の情報を取得する取得部と、
前記外部事象の情報に基づき、前記粒子線の照射状態に影響を与える可能性のレベルに応じて、前記加速装置、前記輸送装置、前記照射装置及び前記電源の内の少なくともいずれかの制御状態を変更して、前記患者の治療計画が終了するまで前記粒子線の照射状態を少なくとも維持させる制御モードを有する制御部と、
を有する、粒子線治療システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記維持させる制御モードでは、前記電源からの電力の供給状態を制御する、請求項1に記載の粒子線治療システム。
【請求項3】
電力系統から供給された電力を供給する第1電源と、
発電した電力、及び蓄電された電力の内の少なくともいずれかを供給する第2電源と、を有し、
前記制御部は、前記維持させる制御モードでは、前記第1電源から前記第2電源に切り替える、請求項2に記載の粒子線治療システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記情報に基づき、前記照射装置が照射する粒子線の停止条件を変更させる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の粒子線治療システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記情報に基づき、前記照射装置が照射する粒子線の停止タイミングを変更させる、請求項4に記載の粒子線治療システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記外部事象、前記外部事象の検索条件、及び判定条件の内の少なくともいずれかを設定する設定部を更に有し、
前記取得部は、前記設定部の設定に基づき、ネットワークを介して前記外部事象に関する情報を取得しており、
前記制御部は、前記設定部の設定を用いて前記情報が該当する制御レベルを判定する判定部を有しており、前記制御レベルに応じて制御処理を変更させる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の粒子線治療システム。
【請求項7】
前記制御部は、
前記制御レベルが、第1レベルである場合に、前記電源からの電力供給を停止させ、
前記制御レベルが、前記粒子線の照射状態に影響を与え可能性が前記第1レベルよりも低いレベルであり、且つ前記粒子線の照射を継続する第3レベルである場合に、前記電源が有する第1電源から第2電源に切り替える、請求項6に記載の粒子線治療システム。
【請求項8】
前記制御部は、
前記制御レベルが、第1レベルである場合に、前記照射装置が照射する粒子線を即時に停止させ、
前記制御レベルが、前記粒子線の照射状態に影響を与え可能性が前記第1レベルよりも低い第2レベルである場合に、前記照射装置が照射する粒子線を所定の位置まで照射させて停止させる、請求項6に記載の粒子線治療システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記制御レベルに応じて、前記照射装置が照射する粒子線の照射状態に関する情報の送信を停止する送信部を更に有する、請求項6乃至8のいずれか一項に記載の粒子線治療システム。
【請求項10】
前記制御装置は、ネットワークを介して他の粒子線治療システムの停止情報を受信する停止情報受信部を更に備え、前記制御装置は、前記停止情報に基づき、前記加速装置、前記輸送装置、前記照射装置及び前記電源の内の少なくともいずれかに対する制御を行う、請求項6乃至9のいずれか一項に記載の粒子線治療システム。
【請求項11】
前記設定部は、前記停止情報受信部が受信した受信情報に基づき、前記外部事象の検索条件、及び前記判定条件を設定する、請求項10に記載の粒子線治療システム。
【請求項12】
粒子線を加速する加速装置と、前記加速された粒子線を輸送する輸送装置と、前記輸送された粒子線を患者に照射する照射装置と、前記加速装置、前記輸送装置、及び前記照射装置の内の少なくとも一つに電力を供給する電源と、を備える粒子線治療システムの制御装置であって、
前記照射装置が照射する粒子線の照射状態に影響を与える可能性のある外部事象の情報を取得する取得部と、
前記外部事象の情報に基づき、前記粒子線の照射状態に影響を与える可能性のレベルに応じて、前記加速装置、前記輸送装置、前記照射装置及び前記電源の内の少なくともいずれかの制御状態を変更して、前記患者の治療計画が終了するまで前記粒子線の照射状態を少なくとも維持させる制御モードを有する制御部と、
を有する、粒子線治療システムの制御装置。
【請求項13】
粒子線を加速する加速装置と、前記加速された粒子線を輸送する輸送装置と、前記輸送された粒子線を患者に照射する照射装置と、前記加速装置、前記輸送装置、及び前記照射装置の内の少なくとも一つに電力を供給する電源と、を備える粒子線治療システムの制御方法であって、
前記照射装置が照射する粒子線の照射状態に影響を与える可能性のある外部事象の情報を取得する工程と、
前記外部事象の情報に基づき、前記粒子線の照射状態に影響を与える可能性のレベルに応じて、前記加速装置、前記輸送装置、前記照射装置及び前記電源の内の少なくともいずれかの制御状態を変更して、前記患者の治療計画が終了するまで前記粒子線の照射状態を少なくとも維持させる工程と、
を有する、粒子線治療システムの制御方法。
【請求項14】
粒子線を加速する加速装置と、
前記加速された粒子線を輸送する輸送装置と、
前記輸送された粒子線を患者に照射する照射装置と、
前記加速装置、前記輸送装置、及び前記照射装置の内の少なくとも一つに電力を供給する電源と、
前記加速装置、前記輸送装置、前記照射装置、及び前記電源の内の少なくともいずれかを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
検索対象となる事象、前記事象の検索条件、及び前記事象の判定条件のうち少なくともいずれかを設定する設定部と、
前記設定部の設定に基づき、ネットワークを介して前記事象に関する情報を取得する取得部と、
前記設定部の設定を用いて、前記情報が該当する制御レベルに応じて、前記加速装置、前記輸送装置、前記照射装置、及び前記電源の内の少なくともいずれかの制御状態を変更して、前記患者の治療計画が終了するまで前記粒子線の照射状態を少なくとも維持させる制御モードを有する制御部と、
を有する、粒子線治療システム。
【請求項15】
粒子線を加速する加速装置と、前記加速された粒子線を輸送する輸送装置と、前記輸送された粒子線を患者に照射する照射装置と、前記加速装置、前記輸送装置、及び前記照射装置の内の少なくとも一つに電力を供給する電源と、を備える粒子線治療システムの制御方法であって、
ネットワークを介して他の粒子線治療システムの停止情報を受信する工程と、
前記停止情報が該当する制御レベルに応じて、前記加速装置、前記輸送装置、前記照射装置、及び前記電源の内の少なくともいずれかの制御状態を変更して、前記患者の治療計画が終了するまで前記粒子線の照射状態を少なくとも維持させる工程と、
を有する、粒子線治療システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、粒子線治療システム、粒子線治療システムの制御装置、及び粒子線治療システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子線治療システムでは、照射装置が粒子線を患者の患部に照射することにより、治療が行われている。この粒子線の照射による治療の安全性を維持するため、所定値以上の震度の地震が発生した場合に、一律に粒子線の照射を停止する技術が知られている。
【0003】
ところが、粒子線の照射状態に影響を与える程度は地震の震度毎に異なる。また、停電、台風、洪水、火事などのように地震以外の事象も粒子線の照射状態に影響を与える可能性がある。これらの事象は、事象毎に粒子線の照射状態に影響を与える程度及び要因が異なる。このため、粒子線の照射状態に影響を与える可能性がある事象が発生した場合に、一律に照射装置の照射を停止させると、粒子線治療システムの運用効率を低下させてしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5042082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明が解決しようとする課題は、粒子線の照射に関する装置に関して通常制御と異なる制御を行わせる場合の制御処理を、粒子線の照射状態に影響を与える可能性のある事象に応じて変更可能な粒子線治療システム、粒子線治療システムの制御装置、及び粒子線治療システムの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態による粒子線治療システムは、
粒子線を加速する加速装置と、
前記加速された粒子線を輸送する輸送装置と、
前記輸送された粒子線を患者に照射する照射装置と、
前記加速装置、前記輸送装置、及び前記照射装置の内の少なくとも一つに電力を供給する電源と、
前記加速装置、前記輸送装置、前記照射装置及び前記電源の内の少なくともいずれかを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記照射装置が照射する粒子線の照射状態に影響を与える可能性のある事象の情報を取得する取得部と、
前記取得された前記情報に基づく前記可能性の程度が第1の場合に、前記加速装置、前記輸送装置、前記照射装置及び前記電源の内の少なくともいずれかに対し、第1制御処理を行い、
前記取得された前記情報に基づく前記可能性の程度が前記第1の場合よりも高い場合に、前記加速装置、前記輸送装置、前記照射装置及び前記電源の内の少なくともいずれかに対し、第2制御処理を行う制御部を有する。
【0007】
本実施形態による粒子線治療システムの制御装置は、粒子線を加速する加速装置と、前記加速された粒子線を輸送する輸送装置と、前記輸送された粒子線を患者に照射する照射装置と、を備える粒子線治療システムの制御装置であって、
前記照射装置が照射する粒子線の照射状態に影響を与える可能性のある事象の情報を取得する取得部と、
前記取得された前記情報に基づく前記可能性の程度が第1の場合に、前記加速装置、前記輸送装置、前記照射装置及び前記電源の内の少なくともいずれかに対し、第1制御処理を行い、
