(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態における水力機械のランナおよび水力機械について説明する。
【0018】
(第1の実施の形態)
まず、
図1〜
図9を用いて、第1の実施の形態における水力機械のランナおよび水力機械について説明する。ここでは、まず、
図1を用いて水力機械の一例であるカプラン水車について説明する。
【0019】
図1に示すように、カプラン水車1は、図示しない上池から水が流入するケーシング2と、ケーシング2に対して回転可能に設けられた、ケーシング2からステーベーン3およびガイドベーン4を通って流入する水により回転駆動されるランナ5と、ランナ5の外周側に設けられたディスチャージリング30(静止部材)と、を備えている。
【0020】
ステーベーン3は、ケーシング2からランナ5への流路を形成するためのものであり、ケーシング2より内周側に配置されている。ガイドベーン4は、ランナ5に流入される水の流量を調整するためのものであり、ステーベーン3より内周側に配置されている。ガイドベーン4の開度を変えることにより、ケーシング2からランナ5に流入する水量を調整し、発電量を変化させるように構成されている。
【0021】
ランナ5は、ガイドベーン4より内周側に、かつ下流側に配置されている。ケーシング2から流入する水の主流方向は、ステーベーン3およびガイドベーン4においては略半径方向を向いているが、ランナ5においてはランナ回転軸線Xの方向(鉛直方向)を向くようになっている。
【0022】
ランナ5には、回転主軸6を介して発電機7が連結されている。流入した水によりランナ5が回転駆動されると、発電機7において発電が行われる。
【0023】
ランナ5の下流側には、吸出し管8が設けられている。この吸出し管8は、図示しない下池に連結されており、ランナ5を回転駆動させた水が下池に放出されるようになっている。
【0024】
ランナベーン20の外周側には、上述したディスチャージリング30が設けられている。このディスチャージリング30は、環状に形成されており、ディスチャージリング30の内周側に設けられたランナ5を通過する水の流路を画定している。
【0025】
次に、本実施の形態によるランナ5についてより詳細に説明する。
【0026】
図2に示すように、ランナ5は、ランナボス10と、ランナボス10の外周側に設けられた複数のランナベーン20と、を有している。このうちランナボス10は、ランナ回転軸線Xを中心に回転可能になっている。ランナベーン20は、周方向に所定の間隔で配置されており、ランナボス10に対して、ベーン回動軸線Yを中心に回動可能に設けられている。より具体的には、ランナベーン20は、スピンドル15を介してランナボス10に回動可能に設けられている。各ランナベーン20が回動することにより、必要とされる負荷(水の流量)や運転落差に応じてランナベーン20の角度が調整され、広い運転範囲で高効率な運転が可能になっている。なお、ランナボス10は、上述した回転主軸6に連結され、ランナボス10の回転が、回転主軸6を介して発電機7に伝達されるようになっている。
【0027】
ランナベーン20は、ランナボス10の外周面11に対向する内周側ベーン端面21と、ディスチャージリング30の内周面31に対向する外周側ベーン端面22と、を有している。
図2においては、スピンドル15の上流側(
図2における上側)および下流側(
図2における下側)に内周側ベーン端面21が示されている。
【0028】
図2に示すように、内周側ベーン端面21とランナボス10の外周面11との間には、第1ギャップG1が形成されている。この第1ギャップG1は、ランナベーン20をランナボス10に対してスムースに回動させるために設けられている。また、外周側ベーン端面22とディスチャージリング30の内周面31との間には、第2ギャップG2が形成されている。この第2ギャップG2は、ランナベーン20をランナボス10に対してスムースに回動させるとともに、ランナ5をディスチャージリング30に対してスムースに回転させるために設けられている。
【0029】
図3に示すように、ランナベーン20は、内周側ベーン端面21から外周側ベーン端面22にわたって設けられた圧力面23および負圧面24を更に有している。なお、
図3は、半径方向に沿って外周側から内周側に向かってランナベーン20を見た図であり、手前側に外周側ベーン端面22が示され、その奥側に内周側ベーン端面21が示されている。
【0030】
図2および
