(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記起振部は、前記高圧ラインと前記低圧ラインそれぞれに取り外し可能に接続され、持ち運び可能なユニットとして構成されていることを特徴とする請求項1に記載の極低温冷凍機システム。
前記振動変換器は、前記冷媒ガスとは異なる作動流体を収容し、前記冷媒ガスの圧力振動が前記作動流体に伝達されるように前記冷媒ガス室に連結された作動流体室を備えることを特徴とする請求項3に記載の極低温冷凍機システム。
前記振動変換器は、前記冷媒ガス室に設置され、前記冷媒ガスの圧力振動を前記電気的振動に変換する圧力変換器を備えることを特徴とする請求項3に記載の極低温冷凍機システム。
極低温冷凍機システムに設置可能な起振機ユニットであって、前記起振機ユニットは、圧縮機からコールドヘッドに送出される冷媒ガスが流れる高圧ラインと前記コールドヘッドから前記圧縮機に回収される冷媒ガスが流れる低圧ラインとの間に前記コールドヘッドと並列に接続され、前記起振機ユニットは、
前記冷媒ガスを収容する冷媒ガス室と、
前記冷媒ガスの圧力振動を前記冷媒ガス室に発生させるように前記冷媒ガス室を前記高圧ラインと前記低圧ラインに交互に接続するバルブ部と、
前記冷媒ガスの圧力振動に応じた振動を振動利用機器に機械的または電気的に伝達する振動伝達部と、を備えることを特徴とする起振機ユニット。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
図1は、ある実施の形態に係る極低温冷凍機システム10を概略的に示す図である。極低温冷凍機システム10は、極低温冷凍機を構成する圧縮機12およびコールドヘッド14と、起振部16とを備える。
【0017】
圧縮機12は、極低温冷凍機の冷媒ガスをコールドヘッド14から回収し、回収した冷媒ガスを昇圧して、再び冷媒ガスをコールドヘッド14に供給するよう構成されている。コールドヘッド14は、膨張機とも称され、室温部18と、少なくとも1つの低温部20とを有する。図示されるように、コールドヘッド14が二段式の場合には、コールドヘッド14は第1段と第2段にそれぞれ低温部20を有する。コールドヘッド14は単段式であってもよい。低温部20は、冷却ステージとも称される。
【0018】
圧縮機12とコールドヘッド14との間の冷媒ガスの循環がコールドヘッド14内での冷媒ガスの適切な圧力変動と容積変動の組み合わせをもって行われることにより、極低温冷凍機の冷凍サイクルが構成され、低温部20が所望の極低温に冷却される。それにより、低温部20に熱的に結合された例えば超電導電磁石またはそのほか任意の被冷却物を目標冷却温度に冷却することができる。冷媒ガスは、通例はヘリウムガスであるが、適切な他のガスが用いられてもよい。理解のために、冷媒ガスの流れる方向を
図1に矢印で示す。
【0019】
極低温冷凍機は、一例として、二段式のギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機であるが、パルス管冷凍機、スターリング冷凍機、またはそのほかのタイプの極低温冷凍機であってもよい。コールドヘッド14は、極低温冷凍機のタイプに応じて異なる構成を有する。圧縮機12は、極低温冷凍機のタイプによらず、同じ構成を用いることができる。
【0020】
なお、一般に、圧縮機12からコールドヘッド14に供給される冷媒ガスの圧力と、コールドヘッド14から圧縮機12に回収される冷媒ガスの圧力は、ともに大気圧よりかなり高く、それぞれ第1高圧及び第2高圧と呼ぶことができる。説明の便宜上、第1高圧及び第2高圧はそれぞれ単に高圧及び低圧とも呼ばれる。典型的には、高圧は例えば約2〜3MPaの範囲にあり、低圧は例えば約0.5〜1.5MPaの範囲にある。
【0021】
圧縮機12は、吐出ポート12aと吸入ポート12bとを有する。吐出ポート12aは、圧縮機12により高圧に昇圧された冷媒ガスを圧縮機12から送出するために圧縮機12に設けられた冷媒ガスの出口であり、吸入ポート12bは、低圧の冷媒ガスを圧縮機12に受け入れるために圧縮機12に設けられた冷媒ガスの入口である。
【0022】
