(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871871
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】モデル予測制御における傾斜不均衡の制御のためのシステムと方法
(51)【国際特許分類】
G05B 13/04 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
G05B13/04
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-563223(P2017-563223)
(86)(22)【出願日】2016年6月2日
(65)【公表番号】特表2018-516414(P2018-516414A)
(43)【公表日】2018年6月21日
(86)【国際出願番号】US2016035458
(87)【国際公開番号】WO2016196756
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2019年5月24日
(31)【優先権主張番号】62/171,577
(32)【優先日】2015年6月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023685
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100162846
【弁理士】
【氏名又は名称】大牧 綾子
(72)【発明者】
【氏名】アムリット,リシ
(72)【発明者】
【氏名】カレッテ,ピエール・クリスティアン・マリー
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムソン,ジョン・マーティン
(72)【発明者】
【氏名】キャニー,ウィリアム・マシュー
【審査官】
藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−015706(JP,A)
【文献】
特開平08−083104(JP,A)
【文献】
特開2014−130496(JP,A)
【文献】
特開平07−281729(JP,A)
【文献】
米国特許第05329443(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2001/0021900(US,A1)
【文献】
国際公開第99/031448(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油化学処理をより適切に制御するために、限界値内にある場合に、傾斜不均衡拘束条件の一時的な弛緩を許可することにより、モデル予測制御器において傾斜不均衡を制御する方法であって、
許可される最小/最大の傾斜率(δinmin−δinmax)、傾斜の均衡時間(tbal)、および設定値回復率(δr)を含むユーザによって指定された設定を特定し、
一つ以上の傾斜変数に影響を与える一つ以上の外乱の変化により誘導される現在の傾斜不均衡の変化(Δ)を特定し、
ylo,sp= ylo,sp + min(tbal Δ,0)および yhi,sp= yhi,sp + max(0,tbalΔ)にしたがって、下方の設定値限界値(ylo,sp)および上方の設定値限界値(yhi,sp)を修正し、
Tlo=max(Tmin,(ylo−y)/δinmin)およびThi=max(Tmin,(yhi−y)/δinmax)にしたがって、傾斜限界値(yloおよびyhi)、前記ユーザによって指定された最小/最大の可能な傾斜率に基づいて、ソフトランディング傾斜限界時間定数(Tlo,およびThi,)を決定し、ここでyは現在の傾斜であり、Tminは前記傾斜率をゼロにできる速度を決定する最小の時間定数であり、
Tlo,sp= max(Tmin,(ylo,sp - y)/ δinmin)およびThi,sp = max(Tmin,(yhi,sp - y)/ δinmax)にしたがって、ソフトランディング設定値限界時間定数(Tlo,spおよびThi,sp)を決定し、
δmin,ss= (ylo - y)/max(Tlo,h)およびδmax,ss= (yhi - y)/max(Thi,h)にしたがって、不均衡傾斜率拘束条件(δmin,ssおよび δmax,ss)を決定し、ここでhは動的制御時間区間であり、
δmin,sp,ss= (ylo,sp - y)/max(Tlo,sp,h)およびδmax,sp,ss= (yhi,sp - y)/max(Thi,sp,h)にしたがって、不均衡設定値傾斜率拘束条件(δmin,sp,ssおよびδmax,sp,ss)を決定し、
