(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アナログサンプリング回路構成は、前記ノイズ成分が抑制されるように、ノイズ成分の既知の特性に基づいて、選択された時点で前記感知信号をサンプリングするように構成される、請求項1に記載の指紋感知装置。
前記アナログサンプリング回路構成は偶数のサンプルホールド回路を備え、各サンプルホールド回路はキャパシタと前記キャパシタを制御するスイッチとを備え、全キャパシタが同一の容量を有する、請求項3に記載の指紋感知装置。
前記サンプリング制御部は、前記サンプルホールド回路を制御して、同数のサンプルが前記駆動信号の前記第一の電圧レベル及び前記第二の電圧レベルにて捕捉されるようにサンプリングを実施するように構成される、請求項4に記載の指紋感知装置。
前記少なくとも三つのサンプルホールド回路は、少なくとも二つの異なるサイズのキャパシタを備え、前記キャパシタの相対的サイズを重みと呼ぶ、請求項3〜5のいずれか一項に記載の指紋感知装置。
前記サンプリング制御部は、前記第一の電圧レベルにて捕捉されるサンプルに対する重みの合計が前記第二の電圧レベルにて捕捉されるサンプルに対する重みの合計と等しくなるように、前記サンプルホールド回路を制御するように構成される、請求項6に記載の指紋感知装置。
前記ADCは、正の入力と負の入力とを有する差動ADCであり、少なくとも一つのサンプルホールド回路が前記正の入力に接続され、少なくとも一つのサンプルホールド回路が前記負の入力に接続されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の指紋感知装置。
前記ADCは、単一入力を有するシングルエンドADCであり、少なくとも一つのサンプルホールド回路は、プラス記号を有するサンプルを提供するように構成され、少なくとも一つのサンプルホールド回路は、マイナス記号を有するサンプルを提供するように構成され、全サンプルの合計が前記単一入力に供給される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の指紋感知装置。
前記感知回路構成は、負の入力と、正の入力と、前記アナログ感知信号を提供する出力と、帰還キャパシタと、前記帰還キャパシタと並列のリセットスイッチと、増幅器と、を含む電荷増幅器を備える、請求項1〜12のいずれか一項に記載の指紋感知装置。
前記駆動信号の前記第一の電圧レベルV1と前記第二の電圧レベルV2との間の前記差は、少なくとも0.1Vである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の指紋感知装置。
複数の感知素子を備える容量性指紋感知装置にてノイズ低減する方法であって、前記指紋感知装置は、指と前記感知素子の感知構造との間の距離を示すアナログ感知信号を提供する感知回路構成と、前記指と前記感知構造との間の電位差の変化を提供する駆動信号回路構成と、を備える、方法において、前記方法は、
電位差の前記変化を提供する最大電圧レベル及び最小電圧レベルを有する少なくとも一つの駆動パルスを含む駆動信号を提供するステップと、
前記感知信号の少なくとも三つのサンプルを捕捉するステップであって、前記少なくとも三つのサンプルは、前記駆動信号が第一の電圧レベルV1にあるときに捕捉された少なくとも一つのサンプルと、前記駆動信号がV1とは異なる第二の電圧レベルV2にあるときに捕捉された少なくとも一つのサンプルと、を含む、ステップと、
前記少なくとも三つのサンプルの合計を形成するステップであって、前記サンプルは、前記合計が形成されたときに、ノイズ成分が抑制されるように適切な時間に前記感知信号から選択される、ステップと、
前記少なくとも三つのサンプルの前記合計からデジタル信号を形成するステップと、
を備える方法。
前記駆動信号を制御して、既知のノイズ成分の周波数の倍数に等しい周波数を有するパルス列を形成するステップ、をさらに含む、請求項16又は請求項17に記載の方法。
既知の周波数を有する方形波を含むノイズ成分に対して、前記駆動信号を制御して前記ノイズ成分と位相がずれたパルス列となるようにするステップ、をさらに含む、請求項16〜18のいずれか一項に記載の方法。
サンプルそれぞれのサンプリング時間でのノイズ信号の相対振幅に応じて各サンプルに重みを付与するステップであって、前記重みは、前記駆動信号の前記第一の電圧レベルにて捕捉されたサンプルの重みの合計が前記駆動信号の前記第二の電圧レベルにて捕捉されたサンプルの重みの合計に等しくなるように選択される、ステップ、をさらに含む、請求項16〜19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の概要】
【0008】
先行技術の上記の欠点をはじめとする欠点に鑑みて、本発明の目的は、指紋画像の捕捉中のノイズ抑制を容易にするアナログサンプリング回路を備える指紋感知装置を提供することである。また、指紋感知装置でのノイズ抑制方法が提供される。
【0009】
本発明の第一の態様によれば、指の指紋パターンを感知する容量性指紋感知装置が提供される。この容量性指紋感知装置は複数の感知素子を備える。各感知素子は、指による接触対象である保護誘電最上層と、最上層の下に配置される導電性感知構造と、指と感知構造との間の距離を示すアナログ感知信号を供給する感知回路構成と、を備える。指紋感知装置は、駆動信号回路構成と、アナログサンプリング回路構成と、アナログ・デジタル変換器(ADC)と、をさらに備える。駆動信号回路構成は、最大電圧レベル及び最小電圧レベルを有する少なくとも一つの駆動パルスを含む駆動信号を提供して、指と感知構造との間の電位差に変化をもたらすように構成される。アナログサンプリング回路構成は、感知信号をサンプリングするために配置される少なくとも三つのアナログサンプルホールド回路と、少なくとも三つのアナログサンプルホールド回路を個別に制御して、特定の時間にサンプルを捕捉し、これにより、少なくとも三つのサンプルを形成するサンプリング制御部と、を備える。少なくとも三つのサンプルは、駆動信号が第一の電圧レベルV
1にあるときに捕捉される少なくとも一つのサンプルと、駆動信号がV
1とは異なる第二の電圧レベルV
