(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
特に、車両蓄電池(1)用の蓄電池監視システムであって、前記システムが、蓄電池端子(11)および少なくとも1つの電子制御ユニット(3)に接続された電圧計(2)を備え、前記蓄電池監視システムが、
(A)蓄電池電圧から、蓄電池健康状態(SoH)、蓄電池充電状態(SoC)、および前記蓄電池電圧からの待機電流を推定するための電圧減衰率(VDR)を計算するステップを有し、ステップ(A)は、
A1)前記蓄電池(1)の捕捉電圧(V1、VR1、VR2)の特定の時間(キーオン、TR1、TR2)を前記電圧計(2)に知らせ、
A2)前記蓄電池(1)から捕捉された前記電圧値(V1、VR1、VR2)を受け取り、
A3)各式から前記蓄電池健康状態(SoH)、前記蓄電池充電状態(SoC)、または電圧減衰率に関する値を計算し、
(B)計算された蓄電池健康状態(SoH)、蓄電池充電状態(SoC)、および電圧減衰率(VDR)というパラメータを、予め定義された各限界値(SoHL、SOCL、VDRL)と比較するステップと、
(C)パラメータのいずれかが各予め決められた限界値と異なる場合に警告サインを提供するステップと、
を有する、蓄電池監視システム。
前記電子制御ユニット(3)は、電圧計(2)をさらに備え、前記電圧計が、少なくとも1つのフィルタ(21)、電圧分割器(22)、およびA/D変換器(23)を備える、請求項2に記載のシステム。
【背景技術】
【0003】
自動車用蓄電池は、以下のような車両動作に不可欠な機能を備え、すなわち、
エンジンが動作している場合に、車両の電子システムに損傷を与える可能性があるため、電圧変動を吸収するフィルタとして作用するオルタネータ電圧を安定させること、
オルタネータの発電容量が必要な容量よりも少なく、電気的なバランスが負の場合の、オルタネータの電力補完、
内燃機関(ICE)を始動するための始動機関および点火システムに電力を供給すること、および、
オルタネータがオフの場合、待機電流(IOD)を持つ車両の蓄電池に給電する。
【0004】
蓄電池の自然な磨耗は充電能力を低下させ、したがって、その機能性を損なう。したがって、運転手を驚かせないために、蓄電池健康状態を監視することが不可欠である。この状況は、冷始動システム(アルコールまたはフレックスエンジン)を備えた車両において特に重要であり、ICEが始動する前に、蓄電池が燃料一次加熱に十分な電力を供給すべきである。
【0005】
待機電流は蓄電池に対する危険性がある。というのも、高い場合、蓄電池電力を消費してICEを起動できなくする可能性があるためである。したがって、蓄電池放電による運転手のトラブルを回避するために、このパラメータを監視する必要がある。
【0006】
インテリジェント・蓄電池・センサ(IBS)と呼ばれる特定の電子部品は、特定の電流センサを介して
待機電流を計算し、蓄電池充電状態および健康状態を評価するために、既に世界の自動車産業で使用されている。市場および特許データベースには、充電状態(米国特許第7,423,408号および米国特許第8,386,199号),健康状態(米国特許第7,741,849号)、およびエンジン始動時の電圧
降下(米国特許第8,386,199号)などのこれらの蓄電池パラメータを測定するいくつかのシステムがある。しかし、検索すると、センサおよび特定のモジュールを使用せずに、待機電流または蓄電池容量を判定することに関する文書は見出されなかった。電圧
降下は、公称蓄電池電圧とICE起動中に発生する最小蓄電池電圧(電圧
降下)との差(ボルト)で定義することができる。それにもかかわらず、特定の車両での使用の可能性を正確に示すために、蓄電池電圧
降下を車両動作パラメータと結び付ける文書は、当該技術分野において見出されていない。
【0007】
前記センサは、車両ICEをオフにするためにこの情報を使用する、例えば、始動および停止システムなどの、システムのための必須要件である、全ての蓄電池診断を確認し、通知する役割を果たす。このシステムでは、制御モジュールは、IBSを介していくつかの蓄電池パラメータを受信して、始動エンジンを再び作動させてICEをオンにし、システムに対する安全性および信頼性を促進することができるようにすることを保証する。これにより、環境問題の点で自動車性能を最適化し、燃料消費量を削減し、結果として、排出レベルを低減する。
