(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記継続判定部が、前記自動モードによるスレーブアームの動作の継続を許可しないと判定した場合、前記出力装置は、前記オペレータに通知すべき情報として、前記スレーブアームの運転モードの問い合せを出力しており、
前記動作制御部は、前記出力装置による前記運転モードの問い合わせの出力に応じて前記受信部が受信した前記入力信号に基づき、前記所定のステップの次のステップ以降におけるスレーブアームの運転モードを判定する請求項2または3に記載のロボットシステム。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(本発明の概要)
本発明者らは、人とロボットとの協同作業を実現するシステムについて鋭意研究した。特に、マスター装置とスレーブアームを備えるスレーブロボットとから構成されるマスタースレーブ方式ロボットを用いたロボットシステムを利用して人とロボットとの協同作業を実現するシステムについて検討した。
【0028】
まず、マスタースレーブ方式ロボットを用いたロボットシステムによって一連の工程からなる作業を実施させることができる。特に、作業の中で、上記した高度なセンサ認識技術等が必要とされる工程ではマスター装置を介して入力される、オペレータからの操作指示に従ってスレーブアームを手動モードで動作させ、それ以外の工程についてはスレーブアームを自動モードで動作させることが考えられる。
【0029】
ところで、スレーブアームが、複数のステップからなる工程を自動モードで動作する場面において、所定のステップまで自動モードによりスレーブアームを動作させた後、このまま自動モードを継続してもよいか、または運転モードの変更が必要か判定を要する場合があることに気が付いた。
【0030】
ここで、特許文献1に開示された従来の遠隔操作作業装置は、作業環境に予期せぬ障害物がある場合、換言すると作業環境に異常が生じている場合、その異常を検知してロボットの運転を自動運転から手動運転に切り替えることができる構成である。しかしながら、従来の遠隔操作作業装置は、ある工程の所定のステップまで自動モードによりスレーブアームを動作させた後、該自動モードの継続の可否を判定する構成について考慮されていないことに気が付いた。さらには、従来の遠隔操作作業装置は、自動モードの継続の可否を判定し、自動モードから別の運転モードへの切り替えをオペレータに問い合わせる構成について考慮されていないことに気が付いた。
【0031】
そこで本発明者はこれらの問題点に関し鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。すなわち、スレーブアームが自動モードにより複数のステップからなる工程を実施する場合、スレーブアームの動作を制御する制御装置が、該所定のステップで自動モードによるスレーブアームの動作を停止させ、さらに信号の入力待ち状態となる。そして、入力された信号に基づき、制御装置が自動モードの継続の可否を判定する構成とする。また、自動モードを継続させないと判定した場合は、制御装置は、オペレータからの運転モードの切り替え指示を待ち受ける構成とする。
【0032】
これにより、自動モードによるスレーブアームの動作中において、該自動モードの継続の可否を確認し、さらに自動モードを継続させないと判定した場合は、適切な運転モードをオペレータに問い合わせることができる。
【0033】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下ではすべての図を通じて同一または相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0034】
(実施形態)
まず、
図1を参照して本発明の実施形態に係るロボットシステム100について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るロボットシステム100の構成の一例を示す模式図である。
【0035】
本発明の実施形態に係るロボットシステム100では、マスタースレーブ方式ロボットを利用したシステムである。すなわち、ロボットシステム100では作業空間から離れた位置(作業空間外)にいるオペレータが、例えばマスター装置9が備えるマスターアーム2を動かすことで、作業空間内に設置されたスレーブアーム1が、該動きに追従した動作を行い、特定の作業を行うことができる。さらには、ロボットシステム100では、スレーブアーム1が、オペレータによるマスターアーム2の操作を介することなく、所定の作業を自動的に行うこともできる。
【0036】
本明細書では、マスターアーム2を介して入力された操作指示(指令)に従って、スレーブアーム1を動作させる運転モードを「手動モード」と称する。なお、上述の「手動モード」には、オペレータがマスターアーム2を操作することによって入力された操作指示に基づいて動作中のスレーブアーム1の動作の一部を自動で動作補正する場合も含む。例えば、この動作補正する場合とは、以下のような動作が例示できる。すなわち、手動モード設定時においてオペレータの手ぶれなどに起因してスレーブアーム1の動きも振れてしまう場合がある。このような場合、スレーブアーム1の動きを自動的に、振れが生じることを防ぐように補正する場合が挙げられる。
【0037】
また、本明細書では、予め設定されたタスクプログラムに従ってスレーブアーム1を自動で動作させる運転モードを「自動モード」と称する。
【0038】
更に、本実施形態のロボットシステム100では、スレーブアーム1が自動モードで動作している際に、マスターアーム2を介して入力された操作指示をスレーブアーム1の動作に反映させて、自動で行う予定の動作を修正することができるように構成されている。本明細書では、マスターアーム2を介して入力された操作指示を反映可能な状態で、予め設定されたタスクプログラムに従ってスレーブアーム1を動作させる運転モードを「修正自動モード」と称する。なお、上述の「自動モード」は、スレーブアーム1を動作させる運転モードが自動モードであるときはマスターアーム2の操作がスレーブアーム1の動作に反映されないという点で、「修正自動モード」と区別される。
【0039】
[実施形態に係るロボットシステムの構成]
図1に示すように、ロボットシステム100は、スレーブロボット10と、マスター装置9と、出力装置4と、状況情報取得部5と、記憶装置6とを備えてなる構成である。なお、
図1では特に図示していないが、ロボットシステム100では、オペレータがスレーブアーム1による作業状況を確認するためのモニタ用表示装置とスレーブアーム1の作業状況を撮影するモニタ用カメラがさらに備えられている。なお、モニタ用表示装置はマスター装置9が設けられている空間に設置されており、モニタ用カメラはスレーブアーム1が設けられている空間に設置されており、両者は有線または無線により接続されている。
【0040】
(スレーブロボットの構成)
スレーブロボット10は、スレーブアーム1と、スレーブアーム1の先端に装着されるエンドエフェクタ(不図示)と、スレーブアーム1およびエンドエフェクタの動作を司る制御装置3とを備えている。
【0041】
(スレーブアーム)
