(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凹部の開口形状が楕円形であり、該楕円形の長軸が前記半割軸受の周方向を向いていることを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載された半割軸受。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献2から特許文献4までに記載されたような従来の摺動面に複数の微小な凹部を形成した半割軸受は、内燃機関の運転時の半割軸受の摺動面とクランク軸の表面とが近接する動作時に、凹部付近の油の流れに乱流が生じる。この乱流の発生により摩擦損失が発生し、さらに凹部に隣接する摺動面と軸表面との間の油の圧力が大きく低下するために、軸の負荷を支承できなくなり摺動面と軸表面とが接触し、摩擦損失が大きくなるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、内燃機関の運転時にこのような乱流の発生による摩擦損失を低減できる内燃機関のクランク軸のすべり軸受を構成する半割軸受、およびそのすべり軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る半割軸受は、内燃機関のクランク軸を支承するすべり軸受を構成するものである。この半割軸受は、半円筒形状を有し、内周面が摺動面を形成している。この半割軸受の摺動面には、複数の凹部が形成されている。凹部は、摺動面から半割軸受の外径側に後退した平滑な凹部表面を有し、凹部表面は、半割軸受の摺動面に垂直ないずれの断面視にても、半割軸受の外径側に凸形状の曲線を形成している。凹部表面には、凹部表面から半割軸受の外径側に向かって後退した複数の周方向溝が形成され、この周方向溝は、半割軸受の周方向に延び、それにより、凹部表面は平滑面と周方向溝とが交互に配置されるようになっている。
【0008】
本発明の一具体例では、摺動面から凹部表面の最深部までの間の長さである凹部の深さD1は、2〜50μmであることが好ましい。
【0009】
本発明の一具体例では、周方向溝の深さが0.2〜3μmであることが好ましい。また、周方向溝の幅が5〜50μmであることが好ましい。また、周方向溝のピッチが5〜100μmであることが好ましい。
【0010】
本発明の一具体例では、凹部の摺動面での開口形状は、円形、又は楕円形、又は四角形であることが好ましい。
また、凹部の開口形状が楕円形であり、その楕円形の長軸が半割軸受の周方向を向いていることが好ましい。
【0011】
本発明の一具体例では、複数の凹部は、半割軸受の摺動面の全体に均一に形成されていることが好ましい。
【0012】
本発明の一具体例では、凹部は、半割軸受の周方向中央部に近いほど深さD1(摺動面から凹部表面の最深部までの間の長さ)が大きいこと、換言すれば、周方向端部に近いほど凹部の深さD1が小さくなることが好ましい。
【0013】
本発明の一具体例では、凹部は、半割軸受の周方向中央部に近いほど、開口面積が大きいことが好ましい。
【0014】
また、本発明は、上記に説明した半割軸受を備えた、内燃機関のクランク軸を支承する円筒形状のすべり軸受にも関するものである。このすべり軸受は、上記に説明した半割軸受の一対を組み合わせて構成することが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本願発明の具体例について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1に内燃機関の軸受装置1を概略的に示す。この軸受装置1は、シリンダブロック8の下部に支承されるジャーナル部6と、ジャーナル部6と一体に形成されてジャーナル部6を中心として回転するクランクピン5と、クランクピン5に内燃機関から往復運動を伝達するコンロッド2とを備えている。そして、軸受装置1は、クランク軸を支承するすべり軸受として、ジャーナル部6を回転自在に支承する主軸受4と、クランクピン5を回転自在に支承するコンロッド軸受3とをさらに備えている。