決定された前記不均衡傾斜率拘束条件(δmin,ssおよびδmax,ss)を前記傾斜限界値(yloおよびyhi)よりも高い優先度で課し、決定された不均衡設定値傾斜率拘束条件(δmin,sp,ssおよびδmax,sp,ss)を傾斜設定値限界値(ylo,spおよびyhi,sp)よりも高い優先度で課すことにより、静的制御プロセス問題を解き、
ylo ≦ yk + Tloδkおよびyk+ Thiδk≦yhiにしたがって、傾斜限界値(yloおよびyhi)の拘束条件をアップデートし、ここでkは予測時間、δkは前記予測時間での傾斜率であり、
ylo,sp,k ≦ yk + Tlo,spδkおよびyk+ Thi,spδk ≦ yhi,sp,kにしたがって設定値限界軌道の拘束条件をアップデートし、ここで、設定値限界軌道(ylo,sp,kおよびyhi,sp,k)はylo,sp,k = min(ylo,sp + kδr, ysp)およびyhi,sp,k = max(ysp, yhi,sp - kδr)として定義されており、そして
これらのアップデートを利用して動的制御プロセス問題を解く、方法。
【請求項2】
情報を処理するための一つ以上のプロセッサと、
前記一つ以上のプロセッサに通信可能に接続されたメモリ、及び
前記メモリに記憶された命令を備える一つ以上のモジュールを含み、前記命令は、プロセッサによって実行された時、
許可される最小/最大の傾斜率(δinmin−δinmax)、傾斜の均衡時間(tbal)、および設定値回復率(δr)を含むユーザによって指定された設定を特定し、
一つ以上の傾斜変数に影響を与える一つ以上の外乱の変化により誘導される現在の傾斜不均衡の変化(Δ)を特定し、
ylo,sp= ylo,sp + min(tbal Δ,0)および yhi,sp= yhi,sp + max(0,tbalΔ)にしたがって、下方の設定値限界値(ylo,sp)および上方の設定値限界値(yhi,sp)を修正し、
Tlo=max(Tmin,(ylo−y)/δinmin)およびThi=max(Tmin,(yhi−y)/δinmax)にしたがって、傾斜限界値(yloおよびyhi)、および前記ユーザによって指定された最小/最大の可能な傾斜率に基づいて、ソフトランディング傾斜限界時間定数(TloおよびThi)を決定し、ここでyは現在の傾斜であり、Tminは前記傾斜率をゼロにできる速度を決定する最小の時間定数であり、
Tlo,sp= max(Tmin,(ylo,sp - y)/ δinmin)およびThi,sp = max(Tmin,(yhi,sp - y)/ δinmax)にしたがって、ソフトランディング設定値限界時間定数(Tlo,spおよび Thi,sp)を決定し、
δmin,ss= (ylo - y)/max(Tlo,h)およびδmax,ss= (yhi - y)/max(Thi,h)にしたがって、不均衡傾斜率拘束条件(δmin,ssおよび δmax,ss)を決定し、ここでhは動的制御時間区間であり、
δmin,sp,ss= (ylo,sp - y)/max(Tlo,sp,h)およびδmax,sp,ss= (yhi,sp - y)/max(Thi,sp,h)にしたがって、不均衡設定値傾斜率拘束条件(δmin,sp,ssおよびδmax,sp,ss)を決定し、
決定された前記不均衡傾斜率拘束条件(δmin,ssおよびδmax,ss)を傾斜限界値(yloおよびyhi)よりも高い優先度で課し、決定された不均衡設定値傾斜率拘束条件(δmin,sp,ssおよびδmax,sp,ss)を傾斜設定値限界値(ylo,spおよびyhi,sp)よりも高い優先度で課すことにより、静的制御プロセス問題を解き、
ylo ≦ yk + Tloδkおよびyk+ Thiδk ≦ yhiにしたがって、傾斜限界値(yloおよびyhi)の拘束条件をアップデートし、ここでkは予測時間、δkは前記予測時間での傾斜率であり、
ylo,sp,k≦ yk + Tlo,spδkおよびyk+ Thi,spδk ≦ yhi,sp,kにしたがって設定値限界軌道の拘束条件をアップデートし、ここで、設定値限界軌道(ylo,sp,kおよびyhi,sp,k)はylo,sp,k = min(ylo,sp + kδr, ysp)およびyhi,sp,k = max(ysp, yhi,sp - kδr)として定義されており、そして
これらのアップデートを利用して動的制御プロセス問題を解く処理と
を含む静的制御問題および動的制御問題の計算を実行すべく動作可能である、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はモデル予測制御器において、モデル予測制御器によって傾斜不均衡拘束条件を、条件内において一時的に弛緩させることにより、傾斜不均衡を制御することに関連する。
