特許第6871882号(P6871882)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6871882物理観測用のスライドガラス及び加熱測温ユニット並びに物理観測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871882
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】物理観測用のスライドガラス及び加熱測温ユニット並びに物理観測方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/34 20060101AFI20210510BHJP
   G02B 21/30 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   G02B21/34
   G02B21/30
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-61593(P2018-61593)
(22)【出願日】2018年3月28日
(65)【公開番号】特開2019-174606(P2019-174606A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2020年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221834
【氏名又は名称】東邦瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高見 千保美
【審査官】 下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−045197(JP,A)
【文献】 特開平04−214519(JP,A)
【文献】 特開平11−095124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B21/00
G02B21/06−21/36
G01N 1/00− 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に形成された有底状又は貫通状の試料配置穴と、
前記試料配置穴の穴側面に連通する状態で前記上面に形成された、測温体を配置するための測温体配置溝と、を備え、
前記試料配置穴に配置された試料を加熱するためのヒータの上に載置されて使用される、物理観測用のスライドガラス。
【請求項2】
前記測温体配置溝の前記上面からの深さは、前記試料配置穴の前記上面からの深さよりも浅い、請求項1に記載の物理観測用のスライドガラス。
【請求項3】
前記測温体配置溝は、前記上面における前記試料配置穴の両側において、前記上面を直線状に横切る仮想線に沿って形成されている、請求項1又は2に記載の物理観測用のスライドガラス。
【請求項4】
上面に形成された有底状又は貫通状の試料配置穴、及び前記試料配置穴の穴側面に連通する状態で前記上面に形成された測温体配置溝を有するスライドガラスと、
前記スライドガラスが載置され、前記試料配置穴に配置された試料を加熱するためのヒータと、
前記測温体配置溝に配置され、前記試料に接触する測温部によって前記試料の温度を測定する測温体と、を備える物理観測用の加熱測温ユニット。
【請求項5】
前記測温体配置溝の前記上面からの深さは、前記試料配置穴の前記上面からの深さよりも浅く、
前記測温部は、前記スライドガラス及び前記ヒータに接触しない状態で前記試料に接触可能である、請求項4に記載の物理観測用の加熱測温ユニット。
【請求項6】
前記測温体配置溝は、前記上面における前記試料配置穴の両側において、前記上面を直線状に横切る仮想線に沿って形成されている、請求項4又は5に記載の物理観測用の加熱測温ユニット。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載された物理観測用の加熱測温ユニットを用いて物理観測を行うに当たり、
前記測温部を、前記試料配置穴に配置された試料中に埋め込み、試料中に埋め込まれた前記測温部によって前記試料の温度を測定する、物理観測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡観察、X線回析等の物理観測の際に用いられるスライドガラス及び加熱測温ユニット、並びに物理観測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液状又は粉末状の試料の顕微鏡観察、X線回析等の物理観測を行う際には、液状又は粉末状の試料を保持するためのスライドガラスが使用される。また、試料を加熱するために、スライドガラスをヒータの上に載置し、ヒータによって、スライドガラスを介して試料を加熱することが行われている。