前記取得された前記情報に基づく前記可能性の程度が前記第1の場合よりも高い場合に、前記加速装置、前記輸送装置、前記照射装置及び前記電源の内の少なくともいずれかに対し行う第2制御処理を前記情報に応じて変更させる制御部と、
を有する。
【0008】
本実施形態による粒子線治療システムの制御方法は、
粒子線を加速する加速装置と、前記加速された粒子線を輸送する輸送装置と、前記輸送された粒子線を患者に照射する照射装置と、を備える粒子線治療システムの制御方法であって、
前記照射装置が照射する粒子線の照射状態に影響を与える可能性のある事象の情報を取得する工程と、
前記情報に基づく前記可能性の程度が第1の場合に、前記加速装置、前記輸送装置、前記照射装置及び前記電源のそれぞれに対し、第1制御処理を行い、
前記情報に基づく前記可能性の程度が前記第1の場合よりも高い場合に、前記加速装置、前記輸送装置、前記照射装置及び前記電源の内の少なくともいずれかに対し行う第2制御処理を前記情報に基づき変更させる工程と、
を有する。
【0009】
本実施形態による粒子線治療システムは、
粒子線を加速する加速装置と、
前記加速された粒子線を輸送する輸送装置と、
前記輸送された粒子線を患者に照射する照射装置と、
前記粒子線治療システムは、前記加速装置、前記輸送装置、及び前記照射装置の内の少なくとも一つに電力を供給する電源と、
前記加速装置、前記輸送装置、前記照射装置及び前記電源の内の少なくともいずれかを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
検索対象となる事象、前記事象の検索条件、及び前記事象の判定条件のうち少なくともいずれかを設定する設定部と、
前記設定部の設定に基づき、ネットワークを介して前記事象に関する情報を取得する取得部と、
前記設定部の設定を用いて前記情報が該当する前記制御レベルに応じた制御処理を、前記加速装置、前記輸送装置、前記照射装置、及び前記電源の内の少なくともいずれかに対して行う制御部と、
を有する。
【0010】
本実施形態による粒子線治療システムの制御方法は、
粒子線を加速する加速装置と、前記加速された粒子線を輸送する輸送装置と、前記輸送された粒子線を患者に照射する照射装置と、前記加速装置、前記輸送装置、及び前記照射装置の内の少なくとも一つに電力を供給する電源と、を備える粒子線治療システムの制御方法であって、
ネットワークを介してネットワークを介して他の粒子線治療システムの停止情報を受信する工程と、
前記停止情報が該当する制御レベルに応じた制御処理を前記加速装置、前記輸送装置、前記照射装置、及び前記電源の内の少なくともいずれかに対して行う工程と、
を有する。
【発明の効果】
【0011】
粒子線の照射に関する装置に関して通常制御と異なる制御を行わせる場合の制御処理を、粒子線の照射状態に影響を与える可能性のある事象に応じて変更可能な粒子線治療システム、粒子線治療システムの制御装置、及び粒子線治療システムの制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る粒子線治療システムの概略的な全体構成を示す図。
図2】照射装置及び回転ガントリの配置例を示す斜視図。
図3】照射装置の詳細な構成を示す図。
図4】ラスタースキャニング方式によるスライス上の走査パターンの一例を示す図。
図5】制御装置の構成を示すブロック図。
図6】設定部の詳細な構成を示すブロック図。
図7】検索対象設定用の画面例を示す図。
図8】検索条件設定用の画面例を示す図。
図9】判定条件設定用の画面例を示す図。
図10】重要度設定用の画面例を示す図。
図11】制御部の詳細な構成を示すブロック図。
図12】設定部の設定処理の流れを示すフローチャート。
図13】通常時の制御装置の第1制御処理例を示すフローチャート。
図14】判定部の判定結果に基づく、第2制御処理の変更例を示すフローチャート。
図15】設定された事象と制御装置による制御処理との関係の一部を示す図。
図16】スライス上の走査パターンにおける停止位置を示す図。
図17】ネットワークを介して接続されている複数の治療施設を模式的に示す図。
図18】第2実施形態に係る粒子線治療システムの制御装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る粒子線治療システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る粒子線治療システム1の概略的な全体構成を示す図であり、一部の構成を省略している。この図1に示すように粒子線治療システム1は、炭素イオン等の粒子線を患者900の患部に照射して治療を行うシステムである。より具体的には、この粒子線治療システム1は、加速装置100と、輸送装置200と、照射装置300と、回転ガントリ400と、電源500と、制御装置600と、照射制御監視端末700と、第1表示装置702と、中央制御装置800と、第2表示装置802とを、備えて構成されている。
【0015】
図1は更に、建屋2と、加速装置エリア4と、治療エリア6と、ネットワーク8と、移動床10とを示している。粒子線治療システム1のうち加速装置100と、輸送装置200と、照射装置300と、回転ガントリ400などは粒子線を用いるため、放射線遮蔽の必要性から、コンクリート製の建屋2内に設置されている。より具体的には、建屋2はコンクリート壁に囲まれた中空の空間を有し、建屋2内には、加速装置エリア4及び治療エリア6が更に設置されている。加速装置エリア4は、コンクリート壁に囲まれた中空の空間を有し、加速装置エリア4内には、加速装置100が設置されている。治療エリア6は、コンクリート壁に囲まれた中空の空間を有し、治療エリア6内には、輸送装置200と、照射装置300及び回転ガントリ400が設置されている。これらのコンクリート壁の厚さは例えば約1メートルであり、放射線管理区域となる加速装置エリア4と治療エリア6には外部に開放した窓を設けることはできない。そのため、粒子線治療システム1の治療中は、加速装置エリア4と治療エリア6の内部と加速装置エリア4と治療エリア6の外部とは遮断されている。このように、加速装置エリア4と治療エリア6内の医師、技師、看護師などが治療中に外部の状況を把握することは困難となってしまう。そこで、治療中の加速装置エリア4と治療エリア6内の医師、技師、看護師などは、ネットワーク8を介して外部の情報を取得する。
【0016】
ネットワーク8は、通信回線やケーブルなどを介してコンピュータ同士を接続する。ネットワーク8には、例えば、インターネット、イントラネットなどが含まれる。
【0017】
移動床10は、回転ガントリ400の内部空間に設けられ、回転ガントリ400の回転とは無関係に水平でフラットな床面を維持する。この移動床10を利用して、治療の前後で技師や看護師が患者900にアクセスしたり、緊急時に患者900が治療台から降りたりする。
【0018】
加速装置100は、粒子線を加速する。この加速装置100は、イオン発生源102と、加速器104と、を備えて構成されている。このイオン発生源102は、加速器104に接続されており、生成した炭素イオンや、陽子等の荷電粒子を加速器104に供給する。
【0019】
加速器104は、例えばシンクロトロンであって、イオン発生源102で生成させた荷電粒子を光速の70〜80%程度まで加速させ、粒子線を生成する。すなわち、加速器104は、高周波加速空洞106と、複数の偏向電磁石108と、複数の四極電磁石110と、出射デフレクタ112と、を備えて構成されている。
【0020】
高周波加速空洞106は、高周波加速空洞106内に高周波電圧を印加し、加速器104のダクト内を周回する粒子線を加速する。偏向電磁石108は、粒子線の速度に応じた強度を有する電場を生成し、粒子線を加速器104内の所定軌道に沿って周回させる。また、四極電磁石110が生成する電場は、加速器104内を周回する粒子線を収束させるように作用する。
【0021】
出射デフレクタ112には、輸送装置200のダクトの入口部が接続されている。この出射デフレクタ112は、加速器104が加速した粒子線を輸送装置200のダクト内に出射する。また、出射デフレクタ112は、粒子線の進行方向に対して垂直方向の電場の強度を変更することにより、輸送装置200に粒子線を出射したり、輸送装置200への粒子線の出射を停止したりする。
【0022】
輸送装置200のダクトの出口部には、照射装置300のダクトの入口部が接続されている。これにより、輸送装置200は、加速装置100により加速された粒子線を照射装置300のダクト内に輸送する。輸送装置200は、複数の偏向電磁石202により粒子線の進行方向を偏向し、照射装置300に輸送する。なお、輸送装置200のダクト内及び照射装置300のダクト内は真空に保たれている。
【0023】
照射装置300は、回転ガントリ400に設けられており、輸送装置200により輸送された粒子線を患者900に照射する。粒子線は、患者900の体内を通過する際に運動エネルギを失って停止して、停止位置の近傍にブラッグピークと呼ばれる高エネルギを放出する。このため、粒子線の停止位置を患者900の患部に合わせることで、正常な組織への損傷を抑制しつつ、患部細胞、例えば癌細胞にダメージを与えることが可能となる。なお、照射装置300の詳細な構成は後述する。
【0024】
図2は、照射装置300及び回転ガントリ400の配置例を示す斜視図である。この図2に示すように、回転ガントリ400は、照射装置300の支持体として設けられる回転構造体である。なお、本実施形態では照射装置300のビーム軸方向をZ軸とし、Z軸に直交する方向をX軸とし、Z軸及びX軸に直交する方向をY軸とする。この回転ガントリ400は、全周回転ガントリ400であり、例えば、基礎402に設置された回転駆動部404の回転によって円筒の中心軸(Y軸)の周りを回転する。回転ガントリ400が照射装置300とともに円筒の中心軸の周りを回転することにより、照射装置300のビーム軸の方向を変えることができる。なお、図2は、概略図であり、構成の一部を省略している。
【0025】
図1に示すように、本実施形態に係る電源500は、加速装置100、輸送装置200、照射装置300及び回転ガントリ400に電力を供給する。この電源500は、第1電源502と、第2電源504とを備えて構成されている。
【0026】
第1電源502は、電力系統から供給された電力を加速装置100、輸送装置200、照射装置300及び回転ガントリ400に電力を供給する。第1電源502は、例えば変圧器であり、電力系統から供給された電力の電圧を所定値に変換して供給する。
【0027】