図3に示すように、ランナベーン20は、圧力面23および負圧面24によって画定された、ランナ5に流入した水から仕事を受けるベーン本体25と、ベーン本体25の外周側端部に設けられたフィレット26と、を更に有している。このうちフィレット26は、ランナベーン20の負圧面24を下流側に突出させるように形成されており、負圧面24においてキャビテーション壊食が発生することを防止可能になっている。外周側ベーン端面22は、ベーン本体25の外周側端面とフィレット26の外周側端面とを含む面として構成されており、ベーン本体25の外周側端面とフィレット26の外周側端面は、連続状に滑らかに形成されている。
【0031】
図3に示すように、本実施の形態では、ランナベーン20の内周側ベーン端面21および外周側ベーン端面22に、ベーン端面溝40、41がそれぞれ設けられている。すなわち、内周側ベーン端面21に、複数の内周側ベーン端面溝40が設けられ、外周側ベーン端面22に、複数の外周側ベーン端面溝41が設けられている。
【0032】
内周側ベーン端面21に設けられた内周側ベーン端面溝40は、ランナボス10の外周面11と内周側ベーン端面21との間の第1ギャップG1を流れる漏れ流れQ1の流れ方向に直交する方向に延びている。すなわち、内周側ベーン端面溝40は、細長状に形成されており、内周側ベーン端面溝40の長手方向は、漏れ流れQ1の流れ方向に直交する方向になっている。
図3においては、複数の内周側ベーン端面溝40は、互いに平行に形成されている例が示されている。内周側ベーン端面溝40の間隔は、特に限られることはないが、半径方向に沿って見たときに、漏れ流れQ1が少なくとも1回(より好ましくは複数回)、内周側ベーン端面溝40を通過することができる間隔であることが好ましい。
【0033】
外周側ベーン端面22に設けられた外周側ベーン端面溝41は、ディスチャージリング30の内周面31と外周側ベーン端面22との間の第2ギャップG2を流れる漏れ流れQ2の流れ方向に直交する方向に延びている。すなわち、外周側ベーン端面溝41は、細長状に形成されており、外周側ベーン端面溝41の長手方向は漏れ流れQ2の流れ方向に直交する方向になっている。
図3においては、複数の外周側ベーン端面溝41は、互いに平行に形成されている例が示されている。外周側ベーン端面溝41の間隔は、特に限られることはないが、半径方向に沿って見たときに、漏れ流れQ2が少なくとも1回(より好ましくは複数回)、外周側ベーン端面溝41を通過することができる間隔であることが好ましい。
【0034】
ところで、本実施の形態によるランナベーン20は、ランナボス10に対して回動可能になっており、必要とされる負荷や運転落差に応じてランナベーン20の角度が調整される。このため、ベーン端面溝40、41の長手方向は、所望の運転点における漏れ流れQ1、Q2の流れ方向に直交する方向として規定してもよい。例えば、設計運転点や最高効率運転点における漏れ流れQ1、Q2の流れ方向に対して規定してもよい。
【0035】
図3に示す例では、内周側ベーン端面溝40は、内周側ベーン端面21のうちスピンドル15(
図2参照)の上流側および下流側にそれぞれ形成されている。言い換えると、内周側ベーン端面溝40は、内周側ベーン端面21のうちスピンドル15が設けられている領域以外の領域に形成されている。一方、外周側ベーン端面溝41は、外周側ベーン端面22のうち、上流側領域および下流側領域を除いた中央領域に形成されている。しかしながら、外周側ベーン端面溝41は、外周側ベーン端面22の全領域にわたって形成されていてもよい。
【0036】
図3および
図4に示すように、内周側ベーン端面溝40は、内周側ベーン端面21のうち圧力面23の側の縁部から負圧面24の側の縁部まで延びている。このことにより、内周側ベーン端面溝40は、圧力面23および負圧面24においてそれぞれ開口し、内周側ベーン端面21を貫通するように延びている。
【0037】
図3および
図5に示すように、外周側ベーン端面溝41は、外周側ベーン端面22のうちフィレット26の部分にも形成されている。すなわち、外周側ベーン端面溝41は、ベーン本体25の外周側端面からフィレット26の外周側端面にわたって連続状に形成されている。
【0038】
外周側ベーン端面溝41は、外周側ベーン端面22のうち圧力面23の側の縁部から、負圧面24の側の縁部(言い換えると、フィレット26の下流側縁部)まで延びている。このことにより、外周側ベーン端面溝41は、圧力面23および負圧面24においてそれぞれ開口し、外周側ベーン端面22を貫通するように延びている。
【0039】