【発明の概要】
【0002】
本発明は、例えば石油化学環境などの、一つ以上のシステムから他の一つ以上のシステムへの流入そして流出を含む任意の数の傾斜環境における、傾斜不均衡の制御プロセスに関する。ある実施例において、本開示は、気体の、メタンに富むガス状原料を液化して液化製品(液化天然ガス)を得るプロセスにおける、傾斜不均衡の制御に関する。
【0003】
前記液化プロセスは、
(a)ガス状でメタンに富む原料を、高圧で主熱交換機の第一管側に供給し、該ガス状でメタンに富む原料を冷却し、液化し、蒸発する冷媒により過冷却することで液化流とし、主熱交換機の冷端部から液化流を取り出し、液化流を液化製品として貯蔵部に送る工程、
(b)蒸発した冷媒を主熱交換機のシェル側の暖端部から取り出す行程、
(c)蒸発した冷媒を少なくとも一つ以上の冷媒圧縮機により圧縮して高圧冷媒を得る工程、
(d)高圧冷媒を一部凝縮し、この一部凝縮された冷媒を分離器によって分離して液体重質冷媒フラクションとガス状軽質冷媒フラクションを得る工程、
(e)該重質冷媒フラクションを主熱交換機の第二管側で過冷却して過冷却重質冷媒流とし、該重質冷媒流を減圧下で主熱交換機のシェル側の中央点へ導入し、該重質冷媒流をシェル側において蒸発させる工程、及び
(f)該軽質冷媒フラクションを主熱交換機の第三管側で過冷却して過冷却軽質冷媒流とし、該重質冷媒流を減圧下で主熱交換機のシェル側の冷端部へ導入し、該軽質冷媒流をシェル側において蒸発させる工程、を含む。
【0004】
国際特許出願公開No.99/31448は、一つ以上のパラメーターのセットを最適化しつつ、一つ以上の制御変数のセットを制御するために同時制御動作を決定するための、モデル予測制御に基づいた高度プロセス制御による液化プロセス制御を開示している。この操作変数のセットには重質冷媒フラクションの質量流量、軽質冷媒フラクションの質量流量、及びメタンに富む原料の質量流量が含まれる。この制御変数のセットには、主熱交換機の暖端の温度差、及び主熱交換機の中央点での温度差が含まれる。最適化すべき変数のセットには液化製品の生産量が含まれる。この方法は、混合冷媒の本体組成が液化製品の生産量の最適化のために操作されないため、有利と考えられていた。しかし、水位と圧力に関連する傾斜不均衡を制御することは厄介であることが明らかになった。
【0005】
従来のシステムにおいては、プロセスモデルの使用及びプロセスモデルに与えられる様々な目的の最適化を行い、全ての制御変数(CV)及び操作変数(MV)によって拘束し、静的状態拘束条件を課すようにすることで、静的問題を提示した。例えば、設定値又は実時間最適化(RTO)目標値、もしくは実現可能な空間に最適化された経済機能など、ユーザ特有の値又は設定の観点により、目的は特定される。静的問題は、目的を満たす実現可能な定常状態(又は定常状態目標値)を返す。動的制御では、これらの静的目標値を追従するような様々な目的が設定される。実現不可能性により、CVの静的状態目標値はユーザ設定値と異なる値になったり(例えば、設定値又はRTO目標値)、又は特定されたCV限界値内の可能な値よりも経済的コストがかかったりし得る。このためCVの限界値内で静的に実現不可能な高い値が作り出される。
【0006】
定常状態目標値とは、CVが、乱されない限りその値を保つ値である。しかしながら、実世界の条件では、これらの定常状態目標値は静的であり続けず、そのためCVはほとんどの時間において、ノイズやモデル化されていない外乱により変動し続ける。これらの論文に解説されるような従来のシステムでは、J.B. Rawlings, D. Bonne, J.B. Jorgense, A.N. Venkat and S.B. Jorgensen, “Unreachable setpoints in model predictive control,” IEEE Transactions on Automatic Control, vol. 53, no. 9, pp. 2209-2215, 2008 and J.Rawlings and R. Amrit, “Optimizing process economic performance using model predictive control,” Nonlinear Model Predictive Control, 2009, pp. 119-138,に記述されるように、任意の高ポテンシャルエリアが存在するのかを推定し、ユーザによって特定された設定値の近傍、又は経済的利益の観点から、より高い累積利益を引き出す可能性を開いていた。
【0007】