【0008】
蓄電池診断の重要性、特に、複雑な電子アーキテクチャを持ち、蓄電池の信頼性を高める必要のある車両の場合、IBSは必須要素になる。その重要性にもかかわらず、IBSは、潜在的に故障する可能性のある別の要素を導入するだけでなく、車両に高いコストがかかる。さらに、インテリジェント・蓄電池・センサ(IBS)は、上記のように、システムの信頼性と安全性とを確保するために、その複雑さのために車両のコストを増大させ、追加のセンサと冗長ロジックとを必要とする始動および停止システムで使用される。
【0009】
現在ブラジルおよび他の国で販売されている車両には、単一の構成要素にグループ化されている場合とされていない場合がある、様々な電子ユニットが設けられている。これらのユニットは、窓制御、ドア開放装置、照明制御、ICE統合制御などの車両機能に関連する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の基本原理によれば、高コストでありIBSとして知られている特定のセンサを用いることなく、車両の蓄電池状態を効率的に制御し続けることができる。したがって、本発明は、
図1に示すように、蓄電池(1)と電子制御ユニット(3)との間に電気的に結合された電圧測定回路(2)のみを使用して、前記制御ユニット(3)が、絶えず、蓄電池状態(1)を評価することを可能にすることができる。
【0022】
したがって、前記電圧計(2)は、蓄電池(1)から供給された電圧を蓄電池極(11)から直接受け取るフィルタ(21)を備える。前記フィルタ(21)は、蓄電池電圧(1)を比例して減少させることを意図した電圧分割器(22)に接続され、出力において、電圧比例アナログ値をデジタル信号に変換するA/D変換器(23)に接続される。本発明の別の実施形態では、フィルタ(21)、電圧分割器(22)、およびA/D変換器(23)を備える前記電圧計(2)が電子制御ユニット(3)の一体部分である。
【0023】
電圧計によって出力で生成された前記デジタル信号は、車両(図示せず)に埋め込まれた電子制御ユニット(3)ライン(34)のそれぞれのデジタル入力に供給される。より具体的には、前記電子制御ユニット(3)は、通常のI/O接続(35)に加えて、とりわけ、少なくとも1つのプロセッサ(31)、少なくとも1つのメモリ(32)、および少なくとも1つのタイマ(33)を備える。電子制御ユニット(3)の前記I/O接続(35)に関して、および車両自動化レベルに従って、接続は、離散的または個別(センサ、アクチュエータなどの排他的接続)とすることができ、または車両CANもしくはイーサネットネットワークとの接続を提供することができ、これにより、様々な車両センサからの全てのデータならびに車両に存在する様々な個々のアクチュエータへの制御信号を送る。したがって、車両インフラストラクチャによれば、電圧計(2)によって供給されるデジタル信号は、車両CAN/イーサネットネットワーク(図示せず)との電子制御ユニット(3)のデジタル入力(34)またはI/O接続(35)から電子制御ユニット(3)に直接供給することができる。
【0024】
したがって、電圧計(2)によって供給されたデジタル信号は、電子制御ユニット(3)によって受信され、電子制御ユニット(3)は、以前に定義された方法論的手順に従ってそれを処理する。特に、前記電子制御ユニット(3)は、以下で詳細に説明される分析ルーチンを実行するために、読み取られたまたは以前に供給されたパラメータおよび変数を格納するためにメモリ(32)を使用する。
【0025】
さらに、およびあるいは、本発明のシステムは、電子制御ユニットを備えていない車両にも実装することができる。この場合、蓄電池状態を分析する方法論的ステップは、プロセッサなどを備えていないが、個別の電子部品のみを備える1つまたは複数の電子回路によって処理することができる。
【0026】
蓄電池充電状態、蓄電池健康状態、および
電圧減衰率を決定するために、いくつかのコンセプトが開発され、次いで、車両と実験室で検証された。本システムが提供するパラメータのコンセプトを以下に説明する。
【0027】