内周側ベーン端面溝40および外周側ベーン端面溝41の横断面形状(長手方向に直交する方向の断面形状)は、特に限られることはない。例えば、
図6に示すように、矩形状に形成されていてもよい。すなわち、
図6に示す例では、ベーン端面溝40、41は、横断面視で、圧力面23の側に設けられた第1溝側壁42と、負圧面24の側に設けられた、第1溝側壁42に離間した第2溝側壁43と、第1溝側壁42から第2溝側壁43に延びる溝底44と、を含んでいる。第1溝側壁42と第2溝側壁43がベーン端面21、22に垂直に形成されるとともに互いに平行に形成され、溝底44が、第1溝側壁42および第2溝側壁43に垂直に形成されている。
【0040】
内周側ベーン端面溝40および外周側ベーン端面溝41の幅(長手方向に直交する方向の寸法)は、特に限られることはないが、対応するギャップG1、G2の寸法に応じて設定してもよい。例えば、内周側ベーン端面溝40の幅w1は、第1ギャップG1の寸法d1(
図2参照)の3倍〜6倍であり、外周側ベーン端面溝41の幅w2は、第2ギャップG2の寸法d2(
図2参照)の3倍〜6倍であってもよい。ベーン端面溝40、41の幅w1、w2を対応するギャップG1、G2の寸法d1、d2の3倍以上にすることにより、当該ギャップG1、G2に流入した水を当該ベーン端面溝40、41に入り込ませやすくすることができる。一方、ベーン端面溝40、41の幅w1、w2を対応するギャップG1、G2の寸法d1、d2の6倍以下にすることにより、ギャップG1、G2を通過する水の流路抵抗が低下することを抑制できる。また、内周側ベーン端面溝40の深さh1は、第1ギャップG1の寸法d1の3倍程度にしてもよく、外周側ベーン端面溝41の深さh2は、第2ギャップG2の寸法d2の3倍程度にしてもよい。ここで、ギャップG1、G2の寸法d1、d2は、ベーン端面溝40、41の長手方向を規定する際に設定した運転点における寸法としてもよい。また、寸法d1が第1ギャップG1の各位置において異なる場合には、最小値を採用してもよい。同様に、寸法d2が第2ギャップG2の各位置において異なる場合には、最小値を採用してもよい。
【0041】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0042】
水車運転時には、
図1に示すように、ランナ5に流入する水は、ディスチャージリング30によって画定された流路を流れ、ランナ5を回転駆動する。このことにより、ランナ5が回転し、発電機7において発電が行われる。
【0043】
ランナ5に流入した水の多くは、ランナベーン20に対して仕事を行い、ランナ5を回転駆動する。しかしながら、一部の水は、
図2および
図3に示すように、ランナベーン20の周囲のギャップG1、G2を通過する漏れ流れQ1、Q2となってランナベーン20を、仕事をすることなく通過する。より具体的には、ランナボス10の外周面11と内周側ベーン端面21との間の第1ギャップG1に漏れ流れQ1が形成され、ディスチャージリング30の内周面31と外周側ベーン端面22との間の第2ギャップG2に、漏れ流れQ2が形成される。
【0044】
第1ギャップG1に流入した水は、第1ギャップG1から流出するまでに、内周側ベーン端面21に設けられた内周側ベーン端面溝40を通過する。
図6に示すように、第1ギャップG1のうち内周側ベーン端面溝40が設けられた位置では漏れ流れQ1の流路が拡大され、内周側ベーン端面溝40が設けられていない位置では漏れ流れQ1の流路が絞られて狭くなる。すなわち、内周側ベーン端面溝40が設けられた位置に達した水は、内周側ベーン端面溝40に入り込み、内周側ベーン端面溝40内を蛇行するように流れる。そして、水は内周側ベーン端面溝40から流出し、絞られた狭い流路を流れることになる。このようにして、第1ギャップG1を通過する漏れ流れQ1に圧力損失が生じる。このため、第1ギャップG1の流路抵抗が増加し、漏れ流れQ1が弱められる。とりわけ、本実施の形態では、内周側ベーン端面溝40が、漏れ流れQ1の流れ方向に直交する方向に延びているため、内周側ベーン端面溝40内でその長手方向に沿う流れが形成されることが抑制され、漏れ流れQ1に効果的に圧力損失が生じる。さらに、内周側ベーン端面溝40の第2溝側壁43が、内周側ベーン端面21に垂直に形成されているという点によって、圧力損失が高められる。
【0045】