【0018】
なお、クランク軸は複数のジャーナル部6と複数のクランクピン5とを有するが、ここでは説明の便宜上、1つのジャーナル部6および1つのクランクピン5を図示して説明する。
図1において、紙面奥行き方向の位置関係は、ジャーナル部6が紙面の奥側で、クランクピン5が手前側となっている。
【0019】
ジャーナル部6は、一対の半割軸受41、42によって構成される主軸受4を介して、内燃機関のシリンダブロック下部81に軸支されている。
図1で上側にある半割軸受41には、内周面全長に亘って油溝41aが形成されている。また、ジャーナル部6は、直径方向に貫通する潤滑油路6aを有し、ジャーナル部6が矢印X方向に回転すると、潤滑油路6aの両端の入口開口6cが交互に主軸受4の油溝41aに連通する。
【0020】
クランクピン5は、一対の半割軸受31、32によって構成されるコンロッド軸受3を介して、コンロッド2の大端部ハウジング21(ロッド側大端部ハウジング22およびキャップ側大端部ハウジング23)に軸支されている。
【0021】
上述したように、主軸受4に対して、オイルポンプによって吐出された潤滑油が、シリンダブロック壁内に形成されたオイルギャラリーから主軸受4の壁に形成された貫通口を通じて主軸受4の内周面に沿って形成された油溝41a内に送り込まれる。
【0022】
さらに、ジャーナル部6の直径方向に第1の潤滑油路6aが貫通形成され、第1の潤滑油路6aの入口開口6cが潤滑油溝41aと連通できるようになっており、ジャーナル部6の第1の潤滑油路6aから分岐してクランクアーム部(図示せず)を通る第2の潤滑油路5aが形成され、第2の潤滑油路5aが、クランクピン5の直径方向に貫通形成された第3の潤滑油路5bに連通している。
【0023】
このようにして、潤滑油は、第1の潤滑油路6a、第2の潤滑油路5aおよび第3の潤滑油路5bを経て、第3の潤滑油路5bの端部の吐出口5cから、クランクピン5とコンロッド軸受3の間に形成される隙間に供給される。
【0024】
一般に主軸受4およびコンロッド軸受3は、その摺動面と軸表面との間の油に圧力が発生することで、クランク軸からの動荷重負荷を支承する。内燃機関の運転時、主軸受4およびコンロッド軸受3の摺動面に加わる負荷の大きさおよびその方向は、常に変動し、その負荷と釣り合う油膜圧力を発生するように、ジャーナル部6およびクランクピン5の中心軸線が主軸受4およびコンロッド軸受3の軸受中心軸に対して偏心しながら移動する。このため、主軸受4およびコンロッド軸受3の軸受隙間(軸表面と摺動面との間の隙間)は、摺動面の何れの位置においても、常に変化する。例えば、4サイクル内燃機関では、燃焼行程において、コンロッド軸受や主軸受に加わる負荷が最大となり、この時、例えばコンロッド軸受では、クランクピン5が、
図1の紙面上側の半割軸受31の周方向中央部付近の摺動面7に向かう方向(矢印Q)(
図8参照)に移動し、この半割軸受の周方向中央部付近の摺動面とクランクピンの表面が最も近接し、この部分の摺動面に向かう方向の負荷が加わる。
なお、主軸受では、
図1に示す紙面下側の軸受キャップ82側に組まれる半割軸受の周方向中央部付近の摺動面に向かう方向の負荷が加わり、下側の半割軸受の周方向中央部付近の摺動面とジャーナル部6の表面が最も近接する。
【0025】
従来技術の複数の微小な凹部を摺動面に形成した半割軸受では、微小凹部を有する半割軸受の摺動面と軸表面とが離間した状態から、相対的に近接するように動作し、摺動面と軸表面が最近接したとき、凹部内の油は圧縮され高圧となり、凹部内から摺動面と軸表面との隙間に流出する。
