【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの課題は、複数の独立請求項の特徴によって解決される。
【0009】
これらの特徴は、単独でも、組み合わせても、車両ブレーキの寿命または耐用期間をさらに延長し、更には、複数の車両ブレーキの摩耗を調和させて、サービスインターバルを最適に利用することができるようにすることを可能にする。
【0010】
そこで、本発明は、請求項1記載の、車両用の常用ブレーキを状態監視する方法および請求項7記載の、車両のブレーキシステムを運転する方法を提供している。
【0011】
車両、特に商用車用の常用ブレーキごとに少なくとも1つの変位検出ユニット、特にリニア型の変位検出ユニットを備える常用ブレーキを状態監視する方法は、
a) 常用ブレーキの構成要素の、リニア型の変位検出ユニットにより検出された位置、特に時間または時間経過にわたる位置を表す位置信号を読み込むステップであって、この読み込むステップにおいて付加的に、圧力信号と、補足的または代替的に制御信号と、補足的または代替的にパッド摩耗信号とを読み込む、位置信号を読み込むステップと、
b) 常用ブレーキの少なくとも1つの状態パラメータを求めるために、位置信号を評価するステップであって、この評価するステップにおいて、圧力信号と、補足的または代替的に制御信号と、補足的または代替的にパッド摩耗信号とを用いて状態パラメータを特定する、位置信号を評価するステップと、
c) 常用ブレーキの状態パラメータをインタフェースにおいて供給するステップと
を有している。
【0012】
この場合には、評価するステップにおいて、状態パラメータが、冒頭に記載した先行技術と異なり、圧力信号と、補足的または代替的に制御信号と、補足的または代替的にパッド摩耗信号とを用いて補足的に特定される。こうして、評価を改善することができる。
【0013】
車両は、商用車と解釈することもできるし、商用車用の被牽引車またはトレーラと解釈することもできる。商用車(NFZ)は、コマーシャルビークルと呼ばれることもあるし、構造形態と、人もしくは物を輸送するユニットまたは被牽引車を牽引するユニットとに従って規定された、例えばバス、トラック、牽引車、牽引機械またはクレーン車のような自動車と呼ばれることもある。変位検出ユニットは、センサと解釈することができる。変位検出ユニットは、リニア型の変位検出ユニットとして形成することができる。この場合には、種々異なる測定法、例えば光学的、機械的、電気的または磁電的な測定法を使用することができる。位置信号は、アナログ信号としての電気信号だけでなく、デジタル信号としての電気信号とも解釈することができる。位置信号は、ブレーキの2つの構成要素の相対的な位置を表し得る。
【0014】
読み込むステップでは、圧力信号と、補足的または代替的に制御信号と、補足的または代替的にパッド摩耗信号とが読み込まれる。この場合には、評価するステップにおいて、状態パラメータを、圧力信号と、補足的または代替的に制御信号と、補足的または代替的にパッド摩耗信号とを用いて特定することができる。こうして、評価を改善することができる。
【0015】
供給するステップにおいて、状態パラメータの代わりにまたは状態パラメータに対して付加的に、調整量が供給されると有利である。この調整量は状態パラメータを用いて特定することができる。調整量は調整信号として供給することができる。状態パラメータは、ブレーキのクリアランス、パッド摩耗または欠陥もしくは欠陥形態を表し得る。この場合、状態パラメータは、複数のパラメータと解釈することもできるし、状態情報と解釈することもできる。有利には、これによって、ブレーキの状態を診断することができる。
【0016】
調整量は、常用ブレーキの摩擦装置用の応答圧および補足的または代替的に当付け圧に対する制御信号を表し得る。こうして、状態パラメータと、この状態パラメータから導き出された調整量とを介して、ブレーキの状態を、特に閉ループ制御系で変化させることができる。
【0017】
1つの実施の形態では、調整量が、常用ブレーキのアクチュエータを制御する信号を表し得る。この実施の形態では、アクチュエータが、常用ブレーキの双方向アジャスタ、特に電動式のアジャスタと、補足的または代替的にブレーキシリンダと、補足的または代替的にこのブレーキシリンダの付加構成要素とであってよい。アクチュエータは、調整要素と解釈することもできるし、作動器と解釈することもできる。したがって、有利には、常用ブレーキの状態をアクティブに変化させることができる。例えば、過度に大きなクリアランスを減少させることもできるし、過度に小さなクリアランスを増大させることもできる。したがって、(過度に大きなクリアランスと比較して)制動距離を短縮することができるだけでなく、(過度に小さなクリアランスまたは全く存在しないクリアランスと比較して)ブレーキの過熱を認識して阻止することもできる。