同様に、第2ギャップG2に流入した水は、第2ギャップG2から流出するまでに、外周側ベーン端面22に設けられた外周側ベーン端面溝41を通過する。第2ギャップG2のうち外周側ベーン端面溝41が設けられた位置では漏れ流れQ2の流路が拡大され、外周側ベーン端面溝41が設けられていない位置では漏れ流れQ2の流路が絞られて狭くなる。すなわち、外周側ベーン端面溝41が設けられた位置に達した水は、外周側ベーン端面溝41に入り込み、外周側ベーン端面溝41内を蛇行するように流れる。そして、水は外周側ベーン端面溝41から流出し、絞られた狭い流路を流れることになる。このようにして、第2ギャップG2を通過する漏れ流れQ2に圧力損失が生じる。このため、第2ギャップG2の流路抵抗が増加し、漏れ流れQ2が弱められる。とりわけ、本実施の形態では、外周側ベーン端面溝41が、漏れ流れQ2の流れ方向に直交する方向に延びているため、外周側ベーン端面溝41内でその長手方向に沿う流れが形成されることが抑制され、漏れ流れQ2に効果的に圧力損失が生じる。さらに、外周側ベーン端面溝41の第2溝側壁43が、外周側ベーン端面22に垂直に形成されているという点によって、圧力損失が高められる。
【0046】
このように本実施の形態によれば、内周側ベーン端面溝40が、第1ギャップG1を流れる漏れ流れQ1の流れ方向に直交する方向に延びている。このことにより、漏れ流れQ1に効果的に圧力損失を生じさせることができる。このため、第1ギャップG1の流路抵抗を増加させることができ、漏れ流れQ1を弱めることができる。この結果、ランナベーン20の周囲に漏れ流れが形成されることを抑制でき、カプラン水車1の効率を向上させることができる。
【0047】
また、本実施の形態によれば、外周側ベーン端面溝41が、第2ギャップG2を流れる漏れ流れQ2の流れ方向に直交する方向に延びている。このことにより、漏れ流れQ2に効果的に圧力損失を生じさせることができる。このため、第2ギャップG2の流路抵抗を増加させることができ、漏れ流れQ2を弱めることができる。この結果、ランナベーン20の周囲に漏れ流れが形成されることを抑制でき、カプラン水車1の効率を向上させることができる。
【0048】
また、本実施の形態によれば、外周側ベーン端面溝41が、外周側ベーン端面22からフィレット26にわたって形成されている。このことにより、第2ギャップG2を通過する漏れ流れQ2に生じる圧力損失を高めることができる。このため、漏れ流れQ2をより一層弱めることができる。
【0049】
なお、上述した本実施の形態においては、各ベーン端面溝40、41の横断面形状が、
図6に示すような矩形状に形成されている例について説明した。しかしながら、各ベーン端面溝40、41の横断面形状は、
図6に示す形状に限られることはない。
【0050】
例えば、
図7に示すように、台形状に形成されていてもよい。
図7に示す例では、第1溝側壁42が、負圧面24の側に向かって徐々に深くなるように傾斜している。この場合、ギャップG1、G2を流れる水をベーン端面溝40、41により一層入り込みやすくすることができ、圧力損失をより一層増加させることができる。
【0051】
また、各ベーン端面溝40、41の横断面形状は、
図8に示すように形成されていてもよい。
図8に示す例では、溝底44が、深くなる方向(
図8における右側)に凹むように湾曲している。この場合においても、ギャップG1、G2を流れる水をベーン端面溝40、41により一層入り込みやすくすることができ、圧力損失をより一層増加させることができる。
【0052】
さらに、各ベーン端面溝40、41の横断面形状は、
図9に示すように形成されていてもよい。
図9に示す例では、溝底44が、深くなる方向(
図9における右側)に凹むように湾曲するとともに、第1溝側壁42および第2溝側壁43が傾斜している。第1溝側壁42および第2溝側壁43は、負圧面24の側に向かって徐々に深くなるように傾斜している。この場合においても、ギャップG1、G2を流れる水をベーン端面溝40、41により一層入り込みやすくすることができ、圧力損失をより一層増加させることができる。
【0053】
また、上述した本実施の形態においては、ランナベーン20の内周側ベーン端面21に、内周側ベーン端面溝40が設けられるとともに、外周側ベーン端面22に、外周側ベーン端面溝41が設けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、外周側ベーン端面22に、外周側ベーン端面溝41が設けられていない場合であっても、内周側ベーン端面溝40によって、第1ギャップG1を通過する漏れ流れQ1に効果的に圧力損失を生じさせることができる。同様に、内周側ベーン端面21に、内周側ベーン端面溝40が設けられていない場合であっても、外周側ベーン端面溝41によって、第2ギャップG2を通過する漏れ流れQ2に効果的に圧力損失を生じさせることができる。