コールドヘッド14は、高圧ポート14aと低圧ポート14bとを有する。高圧ポート14aは、コールドヘッド14の低温部20の内部に高圧の作動ガスを受け入れるためにコールドヘッド14の室温部18に設けられた冷媒ガスの入口である。低圧ポート14bは、コールドヘッド14の低温部20の内部での冷媒ガスの膨張により減圧された低圧の冷媒ガスをコールドヘッド14から排出するためにコールドヘッド14の室温部18に設けられた冷媒ガスの出口である。
【0023】
また、極低温冷凍機システム10は、圧縮機12とコールドヘッド14との間で冷媒ガスを循環させるべくこれらを接続する配管システム22を備える。配管システム22は、圧縮機12の吐出ポート12aをコールドヘッド14の高圧ポート14aに接続する高圧ライン24と、圧縮機12の吸入ポート12bをコールドヘッド14の低圧ポート14bに接続する低圧ライン26とを備える。よって、高圧の冷媒ガスは、圧縮機12から高圧ライン24を通じてコールドヘッド14に供給され、低圧の冷媒ガスは、コールドヘッド14から低圧ライン26を通じて圧縮機12に回収される。
【0024】
起振部16は、高圧ライン24と低圧ライン26との間にコールドヘッド14と並列に接続されている。起振部16は、冷媒ガス室28と、バルブ部30と、振動伝達部32とを備える。冷媒ガス室28は、冷媒ガスを収容し、バルブ部30は、冷媒ガス室28を高圧ライン24と低圧ライン26に交互に接続するように構成され、それによりバルブ部30は冷媒ガスの圧力振動を冷媒ガス室28に発生させる。振動伝達部32は、冷媒ガスの圧力振動に応じた振動を振動利用機器34に機械的または電気的に伝達するように構成されている。
【0025】
バルブ部30は、高圧ライン24から冷媒ガス室28に冷媒ガスを供給するための供給バルブ30aと、冷媒ガス室28から低圧ライン26に冷媒ガスを排出するための排出バルブ30bを有する。バルブ部30は、供給バルブ30aと排出バルブ30bを適切なタイミングで開閉することによって(例えば、交互に開閉することによって)、冷媒ガス室28に冷媒ガスを給排し、冷媒ガスの圧力振動を発生させることができる。バルブ部30は、望まれる周波数および振幅をもつ圧力振動を冷媒ガス室28に発生させるように構成されている。
【0026】
一例として、バルブ部30は、供給バルブ30aと排出バルブ30bが組み込まれた単一のロータリーバルブの形式をとる。あるいは、適用可能である場合には、バルブ部30は、複数の個別に制御可能なバルブの形式をとってもよく、供給バルブ30aと排出バルブ30bはそれぞれ個別に制御可能な電磁弁であってもよい。
【0027】
振動伝達部32は、振動伝達管33または電気配線により振動利用機器34と接続されている。冷媒ガスの圧力振動に応じた振動は、振動伝達部32から振動伝達管33または電気配線を通じて振動利用機器34に機械的または電気的に入力される。振動利用機器34は、入力される機械的振動を出力し、または入力される機械的振動を増幅して出力し、または入力される電気的振動を機械的振動に変換して出力するように構成されていてもよい。
【0028】
起振部16は、例えば、極低温冷凍機システム10の製造業者によって製造され、利用者に提供される。しかし、振動利用機器34は、起振部16の一部であるとはみなされなくてもよい。例えば、起振部16がMRE撮像装置とともに使用される場合、振動利用機器34は、MRE撮像装置で撮像される被検体に物理的に接触して被検体に機械的な振動を与える振動パッドであってもよい。振動パッドは、MRE撮像装置の製造業者によって起振部16とは別に利用者に提供されてもよい。あるいは、他の状況においては、振動利用機器34は、起振部16の一部を構成し、例えば極低温冷凍機システム10の製造業者によって利用者に提供されてもよい。
【0029】
起振部16の例示的な構成については、詳しく後述する。
【0030】
極低温冷凍機システム10は、コールドヘッド14または起振部16のいずれかを選択して動作させるように構成されている。すなわち、極低温冷凍機システム10は、コールドヘッド14を動作させる間は起振部16を停止し、起振部16を動作させる間はコールドヘッド14を停止するように構成されている。