【0003】
スライドガラスを用いた顕微鏡観察を行う装置としては、例えば、特許文献1に記載された簡易顕微恒温装置がある。この装置においては、スライドガラス内に温度を調整した水を流し、この水によって、スライドガラスにおける、試料が載置される表面ガラスの温度を調整している。また、この装置においては、スライドガラス内の水温及び表面ガラスの温度を測定する温度計を用いている。
【0004】
また、顕微鏡観察等に用いられる、ガラス材料を使用したガラスヒータとしては、例えば、特許文献2に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭50−123455号公報
【特許文献2】特開2009−252390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、物理観測を行う際の条件によっては、試料の温度を、できるだけ正確に測定し、又はできるだけ正確に調整したい場合がある。この場合には、試料の温度を測定するための温度計をどのように配置するかが重要となる。特許文献1の簡易顕微恒温装置等における温度計は、スライドガラス内に配置されており、スライドガラス内の水温及び表面ガラスの温度を測定する。そのため、温度計は、試料の温度を直接測定しておらず、実際の試料の温度と表面ガラスの温度とには誤差が生じることがある。
【0007】
また、試料の温度を直接的に測定することを考えた場合に、試料を配置する位置及び温度計を配置する位置が定まらなくては、試料の物理観測を行う際に手間が掛かり、その作業性が悪くなる。従って、作業性を良好に維持しつつ、観測温度をできるだけ正確に測定又は調整するためには更なる工夫が必要とされる。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、物理観測を行う際の作業性を良好に維持しつつ、試料の温度をできるだけ正確に測定又は調整することができる物理観測用のスライドガラスを提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、上面に形成された有底状又は貫通状の試料配置穴と、
前記試料配置穴の穴側面に連通する状態で前記上面に形成された、測温体を配置するための測温体配置溝と、を備え、
前記試料配置穴に配置された試料を加熱するためのヒータの上に載置されて使用される、物理観測用のスライドガラスにある。
【0010】
本発明の他の態様は、上面に形成された有底状又は貫通状の試料配置穴、及び前記試料配置穴の穴側面に連通する状態で前記上面に形成された測温体配置溝を有するスライドガラスと、
前記スライドガラスが載置され、前記試料配置穴に配置された試料を加熱するためのヒータと、
前記測温体配置溝に配置され、前記試料に接触する測温部によって前記試料の温度を測定する測温体と、を備える物理観測用の加熱測温ユニットにある。
【0011】
本発明のさらに他の態様は、物理観測用の加熱測温ユニットを用いて物理観測を行うに当たり、
前記測温部を、前記試料配置穴に配置された試料中に埋め込み、試料中に埋め込まれた前記測温部によって前記試料の温度を測定する、物理観測方法にある。
【発明の効果】
【0012】
(物理観測用のスライドガラス)
前記一態様の物理観測用のスライドガラスは、ヒータの上に載置されて使用されるものであり、試料配置穴と測温体配置溝とを備える。試料配置穴は、試料を配置して保持するために使用され、スライドガラスの上面に有底状又は貫通状に形成されている。そして、試料を試料配置穴に配置することにより、スライドガラスにおける試料の配置位置を、決まった位置の範囲内に定めることができる。
【0013】
また、スライドガラスの上面には、測温体を配置するための測温体配置溝が形成されている。測温体配置溝は、試料配置穴の穴側面に連通する状態で形成されている。そのため、測温体配置溝に測温体を配置したときには、測温体における測温部を、試料に直接接触させることができる。これにより、試料の温度を直接測定することができ、試料の温度をできるだけ正確に測定することができる。
【0014】
また、試料の温度が目標温度となるよう、ヒータによって試料を加熱する場合には、測温体によって試料の温度を直接測定することができることにより、試料の温度を目標温度にできるだけ正確に調整することが可能になる。