【0018】
評価するステップにおいて、状態パラメータは、常用ブレーキのパッド摩耗と、補足的または代替的にパッド膨張と、補足的または代替的にクリアランスと、補足的または代替的に制動準備と、補足的または代替的に欠陥情報とに関する情報を表し得る。こうして、常用ブレーキの状態に関する情報を運転者または制御機器に供給することができる。代替的には、常用ブレーキの内部の装置が情報を処理し、こうして、常用ブレーキの状態を、より長い寿命および改善された制動準備に向けて最適化することができる。
【0019】
読み込むステップにおいて、パッド摩耗信号を位置信号によって妥当性確認することが有利であり得る。こうして、パッド摩耗に関するより確固とした情報を供給することができる。
【0020】
少なくとも1つの常用ブレーキと、この常用ブレーキを状態監視する装置とを有する、車両、特に商用車のブレーキシステムを運転する方法は、
a) 常用ブレーキの、特に請求項1から6までのいずれか1項記載の方法により求められた状態パラメータを、常用ブレーキを状態監視する装置(100)のインタフェースから読み込むステップと、
b) 状態パラメータを評価するステップであって、評価された状態パラメータとブレーキ要求信号とを用いてブレーキ制御信号を求め、これによって、常用ブレーキの制動準備および補足的または代替的に所望の状態を設定する、状態パラメータを評価するステップと、
c) 常用ブレーキを制御するために、この常用ブレーキのブレーキ制御信号をインタフェースにおいて供給するステップと
を有している。
【0021】
こうして、ブレーキシステムの相応のブレーキの状態情報もしくは状態パラメータに応じて最適化してブレーキを応答させることができるかもしくは制御することができる。
【0022】
読み込むステップよりも前に、少なくとも1つの周辺パラメータがチェックされてよい。1つの実施の形態では、この少なくとも1つの周辺パラメータが、設定された目標範囲内にある場合にのみ、方法の後続のステップが実施されてよい。
【0023】
評価するステップにおいて、ブレーキ制御信号が求められて、車両の制御される複数の常用ブレーキが、互いに調和された摩耗を有するようにしてよい。周辺パラメータとして、例えば、制動の種類、減速の程度、制動圧または別の周辺パラメータを定義することができる。
【0024】
複数の情報の読込みに基づき、ブレーキの操作と解除との間の差圧がどの程度の大きさとなるのかが明らかとなる。これによって、(ブレーキの状態パラメータを検出しない)従来の調整と異なり、ブレーキ要求の減少時に、要求圧を、瞬時に求められた数値だけ減少させることができる。引き続き、操作における反応をセンサによって直接チェックし、後調整することができる。求められて記憶された圧力・変位経過に基づき、加圧または解除のためにまさに必要となる圧力値をブレーキシステムに常時供給することが可能となる。
【0025】
既存のセンサを備えた本発明に係るブレーキでは、機械的な構成部材の応答を、測定された信号の変化で認識することができる。これによって、ブレーキ調整に対して、個々の各ブレーキの応答圧を認知し、どの程度の圧力でブレーキの構成部材が運動させられるのかという趣旨で圧力要求を適合させることが可能となる。これによって、磁極ホイール測定を利用する必要なしに、ブレーキ操作の調整を行うことができる。このことは、空気消費量を減少させ、ABS/EBSといった通常の事例における応答時間を改善する。
【0026】
別の使用事例は、ブレーキ操作前のブレーキの準備である。この場合には、ブレーキ機構の所定の位置が達成されるまで、各ブレーキにおいて圧力が供給される。例えば、(遅れなしの)パッドの接触までまたは最小のクリアランス、例えば0.4mmのクリアランスまで。各位置はセンサ機構によって認識され、ブレーキシステムは、操作装置の発生間隔に基づき、増圧を認識することができる。
【0027】
このようにして、車両の全てのブレーキを制動準備させることができ、個々のブレーキの状態(例えば、それぞれ異なるホイールにおいて異なるクリアランスまたは異なるパッド摩耗)に左右されずに同時に応答させることができ、ひいては、車両全体のより良好な減速を達成することができる。
【0028】
