(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
糖尿病は、世界中で大流行している。報告によれば、およそ3億7000万人が糖尿病を有しており、この数は、全ての国で増加している。糖尿病から生じる最も一般的かつ重篤な合併症のうちの1つは、母趾(第一趾)の下、中足指節関節、足指の先端および末端、足の中央および側面ならびに踵などの足の表面上の高い圧力の領域上で最も一般的に発症する治癒不良の創傷である。足潰瘍は、足上のかかる圧点にわたる感覚の喪失を生じる神経損傷の結果として形成され、それにより、微小外傷が拡がり、覆っている組織が破綻し、最終的に潰瘍が形成される。さらに、感覚におけるこの喪失は、適切な処置なしで済むような軽微な擦れまたは切れを許容し得、潰瘍の形成を最終的にもたらす。かなりの割合の糖尿病患者が、その生涯の間に足潰瘍を発症する。糖尿病性足部潰瘍(DFU)が一旦形成された場合、特に、その全てが糖尿病にしばしば付随するニューロパチー、脈管疾患、変更された好中球機能、低下した組織灌流および/または欠陥があるタンパク質合成の存在に起因して損なわれた治癒環境を考慮すると、処置は困難であり得る。
【0004】
これらの慢性潰瘍形成に対するより良い処置モダリティーが大いに必要とされている。DFUは、肢切断の主要原因である。これらの創傷が長く残存するほど、創傷のサイズおよび深さが増加し、創傷が感染する機会は大きくなる。結果として、これらの合併症は、米国だけで年に80,000の肢切断を生じている。この慢性病理はまた、患者の全体的健康をひどく損ない、これらの患者のさらなる健康上の下方スパイラルをもたらし、ヘルスケアシステムのコストをさらに増大させる;それらの処置は、罹患した糖尿病患者のためのケアのコストを2倍にする。
【0005】
DFU管理の原則的目的は、創傷閉鎖である。現在の標準治療の下では、DFU創傷ケアは、根治的な反復清拭、頻繁な検査および細菌制御、創傷に対する任意の圧力からの解放、ならびに浸軟を防止するための注意深い水分バランスに焦点を当てている。しかし、有効なDFU治癒は、このアプローチを通じては一貫して達成されておらず、結果は、患者コンプライアンスに大きく依存し得る。結果として、DFUに対処するための補助的処置が開発されてきた。糖尿病性足部潰瘍の管理についての一致した報告は、良好な標準的創傷ケアの4週間後に50%未満の治癒を示す潰瘍について、創傷治癒を加速させ、合併症を減少させるために、一歩進んだ治療剤を考慮すべきことを推奨した。かかる一歩進んだ処置は、陰圧創傷治療、生物学的包帯、生物工学処理された皮膚等価物、高圧酸素療法、血小板リッチ血漿および増殖因子を含む。
【0006】
しかし、少数のこれらの一歩進んだ創傷ケア製品だけが、前向き無作為化登録試験においてDFU治癒を加速させることが示されており、その結果でさえも、他の研究によって疑問視されてきた。前向き無作為化登録試験において研究された製品には、組換えヒト血小板由来増殖因子B鎖ホモダイマー(rhPDGF−BB)を含有する外用ゲルであるベカプレルミン(Regranex(登録商標);Smith and Nephew)、PDGFと複合体化する分子を含む外用スプレーであるBioChaperone PDGF−BB(Adocia、Lyon、France)、2種の生きた皮膚等価物:二重層皮膚代用品(Apligraf(登録商標);Organogenesis,Inc.、Canton、MA)およびヒト線維芽細胞由来真皮代用品(Dermagraft(登録商標);Shire,Plc.、Dublin、Ireland)、ならびに減圧補助創傷閉鎖(V.A.C.(登録商標);KCI、San Antonio、TX)が含まれる。あまり厳密でない試験データを有する他の処置モダリティーには、コラーゲン、血小板リッチ血漿、銀製品、高圧酸素および電気刺激が含まれる。
【0007】
特定の一歩進んだ創傷ケア製品についての前向き無作為化登録試験からの一部の有利な結果にもかかわらず、それらの全体的利益は、継続的な高い肢切断率によって明らかなように、期待外れであった。以下の結果が、糖尿病性足部潰瘍の一歩進んだ治療を評価する35の無作為化対照試験の公開されたメタ分析で報告された:
・血小板リッチ血漿は、良好な標準的創傷ケアと比較して、糖尿病性潰瘍の治癒を改善しなかった。
・3つの研究からのプールされた結果におけるDermagraft(登録商標)生物学的皮膚等価物は、標準的ケアと比較して有意でない改善を示すが、潰瘍治癒はDermagraftの方が良い(35%対24%)。
・Apligraf(登録商標)生物学的皮膚等価物二重層は、良好な標準的創傷ケアを超えて治癒を改善することが報告されている(55%対34%、p=.001;2研究)
・5、Regranex(登録商標)rhPDGF−BBは、プラセボまたは良好な標準的創傷ケアと比較して、治癒された潰瘍の百分率の改善を示した(58%対37%、p=0.04;7研究)。
・V.A.C.(登録商標)陰圧創傷治療は、良好な標準的創傷ケアよりも治癒を改善した(43%対29%、p<0.05;1研究)。
・全ての研究について、潰瘍治癒までの向上した時間に関連する低いまたは不十分な証拠が存在した。
さらに、4つの研究において、Regranexについての完全な創傷閉鎖の発生率は、50%またはそれ未満(48%、50%、44%および36%)と報告された。
【0008】
かかる一歩進んだ治療は、DFUを処置するための一貫して有効な解法を生じさせてこなかった。標準的治療と比較したそれらのより高い製品コストと共に、それらのまちまちの臨床結果を考慮すると、これらの一歩進んだ治療には、DFUを処置するための新たな標準治療として広く採用されたものは存在しない。
【0009】
上記のように、1つのかかる一歩進んだ治療は、カルボキシメチルセルロースナトリウムゲル中100μg/gの濃度のrhPDGF−BBからなる、Regranexゲル(ベカプレルミン(becaplerman))である。具体的には、Regranexは、多用途の非無菌で低バイオバーデンの保存加工されたカルボキシメチルセルロースナトリウムベースの(CMC)外用ゲルとして製剤化され、数カ月間にわたって慢性DFUの治癒を改善するために、毎日の適用に適応される。Regranex添付文書(ラベル)は、それが、20週間の期間にわたる最大140回の毎日の適用に向けて毎日、そして医師が適切と考える場合には、1cm
2の創傷表面積当たり約0.006mg(6.25μg)に等しい用量でさらに長く適用されるべきであることを述べている。
【0010】
15年以上前にFDA承認されたにもかかわらず、慢性創傷の処置のためのFDA承認を受けた唯一の組換え増殖因子製品であるという事実によって明らかなように、Regranexは、依然として創傷の治癒のための最先端の増殖因子治療である。さらに、そのFDA承認以来、Regranex(すなわち、rhPDGF−BB)の首尾よく開発された別の製剤は存在しない。臨床および非臨床データはその臨床的使用を支持しているが、本発明者らは、Regranexが以下を含むいくつかの制限を有していると考えている:1)患者による毎日の創傷包帯交換を必要とする、患者によるDFUへの毎日の適用の必要性;2)1cm
2の創傷表面積当たり約0.006mg(6μg)の、FDA承認された使用のための指示書において処方される低い投薬;3)足底に位置する場合が多い創傷の可視化およびかかる創傷上へのチューブ(練り歯磨きのチューブと類似)からのゲルの適用において患者が経験する困難に起因した、しばしば不正確な投薬;4)製品を冷蔵(約2〜8℃)しておく必要性;5)Regranexゲルの無菌性の欠如;6)延長された患者使用−最大140回の、潜在的には140回を超える、約5カ月の期間にわたる毎日の適用の必要性;ならびに7)細胞内殖のための生物学的マトリックスを提供する能力を欠くカルボキシメチルセルロースベースの(CMC)外用ゲルの使用。
【0011】
さらに、Regranexは、DFUに対する有効な処置としては、医学界にあまり受容されていない。4つのRegranex効力臨床試験からのデータの欧州医薬品庁(EMA)のレビューによれば、EMAは、30μgのPDGF/g製剤が、100μgのPDGF/gよりも有効性が低く、100μgのPDGF/g製剤と300μgのPDGF/g製剤との間に差異がほとんどなかったと結論付けている。EMAはさらに、100μgのPDGF/製品製剤gが、「中程度の」効力のみを有したと結論付けている。
【0012】
おそらくはRegranexの「中程度の」効力の結果として、創傷を処置する際のRegranex中の活性成分(すなわち、rhPDGF−BB)の有効性は疑問視されてきた。Park SA、Raghunathan VK、Shah NM、Teixeira L、Motta MJら(2014年)PDGF- BB Does Not Accelerate Healing in Diabetic Mice with Splinted Skin Wounds、PLoS ONE 9巻(8号):e104447頁.doi:10.1371/journal.pone.0104447は、db/dbマウスにおける制御全厚スプリント切除創傷モデル(controlled full thickness splinted excisional wound model)(2型糖尿病マウスモデル)を使用した研究からの結果を報告した。2つのスプリントされた8mm背側全厚創傷を、db/dbマウスにおいて作成し、30μlの5%PEG−PBSビヒクル中3μgのPDGF−BBまたは等容積のビヒクルのいずれかで10日間にわたって1日1回外用処置した。この研究は、PDGF−BBが、in vitroでは生物活性ではあるものの、スプリント創傷モデルを使用したdb/dbマウスではin vivoで創傷治癒を加速させることができなかったと結論付けた。
【0013】