第2電源504は、第1電源502の代替が可能な電源500であり、発電した電力、及び蓄電された電力の内の少なくともいずれかを加速装置100、輸送装置200、照射装置300及び回転ガントリ400に供給する。この第2電源504は、例えば発電機と蓄電池とを有する。発電機は、機械的エネルギを用いた電磁誘導により発生させた電力を供給する。蓄電池は、電力系統から供給された電力、又は発電機により発電された電力を蓄電し、蓄電した電力を供給する。このように、電力系統の長期的な停電には発電機の発電により第1電源502を代替することが可能であり、発電機の発電が安定するまでの期間は蓄電池からの供給電力により第1電源502を代替することが可能である。なお、第2電源504は、発電機のみで構成してもよく、或いは、蓄電池のみで構成してもよい。また、電源500は、加速装置100、輸送装置200、照射装置300及び回転ガントリ400のそれぞれに対応させた複数の独立した電源500で構成してもよい。このように、電源500は、加速装置100、輸送装置200、照射装置300及び回転ガントリ400の内の少なくとも一つに電力を供給する。
【0028】
本実施形態に係る制御装置600は、加速装置100、輸送装置200、照射装置300、回転ガントリ400、及び電源500を制御する。また、制御装置600は、ネットワーク8を介して中央制御装置800と接続されている。なお、制御装置600の詳細は後述する。
【0029】
照射制御監視端末700は、例えばパーソナルコンピュータであり、加速装置100、輸送装置200、照射装置300、回転ガントリ400、電源500及び制御装置600を操作するとともに、照射装置300が照射する粒子線の状態を監視する端末である。また、照射制御監視端末700は、ネットワーク8を介して中央制御装置800と接続されている。第1表示装置702は、例えばモニタであり、照射制御監視端末700の表示信号に基づき画像を表示する。
【0030】
中央制御装置800は、例えばサーバであり、ネットワーク8を介して粒子線治療システム1の全体を制御可能であるとともに、患者900の治療計画情報を制御装置600に送信する。また、中央制御装置800が有する記憶部は、照射装置300が照射する粒子線の照射状態に関する情報、例えば回転ガントリ400の角度、照射装置300が照射する粒子線の照射位置、照射装置300が照射する粒子線の照射線量などを患者900毎に記憶する。これらの患者900毎に記憶される粒子線の照射状態に関する情報は、記録ファイルと呼ばれる。第2表示装置802は、例えばモニタであり、中央制御装置800の表示信号に基づき画像を表示する。中央制御装置800及び第2表示装置802は、例えば医師が患者900の診察を行う病院内などに設置される。なお、本実施形態では、粒子線による治療を行う建屋2を粒子線治療施設又は治療施設と呼び、粒子線による治療を行う患者900の診察などを行う不図示の建屋を病院と呼ぶこととする。
【0031】
図3は、照射装置300の詳細な構成を示す図である。この図3に示すように、照射装置300は、例えばラスタースキャニング方式、スポットスキャニング方式により患者900の患部を3次元的に照射可能な装置である。すなわち、この照射装置300は、X用電磁石302と、Y用電磁石304と、正線量モニタ306と、副線量モニタ308と、位置モニタ310と、リッジフィルタ312と、レンジシフタ314とを備えて構成されている。なお、本実施形態に係る照射方式はラスタースキャニング方式、及びスポットスキャニング方式のうちのいずれかであるが、これらに限定されずワブラー方式などの他の照射方式を用いてもよい。ワブラー方式では、均一に広げた粒子線をボーラス、及びコリメータを用いて、腫瘍の形状に合わせて照射する。また、加速装置100側で粒子線のエネルギを調整する場合には、レンジシフタ314は設け無くともよい。
【0032】
より具体的には、照射装置300は、患者900の患部902を粒子線の軸と垂直方向(Z軸と垂直方向)にスライスと呼ばれる平板状の単位で分割し、分割したスライスZi、スライスZi+1、スライスZi+2等の各スライス上の2次元格子点を順次走査する。上述のように、本実施形態では照射装置300のビーム軸方向をZ軸とし、Z軸に直交する方向をX軸とし、Z軸及びX軸に直交する方向をY軸とする。
【0033】
図4は、ラスタースキャニング方式によるスライス上の走査パターンの一例を示す図である。図4に示すように、点がスライス(図3)上の2次元格子点を示している。左上の格子点から右下の格子点に到る軌跡パターンに沿って粒子線が走査される。ラスタースキャニング方式では、粒子線は連続的に照射されるが、照射スポット毎に線量の管理がされる。また、ラスタースキャニング方式では、スライス間の移動時には、粒子線の出射を停止する。
【0034】
一方で、スポットスキャニング方式は、照射スポット毎に粒子線がON/OFFされる。すなわち、照射スポット毎に線量の管理がされ、照射スポット間の移動時には、粒子線の出射が停止されている。
【0035】
図3に示すように、X用電磁石302は、輸送装置200(図1)から導入されたダクト内の粒子線をX方向に偏向させる。Y用電磁石304は、輸送装置200から導入されたダクト内の粒子線をY方向に偏向させる。これにより、粒子線は、例えば図4で示した軌跡に沿って、照射方向が切り替えられ、スライス面上を2次元状に走査される。
【0036】
正線量モニタ306は、例えば粒子線の電離作用によって生じた電荷を平行電極で収集する電離箱を有しており、照射する粒子線の線量を計測して、粒子線における線量の情報を有する電気信号を出力する。副線量モニタ308は、正線量モニタ306と同等の構成であり、照射する粒子線の線量を計測して、粒子線の線量の情報を有する電気信号を出力する。
【0037】
位置モニタ310は、粒子線の照射位置を計測する。より具体的には、位置モニタ310は、例えばX方向及びY方向に夫々並列に配列された線状電極を有し、線状電極が出力する電気信号に基づき、粒子線の重心の位置情報を含む信号を出力する。
【0038】
図3に示すように、リッジフィルタ312は、ブラッグピークをビーム軸方向に拡散させるために設けられている。例えば、リッジフィルタ312は、断面が略2等辺三角形のアルミニウム棒状部材を複数並べて構成されている。
【0039】
レンジシフタ314は、粒子線のエネルギを調整し、粒子線がZ軸方向に停止する位置、すなわちスライスの位置を制御する。レンジシフタ314は、例えば複数の厚さのアクリル板から構成されており、これらのアクリル板を組み合わせることによってレンジシフタ314を通過する粒子線のエネルギが調整される。
【0040】
図5は、制御装置600の構成を示すブロック図である。この図5に示すように、制御装置600は、粒子線治療システム1全体を制御する。すなわち、この制御装置600は、設定部602と、取得部604と、制御部606と、第1記憶部608Aと、第2記憶部608Bと、送信部610とを備えて構成されている。
【0041】
なお、本実施形態に係る制御装置600は、例えば、プロセッサにより構成される。ここで、プロセッサという文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit: ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device: SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device: CPLD)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array: FPGA)等の回路を意味する。プロセッサは、第1記憶部608Aに保存されたプログラムを読み出して実行することにより機能を実現する。なお、記第1記憶部608Aにプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成して構わない。また、複数の独立したプロセッサを組み合わせて制御装置600を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
【0042】
設定部602は、ネットワーク8を介して検索する検索対象及び検索条件と、検索対象に設定された重要度に該当するか否かを判定するための判定条件とを設定する。取得部604は、照射装置300が照射する粒子線の照射状態に影響を与える可能性のある事象の情報を取得する。すなわち、本実施形態に係る取得部604は、設定部602により設定された検索対象及び検索条件に基づき、ネットワーク8を介して情報を取得する。
【0043】
制御部606は、取得部604により取得された情報に基づき、加速装置100、輸送装置200、照射装置300、回転ガントリ400及び電源500を制御する。例えば、制御部606は、取得部604により取得された情報に基づく制御レベルに応じて、加速装置100、輸送装置200、照射装置300、回転ガントリ400及び電源500の内の少なくともいずれかに対し、照射装置300が照射する粒子線の停止までの制御処理を変更させる。なお、設定部602及び制御部606の詳細な構成は後述する。
【0044】
記憶部608は、第1記憶部608Aと、第2記憶部608Bと、第3記憶部608Cとを有している。第1記憶部608Aは、制御部606の制御に必要な情報、例えば中央制御装置800から取得した患者900の治療計画情報に基づく粒子線治療システム1の制御情報、及び上述のプログラムを記憶する。この記憶部608Aは、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。
【0045】
第2記憶部608Bは、照射装置300が照射する粒子線の照射状態に関する情報を記憶する。記憶部608Bは、例えば、RAM(Random Access Memory)により実現される。RAMは、SSD(Solid State Drive)と比較し、記憶速度が速く通常処理により適している。
第3記憶部608Cは、制御部606の判定に基づき、第2記憶部608Bに記憶されたデータを記憶する。第3記憶部608Cは、緊急時の安定した記憶領域として、例えば安定性により優れたSSDにより実現される。送信部610は、制御部606の判定に基づき、照射装置300の粒子線の照射状態に関する情報を中央制御装置800などに送信する。
【0046】