健康状態−SoH
蓄電池健康状態は、蓄電池の公称状態に関連した蓄電池の容量をパーセンテージで表した、蓄電池の経年劣化の指標である。したがって、蓄電池健康状態は、オルタネータから供給され、車両電気電子システムにもたらされる、蓄電池によって蓄えることができるエネルギーの量に直接影響する。
【0028】
開発されたシステムは、耐用年数にわたる鉛酸電池の特性の変化を考慮に入れている。不可逆的な反応および劣化は、内部構成要素の老化および腐食、ガス
処理による水の損失、およびサイクルによる活性物質の損失に起因する。さらに、蓄電池は酸性
層状化および硫酸化を有する可能性があり、これも蓄電池健康状態を低下させる。
【0029】
開発された方法は、ICE始動中の蓄電池電圧を考慮に入れ、始動(電圧
降下)中に検出される最小電圧は、
図3に示すように蓄電池健康状態に比例する。
【0030】
発生した電圧
降下は、電流密度の急激な増加によるものであり、硫酸溶液の硫酸イオン(
SO4−2)のプレートへの移動を促進する。一旦排水されると、電解液は、蓄電池電圧を維持するために迅速に拡散することができない。放電の瞬間的性質のために、限られた量の
SO4−2のみが
PbSO4に変換される。この強力で瞬間的な放電段階の後、電解質は回復し、電圧は以前のレベルに戻る。換言すれば、蓄電池の化学反応速度は、エンジン始動中に要求される電流を供給するのに十分ではなく、蓄電池(1)端子(11)電圧が低下する理由は、「電圧
降下」として知られる低下である。
【0031】
タイミングtに依存し、持続時間
t1を有するプロファイル放電
P(t)を受けると、蓄電池電圧は最小値
Vminを示す。特定の用途では
V1を放電する間に許容される最低電圧と新しい蓄電池の最低電圧
Vnewを、蓄電池健康状態を定義するために使用し、
健康状態SoH=(V
min−
V1)/(V
new−
V1) (式1)
SoHは、起動中の蓄電池電圧に基づいて計算される蓄電池健康状態であり、
V1は、車両の構成に基づいてICEを始動する間の蓄電池最低許容電圧であり、
Vnewは、
ICE起動の間に測定される新しい蓄電池の最低電圧であり、
Vminは、ICE起動の間に測定される
最低蓄電池電圧である。
【0032】
具体的には、ICE起動動作の間の蓄電池電圧に基づいて算出された、蓄電池健康状態に対して得られた値が、0〜1の数値であり、1に近いほど良好な蓄電池健康状態を示す。
【0033】
パラメータ
Vminは、蓄電池電圧
降下としても知られており、本発明による、システムに設けられた車両で使用される蓄電池に関する。前記パラメータは、上記のように、ICE始動動作中に蓄電池端子で測定される最低電圧を示している。一方、Vnewは、同じコンセプトであるが、新しい蓄電池で測定された最低電圧である。特に、新しい蓄電池の電圧
降下値は、システムに以前に通知されたパラメータである。
【0034】
最後に、
放電プロファイルP(t)(すなわち、ICE始動)中の最低許容電圧(
V1)は、車両電子モジュールの適切な動作を保証するための制限限界として使用され、これは、そのようなモジュールを制御するマイクロコントローラが、その接続を維持できるように制限された電源電圧範囲を有するからである。
【0035】
同様に、始動および停止車両では、蓄電池健康状態パラメータは、このシステムでは蓄電池が
より必要とされ、充放電のサイクルが一定しているため、従来の車両(始動および停止無し)に比べてより制限的になり、蓄電池健康状態の劣化を早めるであろう。
【0036】
このように、本システムは、電圧に応じて蓄電池健康状態を診断することを目的としている。したがって、例えば、「キーオン」の位置へのイグニッションキーの動きが検出されて、ICEをオンにする運転者の意図が検出されるとすぐに、電子制御ユニット(3)は、蓄電池(1)で測定された電圧に関連する電圧計(2)からの信号を受信するように、ライン(34)を介して電圧計(2)を作動させる。ICE始動中に電圧
降下(
Vmin)を得るためには、電子制御ユニット(3)が、報告された電圧値を比較し、電圧計(2)によって測定された最低値を選択するだけでよい。
【0037】
ICE始動中に電圧
降下(
Vmin)値が検出されると、電子制御ユニット(3)は、メモリ(32)に予め格納されている値(