当業者は、Regranexの活性成分rhPDGF−BBの有効性に疑問を持っているが、本出願人らは、Regranexの疑わしい効力にはいくつかの理由が存在すると考えている。第1に、Regranexは、ゲル担体によって創傷部位に送達される。この製剤を用いると、数分〜数時間以内に創傷部位からrhPDGFがなくなってしまう。第2に、ゲル担体は生体適合性であるが、本発明者らは、このゲル担体が細胞および脈管内殖のための基材を提供せず、実際には創傷における細胞の成長および遊走にとって阻害的であり得、それによって、治癒プロセスを潜在的に減速させ、準最適な治癒を生じると考えている。第3に、Regranexは、非無菌であり、2〜8℃で貯蔵(冷蔵)される場合にのみ安定であり、毎日適用されなければならず、解剖学的部位に達するのが困難である場合が多く、全てが低い患者コンプライアンスをもたらす;第4に、診療所データは、100μg/g製剤と300μg/g製剤との間の差異を示さなかったが、本出願人らは、Regranex中の増殖因子が、最適な細胞動員および増殖のための濃度には低すぎると考えている。創傷表面積の平方センチメートル当たりのRegranex用量は、僅か6μgであり、本出願人らは、最適な細胞動員および増殖には低すぎると考えている。第5にかつ最後に、過去15年間にわたる患者に対するその商業的使用にもかかわらず、本出願人らは、Regranex中に含まれる増殖因子の能力が完全ではないと考えている。Regranex中で使用されるrhPDGFは、酵母発現系中で組換え産生される。酵母中で発現される場合、このタンパク質は、2つの鎖間ジスルフィド結合によって一緒にされた2つのアンチパラレルB鎖からなる完全にフォールディングされたホモダイマータンパク質として排出される。しかし、発酵の間、内部タンパク質分解(残基Arg32と残基Thr33との間での切断)およびC末端トランケーション(Arg32およびThr109)が生じ得る。内部タンパク質分解は、3つの潜在的形態のrhPDGF−BBを生じる:インタクト(両方のB鎖がインタクトである)、単一切断型(一方のB鎖が切断型である)および二重切断型(両方のB鎖が切断型である)。切断は、さらなるC末端トランケーションのための新たなC末端部位もまた創出し、アイソフォームの非常に複雑な混合物をもたらす。本出願人らは、Regranex中に含まれるrhPDGF−BBの非インタクトなアイソフォームは、完全にインタクトなアイソフォームよりも、DFUを処置するにあたってかなり有効性が低いと考えている。
rhPDGF−BBは、整形外科的および歯周適応症においても使用されており、ここでは、治癒環境および治癒プロセスは、真皮創傷とは非常に異なっている。2つのかかる製品には、共に活性成分としてrhPDGF−BBを含む、Augment Bone GraftおよびGEM21Sが含まれる。GEM21Sは、rhPDGF−BB溶液および粒状合成骨代用品からなり、2005年にFDA承認され、慢性歯周欠陥において骨治癒を改善することが示されている。Augment Bone Graftもまた、rhPDGF−BB溶液および粒状合成骨代用品からなる。Augmentは、米国およびカナダにおける434人の患者の中心的臨床試験に基づいて、手術の間の骨欠陥中への単回の移植後の足および足首の癒合において骨癒合を改善するとしてFDA承認されている。しかし、これらの製品のいずれも、DFUなどの真皮創傷を処置することに適応されておらず、両方とも、単回の手術内適用を介して、皮膚創傷治癒とは非常に異なる細胞性および生理学的プロセスである骨の成長および癒合を促進するために製品を使用することに焦点を当てている。Regranexと同様、GEM21SおよびAugment Bone Graft製品は、冷蔵(約2〜8℃)貯蔵されなければならず、このことは、使用者の利便性およびコンプライアンスを損なう。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、真皮創傷、例えば、糖尿病性足部潰瘍(DFU)、静脈うっ血性潰瘍、褥瘡、熱傷、外傷性傷害および大きい外科的創傷を処置する新規方法を提供する。本発明はさらに、かかる創傷を処置することにおける使用のための新規生物活性治療組成物、創傷の処置に有用な生物活性包帯を調製する新規方法、および患者コンプライアンスおよび創傷治癒を改善するための新規処置レジメンを提供する。
【0040】
本発明に従う新規方法および治療組成物は、真皮創傷を処置するにあたり先行技術の製品と比較して等価なまたは優れた効果を可能にし、より良い安全性プロファイルならびに改善された患者コンプライアンスおよび利便性を提供する。本明細書で提供される新規治療組成物は、以下を提供する:1)各適用からの創傷上へのPDGFの延長された送達、したがって、患者によるはるかに頻繁な適用(例えば、先行分野の製品による毎日または1日おきの適用)の必要性を除去する;2)数日毎に1回創傷上に適用され得る物理的材料、例えば、Band−Aidなどのコラーゲンスポンジ、したがって、患者コンプライアンスを改善する;3)製品を冷蔵しておく必要性を排除する、室温での安定性;4)先行技術の製品を超えて安全性を改善する無菌製品;5)治癒プロセスをより良く開始する、先行技術の製品と比較してより高い初期用量のPDGF、したがって、延長された患者使用の必要性を低減させる;6)PDGFの送達を持続させるだけでなく、同時に、細胞、血管および新たな組織の内殖を促進し、細胞内殖のための生物学的マトリックスを提供する能力を欠く先行技術の製品と比較して改善された治癒をもたらす生物学的足場および/または開放多孔性マトリックスを提供する、改善された担体の使用;ならびに7)先行技術の製剤よりも少ないアイソフォームを有する、より純粋かつ強力なrhPDGF−BB製剤を含有する。本明細書で開示される新規方法は、以下を提供する:1)治癒プロセスをより良く開始する、先行技術の製品と比較してより高い初期用量のPDGF、したがって、延長された患者使用の必要性を低減させる;ならびに2)治療組成物のより少ない定期的適用、おそらく、先行技術の製品によって必要とされる140回の適用に対して、1〜6回の少ない適用を要求することによって、改善された患者コンプライアンスおよび利便性を促進する処置プロトコール。
I.定義/命名法
【0041】
本明細書で使用する場合、特記しない限り、オープンの用語、例えば、「含有する(contain)」、「含有する(containing)」、「含む(include)」、「含む(including)」などは、含む(comprising)を意味する。
【0042】
本明細書の一部の実施形態は、数値範囲を企図する。数値範囲が提供される場合、この範囲は、特記しない限り、範囲の終点を含む。特記しない限り、数値範囲は、明示的に全て書き出したかのように、その中の全ての値および下位範囲を含む。
【0043】
本明細書の一部の値は、用語「約」によって修飾される。一部の場合には、参照数値に関連する用語「約」は、その値からプラスまたはマイナス10%の値の範囲を含み得る。例えば、量「約10」は、9から11までの量を含み得る。他の実施形態では、参照数値に関連する用語「約」は、その値からプラスまたはマイナス10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%の値の範囲を含み得る。
【0044】
本明細書で使用する場合、冠詞「1つの(a)」とは、明示的に述べない限り、1または複数を意味する。
【0045】
本明細書に記載される方法およびステップが特定の順序で生じる特定の事象を示す場合、当業者は、特定のステップの順序付けが改変され得ること、およびかかる改変が本発明のバリエーションに従うことを認識する。さらに、特定のステップは、可能な場合には並行プロセスで同時発生的に実施され得る、ならびに逐次的に実施され得る。
【0046】
略称の意味は以下のとおりである:「C」は、その用法から明らかなように、セルシウスまたは℃を意味する、「μL」または「uL」または「ul」は、マイクロリットル(複数可)を意味する、「mL」は、ミリリットル(複数可)を意味する、「L」は、リットル(複数可)を意味する、「mm」は、ミリメートル(複数可)を意味する、「nm」は、ナノメートルを意味する、「mM」は、ミリモル濃度を意味する、「μM」または「uM」は、マイクロモル濃度を意味する、「M」は、モル濃度を意味する、「mmol」は、ミリモル(複数可)を意味する、「μmol」または「uMol」は、マイクロモル(複数可)を意味する、「g」は、グラム(複数可)を意味する、「μg」または「ug」は、マイクログラム(複数可)を意味する、「ng」は、ナノグラム(複数可)を意味する、「%w/v」は、重量/容積パーセントを意味する、「%v/v」は、容積/容積パーセントを意味する、「HPLC」は、高速液体クロマトグラフィーを意味する、「UPLC」は、超高性能液体クロマトグラフィーを意味する、「GC」は、ガスクロマトグラフィーを意味する。
【0047】
用語「相同性」とは、アルゴリズムのコンピュータ化実行によって実施され得る、配列(ヌクレオチドまたはアミノ酸のいずれか)の最適なアラインメントを指す。「相同性」は、ポリヌクレオチドに関して、例えば、デフォルトパラメーターを使用してBLASTNバージョン2.0を用いた分析によって決定され得る。「相同性」は、ポリペプチド(すなわち、アミノ酸)に関して、比較されるポリペプチドまたは断片をアラインさせ(および、ヌクレオチド断片もまたアラインさせ得る)、それらの間でのアミノ酸の同一性または類似性の程度を決定する、BLASTPバージョン2.2.2などのプログラムをデフォルトパラメーターと共に使用して決定され得る。
【0048】
配列相同性についての上の説明および方法は、例示的であることが意図され、この概念は、当該分野で十分に理解されていると認識される。さらに、核酸配列は変動し得るが、機能的酵素をなおも提供し得、かかるバリエーションは、本発明の範囲内であることが理解される。用語「酵素ホモログ」もまた、機能的バリアントを意味し得る。
【0049】
本明細書で使用する場合、用語「担体」は、PDGFのための送達ビヒクルとして機能し得る任意の生物学的に適合性の物質を広く指すことを意図し、用語「マトリックス」および「足場」は、創傷が治癒する際の細胞付着および/もしくは脈管内殖のための基材として作用する、ならびに/あるいは(例えば、相互接続された孔などを介して)その構造内にPDGFを捕捉し、それによって、創傷が治癒する際のPDGFの進行する送達のまたは遅延もしくは延長された送達を可能にするための手段を提供する担体を指すために、互換的に使用される。
II.創傷を処置する新規方法
【0050】
本発明は、創傷を処置する新規方法を提供する。一実施形態では、創傷を処置する方法は、生体適合性足場、マトリックスまたは担体中に取り込まれたPDGF溶液を含む治療組成物を提供するステップ、および治療組成物を創傷に適用するステップを含む。生体適合性足場、マトリックスまたは担体中に取り込まれたPDGF溶液を含む治療組成物は、例えば、創傷に外用適用され得る。一部の実施形態では、創傷を処置する方法は、数週間の期間にわたる、創傷への治療組成物の複数回の定期的適用を含む。
【0051】
本発明の一態様によれば、創傷を処置するための新規処置方法は、以下のステップを含む:
(1)必要に応じて創傷を清拭して、壊死組織または感染組織を除去するステップ;
(2)無菌rhPDGF−BBと無菌多孔性生体適合性担体とを含む治療組成物を形成するステップ;
(3)PDGFを含有する治療組成物を創傷表面に適用するステップであって、この担体は、創傷が治癒する際の細胞付着および脈管内殖のための基材を提供する、ステップ;
(4)創傷を包帯で覆うステップ;ならびに
