特許第6871859号(P6871859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6871859亜鉛ジアクリレート誘導体および過酸化物を含む組成物を含んでいるタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871859
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】亜鉛ジアクリレート誘導体および過酸化物を含む組成物を含んでいるタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20210510BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20210510BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20210510BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20210510BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20210510BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08K5/098
   C08K5/14
   C08K3/04
   B60C1/00 Z
   B60C1/00 C
   C08L7/00
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-546773(P2017-546773)
(86)(22)【出願日】2016年3月3日
(65)【公表番号】特表2018-512478(P2018-512478A)
(43)【公表日】2018年5月17日
(86)【国際出願番号】EP2016054494
(87)【国際公開番号】WO2016139285
(87)【国際公開日】20160909
【審査請求日】2019年3月4日
(31)【優先権主張番号】1551846
(32)【優先日】2015年3月5日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100170944
【弁理士】
【氏名又は名称】岩澤 朋之
(72)【発明者】
【氏名】ヴァスール ディディエ
(72)【発明者】
【氏名】クロシェ オロール
【審査官】 幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−321127(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0144464(US,A1)
【文献】 特開2006−199864(JP,A)
【文献】 特開2003−082174(JP,A)
【文献】 特開2001−080319(JP,A)
【文献】 特開平11−208208(JP,A)
【文献】 特開平11−115407(JP,A)
【文献】 特開平11−124471(JP,A)
【文献】 特開平11−100463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 9/00
C08L 7/00
C08K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層を備えたタイヤであって、前記内層が少なくとも1種のジエンエラストマー、式(I):
【化1】
(式中、R1、R2およびR3は、独立して、水素原子、または直鎖、分枝鎖もしくは環状のアルキル基、アラルキル基、アルキルアリール基およびアリール基から選択されるC1-C7炭化水素基であって且つ1個以上のヘテロ原子によって中断されていてもよい前記C1-C7炭化水素基を表し、R2とR3が一緒になって非芳香環を形成してもよい)
の亜鉛塩の形態の亜鉛ジアクリレート誘導体をベースとするゴム組成物を含み、
前記ゴム組成物が過酸化物をさらに含み、亜鉛ジアクリレート誘導体と過酸化物の含有量が過酸化物含有量の亜鉛ジアクリレート誘導体含有量に対する比が0.09以下であるような量であり、
前記ゴム組成物がラストマー100質量部当たり65質量部未満、すなわち65phr未満の補強充填剤を含み、
補強充填剤含有量の亜鉛ジアクリレート誘導体含有量に対する比が0.7〜3の範囲内であり、
補強充填剤の少なくとも50質量%ーボンブラックであり、且つ
内層が、ラウンプライ、ビード-ワイヤーフィリング、デカップリング層およびこれら組み合わせからなる群から選択される、前記タイヤ。
【請求項2】
R1、R2およびR3が、独立して、水素原子またはメチル基を表す、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
R2およびR3が各々水素原子を表す、請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項4】
R1がメチル基を表す、請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
ゴム組成物中の亜鉛ジアクリレート誘導体量が、5〜40phrの範囲内である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
ゴム組成物中の過酸化物が有機過酸化物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
ゴム組成物中の過酸化物量が0.1〜3phrの範囲内である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項8】
過酸化物含有量の亜鉛ジアクリレート誘導体含有量に対する比が、0.01と0.09の間である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項9】
ジエンエラストマーが、ポリブタジエン、合成ポリイソプレン、天然ゴム、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項10】
ジエンエラストマーが、イソプレンエラストマーからなる群から選択される、請求項9に記載のタイヤ。
【請求項11】