図6は、設定部602の詳細な構成を示すブロック図である。この図6に示すように、設定部602は、検索対象設定部612と、検索条件設定部614と、判定条件設定部616と、重要度設定部618とを有している。
【0047】
検索対象設定部612は、検索対象となる事象を設定する。図7は、検索対象設定部612が第1表示装置702に表示させている検索対象設定用の画面例を示す図である。本実施形態では、第1表示装置702などの表示画面の中で、操作者がタッチ操作を行う領域をボタンと呼ぶこととする。この図7に示すように、文字列を囲む四角形620がボタンに対応する。
【0048】
検索対象設定部612は、まず検索対象となる事象を、例えば雷、大雨、洪水、暴風、台風、地震、火事、竜巻、気温、停電、事故、戦争、紛争、震度1、震度2、震度3、震度4、震度5、震度6、震度7などの中から設定する。これらの事象は、照射装置300が照射する粒子線の照射状態に影響を与えうる事象である。すなわち、検索を行う際の検索対象となる事象は、これから発生する事象でもよく、或いは、既に発生した事象でもよい。より具体的には、操作者は、マウスやキーボード等の入力装置を介して、検索対象設定用の画面中のボタン620、例えば「震度4」を選択指示する。「震度4」は震度4の地震を意味する。
【0049】
また、検索対象設定部612は、設定した事象毎に検索地域を加えて設定してもよい。この検索対象設定部612は、例えば世界、アジア、日本、関東、東京、神奈川などの中から検索地域を設定する。より詳細には、操作者は、入力装置を介して、検索対象設定用の画面中のボタン、例えば「東京」を選択指示し、続けて設定ボタン622を選択指示する。これにより、検索対象設定部612は、検索対象となる事象として「震度4」を設定し、検索地域として「東京」を設定する。これにより、「東京」で発生した「震度4」の地震に関する情報が検索対象としてネットワーク8を介して検索される。また、設定された事象のボタンの横には、例えば二重丸が表示される。
【0050】
検索対象設定部612は、任意の事象、及び地域を設定してもよい。さらにまた、検索対象設定部612は、設定した事象毎に複数の検索地域を設定してもよい。例えば、検索対象となる事象として「震度4」を設定し、検索地域として「東京」、「神奈川県」を設定した場合、「東京」、及び「神奈川県」で発生した「震度4」に関する情報が検索対象として検索される。
【0051】
検索条件設定部614は、検索条件として、検索対象設定部612により設定された事象を検索するネットワーク8上のサイトなどと、検索タイミングとを設定する。図8は、検索条件設定部614が第1表示装置702に表示させている検索条件設定用の画面例を示す図である。この図8に示すように、検索条件設定部614は、インターネット上のサイト、病院及び粒子線治療施設内のみで使用されるイントラネット上のポータルサイト、インターネット上の専門サイトなどの中から検索するサイトを設定する。ここで、サイトは、ネットワーク8上で情報やデータを蓄積しているサーバを意味する。また、ポータルサイトは、イントラネット上の様々なサービスや情報を集約してアクセスできるようにまとめたサイトであり、イントラネットを利用する際の起点となるサイトを意味する。また、専門サイトは、地震、気象、緊急情報などの特定の専門情報を配信するサーバを意味する。
【0052】
より、具体的には、検索条件設定部614は、インターネット内を検索する場合、例えばインターネット内の検索サイト、SNS(Social Network Service)サイトなどを検索対象のサイトとして設定する。例えば、インターネット内の「検索サイト1」を設定した場合、「検索サイト1」内に蓄積される情報から検索対象設定部612により設定された事象に関する情報が検索される。すなわち、取得部604(図5)は、インターネット上の「検索サイト1」内に蓄積される情報から検索対象設定部612により設定された事象に関する情報を取得する。
【0053】
また、検索条件設定部614は、病院及び粒子線治療施設内でのみ使用するイントラネット内を検索する場合、施設内のポータルサイト、病院内のポータルサイトなどを検索対象のサイトとして設定する。例えば、検索対象となるイントラネット内の「病院内のポータルサイト」を設定した場合、「病院内のポータルサイト」内に蓄積される情報から検索対象設定部612により設定された事象に関する情報が検索される。すなわち、取得部604(図5)は、イントラネット上の「病院内のポータルサイト」内に蓄積される情報から検索対象設定部612により設定された事象に関する情報を取得する。
【0054】
さらにまた、検索条件設定部614は、専門サイトを検索する場合、官公庁1などの地震、気象などの情報を発信するサーバ、電力関連会社の停電に関する情報を発信するサーバ、官公庁2が緊急情報を発信するサーバなどを検索対象として設定する。例えば、検索対象となるサーバとして専門サイト内の「官公庁1」を設定した場合、官公庁1のサーバが蓄積する情報が検索される。すなわち、取得部604(図5)は、インターネット上の「官公庁1」のサーバ内に蓄積される情報から検索対象設定部612により設定された事象に関する情報を取得する。
【0055】
また、検索条件設定部614は、任意のポータルサイト、検索サイト、SNSサイト、ブログなどを設定してもよい。なお、検索条件設定部614は、複数のサイトを設定してもよい。例えば、検索対象となる事象として「震度4」を設定し、「検索サイト1」、及び「病院内のポータルサイト」を設定した場合、「検索サイト1」、及び「病院内のポータルサイト」に蓄積される情報から「震度4」の地震に関する情報が検索される。
【0056】
さらにまた、検索条件設定部614は、検索対象設定部612により設定された事象毎に検索するタイミングを検索条件として設定する。この検索条件設定部614は、例えば5秒間隔、1秒間隔、連続などを設定する。例えば、検索するタイミングとして「1秒間隔」を設定した場合、「1秒間隔」で検索対象設定部612により設定された事象に関する情報が検索される。
【0057】
また、検索条件設定部614は、患者900の治療フローに従ったタイミングを検索条件として設定してもよい。例えば、検索条件設定部614は、患者900が治療建屋6内に入室したタイミングである「患者900入室時」、照射装置300の患者900に対する位置決めが完了したタイミングである「位置決め完了時」、照射装置300の患者900に対する照射準備が完了したタイミングである「照射準備完了時」、及び照射装置300から患者900へ粒子線が照射されている期間である「照射中」などを事象の検索タイミングとして設定する。例えば、検索するタイミングとして「位置決め完了時」を設定した場合、患者900の「位置決め完了時」に検索対象設定部612により設定された事象に関する情報が検索される。また、「照射中」を設定した場合、照射装置300が粒子線を照査している期間の間、検索対象設定部612により設定された事象に関する情報が連続して検索される。このように、患者900の治療フローに従ったタイミングで情報の検索を行うことで、次の治療フローを行う前に安全性を維持する制御処理を行うことが可能となり、次の治療フローが中断される可能性を低減できる。
【0058】
さらにまた、検索条件設定部614は、計測器を検索対象として設定してもよい。例えば、検索条件設定部614は、震度の情報を含む信号を出力する震度計を検索対象として設定してもよい。計測器を検索対象として設定する場合、検索するタイミングは「連続」が自動的に関連付けられる。このように、計測器を検索対象として設定する場合には、計測器から供給される情報は常に取得部604(図5)に取得され、制御部606により後述の重要度が判定される。このため、計測器を検索対象として設定する場合、検索対象設定部612による設定、及び、後述する判定条件設定部616による設定は不要である。
【0059】
なお、検索対象設定部612で設定された事象と、検索条件設定部614、判定条件設定部616、及び重要度設定部618で設定されたそれぞれの条件、重要度などとの関連付けは、検索対象設定部612による設定が終了する度に検索条件設定部614、判定条件設定部616、及び重要度設定部618における設定を順次行うことで実施される。例えば、検索対象設定用の画面(図7)による事象及び地域の設定が設定ボタン622の選択指示により終了すると、検索条件設定部614の設定用の画面(図8)、判定条件設定部616の設定用の画面(図9)、重要度設定部618の設定用の画面(図10)が順に、第1表示装置702に表示され、それぞれの画面を介して設定操作を行うことにより事象との関連付けが行われる。例えば、「震度4」及び「東京」(図7)が検索対象設定部612により設定された後に、検索条件設定用の画面(図8)を用いて「検索サイト1」、「連続」などを選択指示する。そして、設定ボタン622が選択指示されると、検索条件設定部614は、事象である「震度4」(図7)に、検索条件として「検索サイト1」及び「連続」を関連付けて設定する。続けて、判定条件設定部616、及び重要度設定部618における設定が順に行われる。
【0060】
判定条件設定部616は、判定条件として、発信時間、検索数、発信数などを事象毎に設定する。この判定条件は、後述する制御部606における判定部623が特定の事象の重要度を判定する際に用いられる。本実施形態に係る判定条件は、例えば所定時間内において、検索対象設定部612により設定された事象に関する検索数又は発信数が所定値を超えるか否かである。図9は、判定条件設定部616が第1表示装置702に表示させている判定条件設定用の画面例を示す図である。
【0061】
この図9に示すように、判定条件設定部616は、発信時間として3分以内、10分以内、20分以内などを設定する。例えば「3分以内」が設定された場合には、「3分以内」に発信又は検索された情報が検索される。また、判定条件設定部616は、検索数、発信数として、検索数が100件以上、検索数が300件以上、発信数が100件以上、発信数が300件以上などを設定する。例えば「3分以内」及び「検索数が100件以上」が設定されると、「3分以内」に検索された事象に関連する情報の「検索数が100件以上」という判定条件が設定される。より具体的には、検索条件設定用の画面(図8)による検索条件の設定が終わると、操作者は、入力装置を介して、判定条件設定用の画面中のボタン620、例えば「3分以内」、「検索数が100件以上」などを選択指示する。続けて設定ボタン622を選択指示すると、判定条件設定部616は、「震度4」(図7)に、判定条件として「3分以内」及び「検索数が100件以上」を関連付けて設定する。また、判定条件設定部616は、任意の条件を設定してもよい。