V1)および(
Vnew)を取り出し、次いで、蓄電池(1)の健康状態(SoH)値を、式1(これも以前にメモリ32に格納されている)を使用して計算する。最後に、計算されたSoH値は、以前にメモリ(32)に格納された値(
SoHL)と比較される。したがって、計算されたSoH値が限界値(
SoHL)よりも小さい場合、本システムは、車両蓄電池(1)がもはや完全な動作状態にないとみなし、運転者にこの事実を警告する。このような警告サインは、車両ダッシュボード(図示せず)上の故障表示によって行うことができる。やはり、必然的に、前記障害指示はメモリ(32)にログを生成し、OBDII接続から回復することができる。
【0038】
換言すると、特に、電圧
降下(
Vmin)から車両に搭載された蓄電池(1)の健康状態(SoH)を算出する、蓄電池監視方法は、車両の内燃機関を始動(キーオン)する意図を特定するステップと、エンジン始動中に蓄電池(1)の電圧を測定するステップと、電圧
降下(
Vmin)を識別するステップと、を備える。さらに、前記方法は、
SH1)次の式を使用して、電圧
降下(
Vmin)および車両の構成(
V1)に基づいて、蓄電池健康状態(SoH)を計算するステップであって、
SoH=(
Vmin−
V1)/(
Vnew−
V1) (式1)
ここで、SoHは、始動機能中の蓄電池電圧に基づいて計算された蓄電池健康状態であり、
V1は、車両の構成に基づいてICEを始動する間の蓄電池最低許容電圧であり、
Vnewは新しい蓄電池の電圧
降下であり、
Vminは、ICE始動中に測定された蓄電池電圧
降下である、ステップと、
SH2)蓄電池(1)の健康状態(SoH)の計算値を限界値(
SoHL)と比較するステップと、
SH3)SoH値が限界値
SoHL未満である場合、警告障害サインを登録および/または送信するステップと、
を備える。
【0039】
充電状態(SoC)
充電状態は、蓄電池の充電残量であり、定格充電のパーセンテージで表される。
【0040】
蓄電池充電状態のSoC判定は、蓄電池の種類および使用される用途によって多かれ少なかれ複雑になるという問題があるであろう。
【0041】
次の式は、蓄電池充電状態のコンセプトを示している。
充電状態(SoC)=(現在の充電量)/(充電総量) (式3)
ここで、
現在の充電量は、蓄電池休止電圧測定値から計算されたパラメータであり、前記測定値は、ICEからの接触時間
TR1がオフになった後にとられ、
総充電量は、新しい状態、すなわちその定格負荷に対応する蓄電池満充電に対応する。
【0042】
鉛酸蓄電池では、
図4に示すように、休止電圧とそれぞれの充電状態との間に既知の依存性が存在する。これは、休止電圧、すなわち、蓄電池が影響を受ける再充電または放電の影響を取り除くのに十分な、休止時間後、エンジンが停止(キーオフ)した後に測定された蓄電池電圧、として理解される。
【0043】
提案システムでは、蓄電池休止期間後に良好な相関関係を有する蓄電池充電状態である休止電圧特性を用いる。実施された試験では、蓄電池の最低休止時間(
TR1)は、キーオフ後約4時間であることが判明した。このようにして、ICEの停止が検出されるとすぐに、タイマ(33)は、電子制御ユニット(3)メモリ(32)に予めセットされて格納された値(
TR1)に達するまでの経過時間のカウントを開始する。このとき、電圧計(2)は蓄電池休止電圧(
VR1)を捕捉し、デジタル値に変換し、そのデジタル値が電子制御ユニット(3)に供給される。
【0044】
値(
VR1)が電子制御ユニット(3)によって受信されると、
図4に示すように、休止電圧と充電状態との相関から蓄電池(1)の充電状態(SoC)を計算する。したがって、電子制御ユニット(3)のメモリ(32)には、前述したように、車両蓄電池(1)と同様の特性を有する新しい蓄電池を使用して実験室で行われた
図4のグラフに定義された曲線特性が予め供給される。さらに、前記曲線は、関数もしくは関数群として、または表として、メモリ(32)に供給することができる。本発明の好ましい実施形態では、休止電圧と充電状態との間の相関を表す曲線(
図4)が、処理を保存する解決策である表として格納される。
【0045】