スレーブアーム1は、複数のステップを含む工程において、該ステップの処理を実施する。すなわち、ある作業は、それぞれスレーブアーム1の運転モードが設定された複数の工程から構成されており、各工程には複数のステップが含まれている。そして、スレーブアーム1は、このステップの処理を設定された動作モードにて実施する。
【0042】
スレーブアーム1は、基台15と、基台15に支持された腕部11と、腕部11の先端に支持され、エンドエフェクタが装着される手首部14とを備えている。スレーブアーム1は、
図1に示すように3以上の複数の関節JT1〜JT6を有する多関節ロボットアームであって、複数のリンク11a〜11fが順次連結されて構成されている。より詳しくは、第1関節JT1では、基台15と、第1リンク11aの基端部とが、鉛直方向に延びる軸回りに回転可能に連結されている。第2関節JT2では、第1リンク11aの先端部と、第2リンク11bの基端部とが、水平方向に延びる軸回りに回転可能に連結されている。第3関節JT3では、第2リンク11bの先端部と、第3リンク11cの基端部とが、水平方向に延びる軸回りに回転可能に連結されている。第4関節JT4では、第3リンク11cの先端部と、第4リンク11dの基端部とが、第4リンク11cの長手方向に延びる軸回りに回転可能に連結されている。第5関節JT5では、第4リンク11dの先端部と、第5リンク11eの基端部とが、リンク11dの長手方向と直交する軸回りに回転可能に連結されている。第6関節JT6では、第5リンク11eの先端部と第6リンク11fの基端部とが、捻れ回転可能に連結されている。そして、第6リンク11fの先端部にはメカニカルインターフェースが設けられている。このメカニカルインターフェースには、作業内容に対応したエンドエフェクタが着脱可能に装着される。
【0043】
上記の第1関節JT1、第1リンク11a、第2関節JT2、第2リンク11b、第3関節JT3、及び第3リンク11cから成るリンクと関節の連結体によって、スレーブアーム1の腕部11が形成されている。また、上記の第4関節JT4、第4リンク11d、第5関節JT5、第5リンク11e、第6関節JT6、及び第4リンク11fから成るリンクと関節の連結体によって、スレーブアーム1の手首部14が形成されている。
【0044】
関節JT1〜JT6には、それが連結する2つの部材を相対的に回転させるアクチュエータの一例としての駆動モータM1〜M6が設けられている。駆動モータM1〜M6は、例えば、制御装置3によってサーボ制御されるサーボモータである。また、関節JT1〜JT6には、駆動モータM1〜M6の回転位置を検出するための回転センサE1〜E6(
図3参照)と、駆動モータM1〜M6の回転を制御する電流を検出するための電流センサC1〜C6(
図3参照)とが設けられている。回転センサE1〜E6は、例えばエンコーダである。なお、上記の駆動モータM1〜M6、回転センサE1〜E6、および電流センサC1〜C6の記載では、各関節JT1〜JT6に対応してアルファベットに添え字の1〜6が付されている。以下では、関節JT1〜JT6のうち任意の関節を示す場合には添え字を省いて「JT」と称し、駆動モータM、回転センサE、および電流センサC1〜C6についても同様とする。
【0045】
なお、上記したスレーブアーム1の構成は一例であって、スレーブアーム1の構成はこれに限定されるものではなく、該スレーブアーム1を用いて実施する作業内容および作業空間等に応じて適宜、構成は変更される。
【0046】
(制御装置)
次に、上述した構成を有するスレーブアーム1の動作を制御する制御装置3について
図2を参照して説明する。
図2は、
図1に示すロボットシステム100が備える制御装置3に係る機能的構造の一例を示すブロック図である。
【0047】
制御装置3は、スレーブアーム1の動作を制御するものであり、
図2に示すように、機能ブロックとして、受信部40、動作制御部41、出力制御部42、および継続判定部46を備えている。制御装置3は、例えば、マイクロコントローラ、MPU、PLC(Programmable Logic Controller)、論理回路等からなる演算部(図示せず)と、ROMやRAM等からなるメモリ部(図示せず)と、により構成することができる。また、制御装置3が備える各機能ブロックは、制御装置3の演算部がメモリ部に格納されている制御プログラムを読み出し実行することにより実現してもよい。
【0048】
受信部40は、制御装置3の外部から送信された入力信号を受信するものである。受信部40によって受信する入力信号としては、例えば、マスター装置9から送信された信号(操作入力信号)、あるいは状況情報取得部5から送信された信号等が挙げられる。
【0049】
動作制御部41は、スレーブアーム1の運転モードを、動作シーケンス情報51に基づき動作させる自動モードとするか、マスター装置9のマスターアーム2を介して入力された操作指示に基づき動作させる手動モードとするか、あるいは、自動モードで動作中のスレーブアームの動作を、マスター装置9のマスターアーム2を介して入力された操作指示に基づき修正する修正自動モードとするか判定する。そして、判定した運転モードに応じて前記スレーブアーム1の動作を制御する。
【0050】
例えば、動作制御部41は、受信部40が入力信号としてマスター装置9から次工程に対する操作指示を示す操作入力信号を受け付けた場合、この操作入力信号をトリガとしてスレーブアーム1が実施する次工程の運転モードを判定してもよい。あるいは、自動的に運転モードの切り替えが設定されている場合、動作制御部41は、スレーブアーム1の次工程での運転モードを記憶装置6に記憶された動作シーケンス情報51を参照して判定してもよい。
【0051】
動作制御部41は、運転モードを判定すると、判定された運転モードにてスレーブアーム1を動作させるように制御する。動作制御部41は、スレーブアーム1を自動モードによって動作させると判定した場合、動作シーケンス情報51を読み出し、この動作シーケンス情報51に規定された動作を実施するようにスレーブアーム1を制御する。一方、動作制御部41がスレーブアーム1を手動モードによって動作させると判定した場合、マスターアーム2から受信部40が受信した操作指示に基づき動作するようにスレーブアーム1を制御する。また、動作制御部41がスレーブアーム1を修正自動運転とすると判定した場合、スレーブアーム1の自動モードによる動作を、マスターアーム2を介して入力された操作指示に基づき修正した動作となるように該スレーブアーム1を制御する。
【0052】
なお、動作制御部41は、スレーブアーム1を自動モードにより動作させた場合、自動モードによる動作終了時に、自動モード終了を示す情報を出力制御部42に送信する構成となっていてもよい。
【0053】
出力制御部42は、出力装置4を制御し、オペレータ等に通知すべき情報を出力する。例えば、出力制御部42は、動作制御部41から自動モード終了を示す情報を受信した場合、該情報を出力するように出力装置4を制御する。そして、出力装置4は、この出力制御部42からの制御指示に応じて、スレーブアーム1の自動モード終了の通知を表示させたり、音または光で表現したりするなどして出力する構成であってもよい。このように構成した場合、オペレータは、スレーブアーム1の自動モードによる動作の終了を把握することができる。
【0054】
さらにまた、出力制御部42は、状況情報取得部5から状況情報を受信した場合、該状況情報を出力するように出力装置4を制御する構成となっていてもよい。このように構成されている場合であって、出力装置4が表示装置であるとき、出力装置4においてスレーブアーム1の動作状況等を表示させることができる。このため、オペレータは、スレーブアーム1の動作状況等を監視することができる。