【0031】
そこで、配管システム22は、高圧切替バルブ36、低圧切替バルブ38、高圧接続管40、および低圧接続管42を備える。
【0032】
高圧切替バルブ36は、高圧ライン24上に配置され、圧縮機12の吐出ポート12aをコールドヘッド14または起振部16のいずれか一方に切り替えて接続するように構成されている。低圧切替バルブ38は、低圧ライン26上に配置され、圧縮機12の吸入ポート12bをコールドヘッド14または起振部16のいずれか一方に切り替えて接続するように構成されている。高圧切替バルブ36と低圧切替バルブ38はそれぞれ、一組の開閉弁、三方弁、またはそのほか適当なバルブ構成を有してもよい。
【0033】
高圧切替バルブ36と低圧切替バルブ38は、コールドヘッド14または起振部16のいずれか一方を高圧ライン24と低圧ライン26の両方に接続するとともに、他方を高圧ライン24と低圧ライン26の両方から切り離すように、同期して動作するように構成されている。高圧切替バルブ36と低圧切替バルブ38は、自動制御により切り替えられ、または手動で切り替えられてもよい。
【0034】
高圧接続管40は、高圧ライン24を起振部16に接続し、低圧接続管42は、低圧ライン26を起振部16に接続する。より具体的には、高圧接続管40は、高圧切替バルブ36をバルブ部30の供給バルブ30aに接続し、低圧接続管42は、低圧切替バルブ38をバルブ部30の排出バルブ30bに接続する。高圧接続管40と低圧接続管42は、一例として、フレキシブル管またはフレキシブルホースであり、あるいはリジッド管であってもよい。
【0035】
したがって、高圧切替バルブ36と低圧切替バルブ38がコールドヘッド14に切り替えられている場合には、圧縮機12の吐出ポート12aから高圧ライン24を通じてコールドヘッド14の高圧ポート14aに冷媒ガスが供給され、コールドヘッド14の低圧ポート14bから低圧ライン26を通じて圧縮機12の吸入ポート12bに冷媒ガスが回収される。こうして、極低温冷凍機システム10は、コールドヘッド14の冷却運転をすることができる。このとき、起振部16は、圧縮機12から切り離されている。
【0036】
高圧切替バルブ36と低圧切替バルブ38が起振部16に切り替えられている場合には、圧縮機12の吐出ポート12aから高圧ライン24、高圧接続管40を通じて起振部16の供給バルブ30aに冷媒ガスが供給され、起振部16の排出バルブ30bから低圧接続管42、低圧ライン26を通じて圧縮機12の吸入ポート12bに冷媒ガスが回収される。バルブ部30の動作により冷媒ガス室28には冷媒ガスの圧力振動が生成され、圧力振動に基づく振動が振動伝達部32により機械的または電気的に振動利用機器34へと出力される。こうして、極低温冷凍機システム10は、起振部16から所望の振動を出力することができる。このとき、コールドヘッド14は、圧縮機12から切り離されている。
【0037】
なお、極低温冷凍機システム10は、コールドヘッド14と起振部16を同時に動作させるように構成されていてもよい。この場合、配管システム22は、高圧切替バルブ36を低圧切替バルブ38を備えなくてもよい。配管システム22は、高圧切替バルブ36に代えて、高圧ライン24を高圧接続管40に分岐させる高圧分岐部を備え、また、低圧切替バルブ38に代えて、低圧ライン26を低圧接続管42に分岐させる低圧分岐部を備えてもよい。
【0038】
また、配管システム22は、バイパスユニット44を備えてもよい。バイパスユニット44は、高圧ライン24と低圧ライン26との間にコールドヘッド14と並列に接続されている。バイパスユニット44は、コールドヘッド14を迂回して高圧ライン24から低圧ライン26に冷媒ガスを還流させるように高圧ライン24を低圧ライン26に接続する。
【0039】
バイパスユニット44は、高圧ライン24を低圧ライン26に接続するバイパスライン44aと、バイパスライン44a上に配置されたバイパスバルブ44bとを有する。バイパスライン44aは、圧縮機12の吐出ポート12aと高圧切替バルブ36との間で高圧ライン24から分かれ、圧縮機12の吸入ポート12bと低圧切替バルブ38との間で低圧ライン26に合流している。バイパスバルブ44bは、一例として、バイパスライン44aの冷媒ガス流量を制御する流量制御バルブを備えてもよい。この場合、バイパスバルブ44bの開度を変化させることによって、バイパスライン44aの冷媒ガス流量が変わり、それにより高圧ライン24と低圧ライン26での冷媒ガス圧力も変わる。
