(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871865
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】家具用の減速ヒンジ
(51)【国際特許分類】
E05D 7/086 20060101AFI20210510BHJP
E05D 3/14 20060101ALI20210510BHJP
E05F 1/12 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
E05D7/086
E05D3/14 A
E05F1/12
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-556881(P2017-556881)
(86)(22)【出願日】2016年4月27日
(65)【公表番号】特表2018-514670(P2018-514670A)
(43)【公表日】2018年6月7日
(86)【国際出願番号】EP2016059375
(87)【国際公開番号】WO2016174071
(87)【国際公開日】20161103
【審査請求日】2019年4月8日
(31)【優先権主張番号】MI2015A000619
(32)【優先日】2015年4月30日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517220911
【氏名又は名称】アルトゥーロ・サリチェ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】ARTURO SALICE S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】ルチアーノ・サリチェ
【審査官】
家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/003458(WO,A1)
【文献】
独国実用新案第202006010482(DE,U1)
【文献】
特表2010−501755(JP,A)
【文献】
特表2010−501754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 1/00− 9/00
E05F 1/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上壁、下壁及びリーフを有する家具(3)のヒンジ(1)であって、
前記家具(3)の前記上壁又は前記下壁の厚み内に設けられたシート部に挿入できるように成形された固定部(2)を備え、
前記固定部(2)は上部囲い(21)及び下部囲い(22)によって規定された箱状体に有し、前記箱状体は前記シート部に挿入できるほど平らであり、
前記ヒンジ(1)はさらに、前記家具のリーフに設けたシート部(5)に挿入できる可動部(4)を備え、
前記固定部(2)と前記可動部(4)とは、少なくとも1つの関節連結軸及び少なくとも1つのロッカー(7,8)を有する関節連結システムを介して回動するように相互に連接されており、
前記ヒンジは、前記ヒンジを閉合する弾性手段(11)を備え、
前記弾性手段(11)は、前記少なくとも1つのロッカー(7,8)に推力を得るように接続されているバネを含む、
前記ヒンジにおいて、
減速装置(15)を備え、
前記減速装置(15)は、前記ヒンジの少なくとも一部の閉合及び/又は開き動作を減速させるように適合され、
前記減速装置(15)は、前記ヒンジの前記固定部(2)内に完全に隠蔽されている作動手段(16)によって作動される、
前記弾性手段(11)及び前記減速装置(15)は、前記固定部(2)の前記箱状体内に完全に収容される、
ことを特徴とする、ヒンジ。
【請求項2】
前記減速装置(15)は、前記少なくとも1つのロッカー(7,8)を介して直接的又は間接的に作動されることが可能であることを特徴とする、請求項1に記載のヒンジ。
【請求項3】
前記作動手段(16)は、回動レバーを有し、
前記回動レバーは、前記ヒンジの前記固定部(2)によって回動するように支持され、且つスロット(17)を介して前記減速装置(15)に摺動可能に接続されていることを特徴とする、請求項1に記載のヒンジ。
【請求項4】
前記作動手段(16)は、回動レバーを有し、
前記回動レバーは、前記ヒンジの前記固定部(2)によって回動及び摺動するように支持され、且つ回動するように前記減速装置(15)のみに接続されていることを特徴とする、請求項1に記載のヒンジ。
【請求項5】
前記作動手段(16)は、回動レバーを有し、
前記回動レバーは、前記ヒンジの前記固定部(2)によって回動するように支持され、且つ回動するように前記減速装置(15)のみに接続されており、
前記減速装置(15)は、前記ヒンジの前記固定部(2)内で回動するように収容されている、
ことを特徴とする、請求項1に記載のヒンジ。