高度プロセス制御設計における、不安定、又は傾斜したふるまいは、しばしば、タンク及び/又は蓄電池のレベル制御の組み込みに由来している。精製や化学プロセス、例えば触媒分解における部分燃焼などの温度制御、によっても不安定なふるまいは出現する。従来のシステムにおいては、傾斜不均衡に対して窮屈な制御がなされ、制御問題を不必要に拘束してきた。例えば、従来のモデルに基づいた予測制御(MPC)技術では追加の拘束が自動で加えられ、予測時間区間窓の最後にはCVの変化率が0にならなければならなかった。従来のMPC環境では、与えられたタンクに対する特定されたCVは、生産量に過大な拘束を与える可能性があった。例えば、タンクへの、流入パイプを通した注入は、いかなる拘束条件によって妨害されることはないが、タンクから別の流出先への流出においては、特定の拘束が課されることがある。各タンクは特有の容量や、内容物を持っており、該タンクに対する流入や流出によって置き換えられる。流入や流出に付された拘束が原因となり、与えられた環境におけるシステム全体の効果的な動作を妨げる不均衡が起こり得る。例えば、もしもタンクの残量の水位が特定のCV限界値よりも低い値へ低下した場合、タンクからの供給を停止することにより、他のシステムにおける超過や各CV限界値以下への減少を起こし、不必要な遅れや出費につながるとしても、タンクからの供給は停止され得る。このような傾斜不均衡への、MPCの頑固な執着は効果的ではない。従来のシステムでは、オペレーターがMPCによる制御に取って代わり、システムへの流入と流出を手作業で操作する必要があった。このような介入は、散発的であり、エラーが発生しやすく、重い時間負荷を強い、出費を発生させ、ある状況においては、条件や特定の環境のために実現不可能であった。本発明は、ある限界値内において、傾斜不均衡拘束条件の一時的な弛緩を提供することを目的とする。
要約
【0008】
本開示によれば、限界値内である場合に一時的に傾斜不均衡拘束条件を弛緩するシステム及び方法が開示される。この一時的な弛緩は、例えば、大容量タンクを遅い動的サイクルで制御する(例えば内容物を昼間に減少させ夜間に再び満たすような)場合に、有益であり技術的に利点がある。本発明によれば、動作の傾斜の調整が可能になり、その結果全体的なMPCの動作をより予測可能にできる。
【0009】
ある実施例では、傾斜不均衡の制御には、1つ以上のユーザによって指定された設定の特定が含まれる。現在の傾斜不均衡の変化も特定される。一つ以上の設定値限界軌道が変更される。一つ以上のソフトランディング傾斜限界時間定数、及び一つ以上のソフトランディング設定値限界軌道時間定数が決定される。該1つ以上の傾斜率制約条件は1つ以上の不均衡設定値傾斜率拘束条件と一緒に決定される。その後静的制御プロセス問題が解かれ、1つ以上の傾斜拘束条件がアップデートされる。設定値限界軌道もまたアップデートされ、その後動的制御プロセス問題が解かれる。
【0010】
ある実施例では、該1つ以上のユーザ設定は、許可される最高の傾斜率、傾斜の均衡に要する時間、設定値回復率のうち一つ以上を含む。別の実施例では、現在の傾斜不均衡の変化は、一つ以上の傾斜変数に影響する一つ以上の外乱により誘発され、そして設定値限界軌道も、少なくとも部分的には一つ以上の現在の傾斜不均衡の変化、特定された均衡時間、設定値回復率限界値に基づいて修正される。
【0011】
別の実施例では、ソフトランディング傾斜限界時間定数は、少なくとも部分的には一つ以上の傾斜限界値、そして一つ以上の割合不均衡に基づいている。該ソフトランディング設定値限界軌道時間定数は、少なくとも部分的に、一つ以上の設定値限界軌道時間拘束条件と、一つ以上の設定値回復率限界値に基づいている。アップデートされた傾斜拘束条件、及びアップデートされた設定値限界軌道には、重みづけがされてもよい。別の実施例では、静的制御プロセス問題の解決は、少なくとも部分的に、一つ以上の拘束条件に対する、ユーザによって定義された優先順位設定に基づく。
【図面の簡単な説明】
【0012】
次の図面を伴う説明により本実施例とその利点のより完全な理解が得られるであろう。図面中、同じ機能には同じ参照番号が付されている。
【0013】
【
図1】
図1は、本開示の1つ以上の実施例による情報ハンドリングシステムの例を示す。
【
図2】
図2は、傾斜不均衡発生時における、本開示の一つ以上の実施例による特定の拘束条件の一時的な弛緩のフロー図である。
【0014】
本開示には様々な変更を行うことや代替形態をとることが可能であるが、それらのうち特定の実施例を図に示し、ここで具体的な説明を行う。しかしながら、特定の実施例に対する説明により本開示を開示する特定の形に限定することは意図されておらず、しかし対照的に、本開示は付属する請求項により定義されるすべての変更、及び同等のものを対象範囲として含む。
【発明を実施するための形態】
【0015】