【0055】
(状況情報取得部)
状況情報取得部5は、スレーブアーム1の作業空間内における状況を示す状況情報を取得する。状況情報は、作業空間内におけるスレーブアーム1の位置または姿勢等、あるいはスレーブアーム1を取り巻く周囲の状況を認識するために利用する情報を含む。より具体的には、状況情報は、例えば、作業空間内におけるスレーブアーム1の位置または姿勢、スレーブアーム1とワークとの位置関係、またはスレーブアーム1とワークを組付ける被組付部品との位置関係など、作業空間内においてスレーブアーム1の状況およびスレーブアーム1の周囲の状況を認識可能とするために必要な情報が含まれる。状況情報取得部5は、例えば、センサ、撮像装置、通信器、エンコーダ等によって実現できる。センサとしては、例えば、ワーク(組付部品)または被組付部品までの距離または位置を計測するためのレーザーセンサ、またはレーダーセンサなどが例示できる。さらには、複数の撮像装置から得られた画像データを用いてスレーブアーム1からその周囲の物体までの距離を計測するセンサであるステレオカメラなども例示できる。通信器としては、例えば、ワーク(組付部品)または被組付部品、あるいは作業空間内の所定位置に設置されたセンサおよび撮像装置からの情報を取得する通信器等が挙げられる。エンコーダとしては、例えば、スレーブアームの移動量または位置を検知できるエンコーダが例示できる。
【0056】
また、状況情報取得部5によって取得される状況情報は、上述したような作業空間内におけるスレーブアーム1の位置および/または姿勢、あるいはスレーブアーム1を取り巻く周囲の状況を認識するために利用する情報に限定されない。
【0057】
例えば、状況情報取得部5によって取得される状況情報は、例えば、スレーブアーム1で実施されている作業の経過時間を示す情報であってもよい。状況情報がスレーブアーム1で実施されている作業の経過時間を示す情報である場合、状況情報取得部5はスレーブアーム1が所定のステップを処理するにあたりかかった時間を計測する計側装置とすることができる。
【0058】
状況情報取得部5は状況情報を逐次、取得しており、取得された状況情報は、制御装置3に入力され、制御装置3においてスレーブアーム1の動作制御に利用される。さらには、制御装置3は、状況情報を出力装置4において出力させるように制御する構成としてもよい。状況情報取得部5は、スレーブアーム1自体に取り付けられていてもよいし、作業空間内の適切な位置に取り付けられていてもよい。また、取り付けられる状況情報取得部5の数は1つであってもよいし複数であってもよい。適切に状況情報を取得できる位置に適切な個数の状況情報取得部5が取り付けられていればよく、取り付け位置および取り付け個数は任意である。
【0059】
(出力装置)
出力装置4は、制御装置3から送信された情報を出力するものであり、例えば、表示装置、スピーカ、ライト、プリンタ、振動発生装置等によって実現できる。例えば、出力装置4が表示装置の場合、出力装置4では制御装置3から送信された情報を表示する。例えば、出力装置4がスピーカの場合、出力装置4では制御装置3から送信された情報を音として出力する。出力装置4がライトの場合、出力装置4では制御装置3から送信された情報を光として出力する。出力装置4が、プリンタの場合、出力装置4では、制御装置3から送信された情報を印字する。出力装置4が振動発生装置の場合、出力装置4では制御装置3から送信された情報を振動として出力する。出力装置4は、マスター装置9のオペレータが出力された情報を検知できる適切な位置に設けられる。
【0060】
(記憶装置)
記憶装置6は、読み書き可能な記録媒体であり、ロボットシステム100の動作シーケンス情報51を記憶している。動作シーケンス情報51は、スレーブアーム1の運転を規定するタスクプログラムであって、作業空間内でスレーブアーム1によって実施される各ステップの処理を規定した動作シーケンスに関する情報を含む。本実施の形態に係るロボットシステム100では、具体的には、
図3に示すように動作順とスレーブアーム1の運転モードと各工程の動作フローとを対応付けた情報となっている。
図3は、本発明の実施形態の実施例1に係るロボットシステム100の動作シーケンスの一例を示す図である。
【0061】
また、記憶装置6は、スレーブアーム1の予定された軌道範囲を示す予定軌道情報(不図示)を記憶していてもよい。なお、予定軌道情報としては、例えば、一連の作業の各工程を実施するにあたり予定されるスレーブアーム1の位置および姿勢等の時系列情報が例示できる。このように、記憶装置6に予定軌道情報が記憶されている構成の場合、スレーブアーム1が予定された軌道範囲から逸れた状態か否か検知するために利用することができる。
【0062】
なお、実施形態に係るロボットシステム100では、記憶装置6は、制御装置3と別体に設けられているが制御装置3と一体として設けられていてもよい。
【0063】
(マスター装置)
マスター装置9は、作業空間外に設置され、オペレータからの操作指示を受け付ける入力装置であり、マスターアーム2および操作指示部7を備えている。
【0064】
ロボットシステム100では、マスターアーム2をオペレータが動かすとスレーブアーム1が該マスターアーム2の動きに追従して動く。マスターアーム2は、スレーブアーム1と相似構造をしているためマスターアーム2の構成に関する説明は省略する。但し、マスターアーム2は、スレーブアーム1と非相似構造をした、例えば、レバーによる方向入力が可能な入力装置(ジョイスティック)であってもよい。
【0065】
オペレータがマスターアーム2を動かすことにより手動操作情報が生成され、制御装置3に送られる。本実施形態に係るロボットシステム100では、スレーブアーム1を動作させる運転モードが手動モードであるとき、マスターアーム2を介して入力される入力信号として操作入力信号が制御装置3に送られ、該操作入力信号に基づく制御装置3からの制御指示によりスレーブアーム1が該マスターアーム2の動きに追随して動く。また、例えば、スレーブアーム1を動作させる運転モードが修正自動モードであるとき、マスターアーム2から操作入力信号が制御装置3に送られ、制御装置3からの制御指示により自動で動作中のスレーブアーム1の動作が操作入力信号により修正される。
【0066】
操作指示部7は、マスターアーム2と同様に作業空間外に設置され、オペレータからの操作指示を受け付け、受け付けた操作指示を操作入力信号としてスレーブアーム1の制御装置3に送信する入力装置である。操作指示部7としては、オペレータの操作指示を受け付けるための入力スイッチ、またはタブレットなどの携帯端末などが例示できる。
【0067】
なお、マスター装置9からスレーブアーム1の制御装置3に送信される操作入力信号には、マスターアーム2を介してオペレータから入力された信号に加え、操作指示部7を介してオペレータから入力された信号が含まれていてもよい。
【0068】
(ロボットシステムの動作シーケンス)
次に、上記した構成を備えるロボットシステム100によって実施される一連の工程からなる作業の動作シーケンスについて以下の実施例1、2により説明する。
【0069】
(実施例1)
上述した
図3に加え、
図4〜