最後に、SoCの測定値を予めメモリ(32)に格納されている限界値(
SoCL)と比較する。したがって、計算されたSoC値が限界値(
SoCL)未満である場合、本システムは車両蓄電池(1)がもはや完璧な動作状態にないとみなし、運転者にこの故障について警告する。そのような警告サインは、車両ダッシュボード(図示せず)上のエラー指示によって同様に提供することができ、必然的にOBDII接続から検索することができるメモリ(32)にログを生成する。
【0046】
換言すると、本発明によれば、特に車両に搭載される蓄電池(1)の充電状態(SoC)を算出するための蓄電池監視方法が、
SC1)エンジン(ICE)が停止(キーオフ)されたことを識別するステップと、
SC2)ICEが停止された後、休止時間(
TR1)をカウントして待機するステップと、
SC3)蓄電池(1)の極(11)における電圧(
VR1)を測定するステップと、
SC4)以下の式を使用して蓄電池充電状態(SoC)を計算するステップであって、
SoC=(現在の充電量)/(総充電量) (式3)
ここで、現在の充電量は蓄電池休止電圧(
VR1)の測定値から計算されるパラメータであり、総充電量は、新しい状態、すなわち定格負荷に対応する蓄電池満充電に対応する、
ステップと、
SC5)蓄電池の計算された充電状態(SoC)を充電状態限界値(
SoCL)と比較するステップと、
SC6)SoC値が充電状態限界値
SoCLよりも小さい場合、警告障害サインを登録および/または送信するステップと、
を有する。
【0047】
さらに、休止電圧(
VR1)と現在の充電量との間の前記相関が、新しい蓄電池を試験するために確立される。前記相関は、
図4に例示的に示されているように、値相関式として、またはおそらくメモリ(32)に入力された集計値から使用することができる。
【0048】
実施された試験によれば、前記休止時間(
TR1)は約4時間、好ましくは、約1時間の変動であるべきであると定義することが可能であった。
【0049】
待機電流
を推定するための電圧減衰率
蓄電池の深放電は、100%放電の場合であっても、直ちに劣化を引き起こすことはないが、鉛酸電池は、200サイクルの充放電を保持することができる。しかしながら、この種の挙動は、自動車産業における商業的用途、特に、サポートされる蓄電池およびシステムの信頼性に関しては容認できない。
【0050】
その結果、蓄電池監視システムが車両に対して正確かつ信頼できることが非常に重要である。
待機電流は、蓄電池の製造元または自動車産業の管理下にあるとは限らない重要な要素であるが、ユーザが車両の購入後に電子機器を取り付けることができるため、本来の蓄電池仕様を損なう可能性がある。
【0051】
より良く理解するため、蓄電池を連続的に放電する電子モジュールの静止電流のために、蓄電池が車両電子システムに接続される場合に理想的な休止電圧状態に到達することはないことを理解することが重要である。したがって、ICEが停止され、
待機電流になっても、蓄電池からは電流が放電される。
【0052】
電圧減衰率を決定するための方法論は、蓄電池の充電または放電の影響を排除するために車両が停止(キーオフ)のままであった時間を分析する。休止時間(
TR2)に達すると、本システムは経時的な電圧評価を開始する。ここでは、予め決められた時間間隔、例えば、1時間で測定された蓄電池電圧降下であるパラメータmV/h(ミリボルト/時)が使用される。
【0053】
このパラメータを計算する式は以下である。
電圧減衰率=(V
Sbi−V
Sbf)/(T
Sbf−T
Sbi) (式4)
ここで:
電圧減衰率は、イグニッションがオフの場合
における前記蓄電池の電圧が降下する比率であり、
V
Sbiは休止
時間後に測定された蓄電池電圧であり、
V
Sbfは車両ネットワークを作動させる前に測定された蓄電池電圧であり、
T
Sbiは、休止
時間の終了後の初期時間であり、
T
Sbfは休止
時間の終了後の最終時間である。
【0054】
図2のフローチャートは、上で定義した方程式の変数を得るために、本発明のシステムによって提案される方法の様々なステップを示す。
図2は、以下のステップを示す。
S200−開始
S210−エンジンオフおよびキーオフ
S220−最後に「キーオフ」してから
TR2時間が経過したか?