2にあるときに捕捉される少なくとも一つのサンプルと、を含む。アナログ・デジタル変換器(ADC)は、アナログサンプリング回路構成に接続され、少なくとも三つのサンプルの組み合わせを、感知構造と指との間の容量結合を示すデジタル感知信号に変換するように構成される。少なくとも三つのサンプルは、特定の時間に、ノイズ成分が抑制されるように、組み合わせが形成された場合に感知信号から捕捉される。
【0010】
この適用例の文脈では、用語「ポテンシャル(potential)」は、「電位」を意味すると理解する必要がある。
【0011】
このため、電位差の変化は、指と感知構造との間での基準電位に対する電位の時間的な変化を意味すると理解する必要がある。
【0012】
感知素子は、行と列とからなる配列にて有利に配置されてもよい。
【0013】
各感知構造は、平行板キャパシタの等価物が感知構造(感知板)と、指表面の一部と、保護被覆と、(指紋パターンの配置に応じて指表面の一部と保護被覆との間に部分的に存在する可能性のある任意の空気と)によって形成されるように、金属板の形態で有利に設けられてもよい。指と感知構造との間の電位差の変化に起因する感知構造が帯びる電荷の変化は、この平行板キャパシタの静電容量の表示である。これは、感知構造と指表面との間の距離の表示にもなる。
【0014】
被覆と呼ばれることもある保護最上層は有利には、厚さが少なくとも20μmであり、指紋感知装置の基底構造体を磨耗及び断裂のほか、ESDから保護するために高い絶縁耐力を有する。さらにいっそう有利には、保護最上層は約100μmの厚さであってもよい。いくつかの実施形態では、保護被覆は、500〜700μmの範囲の厚さであってもよく、これよりさらに厚くてもよい。
【0015】
各感知素子は、所定のシーケンスでの異なる測定状態間の遷移を含む所定の測定シーケンスを実行するように制御可能であってもよい。測定状態は、感知素子に含まれる回路構成に提供される制御信号の特定の組み合わせによって規定されてもよい。
【0016】
駆動信号回路構成は、最大電圧レベル及び最小電圧レベルを有する少なくとも一つの駆動パルスを形成するために、二つ以上の異なる電位間でスイッチングするように構成されたスイッチング回路構成を備えてもよい。これとは別に、あるいはこれに加えて、駆動信号回路構成は、時間的に変化する励起電位を提供するように構成された少なくとも一つの信号源を備えてもよい。
【0017】
駆動信号回路構成は、指紋センサ構成要素に含まれてもよく、次いで、指紋センサ構成要素の基準電位、例えば、センサ接地電位に対して時間的に変化する励起電位を有する駆動信号を提供してもよい。
【0018】
これとは別に、駆動信号回路構成は、指紋センサ構成要素の外部に設けられ、指紋センサ構成要素に接続されて、駆動信号を指紋センサ構成要素に対する時変基準電位として提供してもよい。この場合、駆動信号は、指紋感知システムが含まれる電子装置の装置接地電位に対して、その時変駆動電位を示してもよい。外部駆動信号回路構成を、指紋センサ構成要素に含まれるタイミング回路構成によって生成される制御信号を使用して制御してもよい。駆動信号回路構成はこのほか、励起信号回路構成と呼ばれる。
【0019】
少なくとも三つのサンプルの組み合わせは、サンプルの組み合わせがフィルタリングされた感知信号を効果的に形成するように、サンプルを加算又は減算することであると理解する必要がある。例えば、組み合わせは、サンプルの第一のサブグループとサンプルの第二のサブグループとの間の差であってもよく、第一及び第二のサブグループは互いに素であり、即ち、共通のサンプルを有しない。
【0020】
各サンプルは、サンプリング時間に感知信号を表す振幅を有すると考えることができる。さらに、各サンプルホールド回路は、サンプルがプラス又はマイナスの記号のいずれかを有すると認められるように正又は負の(接地)基準電圧のいずれかを提供するように構成され、これによって、サンプルが組み合わされるときにフィルタリング機能性を可能にする。
【0021】
このため、異なる時間に捕捉された「正」及び「負」のサンプルを組み合わせることにより、駆動信号の異なる電圧レベルに対して、結果として生じる感知信号を達成することができる。各AD変換のために、多数のアナログサンプルが捕捉され、その後に組み合わされて、AD変換対象の感知信号値を形成する。そのような一連のサンプルは、AD変換シーケンスと認めることができる。
【0022】
さらに、本発明は、サンプルが駆動信号に関連して捕捉される時間を選択し、サンプルを組み合わせることによって、フィルタリングされ復調された感知信号を結果として得て、AD変換前に感知信号の同相モードノイズを低減することができるという認識に基づいている。
【0023】
このため、本発明の種々の実施形態による感知装置では、AD変換の前にアナログフィルタリングが実施され、これにより、AD変換器のサンプリングレートとは独立したリアルタイムのフィルタリングが可能になる。これは、AD変換には時間がかかり、可能な限り迅速に指紋を捕捉することが望ましいため、特に有利である。同じような結果を達成するために高速AD変換器を使用してデジタル信号をデジタルフィルタリングすることは原理的に可能であるが、そのようなAD変換器は複雑であり、指紋感知装置に組み込むのに費用がかかる。
【0024】
さらに、以下に図示されるように、基本フィルタ機能性を達成するには三つのサンプルで十分であることがわかっている。さらに多くの数のサンプルホールド回路を使用して、対応するさらに多くの数のサンプルを捕捉すると、高次フィルタの構成がさらに容易になり、いっそう明確に定義された低域通過(LP)フィルタ、高域通過(HP)フィルタ又は帯域通過(BP)フィルタを、確立されたフィルタ理論に従って所望の周波数応答を有するように構成することが可能になる。
【0025】
二つ以上の駆動パルスを使用することができるフィルタを有することのこのほかの利点には、信号強度が失われないことが挙げられる。50Hzのノイズを例にとると、駆動パルスが一つのみ使用される場合、信号強度の半分が失われることになる。フィルタに適応性があることの別の利点には、異なるタイプの同相モードノイズに容易に適合させることができることが挙げられる。同相モードノイズは、負荷、充電器タイプ、接地などに応じて異なるタイプの装置によって異なることが多い。
【0026】