図6を参照して、本発明の実施形態の実施例1に係るロボットシステム100の動作シーケンスについて説明する。
図4は、
図3に示す動作シーケンスに沿って作業を実施するスレーブアーム1の一例を模式的に示す図である。
図5、6は、
図3に示す動作シーケンスを実施するマスター装置9、制御装置3、スレーブアーム1それぞれにおける動作処理の一例を示すフローチャートである。
【0070】
実施例1では、被組付対象へのワークの組付作業を例に挙げてロボットシステム100の動作シーケンスを説明している。本明細書では、
図3に示す動作シーケンス全体を作業と称し、
図3において<1>〜<5>で示される各処理を工程と称する。また、各工程で実施する処理をステップと称する。
図3における<1>〜<5>は、作業における各工程の実施順を示している。
【0071】
なお、ロボットシステム100においてタスクプログラムとして動作シーケンス情報51を実行することにより上記した動作シーケンスに沿ってスレーブアーム1が動作するように構成されている。実施例1の作業に関する動作シーケンスでは、ワークが格納されている位置からワークの組付位置の近傍(組付準備位置)までの移動を、スレーブアーム1が自動モードにより実施する。組付準備位置までスレーブアーム1がワークを持ってくると、被組付対象へのワークの組付は、組付位置の位置決め、および組付作業が複雑なため、オペレータからの操作指示に応じた手動モードによりスレーブアーム1が行うように設計されている。
【0072】
実施例1の作業に関するこの動作シーケンスは、被組付対象を車体とし、ワークAを前部シート、ワークBを後部シートとした自動車の艤装工程として適用できる。また、被組立対象をアームとし、ワークAを減速機、ワークBをモータとしたロボットの組み立て工程として適用できる。
【0073】
なお、説明の便宜上、被組立対処へのワークの組付作業を例に挙げ、以下に実施例1〜実施例4について説明するがロボットシステム100を利用して行う作業はこれに限定されるものではない。例えば、ワークに対する塗装作業であってもよい。この塗装作業としては、例えば、コンベア装置(不図示)によって塗装エリア(不図示)に搬送されたワークをスレーブアーム1が塗装する塗装作業が例示できる。あるいは、旅客機などの大型機器本体を塗装するためにスレーブアーム1が移動しながら塗装する塗装作業なども例示できる。
【0074】
まず、
図5に示すように、マスター装置9の操作指示部7をオペレータが操作して開始指示を入力する(ステップS11)。すなわち、マスター装置9から操作入力信号として動作シーケンスの開始を指示する開始指示信号が制御装置3に送信される。制御装置3では、受信部40が操作入力信号(開始指示信号)の待ち受け状態となっており、受信部40が開始指示信号を受信すると、動作制御部41がスレーブアーム1の運転モードを判定する(ステップS21)。動作制御部41は、スレーブアーム1の運転モードの判定を、記憶装置6に格納されている動作シーケンス情報51を参照して行う構成であってもよい。あるいは、動作制御部41は、マスター装置9から送信された開始指示信号内に次のステップにおけるスレーブアーム1の運転モードに関する情報が含まれており、該情報に基づき行う構成であってもよい。
【0075】
図3に示す動作シーケンス情報51に基づき運転モードを判定する場合、動作制御部41は以下のように運転モードを判定する。すなわち、動作シーケンス情報51では、最初の工程である動作順<1>において、スレーブアーム1の運転モードが自動モードに設定されている。そこで、動作制御部41が、スレーブアーム1の運転モードが自動モードであると判定し、自動モードによってスレーブアーム1を動作させるように制御する。つまり、動作制御部41は、動作シーケンス情報51を参照して、動作順<1>の各ステップをスレーブアーム1が実施するように制御指示を該スレーブアーム1に送信する。
【0076】
具体的には、動作制御部41からの制御指示(自動モード)に応じてスレーブアーム1は、ワークAの取り出し位置に移動し、ワークAの取出しを行う(ステップS31)。このときのワークAと被組付対象とスレーブアーム1の位置関係は
図4の(a)に示す状態となる。ワークAの取り出しを行うと、スレーブアーム1は、
図4の(b)に示すようにワークAを保持したまま組付準備位置まで移動する(ステップS32)。スレーブアーム1は、組付準備位置まで移動すると、操作指示信号の待ち受け状態(操作待ち状態)となる(ステップS33)。ここで操作指示信号とは、スレーブアーム1をオペレータにより手動モードにて動作させる際に、マスター装置9(マスターアーム2)を介してスレーブアーム1に送信される操作入力信号である。
【0077】
なお、スレーブアーム1が組付準備位置に到達したか否かについては状況情報取得部5から取得した状況情報に基づき動作制御部41が判定することができる。
図5において、スレーブアーム1のステップS32の後段から制御装置3のステップS22の前段に向かって延びている破線の矢印は、制御装置3による状況情報の取得を表している。
【0078】
そして、動作制御部41が、スレーブアーム1が組付準備位置に到達したことを確認した場合(ステップS22)、オペレータに組付作業の準備が完了した旨を通知するように出力制御部42に対して指示する。出力制御部42は、動作制御部41からの指示に応じて、出力装置4を制御して組付作業の準備完了を示す情報を出力させる(ステップS23)。このとき、受信部40は、マスター装置9から入力信号として送信される操作入力信号の待ち受け状態となっている。なお、
図5において、制御装置3のステップS23の後段からマスター装置9のステップS12の前段に向かって伸びる破線の矢印は、オペレータによる準備完了通知の検知を表している。
【0079】
出力装置4において準備完了が通知されると、オペレータは、マスター装置9の操作指示部7から運転モードの切り替え指示を入力し、その後、マスター装置9のマスターアーム2を用いて操作入力を行う(ステップS12)。これらの入力の結果、操作指示部7からの運転モード切り替え信号およびマスターアーム2からの操作入力信号がそれぞれ制御装置3に送信される。制御装置3では、受信部40がモード切り替え信号を受信すると、動作制御部41はスレーブアーム1の運転モードを判定する(ステップS24)。次工程の動作順<2>では運転モードは手動モードであるため、動作制御部41はマスターアーム2を介して入力された操作入力信号に基づく制御指示をスレーブアーム1に送信する。これにより、スレーブアーム1は、マスターアーム2の動作に追従して動作する。具体的には、スレーブアーム1は、マスターアーム2を介して入力された操作入力信号に従って
図4の(c)に示すように被組付対象に対してワークAの組付を行う(ステップS34)。被組付対象に対してワークAの組付が完了すると、オペレータはマスター装置9の操作指示部7を操作して作業完了通知を入力する(ステップS13)。作業完了通知の入力によりマスター装置9から作業完了信号が制御装置3に送信される。
【0080】
作業完了信号を受信部40が受信すると、制御装置3では、動作制御部41が次の工程におけるスレーブアーム1の運転モードを判定する(ステップS25)。動作制御部41は、スレーブアーム1の運転モードの判定を、記憶装置6に格納されている動作シーケンス情報51を参照して行う構成であってもよい。あるいは、動作制御部41は、マスター装置9から送信された作業完了信号内に次のステップにおけるスレーブアーム1の運転モードに関する情報が含まれており、該情報に基づき行う構成であってもよい。