【0040】
バイパスユニット44は、起振部16を動作させる冷媒ガス圧力を低減するために使用されてもよい。上述のように、コールドヘッド14の運転圧力はかなり高いが、起振部16の動作にそれほどの高圧を要するとは限らない。バイパスバルブ44bを開くことによって、高圧ライン24の冷媒ガス圧力は低減される。そこで、極低温冷凍機システム10は、コールドヘッド14を停止させて起振部16を動作させる場合に、バイパスユニット44のバイパスバルブ44bを適切な開度に調整することによって、起振部16に供給される冷媒ガス圧力を調整するように構成されていてもよい。起振部16に供給される冷媒ガス圧力が適切に低減されることにより、起振部16は過剰な高圧に耐える必要がなくなるので、起振部16の構造をより簡素とし軽量化することができる。
【0041】
極低温冷凍機システム10の各構成要素は、主電源45から給電される。主電源45は、例えば商用電源、または、商用電源に接続された電源装置であってもよい。圧縮機12、コールドヘッド14、および起振部16はそれぞれ、給電配線により主電源45に接続されている。よって、起振部16には専用の電源を別に用意する必要はない。なお、極低温冷凍機システム10の給電系統は、種々の既知の構成を採用可能である。
【0042】
図2は、ある実施の形態に係る起振部16の外観を示す概略図である。
図3は、
図2に示される起振部16の内部を示す概略図である。図示される起振部16は、
図1に示される極低温冷凍機システム10に適用することができる。
【0043】
起振部16は、高圧ライン24と低圧ライン26それぞれに取り外し可能に接続され、持ち運び可能なユニットとして構成されている。
【0044】
起振部16は、冷媒ガス室28、バルブ部30、および振動伝達部32を収容する単一の起振部ハウジング46を備える。起振部ハウジング46は、冷媒ガス室28に供給される冷媒ガスの圧力に耐える圧力容器として構成されている。また、起振部16は、バルブ部30を駆動するモータ部48を備え、モータ部48も起振部ハウジング46に収容されている。モータ部48は、一例として、小型ACシンクロナスモータである。起振部16は、モータ部48を覆う磁気シールド50を備えてもよく、磁気シールド50は、モータ部48を取り囲むように起振部ハウジング46に取り付けられていてもよい。
【0045】
起振部ハウジング46は、冷媒ガス供給ポート52と冷媒ガス排出ポート54とを有する。冷媒ガス供給ポート52は、高圧接続管40からバルブ部30への冷媒ガス入口として起振部ハウジング46に設けられ、冷媒ガス排出ポート54は、バルブ部30から低圧接続管42への冷媒ガス出口として起振部ハウジング46に設けられている。一例として、冷媒ガス供給ポート52と冷媒ガス排出ポート54は、セルフシーリング・カップリングのような脱着可能な継手であり、高圧接続管40と低圧接続管42はそれぞれ冷媒ガス供給ポート52と冷媒ガス排出ポート54に容易に取り付け、または取り外すことができる。
【0046】
バルブ部30は、バルブステータ56とバルブロータ58とを備え、バルブステータ56に対するバルブロータ58の回転により、供給バルブ30aおよび排出バルブ30bとして機能する。
【0047】
バルブステータ56は、起振部ハウジング46に固定されている。バルブロータ58は、その中心軸まわりにモータ部48の駆動により回転するようにモータ部48に連結されている。
図3においては回転を矢印A1で示す。バルブロータ58は、その底面がバルブステータ56の上面と面接触している。モータ部48の回転駆動に伴いバルブロータ58の底面はバルブステータ56の上面に対し回転摺動する。
【0048】