ジエンエラストマーが、天然ゴム、合成ポリイソプレン、種々のイソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される、請求項10に記載のタイヤ。
【請求項12】
補強充填剤含有量が5〜60phrの範囲内である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項13】
ゴム組成物が加硫剤として分子硫黄または硫黄供与剤を含有しないかまたは0.5phr未満の分子硫黄または硫黄供与剤を含有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤ、より詳しくは、内層の組成物が亜鉛ジアクリレート誘導体および過酸化物を含んでいるタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
該組成物は、タイヤの内層でない目的に対しては最新のいくつかの文献に記載されている。例えば、文献US 2003/0065076には、耐摩耗性の改善の効果を有する、エラストマーと、補強充填剤と、亜鉛ジアクリレートまたは亜鉛ジメタクリレートと、過酸化物とを含む軍事タンクトラック用組成物が記載されている。この文献では、一方の過酸化物含有量と、もう一方の亜鉛ジアクリレートまたは亜鉛ジメタクリレート含有量との比が実施例によれば0.1、0.12または0.15の値を有する。
同様に、文献US 2005/0084638には、エラストマーと、補強充填剤と、亜鉛ジアクリレートと、過酸化物とを含む、サスペンションとしてエアスリーブを覆うための混合物の組成物が記載されている。この文献では、過酸化物含有量と亜鉛ジアクリレート含有物との比が実施例によれば0.15または0.2の値を有する。
【0003】
燃料節約と環境を保護する必要性が優先事項となってきたので、タイヤ、より詳しくはその内層の特定の分野では、転がり抵抗が低下したタイヤをタイヤのその他の特性に悪影響を及ぼすことなく製造することが必要になってきた。さらに、タイヤの混合物は老化に敏感であり、この老化は複数の要因、特に使用およびタイヤの領域に依存している。内層混合物は、一般的に外部の混合物より苛酷な熱条件を受け、外部の外気によって冷却される。この老化は、1990年の2つの出版物に記載されているように(Asahiro Ahagon, M. Kida and H. Kaidou, Aging of Tire Parts during Service. I. Types of Aging in Heavy-Duty Tires, Rubber Chemistry and Technology: November 1990, Vol. 63, No. 5, pp. 683-697, およびHiroyuki Kaidou and A. Ahagon, Aging of Tire Parts during Service. II. Aging of Belt-Skim Rubbers in Passenger Tires, Rubber Chemistry and Technology: November 1990, Vol. 63, No. 5, pp. 698-712)、材料の性質に影響を与え、ヒステリシスの増強、したがって転がり抵抗の増強の結果を有する。製造業者らは、この転がり抵抗を低減させることを可能にするタイヤ組成物を、様々な方法で、特に補強充填剤として混合物中にシリカを導入することにより開発した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、製造業者らは、常に、タイヤの転がり抵抗をさらに低減させる解決策を探し、これに関連して出願人の会社が、驚くべきことに、補強充填剤含有量の減少したタイヤ用ゴム組成物においてヒステリシスを著しく減少させることができることを発見したことであり、組成物は亜鉛ジアクリレート誘導体及び過酸化物を含むが、過酸化物含有量と亜鉛ジアクリレート誘導体との適切な比が選ばれている。
さらに、この解決策は、先行技術の組成物と比較して他の多くの利点を示し、特に内層混合物がタイヤの使用中に受けることになる2つの老化条件である熱条件および熱/酸化条件下で老化に対する抵抗が改善される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明は、少なくとも1種のジエンエラストマー、式(I):
【0006】
【化1】
【0007】
(ここで、R1、R2およびR3は、独立して、水素原子、または直鎖、分枝鎖または環状のアルキル基、アラルキル基、アルキルアリール基およびアリール基から選択され、1つ以上のヘテロ原子によって中断されていてもよいC1-C7炭化水素基を表し、R2とR3が一緒になって非芳香環を形成することが可能である)
の亜鉛塩の形態の亜鉛ジアクリレート誘導体をベースとするゴム組成物を含む内層を備えたタイヤであって、
前記組成物がさらに過酸化物を含み、亜鉛ジアクリレート誘導体と過酸化物の含有量が過酸化物含有量と亜鉛ジアクリレート誘導体含有量との比が0.09以下であるような量であり、前記組成物が補強充填剤を含まないかもしくはその65phr未満を含んでおり、充填剤含有量と亜鉛ジアクリレート誘導体含有量との比が4以下である、前記タイヤに関する。
【0008】
好ましくは、本発明は、R1、R2およびR3が、独立して、水素原子またはメチル基を表す、上で定義した通りのタイヤに関する。より好ましくは、R2およびR3は、各々、水素原子を表す。また、より好ましくは、R1はメチルを表す。
好ましくは、本発明は、組成物中の亜鉛ジアクリレート誘導体量が5〜40phr(エラストマー100質量部当たりの質量部)、好ましくは7〜35phrの範囲内である上で定義された通りのタイヤに関する。
好ましくは、本発明は、組成物中の過酸化物が3phr以下の量で存在することが好ましい有機過酸化物である、上で定義された通りのタイヤに関する。より好ましくは、組成物中の過酸化物の量は、0.1〜3phr、より好ましくは0.2〜2.5phr、さらに好ましくは0.25〜1.8phrの範囲内である。
好ましくは、本発明は、過酸化物含有量と亜鉛ジアクリレート誘導体含有量との比が0.01と0.09の間、好ましくは0.03と0.09の間、より好ましくは0.05と0.08の間である上で定義された通りのタイヤに関する。