制動準備は、運転者支援システム、例えば、距離レーダ、交通情報システム、車車間通信、交通案内システムによって要求されてもよい。プロセス安全パラメータでのブレーキの運転が可能である。なぜならば、情報がリニアセンサから供給されるからである。したがって、クリアランスを状況的に安全な最小量に調整することができ、適切な作動器が使用される場合には、必要に応じて、減少させることも、増加させることもできる。
【0029】
さらに、それぞれ異なるライン長さもしくはそれぞれ異なるクリアランス、摩耗状態およびブレーキ剛性に応答するために、車両におけるブレーキの種々異なる状態パラメータに応じて、制動信号の動的なプレドミナンスを設定することも可能である。
【0030】
別の有利な用途は、例えば被牽引車両において、複数のブレーキに対して1つの圧力モジュレータしか提供されていない場合に与えられている。
【0031】
ここでは、通常、圧力モジュレータにおいて、複数のブレーキを応答させる1つの固定の圧力が設定される。これによって、それぞれ異なる車軸を時間を遅らせて操作することができる。しかしながら、状態パラメータが(センサにより検知されて)ブレーキに供給されると、作動器と共に応答時間が変化させられ、例えば、それぞれ異なるホイールのそれぞれ異なる摩耗が考慮され、クリアランスの変化によってプレドミナンスが動的に適合されることにより、走行安定性のパラメータの範囲内で摩耗が補償されるようになっている。
【0032】
使用にわたってブレーキの状態パラメータを変化させることに基づき、欠陥状態、例えば操作における過度に高い作用損失(ヒステリシス)を認識することができる。
【0033】
これによって、例えば、有利には、構成部材の故障を推測することができる。一例として、回動レバーの塑性変形が操作システムの難動性を引き起こしてしまう。この難動性は、特性線の変化によりセンサによって読取り可能である(図面参照)。また、レバー支承部、ブリッジ支持部等における機構の支承箇所の故障を認識することもできる。また、パッドガイドまたはキャリパガイドにおける誤機能を認識することもできる。
【0034】
パッドの接触後に求められるセンサ線の経過によって、ブレーキの剛性を求めることが可能となる。
【0035】
システムの剛性は、加圧ユニットの剛性とパッドの剛性とから明らかとなる。このパッドの剛性は、パッド残厚に応じて変化させられる。ここでも、運転時間にわたるブレーキの状態値の動的な変化に応答することができ、これによって、より迅速に調整を行うことができ、その際、このための空気はほとんど消費されない。
【0036】
加圧ユニットの機械的な故障、例えばブレーキキャリパにおける破損は、圧力・変位関係の劇的に変化させられる経過によって認識することができる。
【0037】
このような欠陥状態は引っ掛かりを招き、ブレーキの誤機能または不十分な制動作用に繋がってしまう。
【0038】
欠陥状態は、キャビン内で車載工具に表示し、調整ユニットに記憶し、運転中に読み出すことができるか、または電気通信機器によってスマートフォンに表示することができるか、または運送業者もしくはフリートマネージメント機器に伝送することができる。
【0039】
最も好ましい事例では、目下の走行状態が許せば、ブレーキシステムによって、欠陥のあるブレーキの運転を減らし、回避することができる。例えば、低い圧力範囲内での適合制動時に、引っ掛かるブレーキの操作を省略することができる。緊急制動時には、欠陥状態が遷移させられ、全てのブレーキに十分なブレーキ要求が課せられる。
【0040】
このように構成されたブレーキを備えたブレーキシステム、センサおよびセンサを評価する方法では、操作の回数、制動圧および操作ストロークに基づき、ブレーキの目下の損傷を算出するおよび/または見込まれ得るブレーキの寿命またはブレーキの今後の耐用年数に対する期待値を特定することが可能である。
【0041】
本発明は、請求項9記載の、車両の常用ブレーキを状態監視する装置および請求項10記載の、車両のブレーキシステムを運転する装置も提供する。
【0042】
請求項9の、車両、特に商用車の常用ブレーキを状態監視する装置は、ブレーキを状態監視する方法の複数のステップを実施しかつ補足的または代替的に実現するように構成された複数のユニット、つまり、
a) 常用ブレーキの構成要素の、リニア型の変位検出ユニットにより検出された位置を表す位置信号を読み込むインタフェースと、
b) 常用ブレーキの少なくとも1つの状態パラメータを求めるために、位置信号を評価するユニットと、
c) 常用ブレーキの状態パラメータをインタフェースにおいて供給するユニットと
を有している。
【0043】
少なくとも1つの常用ブレーキと、この常用ブレーキを状態監視する前述した装置とを有する、車両、特に商用車のブレーキシステムを運転する装置は、以下のユニット、つまり、