(5)処置期間の間、創傷の治癒をモニタリングし、3日間またはそれ超の処置間隔でステップ(1)〜(4)を反復するステップ。
この新規処置方法は、新規治療組成物を創傷表面に適用する前にそれを調製するステップをさらに含み得、この組成物は、PDGFと生物学的マトリックスとを含む。この組成物を調製する方法は、以下を含み得る:
(2a)凍結乾燥(フリーズドライ)無菌PDGF粉末を無菌の水、生理食塩水、緩衝液または生理的溶液で再構成して、特定の安全な治療濃度のPDGFを提供するステップ;および
(1b)無菌PDGF溶液をバイアル(コンテナ)から引き出し、マトリックスまたはパッチがPDGF溶液で湿らされる形で、それを乾燥親水性無菌マトリックスまたはパッチに無菌的に添加するステップ。
【0052】
一部の実施形態では、この包帯は、密封包帯または半密封包帯である。一部の実施形態では、ステップ(1)〜(3)の反復は、以下のステップもまた含み得る:(A)包帯を除去し、治療組成物包帯を適用するステップの前に、創傷を生理食塩水または適切な消毒性創傷浄化剤で清潔にするステップ、および(B)治療組成物の適用後に、創傷を新たな包帯で覆うステップ。一部の実施形態では、本明細書に記載される新規生物活性治療組成物は、例えば、感染制御、陰圧創傷治療を含む、創傷を処置する他の態様、および/または創傷部位に圧力をかけることを回避するように患者に指導することと組み合わせて使用され得る。
【0053】
本発明の一態様によれば、創傷を定期的に再処置するため、すなわち、ステップ(2)〜(4)を反復するためまたは治療組成物を創傷に定期的に再適用するためのタイミングスケジュールが提供される。再処置の実際の数および再処置頻度(すなわち、処置間隔)は、創傷の重症度(例えば、そのグレード、サイズおよび深さ)、天然の創傷治癒環境が損なわれた程度(例えば、その部位における脈管供給、患者の代謝状態、部位に対する圧力を解放する能力、感染の存在、DFUについての糖尿病ステージ、ある熱傷についての熱傷の程度)、患者の年齢、創傷の持続時間、および他の併存症、例えば、喫煙、肥満、制御されないグルコースレベル、患者コンプライアンスなどを含むいくつかの因子に基づいて決定すべきである。再処置の数および再処置頻度は、より重症の創傷のためまたはより損なわれた治癒環境を有する創傷のためには、増加させるべきである。さらに、処置の処方される数および/または再処置頻度は、創傷の治癒速度に基づいて処置期間の間に調整され得る、すなわち、より遅く治癒する創傷のために再処置の数および/もしくは再処置頻度を増加させ得る、またはより速く治癒する創傷のために再処置の数および/もしくは再処置頻度を減少させ得る。
【0054】
本発明の一態様によれば、再処置頻度は、少なくとも約2日間、少なくとも約3日間、少なくとも約4日間、少なくとも約5日間、少なくとも約6日間、少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間、もしくは少なくとも約15日間などから、最大6週間毎に少なくとも約1回、またはそれらの組合せである。本発明の別の一態様によれば、再処置頻度は、2〜42日毎に1回、または3〜42日毎に1回、または2〜28日毎に1回、または3〜28日毎に1回、または2〜7日毎に1回、または3〜7日毎に1回、または4〜21日毎に1回、7〜28日毎に1回、または7〜21日毎に1回、または7〜14日毎に1回、または10〜15日毎に1回、または12〜14日間日毎に1回である。本発明の別の一態様によれば、再処置頻度は、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎、7日毎、8日毎、9日毎、10日毎、12日毎、14日毎、15日毎、21日毎、28日毎、30日毎、35日毎、42日毎に1回、またはそれらの組合せである。
【0055】
本発明の別の一態様によれば、再処置頻度は、処置期間にわたって実質的に同じであり、この再処置頻度は、少なくとも約2日毎、少なくとも約3日毎、少なくとも約4日毎、少なくとも約5日毎、少なくとも約6日毎、少なくとも約7日毎、少なくとも約8日毎、少なくとも約9日毎、少なくとも約10日毎、少なくとも約11日毎、少なくとも約12日毎、少なくとも約13日毎、少なくとも約14日毎、または少なくとも約15日毎に1回などから、最大6週間毎に少なくとも約1回である。
【0056】
本発明の一態様によれば、創傷は、処置期間にわたって、少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回または少なくとも5回、再処置される。本発明の別の一態様によれば、創傷は、処置期間にわたって、0回と6回との間、0回と7回との間、または0回と8回との間の回数、再処置される。本発明の別の一態様によれば、創傷は、処置期間にわたって、1〜8回の間、または2〜7回の間、または3〜6回の間、処置される。本発明の別の一態様によれば、創傷は、処置期間にわたって、1、2、3、4、5、6、7、8、10または20回、再処置される。本発明の別の一態様によれば、創傷は、0回と46回との間、または1回と46回との間、または0回と20回との間、または1回と20回との間、または0回と27回との間、または1回と27回との間の回数、再処置される。
【0057】
本発明の一態様によれば、この処置期間の間に創傷に適用されるrhPDGF−BBの累積総量は、好ましくは0mg超であるが、約50mg未満、または約25mg未満、または約20mg未満、または約15mg未満、または約10mg未満、または約5mg未満、または約4mg未満、または約3mg未満、または約2mg未満、または約1mg未満のrhPDGF−BBである。ある特定の実施形態では、処置期間の間に創傷に適用されるrhPDGF−BBの累積総量は、好ましくは約0.1mg〜約50mgの間、または約0.5mg〜約25mgの間、または約1mg〜約10mgの間、または約2.5mg〜約8mgの間、または約3mg〜約7mgの間、約4mg〜約6mgの間である。
【0058】
種々の再処置は、創傷に適用されるrhPDGF−BBの正確な量(すなわち、「絶対的投薬量」)に関して、または創傷面積の平方センチメートル(cm
2)当たり適用されるrhPDGF−BBの量(すなわち、「面積投薬量」)に関して、同じまたは異なる投薬量のrhPDGF−BBを含み得る。本発明の一態様によれば、各処置は、約10μgと約50mgとの間、もしくは約10μgと約25mgとの間、もしくは約10μgと約20mgとの間、もしくは約10μgと約15mgとの間、もしくは約10μgと約10mgとの間、もしくは約10μgと約5mgとの間のrhPDGF−BB、または約10μgと約1mgとの間のrhPDGF−BBの、絶対的投薬量を適用する。本発明の別の一態様によれば、各処置は、約10μgのPDGF/cm
2と約1.0mgのPDGF/cm
2との間、または約10μgのPDGF/cm
2と約0.5mgのPDGF/cm
2との間、または約10μgのPDGF/cm
2と約0.25mgのPDGF/cm
2との間、または約10μgのPDGF/cm
2と0.1mgのPDGF/cm
2との間、または約10μgのPDGF/cm
2と約0.05mgのPDGF/cm
2との間の面積投薬量を適用する。ある特定の実施形態では、rhPDGF−BBによる各処置は、好ましくは、約10μg〜1000μgのPDGF/cm
2の間、または約0.01mg〜約50mgのPDGF/cm
2の間、または約0.05mg〜約25mgのPDGF/cm
2の間、または約0.1mg〜約10mgのPDGF/cm
2の間、または約0.2mg〜約2mgのPDGF/cm
2の間である。ある特定の実施形態では、各処置は、1cm
2の創傷表面積当たり少なくとも約10μgのrhPDGF、または1cm
2の創傷表面積当たり少なくとも約25μgのrhPDGF、または1cm
2の創傷表面積当たり少なくとも約50μgのrhPDGF、または1cm
2の創傷表面積当たり少なくとも約100μgのrhPDGF、または1cm
2の創傷表面積当たり少なくとも約250μgのrhPDGF、または1cm
2の創傷表面積当たり少なくとも約500μgのrhPDGFである面積投薬量を適用する。ある特定の実施形態では、各処置は、1cm
2の創傷表面積当たり約10μgのrhPDGFと1cm
2の創傷表面積当たり約500μgのrhPDGFとの間、または1cm
2の創傷表面積当たり約10μgのrhPDGFと1cm
2の創傷表面積当たり約100μgのrhPDGFとの間、または1cm
2の創傷表面積当たり約15μgのrhPDGFと1cm
2の創傷表面積当たり約375μgのrhPDGFとの間、または1cm
2の創傷表面積当たり約30μgのrhPDGFと1cm
2の創傷表面積当たり約190μgのrhPDGFとの間、または1cm
2の創傷表面積当たり約30μgのrhPDGFと1cm
2の創傷表面積当たり約300μgのrhPDGFとの間である面積投薬量を適用する。
【0059】
本発明の一態様によれば、本発明に従う組成物による初期処置は、最も重要な処置であり得る。PDGFは、細胞増殖(有糸分裂誘発)および指向された細胞移動(走化性)ならびに再血管新生(新たな血管の生成)に対するその効果を介して、創傷治癒プロセスを促進する。結合組織細胞(皮膚、骨、軟骨、腱および靱帯)、血管細胞および神経系の細胞を含む多くの細胞が、PDGFに対する受容体(結合部位)を有することが示されている。PDGFに対する受容体を有する細胞は、創傷の部位(ここで、PDGFは、本発明に従う治療組成物を適用した結果として、上昇したレベルで存在する)に向かって遊走し、PDGFを結合した後に引き続いて増殖することによって、応答する。PDGF受容体は、活性化後に迅速に分解されるので、細胞増殖は、局所的に利用可能なPDGFの存在によって、ならびに創傷治癒の増殖期から完全な治癒を最終的に生じるマトリックス沈着へと細胞を進行させる細胞−細胞相互作用によって、制御および制限される。結果として、患者の天然の創傷治癒プロセスが適切に活性化されることを確実にするために、決定的なボーラスのrhPDGF−BBを初期処置の間に適用しなければならない。したがって、本発明によれば、この初期処置は、少なくとも10μgのPDGF/cm
2創傷表面積から最大5000μgのPDGF/cm
2創傷表面積、または少なくとも20μgのPDGF/cm
2創傷表面積から最大1000μgのPDGF/cm
2創傷表面積、または少なくとも30μgのPDGF/cm
2創傷表面積から最大600μgのPDGF/cm
2創傷表面積、または少なくとも40μgのPDGF/cm
2創傷表面積から最大400μgのPDGF/cm
2創傷表面積、または少なくとも50μgのPDGF/cm
2創傷表面積から最大350μgのPDGF/cm
2創傷表面積、または少なくとも60μgのPDGF/cm