好ましくは、本発明は、ジエンエラストマーがポリブタジエン、合成ポリイソプレン、天然ゴム、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される、上で定義した通りのタイヤに関する。より好ましくは、ジエンエラストマーは、イソプレンエラストマーからなる群から選択され、好ましくは、天然ゴム、合成ポリイソプレン、種々のイソプレンコポリマーおよびこれらエラストマーの混合物からなる群から選択される。
【0009】
好ましくは、本発明は、補強充填剤が5〜60phr、より好ましくは10〜50phr、さらに好ましくは20〜40phrの範囲内である上で定義した通りのタイヤに関する。
好ましくは、本発明は、補強充填剤がカーボンブラック、シリカまたは後者の混合物である上で定義された通りのタイヤに関する。好ましくは、補強充填剤は、主にカーボンブラックから構成されている。
好ましくは、本発明は、充填剤含有量と亜鉛ジアクリレート誘導体との比が0.15〜3、好ましくは1.5〜3、あるいは好ましくは0.7〜1.3の範囲内である上で定義された通りのタイヤに関する。
好ましくは、本発明は、組成物が加硫剤として分子硫黄または硫黄供与剤を含有しないかもしくはその0.5phr未満を含有する上で定義された通りのタイヤに関する。好ましくは、組成物は、加硫剤として分子硫黄または硫黄供与剤を含有しないかもしくは0.3phr未満、好ましくは0.1phr未満を含有する上で定義された通りのタイヤに関する。好ましくは、組成物は、加硫促進剤を含有しない。
好ましくは、本発明は、組成物が酸化防止剤を含有しない上で定義された通りのタイヤに関する。
好ましくはまた、本発明は、組成物が、可塑性樹脂、エキステンダー油およびそれらの混合物から選ばれることが好ましい可塑剤をさらに含んでいる上で定義された通りのタイヤに関する。
好ましくは、本発明に従うタイヤは、二輪車、乗用車、あるいはまた「重荷重」車両(即ち、地下鉄、バス、不整地車両、大型道路運送車両、例えばトラック、トラクター、トレーラー)、あるいはまた航空機、建設装置、大型農業車両または荷役車両を装備することを意図したタイヤから選択される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
I−内層の組成物の成分
本発明に従うタイヤの内層のゴム組成物は、以下の成分:式(I)の亜鉛塩の形態の亜鉛ジアクリレート誘導体および過酸化物をベースとし、亜鉛ジアクリレート誘導体と過酸化物の含有量が過酸化物含有量と亜鉛ジアクリレート誘導体含有量との比が0.09以下である量であり、前記組成物が補強充填剤を含まないかまたはその65phr未満を含み、充填剤含有量と亜鉛ジアクリレート誘導体含有量との比が4以下である。
本特許出願において、「phr」という表現は、知られているように、エラストマー100質量部当たりの質量部を意味する。したがって、組成物の成分の質量での量は、100値で通例考慮されるエラストマーの質量での全量について表される。
「ベースとする組成物」という表現は、使用される種々のベース成分のその場反応の混合物および/または生成物を含んでいる組成物を意味し、これらの成分の一部が、少なくとも部分的に、組成物の製造の種々の段階の間にまたは続いてのキュアリングの間に、反応することが可能でありかつ/または相互に反応するように意図されており、開始時に調製されたままの組成物を変性しているものとして理解されなければならない。したがって、本発明のために使われる組成物は、非架橋状態でおよび架橋状態で異なることができる。
本説明において、はっきりとことわらない限り、示されるすべてのパーセント(%)は質量パーセントである。さらにまた、「aとbの間」という表現によって示される値の任意の範囲は、aより大きくbより小さい値の範囲(すなわち、限度aおよびbが除外される)を表すが、「a〜b」という表現によって示される値の任意の範囲はaからbまでの値の範囲を意味する(すなわち、厳しい限度aおよびbが含まれる)。
【0011】
本発明の意味の範囲内でおよび当業者に既知のように、タイヤの内層は、タイヤの周囲空気または膨張ガスと接触していないタイヤの任意の層を意味すると理解される。これは、タイヤの中で、3種類の領域を画成することが可能であるからである:
・タイヤの内部領域、すなわち外側領域と内側領域の間。この領域には、ここでタイヤの「内層」と呼ばれる層またはプライが含まれる。これらは、例えば、タイヤの周囲空気または膨張ガスと接触していないカーカスプライ、タイヤベルトプライまたは任意の他の層である。本発明によれば、内層はカーカスプライ、クラウンプライ、ビード-ワイヤーフィリング、デカップリング層(タイヤの上述の層の間の接続または境界面を確保することを意図する層)およびこれらの内層の組み合わせからなる群から、好ましくは、カーカスプライ、クラウンプライ、ビード-ワイヤーフィリングおよびこれら内層の組み合わせからなる群から選択されることができる。
・膨張ガスと接触している半径方向内側領域、この領域は、一般的に膨張ガスに気密な層から構成され、時にはインナーライナーとして知られている。
・周囲空気と接触している半径方向外側領域、この領域は、本質的にタイヤのトレッドと外側サイドウォールとから構成されている。タイヤのトレッドは、タイヤベルトの上に半径方向に配置され、従って走行面と接触している層を構成している。
【0012】
I−1ジエンエラストマー
本発明のタイヤの組成物の内層組成物は、単一のジエンエラストマーまたは数種のジエンエラストマーの混合物を含有することができる。
「ジエン」タイプのエラストマー(または「ゴム」、これらの2つの用語は同義であると考えられている)は、ここでは、知られているように、ジエンモノマー(モノマーは2つの共役または非共役炭素-炭素二重結合を有する)から少なくとも部分的に得られる(すなわち、ホモポリマーまたはコポリマー)エラストマー(1種以上が解釈される)と解釈されるべきであることが想起される。
ジエンエラストマーは、2つのカテゴリー:「本質的に不飽和」または「本質的に飽和」に分類することができる。「本質的に不飽和」は、一般的には、15%(モル%)よりも大きいジエン由来(共役ジエン)の単位の含有量を有する共役ジエンモノマーから少なくとも部分的に得られるジエンエラストマーを意味すると解釈される;したがって、ブチルゴムまたはジエンとEPDMタイプのα-オレフィンのコポリマーのようなジエンエラストマーは、前の定義に該当せず、特に、「本質的に飽和」のジエンエラストマー(低いまたは極めて低い、常に15%未満のジエン由来の単位)と記載することができる。「本質的に不飽和」のジエンエラストマーのカテゴリーにおいて、「高不飽和」ジエンエラストマーは、特に、50%よりも大きいジエン由来(共役ジエン)の単位の含有量を有するジエンエラストマーを意味すると解釈される。