図10(比較例)に示すように微小な凹部171の表面が平滑である場合、凹部内で高圧となり摺動面と軸表面との間の隙間に流出する油流のうち、一部のみが軸の回転方向Zと同方向を向くが、大部分の油流は軸の回転方向Zと異なる方向を向く油流F1´となる。この軸の回転方向Zと異なる方向を向く油流F1´が形成されると、摺動面と軸表面との間の隙間には、回転する軸表面に付随する油流F2が形成されているため、流れ方向が異なる油流同士が、凹部の開口に隣接する摺動面と軸表面との間で衝突を起こし、それにより乱流が発生する。乱流の発生により摩擦損失は生じる。乱流により凹部開口に隣接する摺動面と軸表面との間の油の圧力が大きく低下すると、軸の負荷を支承できなくなり摺動面と軸表面とが接触し、摩擦損失が大きくなるからである。
【0026】
本発明は、このような従来技術の問題に対処するものである。以下、本発明の半割軸受をコンロッド軸受3に適用した例を示して説明する。しかし、本発明は、コンロッド軸受3に限定されないで、主軸受4を構成する半割軸受として構成することもできる。
コンロッド軸受3または主軸受4を構成する一対の半割軸受のうち、両方が発明の半割軸受とすることもできるが、一方が発明の半割軸受であり他方は従来の摺動面が凹部を有さない半割軸受であってもよい。
【0027】
図2は、本発明に係る半割軸受(コンロッド軸受3)の第1の具体例(軸受の軸線方向から見た図)を示す。コンロッド軸受3は、一対の半割軸受31、32の周方向の端面76を突き合わせて、全体として円筒形状に組み合わせることによって形成される。円筒形状の内周面を形成する面が摺動面7である。
【0028】
半割軸受31、32の厚さは、周方向で一定であることが好ましい。しかし、周方向中央部で厚さが最大で、周方向の両端面76側へ向かって連続して減少するようにしてもよい。
【0029】
図3に、半割軸受の摺動面に配された凹部、
図4に摺動面側から見た凹部の一例を示す。もちろん本発明はこの形態の限定されるものではない。尚、以後、理解を容易にするために各図面において凹部71は誇張して描かれている。
半割軸受31、32には、複数の凹部71が摺動面7に形成されている。この例では、凹部71は、開口形状や深さ等の寸法が同じものが摺動面のほぼ全面に均一に設けられている。なお、摺動面7での複数の凹部71の均一な配置とは、幾何学的に厳密な均一な配置を意味するものではなく、略均一な配置であればよい。なお、
図3は、半円筒形の半割軸受31、32を摺動面側上方からから見た平面図であるから、周方向の端部76付近の凹部の形状は歪んで描かれている。
【0030】
図4は、摺動面7での開口形状が円形の凹部71を示す。なお、開口形状が「円形」とは、幾何学的に厳密な円形を意味するものではなく、略円形であればよい。凹部71の平滑な表面71Sには、複数の周方向溝71Gが形成されている。複数の周方向溝71Gの伸長方向は、半割軸受31、32の周方向Mと平行になされている。周方向溝71Gは、凹部71の周縁から対向する周縁まで延在することが望ましい。凹部71の平滑な表面71Sと周方向溝71Gは、半割軸受31、32の軸線方向に交互に配置されている。平滑表面71Sは、溝や突起などの形成されていない平滑な面であるが、(周方向溝に比べて十分小さい)微小な凹凸が存在してもよい。
【0031】
凹部表面(周方向溝を除いた凹部の表面71S)は、半割軸受31、32の周方向に平行な断面視(
図4のA−A断面)にて、半割軸受31、32の外径側に膨出する、すなわち外径側に凸の曲線となっている(
図5)。なお、周方向溝71Gの部分を半割軸受31、32の周方向断面でみた場合でも、半割軸受31、32の外径側に膨出するようになっている。
さらに、凹部71は、半割軸受31、32の周方向以外のいずれの方向の断面(ここで、「断面」は摺動面7に垂直方向の断面をいう)においても、半割軸受31、32の外径側に膨出する曲線となっている。例として、半割軸受の軸線方向の断面視(
図4のB−B断面)の凹部71表面を
図6に示す。
【0032】
凹部71の摺動面7からの深さ(凹部に隣接する摺動面からの凹部最深部の深さ)D1は、2〜50μmとすることが好ましく、2〜25μmとすることがより好ましい。凹部71の摺動面7における開口が円形状である場合の開口径は、0.05〜5mmとすることができる。凹部の開口形状が楕円形又はそれ以外の形状の場合には、その開口の面積が、円形状開口の面積に相当する面積となる円形開口部寸法(円相当径)とすることが好ましい。
