(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871925
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】合理化された電気パーキングブレーキアクチュエータを有する電気ドラムブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
B60T 13/74 20060101AFI20210510BHJP
F16D 65/22 20060101ALI20210510BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20210510BHJP
F16C 19/26 20060101ALI20210510BHJP
F16C 19/54 20060101ALI20210510BHJP
F16H 25/20 20060101ALI20210510BHJP
F16H 25/24 20060101ALI20210510BHJP
F16H 1/16 20060101ALI20210510BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20210510BHJP
F16D 121/24 20120101ALN20210510BHJP
F16D 125/52 20120101ALN20210510BHJP
F16D 125/60 20120101ALN20210510BHJP
【FI】
B60T13/74 H
F16D65/22
F16C19/06
F16C19/26
F16C19/54
F16H25/20 E
F16H25/24 F
F16H1/16 Z
H02K7/116
F16D121:24
F16D125:52
F16D125:60
【請求項の数】15
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-529953(P2018-529953)
(86)(22)【出願日】2016年12月5日
(65)【公表番号】特表2019-505427(P2019-505427A)
(43)【公表日】2019年2月28日
(86)【国際出願番号】EP2016079726
(87)【国際公開番号】WO2017097696
(87)【国際公開日】20170615
【審査請求日】2018年7月24日
(31)【優先権主張番号】102015224761.9
(32)【優先日】2015年12月10日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102016209783.0
(32)【優先日】2016年6月3日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】399023800
【氏名又は名称】コンティネンタル・テーベス・アクチエンゲゼルシヤフト・ウント・コンパニー・オッフェネ・ハンデルスゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンクラー・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】バルツ・ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】フロシャウアー・マルコ
(72)【発明者】
【氏名】バウアー・ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ワルター・パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ・シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】メルケル・フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ビジャンザデ・ペジマン
【審査官】
大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】
韓国公開特許第10−2013−0123788(KR,A)
【文献】
特開2015−044424(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0087418(US,A1)
【文献】
特表2005−526933(JP,A)
【文献】
特開2008−208932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/74
F16C 19/06−19/54
F16D 65/22
F16H 1/16
F16H 25/20−25/24
