【実施例】
【0019】
本発明の実施態様は、下記実施例によってさらに説明されるが、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1−物質と方法:
動物とリージェント:全てのマウスがん細胞株はATCCから購入した。雄C57BL/6マウス(Harlan)が本研究に用いられた。マウスp40(cat#554594)及びp70(cat#554592)をBDバイオサイエンスから購入した。マウスp40
2(cat#499-ML)をR&Dより購入した。ハムスターIgG(cat#IR-HT-GF)はイノヴァティブリサーチから入手した。マウスIgG(cat#sc-2025)はサンタクルズバイオテクノロジーから購入した。クロルプロマジン(cat#C8138)、フィリピン(cat#F9765)、MTTアッセイキット(cat#CGD1)及びLDHアッセイキット(cat#TOX7)はシグマから購入した。IFN−γ中和抗体(cat# 16-7311-81)はeバイオサイエンスから購入した。TUNELアッセイキット(cat#QIA39)はカルビオケムから、アネキシンVアッセイキット(cat#K101-25)はバイオビジョンから購入した。
【0020】
サンドイッチ法ELISA:サンドイッチ法ELISAを用いて、我々が記述したように(11、12)マウスp40
2及びp40を定量した。簡単に述べると、p40
2については、mAb a3−1d (1.3mg/mL) を1:3000に希釈し、96−ウェルELISAプレートのそれぞれのウェル(100μL/ウェル)にコーティングのため加えた。ビオチン化されたp40
2mAb d7−12c(2mg/mL)を1:3000に希釈し、検出抗体として用いた。同様にp40について、mAb a3−3a (1.3mg/mL)とビオチン化されたp40mAb a3−7g(2mg/mL) を1:3000に希釈し、それぞれコーティングと検出抗体として用いた(11)。異なる処置群の無血清上清中のIFN−γ、IL−12及びIL−10濃度を、ELISA (eBioscience)で製造者の使用説明書に従って測定した。
MTT及びLDHアッセイ: これらのアッセイは、Jana. M. 他(32) 及びKhasnavis. S. 他(33)に記載のとおり行われた。
【0021】
腫瘍の発達と測定: 動物の管理及び実験は、米国国立衛生研究所のガイドラインに従い、ラッシュ大学医療センター(イリノイ州シカゴ)動物実験委員会(IACUC#14-019)の承認を得て行った。腫瘍は雄C57BL/6マウスの皮下で発生させた。腫瘍を発生させるため、マウスのわき腹に1×106 TRAMP−C2細胞を注射した。マウスは我々の温度管理された動物飼育器で適切な食物と水を与えられて管理された。腫瘍の成長はカリパスで測定され、腫瘍の断面積が式によって定められた(mm
2 =最も長い径×最も短い径)。p40mAbによる処置は、腫瘍のサイズが0.8−1cm
2に達したときに開始した。p40mAb a3−3aを週に一回、腹腔内(intraperitonially)に、容量0.1mlの滅菌PBS−1%の正常マウス血清中で注入した。その後、腫瘍の発達または退行を判断するために測定した。赤外色素(2DGと結合したAlexa800色素;Licor)を、尾静脈を通じて画像解析の前日に注射した。マウスは研究の最後に犠牲にされ、腫瘍組織はウェスタンブロット、mRNA発現及び免疫組織化学的な分析のために収集された。
【0022】
組織標本と免役組織化学:パラフィン包埋された組織切片を調製し、組織切片を5ミクロンのサイズに切った。内在するペルオキシダーゼ活性を除去するため、組織切片を脱パラフィンし、再水和し、3%過酸化水素水とともにメタノール中、室温で15分間培養した。抗原の回復を、温度95℃で20分間、スライドを0.01Mのクエン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)中に置くことにより行った。ブロッキングをした後、一次抗体(表1)とともに、室温で2時間、スライドを培養し、その後洗浄して、Cy2、Cy3またはCy5(ジャクソンイムノリサーチラボラトリーズ、ペンシルべニア州ウェストグローブ) 二次抗体とともに室温で1時間培養した。マウスIgGをアイソタイプコントロールとして用いた(34)。
