特許第6871887号(P6871887)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871887
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】移動規制装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/36 20060101AFI20210510BHJP
   E05F 5/02 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   E06B7/36 F
   E05F5/02 B
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-171110(P2018-171110)
(22)【出願日】2018年9月13日
(65)【公開番号】特開2020-41360(P2020-41360A)
(43)【公開日】2020年3月19日
【審査請求日】2019年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000107572
【氏名又は名称】スガツネ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤玄一
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3168810(JP,U)
【文献】 実公昭57−059589(JP,Y2)
【文献】 特開2000−234465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/00− 7/36
E05C 1/00−21/02
E05F 5/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1、第2構成部材の相対移動を規制する装置において、
上記第1構成部材の支持壁に設けられるストッパを備え、上記ストッパは、
(ア)上記第1構成部材の上記支持壁の表側の面に固定される固定部と、
(イ)一端が上記固定部に連なり、上記支持壁の表側において上記第1、第2構成部材の相対移動方向に延び、自由端となる他端が上記支持壁から離間する押込片と、
(ウ)上記押込片の自由端から上記支持壁に向かって上記支持壁と交差する方向に延び、上記第2構成部材の相対移動軌跡を横切り、さらに上記支持壁を越えて上記支持壁の裏側に突出する係止部と、
(エ)上記支持壁の裏側に位置する上記係止部の突出端部に形成され、上記支持壁の裏面に引っ掛かる引掛部と、
を一体に有し、
上記押込片は、上記係止部が上記第2構成部材の上記相対移動軌跡から外れるまで、上記支持壁に向かい弾性変形を伴って押し込み可能であるとともに、自身の弾性により元の位置に復帰可能であることを特徴とする移動規制装置。
【請求項2】
上記係止部は、上記支持壁に形成された係合穴を通って上記支持壁の裏側に突出しており上記引掛部は、上記支持壁に沿って突出し、上記係合穴の周縁部に重なることを特徴とする請求項1に記載の移動規制装置。
【請求項3】
上記係止部の上記突出端部と上記引掛部は、その断面が上記係合穴より小さく、上記支持壁の表側から上記係合穴を通ることが可能であることを特徴とする請求項2に記載の移動規制装置。
【請求項4】
上記ストッパは、さらに基板部を有し、この基板部は、上記固定部としての第1固定部と、上記第1固定部から上記相対移動方向に離れた他の固定部としての第2固定部と、これら第1、第2固定部を連ねる架橋部を有し、上記押込片は上記第2固定部に向かうように上記架橋部に沿って延び、上記押込片と、上記架橋部および上記第2固定部との間に、L字形のスリットが形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の移動規制装置。
【請求項5】
さらに、上記支持壁の裏側の面に沿う裏当板を有し、上記支持壁の表側から上記ストッパの上記固定部と上記支持壁を貫通するネジが、上記裏当板のネジ穴にねじ込まれることにより、上記固定部と上記裏当板が上記支持壁を挟んで固定され、
上記第1構成部材が引戸からなり、上記引戸の下桟が一対の側壁と下方に開口する凹部を有しており、上記一対の側壁の一方が上記支持壁として提供され、上記裏当板が上記凹部において上記一方の側壁の裏側の面に固定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の移動規制装置。
【請求項6】