図3には、起振部16における冷媒ガスの流れ方向を矢印により示すとともに、バルブ部30の内部に形成される冷媒ガス流路を破線により概略的に示す。バルブ部30は、バルブステータ56に対するバルブロータ58の回転角度を異ならせることによって、冷媒ガス室28の高圧状態と低圧状態とを切り替えるように構成されている。高圧状態は供給バルブ30aの開状態にあたり、低圧状態は排出バルブ30bの開状態にあたる。
【0049】
バルブ部30は、冷媒ガス室28が高圧ライン24と低圧ライン26に同時に接続されないように構成されている。すなわち、冷媒ガス流れが起振部16を通じて高圧ライン24から低圧ライン26に短絡することはない。
【0050】
高圧状態では、高圧ライン24から高圧接続管40、冷媒ガス供給ポート52、バルブ部30の内部流路を通じて冷媒ガス室28に冷媒ガスが導入され(矢印A2)、冷媒ガス室28の圧力は高まる。低圧状態では、冷媒ガス室28からバルブ部30の内部流路、冷媒ガス排出ポート54、低圧接続管42を通じて低圧ライン26へと冷媒ガスは排出され(矢印A3)、冷媒ガス室28の圧力は下がる。
【0051】
したがって、モータ部48の回転によりバルブロータ58がバルブステータ56に対して連続的に回転することによって、冷媒ガス室28の高圧状態と低圧状態が交互に周期的に切り替わる。そのため、冷媒ガス室28に冷媒ガスの圧力振動が発生する。
【0052】
図示される例においては、バルブ部30のバルブロータ58は、冷媒ガス供給ポート52に連通し高圧の冷媒ガスが導入される高圧室60に配置されているが、これは必須ではない。冷媒ガス排出ポート54に連通し低圧の冷媒ガスが導入される低圧室にバルブロータ58を配置する構成も可能である。
【0053】
バルブ部30として用いられうるロータリーバルブ形式による極低温冷凍機の冷媒ガス流路切替機構は、公知の種々の構成を採用可能であり、よって、更なる詳細説明は本書では省略する。
【0054】
振動伝達部32は、振動変換器62と、振動出力ポート64とを備える。振動変換器62は、冷媒ガスの圧力振動が伝達されるように冷媒ガス室28に連結され、冷媒ガスの圧力振動を当該圧力振動に応じた機械的振動に変換するように構成されている。振動出力ポート64は、振動利用機器34に伝達すべく振動変換器62から機械的振動を出力するよう振動変換器62に設置されている。
【0055】
振動変換器62は、冷媒ガスとは異なる作動流体を収容し、冷媒ガスの圧力振動が作動流体に伝達されるように冷媒ガス室28に連結された作動流体室66を備える。作動流体は、例えば空気である。その場合、作動流体の取り扱いが容易である。ただし、作動流体は、振動伝達に適するそのほかの気体または液体であってもよい。
【0056】
加えて、振動変換器62は、作動流体室66を冷媒ガス室28から仕切るピストン68を備える。ピストン68の上面はバルブステータ56の底面と対向しており、これら両面と起振部ハウジング46の内面により冷媒ガス室28が画定されている。よって、ピストン68の上面は冷媒ガス室28から冷媒ガスの圧力を受ける。また、作動流体室66は、ピストン68の下面と起振部ハウジング46の内面により画定され、ピストン68の下面は作動流体室66から作動流体の圧力を受ける。
【0057】
ピストン68は、作動流体室66と冷媒ガス室28との圧力差によって移動可能である。起振部ハウジング46は、ピストン68の移動を案内するようにピストン68を摺動可能に支持する。作動流体室66に収容される作動流体の平均圧力は例えば、冷媒ガス室28の冷媒ガス圧力と概ね等しくなるように設定される。
【0058】
したがって、冷媒ガス室28の高圧状態では、ピストン68はバルブ部30から離れる方向に移動し(矢印A4)、それにより作動流体室66の圧力も高まる。冷媒ガス室の低圧状態では、ピストン68はバルブ部30に近づく方向に移動し(矢印A5)、それにより作動流体室66の圧力も下がる。このようにして、冷媒ガス室28での冷媒ガスの圧力振動は、作動流体室66の作動流体に伝達される。言い換えれば、冷媒ガスの圧力振動が作動流体の圧力振動に変換される。
【0059】
ピストン68の可動範囲を規制する規制部材69が起振部ハウジング46の内面に設けられていてもよい。また、ピストン68は、冷媒ガス室28から作動流体室66への冷媒ガスの漏れ、および作動流体室66から冷媒ガス室28への作動流体の漏れを防止または最小化するシールとして機能し、または、そうした冷媒ガスまたは作動流体の漏れをシールするシール部材がピストン68と起振部ハウジング46との間に装着されていてもよい。