【0033】
複数の周方向溝71Gは、凹部71の周縁から半割軸受31、32の周方向と平行な方向に延びるが、半割軸受31、32の周方向に対し僅かに傾斜(最大1°)することは許容される。
【0034】
周方向溝71Gの深さD2(
図7参照)は、0.2〜3μmとすることが好ましい。周方向溝71Gの深さD2は、凹部71の深さD1よりも小さくなされる。ここで、「周方向溝の深さ」とは、周方向溝をその幅方向断面で見た場合の、周方向溝に隣接する平滑面からの、周方向溝の最深部の深さをいう。
また、周方向溝71Gの幅W(凹部71の表面71Sにおける周方向溝71Gの半割軸受の軸線方向の長さ、
図7参照)は、5〜50μmとすることが好ましい。また、周方向溝71Gの幅Wは、1つの凹部71に対して、少なくとも5以上の周方向溝71Gが形成される寸法にすることが好ましい。各凹部71は、凹部の表面における半割軸受31、32の軸線方向でのピッチP(隣接する周方向溝71Gの最深部の間の、半割軸受31、32の軸線方向の長さ、
図7参照)は、5〜100μmとすることが好ましい。
【0035】
一具体例によれば 周方向溝71Gは、凹部71の表面71Sからの深さD2が、周方向端部を除き周方向溝71Gの延びる方向(長手方向)に亘って一定になされ、幅Wも周方向溝71Gの長手方向に亘って一定になされる(
図6参照)。周方向溝71Gの断面形状はV形状であることが好ましいが、V形状に限定されないで他の形状でもよい。
しかし、周方向溝71Gの深さD2や幅Wは、周方向溝71Gの長手方向に沿って変化させてもよい。この場合、「周方向溝の深さ」、「周方向溝の幅」は、周方向溝71Gの最大溝深さ、最大幅をいい、これらの最大値が上記寸法となることが好ましい。
【0036】
本実施例のコンロッド軸受3は、一対の半割軸受の周方向の端面76を突き合わせて、全体として円筒形状に組み合わせることによって形成される。一対の半割軸受のうちの両方が本発明の半割軸受31、32であることが好ましいが、一方のみが本発明の半割軸受31、32であってもよい。半割軸受31、32は、Cu軸受合金またはAl軸受合金である摺動層を有することができる。あるいは、Fe合金製の裏金層上にCu軸受合金またはAl軸受合金の摺動層を有することができる。また、円筒形状の内周面である摺動面7(凹部71の内面を含む摺動層の表面)に軸受合金よりも軟質なBi、Sn、Pbのいずれか1種からなる、あるいはこれら金属を主体とする合金からなる表面部や合成樹脂を主体とする樹脂組成物からなる表面部を有してもよい。但し、凹部71の表面は、このような表面部を有さない方が好ましい。凹部71の表面や周方向溝71Gの表面が軟質であると、油中に多くの異物が含まれる場合、異物が埋収、堆積しやすくなるからである。凹部71の表面や周方向溝71Gに内面に異物が埋収、堆積すると、凹部を流れる油に乱流が発生しやすくなる。
【0037】
上記のとおり本発明の半割軸受は、平滑な表面71Sおよび複数の周方向溝71Gからなる凹部71を摺動面に有するが、この半割軸受において摩擦損失が減少する理由を以下に説明する。
複数の凹部71を有する半割軸受31の摺動面7と軸5の表面が、離間した状態から相対的に近接するように動作し、摺動面5と軸5の表面が最近接した状態を
図8に示す。そのとき、凹部71内の油は、圧縮され高圧となり凹部71内から摺動面7と軸5の隙間へ流出する。凹部71の表面には、半割軸受31の周方向Mと平行な方向に延びる複数の周方向溝71Gが形成されているため、軸5の表面に付随し軸5の表面の回転方向Zに流れる油流F2の一部が、凹部71の周方向溝71Gに回転方向Zの後方側の摺動面7と軸の隙間から凹部71内に流れる油流F21を形成するようになる。それにより、凹部71内の油は、周方向溝71Gに誘導され、半割軸受31の周方向M(軸5の回転方向Z)と同方向に向かって流れ、摺動面7と軸5の隙間に周方向Mに沿って流出(F1)する(
図9)。
【0038】