上記第1、第2構成部材がそれぞれ第1、第2の引戸からなり、上記ストッパが上記第1引戸の水平をなす桟の戸当たり部の近傍に設けられ、上記桟が一対の側壁を有し、上記一対の側壁の一方が上記支持壁として提供され、上記ストッパの上記係止部が上記第2引戸の召合わせ部を係止することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の移動規制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸等の移動を規制する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
窓や筺体の開口を開閉する引違い式の2枚の引戸は、互いの召合わせ部が重なることにより窓や開口を閉じ、引戸全体が完全に重なることにより、窓や開口を全開にする。
全開状態または全開状態に近い状態になるまで一方の引戸を他方の引戸に対して移動させると、一方の引戸の戸当たり部又はその近傍の引手と他方の引戸の召合わせ部の間で手指が挟まれることがある。
【0003】
そのため、いずれかの引戸にストッパを設け、このストッパにより2つの引戸が全開状態になるのを阻止する装置が種々開発されている。しかし、ストッパが邪魔になり、引戸を全開状態にすることができない。
【0004】
特許文献1に開示された引戸用の移動規制装置は、一方の引戸の中桟の戸当たり部近傍に設けられており、水平をなす板形状のストッパを備えている。このストッパの一端部は、中桟の側壁の裏側の面に固定されたブラケットに、ピンを介して回動可能に支持されている。ストッパは、中桟の側壁に形成されたスリットに挿通され、その一部が側壁の表側に突出している。この突出状態はブラケットに支持されたバネにより維持されている。
【0005】
特許文献1の板状のストッパは、その突出状態において他方の引戸の移動軌跡上に位置する係止部を有するとともに、中桟の側壁の裏側の面に係止されてストッパの回動を規制する引掛部を有している。
【0006】
特許文献1の移動規制装置では、他方の引戸が開き方向に移動する際に、上記ストッパの係止部に他方の引戸の召合わせ部が当たることにより、全開状態になるまで移動するのを禁じられ、これにより手指が挟まれるのを回避することができる。また、ストッパをバネに抗して押し込むことにより、一時的に係止部を他方の引戸の移動軌跡から外すことができ、これにより引戸を全開状態にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公昭57−59589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の移動規制装置では、ストッパの他に、ブラケット、ピン、バネが必要となるので、部品点数が多く、ひいては組付作業が煩雑である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、第1、第2構成部材の相対移動を規制する装置において、
上記第1構成部材の支持壁に設けられるストッパを備え、上記ストッパは、(ア)上記第1構成部材の上記支持壁に固定される固定部と、(イ)一端が上記固定部に連なり、上記支持壁の表側において上記第1、第2構成部材の相対移動方向に延び、自由端となる他端が上記支持壁から離間する押込片と、(ウ)上記押込片の自由端から上記支持壁に向かって上記支持壁と交差する方向に延び、上記第2構成部材の相対移動軌跡上に位置する係止部と、を一体に有し、上記押込片は、上記係止部が上記第2構成部材の上記相対移動軌跡から外れるまで、上記支持壁に向かい弾性変形を伴って押し込み可能であるとともに、自身の弾性により元の位置に復帰可能であることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、ストッパの係止部に第2構成部材が係止されることにより第1、第2構成部材の相対移動を規制することができる。また、ストッパが固定部と押込片と係止部を一体に有するとともに弾性を有しているので、部品点数を最小限にすることができ、ひいては組付作業を楽に行なうことができる。
【0011】
好ましくは、上記係止部は、上記支持壁に形成された係合穴を通って上記支持壁の裏側に突出しており、上記支持壁の裏側に位置する上記係止部の突出端部には引掛部が一体をなして連なり、上記引掛部は、上記支持壁に沿って突出し、上記係合穴の周縁部に重なる。
上記構成によれば、ストッパに第2構成部材が強く当たった時には、引掛部が支持壁の係合穴の周縁部に引っ掛かるため、押込片が支持壁から離れる方向へ回動または変形するのを禁じられ、押込片の破壊等を防止できる。
【0012】
好ましくは、上記固定部が、上記支持壁の表側の面に固定され、上記係止部の上記突出端部と上記引掛部は、その断面が上記係合穴より小さく、上記支持壁の表側から上記係合穴を通ることが可能である。
上記構成によれば、ストッパの係止部と引掛部を支持壁の表側から支持壁の係合穴に通した後に、ストッパを移動させることにより、引掛部が係合穴の周縁部と重なるようにストッパを位置決めすることができ、この状態でストッパの固定部を支持壁の表側から支持壁に固定することができるので、組付作業をより一層簡略化することができる。