【0081】
図3に示す動作シーケンス情報51の例では、次工程の動作順<3>において運転モードが自動モードに設定されている。そこで、動作制御部41は、運転モードが自動モードであると判定し、動作シーケンス情報51を参照して、動作順<3>の各ステップをスレーブアーム1が実施するように制御指示を該スレーブアーム1に送信する。
【0082】
具体的には、動作制御部41からの制御指示に応じてスレーブアーム1は、ワークAの組付完了位置より退避する(ステップS35)。そして、スレーブアーム1は、
図4の(d)に示すように、ワークBの取出しを行う(ステップS36)。ワークBの取り出しを行うと、スレーブアーム1は、
図4の(e)に示すように、ワークBを保持したまま組付準備位置まで移動する(ステップS37)。スレーブアーム1は、組付準備位置まで移動すると、操作指示信号の待ち受け状態となる(ステップS38)。
【0083】
なお、スレーブアーム1が組付準備位置に到達したか否かについてはステップS32と同様に状況情報取得部5から取得した状況情報に基づき動作制御部41が判定する構成であってもよい。
図6において、スレーブアーム1のステップS37の後段から制御装置3のステップS26の前段に向かって延びている破線の矢印は、制御装置3による状況情報の取得を表している。
【0084】
そして、動作制御部41は、スレーブアーム1が組付準備位置に到達したことを確認した場合(ステップS26)、出力制御部42に対して、オペレータに組付作業の準備が完了した旨を通知するように指示する。出力制御部42は、出力装置4を制御して組付作業の準備完了を示す情報を出力させる(ステップS27)。この後、受信部40は、マスター装置9から送信される操作入力信号の待ち受け状態となる。なお、
図6において、制御装置3のステップS27の後段からマスター装置9のステップS14の前段に向かって伸びる破線の矢印は、オペレータが出力装置4から出力された準備完了通知を検知していることを表している。
【0085】
出力装置4においてワークBの組付作業準備完了が通知されると、オペレータは、マスター装置9のマスターアーム2および操作指示部7を用いて運転モードの変更指示とともに操作入力を行う(ステップS14)。マスター装置9を介して入力された運転モードの変更指示および操作入力は、運転モード切り替え信号および操作入力信号として制御装置3に送信される。制御装置3では、受信部40が運転モード切り替え信号および操作入力信号を受信すると、動作制御部41が次工程におけるスレーブアーム1の運転モードを判定する(ステップS28)。
図3に示す動作シーケンス情報51の例では、次の動作順<4>において運転モードが手動モードに設定されている。そこで、動作制御部41は、運転モードが手動モードであると判定し、マスターアーム2から受信した操作入力信号に基づく制御指示(手動モード)をスレーブアーム1に送信する。これにより、スレーブアーム1は、マスターアーム2の動作に追従して動作する。具体的には、スレーブアーム1は、マスターアーム2からの操作入力に従って
図4の(f)に示すように被組付対象に対してワークBの組付を行う(ステップS39)。被組付対象に対してワークBの組付が完了すると、オペレータはマスター装置9の操作指示部7を操作して作業完了通知を入力する(ステップS15)。そして、操作指示部7により入力された作業完了通知が制御装置3に送信される。
【0086】
作業完了信号を制御装置3の受信部40が受信すると、動作制御部41が次工程におけるスレーブアーム1の運転モードを判定する(ステップS29)。
図3に示す動作シーケンス情報51の例では、動作順<5>において運転モードが自動モードに設定されている。そこで、動作制御部41は、運転モードが自動モードであると判定し、次工程となる動作順<5>の各ステップをスレーブアーム1が自動的に実施するように制御する。
【0087】
具体的には、動作制御部41からの制御指示(自動モード)に応じてスレーブアーム1は、ワークAの組付完了位置より退避する(ステップS40)。そして、スレーブアーム1は全作業完了位置に移動する(ステップS41)。
【0088】
以上のようにして、本発明の実施形態の実施例1に係るロボットシステム100は、一連の工程からなる作業に関する動作シーケンスを実施する。これにより、一連の工程からなる作業において、例えば、大まかな動作については、スレーブアーム1が自動モードによって行い、細かな動作等については、スレーブアーム1がオペレータからの操作入力に応じて動作する手動モードにより行うことができる。
【0089】
上記したように、動作制御部41による運転モードの判定は、受信部40による、マスター装置9から送信された開始指示信号、操作入力信号、または作業完了信号の受信をトリガにして、動作シーケンス情報51を参照して判定してもよい。あるいは、開始指示信号、操作入力信号、または作業完了信号内に、次工程で実施する運転モードを示す情報が含まれており、マスター装置9から送信されたこれらの信号内に含まれる運転モードを示す情報に基づき動作制御部41が運転モードを判定する構成としてもよい。マスター装置9から送信された信号に基づき動作制御部41が運転モードを判定する構成の場合、記憶装置6に記憶された動作シーケンス情報51において、運転モードに関する情報を含める必要がない。
【0090】
なお、上記した動作シーケンスでは、最初の工程(動作順<1>)からスレーブアーム1が自動運転を行う例を挙げて説明した。つまり、上記した動作シーケンスは、制御装置3がスレーブアーム1の作業開始時点でスレーブアーム1を取り巻く環境に対する外界認識ができている場合を想定したシーケンス例である。しかしながら、スレーブアーム1の作業開示時点で、制御装置3がスレーブアーム1を取りまく環境に対して外界認識ができていない場合も想定できる。このような場合は、まず、手動モードによりスレーブアーム1を、制御装置3が外界認識できる位置まで移動させ、その後、手動モードから自動モードに切り替える動作シーケンスとしてもよい。以下において、実施例2としてスレーブアーム1の作業開示時点で、制御装置3がスレーブアーム1を取りまく環境に対して外界認識ができていない場合における動作シーケンスについて説明する。
【0091】
(実施例2)
次に、
図7〜
図10を参照して、本発明の実施形態の実施例2に係るロボットシステム100の動作シーケンスについて説明する。
図7は、本発明の実施形態の実施例2に係るロボットシステム100の動作シーケンスの一例を示す図である。
図8は、
図7に示す動作シーケンスに沿って作業を実施するスレーブアーム1の一例を模式的に示す図である。
図9、10は、
図7に示す動作シーケンスを実施するマスター装置9、制御装置3、スレーブアーム1それぞれにおける動作処理の一例を示すフローチャートである。
【0092】
実施例2では、作業空間内に複数のワークが混在する環境において、所定のワークを把持し、ワーク置き場まで移動させる作業を例に挙げてロボットシステム100の動作シーケンスを説明している。
図7における動作順<1>〜<4>は、動作シーケンスにおける動作順を示している。なお、この動作シーケンスでは、混在するワークの中から所定のワークの把持をオペレータからの指示に応じた手動運転によりスレーブアーム1が行う。一方、ワークが把持されたら、ワーク置き場までの移動を、自動運転によりスレーブアーム1が実施する。