【0054】
また、上述した本実施の形態においては、ランナベーン20の負圧面24のうち外周側端部にフィレット26が設けられている例について説明した。しかしながら、このようなフィレット26は設けられていなくてもよい。
【0055】
(第2の実施の形態)
次に、
図10を用いて、本発明の第2の実施の形態における水力機械のランナおよび水力機械について説明する。
【0056】
図10に示す第2の実施の形態においては、各ベーン端面溝の圧力面の側の端部と圧力面との間、および各ベーン端面溝の負圧面の側の端部と負圧面との間に、溝端壁がそれぞれ設けられている点が主に異なり、他の構成は、
図1〜
図9に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、
図10において、
図1〜
図9に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0057】
本実施の形態においては、
図10に示すように、内周側ベーン端面溝40の圧力面23の側の端部と圧力面23との間に、内周側溝端壁50が設けられている。また、内周側ベーン端面溝40の負圧面24の側の端部と負圧面24との間にも、内周側溝端壁50が設けられている。このことにより、内周側ベーン端面溝40は、圧力面23および負圧面24のいずれにおいても開口しておらず、内周側ベーン端面21を貫通していない。
【0058】
同様に、外周側ベーン端面溝41の圧力面23の側の端部と圧力面23との間に、外周側溝端壁51が設けられている。また、外周側ベーン端面溝41の負圧面24の側の端部と負圧面24との間にも、外周側溝端壁51が設けられている。このことにより、外周側ベーン端面溝41は、圧力面23および負圧面24のいずれにおいても開口しておらず、外周側ベーン端面22を貫通していない。
【0059】
このように本実施の形態によれば、内周側ベーン端面溝40の圧力面23の側の端部と圧力面23との間、および内周側ベーン端面溝40の負圧面24の側の端部と負圧面24との間に、内周側溝端壁50がそれぞれ設けられている。このことにより、内周側ベーン端面溝40をその長手方向に流れる水の流れが形成されることを防止できる。このため、第1ギャップG1を流れる漏れ流れQ1をより一層弱めることができる。この結果、ランナベーン20の周囲に漏れ流れが形成されることをより一層抑制でき、カプラン水車1の効率をより一層向上させることができる。
【0060】
また、本実施の形態によれば、外周側ベーン端面溝41の圧力面23の側の端部と圧力面23との間、および外周側ベーン端面溝41の負圧面24の側の端部と負圧面24との間に、外周側溝端壁51がそれぞれ設けられている。このことにより、外周側ベーン端面溝41をその長手方向に流れる水の流れが形成されることを防止できる。このため、第2ギャップG2を流れる漏れ流れQ2をより一層弱めることができる。この結果、ランナベーン20の周囲に漏れ流れが形成されることをより一層抑制でき、カプラン水車1の効率をより一層向上させることができる。
【0061】
なお、上述した本実施の形態においては、内周側ベーン端面溝40の圧力面23の側の端部と圧力面23との間、および内周側ベーン端面溝40の負圧面24の側の端部と負圧面24との間に、内周側溝端壁50がそれぞれ設けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、内周側ベーン端面溝40の圧力面23の側の端部と圧力面23との間、および内周側ベーン端面溝40の負圧面24の側の端部と負圧面24との間のいずれか一方には、内周側溝端壁50は設けられていなくてもよい。この場合においても、第1ギャップG1を流れる漏れ流れQ1を弱めることができる。同様に、外周側ベーン端面溝41の圧力面23の側の端部と圧力面23との間、および外周側ベーン端面溝41の負圧面24の側の端部と負圧面24との間のいずれか一方には、外周側溝端壁51は設けられていなくてもよい。
【0062】
(第3の実施の形態)
次に、
図11を用いて、本発明の第3の実施の形態における水力機械のランナおよび水力機械について説明する。
【0063】
図11に示す第3の実施の形態においては、ベーン端面溝が環状に形成されている点が主に異なり、他の構成は、
図1〜