【0013】
これらの定義を考えれば、本発明に従う内層組成物中で使用することのできるジエンエラストマーは、より詳しくは下記を意味すると解釈される:
(a)4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの重合によって得られる任意のホモポリマー;
(b)1種以上の共役ジエンの相互とまたは8〜20個の炭素原子を有する1種以上のビニル芳香族化合物との共重合によって得られる任意のコポリマー;
(c)エチレンと3〜6個の炭素原子を有するα-オレフィンと6〜12個の炭素原子を有する非共役ジエンモノマーとの共重合によって得られる三元コポリマー、例えば、エチレンおよびプロピレンと上述のタイプの非共役ジエンモノマー、例えば、特に1,4-ヘキサジエン、エチリデンノルボルネンまたはジシクロペンタジエンから得られるエラストマー;
(d)イソブテンとイソプレンのコポリマー(ブチルゴム)、さらにこのタイプのコポリマーのハロゲン化変形例、特に塩素化または臭素化変形例。
これが任意のタイプのジエンエラストマーにあてはまるが、タイヤの当業者は、本発明が、特に上記タイプ(a)または(b)の、本質的に不飽和のジエンエラストマーと使われることが好ましいことを理解するであろう。
下記が特に共役ジエンとして適している:1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジ(C1〜C5アルキル)-1,3-ブタジエン、例えば、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエン、アリール-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンまたは2,4-ヘキサジエン。ビニル芳香族化合物として、例えば、下記が適している:スチレン、オルト-、メタ-またはパラ-メチルスチレン、市販の混合物「ビニルトルエン」、パラ-(tert-ブチル)スチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼンまたはビニルナフタレン。
【0014】
コポリマーは、99質量%と20質量%の間のジエン単位および1質量%と80質量%の間のビニル芳香族単位を含有することができる。エラストマーは、使用する重合条件、特に、変性剤および/またはランダム化剤の有無および使われる変性剤および/またはランダム化剤の量に依存する任意のミクロ構造を有することができる。エラストマーは、例えば、ブロック、ランダム、逐次的またはミクロ逐次的エラストマーであることができ、分散液または溶液で調製することができ;それらは、カップリングおよび/または星型分岐あるいはカップリング剤および/または星型分岐剤または官能化剤で官能化することができる。例えば、カーボンブラックにカップリングするために、C-Sn結合を含む官能基またはアミノ化官能基、例えばアミノベンゾフェノンが挙げられてもよく;シリカのような補強無機充填剤に結合するために、シラノールまたはシラノール末端を有するポリシロキサン官能基(例えば、FR 2 740 778、US 6 013 718およびWO 2008/141702に記載されている)、アルコキシシラン基(例えば、FR 2 765 882またはUS 5 977 238に記載されている)、カルボキシル基(例えば、WO 01/92402またはUS 6 815 473、WO 2004/096865またはUS 2006/0089445)あるいはポリエーテル基(例えば、EP 1 127 909、US 6 503 973、WO 2009/000750およびWO 2009/000752)が挙げられてもよい。官能化エラストマーの他の例として、また、エポキシ化タイプの(例えばSBR、BR、NRまたはIR)エラストマーを挙げることもできる。
まとめると、組成物のジエンエラストマーは、好ましくは、ポリブタジエン(「BR」と略す)、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらエラストマーの混合物からなる高不飽和ジエンエラストマーの群から選択される。このようなコポリマーは、より好ましくは、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)、ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー(NBR)、ブタジエン/スチレン/アクリロニトリルコポリマー(NSBR)またはこれらの化合物の2種以上の混合物からなる群から選択される。
【0015】
特に好適な実施態様によれば、ジエンエラストマーは、主としてイソプレンエラストマーである(すなわち、その他のエラストマーの質量分率と比較して、イソプレンエラストマーの質量分率が最大である)。「イソプレンエラストマー」は、知られているように、イソプレンホモポリマーまたはコポリマー、言い換えれば、可塑化または解膠されてもよい天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、種々のイソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択されるジエンエラストマーを意味すると解釈される。特に、イソプレンコポリマーのうち、イソブテン/イソプレンコポリマー(ブチルゴムIIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)またはイソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)またはイソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)が挙げられる。このイソプレンエラストマーは、好ましくは、天然ゴムまたは合成シス-1,4-ポリイソプレンである;好ましくは、これらの合成ポリイソプレンのうち、シス-1,4-結合の含有量(モル%)が90%より大きく、より好ましくは98%より大きいポリイソプレンが使用される。好ましくは、この実施態様によれば、イソプレンジエンエラストマーの含有量は、50phr(すなわち、50〜100phr)、より好ましくは少なくとも60phr(すなわち、60〜100phr)、より好ましくは少なくとも70phr(すなわち70〜100phr)、さらにより好ましくは少なくとも80phr(すなわち、80〜100phr)、非常に好ましくは少なくとも90phr(すなわち90〜100phr)である。特に、本実施態様によれば、イソプレンジエンエラストマーの含有量は、非常に好ましくは100phrである。