他方、摺動面7と軸5の表面との間の隙間には、回転する軸表面に付随する油流F2が形成されている。この油流F3の流れ方向と凹部71から流出する油流F1の流れ方向は、同方向を向くために乱流が発生し難く、摩擦損失が生じ難い。
【0039】
図10は、本発明とは異なる凹部171を摺動面7側から見たものである。この凹部271は、摺動面7での開口形状が円形であり、凹部171の表面は平滑になされている。その他は、上記で説明したものと同じである。
【0040】
図10に示すように凹部171の表面が平滑である場合、凹部内で高圧となり摺動面/軸隙間に流出する油流は全方向に流れるため、その一部のみが軸5の表面の回転方向Zと同方向を向くが、大部分の油流は軸5の表面の回転方向Zと異なる方向を向く油流F1´となる。この軸5の表面の回転方向Zと異なる方向を向く油流F1´が形成されると、摺動面/軸隙間には、回転する軸5の表面に付随する油流F2が形成されているため、流れ方向の異なる油流同士が、凹部171の開口に隣接する摺動面7と軸5の表面との間で衝突を起こし、それにより乱流が発生して、それにより摩擦損失が生じる。乱流により凹部開口に隣接する摺動面と軸5の表面との間の油の圧力が大きく低下するので、軸5表面からの負荷を支承できなくなり摺動面7と軸5の表面とが接触し、摩擦損失が大きくなる。
【0041】
以下、本発明の他の形態の非限定的具体例を説明する。
第2の具体例
図11および
図12は、複数の凹部71が、半割軸受31、32の周方向中央CLを基準とし、所定の円周角度θ1(−15°〜15°)の範囲のみに均一に形成される。なお、半割軸受31、32には、摺動面7の周方向の両端部76にクラッシュリリーフ70が形成されてもよい。他の構成は既に説明した半割軸受31、32の構成と同じである。なお、円周角度は、半割軸受31,32の円環形状の中心を中心とする角度であり、本明細書では、上記の通り半割軸受の周方向中央部CLを基準(0°)に取っている(
図11)。
【0042】
クラッシュリリーフ70は、半割軸受31、32の円周方向端部領域において壁部の厚さを本来の摺動面7から半径方向に減じることによって形成される面のことであり、これは、例えば一対の半割軸受31、32をコンロッド2に組み付けた時に生じ得る半割軸受の周方向端面76の位置ずれや変形を吸収するために形成される。したがってクラッシュリリーフ70の表面の曲率中心位置は、その他の領域における摺動面7の曲率中心位置と異なる(SAE J506(項目3.26および項目6.4)、DIN1497、セクション3.2、JIS D3102参照)。一般に、乗用車用の小型の内燃機関用軸受の場合、半割軸受の円周方向端面におけるクラッシュリリーフ70の深さ(本来の摺動面からの周方向端面76におけるクラッシュリリーフ70までの距離)は0.01〜0.05mm程度である。
【0043】
凹部71の形成範囲は、半割軸受31、32の周方向中央部付近の摺動面7のみに限定されないで、周方向の任意の範囲の摺動面7に形成することもできる。また、凹部71は、クラッシュリリーフ70に形成してもよい。
【0044】
第3の具体例
図13および
図14に示す例では、複数の凹部71が摺動面7にほぼ均一に配されているが、凹部71は楕円形状の開口を有し、その長軸L1が半割軸受31、32の周方向Mと平行な方向を向いており、短軸L2が半割軸受31、32の軸線方向と平行な方向を向いている。なお、凹部71の楕円形状の開口の長軸L1は、半割軸受31、32の周方向に対し僅かに傾斜(最大3°)していることは許容される。(なお、
図13は半円筒形の半割軸受31、32を摺動面側からから見た平面図であるから、周方向の端部76付近の凹部71Eの形状は歪んで描かれている。)
【0045】
この凹部71の凹部表面は、半割軸受31、32の周方向に平行な断面視および軸線方向に平行な断面視にて、半割軸受31、32の外径側に膨出(外径側に凸)するだけでなく、半割軸受31、32の周方向および軸線方向に平行な方向以外のいずれの方向の断面視でも、半割軸受31、32の外径側に膨出(外径側に凸)する曲面となっている。