サンプリング回路構成は、各サンプルが駆動信号に関連して捕捉されるときを判定する予め定められたハードウェア設定によって制御することができ、あるいはサンプリング事象は、別個のAD変換シーケンスそれぞれに対して個別に制御することができる。未知の特性を有するノイズに対して、サンプリング回路構成は、多数の所定の設定を検査し、どの設定が最も低いノイズレベルを有する出力信号を生成するかを判定するように構成することができ、好ましい設定は、その後のAD変換シーケンスにて使用することができる。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、アナログサンプリング回路構成は、ノイズ成分が抑圧されるように、ノイズ成分の既知の特性に基づいて、選択された時点で感知信号をサンプリングするように有利に構成されてもよい。サンプリングの一般的な原理は、サンプルの結果の組み合わせが感知信号へのノイズ寄与の効果的な抑制又は相殺をもたらすように、サンプルを選択することである。ノイズ源として知られているものには、例えば、主電源電圧からの低周波(50/60Hz)正弦波ノイズ、又は充電器自体からの高周波スイッチングノイズを加えることがある充電器が挙げられる。この充電器では、スイッチング周波数は既知であると考えられる。ノイズ源として知られているものにはこのほか、スマートフォン又はタブレット型コンピュータなどの装置のタッチスクリーンを挙げることができる。このため、少なくとも部分的に既知の特性を有する特定の種類のノイズを抑制するように、駆動信号回路構成及びサンプリング回路構成を構成することが可能である。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、各サンプルホールド回路は、キャパシタと、キャパシタを制御するスイッチと、を有利に備えることができる。キャパシタベースのサンプルホールド回路が簡素で容易に実装される回路を提供する。この回路では、スイッチは、所要時間にサンプリングするためにサンプリング回路によって制御される。各キャパシタは、正又は負の基準電位に接続されて、対応する正及び負のオフセットをサンプル電圧に提供することができる。負の基準電位は、典型的には接地電位である。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、アナログサンプリング回路構成は偶数のサンプルホールド回路を備えてもよい。各サンプルホールド回路はキャパシタと、キャパシタを制御するスイッチと、を備え、全キャパシタが同一の容量を有する。これにより、サンプルホールド回路は等価になり、どのサンプルホールド回路がどのサンプリング事象に適切な時間に使用されているかを考慮する必要なしに、制御することができる。さらに、偶数のサンプルホールド回路に対しては、回路の半分を正の基準電位に接続し、残りの半分を負の基準電位に接続することができ、フィルタ機能性の構築に大きな柔軟性がもたらされる。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、サンプリング制御部は、サンプルホールド回路を制御して、同数のサンプルが駆動信号の第一の電圧レベル及び第二の電圧レベルにて捕捉されるようにサンプリングを実施するように有利に構成される。例えば、第一の電圧レベルにて捕捉されるサンプルは負であると考えられるのに対し、第二の電圧レベルにて捕捉されるサンプルは正であると考えることができる。これにより、異なる時間に捕捉されえるサンプル(各サンプルは正又は負のいずれか)を組み合わせて、所望のフィルタ処理されたサンプル値を形成することができる。それぞれのサンプルに対するプラス記号及びマイナス記号の帰属は、例えば、スイッチキャパシタ回路を使用して実装することができる。スイッチキャパシタ回路では、キャパシタのいずれかの側又はピン、即ち、「正」又は「負」が、サンプルを組み合わせるための共通のラインに接続されるかを選択することができる。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも三つのサンプルホールド回路は、少なくとも二つの異なる容量のキャパシタを備えてもよい。キャパシタの相対的容量を重みと呼ぶ。フィルタ機能性を形成する際のこのほかのオプションを可能にするために、異なるサンプルホールド回路に個別の重みを付与することができる。この重みは、ハードウェアでは異なる相対的容量のキャパシタによって具体化することができる。例えば、最小のキャパシタには重み「1」を付与することができ、2倍の容量を有するキャパシタには結果として重み「2」が付与される。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、サンプリング制御部は、第一の電圧レベルにて捕捉されるサンプルに対する重みの合計が第二の電圧レベルにて捕捉されるサンプルに対する重みの合計と等しくなるように、サンプルホールド回路を制御するように構成される。これは、基準レベルが「未知」であるか、ノイズのために大きな変動がある可能性があることによるものである。このため、出力の変化は信号の印加後に測定される。これを実施することにより、実際の基準レベルへの依存性が解消される。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、ADCは、正の入力と負の入力とを有する差動ADCであってもよい。少なくとも一つのサンプルホールド回路が正の入力に接続され、少なくとも一つのサンプルホールド回路が負の入力に接続される。差動ADCを使用する場合、負のサンプル、例えば、サンプルホールド回路を負の基準電圧に接続した状態で捕捉されるサンプルの全部をADCの負の入力に接続することができる。これに対応して、正のサンプルを正の入力に接続して、ADCが正のサンプルの合計と負のサンプルの合計との間の差に対応する出力信号を提供するようにすることができる。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、ADCは、単一入力を有するシングルエンドADCであってもよい。少なくとも一つのサンプルホールド回路は、プラス記号を有するサンプルを提供するように構成され、少なくとも一つのサンプルホールド回路は、マイナス記号を有するサンプルを提供するように構成され、全サンプルの合計が単一入力に提供される。言い換えれば、シングルエンドADCを使用する場合、組み合わせは同じように実施され、結果として得られるサンプル値が、変換されるADCの入力に提供される。これまでにも記載したように、減算機能を達成するために、キャパシタの向きを変えること、即ち、キャパシタに対するスイッチ設定に基づいてキャパシタのいずれかの側をADCの単一入力に接続することができるようにするスイッチを使用することができる。これにより、ADCへの入力ラインで減算が実施されるように、キャパシタスイッチ設定によってサンプルの記号を選択することができる。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、駆動