【0016】
I−2亜鉛アクリレート誘導体
本発明に従うタイヤは、式(I):
【0017】
【化2】
【0018】
(式中、R1、R2およびR3は、独立して、水素原子、または直鎖、分枝鎖または環状のアルキル基、アラルキル基、アルキルアリール基およびアリール基から選択され、1個以上のヘテロ原子によって中断されていてもよいC1-C7炭化水素基を表し、R2とR3が一緒になって非芳香環を形成することが可能である)
の亜鉛塩の形態の亜鉛アクリレート誘導体を含む組成物を含んでいる内層を備えている。
環状アルキルは、1個以上の環を含むアルキル基を意味すると解釈される。
1個以上のヘテロ原子によって中断された炭化水素基または鎖は、1個以上のヘテロ原子を含む基または鎖を意味すると解釈され、各ヘテロ原子は前記基または前記鎖の2つの炭素原子の間または前記基または前記鎖の炭素原子または前記基または前記鎖の他のヘテロ原子の間または前記基または前記鎖の他の2つのヘテロ原子の間にある。
ヘテロ原子(1個または複数)は、窒素、硫黄または酸素原子であることができる。
好ましくは、R1、R2およびR3は、独立して、水素原子またはメチル基を表す。より好ましくは、R2およびR3は、各々、水素原子を表し、また非常に好適な代替例によれば、R1はメチル基を表す。
本発明に従うタイヤの内層の組成物において、亜鉛ジアクリレート誘導体量は、10〜50phr、好ましくは20〜30phrの範囲内であることが好ましい。50phrの含有量より多いと分散が不充分であり、組成物の特性が低下することになり、10phrの含有量より少ないと亜鉛アクリレート誘導体の効果が剛性化および補強に関して顕著でなくなる。
一例として、亜鉛ジアクリレート誘導体、例えば亜鉛ジアクリレート(ZDA) Cray Valleyからの「DIMALINK 633」または亜鉛ジメタクリレート(ZDMA) Cray Valleyからの「DIMALINK 634」が市販されている。
【0019】
I−3過酸化物
上記のジエンエラストマーおよび亜鉛ジアクリレート誘導体に加えて、本発明のタイヤの内層の組成物は過酸化物を使用し、これは当業者に既知の任意の過酸化物であることができる。
当業者に周知の過酸化物の中でも、有機過酸化物のファミリーから選ばれた過酸化物、特にジクミルペルオキシド、アリールまたはジアリールペルオキシド、ジアセチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジ(tert-ブチル)ペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサンおよびこれらの混合物から選択されるペルオキシドを本発明に使用することが好ましい。
商品名で知られている様々な包装製品が市販されている;Hercules Powder Co.からのDicup、Noury van der LandeからのPerkadox Y12、Montecatini Edison S.p.A.からのPeroximon F40、Noury van der LandeからのTrigonox、R.T.Vanderbilt Co.からのVaroxあるいはWallace & Tiernan Inc.からのLuperkoが挙げられてもよい。
好ましくは、本発明の要求のために使用される過酸化物量は、3phr以下である。好ましくは、組成物中の過酸化物量は、0.1〜3phrの範囲内である。これは、0.1phr量より少ないと過酸化物の効果が顕著でなくなり、3phrより多いと破断点伸び、したがって組成物の強度特性が弱められるからである。より好ましくは、組成物中の過酸化物量は、0.2〜2.5phr、好ましくは0.25〜1.8phrの範囲内である。
上でわかった亜鉛ジアクリレート誘導体と過酸化物のどのような量でも、過酸化物含有量と亜鉛ジアクリレート誘導体含有量の比が0.09以下であることが本発明にとって重要である。そのような含有量より多いと、亜鉛ジアクリレート誘導体と過酸化物の間の相乗効果はレオメトリーおよび破断点伸びに対する効果の点で、特に、タイヤ内層の応力を受けた組成物には効率的ほどではない。好ましくは、過酸化物含有量と亜鉛ジアクリレート誘導体含有量との比は、0.01と0.09の間、好ましくは0.03と0.09の間、より好ましくは0.05と0.08の間である。
【0020】
I−4補強充填剤
ジエンエラストマー、亜鉛ジアクリレート誘導体および過酸化物は、本発明が行われるのにそれら自体のみで充分である。しかし、本発明に従うタイヤの内層の組成物は、補強充填剤を含むことができる。
補強充填剤が供給される物理的状態は、粉末、マイクロビーズ、顆粒、ビーズあるいは他の任意の適切な緻密化形態の形であるかは重要ではない。
タイヤ製造に使用することができるゴム組成物を補強するその能力について知られているいかなるタイプ補強充填剤、例えば、カーボンブラック、補強無機充填剤、例えば、シリカ、あるいはこれらの2つのタイプの充填剤のブレンドが使用されてもよい。
すべてのカーボンブラック、特に「タイヤグレード」ブラックがカーボンブラックとして適している。より詳しくは、後者の中でも、100、200または300シリーズの補強カーボンブラック(ASTMグレード)、例えばN115、N134、N234、N326、N330、N339、N347、N375ブラック、あるいは目標とする用途によっては高級シリーズのブラック(例えばN660、N683またはN772)が挙げられる。カーボンブラックは、例えば、マスターバッチの形でイソプレンエラストマーに既に組み込まれていてもよい(例えば、出願WO 97/36724またはWO 99/16600参照)。