【0062】
一方で、判定条件設定部616は、判定条件を設定しなくともよい。この場合、判定条件設定用の画面中のボタン620を選択指示せずに設定ボタン622を選択指示する。
【0063】
重要度設定部618は、検索対象設定部612で設定された事象毎に重要度を設定する。図10は、重要度設定部618が第1表示装置702に表示させている重要度設定用の画面例を示す図である。この図10に示すように、重要度設定部618は、例えばレベル1、レベル2、レベル3、レベル4などの制御レベルを重要度として設定する。本実施形態に係る重要度は、例えば設定された事象が照射装置300の粒子線の照射状態に影響を与えるリスクの程度を示している。レベル1のリスクが一番高く、レベル2、レベル3、レベル4の順にリスクが低下する。例えばレベル1は、粒子線の照射状態に直ちに影響を与える可能性が極めて高いレベルである。レベル2は、例えば粒子線の照射状態に直ちに影響はないが、照射状態に影響を与えかねない要因があり、治療を継続するにはリスクを伴うレベルである。レベル3は、例えば粒子線の照射状態に直ちに影響はないが、電力系統が不安定になるリスクを伴うレベルである。レベル4は、例えば照射線の照射状態に直ちに影響を与えないが、状況の変化によりリスクレベルが上がる可能性があるレベルである。なお、重要度のレベルは、5レベル以上に分けて設定してもよく、或いは3レベル以下に分けて設定してもよい。
【0064】
より具体的には、判定条件設定用の画面(図9)による判定条件の設定が終わると、操作者は、入力装置を介して、重要度設定用の画面中のボタン620、例えば「レベル1」などを選択指示する。これにより判定条件設定部616は、事象である「震度4」(図7)に、重要度として「レベル1」を関連付けて設定する。また、判定条件設定部616は、任意の条件を設定してもよい。このような一連の設定処理により、例えば事象である「震度4」(図7)に、検索条件である「検索サイト1」及び「連続」(図8)と、判定条件である「3分以内」及び「検索数が100件以上」(図9)と、重要度である「レベル1」とが関連付けられて、設定される。
【0065】
図10に示すように、「追加設定」が選択指示されると、図7の画面が再度表示され、続けて他の事象に関して設定処理を行うことが可能になる。一方で、「設定終了」が選択指示されると、設定処理は終了する。
【0066】
図11は、制御部606の詳細な構成を示すブロック図である。この図11に示すように、制御部606は、判定部623と、警報発報部624と、第1制御部626と、第2制御部628と、第3制御部630と、第4制御部632と、第5制御部634とを、有している。この制御部606は、第1記憶部608Aに記憶された治療計画情報に基づく制御情報を用いて、加速装置100、輸送装置200、照射装置300、回転ガントリ400及び電源500を制御する。
【0067】
判定部623は、判定条件設定部616により設定された判定条件を用いて、検索対象設定部612により設定された事象に関して取得部604が取得した情報が該当する制御レベルを判定する。すなわち、この判定部623は、取得部604が取得した情報が判定条件に該当するか否かを判定し、判定条件に該当する場合に、この事象に設定された重要度を判定結果として出力する。
【0068】
例えば、検索対象となる事象として「雷」を設定し、検索条件としてインターネット上の「検索サイト1」を設定し、判定条件として、「10分以内」、及び「検索数が200件以上」を設定した場合、判定部623は、取得部604が「検索サイト1」から取得した「雷」に関する検索履歴の情報に基づき、「雷」に関して「10分以内」に検索された「検索数が200件以上」に該当するか否かを判定する。該当すれば、判定部623は、「雷」に設定された重要度、例えば「レベル3」を判定結果として出力する。
【0069】
また、例えば、検索対象となる事象として「紛争」を設定し、検索条件としてインターネット上の「官庁2」を設定し、判定条件を設定しない場合、判定部623は、取得部604が「官庁2」の専門サーバから「紛争」に該当する情報を取得すると、「紛争」に設定された「レベル1」を判定結果として直ちに出力する。
【0070】
また、判定部623は、取得部604が事象に対応する情報を計測器から取得した場合、この事象に設定された重要度を直ちに判定結果として出力する。例えば、検索対象となる事象として「震度4」を設定し、検索条件として「震度計」を設定した場合、判定部623は、取得部604が「震度4」に対応する情報を「震度計」から取得した場合、「震度4」に設定された「レベル1」を判定結果として直ちに出力する。
【0071】
警報発報部624は、判定部623の判定に応じた警報を発法する。警報発報部624は、不図示の表示部、警告灯、及びスピーカを有しており、これらの表示部、警告灯、及びスピーカを用いて警報を発報する。また、警報発報部624は、施設内及び隣接する病院内のPHS(Personal Handy phone System)に対し警報の内容を通知する。
【0072】
図11に示すように、先ず第1制御部626、第2制御部628、第3制御部630、第4制御部632、及び第5制御部634の第1制御処理、すなわち通常制御処理の説明を行う。ここで、通常制御処理は、制御装置600が、粒子線の照射状態に影響を与える可能性のある事象の情報が取得部604により取得されない場合に行う制御処理と同等の制御処理を意味する。例えば、通常制御では、インターロック信号による制御処理を除き、粒子線の停止タイミングを含め、治療計画に従った制御処理が行われる。第1制御処理は、取得部604が取得した情報に基づく、照射装置300が照射する粒子線の照射状態に影響を与える可能性が第1の場合に行われる。
【0073】
第1制御部626は、加速装置100の制御を行う制御部であり、イオン発生源102における粒子の生成の開始、粒子の生成量、及び粒子の生成の停止と、加速器104の高周波加速空洞106における粒子線の加速と、出射デフレクタ112からの粒子線の出射及び停止とを制御する。これにより、第1制御部626は、加速装置100から輸送装置200に出射される粒子線のエネルギ、出射の開始タイミング、及び出射の停止タイミングを制御することが可能となる。
【0074】
第2制御部628は、輸送装置200の制御を行う。より具体的には、第2制御部628は、輸送装置200が有する偏向電磁石108に流す励磁電流を制御し、加速装置100から出射された粒子線を照射装置300に輸送させる。
【0075】
第3制御部630は、正線量モニタ306、副線量モニタ308、及び位置モニタ310の出力信号に基づき、照射装置300が照射する粒子線の状態を制御する。より詳細には、第3制御部630は、軌跡パターン(図4)に沿って粒子線が走査されるように、X用電磁石302、Y用電磁石304の励磁電流を制御し、粒子線のエネルギが所定値になるようにレンジシフタ314を制御する。
【0076】
また、第3制御部630は、正線量モニタ306、副線量モニタ308、及び位置モニタ310の出力信号に基づき、インターロック信号を加速装置100に出力し、加速装置100から輸送装置200への粒子線の供給を停止させる。例えば、第3制御部630は、正線量モニタ306の測定値と治療計画に基づく線量との差分が所定値よりも大きい場合、正線量モニタ306の測定値と、副線量モニタ308の測定値との差分が所定値よりも大きい場合、位置モニタ310により計測された粒子線の照射位置と治療計画に基づく照射位置との差分が所定値よりも大きい場合などに、インターロック信号を加速装置100に出力し、加速装置100から輸送装置200への粒子線の供給を停止させる。このように、第3制御部630は、実際に粒子線の照射状態に影響を受けた場合には、インターロック信号を加速装置100に出力することで、照射装置300からの粒子線の照射を停止させることが可能である。すなわち、本実施形態に係る治療システム1は、第3制御部630によるインターロック信号に基づく制御処理と、後述する判定部623の判定結果に基づく制御処理と、により2重に安全性が確保されている。判定部623の判定結果に基づく制御処理は、粒子線の照射状態への影響を実際に受ける前にも行うことが可能である点で、インターロック信号に基づく処理と相違している。なお、インターロック信号を輸送装置200に出力し、粒子線の輸送を停止させたり、インターロック信号を照射装置300に出力し、粒子線の照射を停止させたりする構成となっていても同様である。
【0077】
第4制御部632は、回転ガントリ400の制御を行う。より具体的には、第4制御部632は、回転駆動部404(図2)の回転を制御することにより、照射装置300のビーム軸の方向を制御する。なお、回転ガントリ400への制御は、照射装置300が粒子線を照射する前に行われる。このため、照射装置300による粒子線の照射中には、回転ガントリ400は停止している。
【0078】
第5制御部634は、電源500からの電力の供給状態を制御する。より具体的には、第5制御部634は、第1電源502からの電力供給量を制御する。例えば、第5制御部634は、第1電源502からの電力の供給を開始させたり、電力供給量を変更したり、電力の供給を停止させたりする。また、第5制御部634は、電力供給を第2電源504から第1電源502に切り替える。
【0079】
次に、第1制御処理と異なる第2制御処理について説明する。第2制御処理は、照射装置300が照射する粒子線の照射状態に影響を与える可能性が第1の場合よりも高い場合に行われる制御処理である。すなわち、第2制御処理は通常制御処理と異なる。ここでは、取得部604が取得した情報に基づき、加速装置100、輸送装置200、照射装置300、及び電源500の内の少なくともいずれかに対して行う第2制御処理を変更させる場合について説明する。
【0080】
より詳細には、取得部604が取得した情報を用いる判定部623の判定結果に基づく、第2制御処理の変更例の説明を行う。
【0081】