【0015】
また、試料配置穴と測温体配置溝を利用することにより、スライドガラスに対する試料の配置位置及び測温体の配置位置を容易に決定することができる。そのため、試料の物理観測を行う際に手間が掛からず、その作業性を良好に維持することができる。
【0016】
それ故、前記一態様の物理観測用のスライドガラスによれば、物理観測を行う際の作業性を良好に維持しつつ、試料の温度をできるだけ正確に測定又は調整することができる。
【0017】
(物理観測用の加熱測温ユニット)
前記他の態様の物理観測用の加熱測温ユニットは、試料配置穴及び測温体配置溝を有するスライドガラス、スライドガラスが載置されたヒータ、及び測温体配置溝に配置され、試料配置穴内の試料に接触する測温部によって試料の温度を測定する測温体を備える。
【0018】
前記他の態様の物理観測用の加熱測温ユニットによっても、前記一態様の物理観測用のスライドガラスの場合と同様に、物理観測を行う際の作業性を良好に維持しつつ、試料の温度をできるだけ正確に測定又は調整することができる。
【0019】
(物理観測方法)
前記さらに他の態様の物理観測方法は、物理観測用の加熱測温ユニットを用いて物理観測を行うものである。そして、物理観測方法においては、スライドガラスの測温体配置溝に配置した測温体の測温部を、スライドガラスの試料配置穴に配置した試料の中に埋め込む。そして、試料中に埋め込まれた測温部によって試料の温度を直接測定する。これにより、試料の温度をより正確に測定又は調整することが可能になる。
【0020】
前記さらに他の態様の物理観測方法によっても、前記一態様の物理観測用のスライドガラスの場合と同様に、物理観測を行う際の作業性を良好に維持しつつ、試料の温度をできるだけ正確に測定又は調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態にかかる、物理観測用の加熱測温ユニットを示す斜視図。
図2】実施形態にかかる、物理観測用のガラスユニットを示す斜視図。
図3】実施形態にかかる、物理観測用の加熱測温ユニットの一部を示す断面図。
図4】実施形態にかかる、他の物理観測用のガラスユニットを示す斜視図。
図5】実施形態にかかる、他の物理観測用の加熱測温ユニットの一部を示す断面図。
図6】確認試験にかかる、試料の温度とスライドガラスの下面の温度との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0022】
前述した物理観測用のスライドガラス及び加熱測温ユニット並びに物理観測方法にかかる好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
<実施形態>
物理観測用のスライドガラス2は、図1及び図2に示すように、スライドガラス2の上面201に形成された有底状の試料配置穴21と、試料配置穴21の穴側面211に連通する状態でスライドガラス2の上面201に形成された、測温体3を配置するための測温体配置溝22とを備える。スライドガラス2は、試料配置穴21に配置された試料8を加熱するためのヒータ4の上に載置されて使用される。
【0023】
物理観測用の加熱測温ユニット1は、試料配置穴21及び測温体配置溝22を有するスライドガラス2と、試料8を加熱するためのヒータ4と、測温体配置溝22に配置され、試料8に接触する測温部31によって試料8の温度を測定する測温体3とを備える。
【0024】
以下に、本形態のスライドガラス2及び加熱測温ユニット1並びに物理観測方法について詳説する。
(スライドガラス2)
図2に示すように、スライドガラス2は、板状に加工された半透明又は透明のガラス材料によって構成されている。スライドガラス2は、その厚み方向Tを上下方向に向けてヒータ4の上に載置される。試料配置穴21及び測温体配置溝22は、スライドガラス2における面積が最も大きい一対の板面のうちの一方を上面201として形成されている。
【0025】
図3に示すように、試料配置穴21は、有底状に形成されていることによって、スライドガラス2の下面202側に底部210を有する。試料配置穴21が有底状に形成されていることによって、試料8をスライドガラス2と測温体3のみに接触させ、試料8がヒータ4に接触しないようにすることができる。なお、図3は、測温体3の長尺方向に沿った断面を示し、ヒータ4を省略して示す。
【0026】
試料配置穴21及び測温体配置溝22は、厚み方向Tにおいて、上面201から0.1mmの深さに形成されている。試料配置穴21及び測温体配置溝22は、例えば、厚み方向Tにおいて、上面201から0.1〜0.3mmの深さに形成することができる。試料配置穴21の上面201からの深さは、スライドガラス2に配置する試料8の量(体積)等に応じて適宜変更することができる。