2創傷表面積から最大300μgのPDGF/cm
2創傷表面積、または少なくとも200μgのPDGF/cm
2創傷表面積から最大2000μgのPDGF/cm
2創傷表面積である面積投薬量を含有する治療組成物を適用することを含む。本発明の別の一態様によれば、この初期処置は、少なくとも10μgのPDGF/cm
2創傷表面積、または少なくとも20μgのPDGF/cm
2創傷表面積、または少なくとも25μgのPDGF/cm
2創傷表面積、または少なくとも30μgのPDGF/cm
2創傷表面積、または少なくとも40μgのPDGF/cm
2創傷表面積、または少なくとも50μgのPDGF/cm
2創傷表面積、または少なくとも60μgのPDGF/cm
2創傷表面積、または少なくとも70μgのPDGF/cm
2創傷表面積、または少なくとも80μgのPDGF/cm
2創傷表面積、または少なくとも90μgのPDGF/cm
2創傷表面積、または少なくとも100μgのPDGF/cm
2創傷表面積、または少なくとも250μgのPDGF/cm
2創傷表面積、または少なくとも500μgのPDGF/cm
2創傷表面積である面積投薬量を含有する治療組成物を適用することを含む。
【0060】
本発明の別の一態様によれば、各処置は、1cm
3の担体(コラーゲンスポンジなどのマトリックスであり得る)当たり約4μlのPDGF溶液と1cm
3の担体当たり約40mlのPDGF溶液との間、または1cm
3の担体当たり約0.1mlのPDGF溶液と1cm
3の担体当たり約30mlのPDGF溶液との間、または1cm
3の担体当たり約0.2mlのPDGF溶液と1cm
3の担体当たり約20mlのPDGF溶液との間、または1cm
3の担体当たり約0.1mlのPDGF溶液と1cm
3の担体当たり約10mlのPDGF溶液との間、または1cm
3の担体当たり約0.25mlのPDGF溶液と1cm
3の担体当たり約5mlのPDGF溶液との間、または1cm
3の担体当たり約0.25mlのPDGF溶液と1cm
3の担体当たり約2.5mlのPDGF溶液との間、または1cm
3の担体当たり約0.1mlのPDGF溶液と1cm
3の担体当たり約1mlのPDGF溶液との間、または1cm
3の担体当たり約0.5mlのPDGF溶液と1cm
3の担体当たり約1.5mlのPDGF溶液との間を適用する。ある特定の実施形態では、このPDGF溶液は、約0.3mg/mlのrhPDGF−BBを含有する。
【0061】
本発明の別の一態様によれば、各処置は、1cm
3の担体当たり約1.2μgのPDGFと1cm
3の担体当たり約12mgのPDGFとの間、または1cm
3の担体当たり約30μgのPDGFと1cm
3の担体当たり約9mgのPDGFとの間、または1cm
3の担体当たり約60μgのPDGFと1cm
3の担体当たり約6mgのPDGFとの間、または1cm
3の担体当たり約75μgのPDGFと1cm
3の担体当たり約3mgのPDGFとの間、または1cm
3の担体当たり約75μgのPDGFと1cm
3の担体当たり約1.5mgのPDGFとの間、または1cm
3の担体当たり約75μgのPDGFと1cm
3の担体当たり約750μgのPDGFとの間、または1cm
3の担体当たり約120μgのPDGFと1cm
3の担体当たり約600μgのPDGFとの間、または1cm
3の担体当たり約150μgのPDGFと1cm
3の担体当たり約450μgのPDGFとの間、または1cm
3の担体当たり約75μgのPDGFと1cm
3の担体当たり約225μgのPDGFとの間を適用する。
【0062】
本発明の一態様によれば、初期PDGF処置の絶対的投薬量は、引き続く再処置投薬量より多くてもよい。初期PDGF処置の絶対的投薬量は、引き続く再処置PDGF投薬量の各々よりも、約10%、約20%、約30%、約40%もしくは約50%高くてもよく、または最大約300%高くてもよい。
【0063】
本発明の一態様によれば、この方法は、室温、一般的には16℃と32℃との間で、PDGFを貯蔵するステップを含む。使用前に、これは、所望のPDGF濃度を有する溶液を形成するために、無菌の水、生理食塩水、緩衝液または他の生理的溶液で再構成され得る。次いで、この溶液は、マトリックスを湿らせるための所望の容積で、担体、好ましくは所望の多孔度を有する細胞マトリックス(例えば、コラーゲンスポンジ)に添加される。次いで、rhPDGF浸漬されたマトリックスは、創傷表面に適用される。創傷が外部創傷である場合、これは次いで、創傷包帯で覆われる。次いで、このプロセスは、創傷が実質的に治癒するまで、上記頻度および持続時間パラメーターに従って反復され得る。
III.創傷を処置するための新規治療組成物
【0064】
本発明は、生体適合性の無菌の担体、マトリックスまたは足場中に取り込まれた無菌PDGFを含む、創傷を処置するための新規治療組成物もまた提供する。例えば、この治療組成物は、創傷の治癒を促進するために、創傷に外用適用され得る。
【0065】
本発明の一態様によれば、rhPDGF−BB溶液と、好ましくは生体適合性細胞足場である担体とを含む治療組成物が提供され、このrhPDGF−BB溶液は、細胞足場中に置かれる、または細胞足場中に取り込まれる。一部の実施形態では、このrhPDGF−BB溶液は、約0.05mg/ml〜約5mg/mlの間のrhPDGF−BB、または約0.1mg/ml〜約1mg/mlの間のrhPDGF−BB、または約0.2mg/ml〜約0.4mg/mlの間のrhPDGF−BBを含む。本発明の一態様によれば、このrhPDGF−BB溶液は、約0.05mg/ml、または約0.1mg/ml、または約0.2mg/ml、または約0.25mg/ml、または約0.3mg/ml、または約0.35mg/ml、または約0.4mg/ml、または約0.5mg/ml、または約0.6mg/ml、または約0.7mg/ml、または約0.8mg/ml、または約0.9mg/ml、または約1mg/ml、または約2mg/ml、または約3mg/ml、または約4mg/ml、または約5mg/mlの濃度のrhPDGF−BBを含有する。
【0066】
一部の実施形態では、このrhPDGF−BB溶液は、本明細書に記載される要素(例えば、PDGF濃度、無菌溶液組成物など)を含む、予め製剤化された無菌性PDGF溶液である。他の実施形態では、このrhPDGF−BB溶液は、好ましくは、無菌溶液(例えば、無菌の水、生理食塩水、緩衝溶液または生理的溶液)を、凍結乾燥rhPDGF−BBを含むまたは凍結乾燥rhPDGF−BBから本質的になる無菌粉末と合わせることによって、使用時に形成される。この無菌溶液は、凍結乾燥rhPDGF−BBを再構成するために使用される。凍結乾燥rhPDGF−BBは、無菌的条件下で、本明細書の以下にさらに記載される組換え発現系を使用することによって産生された液体rhPDGF−BBを凍結乾燥することによって形成される。
【0067】
本発明の別の一態様では、rhPDGFは、担体、好ましくは、無菌の生体適合性の吸収性細胞足場中に取り込まれ得、次いで、PDGF飽和した担体は、rhPDGFを取り込む無菌の乾燥デバイスを形成するために凍結乾燥される。組換えタンパク質を凍結乾燥するための任意の公知の技術が、それが無菌粉末を生じる限り、rhPDGF−BBを凍結乾燥するために使用され得る。得られた凍結乾燥rhPDGF−BB粉末は、室温で貯蔵されることが可能であり、少なくとも約6カ月間、または少なくとも約1年間、または少なくとも約2年間、または少なくとも約3年間にわたってその生物活性の少なくとも約80%をなおも維持する。次いで、この無菌凍結乾燥デバイスは、創傷部位に直接適用され得るか、または創傷上への配置の前に、血液もしくは他の無菌溶液のいずれかによって湿らされ得る。
【0068】
PDGFは、(特により高いpHでは)バイアルなどのコンテナの表面に接着する傾向を有するので、バイアル中で凍結乾燥PDGFの100%の再構成を達成することは、困難であり得る。したがって、ある特定の実施形態では、添加剤が、そのpHを約7未満、または約6未満、または約5未満または約4未満または約3未満まで低下させるために、PDGF溶液中に含められ得る。凍結乾燥PDGFを再構成することを促進し得る添加剤には、塩、担体タンパク質、例えばアルブミン、または低pH溶液、例えば、希酢酸もしくは塩酸が含まれる。しかし、PDGF溶液が酸性すぎる場合、これは、生体適合性足場に負に影響し得る。したがって、ある特定の実施形態では、凍結乾燥PDGFは、約5未満のpHを有する溶液中で再構成され、一旦PDGFが実質的に完全に再構成されると、塩基溶液が、PDGF溶液のpHを、それを生体適合性足場と合わせる前に、約6〜約8の間に増加させるため、または約7に増加させるために、添加される。かかるpH調整ステップは、生体適合性足場がコラーゲンスポンジである場合に、特に有用である。
【0069】
凍結乾燥rhPDGF−BBを再構成するために使用される緩衝溶液は、水、生理食塩水、炭酸塩、リン酸塩(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、ヒスチジン、酢酸塩(例えば、酢酸ナトリウム)、酸性緩衝液、例えば、酢酸およびHCl、ならびに有機緩衝液、例えば、リシン、Tris緩衝液(例えば、tris(ヒドロキシメチル)アミノエタン)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)、ならびに3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)を含み得るが、これらに限定されない。好ましくは、この緩衝溶液は無菌である。緩衝液は、PDGFとの生体適合性および望ましくないタンパク質改変を妨害する緩衝液の能力に基づいて選択され得る。緩衝液は、創傷組織との適合性に基づいてさらに選択され得る。一実施形態では、酢酸ナトリウム緩衝液が使用される。これらの緩衝液は、異なる容積モル濃度、例えば、約0.1mM〜約100mM、約1mM〜約50mM、約5mM〜約40mM、約10mM〜約30mM、もしくは約15mM〜約25mM、またはこれらの範囲内の任意の容積モル濃度で使用され得る。一部の実施形態では、酢酸塩緩衝液は、約20mMの容積モル濃度で使用される。
【0070】