カーボンブラック以外の有機充填剤の例としては、官能化ポリビニル有機充填剤、例えば出願WO-A-2006/069792、WO-A-2006/069793、WO-A-2008/003434およびWO-A-2008/003435に記載されているものが挙げられてもよい。
【0021】
組成物は、また、1種類のシリカまたはいくつかのシリカのブレンドを含むことができる。使用されるシリカは、当業者に公知の任意の補強性シリカ、特に、BET比表面積およびCTAB比表面積が共に450m2/g未満、好ましくは30〜400m2/gの沈降シリカまたはヒュームドシリカであることができる。高分散性沈降シリカ(「HDS」)としては、例えばDegussaからのUltrasil 7000およびUltrasil 7005シリカ、RhodiaからのZeosil 1165MP、1135MPおよび1115MPシリカ、PPGからのHi-Sil EZ150Gシリカ、HuberからのZeopol 8715、8745および8755シリカ、例えば、出願EP-A-0735088に記載されているアルミニウムで「ドープされた」シリカ、または出願WO 03/16837に記載されている高比表面積を有するシリカが挙げられる。
シリカは、好ましくはBET比表面積が、45m2/gと400m2/gの間、より好ましくは60m2/gと300m2/gの間である。
当業者は、本項に記載されたシリカに等価な充填剤として、別の種類の補強充填剤、特に有機の種類を使用してもよいが、この補強充填剤がシリカの層で覆われているかあるいは充填剤とエラストマーの間の結合を形成するためにカップリング剤の使用を必要とするその表面に官能部位、特にヒドロキシル部位を含むことを理解するであろう。
【0022】
ゴム組成物中の補強充填剤の体積分率は、補強充填剤の体積と組成物の全成分の体積との比として定義され、全ての成分の体積が組成物の成分の各々の体積を一緒に添加することによって計算されることが理解される。したがって、組成物中の補強充填剤の体積分率は、補強充填剤の体積と組成物の成分の各々の体積の和との比として定義され、好ましくは、この体積分率は5%と20%の間、好ましくは5%と15%の間である。等価な好ましい形では、全補強充填剤(カーボンブラックおよび/またはシリカ)は、65phr未満、好ましくは5〜60phr、より好ましくは10〜50phr、非常に好ましくは20〜40phrである。
これは、本発明の利点が性能を失うことなく補強充填剤含有量を低減することを可能にすることであるからである。65phrの含有量が多いと、この利点はもはや大きくなく、組成物のヒステリシスが増加する。
したがって、好ましくは、充填剤含有量と亜鉛ジアクリレート誘導体との比は、0.15〜3、好ましくは1.5〜3の範囲内である。あるいは、さらに好ましくは、充填剤含有量と亜鉛ジアクリレート誘導体との比は、0.7〜1.3の範囲内である。
【0023】
好ましくは、本発明に従うタイヤの内層の組成は、主に補強充填剤としてカーボンブラックを含んでいる。主な補強充填剤は、組成物中に存在する補強充填剤の中で最も大きい含有量を示すことを意味と解釈される。主な補強充填剤は、特に、存在する補強充填剤の少なくとも50質量%、好ましくは50%を超え、より好ましくは60%を超え、実際に70%を超え、実際に80%を超え、実際に90%を超え、実際に100%さえも存在する任意の補強充填剤を意味すると解釈される。
これらの組成物は、また、補強充填剤に加えて、特にシリカが本発明に従うタイヤの内層の組成物に使用される場合、カップリング剤、カップリング活性化剤、無機充填剤を被覆する物質、またはより一般的には、知られるように、ゴムマトリックス中の充填剤の分散の改善および組成物の粘度の低下によって生状態で処理されるその能力を改善することが可能な加工助剤を含有してもよく、これらの物質は、例えば、アルキルアルコキシシラン、ポリオール、脂肪酸、ポリエーテル、第一級、第二級または第三級アミン、またはヒドロキシル化または加水分解性ポリオルガノシロキサンのような加水分解性シランである。
特に、カップリング剤として、例えば、出願WO 03/002648(またはUS 2005/016651)およびWO 03/002649(またはUS 2005/016650)に記載されているようにその特定の構造によっては「対称」または「非対称」と呼ばれるシラン多硫化物が使用される。
【0024】
以下の定義に限定されることなく、下記の一般式(III)に相当する「対称」と呼ばれるシラン多硫化物が特に適切である:
(III) Z - A - Sx - A - Z
式中:
−xは2〜8(好ましくは2〜5)の整数であり;
−Aは、二価の炭化水素基(好ましくはC1-C18アルキレン基、より詳しくはC1-C10、特にC1-C4アルキレン、特にプロピレン)であり;
−Zは、以下の式の1つに相当する:
【0025】
【化3】
【0026】
式中:
−R1基は、置換または非置換で同一または相互に異なり、C1-C18アルキル基、C5-C18シクロアルキル基またはC6-C18アリール基(好ましくはC1〜C6アルキル基、シクロヘキシル基またはフェニル基、特にC1-C4アルキル基、より詳しくはメチルおよび/またはエチル)を表し;
−R2基は、置換または非置換で同一または相互に異なり、C1-C18アルコキシル基またはC5-C18シクロアルコキシル基(好ましくはC1〜C8アルコキシルおよびC5-C8シクロアルコキシルから選ばれた基、より好ましくはC1-C4アルコキシル、特にメトキシおよびエトキシルから選ばれた基)を表す。
【0027】
上記式(II)に相当するアルコキシシラン多硫化物の混合物の場合、特には市販の通常の混合物の場合、指数「x」の平均値は、好ましくは2と5の間の分数、より好ましくは約4である。しかしながら、本発明は、例えばアルコキシシラン二硫化物(x=2)でも有利に行うことができる。
シラン多硫化物の例として、より詳しくは、ビス((C1-C4)アルコキシル(C1-C4)アルキルシリル(C1-C4)アルキル)多硫化物(特に、二硫化物、三硫化物または四硫化物)、例えば、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)多硫化物またはビス(3-トリエトキシシリルプロピル)多硫化物が挙げられる。これらの化合物の中で、式[(C2H5O)3Si(CH2)3S2]2のビス(3-トリエトキシシリルプロピル)四硫化物(TESPTと略す)または式[(C2H5O)3Si(CH2)3S]2のビス(3-トリエトキシシリルプロピル)二硫化物(TESPDと略す)が特に使用される。好適な例として、特許出願WO 02/083782(またはUS 2004/132880)に記載されているように、ビス(モノ(C1-C4)アルコキシルジ(C1-C4)アルキルシリルプロピル)多硫化物(特には、二硫化物、三硫化物または四硫化物)、より詳しくはビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)四硫化物も挙げられる。