【0027】
図2に示すように、スライドガラス2の厚み方向Tに直交し、上面201及び下面202が設けられた板面の面方向は、縦方向Lと横方向Wとによって構成される。スライドガラス2の縦方向Lの長さは、その横方向Wの長さよりも長い。なお、スライドガラス2の縦方向Lの長さは、その横方向Wの長さと同じにしてもよい。試料配置穴21は、縦方向L及び横方向Wにおける中心部に形成されている。試料配置穴21の縦方向Lの長さは、試料配置穴21の横方向Wの長さよりも短い。
【0028】
図2及び図3に示すように、測温体配置溝22は、測温体3を配置して保持するものである。測温体配置溝22は、スライドガラス2の上面201における試料配置穴21の横方向Wの両側において、スライドガラス2の上面201を直線状に横切る仮想線Kに沿って形成されている、「横切る」とは、スライドガラス2の一方の端面203から他方の端面203まで延びることを示す。言い換えれば、測温体配置溝22は、試料配置穴21の横方向Wの両側において、スライドガラス2の横方向Wにおける一方の端面203から他方の端面203まで連続する直線状の仮想線Kに沿って形成されている。そして、試料配置穴21の横方向Wの両側に位置する測温体配置溝22には、1本の直線状の測温体3が連続して配置される。
【0029】
測温体配置溝22は、横方向Wに平行な状態で、スライドガラス2の縦方向Lの中心位置に形成されている。なお、測温体配置溝22は、横方向Wに傾斜する状態で、スライドガラス2の上面201を直線状に横切る仮想線に沿って形成することもできる。スライドガラス2の上面201における縦方向Lの両側の位置には、平板状部分23が形成されている。平板状部分23の形成により、作業者によるスライドガラス2の取り扱いを容易にすることができる。
【0030】
図2に示すように、測温体配置溝22は、試料配置穴21の穴側面211における縦方向Lの中心位置に連通される状態で形成されている。この構成により、測温体配置溝22に配置された測温体3の測温部31が、試料配置穴21に配置された試料8の中心部分に配置されやすくすることができる。
【0031】
本形態の測温体配置溝22は、断面が四角形状の断面を有する溝として形成されている。測温体配置溝22の断面形状は、測温体3の配置を容易にできる形状であれば、いかなる形状としてもよい。測温体配置溝22は、例えば、V形状、U形状等の断面を有する溝として形成することもできる。また、測温体配置溝22の横方向Wの長さは、試料配置穴21の横方向Wの長さよりも短い。
【0032】
図4及び図5に示すように、測温体配置溝22の厚み方向Tにおける上面201からの深さは、試料配置穴21の厚み方向Tにおける上面201からの深さよりも浅くすることもできる。この構成により、測温体3の測温部31は、スライドガラス2及びヒータ4に接触しない状態で試料8に接触可能にすることができる。言い換えれば、この構成により、測温体配置溝22に配置した測温体3の測温部31が、試料配置穴21の穴底面212に接触しにくくすることができる。そして、測温体配置溝22に配置された測温体3の測温部31の全体が、試料配置穴21に配置された試料8の内部に埋め込まれるようにすることができる。
【0033】
(測温体3)
図1図3に示すように、測温体3は、測温部31としての測温接点を有する熱電対によって形成することができる。測温体3は、線状又は直線状に形成されており、測温部31が測温体3の長尺方向の中心部分に配置されている。測温体3は、測温部31の両側に素線32が延びる状態で形成されている。測温体3の測温部31は、試料配置穴21の中心部分に配置され、測温部31の両側に位置する素線32は、測温体配置溝22に配置される。
【0034】
なお、測温体3は、熱電対以外の温度測定素子によって形成してもよい。この場合にも、測温部31は、リード線等の素線32の長尺方向の中心部分に位置する。
【0035】
測温体3の素線32の直径は、測温体配置溝22の厚み方向Tの深さよりも小さくすることが好ましい。測温体配置溝22の厚み方向Tの深さが、測温体3の素線32の直径よりも大きいことにより、測温体3の測温部31が、試料配置穴21内の試料8の内部に配置されやすくなる。
【0036】
図2に示すように、測温体3を測温体配置溝22に配置したときには、測温体3が位置ずれすることを防ぐために、粘着テープ6等によって、測温体3をスライドガラス2に貼り付けることができる。粘着テープ6等は、測温体3の素線32、及びスライドガラス2の上面201における、測温体配置溝22の縦方向Lの両側の位置に連続して貼り付けることができる。