【0013】
好ましくは、上記ストッパは、基板部を有し、この基板部は、上記固定部としての第1固定部と、上記第1固定部から上記相対移動方向に離れた他の固定部としての第2固定部と、これら第1、第2固定部を連ねる架橋部を有し、上記押込片は上記第2固定部に向かうように上記架橋部に沿って延び、上記押込片と、上記架橋部および上記第2固定部との間に、L字形のスリットが形成されている。
上記構成によれば、離間した第1、第2固定部により、ストッパを強固に固定できるとともに、その間に押込片を配置したことにより、ストッパのサイズを小さくすることができる。
【0014】
好ましくは、さらに、上記支持壁の裏側の面に沿う裏当板を有し、上記支持壁の表側から上記ストッパの上記固定部と上記支持壁を貫通するネジが、上記裏当板のネジ穴にねじ込まれることにより、上記固定部と上記裏当板が上記支持壁を挟んで固定されている。
上記構成によれば、ストッパをより強固に支持壁に固定することができる。
【0015】
好ましくは、上記第1構成部材が引戸からなり、上記引戸の下桟が一対の側壁と下方に開口する凹部を有しており、上記一対の側壁の一方が上記支持壁として提供され、上記裏当部が上記凹部において上記一方の側壁の裏側の面に固定されている。
上記構成によれば、裏当板を下桟の凹部から簡単に挿入することができ、引戸の製造後でも、移動規制装置の組付作業を行なうことができる。
【0016】
より具体的態様では、上記第1、第2構成部材がそれぞれ第1、第2の引戸からなり、上記ストッパが上記第1引戸の水平をなす桟の戸当たり部の近傍に設けられ、上記桟が一対の側壁を有し、上記一対の側壁の一方が上記支持壁として提供され、上記ストッパの上記係止部が上記第2引戸の召合わせ部を係止する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、移動規制装置の組み付け作業を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】引違い式の2枚の引戸を備え、外側の引戸に本発明の一実施形態に係る移動規制装置を装着した筺体を示すもので、(A)は筺体の前側から見た斜視図、(B)は筺体の後側から見た斜視図であり筺体の背板を省略して示す。
図2】上記移動規制装置の作用を順に説明する斜視図であり、(A)は内側の引戸が開き方向に移動してその召合わせ部が上記移動規制装置のストッパに近づいた状態を示し、(B)は内側の引戸の召合わせ部が上記ストッパに当って係止された状態を示し、(C)は上記ストッパが押し込まれて内側の引戸に対する係止が解除された状態を示し、(D)は係止を解除された内側の引戸の召合わせ部が上記ストッパを通過してさらに開き方向に移動している状態を示す。
図3】上記移動規制装置を水平面で切断した拡大断面図であり、(A)〜(D)は、図2(A)〜(D)にそれぞれ対応した状態を示す。
図4】上記移動規制装置を分解して示す拡大斜視図である。
図5】上記ストッパを図4において下方から見た斜視図であり、(A)はストッパの押込片が突出した状態、(B)は押込片が後退した状態をそれぞれ示す。
図6】(A)は図4において上記ストッパをA方向から見た図、(B)は図4において上記ストッパをB方向から見た図、(C)は図4において上記ストッパをC方向から見た図である。
図7】上記ストッパを外側の引戸の下桟に固定する工程において、上記ストッパの引掛部と下桟の係合穴との位置関係を示す図であり、(A)は下桟の側壁の表側からストッパの引掛部を係合穴に挿入した状態を示し、(B)はストッパを下桟に沿って移動させて上記引掛部を上記係合穴の縁部に重ねた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る引戸用の移動規制装置を、図面を参照しながら説明する。図1は、景品取得ゲーム装置等に用いられる筺体10を、2枚の引戸20A,20Bとともに概略的に示している。
【0020】
筺体10の開口11の周縁部の内面には矩形の開口枠が固定されている。この開口枠のうち左右の縦枠と上枠は図示を省略している。
開口11の下縁部に固定された開口枠の下枠12は、図2に示すように、互いに平行をなす2本のレール部12a,12bを有しており、開口11の上縁に固定された上枠(図示しない)も2本のガイド部を有している。
【0021】
引戸20A,20Bは、略左右対称をなしており、透明のガラス板21とこのガラス板21を囲う矩形のサッシ枠とを有している。図ではサッシ枠の上桟と左右の縦桟の図示を省略している。
【0022】
引戸20A,20Bのサッシ枠の下桟22は、断面H形状の押出型材からなり、その上部にガラス板21の下縁部が嵌っており、その下部には戸車が取り付けられている。
外側の引戸20A(第1引戸;第1構成部材)は、外側のレール部12aと外側のガイド部に案内されて移動可能であり、内側の引戸20B(第2引戸;第2構成部材)は、外側のレール部12bと外側のガイド部に案内されて、移動可能である。