図9に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、
図11において、
図1〜
図9に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0064】
本実施の形態においては、
図11に示すように、内周側ベーン端面溝40および外周側ベーン端面溝41がそれぞれ、半径方向に沿って見たときに、環状に形成されている。
図11に示す例では、各ベーン端面溝40、41は、円環状に形成されている。
【0065】
内周側ベーン端面溝40は、圧力面23および負圧面24のいずれにおいても開口しておらず、内周側ベーン端面21を貫通していない。すなわち、内周側ベーン端面溝40と圧力面23との間、および内周側ベーン端面溝40と負圧面24との間に、内周側溝側壁60がそれぞれ設けられている。
【0066】
同様に、外周側ベーン端面溝41は、圧力面23および負圧面24のいずれにおいても開口しておらず、外周側ベーン端面22を貫通していない。すなわち、外周側ベーン端面溝41と圧力面23との間、および外周側ベーン端面溝41と負圧面24との間に、外周側溝側壁61がそれぞれ設けられている。
【0067】
また、
図11に示すように、外周側ベーン端面溝41は、外周側ベーン端面22のうちフィレット26の部分にも形成されている。すなわち、外周側ベーン端面溝41は、ベーン本体25の外周側端面からフィレット26の外周側端面にわたって連続状に形成されている。
【0068】
なお、
図11に示す例では、複数の外周側ベーン端面溝41が、半径方向に沿って見たときに、圧力面23または負圧面24に沿う方向に1列で配列されている。しかしながら、このことに限られることはなく、外周側ベーン端面溝41の配置は、第2ギャップG2を通過する漏れ流れQ2が少なくとも1回、外周側ベーン端面溝41を通過することができれば、任意である。内周側ベーン端面溝40についても同様であるが、
図11においては、スピンドル15(
図2参照)の上流側および下流側に、内周側ベーン端面溝40が1つずつ設けられている例が示されている。
【0069】
このように本実施の形態によれば、内周側ベーン端面溝40が、環状に形成されている。このことにより、内周側ベーン端面溝40に流入した水は、当該内周側ベーン端面溝40内を循環することができる。このため、第1ギャップG1の流路抵抗を増加させることができ、第1ギャップG1を流れる漏れ流れQ1をより一層弱めることができる。とりわけ本実施の形態によれば、内周側ベーン端面溝40は、円環状に形成されているため、内周側ベーン端面溝40内の水を、スムースに循環させることができ、第1ギャップG1の流路抵抗をより一層増加させることができる。
【0070】
また、本実施の形態によれば、外周側ベーン端面溝41が、環状に形成されている。このことにより、外周側ベーン端面溝41に流入した水は、当該外周側ベーン端面溝41内を循環することができる。このため、第2ギャップG2の流路抵抗を増加させることができ、第2ギャップG2を流れる漏れ流れQ2をより一層弱めることができる。とりわけ本実施の形態によれば、外周側ベーン端面溝41は、円環状に形成されているため、外周側ベーン端面溝41内の水を、スムースに循環させることができ、第2ギャップG2の流路抵抗をより一層増加させることができる。
【0071】
また、本実施の形態によれば、内周側ベーン端面溝40が円環状に形成されている。このことにより、漏れ流れQ1に圧力損失を生じさせるという効果が、第1ギャップG1を通過する漏れ流れQ1の流れ方向に依存することを防止でき、運転点(ランナベーン20の角度)に依存することを防止できる。同様に、外周側ベーン端面溝41が円環状に形成されているため、第2ギャップG2を通過する漏れ流れQ2に圧力損失を生じさせるという効果が、運転点に依存することを防止できる。
【0072】
(第4の実施の形態)
次に、
図12〜
図14を用いて、本発明の第4の実施の形態における水力機械のランナおよび水力機械について説明する。
【0073】
図12〜
図14に示す第4の実施の形態においては、各ベーン端面にベーン端面凹部が設けられている点が主に異なり、他の構成は、
図1〜
図9に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、
図12〜
図14において、
図1〜
図9に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0074】
本実施の形態においては、