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用のパーキングブレーキアクチュエータ(3)を有する電気ドラムブレーキシステムであって、パーキングブレーキアクチュエータ(3)が、アンカープレート(2)の外側(12)に配置されており、そして回転駆動中に、回転可能で軸方向に不動にギヤユニットハウジング(8)を介してアンカープレートに支持された駆動ナット(14)を駆動し、この駆動ナットが、回転不能で軸方向に移動可能にギヤユニットハウジング(8)内に軸受けされたスピンドル装置(9)のスピンドルを駆動し、このスピンドルは、操作ケーブル(5)を介して少なくとも1つのブレーキシュー(6a,b)に、ブレーキシューがブレーキドラムの方向の操作運動又は逆方向の解除運動を実施し得るように作用する構成を有し、更に電気ヒューマンマシンインターフェース及び/又は電気制御ユニット用の少なくとも1つの電気インターフェースを有するものにおいて、
モータシャフト自由端(27)に回転不能に連結されたヘリカルホイールピニオン(28)を有するモータ(7)のモータシャフトに沿った軸A1が、駆動ナット(14)と回転不能に連結されたヘリカルホイール(29)を含めたスピンドル装置(9)の軸A2と互いにほぼ直角に配置され、互いに軸間隔Xを置いて、ヘリカルホイールピニオン(28)とこれと噛合う斜歯を付けたヘリカルホイール(29)だけを有するパーキングブレーキアクチュエータ(3)のヘリカルホイールギヤユニット段を規定し、モータ(7)とギヤユニットハウジング(8)との間に、少なくとも1つの回転防止手段(31)が設けられていること、及び、パーキングブレーキアクチュエータ(3)が、ギヤユニットハウジング(8)内のモータシャフト軸受手段によるヘリカルホイールピニオン(28)の片持ち式の軸受手段を有し、ギヤユニットハウジング(8)内で、モータシャフト自由端(27)に緊急軸受(41)が付設されていること、を特徴とする自動車用のパーキングブレーキアクチュエータ(3)を有する電気ドラムブレーキシステム。
【請求項2】
軸A1が、鉛直かつホイール回転軸Dに対して垂直に整向されていること、を特徴とする請求項1に記載の自動車用のパーキングブレーキアクチュエータ(3)を有する電気ドラムブレーキシステム。
【請求項3】
軸A2が、ホイール回転軸Dに対してねじれの位置でアンカープレート(2)に対してねじれの位置に整向され、操作ケーブル(5)が、少なくともアンカープレート(2)の内側(13)で3次元曲線Rに沿って湾曲されて方向転換され、それ以外はほぼ水平に案内されて配置されていること、を特徴とする請求項1に記載の自動車用のパーキングブレーキアクチュエータ(3)を有する電気ドラムブレーキシステム。
【請求項4】
ギヤユニットハウジング(8)が、電気インターフェース(50)を含めた隆起したモータドーム(36)を有する桶状のギヤユニットハウジング下シェル(8a)と、隆起したギヤユニットドーム(37)を有するギヤユニットハウジングカバー(8b)を備え、桶状のギヤユニットハウジング下シェル(8a)の軸A1と、ギヤユニットハウジングカバー(8b)の軸A2が、互いにほぼ直角かつ所定の軸間隔Xを置いて位置ズレされて設けられていること、を特徴とする請求項3に記載の自動車用のパーキングブレーキアクチュエータ(3)を有する電気ドラムブレーキシステム。
【請求項5】
ドラムブレーキ用の油圧供給手段、電気ケーブルに関する全てのインターフェースが、まとめてアンカープレート(2)の、ホイール回転軸Dの上に配置されているセクタ内に配置されていること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動車用のパーキングブレーキアクチュエータ(3)を有する電気ドラムブレーキシステム。
【請求項6】
パーキングブレーキアクチュエータ(3)が、ヘリカルホイールギヤユニット段を有すること、を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動車用のパーキングブレーキアクチュエータ(3)を有する電気ドラムブレーキシステム。
【請求項7】
モータシャフト軸受手段が、半径方向力と軸方向スラスト力の両方を受け止める少なくとも1つの転がり軸受を有すること、を特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の自動車用のパーキングブレーキアクチュエータ(3)を有する電気ドラムブレーキシステム。
【請求項8】
ギヤユニットハウジング(8)内のモータシャフト軸受手段とスピンドル装置(9)の軸受手段が、軸方向力と半径方向力の両方を伝達する固定軸受装置の形態の其々少なくとも1つの転がり軸受を有すること、を特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の自動車用のパーキングブレーキアクチュエータ(3)を有する電気ドラムブレーキシステム。
【請求項9】
少なくとも1つの転がり軸受が、軸受アウタリングでもって、ギヤユニットハウジング下シェル(8a)の収容部内の座内に収容及び固定され、これにより、ヘリカルホイール歯部から生じる半径方向力成分と軸方向に向けられたスラスト力成分の両方が、直接的にギヤユニットハウジング下シェル(8a)へ導入されること、を特徴とする請求項8の特徴による自動車用のパーキングブレーキアクチュエータ(3)を有する電気ドラムブレーキシステム。