上記のように、rhPDGF−BB溶液は、治療組成物を形成するために担体と合わされる。この担体は、創傷が治癒する際の細胞付着および/もしくは脈管内殖のための基材として作用する、ならびに/あるいは(例えば、相互接続された孔などを介して)その構造内にPDGFを捕捉し、それによって、創傷が治癒する際のPDGFの進行する送達のまたは遅延もしくは延長された送達を可能にするための手段を提供する、マトリックスまたは足場であり得、このマトリックスまたは足場は、身体によって吸収される。一部の実施形態では、この担体またはマトリックスは、生体適合性の吸収性の細胞足場である。この担体またはマトリックスは、天然ポリマー、例えば、コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、アルギネート、セルロース、キトサンまたはフィブロネクチンを含み得る。この担体またはマトリックスは、合成ポリマー、例えば、ポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)、ポリ(DL−ラクチド)(PDLA)、ポリ(L−ラクチド)(PLLA)、ポリ(e−カプロラクトン)(PCL)、ポリウレタンなどの群から選択される合成生体適合性ポリマーもまた含み得る。この担体またはマトリックスはまた、かかる天然ポリマーと合成ポリマーとの混合物であり得る。一部の実施形態では、このマトリックスは、1型コラーゲンスポンジであり得る、コラーゲンまたはゼラチンスポンジを含む。コラーゲンスポンジは、rhPDGFを創傷部位に保持し、同時発生的に、細胞成長のための足場を提供し、改善された使用者フレンドリーさおよびより迅速かつ完全な治癒を生じる。本発明の一態様では、コラーゲンスポンジであり得る担体またはマトリックスは、約10ミクロン〜約2mmの間、または約50ミクロン〜約1000ミクロンの間、または約100ミクロン〜約500ミクロンの間の多孔度を有する。平均孔径は、約50ミクロン〜約500ミクロンの間であり得、孔の大部分は相互接続されている。
【0071】
一部の実施形態では、担体またはマトリックス材料は、生体吸収可能である。担体またはマトリックス材料は、一実施形態では、創傷へのその適用後1カ月以内に少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、90%または100%吸収され得る。生体吸収性は以下に依存する:(1)材料の性質(すなわち、その化学的構成、物理的構造およびサイズ);(2)材料が配置される身体内の位置;(3)使用される材料の量;(4)患者の代謝状態(糖尿病/非糖尿病、喫煙者、年齢など);ならびに(5)処置される創傷の程度および/または型。
【0072】
本発明の一態様では、このrhPDGF−BB溶液および担体は、創傷を治癒する際に最適な有効性を有する治療組成物を形成するために、適切な比で合わせるべきである。一部の実施形態では、このrhPDGF−BB溶液および担体は、1cm
3の担体(コラーゲンスポンジなどのマトリックスであり得る)当たり約4μlのPDGF溶液と1cm
3の担体当たり約40mlのPDGF溶液との間、または1cm
3の担体当たり約0.1mlのPDGF溶液と1cm
3の担体当たり約30mlのPDGF溶液との間、または1cm
3の担体当たり約0.2mlのPDGF溶液と1cm
3の担体当たり約20mlのPDGF溶液との間、または1cm
3の担体当たり約0.1mlのPDGF溶液と1cm
3の担体当たり約10mlのPDGF溶液との間、または1cm
3の担体当たり約0.25mlのPDGF溶液と1cm
3の担体当たり約5mlのPDGF溶液との間、または1cm
3の担体当たり約0.25mlのPDGF溶液と1cm
3の担体当たり約2.5mlのPDGF溶液との間、または1cm
3の担体当たり約0.1mlのPDGF溶液と1cm
3の担体当たり約1mlのPDGF溶液との間、または1cm
3の担体当たり約0.5mlのPDGF溶液と1cm
3の担体当たり約1.5mlのPDGF溶液との間である比で合わされる。
【0073】
一部の実施形態では、このrhPDGF−BBおよび担体は、1cm
3の担体当たり約1.2μgのPDGFと1cm
3の担体当たり約12mgのPDGFとの間、または1cm
3の担体当たり約30μgのPDGFと1cm
3の担体当たり約9mgのPDGFとの間、または1cm
3の担体当たり約60μgのPDGFと1cm
3の担体当たり約6mgのPDGFとの間、または1cm
3の担体当たり約75μgのPDGFと1cm
3の担体当たり約3mgのPDGFとの間、または1cm
3の担体当たり約75μgのPDGFと1cm
3の担体当たり約1.5mgのPDGFとの間、または1cm
3の担体当たり約75μgのPDGFと1cm
3の担体当たり約750μgのPDGFとの間、または1cm
3の担体当たり約120μgのPDGFと1cm
3の担体当たり約600μgのPDGFとの間、または1cm
3の担体当たり約150μgのPDGFと1cm
3の担体当たり約450μgのPDGFとの間、または1cm
3の担体当たり約75μgのPDGFと1cm
3の担体当たり約225μgのPDGFとの間である比で合わされる。
【0074】
本発明の一態様では、この担体は足場であり、rhPDGF−BB/足場比は、rhPDGF−BB溶液および足場が合わされる場合、足場が、足場の孔内にrhPDGF−BBの少なくとも約20%、30%、40%または50%から最大少なくとも約100%を捕捉することが可能であり、その結果、患者の身体によって足場が吸収されるにつれてrhPDGF−BBが経時的に放出され、それによって、延びた期間にわたる創傷部位におけるrhPDGF−BBの制御された送達を提供し、同時に、新たな細胞および組織内殖のためのマトリックスを提供するような比である。一部の実施形態では、この足場は、足場の孔内に、約20%〜約100%の間、または約25%〜約95%の間、または30%〜約90%の間のrhPDGF−BBを捕捉することが可能である。上記PDGF捕捉の百分率は、再構成された凍結乾燥PDGF−BBの捕捉にも適用可能である。
【0075】
種々の量のrhPDGF−BBが、本発明の治療組成物中で使用され得る。本発明の一態様によれば、治療組成物中に含まれるrhPDGF−BBの総量は、50mg未満、または25mg未満、または10mg未満、または5mg未満、または2.5mg未満または1mg未満である。本発明の別の一態様によれば、治療組成物中に含まれるrhPDGF−BBの総量は、約50mg、または約25mg、または約10mg、または約1.0mg、または約0.5mg、または約0.1mgである。
【0076】
本発明の実施形態におけるPDGFの濃度は、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,221,625号、米国特許第5,747,273号および米国特許第5,290,708号に記載される酵素結合イムノアッセイ、またはPDGF濃度を決定するための当該分野で公知の任意の他のアッセイを使用することによって、決定され得る。本発明の実施形態におけるPDGFの濃度は、約10mg/g未満、または約5mg/g未満または約1mg/g未満または約0.5mg/g未満または約0.1mg/g未満または約0.05mg/ml未満である。本発明の別の一態様では、本発明の実施形態におけるPDGFの濃度は、約0.05mg/g〜約5mg/gの間、または約0.1mg/g〜約1mg/gの間、または約0.25mg/gと約0.5mg/gとの間である。
【0077】
本発明の治療組成物中で使用されるPDGF−BBは、任意の供給源、例えば、天然供給源、合成供給源または組換え供給源に由来し得る。本発明の一態様によれば、PDGFは、組換えDNA技術によって産生される。PDGFが組換えDNA技術によって産生される場合、単一モノマー(例えば、PDGF B鎖)をコードするDNA配列は、B鎖モノマーの発現のために培養細胞中に挿入される。次いで、このモノマーは細胞培養物から抽出および単離され、さらなる精製のためにさらに加工され得る生物学的に活性なホモダイマー(例えば、PDGF−BB)を形成するように再フォールディングされる。本発明の一態様によれば、この培養細胞は、原核生物細胞であり、またはE.coli細胞である。これらの組換え技術を介して産生されたrhPDGF−BBは、本明細書に組み込まれるPCT番号WO2005/077973に概略された技術に従って精製され得る。
【0078】
上記のように、先行技術の組換えDNA産生方法は、rhPDGF−BB断片の混合物を生じてきた。本発明の一態様によれば、本明細書に記載される治療組成物中に含まれるrhPDGF−BBの実質的に全ては、インタクトな非切断型鎖である。本発明の一態様によれば、細菌発現系は、E.coli発現系であり、得られたタンパク質は、逆相高速液体クロマトグラフィー、ゲル濾過もしくはイオン交換クロマトグラフィー、またはそれらの一部の組合せを使用して精製され、精製されたタンパク質組成物中に含有される得られたrhPDGF−BBは、重量基準で少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約97%の非切断型rhPDGF−BBである。
【0079】
一部の実施形態では、本発明の治療組成物中に含まれるrhPDGF−BBは、以下に提供される配列番号1に対して少なくとも約90%、約92%、約94%、約96%、約98%、約99%、もしくは約100%の相同性を有するアミノ酸配列を含むまたはかかるアミノ酸配列から本質的になるrhPDGF−BBである:
配列番号1:
【化1】
【0080】
本発明の別の一態様によれば、本発明の治療組成物中に含まれるrhPDGF−BBは、重量基準で少なくとも約80%、もしくは少なくとも約85%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%の非切断型rhPDGF−BBを含むまたはかかるrhPDGF−BBから本質的になる。本発明の別の一態様によれば、本発明の治療組成物中に含まれるrhPDGF−BBは、少なくとも約80%、もしくは少なくとも約85%、もしくは少なくとも約90%、もしくは少なくとも約95%、もしくは少なくとも約97%の、配列番号1に対して少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%もしくは約100%の相同性を有するアミノ酸配列を含むまたはかかるアミノ酸配列から本質的になるrhPDGF−BBを含むあるいはかかるrhPDGF−BBから本質的になる。
【0081】
一部の実施形態では、本発明の新規組成物を構成する成分は、キット中に提供される。キットは、3つの成分を含み得る:
a)無菌rhPDGF−BB凍結乾燥粉末のバイアル、
b)無菌の水、緩衝液、生理食塩水または生理的溶液のバイアル、および
c)担体。
このキットは、最大3年間にわたって室温で貯蔵され得る。一部の実施形態では、この貯蔵は、16℃と32℃との間である。一部の実施形態では、キット中に含まれる粉末は、所定の量のPDGFを含む。一部の実施形態では、PDGFの量は、本明細書で提供される値と一致する。一部の実施形態では、担体は、所定の量の担体を含むブリスターパック中に含まれる。一部の実施形態では、担体の量は、本明細書で提供される値と一致し、担体の型は、本明細書に記載される材料と一致する。