TUNELアッセイ: p40またはp40
2に対するmAb処置の後、TUNELアッセイをCorbett GT 他(35)に記載のとおり行った。
半定量的RT−PCR:全RNAを単離し、半定量的RT−PCR分析を、IFN−γ、IL−10、T−bet、GATA3、FoxP3及びGAPDHについてBrahmachari S 他 (6); Jana M 他 (32)及びCorbett GT 他 (35) に記載のとおり、プライマー(表2)を用いて行った。
【0023】
リアルタイム定量的PCR:mRNAの定量を、ABI−Prism7700シーケンス検出システム (Applied Biosystems) 、SYBR GREEN (Applied Biosystems) を用いてBrahmachari S 他 (6); Jana M 他 (32) 及びCorbett GT 他(35)に記載のとおり行った。各遺伝子のmRNA発現は、GAPDH mRNAのレベルで正規化した。データはABIシーケンス検出システム1.6ソフトウェアによって解析し、ANOVAによって分析した。
FACS:IL−12Rβ1及びIL−12Rβ2の細胞表面発現を、Brahmachari S 他 (6)記載のとおりモニターした。簡単に述べると、処置後、付着細胞を剥離するためAccutase (BD Bioscience)とともに10分間、細胞を培養した。FACS緩衝液で洗浄した後、細胞をPE標識されたIL−12RβとIL−12Rβ2抗体とともに、温度4℃で1時間培養した。細胞内染色のため、p40及びp40
2mAbとともに培養する前に、透過処理した。APC−結合した抗ハムスター二次抗体を用いた。洗浄後、細胞をFACS (BD Biosciences、カルフォルニア州サンノゼ)で分析した。細胞は形態的な特徴に基づきゲートをかけられ(gated)た。アポトーシス性及び壊死性の細胞はFACS分析には許容されなかった。
膜分離:処置後、細胞はPBS中で解体(scrap)され、細胞ペレットを均質化緩衝液(250mM スクロース、1mM EDTA、10mM トリス塩酸溶液(pH7.2)、プロテアーゼ阻害剤及びホスファターゼ阻害剤)に溶解し、ハンドホモジナイザーで均質化した。細胞片を温度4℃で10分間500gで遠心分離し、次いで上清を温度4℃で1時間100,000gで遠心分離して除去した。上清を処分し、膜分画を含むペレットをSDS−PAGEサンプル緩衝液に溶解した。
【0024】
イムノブロット解析:イムノブロット解析をJana M 他 (32) 、Khasnavis S (33) 及びCorbett GT 他(35) に記載のとおり、異なる一次抗体 (表1)を用いて行った。
統計分析: 腫瘍の退行については、定量的なデータが平均±平均誤差として示された。統計的有意性が、スチューデント=ニューマン=コイルス事後分析とともに一元配置分散分析を通じてアクセスされた。その他のデータは、3つの独立した実験の平均±標準偏差として示された。平均の間の統計的有意差は、スチューデントのt−検定によって計算した。p−値が0.05未満(p<0.05)の場合、統計的有意であるとみなした。
【0025】
実施例2−異なるマウスがん細胞株中のIL−12ファミリーのサイトカインレベル(p40、p40
2、IL−12及びIL−23)
がんにおけるIL−12ファミリーのサイトカインの役割を理解するため、まず、我々は、異なるがん細胞株中のこれらサイトカインのレベルをモニターした。特定機能阻害モノクロナール抗体(mAb)が入手できなかったことから、どの病気についても発病にかかるp40及びp40
2の役割を検討することはできなかった。したがって、我々はp40及びp40