アルコキシシラン多硫化物以外のカップリング剤として、例えば、特許出願WO 02/30939(またはUS 6 774 255およびWO 02/31041(またはUS 2004/051210)に記載されている、二官能POS(ポリオルガノシロキサン)あるいはヒドロキシシラン多硫化物(上記式IIIにおいてR2=OH)あるいは、例えば特許出願WO 2006/125532、WO 2006/125533およびWO 2006/125534に記載されている、アゾジカルボニル官能基を有するシランまたはPOSが挙げられる。
本発明において使用するゴム組成物では、カップリング剤含有量は、好ましくは2phrと15phrの間、より好ましくは3phrと13phrの間、より好ましくは5phrと10phrの間である。
【0028】
1−5加硫系
本発明に従うタイヤの内層の組成物は加硫系を必要とせず、これが形成および組成物の調製を簡略化することを可能にするのでその利点の1つである。しかしながら、加硫系が組成物中に存在する場合には、下記で説明される少量で存在することが好ましい。
適切な加硫系は、通常、硫黄(または硫黄供与体)および一次加硫促進剤をベースとする。このベース加硫系に最初の非生産段階でおよび/または続いて記載されるように生産段階で混入される、酸化亜鉛、ステアリン酸または等価な化合物、グアニジン誘導体(特にジフェニルグアニジン)のような種々の既知の二次加硫促進剤または加硫活性化剤が追加される。
分子硫黄(または分子硫黄を供与する等価な物質)は、それが使用される場合、優先的には0.5phr未満、好ましくは0.3phr未満の含有量で、より好ましくは0.1phr未満の含有量で使用される。非常に好ましくは、組成物は分子硫黄がない。
本発明に従う組成物の加硫系は、また、1種以上の追加の促進剤、例えば、チウラムのファミリーの化合物、亜鉛ジチオカルバメート誘導体、スルフェンアミド、グアニジンまたはチオホスフェートを含むことができる。特に、硫黄、特にチアゾールタイプの促進剤、さらにその誘導体、およびチウラムおよび亜鉛ジチオカルバメートタイプの促進剤の存在下にジエンエラストマーの加硫のための促進剤として作用することのできる任意の化合物が使用されてもよい。これらの促進剤は、より好ましくは2-メルカプトベンゾチアジル二硫化物(MBTSと略す)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBSと略す)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(DCBSと略す)、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBSと略す)、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBSIと略す)、亜鉛ジベンジルジチオカルバメート(ZBECと略す)およびこれらの化合物の混合物からなる群から選択される。好ましくは、スルフェンアミドタイプの一次促進剤が使用される。
促進剤が使用される場合には、タイヤ用加硫組成物の当業者によって使用されるような含有量で使用される。しかし、本発明に従うタイヤの内層の組成物は、任意の加硫促進剤がないことが好ましい。
【0029】
I−6他の可能な添加剤
本発明に従うタイヤの内層組成物は、また、特に内層の製造に意図したエラストマー組成物に一般的に使用される通常の添加剤の全部または一部、例えば、顔料、保護剤、例えば抗オゾンワックス、化学オゾン劣化防止剤、酸化防止剤、可塑剤、例えば以下に示されるようなもの、抗疲労剤、補強樹脂またはメチレン受容体(例えば、ノボラックフェノール樹脂)または供与体(例えば、HMTまたはH3M)を含んでもよい。
好適な形態によれば、本発明のタイヤの内層の組成物は、酸化防止剤がない。
好適な形態によれば、本発明のタイヤの内層の組成は、可塑剤がない。あるいは、また、好適な実施形態によれば、本発明に従う組成物は、さらに可塑剤を含んでいる。好ましくは、この可塑剤は固体炭化水素樹脂(または可塑化樹脂)、エキステンダー油(または可塑化オイル)またはこの両方の混合物である。
本発明が「生」または非架橋状態(すなわち、キュアリング前)および「キュアされた」または架橋された、あるいは加硫された状態(すなわち、架橋または加硫後)両方において上述したゴム組成物を含む内層を備えたタイヤに関することは明らかである。
【0030】
II−ゴム組成物の調製
当業者によく知られている2つの連続する製造段階を使用して適切なミキサーにおいて組成物を製造する:110℃と190℃の間、好ましくは130℃と180℃の間の最高温度までの高温で熱機械的に加工または混練する第1段階(時には「非生産」段階と呼ばれる)、続いて典型的には110℃よりも低い、例えば、60℃と100℃の間の低めの温度で機械加工する第2の段階(時には「生産」段階と呼ばれる)、その仕上げ段階で本発明に従う組成物の架橋系または加硫系、特に過酸化物が混入される;そのような段階は、例えば、出願EP-A-0 501 227、EP-A-0 735 088、EP-A-0 810 258、WO00/05300またはWO00/05301に記載されている。
第1(非生産)段階は、いくつかの熱機械的段階で行われることが好ましい。第1段階の間に、エラストマーおよび補強充填剤(および任意でカップリング剤および/または他の成分)が通常の密閉ミキサーのような適切なミキサー内に20℃と100℃の間、好ましくは25℃と100℃の間の温度で導入する。数分、好ましくは0.5〜2分後、90℃〜100℃に温度の上昇後、その他の成分(すなわち、開始時に全てが添加されなかった場合には残っているもの)を架橋系、特に過酸化物を除いて、一度にまたは少しずつ20秒から数分間の混合中に添加する。この非生産段階において総混錬時間は、180℃以下、好ましくは170℃以下の温度で好ましくは2分と10分間の間である。