【0082】
使用時に、キット中のrhPDGF−BBは、無菌の水、生理食塩水、緩衝液または生理的溶液で再構成され、担体は、創傷のサイズに成形される。創傷にフィットするように担体をトリミングした後、この担体は、その溶液が担体の内部孔を完全に飽和させるように、rhPDGF溶液で浸漬される。次いで、rhPDGF飽和した担体は、清拭された創傷に適用され、創傷包帯で覆われる。このプロセスは、本明細書で上記したタイミングスケジュールに従って反復される。
IV.種々の型の創傷を処置する方法
【0083】
本発明の方法および組成物は、糖尿病性潰瘍、褥瘡、神経障害性潰瘍、脈管潰瘍、熱傷、偶発的急性創傷および外科的創傷を含む種々の創傷を処置する際に有用である。種々の創傷分類システムが存在し、本発明の方法および組成物が処置において特に有用である創傷を同定するために使用され得る。2つのかかる潰瘍分類システムには、Wagner分類システム(Wagner(1987年)Orthopedics 10巻:163〜72頁を参照のこと)およびUniversity of Texas分類システム(Lavery(1996年)J Foot Ankle Surg 35巻:528〜31頁を参照のこと)が含まれる。Wagnerシステムは、創傷の深さおよび感染の存在によって創傷をグレード分けする。これは、5つの数字グレードを有する:
グレード1:表在性糖尿病性潰瘍
グレード2:潰瘍の拡張
靱帯、腱、関節包または筋膜が関与する
膿瘍も骨髄炎もなし
グレード3:膿瘍または骨髄炎を有する深い潰瘍
グレード4:足先の一部分への壊疽
グレード5:足の広範な壊疽
University of Texas分類は、創傷の深さに基づく4つの数字グレードを有する。さらに、感染および虚血に関連して、4つの文字グレードA〜Dが存在する。University of Texas分類システムは以下を含む:
ステージ
ステージA:感染も虚血もなし
ステージB:感染が存在する
ステージC:虚血が存在する
ステージD:感染および虚血が存在する
グレード分け
グレード0:上皮化した創傷
グレード1:表在性創傷
グレード2:創傷は、腱または包まで到達する
グレード3:創傷は、骨または関節まで到達する
3の数字グレードおよびDの文字グレードを有する創傷は、例えば、骨または関節まで到達する創傷であり、感染し虚血性である。本発明の一態様によれば、本発明の方法および組成物は、Wagner分類システムの下でグレード2、グレード3もしくはグレード4の創傷、またはUniversity of Texas分類システムの下でグレード1、2もしくは3の創傷(ステージA、B、CもしくはD)のいずれかである創傷を処置するために使用される。
【0084】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法および組成物は、創傷、例えば、糖尿病患者の下肢潰瘍、特に足潰瘍を処置するために使用され得る。本発明の方法および組成物は、背景技術において上記される現行の標準治療の下での約4週間の従来の治療の後で約50%が治癒に失敗した非治癒性の下肢糖尿病性潰瘍を処置する際に特に有用である。
【0085】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、1:1.5または1:1.3メッシュにした分層皮膚移植(メッシュ化により、移植片がより広い領域を覆うことが可能になるが、治癒が必要な小さい開口部が残る)、腹壁形成術(いわゆる「タミータック(tummy tuck)」)、他の型の形成手術および再建手術後の治癒、または肢切断後創傷と組み合わせて、熱傷を処置するために使用される。
V.さらなる治療要素
【0086】
本発明の治療組成物は、創傷の治癒をさらに促進するために、さらなる治療要素を含み得る。一部の実施形態では、PDGFを含む溶液は、さらなる成分、例えば、他の生物学的に活性な薬剤をさらに含み得る。他の実施形態では、PDGFを含む溶液は、細胞培養培地、他の安定化タンパク質、例えばアルブミン、抗菌剤、プロテアーゼ阻害剤[例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール−ビス(ベータ−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、アプロチニン、ε−アミノカプロン酸(EACA)など]ならびに/あるいは他の増殖因子、例えば、線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮増殖因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、またはPDGF−AA、PDGF−BB、PDGF−AB、PDGF−CCおよび/もしくはPDGF−DDの組成を含む他のPDGFをさらに含み得る。さらに、PDGFに加えて本発明の組成物中に取り込まれ得る生物学的に活性な薬剤は、有機分子、無機材料、タンパク質、ペプチド、核酸(例えば、遺伝子、遺伝子断片、小分子挿入(small insert)リボ核酸[si−RNA]、遺伝子調節配列、核転写因子およびアンチセンス分子)、核タンパク質、多糖(例えば、ヘパリン)、糖タンパク質およびリポタンパク質を含み得る。例えば、抗がん剤、抗生物質、鎮痛剤、抗炎症剤、免疫抑制薬、酵素阻害剤、抗ヒスタミン剤、ホルモン、筋弛緩剤、プロスタグランジン、栄養因子、増殖因子およびワクチンが含まれる、本発明の組成物中に取り込まれ得る生物学的に活性な化合物のさらなる非限定的な例は、米国特許出願第11/159,533号(特許出願公開第20060084602号)に開示されている。
【0087】
さらなる生物学的に活性な薬剤の送達のための標準的なプロトコールおよびレジメンは、当該分野で公知である。さらなる生物学的に活性な薬剤は、適切な投薬量の薬剤の創傷部位への送達を可能にする量で、本発明の組成物中に導入され得る。ほとんどの場合、投薬量は、実務者に公知のガイドラインを使用して決定され、問題になっている特定の薬剤に適用可能である。本発明の組成物中に含まれるさらなる生物学的に活性な薬剤の量は、状態の型および程度、特定の患者の全体的健康状態、生物学的に活性な薬剤の製剤、放出速度論、ならびに生体適合性足場の生体吸収性などの変数に依存し得る。標準的臨床試験は、任意の特定のさらなる生物学的に活性な薬剤のための用量および投薬頻度を最適化するために使用され得る。
【実施例】
【0088】
(実施例1)
0.3mg/mlの組換えヒト血小板由来増殖因子−BB(rhPDGF−BB)を含有するコラーゲン創傷包帯の効力を、レプチン受容体中の変異によって糖尿病にされたマウス(db/db)において外科的に誘導した全厚創傷の処置において評価した。
A.研究設計
【0089】
41.46gの平均出発体重を有する15匹の雄性C57/B6(Leprdb)db/dbマウスを、Jackson Laboratory(Bar Harbor、ME)系統コード000642から取得した。動物を、研究開始前に順化した。3日間のこの期間の間、状態が不良な動物を不合格にするために、これらの動物を毎日観察した。
【0090】
研究の間、全ての動物を、使い捨てケージ中に同一の条件下で1匹ずつ収容した。研究を、HEPA濾過空気を提供した動物飼育室中で、華氏70度+/−華氏5度の温度および50%+/−20%の相対湿度で実施した。動物飼育室を、1時間当たり最低でも12〜15回の空気交換を維持するように設定した。飼育室を、薄暮なしに、12時間のオンおよび12時間のオフの明/暗サイクルの自動タイマーにかけた。AlphaDry(登録商標)寝床を使用した。寝床を、最低でも1週間に1回交換した。ケージ、蓋、ビンなどは、市販の洗剤で洗浄し、風乾させた。市販の消毒剤を使用して、フード中に導入した表面および材料を殺菌した。床を毎日掃き掃除し、市販の洗剤を用いて最低でも1週間に2回モップがけした。壁およびケージラックを、希釈漂白剤溶液を用いて最低でも1カ月に1回スポンジで拭いた。研究、用量、動物番号および処置群を特定するために必要な適切な情報を有するケージカードまたはラベルで、全てのケージにマークした。温度および相対湿度を、研究の間記録し、記録を残した。動物に、無菌Purina Labdiet(登録商標)5053げっ歯類食餌を給餌し、無菌化水を適宜に提供した。
【0091】
研究の開始時に、15匹の動物を、各々5匹の動物の3つの群へと、無作為かつ前向きに分割した:
群1−Regranexゲル0.01%rhPDGF−BBを、添付文書によって処方されたように、21日間毎日適用した;
群2−緩衝液と合わせたコラーゲン創傷包帯を、0日目、7日目および14日目に適用した;ならびに
群3−0.3mg/mlの組換えヒト血小板由来増殖因子−BB(rhPDGF−BB)を含有するコラーゲン創傷包帯を、0日目、7日目および14日目に適用した。
各動物は、個体番号に対応する耳パンチによって同定した。0日目に、平均出発重量を記録して、平均出発重量が群間で同等であることを確実にした。ケージカードを使用して、研究番号(LYN−01)、処置群番号および動物番号でマークした各ケージまたはラベルを同定した。
【0092】
試験および対照コラーゲン+/−PDGF物品を、創傷の誘導直後に、(以下に記載するように)外科的包帯として外用投与し、7日毎(Q7)に交換した。Regranex処置部位を、以下に概略した毎日の投薬を含む、製品添付文書中に含まれる使用のための指示書(IFU)に処方されるように処置した。全ての包帯を、Tegaderm(商標)を使用して適所に適用および保持し、ベンゾインを用いて創傷領域の外側の適所で固定した。包帯交換時に、創傷領域を生理食塩水でリンスし、リンス液を収集し、プロテアーゼ活性のさらなる分析のために−80℃で貯蔵した。コラーゲン創傷包帯で処置した部位について、全ての非接着性コラーゲンを、治癒している創傷から穏やかに除去し、記載したように、部位を生理食塩水でリンスし、リンス液を収集した。包帯の除去およびリンス液の収集後、創傷を、包帯/試験物品の再適用前に、ノギスを使用して測定し、写真撮影した。全ての創傷面積はmm
2で報告した。
【0093】
創傷治癒の写真記録のために、全ての写真が一貫することを確実にするために最適な距離で、カメラを三脚上に取り付けた。病変サイズの正確な推定を可能にするために画像中に捕らえられるように、定規を配置した。創傷面積の生前測定に加えて、創傷の全ての写真を、ImageJソフトウェアを使用して分析し、創傷領域をトレースし、研究の結論において定量した。
【0094】
血中グルコースレベルを、研究の開始前に決定し、21日目の屠殺の直前に再度決定して、糖尿病の疾患状態を確認した。研究終結時に、創傷部位を10%NBF中に収集し、病理組織診断のために調製した。研究設計を以下の表1中にまとめる。
【0095】
【表1】