【請求項6】
前記回動レバーは、前記少なくとも1つのロッカー(7,8)によって作動され、
前記回動レバーは、前記少なくとも1つのロッカー(7,8)から分離されている、
ことを特徴とする、請求項4又は5に記載のヒンジ。
【請求項7】
前記家具の部品と、前記ヒンジの前記固定部及び/又は前記可動部との間の調整に用いられる調整手段(26,27)を有し、
前方調整手段(26)はネジタイプであり、横方向調整手段(27)はカムタイプである、
ことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載のヒンジ。
【請求項8】
前記調整手段(26,27)は、前記ヒンジが取り付けられた状態で前記家具の本体の前面側からアクセス可能な作動手段を有することを特徴とする、請求項7に記載のヒンジ。
【請求項9】
前記減速装置(15)は、支持体(18)に取り付けられ、
前記支持体(18)は、次に板状要素(12)に取り付けられ、
前記板状要素(12)上で、前記少なくとも1つのロッカー(7,8)及び前記作動手段(16)が旋回されるように構成されている、
ことを特徴とする、請求項1に記載のヒンジ。
【請求項10】
前記少なくとも1つのロッカー(7,8)と前記減速装置(15)の前記作動手段(16)とは、相互に同一の平面にあることを特徴とする、請求項1に記載のヒンジ。
【請求項11】
前記減速装置(15)は、前記支持体(18)に取り付けられ、
前記支持体(18)は、前記板状要素(12)に取り付けられ、
前記減速装置と、前記支持体と、前記板状要素とは、前記ヒンジの前記固定部(2)内に収容されている、
ことを特徴とする、請求項9に記載のヒンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具用の減速ヒンジに関する。より具体的には、本発明は、家具のリーフ又はその類似物用の減速ヒンジに関するものであって、当該減速ヒンジは、家具の上壁又は下壁の厚み内に設けられたシート部に挿入されるように成形された固定部又は翼部を有する。
【背景技術】
【0002】
知られているように、家具分野において、家具のリーフを回動するように支持するために、通常ヒンジが利用されている。ヒンジは、家具の本体の壁に接続可能な固定部と、箱状体によって構成され、同一の家具のリーフに接続可能な可動部とを備える。これらの部品は、少なくとも1つの回転軸を介して、より好ましくは、関節連結軸及び連結ロッカーを含む関節連結システムを介して回動するように相互に関節連結されている。
【0003】
リーフを閉合位置に維持するため、ヒンジは、更に、ヒンジの閉合方向において、固定部のアーム又は関節連結システムを押すように適合された弾性手段を備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような弾性手段の存在により、閉合位置において、リーフは、力を持って家具の本体に打ち当て、望ましくない且つ受け入れられない騒音を引き起こす。
【0005】
このような問題を克服するため、ヒンジの閉合動作の勢いを減衰させるために、ヒンジの部材の1つに関連する、例えば、リニアタイプ又は回転タイプの減速装置を採用することが様々に提案されている。
【0006】
しかしながら、減速装置を配置及び作動させるための既知の解決策は、異なるタイプであって、完全に隠れたヒンジには不適切又は適用できない。この場合、家具の上壁又は下壁の厚み内に設けられたシート部に挿入可能のため、固定部又は翼部は、平らな形状の構造を有し、ロッカーは、ヒンジの固定部の形状構造及びロッカーの形状構造及び配置のために、関節連結軸に対して垂直な平面に従って延在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、家具のリーフ又はその類似物用の減速ヒンジを考案することである。家具の上壁又は下壁の厚み内に設けられたシート部に挿入可能のように成形された固定部又は翼部を備えるタイプのヒンジにおいて、効果的な減速動作を提供するように配置及び作動され、且つヒンジの他の部分と容易に組み合わせることができる減速装置を有するヒンジである。
【0008】
前記目標内において、本発明の1つの目的は、一旦家具に取り付けられた後、減速装置の作動手段は、実質的に全て壁内であって、したがって、ヒンジのロッカーのみが見える、家具のリーフ又はその類似物用の減速ヒンジを考案することである。
【0009】
本発明の別の目的は、ヒンジの固定部と可動部との間の相対位置が調整可能である、家具のリーフ又はその類似物用の減速ヒンジを考案することである。
【0010】
本発明の別の目的は、信頼性が高く、容易かつ実用的に実施され、低コストである、家具のドアリーフ又はその類似物用の減速ヒンジを考案することである。
【0011】
この目的及び以下でより明らかになるこれら及び他の目的は、家具のリーフ又はその類似物用のヒンジによって達成される。当該ヒンジは、