a) 常用ブレーキの状態パラメータを、常用ブレーキを状態監視する装置のインタフェースから読み込むインタフェースと、
b) 状態パラメータを評価するユニットであって、評価された状態パラメータとブレーキ要求信号とを用いてブレーキ制御信号を求め、これによって、常用ブレーキの制動準備および補足的または代替的に所望の状態を設定する、状態パラメータを評価するユニットと、
c) 常用ブレーキを制御するために、ブレーキ制御信号を供給するインタフェースと
を有している。
【0044】
車両の常用ブレーキ用の変位検出ユニット、特にリニア型の変位検出ユニットは、常用ブレーキの構成要素の、特にリニア型の変位検出ユニットにより検出された位置、特に時間または時間経過にわたる位置を表す位置信号を供給するように構成されている。常用ブレーキの運動させられる構成要素は、光学的なマーキングを備えていてよい。このマーキングはレーザまたはLEDによって走査され、この反射が相応のフォトダイオードによって評価される。代替的には、変位検出ユニットが、例えばドップラー原理に従って働いてよい。変位検出ユニットの変化形態は、抵抗変化またはインピーダンス変化を検知することができる。したがって、変位検出ユニットを廉価に実現することができる。
【0045】
本発明は、請求項10記載のブレーキおよび請求項11記載のブレーキシステムも提供する。
【0046】
車両、特に商用車用のブレーキは、このブレーキを状態監視する前述した装置と、補足的または代替的に、前述した変位検出ユニットの相応の変化形態とを有している。
【0047】
車両、特に商用車用のブレーキシステムは、1つの車軸に配置された第1のブレーキと、車両長手方向軸線に関して、車軸の、第1のブレーキと反対側で車軸に配置されたか、または別の車軸に配置された少なくとも1つの第2のブレーキと、第1のブレーキと少なくとも第2のブレーキとを制御するように構成された、前述したようなブレーキシステムを運転する装置とを有している。
【0048】
相応の車両は、前述したブレーキシステムを有している。有利には、車両の複数のブレーキは均等に消耗され、車両は、本発明に係るブレーキシステムなしの車両と比較して、短い制動距離を有している。このことは、交通安全性を向上させる。
【0049】
上述した装置は、概して、制御機器と解釈することができる。制御機器は、本発明に係る方法の変化形態の複数のステップを相応のユニットにおいて実施、実行もしくは実現するように構成することができる。制御機器は、電気的なユニットまたは電気的な回路、例えば集積回路と解釈することができる。また、制御機器は、調整ユニット、ECUまたは制御ユニットと解釈することもできる。制御機器は、電子的なブレーキシステムの一部であってよい。制御機器は、適切なインタフェースを介して信号を送受信するように構成することができる。また、制御機器によって、本発明の根底にある思想を効率よく実現することもできる。
【0050】
制御機器は、本発明では、電気的なユニットと解釈することができる。このユニットはセンサ信号を処理し、このセンサ信号に応じて制御信号および/またはデータ信号を送信する。制御ユニットのインタフェースは、ハードウェアおよび/またはソフトウェアにより構成することができる。ハードウェアによる構成では、インタフェースが、制御ユニットの種々異なる機能を有する、例えば、いわゆる「システムASIC」の一部であってよい。しかしながら、インタフェースは、固有の集積回路として構成されていてもよいし、少なくとも部分的に個別の部品から成っていてもよい。ソフトウェアによる構成では、インタフェースがソフトウェアモジュールであってよい。このソフトウェアモジュールは、例えば、別のソフトウェアモジュールに並んでマイクロコントローラに存在している。
【0051】
また、プログラムコードを備えたコンピュータプログラム製品も有利である。プログラムコードは、機械可読の媒体、例えば半導体メモリに記憶することができ、コンピュータプログラム製品が制御ユニットまたは制御機器において実行される場合に、前述した複数の実施の形態のうちの1つに記載の方法を実施するために使用される。
【0052】
なお、本発明に係る方法は、電子的なブレーキシステム(EBS)用のソフトウェアのアップデートを介して、実地運転または実地試験において求められるような新たな欠陥状態が格納されるように更新することができる。こうして、ブレーキの運転状態をさらに最適化することができる。
【0053】
以下に、本発明を複数の実施例に基づき図面を参照しながら詳しく説明する。