信号回路構成は、少なくとも一つの方形パルス、方形波、少なくとも一つのsincパルス又は正弦波を含む駆動信号を提供するように構成されてもよい。時変駆動信号は、例として、パルス繰り返し周波数又はパルス繰り返し周波数の組み合わせを有するパルス列として提供されてもよい。そのようなパルス列のパルスは、例えば、方形波パルス又は個々のsincパルスであってもよい。方形パルスには、第一の電圧レベルV1及び第二の電圧レベルV2に対応する二つの異なる電圧レベルがあると考えることができる。正弦波又はsincパルスに対しては、第一の電圧レベルV1及び第二の電圧レベルV2は、波又はパルスの個別の識別可能な電圧レベルとして選択される。さらに、駆動信号は、連続するAD変換シーケンスに対して同一である必要はない。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、駆動制御回路構成は、既知のノイズ成分の周波数の倍数又は約数である周波数を有するパルス列の形態の駆動信号を提供するように構成されてもよい。ノイズ成分の既知の周波数の倍数である周波数を有する方形波のようなパルス列を提供するように駆動信号を調整することにより、ノイズをさらに効果的に抑制することができる。乗算又は除算に関しては、既知のノイズ成分の周波数は整数によって乗算又は除算されることが理解されるべきである。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、駆動
信号回路構成は、既知の周波数を有するノイズ成分の位相がずれたパルス列の形態にて駆動信号を提供するように構成される。駆動信号が、ノイズの周波数とほぼ同じ周波数を有する方形波又は正弦波などのパルス列を含む場合、ノイズを効果的に抑制するフィルタを形成してもよい。このため、ノイズと位相がずれたパルス列を含む駆動信号を提供することが望ましい。これは、例えば、連続するAD変換のためにパルス列の位相を徐々に変化させるか遷移させることによって達成され、いずれの位相ノイズ抑圧が最も効果的であるかを判定することができる。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、感知回路構成は、負の入力と、正の入力と、アナログ感知信号を提供する出力と、帰還キャパシタと、帰還キャパシタと並列のリセットスイッチと、増幅器と、を備えてもよい。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、駆動信号回路構成は、指紋センサの近傍に配置された導電構造に接続された制御可能電源を備え、指紋センサと、指と感知構造との間の電位差の変化を提供する導電構造と、に載置された指に駆動信号を注入してもよい。導電構造は、例えば、指紋センサの周囲に配置された導電性フレームであってもよく、そのようなフレームは、ベゼル(bezel)と呼ぶこともできる。
【0040】
さらに、指と感知構造との間の電位差の変化はこのほか、制御可能電源を電荷増幅器の正の入力に接続することによって達成されてもよい。また、電位差の変化はこのほか、制御可能電源を指紋センサの共通接地平面に接続することによって達成され得る。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、駆動信号の第一の電圧レベルV
1と第二の電圧レベルV
2との間の差は、少なくとも0.1Vであることが好ましい。駆動信号のV
1とV
2との間の差に主に求められることは、その差が電荷増幅器からの出力信号にて測定可能な差を提供する必要があるということである。
【0042】
本発明の第二の態様によれば、複数の感知素子を備える容量性指紋感知装置にてノイズ低減する方法が提供される。指紋感知装置は、指と感知素子の感知構造との間の距離を示すアナログ感知信号を提供する感知回路構成と、指と感知構造との間の電位差の変化を提供する駆動信号回路構成と、を備える。この方法は、電位差の変化を提供する最大電圧レベル及び最小電圧レベルを有する少なくとも一つの駆動パルスを含む駆動信号を提供するステップと、感知信号の少なくとも三つのサンプルを捕捉するステップであって、少なくとも三つのサンプルは、駆動信号が第一の電圧レベルV
1にあるときに捕捉された少なくとも一つのサンプルと、駆動信号がV
1とは異なる第二の電圧レベルV
2にあるときに捕捉された少なくとも一つのサンプルと、を含む、ステップと、少なくとも三つのサンプルの合計を形成するステップであって、サンプルは、合計が形成されたときに、ノイズ成分が抑制されるように適切な時間に感知信号から選択される、ステップと、少なくとも三つのサンプルの合計からデジタル信号を形成するステップと、を含む。
【0043】
サンプルの合計を形成するというのは、この文脈では、少なくとも三つのサンプルが共に加算され、一つ以上のサンプルがマイナス記号を有することがあることを意味すると解釈される必要がある。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、方法は、サンプルそれぞれのサンプリング時間でのノイズ信号の相対振幅に応じて各サンプルに重みを付与するステップをさらに含む。重みは、駆動信号の第一の電圧レベルにて捕捉されるサンプルの重みの合計が駆動信号の第二の電圧レベルにて捕捉されるサンプルの重みの合計に等しくなるように、選択される。
【0045】
本発明の第二の態様の効果及び特徴は、本発明の第一の態様に関連してこれまでに記載したものと概ね類似している。
【0046】
本発明のこのほかの特徴及び利点は、添付の特許請求の範囲及び以下の説明を検討するときに明らかになるであろう。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の異なる特徴を組み合わせて以下に説明する実施形態以外の実施形態を作成することができることを理解している。