【0046】
凹部71は、半割軸受31、32の周方向中央部CLに近くに位置するものほど、凹部71の深さD1(最大深さ)が大きく、周方向端面76に近いほど凹部深さD1が小さくなっている。また、半割軸受31、32の周方向中央部CLに近くに位置するものほど、凹部71の開口の面積が大きく、周方向端面76に近いほど凹部の開口の面積が小さくなっている。
【0047】
本具体例の半割軸受31、32は、複数の凹部71が、楕円形状の開口を有し、その長軸L1が半割軸受31、32の周方向Mと平行な方向を向いている。このため、半割軸受31、32の摺動面7と軸5の表面が最近接した時に、凹部71内の油は、周方向溝71Gに誘導されて半割軸受31、32の周方向M(軸5の表面の回転方向Z)と同方向に向かって流れやすくなり、半割軸受31、32の摺動面/軸隙間に半割軸受31、32の周方向Mと同方向に向かって流出しやすくなる。
【0048】
また、4サイクル内燃機関では、上記のように半割軸受31、32の周方向中央部付近の摺動面7と軸5の表面が最も近接し、直接接触が生じやすい。
本実施例の半割軸受31、32の凹部71は、半割軸受31、32の周方向中央部CLに近くに位置するものほど凹部71の開口面積が大きくなっているため、摺動面7の周方向中央部CLの近くに位置する凹部71ほど、摺動面と軸5の表面が近接したとき、凹部71内部で圧力が高くなる油の量が多くなり、半割軸受31、32の周方向中央部付近の摺動面7と軸5の表面とが直接接触しにくくなる。
なお、内燃機関の運転時、半割軸受31、32の摺動面7の周方向端部に近いほど、軸5の表面との接触が生じやすい仕様の内燃機関の場合、本実施例とは異なり、半割軸受31、32の凹部71は、半割軸受31、32の周方向端部の近くに位置するものほど、摺動面7における凹部71の開口面積が大きく、周方向中央部CLの近くに位置するほど凹部71の開口面積が小さくなるようにすることができる。
【0049】
第4の具体例
図15は、摺動面7での開口形状が四角形である凹部71を示す。矢印Zは、軸回転方向を示し、凹部の開口形状の四角形の2辺は、軸回転方向と平行に配される。なお、
図15は、周方向溝71Gを省略して図示している。
なお、凹部71の表面は、半割軸受31、32の周方向に平行な断面視および軸線方向に平行な断面視にて、半割軸受31、32の外径側に膨出(外径側に凸)するだけでなく、半割軸受31、32の周方向および軸線方向に平行な方向以外のいずれの方向の断面視でも、半割軸受31、32の外径側に膨出(外径側に凸)する曲面となっている。
【0050】
第5の具体例
図16に摺動面7での開口形状が四角形である凹部71を示す。
図15とは異なり、凹部の開口形状の四角形の対角線が、軸回転方向Zと平行となるように配される。
図17に示す凹部71の表面は、半割軸受31、32の周方向に平行な断面視および軸線方向に平行な断面視にて、半割軸受31、32の外径側に膨出(外径側に凸)するだけでなく、半割軸受31、32の周方向および軸線方向に平行な方向以外のいずれの方向の断面視でも、半割軸受31、32の外径側に膨出(外径側に凸)する曲面となっている。なお、
図16も周方向溝71Gを省略して図示している。
【0051】
上記に凹部71の開口形状として、円形、楕円形および四角形を示したが、これらの開口形状は、幾何学的に厳密な円形、楕円形および四角形を意味するものではなく、略円形、略楕円形、および略四角形であればよい。さらに、凹部71の開口形状は、これらの形状に限定されないで、他の形状であってもよい。
上記説明は、発明の半割軸受を内燃機関のクランク軸のクランクピンを支承するコンロッド軸受に適用した例を示したが、発明の半割軸受は、クランク軸のジャーナル部を支承する主軸受を構成する一対の半割軸受の一方または両方に適用することができる。また、半割軸受は、油穴や油溝を有するようにしてもよく、半割軸受は、凹部71を除く摺動面の全体が半割軸受の周方向に延びる複数の溝部を有して構成してもよい。