2それぞれを中和するmAbを発生させ、これらのサイトカインを別々にモニターするためのELISAを開発した(11)。定量化分析を、扁平上皮(KLN)、前立腺(TRAMP)、乳(4T1)及び肝臓ヘパトーマ(Hepa)細胞株を含む異なる付着性マウスがん細胞において行った。細胞を無血清条件下で48時間培養し、その後、サンドイッチ法ELISAでp40、p40
2、IL−12及びIL−23レベルを測定した。一般的に、これらそれぞれの細胞株中のIL−12及びIL−23のレベルはp40及びp40
2よりも非常に低かった(
図1A−C)。TRAMP、4T1及びHepa細胞中のp40のレベルはp40
2、IL−12及びIL−23よりもはるかに高かった(
図1A−C)。しかしながら、KLN肺がん細胞中では、p40及びp40
2のレベルはほぼ同じであり(
図1A)、当該効果の特異性を示唆していた。がん細胞中のp40の存在を確認するため、我々は異なる技術を採用した。最初に、我々はTRAMP細胞上清中のp40レベルをネイティブPAGE分析によってモニターした(
図1D)。クマシー染色のネイティブPAGEを行い、当該バンドを純モノマーp40タンパク質のバンド(最左レーン)と比較したところ、TRAMP細胞の主な分泌性分子として40kDaタンパク質の存在が示された(
図1D)。第2に、我々は、TRAMP細胞上清のネイティブイムノブロット解析を我々の特定のp40モノマーモノクロナール抗体(p40mAb)a3−3aとともに行い、TRAMP細胞上清中に、p40が存在することを発見した(
図1E)。最後に、細胞内FACS解析をp40mAb a3−3a及びp40
2 mAb a3−1dとともに行ったところ、TRAMP細胞中でp40のレベルがp40
2よりも著しく高いことが示された(
図1F−G)。
【0026】
次に我々は、異なるヒトがん細胞株中のp40レベルを測定した。興味深いことに、我々の上清ESI−MS分析(
図14A−C)は明確に、ヒトヘパトーマHep3B及び前立腺LNCaP細胞が、IL−12よりも著しく高いレベルのp40を発現したことを示した(
図14D−F)。さらに、クマシー染色した上清とp40標準タンパク質のネイティブPAGE分析は、Hep3B、LNCaP及びヒト乳がんMCF−7細胞が著しいレベルのp40を産生したことを実証した(
図1H−J)。異なる上清と抗ヒト全IL12p40/p70抗体のイムノブロット解析はまた、3つの全てのヒトがん細胞が、他のIL−12サイトカインに比べて高いレベルのp40を産生したことを示した(
図1K)。同時に、我々の結果は、幅広いがん細胞において、p40が過剰に産生されたことを示唆した。
【0027】
実施例3:モノクロナール抗体によるp40の選択的中和はがん細胞の死反応を刺激する
IL-12ファミリーのメンバー中で、p40のレベルがほとんどのがん細胞中で最も高いことから、我々は、がん細胞の成長及び生存におけるその役割について検討した。いかなる病気のプロセスにおいても、分子の役割を調べるにあたっては、ノックアウトマウスモデルを考えることが、しばしば非常に容易である。しかしながら、我々はp40(−/−)マウスを使うことが今回はできなかった。何故なら、p40遺伝子をノックアウトすることは、IL−12、IL−23、p40
2及びp40をノックダウンすることでもあるからである。したがって、異なるがん細胞の生と死におけるp40
2及びp40の役割を調べるため唯一の実行可能なアプローチは、これら分子を中和するモノクロナール抗体を用いることであった。p40
2mAb a3−1dではなく、p40mAb a3−3aが、TRAMP(
図2(B及びF))、4T1(
図2(C及びG))及びHepa(
図2(D及びH))細胞中のLDHの放出を増加させ(
図2(A−D))、MTT放出を減少させた(
図2(E−H))。一方、p40mAbは、KLN肺がん細胞では、LDHあるいはMTTの何れにも効果はなく、当該効果の特異性を示していた。腫瘍細胞の死を別の角度からモニターするため、我々はt−型カルシウムチャンネルを通じたカルシウム流入を測定した。異なるがん細胞を、p40
2ではなくp40mAbで処置したところ、TRAMP(
図2F)、4T1(