【発明を実施するための形態】
【0049】
この詳細な説明では、本発明によるシステム及び方法の種々の実施形態を、キャパシタの形態の複数のアナログサンプルホールド回路と、キャパシタを制御するスイッチと、を備える指紋感知装置を参照して、主に説明する。以下の記載は、受動サンプルホールド回路、例えば、スイッチトキャパシタに基づいているが、能動サンプリング回路構成を用いて本発明の種々の実施形態を同じように実施することが可能である。能動サンプリング回路構成は、例えば、キャパシタを有する増幅器を、フィードバック経路又はバッファに備えてもよい。
【0050】
図1は、本発明の例示的実施形態による指紋感知装置2の適用例を、統合指紋感知装置2を備える携帯電話1の形態にて概略的に図示する。指紋感知装置2は、例えば、携帯電話1のロックを解除するため及び/又は携帯電話などを用いて実施されるトランザクションを承認するために用いられてもよい。本発明の種々の実施形態による指紋感知装置をこのほか、タブレット型コンピュータ、ラップトップ型コンピュータ、スマートカードをはじめとする各種の家電製品のような他の装置に使用してもよい。
【0051】
図2は、
図1の携帯電話1に含まれる指紋感知装置2を概略的に示す。
図2に示すように、指紋感知装置2は、センサアレイ5と、電源インタフェース6と、通信インタフェース7と、を備える。センサアレイ5は、多数の感知素子8a及び8b(図面が乱雑になるのを避けるために、二つの感知素子のみに参照記号を付して示す)を備え、各感知素子は、感知素子8a及び8bに含まれる感知構造と、センサアレイ5の上面に接触する指の表面と、の間の距離を感知するように制御可能である。
【0052】
電源インタフェース6は、ここでは接着パッドとして示される第一の接触パッド10aと第二の接触パッド10bとを備え、供給電圧V
supplyを指紋感知装置2に接続する。
【0053】
通信インタフェース7は、指紋感知装置2の制御を可能にし、指紋感知装置2から指紋データを取得するために、多数の接着パッドを備える。
【0054】
図3は、指11をセンサアレイ5の上面に置いた状態の
図2に示されるA−A’線に沿って切断される本発明の実施形態による指紋感知装置2の一部の概略断面図及び回路図である。指紋感知装置は、複数の感知素子8を備える。各感知素子は、
図3に概略的に示されるように、保護誘電最上層13と、ここでは保護誘電最上層13の下の金属板17の形態の導電性感知構造17と、電荷増幅器18と、指に駆動信号V
DRVを供給する駆動信号供給回路構成19と、を備える。
図3に示されるように、指11の隆線が感知構造17の真上に位置づけられ、指11と感知構造17との間に誘電最上層13によって規定される最小距離が示される。
【0055】
電荷増幅器18は、感知構造17に接続される第一の入力(負の入力)25と、設置されるか別の基準電位に接続される第二の入力(正の入力)26と、出力27と、を有する演算増幅器(オペアンプ)24としてここでは概略的に図示される少なくとも一つの増幅器段を備える。さらに、電荷増幅器18は、第一の入力25と出力27との間に接続される帰還キャパシタ29と、ここではスイッチ30として機能的に図示され、帰還キャパシタ29の制御可能な放電を可能にするリセット回路構成と、を備える。電荷増幅器18は、リセット回路構成30を操作して帰還キャパシタ29を放電することによってリセットしてもよい。
【0056】
負のフィードバック構成のオペアンプ24の場合にはよくあることであるが、第一の入力25での電圧は、第二の入力26での電圧に追従する。特定の増幅器構成に応じて、第一の入力25での電位は第二の入力26での電位と実質的に同一であるか、第一の入力25での電位と第二の入力26での電位との間に固定されたオフセットがあってもよい。
図3の構成では、電荷増幅器の第一の入力25は、事実上接地されている。
【0057】
駆動信号供給回路構成19によって時変電位が指11に供給された場合、感知構造17と指11との間に対応する時変電位差が発生する。指11と参照構造17との間の電位差の誘発された変化は次には、電荷増幅器18の出力27に感知電圧信号V
sをもたらす。
【0058】
アナログサンプリング回路構成74が電荷増幅器18の出力27に接続され、感知信号V
sを受け取り、サンプリングされる。サンプリング回路構成74は、サンプリング回路構成74に含まれる個々のサンプルホールド(S&H)回路を制御して、駆動信号のタイミングを参照して所望の時点で感知信号V
sをサンプリングする制御部を備えるか、同制御部に接続されてもよい。サンプリング回路構成を、以下でさらに詳細に考察する。
【0059】
アナログサンプリング回路構成74は、ここでは正の出力76及び負の出力78と呼ばれ、差動アナログ・デジタル変換器(ADC)80に接続される二つの出力を備える。この差動アナログ・デジタル変換器は、正の出力76と負の出力78との間の差を、容量結合を示し、これにより、感知構造17と指11との間の距離を示しているデジタル感知信号82に変換するように構成される。
【0060】
これとは別に、アナログサンプリング回路構成は、(図示しない)シングルエンドADCに接続される単一の出力を備えてもよい。この場合、サンプルはADCの前にサンプリング回路構成にて組み合わされ、結果として生じる差分信号はAD変換される。この例では、感知素子17、即ち、ピクセルのための感知回路構成は、一つのサンプルホールド回路構成モジュール74と、一つのADC80と、を備えるように図示される。しかし、ほかにも、複数のピクセルをそれぞれ一つのサンプルホールド回路構成モジュール74に接続するマルチプレクサを使用することによって、多くの異なるピクセルの間でサンプルホールド回路構成74とADC80とを共有することができる。このため、電荷増幅器18の出力27及び/又はサンプルホールド回路構成74の出力は、マルチプレクサに接続されてもよい。例えば、一つのサンプルホールド回路構成モジュール74を1列のピクセルによって共有可能である。
【0061】
図4は、本発明の例示的実施形態によるサンプリング回路74の概略を示す。本明細書で図示されるサンプリング回路は、八つのサンプルホールド回路40a〜40hを備える。各サンプルホールド回路は、一方の側がスイッチ44a〜44hを介して感知信号V