図12に示すように、内周側ベーン端面21に、内周側ベーン端面凹部70が設けられている。本実施の形態では、内周側ベーン端面凹部70は、半径方向に沿って見たときに、円形状に形成されている。
【0075】
内周側ベーン端面21における内周側ベーン端面凹部70の最大寸法(本実施の形態では内周側ベーン端面凹部70の直径)は、第1ギャップG1の寸法d1(
図2参照)の3倍〜6倍になっている。内周側ベーン端面凹部70の最大寸法を第1ギャップG1の寸法d1の3倍以上にすることにより、第1ギャップG1に流入した水を内周側ベーン端面凹部70に入り込ませやすくすることができる。一方、内周側ベーン端面凹部70の最大寸法を第1ギャップG1の寸法d1の6倍以下にすることにより、第1ギャップG1の流路抵抗増加の効果が喪失されることを抑制できる。なお、内周側ベーン端面溝40は、円形状に形成されていることに限られることはなく任意であり、例えば、矩形状、六角形状などの多角形状に形成されていてもよい。例えば内周側ベーン端面溝40が矩形状や六角形状に形成されている場合には、内周側ベーン端面溝40の最大寸法は、最長の対角線長さに相当する。
【0076】
また、外周側ベーン端面22に、外周側ベーン端面凹部71が設けられている。本実施の形態では、外周側ベーン端面凹部71は、半径方向に沿って見たときに、円形状に形成されている。
【0077】
外周側ベーン端面22における外周側ベーン端面凹部71の最大寸法(本実施の形態では外周側ベーン端面凹部71の直径)は、第2ギャップG2の寸法d2(
図2参照)の3倍〜6倍になっている。外周側ベーン端面凹部71の最大寸法を第2ギャップG2の寸法d2の3倍以上にすることにより、第2ギャップG2に流入した水を外周側ベーン端面凹部71に入り込ませやすくすることができる。一方、外周側ベーン端面凹部71の最大寸法を第2ギャップG2の寸法d2の6倍以下にすることにより、第2ギャップG2の流路抵抗増加の効果が喪失されることを抑制できる。なお、外周側ベーン端面溝41は、内周側ベーン端面溝40と同様に、円形状に形成されていることに限られることはなく任意である。
【0078】
また、半径方向に沿って見たときに、内周側ベーン端面凹部70は、規則的に配列してもよく、あるいはランダムに配置してもよく、任意である。
図12に示す例では、内周側ベーン端面凹部70は、内周側ベーン端面21のうちスピンドル15(
図2参照)の上流側および下流側にそれぞれ形成されている。
【0079】
半径方向に沿って見たときに、外周側ベーン端面凹部71は、規則的に配列してもよく、あるいはランダムに配置してもよく、任意である。
図12に示す例では、外周側ベーン端面凹部71は、外周側ベーン端面22のうち、上流側領域および下流側領域を除いた中央領域に形成されている。しかしながら、外周側ベーン端面凹部71は、外周側ベーン端面22の全領域にわたって形成されていてもよい。また、外周側ベーン端面凹部71は、フィレット26の部分にも形成されている。すなわち、外周側ベーン端面凹部71は、ベーン本体25の外周側端面およびフィレット26の外周側端面にそれぞれ形成されている。
【0080】
内周側ベーン端面凹部70および外周側ベーン端面凹部71の横断面形状は、特に限られることはない。例えば、
図13に示すように、台形状に形成されていてもよい。内周側ベーン端面凹部70の深さh3は、第1ギャップG1の寸法d1の3倍程度にしてもよく、外周側ベーン端面凹部71の深さh4は、第2ギャップG2の寸法d2の3倍程度にしてもよい。
【0081】
水車運転時、第1ギャップG1に流入した水は、第1ギャップG1から流出するまでに、内周側ベーン端面21に設けられた内周側ベーン端面凹部70を通過する。第1ギャップG1のうち内周側ベーン端面凹部70が設けられた位置では漏れ流れQ1の流路が拡大され、内周側ベーン端面凹部70が設けられていない位置では漏れ流れQ1の流路が絞られて狭くなる。すなわち、内周側ベーン端面凹部70が設けられた位置に達した水は、内周側ベーン端面凹部70に入り込み、内周側ベーン端面凹部70内を蛇行するように流れる。そして、水は内周側ベーン端面凹部70から流出し、絞られた狭い流路を流れることになる。このようにして、第1ギャップG1を通過する漏れ流れQ1に圧力損失が生じる。このため、第1ギャップG1の流路抵抗が増加し、漏れ流れQ1が弱められる。
【0082】