図2G)及びHepa(
図4H)細胞においてt−型カルシウム流入の減少が示された。この場合も、p40mAbは、KLNがん細胞中でt−型カルシウム流入を調整することはできなかった(
図2E)。続いて、TUNEL(
図2M)及びアネキシンV(
図2N)で標識し、定量分析を行ったところ(
図2O及び2P)、p40
2ではなくp40の中和は、TRAMP、4T1及びHepaがん細胞の死を刺激した。しかしながら、p40mAbはKLNがん細胞のアポトーシスに何ら影響を与えなかった。同時に、これらの結果は、p40
2ではなくp40の特異的な除去が、肺がん細胞の生存に影響を与えることなく、前立腺、乳及び肝臓腫瘍細胞中の死反応を刺激することを示唆している。
【0028】
p40に特定的な中和は、インビボTRAMP腫瘍組織中で、腫瘍の成長の退縮を誘導し、死反応を刺激した。次に我々は、TRAMP細胞を雄C57BL/6マウスのわき腹で腫瘍として成長させたときに、インビボでの腫瘍サイズ及び腫瘍組織の死に与えるp40mAbの効果について検討した。腫瘍が0.8から1mmのサイズに至ったら、マウスにp40 mAa3−3aを一回に体重あたり2mg/Kg、腹腔内に週2回、2週間処置した。p40mAbを処置した後、腫瘍のサイズを一日おきに記録した。IgGを受けた動物をネガティブコントロールとして分析した。コントロールとなる動物は一切の抗体を受けなかった。2週間後、腫瘍は赤外色素800が2デオキシDグルコースと結合したもの(IRDye8002DG)を尾静脈から注入して標識し、Licor Odyssey赤外スキャナーで画像化した。興味深いことに、全ての動物の赤外画像(
図3A)及び切除された腫瘍の写真(
図3B)から明らかであるように、我々は、p40mAbの投与が著しく腫瘍サイズを退縮させたことを観察した。
【0029】
腫瘍の退縮カーブから、p40mAbを処置した群の腫瘍サイズが、コントロール群及びIgG処置群(
図3C)に比較して、着実かつ著しく減少したことは明らかであった。次に我々は、これら腫瘍組織中のアポトーシスをモニターした。我々のTUNELの結果は、p40mAb処置した腫瘍中のTUNEL−陽性死細胞の総数は、コントロールまたはIgG処置した腫瘍(
図3D)よりも高いことを明確に示し、p40mAbによるp40の中和は、腫瘍組織中でアポトーシスを誘導することができることを示唆している。この発見をさらに確認するため、我々は、処置及び未処置腫瘍組織中の異なるアポトーシス関連遺伝子のmRNA発現を、カスタム遺伝子アレイを用いてモニターした。遺伝子アレイ(
図3E)に続いて、個別の遺伝子のリアルタイムPCR分析(
図3F)は、p40mAb処置がアポトーシス関連の異なる遺伝子、例えば、カスパーゼ3、カスパーゼ7、カスパーゼ8、カスパーゼ9、BAD、BID、シトクロムC、BAK及びp53の発現を著しく高めたことを明らかに示した。まとめると、これらの結果は、p40の中和が前立腺腫瘍細胞中インビボでアポトーシスを誘導することを示唆している。
【0030】
実施例4:p40特定中和が、培養腫瘍細胞及びインビボ腫瘍組織中のIFN−γの産生を刺激する
次に我々はp40mAbが、がん細胞の死反応を誘導するメカニズムについて調査した。IFN−γの産生を誘導すると、がん細胞中で細胞傷害性を誘導することは、既に証明された治療戦略である(13)。したがって我々は、p40mAb処置がTRAMP腫瘍細胞中のIFN−γの発現を上方制御することができるかを調べた。我々は、IgGではなく、p40mAbが、培養TRAMP細胞中でIFN−γのmRNA発現を著しく上方制御することを観察した(
図4A)。IFN−γはTh1細胞サイトカインであるが、我々のELISA(
図4B)及び免疫細胞化学的分析(
図6)の結果は、p40mAb処置がTRAMP細胞中のIFN−γレベルを増加させたことを明確に示した。一方で、p40mAb処置(