家具の上壁又は下壁の厚み内に設けられたシート部に挿入されるように成形された固定部と、
前記家具のリーフに接続可能な可動部と、を備え、
前記固定部と前記可動部とは、少なくとも1つの関節連結軸及び1つのロッカーを有する関節連結システムを介して回動するように相互に連接されており、
前記ヒンジは、前記ヒンジを閉合する弾性手段を備え、
前記弾性手段は、前記少なくとも1つのロッカーに機能的に接続されている、ヒンジにおいて、
減速装置を備え、
前記減速装置は、前記ヒンジの少なくとも一部の閉合及び/又は開き動作を減速させるように適合され、
前記減速装置は、前記ヒンジの前記固定部内に完全に隠蔽されている作動手段によって作動される、
ことを特徴とするヒンジである。
【0012】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付の図面における限定されない例によって示される。本発明に係る減速ヒンジの好ましいが限定的ではない実施形態の説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】リーフが閉合状態であり、家具に取り付けられた本発明に係るヒンジの断面図である。
【
図4】減速器が作動され、リーフを閉じる段階の間のある瞬間に、家具に取り付けられた本発明に係るヒンジの断面図である。
【
図5】減速器が作動され、リーフを閉じる段階の間の別の瞬間に、家具に取り付けられた本発明に係るヒンジの断面図である。
【
図6】全開位置(
図8)までリーフを開く段階の間のある瞬間に、本発明に係るヒンジの断面図である。
【
図7】全開位置(
図8)までリーフを開く段階の間の別の瞬間に、本発明に係るヒンジの断面図である。
【
図8】リーフが全開位置であって、減速器が完全にリセットされた、本発明に係るヒンジの断面図である。
【
図9】リーフが開き位置である、家具に取り付けられた本発明に係るヒンジの斜視図である。
【
図10】本発明に係るヒンジの第2実施形態の断面図である。
【
図11】本発明に係るヒンジの第3実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照すれば、全体的に参照符号1で示されている本発明に係るヒンジは、家具3の上壁又は下壁の厚み内に設けられたシート部に挿入されるように成形された固定部又は翼部と、家具のリーフ6内に形成されたシート部5に挿入されるように適合された可動部4と、を備えている。好ましくは、可動部4は、リーフ6に固定可能な箱状の第1部分4’と、垂直方向に摺動可能のように第1部分4’に接続されている第2部分4’’と、ヒンジの垂直方向の調整が得られ、そしてリーフの垂直方向の調整が得られるように、部品間の相対位置を規定することを可能にする偏心調整要素29と、を有する。
【0015】
ヒンジは、少なくとも1つのロッカー、より好ましくは、1対のロッカー7,8及び4つのピンを備え、これらのピンは、関節連結式の四辺形を規定し、可動部4、特に第2部分4’’の固定部2に対する関節連結を可能にするように適合されている。
【0016】
好適には、固定部2は、家具3に設けられたシート部に挿入可能のように、平らである。
【0017】
この形状の構造において、ヒンジは完全に壁内にあり、目に見える部分はロッカー7,8のみである。ロッカー7,8は、家具のリーフが開いているときに露出したままで見える状態である。
【0018】
弾性手段は、好適には、箱状体9内に収容されたバネ11を含み、箱状体9の端部には留め金30を有し、当該留め金30は、ヒンジの閉合位置において、推力を得るように、ロッカー7と、より正確的には、ロッカー7のカム形状の部分と係合する。
【0019】
ロッカー7及び8は、板状要素12上で旋回される。板状要素12には、弾性手段10の箱状要素12を収容することを可能にするキャビテ13が設けられている。
【0020】
本発明に係るヒンジは、減速装置15を更に備え、減速装置15は、ロッカー7,8の少なくとも1つを介して、直接に又は適合された伝達手段によって作動可能である。
【0021】
減速装置は、本発明に係るヒンジの閉合及び/又は開き動作の少なくとも一部を減速させることを可能にする。
【0022】
減速装置15の作動は、好ましくは、レバー手段16によって生じる。レバー手段16は、板状要素12において、ピン16’で旋回され、家具のリーフ6に接続する移動中に、ロッカー7によって作動される。
【0023】
好適には、本発明の第1実施形態において、
図1〜9に示されたように、レバー要素16は、一端には止め釘16’’を有し、止め釘16’’は、要素のスロット17内で結合し、減速装置15を応力下に置くため用いられる。
【0024】
本発明に係るヒンジにおいて、減速装置15は、板状要素12上に設置されている支持体18内に収容され、当該支持体は、減速装置15のシリンダ20を収容するためのシート部19を有する。ヒンジの固定部2は、上部囲い21及び下部囲い22によって規定された箱状体内に閉じ込まれている。