幾つかのタンクを含むプラントなどの1つ以上のシステムによる環境の制御には、制御器を用いることがあり得る。このような環境では、傾斜不均衡は、石油化学環境におけるタンクのような与えられたシステムに、ある限界を超えた流入又は流出がある場合に、度々起こる。例えば、タンクの圧力又は水位が、特定の限界又は拘束条件を超えたある傾斜率によって増加又は減少する。傾斜不均衡の一時的な弛緩を許可することにより、システムが動作を継続でき、それにより他のシステムが、与えられたシステムの傾斜不均衡に影響を受けることがなくなる。
【0016】
例えばタンクがある容量(内容物)を持っており、その水位は設定値からあまりに遠くならない範囲で変動し得る。別のシステムがタンク内へ内容物を注入する一方、他のシステムはタンクから内容物を引き出す(タンクの内容物を減少させる)。与えられた特定の減少率によればタンクの内容物が何日もの引き出し(単位生産量)に耐え得るとしても、タンクの最長整定時間は時間単位で計測される。タンクからの内容物の引き出しの結果、水位が減少し(下方傾斜)、一方タンクへの入力の結果水位は増加する(上方傾斜)。しかしながら、傾斜不均衡は、タンクへの内容物の流入又は流出が設定された拘束条件よりも低いために起こり得る。一つの例では、現在の割合でタンクから内容物の引き出しを継続すると、タンクの残量が枯渇するが、タンクの容量は既知のため、枯渇は数時間ではなく数日後に起こると認識される。タンク内容物の流出を完全に停止する代わりに、本発明の一つの実施例では、タンクが完全に枯渇する前のある時間帯に内容物がタンクに注入される(前記傾斜不均衡は継続しない)ことが既知のため、傾斜不均衡が存在しようとも、タンクが完全に空になる前までの時間帯内において内容物の引き出しの継続が可能になる。例えば、設定した時間帯にタンクを再充填するタンカーが到着するため、現在のタンクの減少率を考えれば、完全に枯渇する前に最充填されることが既知である。従って、特定の時間帯に傾斜不均衡を許容してもタンクは枯渇せず、システム全体の効果的な動作が可能になる。タンクからの引き出しが特定の水位よりも低下した場合の内容物の注入の継続についても似た問題が存在する。このような例では、内容物のタンクへの注入を中止することは、他の上流システムやプロセスに影響し得る。タンクからの内容物の引き出しは、設定された水位の時に、タンクの容量を超過しないために再開され、引き出す割合が原因で傾斜不均衡が発生しようとも、内容物の注入は許可される。
【0017】
ここで図を参照して、特定の実施例について模式的に説明する。図中、同一の要素は同一の数字によって表され、類似要素は同一の数字の末尾に小文字を添えて示される。
【0018】
本発明の一つ以上の実施例において、一つ以上の実施例を実装するために情報ハンドリングシステムが使用されてもよい。それらの実施例はプラットフォームに関係なく任意の情報ハンドリングシステム上に実装され得る。このような本稿において説明される一つ以上の実施例を実装する情報ハンドリングシステムハードウエアは、一つ以上の指示シーケンスを実行するためのプロセッサ、プログラムスタンス、非一時的なコンピュータ可読媒体に記憶されたコードを含んでもよい。例えば
図1に示されるように、情報ハンドリングシステム100は一つ以上の中央処理装置(CPU)102、関連メモリ104(例えばランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、キャッシュメモリ、フラッシュメモリ等)、記憶装置106(例えばハードディスク、個体記憶装置、コンパクトディスクドライブ又はデジタルビデオディスク(DVD)ドライブなどの光学ドライブ、フラッシュメモリスティック等)、及び今日のコンピュータにおいて典型的な数多くの要素や機能(図示せず)、を含む。CPU102は、メモリ104や記憶装置106、又は他の当業者にとって既知の任意のメモリのようなメモリ装置にプログラム命令が記憶された1つ以上のモジュールからのプログラム命令を実行するように機能する。CPU102は、一つ以上の実施例によって検討されるような制御器を実行するよう構成されてもよい。CPU102は多目的マイクロプロセッサ、マイクロコントローラー、デジタル信号プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブル論理素子、制御装置、状態機械、ゲートロジック、離散ハードウエアコンポーネント、人工ニューラルネットワーク、又は当業者にとって既知であり本発明によるデータの操作の計算が行える任意の適切なハードウエアであってもよい。情報ハンドリングシステム100はキーボード、マウス、又はマイクからの入力のような入力を送信及び又は受信するためのI/Oインターフェース108を含んでいてもよい。