【0023】
図1に示すように、引戸20A、20Bの召合わせ部が重なった状態で筺体10の開口11が閉じられている。引戸20A,20Bは、戸当たり部近傍のガラス板21に、外側から見て凹んだ引手23を有している。上記閉じ状態から、例えば外側の引戸20Aを静止させたまま、内側の引戸20Bの引手23に手指を入れて移動させることにより開口11が開かれる。
【0024】
上記のように内側の引戸20Bが開き方向に移動して、引戸20A、20Bの全体が重なる全開状態になる前に、引手23に入れられた手指が外側の引戸20Aの召合わせ部と引手23の縁との間で挟まれる可能性がある。
【0025】
上記のような可能性を無くすために、外側の引戸20Aの下桟22に、その戸当たり部近傍(戸当たり部寄り)に移動規制装置Mが設けられている。
図4に示すように、外側の引戸20Aの下桟22は、前述したように断面H字形をなし、内側の側壁22aと、外側の側壁22bとを有し、下部に凹部22c(内部空間)を有している。凹部22cは下桟22の長手方向に延び下方が開放されている。
【0026】
内側の側壁22aの下部は、移動規制装置Mが装着される支持壁として提供される。側壁22aには、後述するようにストッパ30の係止部33が挿通される係合穴25が形成されるとともに、この係合穴25の両側に後述するねじ50が通る貫通穴26が形成されている。
【0027】
図4に示すように、本実施形態の移動規制装置Mは、ストッパ30と裏当板40を備えている。
ストッパ30は、樹脂の射出成形品からなり、図4図6に示すように、全体として長方形の板状をなしており、基板部31と、押込片32と、係止部33と、引掛部34を一体に有している。
【0028】
基板部31は、下桟22の長手方向(引戸20A,20Bの移動方向)に離れた一対の固定部31a、31b(第1、第2固定部)と、これら固定部31a、31bを連ねる架橋部31cと、を有している。固定部31a,31bには座グリ穴31xが形成されている。
【0029】
押込片32は細長い板形状をなしており、その一端が一方の固定部31aに連なり他方の固定部31bに向かって架橋部31cに沿って延びている。押込片32は固定部31bに向かうにしたがって徐々に基板部31の表側の面から離れるように、基板部31に対して傾斜している。
基板部31の固定部31bおよび架橋部31cと押込片32との間には、L字形のスリット35が形成されている。
【0030】
押込片32の他端は自由端となり、この自由端から上記係止部33が基板部31に向かって延び、その先端部(突出端部)は基板部31の裏側に突出している。係止部33において固定部31bに臨む面は、基板部31の表側の面と直角をなす係止面33aとして提供される。
【0031】
上記引掛部34は、係止部33の突出端部から固定部31bに向かって突出している。引掛部34は、基板部31の裏側の面から離れている。図7(A)に示すように、係止部33の突出端部と引掛部34を横切る断面は、円の一部をカットした形状を有しており、下桟22の側壁22aに形成された円形の係合穴25より小さい。
【0032】
図4に示すように、裏当板40は、下桟22の係合穴25に対応した位置に係合穴25より大きな切欠41を有するとともに、両端部にネジ穴42を有している。切欠41は上側が開放されている。
【0033】
次に、移動規制装置Mの組み付け工程について詳述する。
まず、裏当板40を下から下桟22の凹部22cに挿入し、裏当板40のネジ穴42と下桟22の側壁22aの貫通孔26とを合わせた状態で、両面テープ等で裏当板40を凹部22cの裏側の面に貼り付ける。
【0034】
次に、ストッパ30を下桟22の側壁22aに位置決めする。ストッパ30を側壁22aの表側に配し、ストッパ30の基板部31の長手方向を下桟22の長手方向にほぼ揃えた状態で、図7(A)に示すようにストッパ30の係止部33の突出端部と引掛部34を、側壁22aの係合穴25に通し、基板部31の裏側の面を側壁22aの表側の面に当てる。この状態で係止部33の突出端部と引掛部34は側壁22aの裏側の面から突出した位置にある。
【0035】
次に、ストッパ30を下桟22の長手方向(引戸20A,20Bの移動方向)にずらすことにより、図7(B)に示すように引掛部34を係合穴25の周縁部の一部と重ねるとともに、ストッパ30の基板部31の座グリ穴31xと下桟22の貫通穴26を合せる。この位置決め状態で、ネジ50を座グリ穴31xと貫通穴26に通し、裏当板40のネジ穴42にネジ50をねじ込んで締め付けることにより、ストッパ30と裏当板40が下桟22の側壁22aを挟むようにして側壁22aに固定される。
【0036】
ストッパ30は、バネ、ピン、ブラケット等を必要とせずに、側壁22aに固定部31a、31bを下桟22の側壁22aに固定するだけで取り付けることができ、取付作業を簡単にすることができる。