S230−V|
VDR|=VBAT;|T|
VDR|=時間(サンプル/時)
S240−ネットワーク
が起動するか?
S250−「x」分後?
S260−F=V|
VDR|=Vbat;T|
VDR|=時間
S270−終了
【0055】
したがって、
待機の間の蓄電池(1)消費電流と、車両が
待機のままでいる時間の期間における電圧
降下との間の対応関係を証明する理論的基礎が確立される。
【0056】
本監視システムは、この計算を使用して、蓄電池を放電することができる蓄電池電気システムの静止電流を決定する。
図5A、
図5B、および
図5Cにて理解し得るように、この測定の初期の時間にはランダムな挙動が存在する。その結果、本発明のシステム試験で実施される分析によれば、車両の電気システムを診断し、
待機電流の大きさを決定するために式4から得られるパラメータを使用するため、本システムは少なくとも10時間(
TR2)待たなければならないことが確立された。
【0057】
動作中、ICEの停止が一度検出されると、タイマ(33)は、電子制御ユニット(3)のメモリ(32)に予め設定され格納された値(
TR2)に達するまでの経過時間のカウントを開始する。このとき、電圧計(2)は蓄電池休止電圧(
VR2)を捕捉し、デジタル値に変換し、そのデジタル値が電子制御ユニット(3)に供給される。同時に、タイマ(33)は、次の時間間隔をカウントし始め、蓄電池(1)の休止電圧(
VR2)の次の読み出しが行われる。
【0058】
メモリ(32)に適切に格納された値(V
R2)の全てが電子制御ユニット(3)によって受信されると、電子制御ユニット(3)は、測定された休止電圧(V
SbiおよびV
Sbf変数)と最初および最後の電圧読取値(T
SbiおよびT
Sbf変数)との間の経過時間、すなわち、車両が上記の式4で示される静止(オフ)のままであった時間との間の相関によって蓄電池(1)
電圧減衰率を計算する。
【0059】
最後に、待機電流
の値を推定するための電圧減衰率は、予めメモリ32に格納されている限界値(Sb
L)と比較される。したがって、
電圧減衰率の計算値が制限値(Sb
L)より大きい場合、本システムは、車両蓄電池(1)に過度の電流が流されているとみなし、運転者にこの不具合を警告する。前記警告サインは、車両ダッシュボード(図示せず)上の故障指示によって同様に行うことができ、必然的に、OBDII接続から検索することができるメモリ(32)にログを生成する。
【0060】
換言すると、特に、車両に搭載される蓄電池(1)の待機電流
を推定するための電圧減衰率の計算のための本発明の蓄電池監視方法は、
SI1)エンジン(ICE)が停止(キーオフ)されたことを識別するステップと、
SI2)ICEが停止された後、休止時間(T
R2)をカウントして待機するステップと、
SI3)蓄電池(1)の極(11)における電圧(V
R2)を測定するステップと、
SI4)以下の式を使用して
電圧減衰率を計算するステップであって、
Sb=(V
Sbi−V
Sbf)/(T
Sbf−T
Sbi) (式4)
ここで、Sbは、イグニッションがオフ(キーオフ)した場合に
おける蓄電池の電圧が降下する比率であり、V
Sbiは休止時間(T
R2)後に測定された蓄電池電圧であり、V
Sbfは、ネットワークが起動する前に測定された蓄電池電圧であり、T
Sbiは、休止
時間の終了後の初期時間であり、T
Sbfは休止
時間終了後の最終時間である、
ステップと、
SI5)
待機電
流を推定するための蓄電池の電圧減衰率と電圧減衰率限界値(Sb
L)とを比較するステップと、
SI6)
電圧減衰率がSb
L値よりも大きい場合、警告障害サインを登録および/または送信するステップと、
を有する。
【0061】
より詳細には
、ネットワーク
が起動する前に測定された蓄電池電圧(