Sに接続され、他方の側がサンプリング回路74の外部の出力に接続されるキャパシタ42a〜42hを備える。この例では、サンプルホールド回路40a〜40dは第一のスイッチ48を介してADC80の正の入力76に接続され、サンプルホールド回路40e〜40hは第二のスイッチ50を介してADC80の負の入力76に接続される。さらに、キャパシタ42a〜42hそれぞれは基準電圧V
REF、例えば、V
DDに接続される。差動ADC80を用いるこの例では、負の入力及び正の入力の記号はADCによって規定される。サンプルホールド回路40a〜40dはADCの正の入力76に接続され、サンプルホールド回路40a〜40dによって取得されたサンプルは正のサンプルと呼ばれる。これに対応して、ADC80の負の入力に接続されるサンプルホールド回路40e〜40hによって取得されるサンプルは負のサンプルと呼ばれる。スイッチ44a〜44hは、スイッチが開である場合、対応するキャパシタ全体にわたって結果として生じる電圧が獲得されるように、実際のサンプリングを制御する。シングルエンドADCが用いられるのであれば、回路40a〜40dを正のサンプルとして単一の入力ラインに直接接続し、回路40e〜40hを折り返して、その結果、結果として生じる差分電圧がシングルエンドADCの入力に直接供給され得るように負の電圧を単一の入力ラインに供給してもよい。
【0062】
アナログサンプリングシーケンスの実施中、スイッチ46は、出力信号V
Sがサンプリング回路構成に供給されるように閉である。スイッチ48及び50は、ADC80との接続が切られるように開である。スイッチ44a〜44dは、キャパシタ充電がV
Sに比例するように閉である。サンプルが捕捉対象になっている場合、スイッチ44a〜44hの一つ以上は、サンプルがキャパシタに保存されるように開である。アナログサンプリングシーケンスが完了し、必要なサンプルがすべて捕捉された時点で、スイッチ46は開であり、スイッチ48及び50は閉である。次に、スイッチ44a〜44hは、キャパシタに保存されたサンプルがADC80の入力76、78に供給され、これにより、正の入力と負の入力との間の差をAD変換できるように、閉じる。
【0063】
上記のサンプリング回路構成74は八つの個別のサンプルホールド回路40a〜40hを備えるように図示されているが、以下に図示されるように、三つ以上の任意の数のサンプルホールド回路を用いればノイズ抑制を達成することができる。
【0064】
サンプリング、即ち、スイッチ44a〜44hは、ほかにも駆動信号V
DRVを制御する(図示しない)制御部によって制御される。これにより、サンプリングのタイミングは、駆動信号の特徴に基づいて制御され得る。さらに、アナログサンプリングシーケンスにてサンプルホールド回路40a〜40hの全部を使用する必要はない。その代わり、所望のフィルタ機能性を達成するのに必要なサンプルホールド回路のみを使用することができ、これにより、アナログサンプリングシーケンスに高度の柔軟性をもたらし、ノイズがない状態で迅速なサンプリングが可能になる。アナログサンプリングシーケンスは、連続するAD変換の間にアナログ出力信号V
Sがサンプリングされるシーケンスとして定義され得る。
【0065】
図5(先行技術)は、駆動信号V
DRVが複数の方形パルスを含み、駆動信号の1周期の間にアナログサンプリングが実施される場合の駆動信号V
DRV及び感知信号V
Sを図示する。指に駆動信号V
DRVが注入され、駆動パルス52が正の場合、電荷増幅器18のリセットスイッチ30が閉じられる。システムが安定すると、スイッチ30が再び開にされ、出力信号がわずかに上昇して基準レベルV
REFを表す。その後、駆動信号が低下すると、指11と感知板17との間の電荷が変化することになり、出力信号V
Sは、指11と感知板17との間の距離に比例する値まで上昇し、信号レベルV
SIGと呼ばれる。
【0066】
図5に図示される従来の相関二重サンプリングに対しては、出力信号が低のときに第一のサンプルS
0が捕捉され、出力信号が高のときに第二のサンプルS
1が捕捉され、結果として生じる出力信号S
1〜S
0は、指11と検知プレート17との間の距離をさらに正確に表すために、電荷増幅器のリセット後の任意の電圧オフセットの影響を除去する。
【0067】
以下では、上記のアナログサンプリング回路構成74を使用するさまざまなサンプリング方式及び駆動信号を採用することによって達成されるさまざまなフィルタの機能性を参照して、本発明の種々の実施形態を考察する。
【0068】
図6aは、感知信号V
Sが、駆動信号V
DRVの周波数に対して低い周波数を有するノイズ成分を含む例を図示する。そのような低周波ノイズは、例えば、50/60Hzのノイズとして、充電器を介して装置1に導入され得る。ここで、低周波ノイズは、kHz範囲にあり得る駆動信号周波数と比較してほぼ一定であると考えられる。この図では、ノイズ成分の振幅は、ノイズの影響をいっそう明確に示すために誇張されている場合がある。
【0069】
図6に図示されるアナログサンプリングシーケンスは、スイッチ30を作動させて電荷増幅器18をリセットするリセット信号によって開始されると考えることができる。次に、第一のサンプルS
0を捕捉する。サンプルS
0は、ここでは重み−1を有するものとして図示されている。ここでマイナス記号は、出力信号V
Sが低レベルであるとき、即ち、駆動信号が高であるときにサンプルが捕捉されたことを示し、ADC80の負の入力に接続されたサンプルホールド回路40e〜40hの一つによってサンプルが捕捉されたことを示す。出力信号V
Sの低レベルは、基準レベルと呼ぶことができる。駆動信号の高電圧レベル及び低電圧レベルはそれぞれ、第一の電圧レベルV
1及び第二の電圧レベルV
2として表すことができる。
【0070】
V
DRVが低になり、V
Sが高になると、ここでは重み+2が付与された第二のサンプルS
1が捕捉され、信号レベルV
SIGを表す。サンプルは、例えば、第一のサンプルS
0を捕捉するサンプルホールド回路のキャパシタの2倍の容量を有するサンプルホールド回路によって捕捉されている場合、重み+2を有すると考えることができる。これとは別に、サンプリング回路構成は、