I/Oインターフェース108は、多次元(例えば3D)、地球物理学データ、任意の一つ以上のプロセッサ、システム、又は外部構成要素からの一つ以上の読み取り、設定、結果、変数、フィードバック(又は当業者にとって既知の他の任意の型のデータ)の値に関連する一つ以上の値の情報を、任意の一つ以上のプロセス、システム、又は、天然ガスの液化又はモデル予測制御のためのシステムで使用される当業者にとって既知の任意の他の情報を含む外部構成要素から受信してもよい。例えば、特定の実施例では、I/Oインターフェース108は、割合の変化、質の制御、レベル、圧力、温度、又は当業者にとって既知の任意の他の読み取り値を、環境中の構成要素から受信する。例えば、タンクはある水位だけ内容物が入っており、I/Oインターフェース108は現在の水位に関連した読み取り値、又はタンク内容物の割合の変化を受信する。さらに、情報ハンドリングシステム100は、ディスプレイ114(たとえば液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ、陰極線管(CRT)モニタ)のような出力手段も含んでいてもよい。ディスプレイ114は本発明の一つ以上の実施例における任意の型のデータを表示するために必要な要素を含んでいる。
【0019】
情報ハンドリングシステム100は、本発明の任意の一つ以上の実施例において、必要に応じてセンサーからのデータ、計測値、読み取り値、又は他の当業者に既知の任意のデータを受信するために、ネットワーク116(例えばローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネットのようなワイドエリアネットワーク(WAN)、又は他の任意の類似するネットワーク)に、ネットワークインターフェース接続110を介して接続されていてもよい。数多くの異なる型の情報ハンドリングシステムが存在し、上述の入力及び出力方法が他の形をとってもよいことが、当業者によって認められる。一般的に、情報ハンドリングシステムは、ハードウエア、本発明の実施例を実施するためのソフトウエア又はそれらの任意の組み合わせであろうと、少なくとも極小の、処理、入力、及び又は出力装置を含む。
【0020】
情報ハンドリングシステム100のCPU102はアプリケーション118と通信してもよい。アプリケーション118は、高度プロセス制御(APC)を実行するために設計された多変数のモデルに基づいた予測制御(MPC)アプリケーションである。CPU102のようなCPUは、機能の実行、I/O通信、変数及び計測値の検証、推定及び予測、定常状態最適化、及び制御動作計算などを含む、アプリケーション118に関連した命令を実行してもよい。アプリケーション118は、固有の推定機能を含んでいるが、インターフェースや他の構成要素との協働に利用可能なパラメーターを持っている。パラメーターの例としては、推定器、リアルタイム最適化インターフェース、及び当業者にとって既知の他のパラメーターが含まれる。
【0021】
制御器118はモデル自体が入力及び出力変数のリストを含み、サブシステム、変数のセット、経済機能、及び調整や他の構成情報をも含むような、モデルと関連付けられてもよい。制御器118の変数リスト及びそのモデルは整合していなくてはならない(例えば、変数が制御器118に可算又は減算されれば、モデルへも自動的に可算又は減算される)。あるモデル中の変数はモデル入力又はモデル出力として分類される。この分類はモデリングのみを目的とし(例えば計測値入力をプロセス値の推定の提供に使用する計算)モデル化されているプロセスの物理的な配置には必ずしも構造的に関連しない。制御器118の設計プロセスのうち、ある特定の一部分は、入力及び出力変数の選定及びモデルの開発を伴う。
【0022】
本明細書及び請求項において、用語「操作変数」(MV)は制御器118によって操作することができる変数であり、「制御変数」(CV)は高度プロセス制御器によって所定の値(設定値)、又は所定の範囲(設定範囲)内に保たれる変数として使用する。用語「外乱変数」(DV)は、制御器118から独立して値が変動するがその影響は制御器モデルに含まれる変数として使用する。用語「仲介変数」(IV)は制御器モデルの出力である一方他のモデル出力への入力として関係を持つ変数として使用する。「変数セット」という表現は、あるアプリケーションの与えられた制御器118の、定義された変数の組として使用する。与えられた制御器118は多数の変数セットを持ってもよく、また任意の変数は変数セットの要素であってもよい。しかしながら、ある変数は変数セットの中に一度のみ出現する。「変数の最適化」の表現は、変数を最小化又は最大化し、該変数を所定の値に保つことを示すために使用する。