VSbf)は、蓄電池極での電圧定時サンプリングによって得られる。さらに、メモリ内の不要なデータの蓄積を回避するために、それぞれの時間(
TSbf)における捕捉電圧読取値(
VSbf)、以前にサンプリングされた値、およびそれぞれのサンプリング時間を無視する。
【0062】
1時間以内に実行される蓄電池電圧の前記定時サンプリングは、予備試験で決定されたように、信頼できる結果を保証する。最後に、試験からも観察されるように、休止時間(
TR2)は約10時間、好ましくは、2時間のマージンであるべきである。そのような休止時間は、蓄電池(1)が干渉することなく電圧値が収集されることを保証する。
【0063】
実験結果
ICE開始中の電圧
降下に基づいた蓄電池健康状態SoHの決定
蓄電池健康状態を推定するために最小電圧を捕捉する戦略の検証は、制御された車両での実験によって得られた。前記車両(乗用車)は、車両に応じて数週間から数ヶ月にわたる期間中、蓄電池電圧の連続的な取得のために準備された。監視された車両の使用プロファイルが異なっていて、蓄電池の動作状況に有意性があることを示すことは重要である。
【0064】
蓄電池電圧を連続的に記録することに加えて、蓄電池電圧の取得により、キーオン、早期開始、開始遅れ、およびキーオフの登録が可能になった。エンジン水温は、早期開始と共に記録された。データ収集速度は、オペレーティングシステムに従って調整され、キーオフの場合は1Hz、キーオンの場合は100Hz、エンジン始動期間の場合は500Hzであった。
【0065】
図6は、本方法論を観察するために、同一の充電状態および異なる健康状態の蓄電池を備えた車両におけるエンジン始動中に得られた最小電圧記録を示す。各始動電圧記録は、エンジン始動時のエンジン水温を伴う。エンジン始動時の最小エンジン始動電圧と温度との相関を評価するとともに、蓄電池が配置されている場所の温度推定値を得ることを期待してエンジン水温を測定した。
【0066】
100%蓄電池健康状態の車両C1、C2、C3は、エンジン始動中に最も低い電圧
降下を示した。さらにグラフの下には、それぞれ、85%の蓄電池健康状態(車両C4)、75%の蓄電池健康状態(車両C5およびC6)、および47%の蓄電池健康状態(車両C7)の車両の電圧が示されている。このグラフから、偏差が観測されたが、エンジン始動中の最小電圧は蓄電池の経時劣化に関連することが分かる。
【0067】
さらに、ICE起動中に測定されたパラメータ「電圧低下」を検証するために、各蓄電池健康状態(SoH)は、当該技術の通常のパラメータから、すなわち、現在の状態(使用蓄電池)の蓄電池充電容量と(新たに生成された)新しい蓄電池とを比較することで、計算された。
【0068】
したがって、上述したように、エンジン始動時の最小電圧は、蓄電池健康状態およびその現在の充電容量に比例する。蓄電池健康状態とその現在の充電容量は、蓄電池寿命中の比例劣化を表す同様のパラメータである。
【0069】
具体的には、新しい蓄電池の基準容量である
Cnewパラメータと本用途で許容可能な最小容量である
Climitパラメータから、負荷容量に基づいて、以下に従って、蓄電池健康状態を確立することができる。
健康状態=(
Ccurrent−
Climit)/(
Cnew−
Climit) (式2)
ここで、
Ccurrentは、車両に搭載され、本監視システムによって評価される蓄電池容量であり、
Cnewは、新しい蓄電池の充電容量であり、
Climitは、車両が許容可能な最小充電容量である。
【0070】
図6のグラフに示された条件に対して式1および式2を使用することにより、実験室で得られた蓄電池健康状態と計算値との間の良好な対応関係を得ることが可能であり、車両蓄電池動作に許容可能な理想的で限定的な条件を観測する。
【0071】
個々の蓄電池健康状態をそれぞれ分析すると(
図6参照)、電圧