【0093】
一連の工程からなる作業に関するこの動作シーケンスは、例えば、悪環境な作業空間内に存在する寸法が均一ではないスラグまたは鋳物等の大型ワークを、所定位置に移動させる移動作業として適用できる。
【0094】
まず、
図9に示すように、マスター装置9をオペレータが操作して開始指示を入力する(ステップS111)。この開始指示の入力によりマスター装置9から動作シーケンスの開始を指示する開始指示信号が制御装置3に送信される。制御装置3では受信部40が操作入力信号(開始指示信号)の待ち受け状態となっている。そして、マスター装置9から開始指示信号が制御装置3に送信されると、該開始指示信号を受信部40が受信する。
【0095】
制御装置3では、開始指示信号を受信部40が受信すると、動作制御部41がスレーブアーム1の運転モードを判定する(ステップS121)。最初の工程である動作順<1>では運転モードが手動モードに設定されている。このため、動作制御部41は、運転モードが手動モードであると判定する。その後、オペレータは、マスター装置9のマスターアーム2を用いて操作入力を行う(ステップS112)。オペレータによる操作入力は、マスター装置9のマスターアーム2を介して、操作入力信号として制御装置3に送信される。制御装置3は、マスターアーム2から受信した操作入力信号に基づく制御指示をスレーブアーム1に送信する。これにより、スレーブアーム1は、マスター装置9の動作に追従して動作する。具体的には、スレーブアーム1は、マスター装置9からの操作入力に従って
図8の(a)に示すようにワークAを把持する(ステップS131)。ワークAの把持が完了すると、オペレータはマスター装置9の操作指示部7を介して把持完了通知を入力する(ステップS113)。把持完了通知の入力によりマスター装置9から制御装置3に把持完了信号が送信される。
【0096】
把持完了信号を制御装置3における受信部40が受け付けると、動作制御部41がスレーブアーム1の運転モードを判定する(ステップS122)。
図7に示す動作シーケンス情報51の例では、次工程である動作順<2>において運転モードが自動モードに設定されている。このため、動作制御部41は、運転モードが自動モードであると判定し、動作シーケンス情報51を参照して、動作順<2>の各ステップをスレーブアーム1が自動的に実施するように制御する。
【0097】
具体的には、動作制御部41からの制御指示(自動モード)に応じてスレーブアーム1は、
図8の(b)に示すように、ワークAを把持したままワーク置き場に移動する(ステップS132)。そして、スレーブアーム1は把持したワークAをワーク置き場に置き、操作指示信号の待ち受け状態となる(ステップS133)。
【0098】
なお、スレーブアーム1がワーク置き場に到達したか否かについては、状況情報取得部5から取得した状況情報に基づき、動作制御部41が判定することができる。なお、
図9において、スレーブアーム1のステップS132の後段から制御装置3のステップS123の前段に向かって延びている破線の矢印は、制御装置3による状況情報の取得を表している。
【0099】
そして、動作制御部41が、スレーブアーム1がワーク置き場に到達したことを確認した場合(ステップS123)、オペレータにワークAの移動が完了した旨を通知するように出力制御部42に対して指示する。出力制御部42は、動作制御部41からの指示に応じて、出力装置4を制御してワークAの移動完了を示す情報を出力させる(ステップS124)。なお、
図9において、制御装置3のステップS124の後段からマスター装置9のステップS114の前段に向かって伸びる破線の矢印は、オペレータによる準備完了通知の検知を表している。
【0100】
出力装置4において移動完了が通知されると、オペレータは、マスター装置9の操作指示部7を介して運転モードの切り替え指示を入力し、マスターアーム2を用いて操作入力を行う(ステップS114)。これらの入力の結果、操作指示部7からの運転モード切り替え信号およびマスターアーム2からの操作入力信号がそれぞれ制御装置3に送信される。制御装置3では、受信部40がモード切り替え信号を受信すると、動作制御部41が次工程におけるスレーブアーム1の運転モードを判定する(ステップS125)。
図7に示す動作シーケンス情報51の例では、次の動作順<3>において運転モードが手動モードに設定されている。そこで、動作制御部41は、運転モードが手動モードであると判定し、マスターアーム2から受信した操作入力信号に基づく制御指示(手動モード)をスレーブアーム1に送信する。
【0101】
これにより、スレーブアーム1は、マスターアーム2の動作に追従して動作する。具体的には、スレーブアーム1は、マスターアーム2からの操作入力に従って
図8の(c)に示すようにワークBを把持する(ステップS134)。ワークBの把持が完了すると、オペレータはマスター装置9の操作指示部7を操作して把持完了通知を入力する(ステップS115)。把持完了通知の入力によりマスター装置9から把持完了信号が制御装置3に送信される。
【0102】
把持完了信号を受信部40が受信すると、制御装置3では、動作制御部41が次工程におけるスレーブアーム1の運転モードを判定する(ステップS126)。動作制御部41は、スレーブアーム1の運転モードの判定を、記憶装置6に格納されている動作シーケンス情報51を参照して行う構成であってもよい。あるいは、動作制御部41は、マスター装置9から送信された把持完了信号内に次のステップにおけるスレーブアーム1の運転モードに関する情報が含まれており、該情報に基づき行う構成であってもよい。
【0103】
図7に示す動作シーケンス情報51の例では、動作順<4>において運転モードが自動モードに設定されている。そこで、動作制御部41は、運転モードが自動モードであると判定し、次工程となる動作順<4>の各ステップをスレーブアーム1が自動的に実施するように制御する。
【0104】
具体的には、動作制御部41からの制御指示(自動モード)に応じてスレーブアーム1は、
図8の(d)に示すように、ワークBを把持したままワーク置き場に移動する(ステップS135)。そして、スレーブアーム1は把持したワークAをワーク置き場に置き、操作指示信号の待ち受け状態となる(ステップS136)。
【0105】
なお、スレーブアーム1がワーク置き場に到達したか否かについてはステップS132と同様に状況情報取得部5から取得した状況情報に基づき動作制御部41が判定する構成であってもよい。
【0106】
そして、動作制御部41が、スレーブアーム1がワーク置き場に到達したことを確認した場合(ステップS127)、出力制御部42に対して、オペレータにワークAの移動が完了した旨を通知するように指示する。出力制御部42は、出力装置4を制御してワークBの移動完了を示す情報を出力させる(ステップS128)。なお、
図10において、スレーブアーム1のステップS135の後段から制御装置3のステップS127の前段に向かって延びている破線の矢印は、制御装置3による状況情報の取得を表している。また、制御装置3のステップS128の後段からマスター装置9に向かって伸びる破線の矢印は、オペレータが出力装置4から出力された移動完了通知を検知していることを表している。
【0107】