用語「最良パフォーマンス」はユーザ提供値(設定値/RTO、目標値)又は経済的に最高の利益/最小のコスト、のうち与えられた状況において高優先順位のものの最も近傍であることを示すために使用する。用語プロセス出力変数(POV)はプロセス入力の変動によって値が変動する変数に関する。用語「最良パフォーマンス値」(BPV)は特定のCV限界値の中で最良のパフォーマンスとなる値を示し、ここでCV限界値とは、実現可能性回復前のオリジナルの限界値であり、なぜならば、限界値の弛緩によりパフォーマンスが低下すると考えられているからである。BPV値は静的計算の副産物として計算されてもよい。「リアルタイム最適化」の表現は、与えられた拘束条件において、プロセス内における経済的に最良の動作をする点を計算する自動プロセスを示すために使用する。
【0023】
制御器118の変数は更に、プロセスへの構造的関係に基づいて分類されてもよい。プロセス入力はMV(制御器によって調整される独立したプロセス設定)、又はDV(制御器によって調整されない独立したプロセス設定であり、MVの変動によって影響を受けるプロセス計測値)として分類されてもよい。POVは任意の一つ以上のCV、MV、又はIV、又は他の任意の当業者にとって既知の属性を、属性として含んでもよい。
【0024】
制御器のMVは、サブシステムとして、サブシステムの処理を最適化するために、グループ化されてもよい。制御器は各独立サブシステムを管理しサブシステム間の適切な協調を保証する調整層を含んでいてもよい。制御器118の計算は、静的最適化及び動的動作の計算を含んでいてもよい。静的最適化においては、現在の計測値、予測応答、優先順位付けされた拘束条件、及び特定された(静的最適化)経済機能に基づいて、各CVに対して静的状態目標値が推定され得る。動的動作の計算においては、現在の動作と、各制御器MVにおける予測された動作計画が、応答調整と、計算された目標値に基づいて決定される。
【0025】
変数セットは、表示と、相互制御(例えばモード変更)のための、CVのグループ化を提供する。経済機能は、制御器の、特定の定常状態(又は静的)最適化目的を定義するために、また、CVのフルセットと制御器モデルの整合性がとれた状態での各CVの目標値を決定するために用いられる。制御器のモードとは、関連制御器のモードである。一般的に、任意のオペレーターは、制御器プロセッサを、不活性状態、スタンバイ、又は活動中の、要求されたモードに設定することができ、一方特別な権限を持つオペレーターのみが、ロック済みモードを要求することができる。
【0026】
該オペレーター又はユーザは、制御と最適化を実行するために、活動中な操作セットを使用して、該制御器118のモードを活動中として設定しなければならない。該オペレーター又はユーザは、活動中モードの準備を行う場合、又は制御器の動作へ短期間の介在を行うことが必要な場合に、制御器118をスタンバイモードにする。制御器118がスタンバイとされた時、操作セットは要求されたモードに留まる。特別の権限を持つオペレーターは、不活性状態モードでは、制御器をより長い期間不活性とすることが望まれる場合には、制御器118を不活性状態モードにすることができる。これにより制御器の操作セットと経済機能が、自動的に不活性状態となる。
【0027】
ユーザとは、任意のオペレーター、技術者、1つ以上の情報ハンドリングシステム100、又は当業者にとって既知の任意の他のユーザであってもよい。
【0028】
さらに、当業者にとっては、上述された情報ハンドリングシステム100の一つ以上の要素が遠隔地に配置されていて一つ以上の要素へネットワーク越しに接続されていることが認められる。さらに、本発明の実施例は複数のノードを持つ分散システム上に、本発明の各部分が分散システム中の異なるノードに位置するように実装されてもよい。例えば、ディスプレイ114は情報ハンドリングシステム100の他の構成要素から離れた場所に位置してもよい。 情報ハンドリングシステム100は、一つ以上のクライアント装置、サーバー、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0029】
図2において、傾斜不均衡発生時に、傾斜不均衡を動的制御するために、本発明の一つ以上の実施例により特定の拘束条件を一時的に弛緩するフロー図の全般を200として示す。ステップ202において、ユーザ又はオペレーターにより指定された設定が、特定される。ユーザ設定とは、入力に対する、そして与えられたシステム又はプロセスの制御出力に対する限界又は拘束条件である。ユーザ設定はメモリ104、又は記憶装置106、又は当業者にとって既知の他の任意の場所に保存されてもよい。ユーザ設定には、許可される最高の傾斜率(上方及び又は下方)、傾斜均衡時間、設定値回復率、又は当業者にとって既知の他の設定値を含んでもよい。