判定部623によりレベル1と判定された場合、第1制御部626は、まず出射デフレクタ112に粒子線の出射を停止させ、次に高周波加速空洞106に粒子線の加速を停止又は加速を低減させると共に、イオン発生源102に粒子線の再生成を停止させる制御を行う。このように、第3制御部630がインターロック信号を出力する前に粒子線の照射が停止されるので、患者900に対する無効照射が回避される。ここでの無効照射とは、治療計画に基づき定められた粒子線の照射位置と実際に照射された照射位置との差分が所定値よりも大きくなることを意味する。なお、レベル1と判定された場合に第2制御部628が粒子線の輸送を停止させたり、レベル1と判定された場合に第3制御部630が粒子線の照射を停止させたりする構成となっていても同様である。
【0082】
第2制御部628は、輸送装置200が有する偏向電磁石108に流す励磁電流を停止させる。これにより、励磁電流が停止されるので、輸送装置200に損傷が発生しても漏電が起こることが回避される。
【0083】
第3制御部630は、照射装置300のX用電磁石302、Y用電磁石304の励磁電流を停止させる。これにより、照射装置300に損傷が発生しても漏電が起こることが回避される。
【0084】
第4制御部632は、回転ガントリ400の回転駆動部404が駆動中である場合には駆動を停止させる。これにより、回転ガントリ400が停止するので、技師や患者900の退避がより安全に行われる。
【0085】
第5制御部634は、第1制御部626、第2制御部628、第3制御部630、及び第4制御部632のレベル1における所定の制御が終了した後に電源500を停止させる。電源500は高出力の電力を供給しているので、漏電が回避されることにより建屋2内の安全性がより向上する。なお、建屋2内の電気灯、空調、スピーカ、制御装置600、照射制御監視端末700、第1表示装置702などは、電源500とは異なるUPS(Uninterruptible Power System)付きの低電力の電源から電力の供給を受けており、動作が維持される。
【0086】
警報発報部624は、表示部による文字での発報と、警告灯よる発報と、スピーカによる音声での案内と、警告音の発報を行う。これにより、建屋2内の人は、退避行動を起こすことが可能となる。
【0087】
判定部623によりレベル2と判定された場合、第1制御部626は、後述する第3制御部630の所定の制御が終了すると、出射デフレクタ112に粒子線の出射を停止させる。これにより、患者900に対する無効照射が回避される。一方で、高周波加速空洞106による粒子線の加速とイオン発生源102による粒子線の生成を継続させる制御を行う。これにより、通常状態に戻った際に、即時に患者900への照射が可能となるので、患者900への負担を低減できる。このように、患者900への負担を抑えつつ、粒子線治療システム1の運用効率の低下を抑制できる。
【0088】
第2制御部628は、輸送装置200に対する通常時と同等の制御を継続させる。これにより、通常状態に戻った際に即座に患者900への照射が可能となる。
【0089】
第3制御部630は、スライス上の走査パターン(図4)の最終照射位置になると、第1制御部626を介して出射デフレクタ112からの粒子線の出射を停止させる。この処理は、通常のレンジシフタ314の切り替え時の制御処理と同等であり、通常状態に戻った際に即座に患者900への照射が可能となる。また、レンジシフタ314を変換する時間にリスク状態を継続して判定できる。このため、レンジシフタ314を変換する時間、或いは加速装置100内で粒子線のエネルギを変更する時間内にリスクが低減すると、通常時の照射と同等の治療処理、及び治療時間になる。逆にリスクのレベルがレベル1に上がった場合には、上述のレベル1の制御処理が行われる。
【0090】
このように、スライス上の走査パターン(図4)の最終照射位置まで粒子線を照射させているので、レンジシフタ314の変換時間、或いは粒子線のエネルギの変換時間の間にリスクレベルが下った場合には、通常時と照査時間が同等になる。さらに、一旦、粒子線の照射を停止させるので、無効照射の可能性も低減される。
【0091】
第4制御部632は、回転ガントリ400の回転駆動部404が駆動中である場合には駆動を停止させる。これにより、回転ガントリ400が停止するので、技師や患者900の退避がより安全に行われる。
【0092】
第5制御部634は、第1電源502からの電力供給量を継続させる。電力系統が停電しても粒子線の照射を一時停止しているので無効照射は回避可能である。これにより、通常状態に戻った際に、即時に患者900への照射が可能となる。このように、患者900への負担を抑えつつ、粒子線治療システム1の運用効率の低下を抑制できる。なお、加速装置100、輸送装置200、照射装置300の消費電力は大きく、一般的なUPSでは電力容量が不足するが、第2電源504は発電機による発電も可能であり、加速装置100、輸送装置200、照射装置300の消費電力に対応することができる。なお、第5制御部634は、通常の状態に戻った場合に、第2電源504から第1電源502に切り替える。
【0093】
警報発報部624は、表示部による文字での発報と、警告灯による発報と、スピーカによる音声での案内を行う。これにより、建屋2内の人はより状況に応じた行動を起こすことが可能となる。
【0094】
判定部623によりレベル3と判定された場合、第1制御部626、第2制御部628、第3制御部630、及び第4制御部632は、通常の制御処理を継続する。これにより、通常時と同等の照射治療を継続でき、患者900に負担をかけることが回避される。
【0095】
第5制御部634は、第1電源502から第2電源504に切り替え、第2電源504の電力供給量を制御する。レベル3では電力系統が停電する可能性が上がるので、電力系統が停電する前に予め第2電源504に切り替えることで電力系統が停電した場合にも、加速装置100、輸送装置200、照射装置300に通常の動作を継続させることが可能となる。このように、電力系統が停電した場合にも、患者900への治療を継続できるので、患者900への負担を抑え、且つ粒子線治療システム1の運用効率の低下も抑制できる。なお、加速装置100、輸送装置200、照射装置300の消費電力は大きく、一般的なUPSでは電力容量が不足するが、第2電源504は発電機による発電も可能であり、加速装置100、輸送装置200、照射装置300の消費電力に対応することができる。なお、第5制御部634は、通常の状態に戻った場合に、第2電源504から第1電源502に切り替える。
【0096】
警報発報部624は、表示部による文字での発報と、警告灯よる発報とを行う。これにより、建屋2内の人は状況を把握することが可能となる。
【0097】
判定部623によりレベル4と判定された場合、第1制御部626、第2制御部628、第3制御部630、第4制御部632、及び第5制御部634は、通常の制御処理を継続する。これにより、通常時と同等の照射治療を継続でき、患者900に負担をかけることが回避される。警報発報部624は、表示部による文字での発報を行う。これにより、建屋2内の医師、技師などは外部状況に配慮をしつつ、治療を行うことが可能となる。
【0098】
図12は、設定部602の設定処理の流れを示すフローチャートである。ここでは、事象毎に、検索条件を設定する場合について説明する。
【0099】
まず、検索対象設定部612が検索対象設定用の画面(図7)を第1表示装置702に表示させる(ステップS100)。
【0100】
次に、操作者は、マウスやキーボード等の入力装置を介して、検索対象設定用の画面(図7)のボタン、例えば「震度4」を選択指示する(ステップS102)。選択指示されたボタンの横に二重丸が表示される。
【0101】
次に、操作者は、事検索対象設定用の画面(図7)中の地域欄内のボタンを選択指示する(ステップS104)。例えば操作者は、「東京」を選択指示する。続けて、設定ボタン622を選択指示すると、「震度4」に「東京」が関連付けられて設定部602に設定される。
【0102】
次に、検索条件設定部614が検索条件を設定するための検索条件設定用の画面(図8)を第1表示装置702に表示させる(ステップS106)。
【0103】
次に、操作者は、検索条件設定用の画面中のボタンを選択指示する(ステップS108)。例えば操作者は、「検索サイト1」、「連続」を選択指示する。続けて、設定ボタン622を選択指示すると、「震度4」に更に「検索サイト1」、「連続」が関連付けられて設定部602に設定される。
【0104】
次に、判定条件設定部616が判定条件を設定するための判定条件設定用の画面(図9)を第1表示装置702に表示させる(ステップS110)。
【0105】
次に、操作者は、判定条件設定用の画面中のボタン620を選択指示する(ステップS112)。例えば操作者は、「3分以内」と「検索数が100件以上」を選択指示する。ここでは、複数のボタンの選択が可能である。続けて、設定ボタン622を選択指示すると、「震度4」に更に「3分以内」と「検索数が100件以上」が関連付けられて設定部602に設定される。
【0106】
次に、重要度設定部618が重要度を設定するための重要度設定用の画面(図10)を第1表示装置702に表示させる(ステップS114)。
【0107】
次に、操作者は、重要度設定用の画面中のボタンを選択指示する(ステップS116)。例えば操作者は、「レベル1」を選択指示する。続けて、設定ボタン622を選択指示すると、「震度4」に「レベル1」が関連付けられて設定部602に設定される。
【0108】
次に、設定部602は、設定処理を継続するか否かを判定する(ステップS118)。「追加設定」が選択指示されると、設定部602は、設定処理を継続すると判定し(ステップS118のYES)、ステップS100からの処理を繰り返す。一方で、「設定終了」が選択指示されると、設定部602は、設定処理を終了すると判定し(ステップS118のNO)、設定処理を終了する。
【0109】
このように、検索対象設定画面、検索条件設定画面、判定条件設定画面、重要度設定画面が順に表示され、検索対象設定画面により事象と地域が設定され、検索条件設定画面により検索するネットワーク8のサイトと検索タイミングとが設定され、判定条件設定画面により判定条件が設定され、重要度設定画面により重要度が設定される。
【0110】
図13は、粒子線照射システム1の第1制御処理の例、すなわち通常制御処理の例を示すフローチャートである。この図13に示すように、まず、制御装置600の第5制御部634は、第1電源502から加速装置100、輸送装置200、照射装置300、及び回転ガントリ400への電力供給を開始させる(ステップS200)。
【0111】