上記した動作制御部41による運転モードの判定は、受信部40による、マスター装置9から送信された操作入力信号(開始指示信号、または把持完了信号等)の受信をトリガにして、動作シーケンス情報51を参照して判定してもよい。あるいは、操作入力信号(開始指示信号、または把持完了信号等)内に次工程で実施する運転モードを示す情報が含まれており、これらマスター装置9から送信された信号に基づき動作制御部41が運転モードを判定する構成としてもよい。マスター装置9から送信された信号に基づき動作制御部41が運転モードを判定する構成の場合、記憶装置6に記憶された動作シーケンス情報51において、運転モードに関する情報を含める必要がない。
【0108】
(実施例3)
[継続許可判定・運転モード判定]
また、上記した実施例1および実施例2では、動作制御部41が運転モードを自動モードであると判定した工程では、該工程に含まれる全ステップをスレーブアーム1が自動モードにより動作する構成であった。しかしながら、この構成に限定されるものではなく、自動モードであると判定された工程であっても、スレーブアーム1の作業状況等に応じて自動モードによるスレーブアーム1の動作の継続を許可するか否か判定し、必要に応じて運転モードを、自動モードから変更できる構成としてもよい。
【0109】
例えば、実施例1において
図5に示すステップS35でスレーブアーム1が自動モードにより組付完了位置から退避すると、スレーブアーム1は続けて自動モードにより
図6に示す次のステップS36の作業を実施するのではなく、このステップS36の作業を引き続き自動モードにより実施してもよいか否かについて判定する構成となっていてもよい。換言すると、ステップS35までスレーブアーム1が自動モードで動作し、ステップS36以降のステップについては自動モードを継続させてよいか判定する構成となっていてもよい。なお、自動モードの継続の許可判定のタイミングは、上記したステップS35の後に限定されるものではない。自動モードの継続許可判定のタイミングは、スレーブアーム1によって実施するステップの内容に基づき、所定のステップを実施する前の位置で行われることが好適である。
【0110】
なお、実施例1および実施例2で行う作業を上述したように塗装作業とする場合は、自動モードによりスレーブアーム1が動作する予定の工程を、例えば、自動モードによりスレーブアーム1がワークに対して塗装を行う予定となっている工程とすることができる。また、この工程において自動モードの継続許可判定のタイミングを、例えば、塗装面における所定位置まで自動モードによりスレーブアーム1により塗装させたときとすることができる。この場合、自動モードの継続許可判定の対象となるステップは、所定位置以降の塗装面に対してスレーブアーム1によって行われる塗装のステップとなる。
【0111】
以下、
図2および
図11を参照して、スレーブアーム1が自動モードで動作する予定の工程において、該工程に含まれる所定のステップ以降のステップの実施に際して自動モードの継続の許可を判定する構成を実施例3として説明する。
【0112】
図11は、本発明の実施形態の実施例3に係るロボットシステムの動作シーケンスの一例を示すフローチャートである。
図11では、
図3に示す動作順<3>の工程に含まれる複数のステップを例に挙げて実施例3に係るロボットシステムの動作について説明する。したがって、
図11における、スレーブアーム1が実施するステップS235、S237〜S239は、
図5、6における、スレーブアーム1が実施するステップS35〜S38に相当する。また、
図11における、制御装置3が実施するステップS225は、
図5における、制御装置3が実施するステップS25に相当する。このため、これらのステップの詳細な説明については省略する。
【0113】
まず、ステップS225において制御装置3の動作制御部41が、スレーブアーム1が次に実施する予定の工程について、運転モードを判定する。
図3に示す動作シーケンス情報51の例では、次工程の動作順<3>において運転モードが自動モードに設定されている。そこで、動作制御部41は、運転モードが自動モードであると判定する。そして、動作制御部41は、制御指示(自動モード)をスレーブアーム1に送信することで、動作順<3>の各ステップを自動モードで実施させるようにスレーブアーム1を制御する。そして、動作制御部41からの制御指示によって、スレーブアーム1は、自動的にワークAの組付完了位置より退避する(ステップS235)。
【0114】
次に、動作制御部41は、状況情報取得部5により取得された状況情報に基づき、スレーブアーム1が組付完了位置より退避し所定の位置まで移動したことを検知する。そして、この検知後、動作制御部41は、自動モードの継続を許可するか否かについての問い合わせを行うように出力制御部42に指示する。この動作制御部41からの指示に応じて、出力制御部42は、出力装置4を制御して自動モードの継続を許可するか否かについての問い合わせを出力させる(ステップS226)。このとき、動作制御部41は、自動モードによるスレーブアーム1の動作を一旦、停止させ、操作待ち状態として待機させる(ステップS236)。また、制御装置3の受信部40は、マスター装置9から送信される操作入力信号の待ち受け状態となっている。
【0115】
なお、
図11において、スレーブアーム1のステップS235の後段から制御装置3のステップS236の前段に向かって伸びる破線の矢印は、スレーブアーム1が所定の位置まで移動したことを確認するために利用する状況情報を、制御装置3が受信することを表している。また、
図11において、制御装置3のステップS226の後段からマスター装置9のステップS210の前段に向かって伸びる破線の矢印は、自動モードの継続を許可するか否かについての問い合わせを、オペレータが検知することを表している。
【0116】
出力装置4によって自動モードの継続を許可するか否かについての問い合わせが通知されると、オペレータは、マスター装置9の操作指示部7を操作して、自動モードの継続を許可するか否かについての指示情報を入力する(ステップS210)。そして、操作指示部7を介して入力された指示情報は、操作入力信号として制御装置3に送信される。制御装置3では、受信部40が操作入力信号を受信すると、継続判定部46が、自動モードによるスレーブアーム1の動作の継続が許可されたか否か判定する(ステップS227)。そして、継続判定部46は、その判定結果を動作制御部41に通知する。動作制御部41は、継続判定部46から通知された判定結果に基づき、スレーブアーム1の運転モードを判定し(ステップS228)、該判定した運転モードで動作するようにスレーブアーム1を制御する。例えば、継続判定部46から通知された判定結果が、自動モードの継続を許可するものである場合、動作制御部41は、スレーブアーム1の運転モードを自動モードのままとし、制御指示を該スレーブアーム1に送信して、自動モードで継続して動作させるように制御する。
【0117】
一方、継続判定部46から通知された判定結果が、自動モードによるスレーブアーム1の動作の継続を許可しないものである場合、動作制御部41は、スレーブアーム1の運転モードを手動モードまたは修正自動モードであると判定する。ここで、スレーブアーム1の運転モードを手動モードとする場合、動作制御部41は、受信部40によって受信したマスターアーム2からの操作入力信号に応じて手動モードにより動作するようにスレーブアーム1を制御する。あるいは、スレーブアーム1の運転モードを修正自動モードとする場合、動作制御部41は、自動モードによるスレーブアーム1の動作の一部を、マスターアーム2からの操作入力信号により補正して動作するようにスレーブアーム1を制御する。