【0037】
図1に示すように、測温体3の素線32は、測温装置51に接続される。測温装置51は、測温体3から起電力等の電気信号を受け、電気信号から温度を算出するよう構成されている。測温体3によって測定された試料8の温度は、測温装置51によって表示することができる。
【0038】
(ヒータ4)
図1に示すように、本形態のヒータ4は、ガラス材料から構成されたガラス基板41と、ガラス基板41内に配置された、通電によって発熱する発熱線42とを有するガラスヒータである。発熱線42は、ガラス基板41の板面(平面)方向に蛇行して配置されている。ヒータ4の発熱線42は、通電装置52に接続される。そして、通電装置52による発熱線42の通電量を制御することによって、ヒータ4の加熱量を調整することができる。
【0039】
(加熱測温ユニット1)
図1に示すように、加熱測温ユニット1は、測温体3が接続された測温装置51、及びヒータ4の発熱線42が接続された通電装置52を用いて、試料8の温度を目標温度に調整することが可能である。測温装置51及び通電装置52は、試料8の温度制御を行うための制御装置53に接続されている。制御装置53は、コンピュータによって構成することができる。
【0040】
制御装置53は、測温装置51から試料8の温度のフィードバックを受け、通電装置52からヒータ4の発熱線42へ通電する通電量を決定して、試料8の温度が目標温度になるようフィードバック制御を行う。測温体3によって試料8の温度が正確に測定されることにより、ヒータ4によって試料8の温度を目標温度に正確に調整することが可能になる。なお、測温装置51及び通電装置52は、制御装置53の内部に構築されていてもよい。
【0041】
(物理観測)
スライドガラス2、加熱測温ユニット1を用いて行う物理観測は、顕微鏡観察、X線回析等とすることができる。顕微鏡観察においては、スライドガラス2の試料配置穴21に配置された試料8が、顕微鏡によって観察される。顕微鏡は、画像処理機能を有する電子顕微鏡としてもよい。X線回析においては、X線回析装置を用い、試料8にX線を当てたときの回析の仕方によって、試料8を構成する材料の結晶構造が測定される。
【0042】
顕微鏡観察においては、加温時あるいは加温状態から冷却した時の試料8の溶融状態、凝固状態等の変化を観察することができる。また、X線回折においては、加温時あるいは加温状態から冷却した時の試料8の結晶構造の変化を観察することができる。
【0043】
(試料8)
試料8は、粉末状又は液状の材料とすることができる。試料8は、有機化合物、無機化合物等の種々のものとすることができる。粉末状の試料8は、ヒータ4によって加熱したときに、試料配置穴21内において溶融させることができる。液状の試料8は、液状の状態で試料配置穴21に配置することができる。加熱測温ユニット1においては、液状の材料の温度が低下するときの、結晶構造の変化を観測することができる。
【0044】
(スライドガラス2の他の構成)
本形態の試料配置穴21は有底状に形成した。試料配置穴21は、これ以外にも、スライドガラス2の厚み方向Tに貫通する貫通状に形成することもできる。
【0045】
(物理観測方法)
本形態の物理観測方法においては、加熱測温ユニット1を用いて物理観測を行う。
物理観測を行うに当たっては、スライドガラス2の試料配置穴21に試料8を配置するとともに、スライドガラス2をヒータ4の載置面上に載置する。試料8は粉末状の材料とすることができる。次いで、スライドガラス2の測温体配置溝22に測温体3を配置する。このとき、測温体3の測温部31が、試料配置穴21における試料8の内部に埋め込まれるようにする。
【0046】
また、測温体3がスライドガラス2から動かないようにするために、測温体3をスライドガラス2に貼り付けることができる。また、測温体3の一対の素線32を測温装置51に接続する。なお、ヒータ4の発熱線42は通電装置52に接続されている。
【0047】
次いで、通電装置52によってヒータ4の発熱線42に通電を行うとともに、測温装置51によって測温体3の測温部31に接触する試料8の温度を測定する。このとき、試料8が粉末状の材料である場合には、試料8は、ヒータ4によって加熱されて溶融する。通電装置52によるヒータ4の発熱線42への通電は、試料8が溶融する温度まで行い、その後停止することができる。
【0048】