【0060】
作動流体室66は、冷媒ガスの圧力振動が作動流体に伝達されるようにピストン68を介して冷媒ガス室28に連結されているが、これに限られない。自身の変位により振動を伝達するピストン68のような可動隔壁に代えて、例えば、変形により振動を伝達する弾性変形可能な柔軟膜が設けられてもよい。作動流体室66は、冷媒ガスの圧力振動が作動流体に伝達されるようにこうした可撓性の膜部材を介して冷媒ガス室28に連結されていてもよい。
【0061】
振動出力ポート64は、振動伝達部32、すなわち作動流体室66から外部に振動を取り出すための出口として起振部ハウジング46に設けられている。一例として、図示されるように、振動出力ポート64は、作動流体室66の底部に設けられているが、作動流体室66の側壁部などそのほかの場所に配置されてもよい。振動出力ポート64は、振動伝達管33を脱着可能とするように構成されている。振動伝達管33は、例えばフレキシブルホースであってもよい。作動流体室66に伝達された作動流体の圧力振動は、振動伝達管33の内部の作動流体を介して、振動利用機器34へとさらに伝達される。なお、振動伝達管33の内部の作動流体は、作動流体室66の作動流体と同種(例えば空気)であれば、取り扱いが容易であり都合がよいが、異なる作動流体であってもよい。
【0062】
起振部16から振動利用機器34に出力される振動は、調整可能である。例えば、モータ部48の回転速度を変更することにより、振動の周波数は直接変更され、また振動の振幅もある程度変えられる。バイパスユニット44を通る冷媒ガス流量を変更することにより、高圧ライン24と低圧ライン26の圧力差が変更され、それにより振動の振幅を変えることができる。また、バルブ部30の内部流路の配置や形状などバルブ部30の設計を変更することによって、振動の振幅と周波数を調整することもできる。
【0063】
このようにして、実施の形態に係る極低温冷凍機システム10によれば、起振部16により所望の振動を励起し、振動利用機器34、例えばMRE撮像装置の振動パッドに所望の振動を提供することができる。
【0064】
従来知られるMRE用加振装置と比べると、起振部16は、小型で簡素な構成となり、したがって、設置スペースの低減、省エネルギー、製造コストなど種々の観点で有利である。この主たる理由の一つは、起振部16が、圧縮機12とコールドヘッド14を有する既設の極低温冷凍機に追加されていることにある。起振部16は、圧縮機12を冷媒ガス源として利用できるので、従来のMRE用加振装置とは異なり、複雑な構成をもつ専用の発振源は不要である。また、既存の電源(例えば主電源45)を使用できるので、追加の電源は不要であり、また消費電力の増加もまったくないか、ほとんどない。
【0065】
超電導磁石の冷却に利用される極低温冷凍機は元来、高磁場環境に適合するように設計されている。起振部16の主要構成要素の一つであるバルブ部30は上述のように、既存の極低温冷凍機に利用される構成と同一または類似の設計を採用できる。そのため、バルブ部30を高磁場環境に適合するように設計することは、とくに極低温冷凍機システム10の製造業者にとっては、極めて容易である。起振部16の他の構成要素にも、高磁場環境に適合させるうえで、設計上特段の困難はない。そのため、起振部16は、圧縮機12およびコールドヘッド14と同じく高磁場環境に設置することができる。
【0066】
よって、従来知られるMRE用加振装置とは異なり、起振部16は、立入制限区域内においてMRE撮像装置の近傍に配置することができる。起振部16から振動利用機器34への振動伝達距離はかなり短くなり、振動を効率的に伝達することができる。振動の伝達損失は小さくなり、起振部16での発振から被検体での受振までの遅延も生じないか、顕著な影響がない程度に小さくすることができる。
【0067】