【0118】
つまり、継続判定部46から通知された判定結果が、自動モードの継続を許可する場合は、スレーブアーム1は、自動でワークBの取り出し(ステップS237)、組付準備位置への移動(ステップS238)を実施し、次の工程についての操作待ち状態(ステップS239)となる。
【0119】
一方、継続判定部46から通知された判定結果が、自動モードの継続を許可しない場合は、スレーブアーム1は、例えば、手動モードまたは修正自動モードによりワークBの取り出し(ステップS237)、組付準備位置への移動(ステップS238)を実施し、次の工程についての操作待ち状態(ステップS239)となる。あるいは、継続判定部46から通知された判定結果が、自動モードによるスレーブアーム1の動作の継続を許可しない場合、スレーブアーム1はステップS237〜S239を実施せず、運転を停止した状態のままとしてもよい。
【0120】
実施例3では、自動モードの継続を許可するか否についてオペレータに問い合わせ、マスター装置9の操作指示部7を介して入力された操作入力信号に基づき継続判定部46が自動モードの継続の可否について判定する構成について説明したがこの構成に限定されるものではない。自動モードの継続を許可するか否かについてオペレータに問い合わせることなく、状況情報取得部5によって取得した状況情報に基づき、継続判定部46が自動モードの継続の可否について判定する構成であってもよい。
【0121】
例えば、スレーブアーム1によって実施させる工程における各ステップの進捗状況に応じて、所定のステップを実施する前に継続判定部46が自動モードの継続を許可するか否か判定する構成とすることができる。より具体的には、ロボットシステム100は、状況情報取得部5として、スレーブアーム1により実施された各ステップの完了時刻を計測する計側部を備えているとする。そして、所定のステップ(
図11の例ではワークBの取出)を実施する前に、このステップの前のステップ(
図11の例では組み付け位置より退避)が完了した時間と、予定されているこの前のステップの完了時間(この前のステップを処理するにあたりかかる標準時間)とを比較し、所定範囲以上のずれが生じている場合、継続判定部46は、自動モードの継続を許可しないように判定する。逆に、組付け位置からの退避が完了した時間と、予定されている組付け位置からの退避の完了時間(退避の完了までにかかる標準時間)とを比較して所定範囲内に収まる場合は、継続判定部46は、自動モードの継続を許可する構成としてもよい。このように構成される場合、
図11において制御装置3が実施するステップS226および、マスター装置9が実施するステップS210を省略することができる。
【0122】
また、例えば、状況情報取得部5として、作業空間内におけるスレーブアーム1の位置を把握するセンサを備えている場合、このセンサによって検知された結果に基づき継続判定部46が自動モードの継続を許可するか否か判定する構成とすることもできる。より具体的には、上述のセンサの検知結果に基づき、ステップS235においてスレーブアーム1が所定範囲内に退避したか否か判定する。そして、スレーブアーム1が所定範囲内に退避していないと判定した場合は、継続判定部46は、自動モードの継続を許可しない。一方、スレーブアーム1が所定範囲内に存在すると判定した場合は、継続判定部46は、自動モードの継続を許可する構成としてもよい。
【0123】
(実施例4)
[運転モードを問い合わせる構成]
実施例3に係るロボットシステム100では、制御装置3が
図11に示すステップS226において自動モードの継続を許可するか否かについてオペレータに問い合わせ、ステップS227において運転モードを判定する構成であった。実施例4に係るロボットシステム100では、
図12に示すように、
図11に示す実施例3に係るロボットシステム100の動作シーケンスにおいて、自動モードの継続か許可されなかった場合、新たな運転モードをオペレータに問い合わせることができる構成とする。そして、この問い合わせに応じたオペレータからの入力に基づきスレーブアーム1の運転モードを動作制御部41が判定し、該判定した運転モードによりスレーブアーム1を動作させるように制御する。
図12は、本発明の実施形態の実施例4に係るロボットシステム100の動作シーケンスの一例を示すフローチャートである。
【0124】
図12に示すように実施例4に係るロボットシステム100の動作シーケンスは、
図11に示す実施例3に係るロボットシステム100の動作シーケンスと比較して、制御装置3が運転モードについての問い合わせを行うステップ(ステップS328)と、この問い合わせに応じてマスター装置9(オペレータ)がモード指定入力を行うステップ(ステップS311)とがさらに加わった以外は、同様である。このため、
図12において制御装置3の動作フローにおけるステップS328とマスター装置9の動作フローにおけるステップS311とについてのみ説明し、それ以外のステップについての説明は省略する。
【0125】
ステップS327において制御装置3の継続判定部46が自動モードの継続か許可されなかったと判定した場合、動作制御部41は、次ステップ以降でスレーブアーム1が動作する運転モードについてオペレータに対して問い合わせを行う(ステップS328)。より具体的には、動作制御部41は、スレーブアーム1の運転モードについての問い合わせを行うように出力制御部42に指示する。この動作制御部41からの指示に応じて、出力制御部42は、出力装置4を制御して運転モードの問い合わせ(運転モード問い合わせ情報)を出力させる(ステップS328)。このとき、制御装置3の受信部40は、マスター装置9から送信される操作入力信号(モード指定入力信号)の待ち受け状態となっている。
【0126】
なお、
図12において、制御装置3のステップS328の後段からマスター装置9のステップS311の前段に向かって伸びる破線の矢印は、運転モードについての問い合わせを、オペレータが検知することを表している。
【0127】
出力装置4において運転モードについての問い合わせが通知されると、オペレータは、マスター装置9の操作指示部7を介してモード指定入力を行う(ステップS311)。操作指示部7によるモード指定入力は、モード指定入力信号として制御装置3に送信される。制御装置3では、受信部40がモード指定入力信号を受信すると、動作制御部41がスレーブアーム1の運転モードを判定する(ステップS329)。そして、動作制御部41は判定した運転モードで動作するようにスレーブアーム1を制御する。
【0128】
なお、出力装置4による運転モードの問合せの態様は、オペレータの作業環境と該オペレータが実施する作業内容に応じて適宜、選択されることが好ましい。例えば、出力装置4がスピーカの場合は音でオペレータに運転モードの問合せを通知してもよい。出力装置4がライトの場合は光でオペレータに運転モードの問合せを行う構成であってもよい。あるいは、出力装置4が振動発生装置の場合は、振動でオペレータに運転モードの問合せを行う構成であってもよい。
【0129】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造および/または機能の詳細を実質的に変更できる。