図4C)は、がんの成長を助けるとして知られている(14)、抗炎症性サイトカインであるIL−10のレベルを低減させた。次に我々は、p40mAb処置したTRAMP細胞中のIFN−γの増加した発現が、実際に細胞死に関わっているのか調査した。このため、我々は、TRAMP細胞をIFN−γ中和抗体のみ、あるいはp40mAbとともに処置した。TUNEL(
図4D)、LDH(
図4E)及びMTT(
図4F)アッセイは、IFN−γ中和抗体が、TRAMP細胞中のp40mAbが媒介する細胞死を無効にすることを明らかにした。これらの結果は、IgGではTRAMP細胞中のp40mAbが媒介する細胞死から守ることができなかったことから特定性がある(
図4D−F)。Hepa(
図7A−B)及び4T1(
図S2C−D)を含むその他の腫瘍細胞もまたIFN−γの発現の上方制御を示した。TRAMP細胞と同様に、我々のMTT活性アッセイ(
図8A及び
図9A)及びLDH放出アッセイ(
図8B及び
図9B)は、IgGではなくp40mAbが、Hepa及び4T1の両腫瘍細胞中での死を著しく刺激したことを明らかにし、p40の中和が、異なる腫瘍細胞においても死を誘導するために重大となり得ることを示唆した。
【0031】
腫瘍組織中のIFN−γレベルを分析したとき、我々は、細胞培養データと同様に、p40mAb処置腫瘍組織が、コントロール及びIgG処置腫瘍に比べ、IFN−γmRNA(
図10A−B)とタンパク質(
図10C及び
図10G)をより多く発現したことを観察した。さらに、IFN−γ誘導転写因子であるT−betの発現が、p40mAb処置マウス腫瘍では上方制御されたことが認められたが、コントロール及びIgG処置マウス(
図10H)では認められなかった。IL−10の上方制御(15)と制御性T細胞マーカーFoxp3(16)は、がん細胞中の細胞傷害性効果を阻害すると信じられているところ、我々はまた、これらの分子を腫瘍組織中でモニターした。興味深いことに、IL−10、GATA−3及びFoxp3の発現は、p40mAb処置腫瘍中で、コントロール及びIgG処置腫瘍に比べて減少した(
図10D−F)。これらの結果は、p40の中和が細胞性免疫を誘導し、体液性免疫とTregsを下方制御することが、培養TRAMP細胞及びインビボTRAMP腫瘍組織中で可能であることを示唆している。
【0032】
実施例5:p40特定中和がTRAMP腫瘍細胞中のIL−12産生を誘導する
IFN−γの上方制御は、IL−12シグナル伝達系の活性化によって達成される(13、17)。p40mAbはIFN−γの産生を増加させ、TRAMP細胞中の死をIFN−γを通じて誘導するため、我々は、これらのプロセスにおけるIL−12の関与を調査した。IL−12の産生は、コントロール及びIgG処置に比べ、p40mAb処置TRAMP細胞(
図11A)及びインビボ腫瘍組織(
図10B)で著しく増加し、IL−12シグナル伝達系がp40mAb性IFN−γ産生及び細胞死に関与している可能性があることを示唆した。我々は、機能阻害抗体によるIL−12の中和が、TRAMP細胞中のp40mAb誘導IFN−γの産生を抑制することを発見した(データは示されていない)。さらに、対IL−12中和抗体は、MTT(
図12A)及びLDH放出(
図12B)に示されたように、p40mAb性TRAMP細胞の死を抑制した。これらの結果は、p40の中和が、IL−12シグナル伝達系を通じて、がん細胞中のIFN−γと細胞死を誘導することを示唆している。
【0033】
実施例6:p40の選択的中和がTRAMP細胞中のIL−12Rβ1のインターナリゼーションを誘導する
IL−12シグナル伝達系は、IL−12と、IL−12Rβ1及びIL−12Rβ2のヘテロ二量体であるIL−12受容体との相互作用により開始される。機能性IL−12受容体は、そのリガンドIL−12と成功裏に結合した後取り込まれ(18)、さもなければ膜に捕らわれたままであると報告されている。したがって、われわれはp40モノマーがIL−12シグナル伝達系を無効にするため、TRAMP細胞中でIL−12受容体を捕らえることに関与しているかを検討した。我々のFACS分析は、p40
2でもp70でもなく、p40で処置すると、TRAMP細胞中のIL−12Rβ1の表面発現が増加することを明らかにした(