【0030】
ステップ204では、現在の傾斜不均衡の変化(又は傾斜率)が特定される。該傾斜不均衡は、例えば、1つ以上の傾斜変数の影響を与える、外乱の変化によって誘導される。
【0031】
ステップ206において、設定値限界軌道は、少なくとも部分的には、現在の傾斜不均衡の変化(Δ)、特定された均衡時間(t
bal)、及び設定値回復率限界値(y
lo,sp及びy
hi,sp)に基づいて、動的制御時間区間において修正される。ある実施例では、設定値限界軌道は、設定回復率限界値に基づいて、以下に示されるように、決定される。
【0032】
【数1】
次に、ステップ208において、動的制御ソフトランディング傾斜限界時間定数(T
lo及びT
hi)は、少なくとも部分において、傾斜限界値(y
lo及びy
hi)、そしてユーザにより定義された最小/最大傾斜率不均衡
【0033】
【数2】
に基づいて、決定される。またステップ208において、設定値限界時間定数(T
lo,sp及びT
hi,sp)は、少なくとも部分的には設定値限界軌道時間定数(T
lo,sp及びT
hi,sp)、そして設定値回復率限界値(y
lo,sp及びy
hi,sp)に基づいて決定される。例えば、ある実施例では、動的制御ソフトランディング時間定数は、以下に示すように決定される。
【0034】
【数3】
ここで傾斜限界値y
loはmin(y
t+k+Tδ
t+k)、傾斜限界値y
hiはmax(y
t+k+Tδ
t+k)、Tは傾斜率がどれだけ早く0になるか(又はソフトランディング拘束条件が拘束している又はアクティブである状態になってすぐ)又は均衡する時間を示す時間拘束条件、tは時間(又は時間中のある点)、kは予測時間、yは静的モデルから計測された出力傾斜(y = Cx+ v、ここでCは適切な次元を持つ行列、xはプロセスモデルの状態、そしてvは静的モデルへの操作不可能な影響出力)である。ソフトランディング拘束条件は、傾斜率拘束条件の一時的な弛緩を可能にする傾斜限界値への滑らかな到達を含んでいる。
【0035】
ステップ210において、不均衡傾斜率拘束条件(δ
min,ss及びδ
max,ss)に関連する、内部の許可される最高の傾斜率(上方又は下方)、及び静的制御問題の不均衡傾斜設定拘束条件(δ
min,sp, ss及びδ
max,sp,ss)は、ソフトランディング拘束条件を使用して特定される。例えば、ある実施例では、傾斜率拘束条件、及び傾斜設定値拘束条件は、少なくとも、時間定数、設定値回復限界値、及び制御時間区間hに基づいて、下記のように決定される。
【0037】
ステップ212において、静的制御問題が解かれる。ある実施例では、静的制御問題は、ステップ210及び数式(4)及び(5)で示された、不均衡傾斜率拘束条件及び不均衡傾斜設定値拘束条件を使用して解かれる。ある実施例では、静的制御問題は、不均衡傾斜率拘束条件を、割合傾斜限界値(y
lo及びy
hi)よりも低い優先順位で課し、また不均衡傾斜設定値拘束条件を傾斜設定値限界値(y
lo,sp及びy
hi,sp)よりも高い優先順位で課すことにより、解かれる。各拘束条件の優先順位は、ユーザによって定義された設定によってもよい。
【0038】
ステップ214において、傾斜限界値(y
lo及びy
hi)、及び設定値限界軌道は、少なくとも部分的に、予測時間傾斜率(δ
k)、及び設定値回復率(δ
r)に基づいて、アップデートされる。ある実施例では、アップデートされた傾斜限界値(y
lo及びy
hiにより示される)、及びアップデートされた設定値回復限界値(y
lo,sp,k及びy
hi,sp,k)は、以下に示すように決定される:
【0041】
ステップ216において、動的制御問題が、アップデートされた傾斜値と、アップデートされた設定値回復限界値を使用して解かれる。ある実施例では、傾斜限界値への重みづけと、設定値限界値への重みづけが、アップデートされた傾斜限界値、及びアップデートされた設定値回復限界値へ、それぞれなされる。
【0042】
ステップ218において、動的制御問題への解がレポートされる。
【0043】
該実施例は様々な実装や利用例を参照して説明されたが、これらの実施例は説明用途であり、本発明の主題の範囲はこれらに限定されない。様々な変形、変更、追加、及び改良が可能である。
【0044】
単一の事例として説明された構成要素、動作、又は構成への、複数の事例が提供されることがあり得る。一般的に、構成例において別個の構成要素として示された構造及び機能は、結合された構成又は構成要素として実装されてもよい。同様に、単独の構成要素として示された構造及び機能は、分解された構成要素として実装されてもよい。これら、そして他の変形、変更、追加、及び改良は、本発明の主題の範囲に含まれる。