同様に、第2ギャップG2に流入した水は、第2ギャップG2から流出するまでに、外周側ベーン端面22に設けられた外周側ベーン端面凹部71を通過する。第2ギャップG2のうち外周側ベーン端面凹部71が設けられた位置では漏れ流れQ2の流路が拡大され、外周側ベーン端面凹部71が設けられていない位置では漏れ流れQ2の流路が絞られて狭くなる。すなわち、外周側ベーン端面凹部71が設けられた位置に達した水は、外周側ベーン端面凹部71に入り込み、外周側ベーン端面凹部71内を蛇行するように流れる。そして、水は外周側ベーン端面凹部71から流出し、絞られた狭い流路を流れることになる。このようにして、第2ギャップG2を通過する漏れ流れQ2に圧力損失が生じる。このため、第2ギャップG2の流路抵抗が増加し、漏れ流れQ2が弱められる。
【0083】
このように本実施の形態によれば、内周側ベーン端面21に内周側ベーン端面凹部70が設けられている。このことにより、第1ギャップG1を通過する漏れ流れQ1に効果的に圧力損失を生じさせることができる。このため、第1ギャップG1の流路抵抗を増加させることができ、漏れ流れQ1を弱めることができる。この結果、ランナベーン20の周囲に漏れ流れが形成されることを抑制でき、カプラン水車1の効率を向上させることができる。
【0084】
また、本実施の形態によれば、内周側ベーン端面21における内周側ベーン端面凹部70の最大寸法が、第1ギャップG1の寸法d1の3倍〜6倍になっている。このことにより、内周側ベーン端面21に、内周側ベーン端面凹部70を多数形成することができる。このため、第1ギャップG1を通過する漏れ流れQ1が内周側ベーン端面凹部70を通過する回数を増やすことができ、第1ギャップG1の流路抵抗をより一層増加させることができる。
【0085】
また、本実施の形態によれば、外周側ベーン端面22に外周側ベーン端面凹部71が設けられている。このことにより、第2ギャップG2を通過する漏れ流れQ2に効果的に圧力損失を生じさせることができる。このため、第2ギャップG2の流路抵抗を増加させることができ、漏れ流れQ2を弱めることができる。この結果、ランナベーン20の周囲に漏れ流れが形成されることを抑制でき、カプラン水車1の効率を向上させることができる。
【0086】
また、本実施の形態によれば、外周側ベーン端面22における外周側ベーン端面凹部71の最大寸法が、第2ギャップG2の寸法d2の3倍〜6倍になっている。このことにより、外周側ベーン端面22に、外周側ベーン端面凹部71を多数形成することができる。このため、第2ギャップG2を通過する漏れ流れQ2が外周側ベーン端面凹部71を通過する回数を増やすことができ、第2ギャップG2の流路抵抗をより一層増加させることができる。
【0087】
また、本実施の形態によれば、内周側ベーン端面凹部70が円形状に形成されている。このことにより、漏れ流れQ1に圧力損失を生じさせるという効果が、第1ギャップG1を通過する漏れ流れQ1の流れ方向に依存することを防止でき、運転点((ランナベーン20の角度)に依存することを防止できる。同様に、外周側ベーン端面凹部71が円形状に形成されているため、第2ギャップG2を通過する漏れ流れQ2に圧力損失を生じさせるという効果が、運転点に依存することを防止できる。
【0088】
以上述べた実施の形態によれば、ランナベーンの周囲に漏れ流れが形成されることを抑制し、水力機械の効率を向上させることができる。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内で、これらの実施の形態を、部分的に適宜組み合わせることも可能である。
【0090】
なお、上述した各実施の形態においては、ランナベーン20がランナボス10に対して回動可能になっている水力機械の一例としてカプラン水車1を例にとって説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、カプラン水車1以外の水車にも各実施の形態を適用することができる。また、ランナ5と、ディスチャージリング30などの環状の静止部材と、を備えていれば、バルブ水車等の軸流水車や、デリア水車等の斜流水車にも適用することができる。例えば、
図15に示すように、ランナベーン20がランナボス10に対して回動不能に固定されていてもよい。この場合、ランナベーン20がランナボス10に一体化されるため、第1ギャップG1は存在しない。このようにランナベーン20が回動不能に固定されている場合においては、外周側ベーン端面22に外周側ベーン端面溝41を設けることによって、第2ギャップG2を通過する漏れ流れQ2に効果的に圧力損失を生じさせることができる。さらには、各実施の形態は、ポンプ運転可能な水車にも適用することができる。