【請求項10】
モータ(7)と、ギヤユニットハウジング下シェル(8a)との間に、少なくとも1つの回転防止手段(31)が設けられていること、を特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の自動車用のパーキングブレーキアクチュエータ(3)を有する電気ドラムブレーキシステム。
【請求項11】
噛合い係合式の回転防止手段(31)が、少なくとも1つの突出部(32)を有し、この突出部が、付設されたモータ(7)の空所(33)に係合すること、を特徴とする請求項10に記載の自動車用のパーキングブレーキアクチュエータ(3)を有する電気ドラムブレーキシステム。
【請求項12】
ヘリカルホイールギヤユニットの領域内で、モータ(7)に、ギヤユニットハウジング(8)内に支持された調心フレーム(34)が別個に付設されていること、を特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の自動車用のパーキングブレーキアクチュエータ(3)を有する電気ドラムブレーキシステム。
【請求項13】
ギヤユニットハウジング下シェル(8a)内で、モータシャフト自由端(27)に緊急軸受(41)が付設されていること、を特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の自動車用のパーキングブレーキアクチュエータ(3)を有する電気ドラムブレーキシステム。
【請求項14】
緊急軸受(41)が、ヘリカルホイールギヤユニットの歯の噛合い部に直径上で対向して、プラスチック材料から成るギヤユニットハウジング下シェル(8a)の一体的なモータシャフト収容部(42)として形成されていること、を特徴とする請求項13に記載の自動車用のパーキングブレーキアクチュエータ(3)を有する電気ドラムブレーキシステム。
【請求項15】
緊急軸受(41)の領域で、ギヤユニットハウジング(8b)内に、潤滑剤リザーバ(43)が設けられていること、を特徴とする請求項13又は14に記載の自動車用のパーキングブレーキアクチュエータ(3)を有する電気ドラムブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用の電気パーキングブレーキアクチュエータを有するドラムブレーキシステムであって、パーキングブレーキアクチュエータが、アンカープレートの外側に配置され、回転駆動中に、回転可能で軸方向に不動にアンカープレートに支持された駆動ナットを駆動し、この駆動ナットが、回転不能で軸方向に移動可能にギヤユニットハウジング内に軸受けされたススピンドルを駆動し、このスピンドルは、操作ケーブルを介して少なくとも1つのブレーキシューに、ブレーキシューがブレーキドラムの方向の操作運動又は逆方向の解除運動を実施し得るように作用する構成を有し、更に電気スイッチ及び/又は電気制御ユニット用の少なくとも1つの電気インターフェースを有するものに関する。相応の一般的なドラムブレーキシステムは、米国特許第9 175 737号明細書から公知である。
【背景技術】
【0002】
欧州特許第0 920 390号明細書から、特に小さい全取付けサイズを有する電気機械的に操作可能なドラムブレーキモジュールが公知である。この場合、シリンダ状の操作ユニットの外周は、アンカープレートの開口を経て導入されている。回転可能な駆動ナットは、モータハウジングを介してキャリヤプレート上に支持されている。操作ユニットの取付け長さを短縮するため、特別に形成された電気モータのロータが、スピンドル装置を半径方向外側から包囲し、回転不能に案内することが、企図されている。このタイプは、特殊なハウジングを有する比較的高性能に寸法設定された電気モータと、特殊に適合されたキャリヤプレートを必要とする。
【0003】
ケーブル枢着手段を有しない電気機械的に操作可能なデュオサーボドラムブレーキが、欧州特許第594 233号明細書から公知である。この場合、電気モータは、アンカープレートの背面に配置されている。モータ軸は、ブレーキドラムの回転軸に対して直角に配置され、回転可能で軸方向に移動不能に配置されたネジ付スピンドルを駆動する。ネジ付スピンドルは、モータ軸に対して平行にブレーキドラム内に設けられ、ハウジング内に支承されている。ネジ付スピンドルは、軸方向に移動可能で回転不能にハウジング内に軸受けされた、レバー機構に作用を与える要素と係合している。このタイプは、高性能に寸法設定された電気モータ以外に、更に別の非常に特殊に形成された部品を必要とし、従って、大量生産での簡単なバリエーションを許容しない。ホットソークに問題がないわけではない。
【0004】
米国特許第6 321 884号明細書は、電気パーキングブレーキを有するドラムブレーキシステムの例で、操作又は解除するための電気的な方法を規定する。この場合、電子制御ユニットは、パーキングブレーキアクチュエータ制御中の電気的変調のために使用される。電気的変調は、詳細には、適切な通電及び通電中断が含まれ、この変調は、現在のプロセスで場合によっては繰返し実施すべきである。