【0025】
板状要素12及び支持体18並びに減速装置は、全て下方の板状要素23によって支持され、下方の板状要素23は、前方調整手段26及び横方向調整手段27をそれぞれ収容するためのシート部24及び25を有する。
【0026】
前方調整手段26は、好ましくはネジタイプであり、上部囲い21と板状要素23との間の距離において作用することが可能である。一方、横方向調整手段25は、好ましくはカムタイプであり、板状要素23に対してカムを横方向に動かすことによって、プレート状要素12に作用することが可能となる。
【0027】
調整手段は、好適には、操作可能な作動手段、例えば、ねじ頭型スロットを有する。
【0028】
調整手段は、内部にヒンジが取り付けられている家具の前方側から使用者よりアクセス可能である。そうすれば、容易かつ迅速な調整が可能となる。
【0029】
したがって、本発明に係るヒンジにおいて、減速装置15の作動手段16は、ヒンジの固定部2内に完全に収容されているため、リーフが開いているときに、ヒンジの唯一の見えている部分は、ロッカー7及び8である。
【0030】
特に、本発明に係るヒンジにおいて、ロッカー7,8及び作動手段16は、互いに同一平面上にあり、全てが板状要素12上で旋回されることに留意すべきである。
【0031】
更に、調整手段26,27は、横方向、前方、及び垂直方向のうちの少なくとも一方向において、家具3と固定部2と、及び/又はヒンジの可動部4との間の相対位置の調整を可能にする。
【0032】
減速装置と少なくとも1つの作動ロッカー7との間の伝達システムは、これまで示されたように、少なくとも1つの回動レバー16を備え、当該回動レバーは、当該レバーを作動するロッカーと同一平面上にある。特に、ヒンジの閉合動作の最終部分の間に、ロッカー7は、その表面を介してレバー16の一端部と接触する。当該レバー16の一端部は、レバーの回動ピン16’に対応して配置され、止め釘16’’が設けられている端部の反対側である。
【0033】
板状要素12上で旋回される回動レバー16は、スロット17を介して一方の端部のみにおいて減速装置15に接続され、他方の端部においてヒンジを作動させるためにロッカーから切り離されている。
【0034】
図10に示す第2実施形態において、回動レバー16は、代わりに板状要素12上で支持されているため、スロット31を介して摺動することができる。この場合、
図1〜
図9に示されたように、減速装置15における規定されたスロット17内で移動可能ではなく、固定方式で減速装置15に旋回される。
【0035】
図11に示す第3実施形態において、回動レバー16は、回動するように支持されているが、ピン16’を介して板状要素12上で摺動せず、固定方式で減速装置15に旋回され、若しくは、止め釘16’’を介して応力を加える要素に旋回される。このような実施形態において、作用するため、シリンダ20は、例えば、支点28の周りを回動するようにシート部19に収容される必要がある。
【0036】
他の実施形態も可能である。一例を挙げれば、減速装置を作動するため、前述したレバー手段を有しないが、カム手段を有する。当該カム手段は、例えば、弾性手段10によって作動され、且つ適合された伝達手段を介して減速装置に接続されている。
【0037】
実際には、本発明によるヒンジは、その固定部及びその可動部をそれぞれ本体に及び家具のリーフにそれぞれ収容することができるという点で、設定された目的および課題を完全に達成していることが明らかである。一又は複数のロッカーを除いて、突出して視野に入るヒンジの部品がない。減速装置は、ヒンジの固定部に隠蔽されており、このような減速装置の作動手段も同様である。
【0038】
更に、ヒンジは、家具と、ヒンジの固定部、及び/又は可動部との間の相対位置を調整することを可能にする。
【0039】
このように考案されたヒンジは、多数の修正及び変形が可能であり、それらの全ては、添付の特許請求の範囲内に含まれる。
【0040】
更に、全ての詳細は、技術的に同等の要素によって代えてもよい。
【0041】
実際に、使用される材料、及び不特定の寸法と形状とは、要求及び技術水準に応じて任意に採用されてもよい。
【0042】
本出願は、イタリア特許出願番号第MI2015A000619(102015902347517)の開示に基づいて優先権を主張し、その全体の内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
特許請求の範囲に記載された技術的特徴の後に参照符号が付されている場合、それらの参照符号は、特許請求の範囲の明瞭性を高めるためのみに含まれている。したがって、そのような参照符号は、例としてそのような参照符号によって識別される各要素の解釈にいかなる限定的な影響も及ぼさないものである。