次に、制御装置600の取得部604は、患者900の治療計画情報を中央制御装置800から取得し、加速装置100、輸送装置200、照射装置300、及び回転ガントリ400を時系列に制御するために必要となる制御情報を第1記憶部608Aに記憶させる。続いて、制御装置600の第5制御部634は、制御情報に基づき回転ガントリ400を回転させ、照射装置300のビーム軸を患者900の患部に向けさせる(ステップS202)。
【0112】
次に、第1制御部626は、加速装置100のイオン発生源102に粒子線の生成を開始させ、加速器104の高周波加速空洞106における粒子線の加速を行わせる(ステップS204)。また、第2制御部628は、輸送装置200が有する偏向電磁石108に流す励磁電流の供給を開始させる。
【0113】
次に、第3制御部630は、第1記憶部608Aに記憶される制御情報に含まれるレンジシフタ314厚設定値に対応するレンジシフタ314を照射装置300のレンジシフタ314に設定する(ステップS206)。これにより、粒子線が照射されるスライスが設定される。
【0114】
次に、第3制御部630は、制御情報に含まれる正線量のプリセット値を取得し、粒子線が照射される照射位置における粒子線の強度を設定する。続いて、第3制御部630は、制御情報に含まれる励磁電流(X)及び励磁電流(Y)を参照にして、X用電磁石302に励磁電流(X)を流させ、Y用電磁石304に流す励磁電流(Y)を流させる(ステップS208)。これにより、粒子線が照射される照射位置が設定される。
【0115】
次に、照射装置300の照射準備が完了すると、第3制御部630は、第1制御部626を介して加速装置100の出射デフレクタ112からの粒子線の出射を開始させ、粒子線の照射を開始させる(ステップS210)。
【0116】
次に、第3制御部630は、正線量モニタ306が計測した線量を累積し、累積線量が正線量計プリセット値を超えるか否かを判定する(ステップS212)。累積線量が正線量計プリセット値を超えていない場合(ステップS212のNO)、第3制御部630は、設定した照射位置への照射を継続させる。
【0117】
一方で、累積線量が正線量計プリセット値を超えた場合(ステップS212のYES)、制御装置600の送信部610は、励磁電流(X)及び励磁電流(Y)の情報と、正線量モニタ306が計測した累積線量と、位置モニタ310から取得した粒子線の照射位置の情報と、レンジシフタ314のレンジシフタ厚と、回転ガントリ400の回転角度と、を第2記憶部608Bに記憶する(ステップS214)。
【0118】
続いて、第3制御部630は、第1記憶部608Aに記憶された制御情報に含まれるレンジシフタ厚設定値を参照し、同一スライスへの照射を継続するか否かを判定する(ステップS216)。同一スライスへの照射を継続する場合(ステップS216のNO)、ステップS208と同様の処理を行い、ステップS212からの処理を繰り返す。
【0119】
一方で、同一スライスへの照射を継続しない場合(ステップS216のYES)、第3制御部630は、第1制御部626を介して加速装置100の出射デフレクタ112からの粒子線の出射を停止させる(ステップS218)。
【0120】
次に、第3制御部630は、第1記憶部608Aに記憶された制御情報を参照し照射を終えたスライスが最終スライスであるか否かを判定する(ステップS220)。最終スライスでない場合(ステップS220のNO)、第3制御部630は、ステップS206からの処理を繰り返す。一方で、最終スライスである場合(ステップS220のYES)、第3制御部630は、第1制御部626を介して、加速装置100のイオン発生源102に粒子線の生成を停止させ、加速器104の高周波加速空洞106における粒子線の加速を停止させる。また、第3制御部630は、第2制御部628を介して、輸送装置200が有する偏向電磁石108に流す励磁電流の供給を停止させ、患者900への照射処理を終了させる。さらに、第2記憶部608Bに記憶された情報を中央制御装置800に送信する。このように、通常時の患者900への粒子線の照射は、第1電源502から供給される電力を用いて、治療計画に基づき実行される。なお、第3制御部630が照射装置300に対して粒子線の照射を停止させる制御を行う構成とすれば、加速装置100及び輸送装置200を停止させずに待機状態のまま、照射処理を終了させてもよい。
【0121】
図14は、判定部623の判定結果に基づく、制御装置600の第2制御処理の変更例を示すフローチャートである。図15は、設定部602により設定された事象と判定部623の判定結果に基づく制御処理との関係の一例を示す図である。ここでは、図15に基づき、粒子線の照射状態に影響を与える可能性のある事象に応じて、制御装置600が行う粒子線の停止までの制御処理の変更例を説明する。
【0122】
図14に示すように、まず、取得部604が、設定部602で設定された事象毎の検索条件に基づき、ネットワーク8から情報を取得する(ステップS300)。取得部604の情報の取得は処理全体が終了するまで継続して行われる。図15に示すように、レベル1として設定された事象が震度4乃至7、紛争であり、レベル2として設定された事象が震度3、竜巻であり、レベル3として設定された事象が震度1、震度2、雷、大雨、停電、洪水、であり、レベル4は、その他の設定された事象である。取得部604は、事象毎の検索条件に基づき、これらの事象に関する情報を事象毎に取得する。
【0123】
次に、判定部623は、設定部602の判定条件設定部616により設定された判定条件に該当する事象が存在すか否かを事象毎に判定する(ステップS302)。判定条件に該当する事象がある場合(ステップS302のYES)に、判定部623は、その事象がレベル1か否かを判定する(ステップS304)。
【0124】
その事象がレベル1である場合(ステップS304のYES)、警報発報部624が警報を発報し(ステップS306)、第1制御部626は、出射デフレクタ112に粒子線の出射を停止させる(ステップS308)。図16は、ラスタースキャニング方式によるスライス上の走査パターンにおける停止位置を示す図である。この図16に示すように、第1制御部626は、レベル1と判定されると、即時に粒子線を停止させるので、粒子線の停止位置は例えば×印で示す「照射停止1」となる。続いて、第1制御部626は、高周波加速空洞106に粒子線の加速を停止させると共に、発生源102に粒子線の生成を停止させる制御を行う。この場合、制御装置600は、治療計画に従った照射シーケンスを中断し、「停止位置1」までの第2記憶部608Bに記憶した情報を患者900の暫定記録ファイルとして第3記憶部608Cの安定領域に記録させる(ステップS310)。
【0125】
次に、第5制御部634は、電源500からの電力供給を停止させる(ステップS312)。続けて、送信部610は、中央制御装置800へのデータ送信を停止する。更に続けて、ステップS300からの処理を繰り返す。
【0126】
一方で、その事象がレベル1でない場合(ステップS304のNO)、判定部623は、その事象がレベル2か否かを判定する(ステップS314)。その事象がレベル2である場合(ステップS314のYES)、警報発報部624が警報を発報する(ステップS316)。
次に、第3制御部630は、図16に示すように、×印で示す「照射停止2」のように、走査パターンの終了位置で、第1制御部626を介して出射デフレクタ112に粒子線の出射を停止させる(ステップS320)。このように、第3制御部630は、制御レベルに応じて、照射装置が照射する粒子線の停止条件を変更させる。
【0127】
次に、送信部610は、中央制御装置800へのデータ送信を停止し、制御装置600は、治療計画に従った照射シーケンスを継続しつつ、「停止位置2」までの第2記憶部608Bに記憶した情報を患者900の記録ファイルとして第3記憶部608Cの安定領域に記録させる(ステップS322)。この場合、第1制御部626は、高周波加速空洞106に粒子線の加速を継続させる。また、第3制御部630は、レンジシフタ314を次撮影用のレンジシフタ314に変更する。これにより、治療計画に従ったスライス面内の照射シーケンスを中断させることなく、一旦照射を停止させて、リスクの低下に従い即時に照射を再開することが可能となる。続けて、ステップS300からの処理を繰り返す。
【0128】
一方で、その事象がレベル2でない場合(ステップS314のNO)、判定部623は、その事象がレベル3か否かを判定する(ステップS324)。その事象がレベル3である場合(ステップS324のYES)、警報発報部624が警報を発報し(ステップS326)、第5制御部634は電源500を第1電源502から第2電源504に切り替え(ステップS328)、データの送信を停止させ、送信すべきデータを第3記憶部608Cの安定領域に記録させる(ステップS330)。これにより、電力系統に停電が発生しても粒子線の照射が継続して可能となる。また、データの送信を停止させるので、データの損失、或いは消失を抑制できる。続けて、ステップS300からの処理を繰り返す。
【0129】
一方で、その事象がレベル3でない場合(ステップS324のNO)、警報発報部624の警報発報のみを行う(ステップS332)。続けて、ステップS300からの処理を繰り返し、判定条件に該当する事象がなくなった場合(ステップS302のNO)に、通常の制御処理に移行する(ステップS334)。
【0130】
なお、ステップS312(レベル1)から通常の制御処理に移行する場合、判定部623は、レベル1の状態が解除されたと判定し、通常の制御処理に移行すると同時に、送信部610は第3記憶部608Cの安定領域に記録していた暫定記録ファイルを中央制御装置800に送信する。続けて、図13のステップS200からの処理が再開される。この場合、ステップS202のガントリの回転とレンジシフタ314の設定は、既に行われているので、再照射時の状態が維持される。また、ステップS208の励磁電流の設定は図16に示す「停止位置1」に対応する励磁電流が設定され、「停止位置1」からの照射が再開される。
【0131】
一方で、ステップS322(レベル2)から通常の制御処理に移行する場合、判定部623は、レベル2の状態が解除されたと判定し、通常の制御処理に移行する。続けて、図13のステップS208からの処理が再開され、患者900への照射処理を終了させた後、第2記憶部608Bに記憶された情報を中央制御装置800に送信する。このように、制御部606は、粒子線の停止状態に応じて、粒子線の再照射の方法を変更する。これにより、患者900の負担を低減できる。