図4に示されるように、全サンプリングキャパシタが同一容量であるサンプルホールド回路を備えていてもよい。その場合、サンプルには、二つ以上のサンプルホールド回路を同時に使用することによって特定の重みが付与されてもよい。ここで、サンプルの重みは、使用されるサンプルホールド回路の数に等しいと考えることができる。このため、サンプルホールド回路はアナログサンプリングシーケンス中の任意の時点でサンプルを捕捉するように任意に制御され得ることから、サンプルを規定するのは実際には、サンプルを捕捉する特定の時点であって、サンプルを捕捉するために使用される特定のサンプルホールド回路ではない。これにより、全サンプルホールド回路が等しい容量であるサンプルホールド回路構成では、サンプルの最大重みは、ADC80の入力に接続されるサンプルホールド回路の数に等しい。
【0071】
さらに、サンプルは、特定の時点で瞬間的に捕捉されるものとしてここでは図示される。しかし、それと同時に、各サンプルが一定の有限期間にわたる積分に対応する可能性もある。
【0072】
最後に、V
DRVが再び低レベルになり、V
Sが基準レベルに誘導ノイズ信号を加えたレベルに対応するレベルにあるとき、第三のサンプルS
2を捕捉する。
【0073】
サンプルの合計、S
0+S
1+S
2は、まず負のサンプルの合計S
0+S
2を正のサンプルの合計(ここではS
1のみ)から引いて、結果として出力信号がS
1−(S
0+S
2)になるように、分割可能である。サンプルの合計はこのほか、2V
SIG−(V
REF+V
REF)=V
SIG−V
REFとして表すことができ、結果として生じる出力はノイズの影響を受けない信号レベルと基準レベルとの間の差である。これは、結果として生じる信号であって、ADC80によってAD変換され、指紋画像を生成する際に使用される信号である。
【0074】
特に、出力信号のフィルタリングの鍵は、正のサンプルの重みが負のサンプルの重みに等しいことであり、その結果、ノイズの寄与をキャンセルできる。これには、信号レベルでのサンプルと同じように、基準レベルでのサンプルにて総ノイズ寄与が等しいことが必要である。
図6aに図示される例では、ノイズの勾配は一定であると考えられ、サンプル間の時間も一定であり、その結果、正のサンプルと負のサンプルとの両方に同一の総ノイズ寄与をもたらす。一般に、一定の勾配を有するノイズに対しては、代替のサンプリングの筋書きを立案することも可能であるが、サンプル間の時間を一定にすることによってフィルタリング機能性を容易に達成することができる。
【0075】
このため、駆動パルス及びアナログサンプリング回路構成を制御することによって、AD変換の前にリアルタイムでアナログフィルタリングを実施することができる。マイクロプロセッサなどの中央制御部に接続されたレジストリ内の駆動信号及びサンプリング命令の形態でアナログサンプリングシーケンスを予め定義することができる。さらに、提案されたサンプリング方式は、駆動信号及びサンプリング時間及び重みを制御することによって、さまざまなタイプのノイズを処理するためのさまざまなタイプのアナログフィルタの形成に高度な柔軟性をもたらす。
【0076】
アナログサンプリングシーケンスの後に、アナログ・デジタル変換シーケンスが続き、このとき、感知アレイ内の感知素子からのピクセル値が、接続された読み出し回路構成によって読み取られて、指紋画像を形成する。
【0077】
また、上記のアナログフィルタリングを使用すると、隣接するサンプル間の時間は、各サンプルがその後のデジタルフィルタリングに使用するために個別にAD変換されることになっていた場合に達成可能な時間よりも短くなり得る。
【0078】
さらに、上記のサンプリングは、二次フィルタについての記載である。上記の原理を遵守しながら、サンプルの数を増やすことによって、さらに鮮明な周波数応答を提供する高次フィルタが形成されることが容易にわかる。このほかのフィルタの例を以下に記載する。
【0079】
高次フィルタの一例を
図6bに図示する。ここでは、三つのサンプルが基準レベルS
0、S
2及びS
4にて捕捉され、二つのサンプルが信号レベルS
1及びS
3にて捕捉される。サンプルS
1及びS
3は重み+2を有し、サンプルS
2は重み−2を有する。ここではこのほか、サンプル間の時間が一定である。サンプルを組み合わせた後に結果として生じる信号は、(S
1+S
3)−(S
0+S
2+S
4)=(2+2)V
SIG−(1+2+1)V
REF=4V
SIG−4V
REFとなる。ここでは、V
SIGとV
REFとの間の差に4を掛ける。このことは、読み出しシステム全体がサンプリング方式を考慮に入れることにより、結果として得られるデジタル信号がV
SIG−V
REFの倍数を表すかどうかを理解するため、結果として得られるAD変換後のものにて説明されることになる。
【0080】
図6cは、高周波方形パルスの形態のノイズが感知信号に存在する例を図示する。高周波方形ノイズは、例えばスイッチト電源から、又は高周波数で動作するディスプレイ又はタッチスクリーンのような装置内の他の構成要素からのスイッチングノイズとして導入することができる。
【0081】
図6cでは、出力信号V
Sがノイズ信号の影響を受ける場合にサンプルS
1及びS
2が捕捉され、出力信号V
Sがノイズ信号の影響を受けない場合にサンプルS
0及びS
3が捕捉される。
【0082】
方形ノイズの場合、あるいはノイズレベルが急激に変化する類似のタイプのノイズに対してはこのほか、V
Sがノイズの影響を受ける場合に補足されるサンプルが、V
Sがノイズの影響を受けない場合のサンプルの重みに等しいことが必要である。
【0083】
図6dは、駆動信号が二つの連続する駆動パルスの間の半周期だけ位相シフトされるか、遅延される状況を示す。ノイズが駆動信号と類似するか等しい特性を有する場合、ノイズが無効になるように出力信号をサンプリングすることが困難であるか、不可能である場合がある。ノイズが駆動信号とほぼ同じ周波数であることが観察された場合、駆動信号は、第二のパルスが第一のパルスに対して半周期だけ位相シフト、即ち、遅延される二つの連続するパルスとして形成可能であり、これにより、サンプルS
0〜S
4で図示されるように上記と同一の方法でノイズ除去が可能となる。このため、駆動パルスのデューティサイクルは、さまざまな種類のノイズに対するノイズ抑制を容易にするように変更することができる。さらに、駆動信号は、パルスの形状及び連続パルス間の時間を任意に選択することができる場合には、一連の個々のパルスを含むことがある。そのような実施形態では、駆動信号周波数、周期及びデューティサイクルの概念は適用できないことがある。