また、ストッパ30を下桟22の側壁22aの表側に配置した状態で、この側壁22aの表側からネジ50でストッパ30を固定するので、ストッパ30を簡単な作業で固定できる。裏当板40も下桟22の凹部22cから挿入できるので、取付作業を煩雑にすることはない。このように、移動規制装置Mの組付作業を簡略化できる。なお、この移動規制装置Mは、引戸20Aを完成させた後で取り付けることができ、引戸20Aを分解せずに修理を行うこともできる。
【0037】
図3(A)に示すように、上記ストッパ30を固定した状態で、押込片32は、下桟22の長手方向に延びその自由端に向かって下桟22の側壁22aの表側の面から離れるように傾斜している。係止部33は、側壁22aの係合穴25を通るとともに、引戸20Bの移動軌跡上に位置しており、その係止面33aは、側壁22aの表側の面および引戸20A,20Bの移動方向と直交している。引掛部34は、側壁22aの裏側において係合穴25の周縁部の一部と重なっている。
【0038】
上記構成をなす移動規制装置Mの作用を説明する。図1に示すように、引戸20A,20Bの召合わせ部が重なって筺体10の開口11を閉じた状態から、外側の引戸20Aを静止させたまま、内側の引戸20Bを移動させて開口11を開く場合を例にとって説明する。
【0039】
図2(A)、図3(A)に示すように、引戸20Bの召合わせ部が引戸20Aのストッパ30に近づき、さらに引戸20Bの移動を継続すると、図2(B)、図3(B)に示すように、引戸20Bの召合わせ部がストッパ30の係止部33の係止面33aに当たり、それ以上の開き方向の移動が禁じられる。その結果、前述した手指が引戸20Aの召合わせ部と引戸20Bの引手23との間で挟まれるのを防止することができる。
【0040】
引戸20Bのストッパ30への衝撃が大きい場合には、係止部33を介して押込片32に固定部31aを支点とする曲げ荷重(基板部31から離れる方向の曲げ荷重)が働く。しかし、引掛部34が引戸20Aの下桟22の側壁22aの裏面において、係合穴25の周縁部に引っ掛かるため、押込片32が大きく弾性変形するのを回避することができ、その破損や疲労破壊を回避することができる。
【0041】
引戸20Bを全開状態にすることを所望する場合には、図2(C)、図3(C)に示すように、上記押込片22をその弾性に抗して押し込むことにより、係止部33を引戸20Bの移動軌跡から外すことができる。この状態で、図2(D)、図3(D)に示すように引戸20Bをさらに開き方向に移動させれば、全開状態にすることができる。
【0042】
本実施形態では、基板部31と押込片32と係止部33と引掛部34を一体に有するストッパ30を用い、押込片32自身の弾性を利用して上記押込み位置から元の位置への復帰を行ない、別途バネを用いないので、構成を簡略化することができるとともに、組付作業をより一層簡略化することができる。
ストッパ30は離間した一対の固定部31a,31bで側壁22aに固定するので、強固に固定できる。押込片32は固定部31a,31b間に配置されているので、ストッパ32のサイズを小さくすることができる。
裏当板40はストッパ30の固定強度をさらに高めることができる。なお、裏当板40を省略し、側壁22aに形成されたネジ穴にネジ50をねじ込むことによりストッパ30を固定してもよい。
【0043】
上記実施形態において、内側の引戸20Bを静止したまま、移動規制装置Mを装着した外側の引戸20Aを移動させてもよい。この場合も、ストッパ30が内側の引戸20Bの召し合わせ部に当たり、外側の引戸20Aの移動(外側の引戸20Aに対する内側の引戸20Bの相対移動)を規制することができる。
【0044】
本発明は、上記実施に制約されず、その要旨を逸脱しない範囲において各種の変形例を採用することができる。
例えば、本発明を窓の引戸の移動規制に用いても良い。
本発明を引違い式の引戸のみならず片引きの引戸の移動規制に用いてもよい。この場合、引戸に移動規制装置を装着してもよいし、この引戸を収容する戸袋や嵌め殺しの戸等の構成部材に移動規制装置を装着してもよい。
押込片自身の弾性を利用する代わりに、捩りバネ等のバネ(弾性部材)を用いて押込片を突出方向に付勢してもよい。
【符号の説明】
【0045】
M 移動規制装置
20A 外側の引戸(第1引戸;第1構成部材)
20B 内側の引戸(第2引戸;第2構成部材)
22 下桟(桟)
22a 下桟の側壁(支持壁)
22b 下桟の側壁
22c 凹部
25 係合穴
26 貫通穴
30 ストッパ
31 基板部
31a 固定部(第1固定部)
31b 固定部(第2固定部)
31c 架橋部
32 押込片
33 係止部
34 引掛部
35 スリット
40 裏当板
42 ネジ穴
50 ネジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7