【0031】
このようにして得られた混合物を冷却した後に、架橋系、特に過酸化物を、低温(典型的には100℃未満)で、一般に開放ミルのような開放ミキサー内に導入する;次に混ぜ合せた混合物を数分間、例えば、5分と15分間の間混合する(生産段階)。
このようにして得られた最終組成物は、続いて、例えば、シートまたはプラークの形に、特に実験室特性決定のためにカレンダー加工されるか、あるいは「内層」として知られる製品、例えばカーカスプライ、クラウンプライ(またはタイヤベルト)またはビード-ワイヤーフィリングを得るために、半仕上げ製品の製造に使用されるゴムに使用するゴム形状要素を形成するために押出される。これらの製品は、続いて、当業者に既知の技術にしたがってタイヤの製造に使用することができる。
加硫(またはキュアリング)は、知られているように、一般に130℃と200℃の間の温度で圧力下に、特にキュアリング温度、選ばれた加硫系、当該組成物の加硫の速度論あるいはタイヤのサイズの関数として異なることができる充分な時間、例えば、5分と90分間の間行われる。
【実施例】
【0032】
以下の実施例は本発明を限定することなく例示するものである。
【0033】
III−本発明の例示的実施態様
III−1実施例の調製
以下の実施例において、上述のようにゴム組成物を製造した。
III−2実施例の特性決定
実施例において、ゴム組成物を、キュアリングの前後に、以下に示すように特性決定する。
動的特性(キュアリング後):引張試験
これらの引張試験は、弾性応力および破断点諸特性の測定を可能にする。特に断らない限り、これらの試験は、1988年9月のフランス規格 NF T 46-002に従って行う。また、引張記録の処理は、伸びの関数としてモジュラス曲線をプロットすることも可能にし、使用するモジュラスは、この場合、1回目の伸びにおいて測定し、試験標本の初期断面まで減じることによって算出した公称(または見掛け)割線モジュラスである。公称割線モジュラス(または見掛け応力、MPaでの)は、50%、100%および300%の伸びにおいて1回目の伸びにて測定し、それぞれM50、M100およびM300と記す。
破壊応力(MPaでの)および破断点伸び(%での)も、規格NF T 46-002に従い、23℃±2℃において測定する。結果を「ベース100で」、すなわち100の値が割り当てられる対照と比較して表す。
【0034】
すべてのこれらの引張測定は、フランス規格NF T 40-101(1979年12月)によれば、温度(23±2℃)および湿度(50±5%相対湿度)の標準の条件下で行われる。
動的特性G*(10%)およびtan(δ)max、60℃は、規格ASTM D 5992-96に従って、粘度アナライザー(Metravib VA4000)により測定する。単純な交互正弦波剪断応力に、10Hzの周波数において、規格ASTM D 1349-99に従う所定の温度条件下に、例えば60℃で供した加硫組成物の試料(厚さ4mmおよび断面積400mm2を有する円筒状試験標本)の応答を記録する。歪み振幅掃引を、0.1%から50%まで(外方向サイクル)、次いで、50%から1%まで(戻りサイクル)で行う。使用する結果は、複素動的モジュラスG*および損失係数tan(δ)である。観察されたtan(δ)maxで表わすtan(δ)の最高値および10%歪み、60℃での複素動的モジュラスG*(10%)は、戻りサイクルとして示される。
当業者に周知のように、tan(δ)max、60℃の値が材料のヒステリシス、したがって転がり抵抗を表す:60℃でのtan(δ)maxが小さいほど、転がり抵抗が低減されることが思い出されなければならない。
同じ動的特性は、組成物が熱老化と熱/酸化老化を受けた後に測定することができる。組成物に対する老化の影響を研究するために特に老化の後の破断点伸びおよびM100が興味深い。これのために、組成物の試料を下記の条件下で老化させ、次に特性を測定する。
−熱老化:厚さ2.5mmのプラークに対して窒素下110℃で15日間。
−熱酸化老化:厚さ2.5mmのプラークに対して空気中77℃で15日間。
【0035】
III−3実施例
実施例1
この実施例の目的は、対照組成物の異なるゴム特性を本発明に従う組成物と比較することである。試験した組成物を以下の表1に示す。
【0036】
表1
(1)天然ゴム
(2)亜鉛ジメチルアクリレート(ZDMA)、Cray ValleyからのDimalink 634
(3)ジクミルペルオキシド、HerculesからのDicup
(4)カーボンブラック、ASTMグレードN326(Cabot)
(5)酸化亜鉛(工業用グレード−Umicore)
【0037】
種々の組成物について測定した特性を以下の表2に示す。
【0038】
表2
【0039】
対照組成物と比較して、組成物I1、I2およびI3が非常に改善された破断点伸びを示すことがわかる。
【0040】
実施例2
この実施例の目的は、老化前後に、内部混合物としての従来の対照組成物の異なるゴム特性を本発明に従う組成物と比較することである。試験した組成物を以下の表3に示す。異なる組成物について測定した特性を以下の表4に示す。
対照組成物と比較して、組成物I1、I2およびI5が対照組成物C1よりも著しく良好な老化後の特性を示すことがわかる。
【0041】
表3
(1)天然ゴム
(2)亜鉛ジメチルアクリレート(ZDMA)、Cray ValleyからのDimalink 634
(3)ジクミルペルオキシド、HerculesからのDicup
(4)カーボンブラック、ASTMグレードN326(Cabot)
(5)酸化亜鉛(工業用グレード−Umicore)
(6)ステアリン、UniqemaからのPristerene 4931
(7)N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン、FlexsysからのSantoflex 6-PPD
(8)N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、FlexsysからのSantocure DCBS
【0042】
表4:熱/酸化老化77℃で15日間
【0043】
表5:熱老化110℃で15日間
【0044】
表4および表5に示された結果は、本発明に従う組成物の機械的性質が老化後にごくわずか向上していることを証明している。これらの組成物は、ヒステリシスのかなりの増加分も保持している。