そして、試料8の温度が低下する際に、測温装置51及び測温体3によって試料8の温度が測定される。そして、試料8を構成する材料の結晶構造が変化する温度を、測温装置51及び測温体3によって測定することができる。このとき、試料8の内部に埋め込まれた測温部31によって、試料8の温度を測定する。また、測温体3の測温部31が試料8の内部に埋め込まれていることにより、測温装置51及び測温体3によって測定される温度は、試料8の温度を直接測定した値になる。これにより、試料8の温度をできるだけ正確に測定することができる。
【0049】
(作用効果)
本形態の物理観測用のスライドガラス2は、ヒータ4の上に載置されて使用されるものであり、試料配置穴21と測温体配置溝22とを備える。試料配置穴21は、試料8を配置して保持するために使用され、スライドガラス2の上面201に有底状に形成されている。そして、試料8を試料配置穴21に配置することにより、スライドガラス2における試料8の配置位置を、決まった位置の範囲内に定めることができる。
【0050】
また、スライドガラス2の上面201には、測温体3を配置するための測温体配置溝22が形成されている。測温体配置溝22は、試料配置穴21の穴側面211に連通する状態で形成されている。そのため、測温体配置溝22に測温体3を配置したときには、測温体3における測温部31を、試料8に直接接触させることができる。これにより、試料8の温度を直接測定することができ、試料8の温度をできるだけ正確に測定することができる。
【0051】
また、加熱測温ユニット1においては、測温体3によって試料8の温度を直接測定することができることにより、試料8の温度を目標温度にできるだけ正確に調整することが可能になる。
【0052】
また、試料配置穴21と測温体配置溝22を利用することにより、スライドガラス2に対する試料8の配置位置及び測温体3の配置位置を容易に決定することができる。そのため、試料8の物理観測を行う際に手間が掛からず、その作業性を良好に維持することができる。
【0053】
それ故、本形態の物理観測用のスライドガラス2及び加熱測温ユニット1によれば、物理観測を行う際の作業性を良好に維持しつつ、試料8の温度をできるだけ正確に測定又は調整することができる。
【0054】
<確認試験>
本確認試験においては、スライドガラス2に測温体3の測温部31を配置する位置によって、測温体3によって測定される温度がどれだけ異なるかを確認した。
具体的には、実施形態の構成として、第1の測温体3の測温部31は試料8に直接接触させ、比較形態の構成として、第2の測温体の測温部はスライドガラス2の下面202に接触させた。第1の測温体3の測温部31及び第2の測温体の測温部は、いずれもスライドガラス2における縦方向L及び横方向Wの中心位置に配置した。そして、ヒータ4及び通電装置52を用いて試料8を加熱し、第1の測温体3及び測温装置51によって試料8の温度を測定し、第2の測温体及び測温装置51によってスライドガラス2の下面202の温度を測定した。
【0055】
図6には、縦軸に、第1の測温体3を用いて測定された試料8の温度を示し、横軸に、第2の測温体を用いて測定されたスライドガラス2の下面202の温度を示す。同図においては、試料8の温度とスライドガラス2の下面202の温度とが同じであることを示す等温線をラインAで示し、試料8の温度とスライドガラス2の下面202の温度とのずれを、点Bによって示す。
【0056】
試料8の温度は、40〜90℃の範囲内で10℃ずつ変化させた温度とした。このとき、スライドガラス2の下面202の温度は、いずれも試料8の温度よりも2〜4℃の範囲内で高くなった。
【0057】
このことより、試料8の温度とスライドガラス2の下面202の温度とは一致せず、スライドガラス2の下面202の温度を測定することによっては、試料8の温度を正確に測定することはできないことが分かった。つまり、測温体3によってスライドガラス2の表面を測定する比較形態(従来)の構成によっては、試料8の温度を正確に測定することができないことが分かった。一方、測温体3によって試料8の温度を直接測定する実施形態の構成によれば、試料8の温度を正確に測定することができることが分かった。
【0058】
本発明は、実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさらに異なる実施形態を構成することが可能である。また、本発明は、様々な変形例、均等範囲内の変形例等を含む。
【符号の説明】
【0059】
1 加熱測温ユニット
2 スライドガラス
201 上面
21 試料配置穴
211 穴側面
22 測温体配置溝
3 測温体
31 測温部
4 ヒータ
8 試料
図1
図2
図3
図4
図5
図6