【0084】
図7a〜
図7cは、方形波の形態の駆動信号と同一であるか類似する周波数を有する高周波ノイズを処理するために駆動信号をどのように適合させることができるかの他の例を概略的に図示する。
図7aでは、ノイズは、駆動信号と同一の周波数を有し、ほかにも駆動信号と同相である。これは上記の方法によるフィルタリングが不可能であることを意味する。特に、
図7aに図示される状況では、V
Sの信号レベルへのノイズ寄与がV
Sの基準レベルへのノイズ寄与に等しいサンプルを取得することは不可能である。
【0085】
図7bでは、駆動信号は、駆動信号の高レベルと低レベルとのあらゆる組み合わせに対してノイズ寄与の高レベル及び低レベルにてサンプルを取得することができるため、ノイズの2倍の周波数を有することにより、ノイズのフィルタリングを可能にする。このため、駆動信号の周波数を増加又は減少させて変更することによって、図示されたノイズのフィルタリングが可能になる。
図7aに図示される駆動信号の周波数は、例えば整数で乗算又は除算することができる。
【0086】
図7cは、駆動信号が
図7aの駆動信号に対して位相シフトされた例を図示する。またここでは、フィルタを構成するためにサンプリングすることも可能である。ノイズ周波数が駆動信号周波数と一致することがわかっているか疑われている場合、駆動信号は、例えば、周期の1/4だけ位相シフトされるか、観察されたノイズが最小になるまで少しずつ位相シフトされ得る。これにより、フィルタはさまざまな種類のノイズを抑制することを習得することができる。このため、例えば、特定の充電器が使用されるか、特定の種類のノイズを発生させることが知られている装置の一定の特徴が使用されている場合に、さまざまなノイズ条件に対して特定のサンプリングプロファイルを記憶することも可能である。
【0087】
さらに、駆動信号にはこのほか、パルス列が含まれることがある。このパルス列では、個々のパルスが異なり、即ち、異なるパルス長を有し、これにより駆動信号の周波数とノイズの周波数とが一致するという筋書きが回避される。
【0088】
図8aは、駆動信号が正弦波を含み、ノイズが駆動信号に対してほぼ一定である例を図示する。正弦波は実際には同じ効果を得るためにsincパルスで置き換えることができる。
【0089】
図8bは、サンプリングキャパシタの係数が駆動信号(ここでは正弦波)の形状、即ち、振幅と整列するように構成された例を図示する。サンプリング係数を駆動信号の振幅に適応させ、駆動信号の1周期中に複数のサンプルを捕捉することにより、高周波数選択性を有するフィルタを実現することができる。異なる係数は、上記の方法のいずれか、例えば、所望の係数をもたらす各サンプルのための多数のキャパシタを組み合わせることによって、あるいはさまざまなサイズのキャパシタを使用することによって、達成され得る。
【0090】
サンプルが正弦波の最大振幅及び最小振幅それぞれで捕捉される必要はない。しかし、フィルタリングが適切に機能するためには、駆動信号が同一の相対電圧レベルV
1にある場合に負と呼ばれる全サンプルが捕捉され、駆動信号のV
1とは異なる同一の相対電圧レベルV
2で正と呼ばれる全サンプルが捕捉されることが必要である。
【0091】
図9は、これまでに考察したノイズ低減のための方法の一般的な方法ステップを概説するフローチャートである。この方法は、駆動信号を提供するステップ902、少なくとも三つのサンプルを捕捉するステップ904、信号のノイズが抑制されるようにサンプルの合計を形成するステップ906、及びデジタル信号を形成するステップ908を含む。
【0092】
この方法の特徴は、指紋感知装置での信号のサンプリングに関してこれまでに考察したものと類似している。以上の説明から理解できるように、記載された方法論を使用して、無数の異なるフィルタを形成することができる。ここで、フィルタ機能性を可能にする重要な特徴の鍵は、リアルタイムアナログサンプリング及び駆動信号の同時制御である。
【0093】
上記の例から理解できるように、さまざまなタイプのノイズを抑制するために駆動信号を調整するのには多くの異なる方法がある。ノイズ特性が完全に未知である場合、多数の予め設定されたアナログサンプリングシーケンスを採用し、得られたフィルタリング済みの信号を評価して、サンプリングシーケンスのうちのいずれのシーケンスがノイズ成分の最も低い出力信号を生成するかを判定することが可能である。これにより、ノイズ特性が未知であってもノイズを抑圧することができる。ノイズ特性が未知である場合、自己学習アルゴリズムを用いて、読み出し回路構成からのフィードバックに基づいてサンプリングが適応される適応フィルタを形成してもよい。
【0094】
多くの場合、ノイズの特性のいくつかがわかっているため、特定のノイズを抑えるためにアナログサンプリングシーケンスを予め設定することができる。既知の特性を有するノイズは、例えば、既知のスイッチング周波数を有する装置充電器から、あるいはディスプレイ又はタッチスクリーンなどの装置内の他の構成要素から発生することがある。
【0095】
装置内のノイズ特性を判定し、判定されたノイズを抑制するようにアナログサンプリングシーケンスを構成することも可能である。
【0096】
本発明を、その特定の例示的な実施形態を参照して説明してきたが、当業者にとっては多くの異なる変更、修正などが明らかになるであろう。また、感知装置が本発明の機能性を実行することができるのであれば、感知装置の一部をさまざまな方法で省略、交換、又は配置してもよいことに留意されたい。
【0097】
さらに、開示された実施形態に対する変形は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求された発明を実施する際の当業者によって理解され、達成され得る。請求の範囲では、「備える」という文言は他の要素又は工程を除外するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外するものではない。単に特定の手段が相互に異なる従属項に記載されているというだけでは、このような手段の組み合わせを有利に用いることができないことを示すことにはならない。