図5Ai−iv)。一方で、p40はIL−12Rβ2の表面発現には何の効果もなかった(
図13)。さらに、IgGではなくp40mAbで処置した場合、IL−12Rβ1の膜レベルが下方制御され(
図5Av及びvi)、膜においてIL−12Rβ1を捕捉するにあたりp40が関与していることが示唆された。更なる確認のため、我々は、p40、p40
2またはp70で別々に処置されたTRAMP細胞の膜分画中のIL−12Rβ1についてイムノブロット解析を行った。興味深いことに、我々は、p40
2でもIL−12でもなく、p40で処置した場合に、膜中のIL−12Rβ1の存在が増加したことを発見した(
図5B)。膜分画の純度を確認するため、全カドヘリンについて分析した(
図5C;上部パネル)。驚くべきことに、我々は、p40
2またはp70で処置したTRAMP細胞の膜分画中のβ−アクチンのレベルが増加したことを認め、p40
2またはp70で処置することが膜中のエンドサイト小胞の形成の増加と関連している可能性があることが示唆された(
図5C:下部パネル)。対照的に、我々は、p40で処置したTRAMP細胞中ではβ−アクチンの膜レベルの増加は観察しなかった(
図5C)。これらの結果は、p40
2でもp70でもなく、p40が、膜中でIL−12Rβ1を捕捉することに関わっている可能性を示唆している。
【0034】
しかしながら、TRAMP細胞がこれらのサイトカインで処置されたとき、細胞全体からの抽出物中のIL−12Rβ1には何の違いもなく(
図5D)、p40モノマーによるIL−12Rβ1レベルの誘導の可能性を打ち消すものであった。これと整合的に、p40mAbは、p40が媒介するTRAMP細胞の膜中のIL−12Rβ1の増加を無効化しており(
図5E)、p40が実際に、膜におけるIL−12Rβ1の捕捉に関与していることを示唆している。膜分画の純度を確認するため、全カドヘリンについて分析した(
図5F;上方パネル)。β−アクチンのレベルはp40mAb処置細胞でより高く、p40の欠乏がTRAMP細胞中のエンドサイト小胞の形成を誘導する可能性を示唆している。(
図5F;下部パネル)。しかしながら、この場合も、全IL−12Rβ1レベルについて、(p40+p40mAb)処置細胞とp40処置細胞の間に差異はなく、p40mAb処置は、TRAMP細胞中のIL−12Rβ1の発現を下方制御するわけではないことが示唆された。これらの結果はともに、TRAMP細胞が放出する過剰なp40が、IL−12Rβ1のインターナリゼーションあるいはエンドサイトーシスを抑制することによって、IL−12シグナル伝達を阻害することを示唆している。
【0035】
次に我々は、p40の中和がIL−12Rβ1のインターナリゼーションを誘導するメカニズムを調査した。受容体のインターナリゼーションは、クラスリン依存とカベオリン依存の主として二つのメカニズムを通じて起こる。クラスリンあるいはカベオリンの関与を調べるため、我々は、二つの薬理学的な阻害剤であるフィリピンとクロルプロマジン(CPM)を用いた。興味深いことに、CPMではなく、フィリピンでの前処置は、p40mAb処置TRAMP細胞中のIL−12Rβ1の、膜におけるインターナリゼーションを著しく阻害し(
図5H及び5I)、p40が媒介するIL−12Rβ1のインターナリゼーションが、カベオリンに敏感でクラスリンに非依存性の経路によって起こることを示唆している。免疫蛍光法はさらに、TRAMP細胞中のp40mAbが媒介するIL−12Rβ1のインターナリゼーションがカベオリン依存であること(
図5J−L)を、p40mAbでp40を中和すると、フィリピンで前処理されたTRAMP細胞がIL−12Rβ1を取り込むことができないことから確認した(
図5L)。
【0036】
【表1】
【表2】
【0037】
実施例7−ヒト患者におけるp40、p40
2及びIL−2レベル
表3はELISAを用いて11人の前立腺がん患者と11人のコントロール対象について測定した、p40、p40