B.試験物品およびビヒクル調製
【0096】
研究で使用した外用製剤は、Regranexゲル(カルボキシメチルセルロースゲル中0.01%のrhPDGF−BB)(群1);rhPDGF−BBで湿らせたコラーゲン創傷包帯(群3);および生理食塩水で湿らせたコラーゲン創傷包帯(群2)であった。全ての包帯をTegaderm(商標)で覆い、ベンゾインで固定した。
1.包帯組成物
a.群1 rhPDGF投薬量
【0097】
Regranex添付文書に記載されるように、「各平方センチメートルの潰瘍表面積は、15グラムチューブから絞り出されたおよそ0.25cmの長さのゲルを必要とする」。式:(l×w)÷4=cm長さのRegranex。1.5cm×1.5cm平方の創傷について:(1.5×1.5)÷4=0.56cm長さのRegranex。Regranex添付文書に記載されるように、「15gチューブからのRegranexゲルの重量は、0.25g/cm長さである」。Regranexは、0.01%のrhPDGF−BBまたは100μg/gのRegranexである。製品の長さ0.56cmについて、製品の重量は、14μgのPDGF−BBの総用量のために0.14gである。Regranexで21日間処置した部位について、研究期間にわたる最大総用量(0日目から開放創傷サイズには変化がないものとする)は、14μg/日×21日間または294μgのPDGF−BBである。しかし、7日目および14日目に、開放創傷サイズを、全てのRegranex処置部位について決定し、適用するRegranexの量を、上記式([l×w]÷4=cm長さのRegranex)を使用して再計算した。
b.群3 rhPDGFおよび群2 生理食塩水投薬量
【0098】
研究において使用したrhPDGF−BBの濃度は、0.3mg/mlまたは300μg/mlであった。研究期間にわたる294μgのPDGF−BBの総用量(Regranexと同じ総最大研究用量)を超えないように、0.3mg/mlのPDGF−BBの合計0.98mlを、21日の研究期間にわたって創傷部位に適用する。合計3回の投与(0日目、7日目および14日目)を仮定すると、各投与は、およそ98μgのPDGFBB/投与(Regranex処置部位について、7×初期の個々の用量よりも僅かに多い)の用量を示す、コラーゲンスポンジ上への約327μlのPDGF−BBからなる。これは、開放創傷表面積の平方センチメートル当たり合計145μl(327μl/2.25cm
2創傷表面積)を示す。
【0099】
7日目および14日目に新たなコラーゲンスポンジに適用する0.3mg/mlのPDGF−BB(群3)または緩衝液/無菌生理食塩水(群2)の容積を、以下の式を使用して決定した:
145×cm
2開放創傷表面積(開放創傷の長さ[cm]×幅[cm])。
c.コラーゲンスポンジ
【0100】
群1で処置した部位について上記したように、全ての創傷を、7日目および14日目に評価および測定して、各個々の部位について開放創傷測定値を記録した。コラーゲンスポンジ(群2および群3)で処置した部位について、包帯の除去、部位の穏やかなリンス、ならびに測定値および写真記録を含む知見の文書化後に、スポンジを測定し、元の創傷の開放創傷部分にフィットするようにトリミングした。
C.外科的手順
【0101】
0日目に、動物を、イソフルランで麻酔した。背中の毛を刈り込み、皮膚を無菌性溶液で拭き取った。鋳型を使用して、動物の背中中央の1.5×1.5cm平方をマークし、鋳型に対応する全厚創傷を、皮膚および肉様層(panniculus carnosus)を切除することによって作成した。熱水循環パッドまたは等価物を動物の下に配置して、手順の間に正常体温を維持し、類似の熱水循環パッド上で動物を回復させた。ブプレノルフィン(0.06mg/kg)を、麻酔からの回復の直後およびその後72時間にわたって12時間毎に、皮下注射によって与えた。温リンゲル溶液(0.5mL)を、マウスが意識を回復した後に、皮下注射によって与えた。動物の創傷形成を、無菌的条件下で実施した。創傷部位を、写真撮影し、切除の直後におよびその後毎日、デジタルノギスを使用して長さおよび幅を測定した。0日目から21日目まで、マウスに、表1に列挙したように試験物品を投与した。
D.研究結果
1.動物生存
【0102】
3匹の動物が死亡し、またはこの研究の間に早めに安楽死させた(全ての動物が群1−Regranex由来)。第1の動物は、手術の1日後に死亡していることが見出された(動物番号3)。第2の動物(動物番号1)は、創傷部位に対して後側の後部側腹部の自己切断に起因して、5日目に屠殺しなければならなかった。群1中の動物番号5は、その出発体重の20%超を喪失した結果として、16日目に屠殺しなければならなかった。以下の表2は、動物の死亡/屠殺をまとめる:
【0103】
【表2】
2.創傷測定
【0104】
創傷領域を、デジタルノギスを使用して測定し、各創傷の長さ(L)および幅(W)を記録した。創傷面積を、式A=L×Wを使用して計算して、方形の面積を計算した。
図1は、0日目、7日目、14日目および21日目の、各群についての創傷の面積を示す。ピーク創傷面積が、3つ全ての群について0日目に記録され、引き続いて、7日目、14日目および21日目に平均創傷面積は減少した。全ての処置群は、研究の過程の間に、創傷面積におけるかなりの減少を示した。
【0105】
方形の形状中の、治癒されない可能性がある(したがって、上で使用した式では捕捉されない)創傷についてのさらなる測定および説明を提供するために、創傷の内側もまた、ImageJ Software(商標)を使用して内側創傷端をトレースすることによって測定した。
図2は、各処置群についての、このアプローチを使用した各動物からの創傷面積を示す。
図3〜6は、評価日に記録した個々の測定値のより詳細な評価を提供するための、散布図としての、評価日(0日目、7日目、14日目および21日目)による全ての処置群についての平均創傷面積を示す。研究の間に死亡した動物について、最後のデータポイントが
図3〜6において繰り越される。
図7Aは、本発明の重要な態様、すなわち、治療組成物のより少ない適用を用いて肯定的な結果が達成されることを強調している。
図7Aは、群1および3についての、4つの時点(0日目、7日目、14日目および21日目)の各々における処置の累積数当たりの創傷面積低減の量(mm
2)を示す。
図7Bは、研究の過程にわたる各群についての創傷閉鎖の平均パーセントを示す。死亡した動物について、最後のデータポイントを繰り越した。
3.臨床評価
【0106】
創傷画像を、再上皮化および肉芽組織の形成に関して、治癒の程度における起こりうる差異についても臨床的に評価した。各時点における各動物からの創傷の代表的画像が、0日目(
図8A)、7日目(
図8B)、14日目(
図8C)および21日目(
図8D)から、
図8に示される。各処置からの生画像は、群3(rhPDGF/コラーゲンスポンジ群)が、群2(緩衝液で処置したコラーゲンスポンジ対照群)と比較して、肉芽組織の形成および再上皮化において実証可能な加速を生じたことを示している。さらに、Regranexで毎日処置した創傷(群1)もまた、群2(緩衝液対照+コラーゲン)と比較して、より良い創傷閉鎖速度を示した。創傷領域のホルマリン固定試料に対する病理組織学もまた実施し、緩衝液対照処置スポンジと比較して、rhPDGF/コラーゲンによる処置およびRegranex処置創傷から生じる加速された創傷治癒をさらに実証した。病理学もまた、Regranex処置を超えた、rhPDGF/コラーゲンで処置した創傷における再上皮化におけるなおさらなる改善を示唆している。
【0107】
病理組織学的試料の代表的試料は、
図9に提供され、この図は、群1−動物2(
図9Eおよび9F)、群2−動物2(
図9Aおよび9B)および群3−動物1(
図9Cおよび9D)を含む、3匹の研究動物からの21日目の創傷部位の断面の一連の顕微鏡写真を含む。顕微鏡写真の各セットについて、2×の倍率(
図9A、9Cおよび9E)および10×の倍率(
図9B、9Dおよび9F)が示される。
【0108】
群1に関して、
図9Eおよび9Fは、創傷が21日目に100%表面再生されたが、いくらかの剪断が、真皮−上皮構造の脆弱性に起因して明らかであったことを示している。
図9E中の矢印60は、左側の隣接表皮および右側の創傷床のおよその位置を示す。
図9Fは、創傷の中央部からのより高い倍率の画像を提供する。100%の上皮による表面再生が明らかであり、表皮における分化した層形成の存在は、その成熟度を示す。新生真皮(neodermis)は、高密度の毛細血管をなおも含有し、新たなコラーゲン形成が進行中である。
【0109】
群2に関して、顕微鏡写真は、コラーゲンスポンジの一部分が、21日間にわたって創傷床中に残ったことを示している。この創傷端において、スポンジは、上による表面再生を妨害するようであった。
図9A中の矢印10は、創傷端を示す。
図9Aで見られるように、いくらかの肉芽組織が、コラーゲンスポンジの下に発生した。
図9Bを参照すると、コラーゲンスポンジおよび肉芽組織がそれぞれ矢印20および30によって示される。示されるように、コラーゲンスポンジは、この領域において接着性に見えたが、細胞による浸潤は最小である。スポンジの下に形成された古典的肉芽組織が示される。
【0110】
群3に関して、
図9Cおよび9Dは、創傷が表皮で100%表面再生されることを示している。
図9C中の矢印40は、創傷床のおよその端を示し、領域50は皮下脂肪である。
図9Dは、創傷の中央部内で撮影され、元のコラーゲンスポンジの全ての証拠がなくなったことを示している。創傷は、100%表面再生され、成熟度を示す角質層で十分に層形成されている。新生真皮は、新たなコラーゲン産生の証拠を示し、細胞充実性は減少しており、これは、真皮組織が成熟しつつあり、肉芽組織の未成熟な特徴を喪失しつつあることを示している。
E.研究結論
【0111】
以下の結論がこの研究から下された:
(1)Regranexの21回の適用を群1において施したが、緩衝液/コラーゲンまたはrhPDGF/コラーゲン創傷包帯の適用3回だけを、それぞれ群2および3において適用した。
(2)群1(Regranex)の3匹の動物は、死亡していることが見出されたか、または研究の生前部分の間に安楽死させなければならなかった。
(3)全ての処置群は、ノギス測定値およびImageJソフトウェア分析を使用した創傷トレースの両方によって決定される、0日目から21日目までの創傷面積における減少を示した。屠殺時(21日目)に、5つのRegranex処置創傷のうち2つ、5つのrhPDGF/コラーゲン処置創傷のうち3つ、および5つのコラーゲン包帯処置創傷のうち0個が治癒した。