【0132】
また、ステップS330(レベル3)から通常の制御処理に移行する場合、判定部623は、レベル3の状態が解除されたと判定し、通常の制御処理に移行すると同時に、送信部610は第3記憶部608Cの安定領域に記録していた暫定記録ファイルを中央制御装置800に送信する。
【0133】
次に、制御部606は、図13に示す通常の制御処理が終了したか否かを判定し(ステップS336)、終了していない場合に(ステップS336のNO)、ステップS300からの処理を繰り返す。一方で、図13に示す通常の制御処理が終了した場合(ステップS336のYES)に、全体の制御処理を終了する。
【0134】
このように、重要度に応じて第2制御処理の変更が行われる。また、粒子線の照射を停止した場合にも、停止状態に応じた再照射の処理が行われる。
【0135】
以上説明したように、本実施形態に係る粒子線治療システム1によれば、粒子線の照射に影響を与える可能性がある事象の情報が取得されると、取得された事象に応じて加速装置、輸送装置、照射装置及び電源の内の少なくともいずれかに対する制御処理を変更することとした。これにより、取得された事象の粒子線の照射に影響を与えるリスクレベルに応じて、無効照射のリスクを低減しつつ、患者への粒子線による治療を継続させたり、粒子線の停止状態を変更させたり、粒子線を停止させたり、できる。このように、粒子線治療システムにおける運用効率の低下を抑制できるとともに、患者への負担を低減できる。
また、粒子線の照射に影響を与える可能性がある事象の情報が取得されると、事象に応じて電源500の電力の供給状態を変更することとした。これにより、事象のリスクレベルに応じて電源500を停止させたり、電力系統の停電が発生する前に予め第1電源502から第2電源504に切替えさせたりできる。このように、リスクレベルが高い場合に電源500を停止させることで漏電などを抑制させたり、リスクレベルがそれよりも低い場合に、予め第1電源502から第2電源504に切替えさせ電力系統の停電が発生しても粒子線の治療を継続させたりできる。
さらに、事象のリスクレベルに応じてデータ送信を停止し、第2記憶部608Bに記憶している情報を暫定記録ファイルとして、安定領域にとどめることとした。これにより、停電時やデータ転送中のデータ消失、破損を回避することができる。
(第2実施形態)
【0136】
第2実施形態に係る粒子線治療システム1は、ネットワーク8を介して他の治療施設の粒子線治療システム1の情報も取得し、粒子線治療システム1の制御処理を行う。
【0137】
図16は、ネットワーク8を介して接続されている複数の治療施設を模式的に示す図である。この図16に示すように、集中管理装置1000は、例えばサーバであり、ネットワーク8を介して複数の治療施設1002乃至1008の粒子線治療システム1を管理している。
【0138】
集中管理装置1000は、ネットワーク8を介して複数の治療施設にそれぞれ配置される粒子線治療システム1の制御装置600や中央制御装置800と接続される。そのため、粒子線治療システム1の全体を制御可能であるとともに、各施設における患者900の記録ファイルを取得し、記憶している。また、集中管理装置1000は、各治療施設の粒子線治療システム1の判定部623の判定処理に関する情報を集め、他の粒子線治療システム1にも関係する情報を他の粒子線治療システム1に送信する。
【0139】
これらの治療施設は、例えば東京都、神奈川県、山形県、大阪府、福岡県、岡山県などのように異なる県に配置され、施設間の距離は数百キロメートル離れている場合がある。このため、例えば台風の情報のように、西側から環境変化が生じる場合など、東側の施設における粒子線の制御処理に、西側の粒子線治療システム1の判定部623の判定処理に関する情報を参照させることで、東側の施設における粒子線の制御処理の判定精度を向上させることが可能となる。
【0140】
図17は、第2実施形態に係る粒子線治療システム1の制御装置600の構成図である。この図17に示すように、第2実施形態に係る粒子線治療システム1の制御装置600は、停止情報受信部636を更に備えることで、第1実施形態に係る粒子線治療システム1と相違する。他の構成は、第1実施形態に係る粒子線治療システム1と同等であるので、説明を省略する。
【0141】
停止情報受信部636は、集中管理装置1000を介して、他の治療施設における粒子線治療システムの停止情報を受信する。例えば、停止情報受信部636は、他の治療施設における粒子線治療システム1の判定部623の判定処理に関する情報を受信する。制御装置600は、停止情報受信部636の受信情報に基づき、加速装置100、輸送装置200、照射装置300、及び電源500の内の少なくともいずれかの制御を行う。
【0142】
制御部606の警報発報部624は、停止情報受信部636が受信した判定処理に関する情報に基づく、警報を発報する。例えば、停止情報受信部636が「レベル1」又は「レベル2」の制御処理を行ったことを示す情報を受信した場合に、警報発報部624は、受信した情報に含まれる事象の内容などを発報する。これにより、他の施設で発生した事象の内容を考慮した治療などが可能となる。
【0143】
制御装置600の制御部606は、停止情報受信部636が受信した他の治療施設における粒子線治療システムの停止情報が該当する制御レベルに応じた制御処理を加速装置100、輸送装置200、照射装置300、及び電源500の内の少なくともいずれかに対して行う。より、具体的には、制御装置600の設定部602は、停止情報受信部636が受信した判定処理に関する情報に基づき、設定を行う。例えば、停止情報受信部636が「レベル1」又は「レベル2」相当の制御処理を行ったことを示す情報を受信した場合に、設定部602は、受信した判定処理に関する情報に含まれる検索条件及び判定条件を自動設定する。他の治療施設で粒子線の治療に影響を与えた事象は、短時間、例えば数時間から数秒以内に、情報の受信側の施設でも発生する可能性がある。このように、設定部602が受信した判定処理に関する情報に含まれる検索条件及び判定条件を自動設定することにより、情報の受信側の施設における制御部606はこの事象に対する処理精度を上げることが可能となる。すなわち、制御装置600の制御部606は、設定部602が自動設定した検索条件に基づき、加速装置100、輸送装置200、照射装置300、及び電源500の内の少なくともいずれかの制御を行う。また、設定部602は、自動設定した設定を、所定時間、例えば24時間後に消去、すなわち設定を取り消す。これにより、操作者が設定していない検索条件が増加することが抑制される。
【0144】
また、制御装置600の制御部606は、停止情報受信部636が受信した他の治療施設における粒子線治療システムの停止情報に含まれる事象の情報が、例えば「レベル1」に該当する場合、「レベル1」に該当する制御処理を即時に、加速装置100、輸送装置200、照射装置300、及び電源500の内の少なくともいずれかに対して行ってもよい。この場合、制御部606は、他の粒子線治療システムが設置される施設までの距離に応じて、加速装置100、輸送装置200、照射装置300、及び電源500の内の少なくともいずれかに対して行う制御を変更してもよい。例えば、停止情報に含まれる事象が「震度4」以上の地震である場合、他の治療施設までの距離が例えば300キロメートル以内であれば、例えば「レベル1」に該当する制御処理を即時に、加速装置100、輸送装置200、照射装置300、及び電源500の内の少なくともいずれかに対して行う。このように、同等の事象が発生する可能性が高い距離内の施設で発生した事象に対しては、即時に制御処理を行うことで、無効照射などが発生することを抑制できる。
【0145】
一方で、他の治療施設までの距離が例えば500キロメートル以上であれば、制御装置600の設定部602は、停止情報に含まれる検索条件及び判定条件を自動設定し、制御装置600の制御部606は、これらの検索条件及び判定条件に基づき、加速装置100、輸送装置200、照射装置300、及び電源500の内の少なくともいずれかに対する制御処理を行う。このように、他の治療施設までの距離によれば、同等の事象が発生する可能性がより下がるので、停止情報に含まれる検索条件及び判定条件に基づき制御を行うことで、実際の状況に応じた制御処理を行うことが可能となり、粒子線治療システムにおける運用効率の低下を抑制できる。
【0146】
以上説明したように、本実施形態に係る粒子線治療システム1によれば、停止情報受信部636が受信した他の治療施設における粒子線治療システムの停止情報が該当する制御レベルに応じた制御処理を加速装置100、輸送装置200、照射装置300、及び電源500の内の少なくともいずれかに対して行うこととした。これにより、他の施設と同等の事象が発生した場合のリスクに応じた制御処理を行うことが可能となる。
【0147】
特に他の治療施設における粒子線治療システム1の判定部623の判定処理に関する情報を受信し、受信した判定処理に関する情報に含まれる検索条件及び判定条件を自動設定する場合、他の施設と同等の事象が発生した場合に、同様の判定処理を行うことが可能となる。
【0148】
上述した実施形態で説明した制御装置600の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、制御装置600の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD−ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0149】
また、制御装置600の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0150】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0151】
1:粒子線治療システム、8:ネットワーク、100:加速装置、200:輸送装置、300:照射装置、400:回転ガントリ、500:電源、600:制御装置、602:設定部、606:制御部、608B:第2記憶部、612:検索対象設定部、614:検索条件設定部、616:判定条件設定部、618:重要度設定部、623:判定部、624:警報発報部、634:停止情報受信部
図1
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