また、起振部16は、高圧ライン24と低圧ライン26それぞれに取り外し可能に接続され、持ち運び可能なユニットとして構成されている。このようにすれば、起振部16を極低温冷凍機に後から追加して設置することができるので、都合がよい。起振部16は極低温冷凍機の付属品またはアクセサリとして、既設の極低温冷凍機に持ち運んで取り付けることができる。
【0068】
さらに、起振部16は、振動変換器62と振動出力ポート64とを有している。振動変換器62によって冷媒ガスの圧力振動を別の媒体の振動に変換することができ、冷媒ガスの漏れなど極低温冷凍機システム10を循環する冷媒ガスの低減が抑制される。また、振動出力ポート64を振動利用機器34につなぐという比較的簡単な作業で、振動利用機器34に手軽に振動を提供できる。
【0069】
振動変換器62として作動流体室66を利用することにより、冷媒ガスとは別の、より扱いやすい作動流体を振動利用機器34へと振動を伝達するための媒体として使用することができる。
【0070】
上述の実施の形態においては、起振部16の稼働中はコールドヘッド14は停止される。よって、起振部16および振動利用機器34の動作にコールドヘッド14は影響を及ぼさない。また、コールドヘッド14の稼働中は起振部16は停止される。よって、起振部16の動作がコールドヘッド14の冷却性能を低下させることもない。
【0071】
図4は、ある実施の形態に係る起振部16の振動伝達部32の他の一例を示す概略図である。既述の実施の形態と同様に、冷媒ガス室28での冷媒ガスの圧力振動は、振動伝達部32に伝達される。振動伝達部32の振動変換器62は、作動流体室66の内部に配置された圧力変換器70を備えてもよい。圧力変換器70は、作動流体室66での作動流体の圧力振動を、当該圧力振動に応じた電気的振動に変換するように構成されている。圧力変換器70は一般に、圧力トランスミッターまたは圧力トランスデューサ−などと称されることもある。
【0072】
振動出力ポート64は、振動利用機器34に伝達すべく振動変換器62から電気的振動を出力するよう振動変換器62に設置されている。圧力変換器70は、振動出力ポート64に電気的に接続され、振動出力ポート64は、圧力変換器70が作動流体の圧力振動に従って発生させる電気的振動を表す電気信号を出力する出力端子として設けられている。よって、振動出力ポート64は、信号線72により振動利用機器34に接続され、電気的振動を表す電気信号は信号線72を通じて圧力変換器70から振動利用機器34に出力することができる。
【0073】
このようにしても、振動伝達部32は、冷媒ガスの圧力振動に応じた振動を外部に取り出すことができる。起振部16は、振動利用機器34に所望の振動を提供することができる。
【0074】
図5は、ある実施の形態に係る起振部16の振動伝達部32の他の一例を示す概略図である。上述の実施の形態と同様に、起振部16は、冷媒ガス室28、バルブ部30、および振動伝達部32を備え、これらは起振部ハウジング46に収容されている。また、起振部16は、高圧接続管40が接続される冷媒ガス供給ポート52と、低圧接続管42が接続される冷媒ガス排出ポート54とを有する。
【0075】
振動伝達部32は、冷媒ガスの圧力振動が伝達されるように冷媒ガス室28の内部に配置され、冷媒ガスの圧力振動を当該圧力振動に応じた電気的振動に変換する振動変換器62と、振動利用機器34に伝達すべく振動変換器62から電気的振動を出力するよう振動変換器62に設置された振動出力ポート64とを備えてもよい。振動変換器62は、冷媒ガス室28に設置され、冷媒ガスの圧力振動を電気的振動に変換する圧力変換器70であってもよい。圧力変換器70は、振動出力ポート64に電気的に接続され、振動出力ポート64は、信号線72により振動利用機器34に接続されてもよい。
【0076】
このようにしても、振動伝達部32は、冷媒ガスの圧力振動に応じた振動を外部に取り出すことができる。起振部16は、振動利用機器34に所望の振動を提供することができる。作動流体室66は不要となり、構成が簡単である。
【0077】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0078】
ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。