(4)各処置からの生画像は、群3(rhPDGF/コラーゲン)が、緩衝液で処置したコラーゲン創傷包帯対照群(群2)と比較して、肉芽組織の形成および再上皮化において実証可能な加速を生じることを示している。さらに、Regranexで毎日処置した創傷(群1)もまた、対照コラーゲンスポンジ処置動物と比較して、より良い閉鎖速度を示した。
(5)創傷再上皮化によって評価される治癒は、Regranexの21回の適用(群1)または生理食塩水で湿らせたコラーゲン創傷包帯の3回の適用と比較して、rhPDGF/コラーゲンの3回の適用(群3)で処置した創傷において最大であった。
(6)rhPDGF/コラーゲンの3回の毎週適用(群3)は、コラーゲン創傷包帯(群2)と比較して、肉芽組織形成および再上皮化を含む創傷閉鎖を加速させ、21回の毎日用量のRegranexゲル(群1)と少なくとも同等に有効なようである。
(7)rhPDGF/コラーゲンは、安全かつ有効であり、市販のコラーゲン創傷包帯と比較して、糖尿病性創傷のより良好な治癒を促進する。5つのrhPDGF/コラーゲン処置創傷のうち3つは、5匹のコラーゲン創傷包帯処置動物のうち0匹と比較して、完全な再上皮化によって明らかなように、完全に治癒した。
(8)rhPDGF/コラーゲンは、安全かつ有効であり、市販のコラーゲン創傷包帯と比較して、組織学的に実証されたように、血管形成、肉芽組織形成および再上皮化を促進する。
(9)rhPDGF/コラーゲン無菌製品は、組織学的に実証されたように、高度に生体適合性である。
(10)rhPDGF/コラーゲンは、Regranexゲルよりも適用がかなり容易であり、患者コンプライアンスを改善するはずである。
(11)Regranexを受けた動物は高い死亡率を有したが、かかる死亡率はrhPDGF/コラーゲンまたはコラーゲン創傷包帯では観察されなかったということを考慮すると、rhPDGF/コラーゲンはRegranexよりも安全であり得る。
(実施例2)
仮想例
【0112】
本明細書に記載される新規治療組成物および創傷処置方法の効力を実証するための研究を実施する。実施例1について概略した同じ研究設計を、5つの試験群−標準治療群(生理食塩水で湿潤させたガーゼ)、Regranex群、コラーゲンスポンジ群、およびPDGF−BBとコラーゲンスポンジとを含む本発明に従う処置組成物を利用する2つの群で、db/dbマウスモデルを含むこの研究にも使用する。しかし、以下に詳述するように、投薬の頻度は、この研究において変化させる。この研究はまた、Regranex群およびコラーゲンスポンジ/PDGF−BB群の両方において研究の過程にわたって送達されるPDGFの総用量が同じになるように、設計する。
A.実験設計
【0113】
実験設計を、実施例1に記載される研究の結果によって精密化するが、1群当たりの動物の数はより多く(すなわち、8匹)、研究持続時間はより長く、すなわち、28日間であることが理解される。さらに、試験および対照コラーゲン+/−PDGF物品を、本明細書に記載される新規組成物および処置方法に従って、創傷の誘導直後および合計2回の適用について約14日目に(群5)、または手術の直後ならびに試験物品の合計4回の適用について7日目、14日目および21日目に、創傷包帯として外用投与する(表Xを参照のこと)。陰性対照(生理食塩水で湿潤させたガーゼ)およびRegranex処置部位は、処方された使用のための指示書に従って、創傷包帯として28回の毎日の外用投与を受ける。
【0114】
この実施例では、血中グルコースレベルを、研究の開始前に決定し、28日目の屠殺の直前に再度決定して、糖尿病の疾患状態を確認する。全ての他の態様では、この研究の設計は、実施例1に記載されるものと同じである。研究の詳細を、以下の表3中に概略する。
【0115】
【表3】
【0116】
研究の期間にわたって毎日、処置群間での動物応答における起こりうる視覚的差異を評価するために、各動物を検査し、その生存を記録する。創傷閉鎖の速度を決定し、任意の所与の時点で完全に治癒した創傷の百分率もまた決定する。
B.PDGF−BB用量計算
【0117】
この研究で使用したPDGF投薬量は、本発明(群4および5)またはRegranexラベルに従って処方された実際の治療用量(群2)のいずれかに従う実際の治療用量を模倣するように設計する。群2についての投薬量を、実施例1のRegranex群と同じ様式で決定する。28日間にわたってRegranexで処置した部位について、研究期間にわたって投与されるPDGFの総用量は、14μg/日×28日間または392μgのPDGF−BBである。この用量は、6.22μg/cm2/日または174.2μg/cm2のPDGF−BBの、元の創傷サイズの面積当たりのPDGFの量(「面積用量」)としても表され得る。
【0118】
群4および5について、0.3mg/mlまたは300μg/mlのPDGF濃度を有するPDGF溶液を使用する。392μgのPDGF−BBの、研究期間にわたる総用量(Regranex群と同じ総研究用量)を達成するために、合計で1.307mlのPDGF溶液を、28日の研究期間にわたって創傷部位に適用する。7日毎に1回包帯交換を受ける部位について、合計4回(0日目、7日目、14日目および21日目)投与する。各投与は、コラーゲンスポンジ上への327μlのPDGF−BB(または緩衝液単独)からなる。PDGFの用量に関して、各投与は、0.3μg/μl×326μlまたは98ugのPDGF−BB(およそ7×のRegranexの個々の用量)からなる。0日目および14日目に2回の用量のみを受ける部位について、合計2回投与する。各投与は、コラーゲンスポンジ上への654μlのPDGF−BBからなる。各投与は、0.3μg/μl×654μlまたは196ugのPDGF−BB(およそ14×のRegranexの個々の用量)からなる。これらの用量は、元の創傷サイズの面積当たりのPDGFの量(「面積用量」)としても表され得る。群4に関して、PDGF用量は、43.5μg/cm2/用量または174μg/cm2のPDGF−BBである。群5に関して、PDGF用量は、約87μg/cm2/用量または174μg/cm2のPDGF、すなわち、全ての群において同じ累積用量であるが、群4および5は、はるかに少ない用量を有する。
(実施例3)
仮想例
【0119】
無作為化臨床試験を実施して、慢性糖尿病性足部潰瘍の処置における、標準治療(過剰な創傷滲出物の除去を伴う湿潤創傷治癒、壊死組織の清拭、圧力の解放、生理食塩水で湿潤させたガーゼ、必要に応じた抗生物質、および創傷包帯からなる)およびRegranexと比較した、rhPDGF−BBとコラーゲンとの種々の組成物の有効性を評価する。以下の表4は、研究設計をまとめる。研究の各アーム(1〜37)について、製品を、最大20週間にわたってまたは完全な創傷閉鎖まで、表4に示される投薬量および頻度で適用する。Regranexは、その承認されたUSラベリングに従って適用する。rhPDGF−BB/コラーゲン組成物は、第50段落中に上記した手順(ステップ1〜5)に従って適用する。
【0120】
この研究のための転帰尺度は以下である:
・完全な創傷閉鎖の発生率。
・完全な創傷閉鎖を達成するまでの時間。
・各来診時の総潰瘍表面積における百分率低減。
・創傷治癒の12週間後に観察された潰瘍再発の数。
・処置により発生する有害事象(最大52週間)。
【0121】
研究のための組入れ基準は以下を含む:
・1型または2型糖尿病を有する、18歳またはそれ超の男性または女性
・処置した足上に単一の潰瘍を有する患者
・インフォームドコンセントを提供することができ提供する意志がある患者
・プロトコールの来診および手順に従うことができ従う意志がある患者
・研究の全持続時間の間に解放方法を使用する意志がある患者
・趾間部潰瘍(趾間)を除き、骨、腱、靱帯または筋肉は関与しないが表皮および真皮を通じて拡張する、四肢(踝の下)の全厚足底、外側または背側潰瘍(University of Texas糖尿病性創傷分類によって規定されるグレードIAまたはWagner分類に従うグレード1)
・適切な創傷ケアにもかかわらず少なくとも6週間の慢性潰瘍
・共に包括的な1〜10cm
2の、鋭い清拭(sharp debridement)後の式:長さ×幅×0.8で測定した潰瘍面積
・ベースライン来診前の十分に制御された感染または蜂巣炎(全身抗生治療(antibiotherapy))
・Semmes−Weinsteinモノフィラメント試験または生体知覚計(bio esthesimeter)(振動覚閾値)によって評価される末梢性ニューロパチー
・足関節・上腕血圧指数>0.60かつ<1.3
・手術により生殖不能の、閉経後の、または適切な避妊を実施することに同意し、スクリーニングの時点において妊娠試験陰性の女性
・看護なし
【0122】
研究のための除外基準は以下を含む:
・趾間部潰瘍
・他の原因または起源の潰瘍:電気的、化学的もしくは放射線傷害、床ずれ、脈管潰瘍またはシャルコー変形(Charcot deformity)潰瘍
・シャルコー足(Charcot foot)
・肢切断ベッド(amputation bed)に起源する創傷
・必要に応じて臨床試験およびX線検査によって評価される活動性潰瘍感染。清拭によって除去できず、標準的創傷ケアによって制御できない壊死、化膿または洞管の存在。
・標的潰瘍の領域に影響を与える活動性骨髄炎
・制御不良の糖尿病(制御されない糖血症:HbA1c%>=10%)、腎不全(血清クレアチニン>3.0mg/dL)、栄養状態不良(アルブミン<3.0g/dLまたは総タンパク質<6.5g/dL)
・既知の結合組織疾患または悪性疾患
・コルチコステロイド、免疫抑制剤、放射線療法または抗がん化学療法との併用処置
・30日以内の調査薬物/デバイスまたは増殖因子の使用
・7日以内のこの創傷に対する任意の事前の創傷ケア(消毒薬、抗生物質、デブリダー(debrider)、酵素)の外用適用
・8週間以内の脈管再構築
・プロトコールに従わないと予測される患者(試験、処置または創傷ケアのコンプライアンスの持続時間の間対応できない)、または任意の他の理由のために調査者によって不適切と感じられる患者
・重症脳血管事象の病歴
【0123】
【表4】
【0124】
rhPDGF/コラーゲンスポンジ組成物の各々は、これらの転帰尺度のうち少なくとも1つにおいてRegranexもしくは標準治療よりも良好に機能し、および/または処置期間にわたって適用されるより少ない累積rhPDGFの適用もしくはより少ない処置の適用と実質的に等価な結果を達成し、より良い患者コンプライアンスをもたらす。
【0125】
本明細書に記載される実施形態、バリエーションおよび配列は、本発明の有用性および多用途性の指標を提供するはずである。本明細書に示される特徴および利点の全てを提供するわけではない他の実施形態もまた、本発明の精神および範囲から逸脱することなしに利用され得る。かかる改変およびバリエーションは、本発明の範囲内とみなされる。