降下は低温で大きくなることが明らかになる。これは、高温ではICEオイルの粘度がより小さくなるため、その慣性トルクを低減することによってエンジンの始動が容易になるからである。その場合、温度は電圧
降下に比例するが、線形的な挙動を示さないことが分かるであろう。
【0072】
休止電圧による蓄電池充電状態SoCの決定
蓄電池健康状態の同じ検証データベースを使用して、休止電圧との相関によって蓄電池充電状態を決定することも可能である。このために、充電および放電の影響を除去するために特定の期間待つ必要がある。
【0073】
図7は、ICEが停止した後の蓄電池電圧曲線を示す。特定の非動作期間の後、電圧が、休止電圧として知られる安定電圧に達することが観察される。この電圧は蓄電池充電状態を直接示す。
【0074】
休止電圧と蓄電池充電状態との関係は、物理化学的な側面に依存する。すなわち、容量、プレートで使用される化学物質、および蓄電池電解質で使用される化学組成により変化する。
【0075】
電圧減衰率による待機電流の決定
待機電流
を推定するための電圧減衰率は、放電電流をそれらの電圧降下に関連させて異なる放電電流で蓄電池に投入する実験によって得られた。これは、34mA、140mA、および350mAの電流を選択したため、アフターマーケットの車両に搭載された電子機器に通常見られる待機電流値の範囲を表している。
【0076】
前記電流値は、100%の蓄電池充電状態で25℃、100%の蓄電池充電状態で70℃、および80%の蓄電池充電状態で25℃の3つの異なる動作条件で適用された。説明した3つの条件下での電圧変化率をそれぞれ
図5A、
図5B、および
図5Cに示す。
【0077】
グラフによって、放電電流が高いほど、mV/h単位での電圧
減衰率が大きいことが分かる。しかしながら、これらの変数間の関係は線形ではないことは明らかである。
【0078】
図5Aと
図5Bとの比較分析は、温度が上昇すると電圧減衰率が増加することを示している。この現象は、温度に伴って増加する蓄電池の自己放電によって説明することができる。
【0079】
図5Aおよび
図5Cを分析すると、80%の蓄電池充電状態は100%の蓄電池充電状態よりも高い
電圧減衰率を示したので、
電圧減衰率は蓄電池充電状態に反比例することが分かるであろう。
【0080】
結論
実験結果によれば、車両動作の特定の時間に測定された電圧によって蓄電池関連のパラメータを計算するための本方法論的解決策を証明することが可能であった。
【0081】
ICEを始動する際の電圧
降下は、経年蓄電池の方が電圧
降下が大きいため、蓄電池健康状態と関連していることが判明した。同じ蓄電池健康状態の場合には、より低い温度ではより高い電圧
降下が観察されたが、非線形的であったことが証明された。
【0082】
蓄電池休止期間における電圧の取得は、蓄電池製造者によって集計され、広く普及した蓄電池充電状態の値との対応を示した。それにもかかわらず、蓄電池が以前に充放電されていれば、前記関係は存在しない。
【0083】
イグニッションがオ
フである間、電圧減衰率は、蓄電池の放電電流に直接関係する。そのような相関は線形ではなく、なぜなら、電流の大きさが10倍になると、電圧減衰率はmV/hで約3倍に増加するからである。電圧低下率と放電電流との対応関係は、車両の
待機電流を計算するために使用することができる。
【0084】
蓄電池の低コスト診断は、運転者との対話のための新たなシナリオを作成し、構成要素の予防保守情報を受け取り、将来の現場での故障を防ぐことができる。
【0085】
最後に、上述した試験は、本発明で説明したシステムの実行可能性を確認する、すなわち、特定の時間で蓄電池(1)の電圧を捕捉する特定の方法をのみを用いて蓄電池(1)の状態を監視することが可能である。したがって、本明細書の解決法では、得られた結果を損なうことなく、蓄電池(1)の電圧および電流を監視する高価な特定センサ(IBS)の必要がなくなる。