2及びIL−12の血清レベルを示している。Hybridoma 27: 141 -151 , 2008; J. Immunol. 182: 5013-5023, 2009記載のサンドイッチ法ELISAによって、前立腺がん患者と健康なコントロールの血清中のp40及びp40
2濃度について測定した。簡単に述べると、p40を定量するため、我々はmAb a3−3aをコーティングのため、mAb a3−7gを検出のために用いた。同様に、p40
2を測定するため、mAb a3−1dとmAb d7−12cをそれぞれコーティングと検出のために用いた。血清中のIL−12レベルはIL−12ELISAキット(eBiosicence社、カリフォルニア州サンディエゴ、92121)を用いて測定された。
【0038】
表3に報告されたそれぞれのレベルは3つの測定の平均値である。p40モノマーの血清レベルはコントロール対象よりも前立腺がん患者でより高かった。この結果は、p40の過剰が前立腺がんの発病に一役買っており、がん患者をp40モノマーに対するモノクロナール抗体で処置すると前立腺がんの進行を阻害/停止する可能性があることを示唆している。
【表3】
【0039】
(参考文献)
【0040】
本発明はその特定の実施態様を参照して説明及び例証されているが、該発明がそれら実施態様に限られることを意図するものではない。以下特許請求の範囲に規定されている本発明の真の範囲及び趣旨から逸脱することなく、変形や修正を施すことは可能であることを当業者であれば認識するであろう。したがって、添付された請求の範囲の範囲内及びそれと同等なすべてのそのような変形及び修正は、発明に含まれることを意図している。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕がんの治療を必要とする対象に対して、治療効果のある量のp40モノマーに対する抗体またはその免疫学的に活性な断片を含む組成物を投与することを含む、がんを治療する方法。
〔2〕前記抗体またはその免疫学的に活性な断片が、IL−12シグナル伝達の阻害を抑制する、前記〔1〕記載の方法。
〔3〕前記抗体またはその免疫学的に活性な断片が、IFN−γの産生を上方制御する、前記〔1〕記載の方法。
〔4〕前記抗体またはその免疫学的に活性な断片が、モノクロナール抗体またはその免疫学的に活性な断片である、前記〔1〕記載の方法。
〔5〕前記p40モノマーに対する抗体またはその免疫学的に活性な断片が、ポリクロナール、モノクロナール、ヒト、ヒト化及びキメラ抗体;単鎖抗体;及びエピトープ結合抗体の断片からなる群より選ばれる、前記〔1〕記載の方法。
〔6〕前記抗体またはその免疫学的に活性な断片が、p40ホモ二量体の活動を著しく中和しない、前記〔1〕記載の方法。
〔7〕前記がんが、前立腺がん、乳がん及び肝臓がんからなる群より選ばれる、前記〔1〕記載の方法。
〔8〕前記がんが、p40モノマーの過剰産生を特徴とするがんである、前記〔1〕記載の方法。
〔9〕前記組成物が、さらに少なくとも1の薬学的に許容される担体を含む、前記〔1〕記載の方法。
〔10〕前記対象がヒト対象である、前記〔1〕記載の方法。
〔11〕前記抗体またはその免疫学的に活性な断片が、少なくともカベオリン媒介経路を通じたIL−12Rβ1のインターナリゼーションを減少させる、前記〔1〕記載の方法。
〔12〕前記抗体またはその免疫学的に活性な断片が、ヒト化抗体またはその免疫学的に活性な断片である、前記〔1〕記載の方法。
〔13〕前記組成物が経口投与される、前記〔1〕記載の方法。
〔14〕前記組成物が、皮下、関節内、皮内、静脈内、腹腔内及び筋肉内経路からなる群より選ばれる経路によって投与される、前記〔1〕記載の方法。
〔15〕細胞に、p40モノマーに対する抗体またはその免疫学的に活性な断片を、細胞死を誘導するために十分な量、接触させることを含む、細胞死を誘導する方法。
〔16〕前記細胞ががん細胞である、前記〔15〕記載の方法。
〔17〕前記がん細胞が、p40モノマーの過剰産生を示す、前記〔16〕記載の方法。
〔18〕前記がん細胞が、前立腺がん細胞、乳がん細胞、及び肝臓がん細胞からなる群より選ばれる、前記〔16〕記載の方法。