【0005】
米国特許第8 011 482号明細書は、欧州特許第594 233号明細書と比較可能な電気操作手段を有するドラム−イン−ハット−ドラムブレーキモジュール(DIH)を開示するが、そのパーキングブレーキアクチュエータユニットは、バネ要素を有し、このバネ要素は、操作された状態で、ブレーキシュー随行運動が行なわれる時にプルロッドに付加的な経路を提供するために、追従力を提供する。
【0006】
西独国特許第812 141号明細書は、ウォームギヤユニットを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第9 175 737号明細書
【特許文献2】欧州特許第0 920 390号明細書
【特許文献3】欧州特許第594 233号明細書
【特許文献4】米国特許第6 321 884号明細書
【特許文献5】米国特許第8 011 482号明細書
【特許文献6】西独国特許第812 141号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高いブレーキ操作力であるにもかかわらず従来技術の欠点を回避する及びそれにもかかわらず合理化された構造を構成要素の組立てが単純化されるにもかかわらず可能にする選択的効率的な電気ドラムブレーキシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1を特徴付ける特徴によって解決される。
【0010】
本発明によれば、モータシャフト自由端に回転不能に連結されたヘリカルホイールピニオンを含めたモータのモータシャフトを経る軸A1と、駆動ナットと回転不能に連結されたヘリカルホイールを含めたスピンドル装置の軸A2が、互いにほぼ直角に配置され、これにより、パーキングブレーキアクチュエータの唯一のマルチホイールギヤユニット段が規定されている。予め接合されたアッセンブリ内の驚くほど単純で厳格なモジュール的分割、即ち(駆動)軸A1及び(被動)軸A2により、特に指標となる及び驚くべき単純化内で、互いに高精度の位置調整すべき平歯車ギヤユニットを省略することができる。回転する平歯車ギヤユニット軸の高精度の軸受手段は、本発明により合理化され、ギヤユニットホイールの必要性は、最小化されている。有利には、本発明により形成された1段のヘリカルホイールギヤユニットを有するパーキングブレーキアクチュエータは、特に破断強度を有し、現代の電気機械式パーキングブレーキの高い負荷サイクル下での高負荷を誘発された軸撓みに対して鈍感である。ちなみに、付加的に、快適に緩衝された騒音放出特性が、高い疲労強度と単純な組立と電力を要しないセルフロックを有するにもかかわらず達成される。
【0011】
自動車でのアンカープレートの整向に関する合目的な構成要素組立用の物理的に特に好適なインターフェース構成は、モータの軸A1が、取付け位置で鉛直に整向され、ホイール回転軸Dに対して垂直に配置されている場合に与えられている。この場合、ヘリカルホイールピニオン(もしくはシリンダ型歯部もしくはグロボイド型歯部)を有するモータシャフト自由端は、鉛直方向下方へ(即ち地面に向かって)配置されているべきであり、モータドームの自由端は、重力作用とは反対方向に鉛直方向上に向かって整向すべきである。これは、独立した凝縮物排出下にある特に全天候型のスタイルを可能にし、ヘリカルホイールギヤユニットの歯の噛合い部の領域内の自動的な潤滑剤収集ですら可能である。対照的に、この構成は、モータ内室(永久磁石と電気コイルの間の敏感な空隙)又はコミュテータ/カーボンブラシ装置の不所望の汚染が、付加的な特徴を有しない何らかの外部媒体又は潤滑剤により回避されることを可能にする。潤滑剤充填量が絶対に必要な最小限に低減されていることが、可能にされる。モータドームの自由端の領域内の全ての電気インターフェースの集中に対して付加的に、基本的に、B軸受(可動軸受)のエンドシールドにおけるカーボンブラシがモータドームの自由端に配置されていること、−即ち特別な保護下で−シャフト固定のコミュテータと協働すること、が推奨される。
【0012】
ギヤユニットハウジングが、内室と周囲雰囲気の間に液体不透過性で気体透過性の膜を有する場合、内室と周囲雰囲気の間の圧力差が回避される。特に、膜は、スピンドルの並進的なポンプ運動用の対抗措置としての空気圧の圧力均等化を可能にする。その結果、不適な周囲雰囲気(破壊的なパーティクル、破壊的な流体又はその混合物)の浸透成分による不所望の内室汚染が回避される。
【0013】
それ以外に、本発明は、加えて、軸A2が、ホイール回転軸Dに対して斜角にかつアンカープレートに対してねじれの位置に配置可能であり、操作ケーブルが、少なくともアンカープレートの内側で3次元曲線Rに沿って湾曲されて方向転換され、水平に案内されて配置されていることによって、省取付けスペースで同時に個々の効率的な適用をホイールブレーキ構成が異なる場合でも可能にする。
【0014】
ギヤユニットハウジングの構造は、合理的にプラスチック材料から成る2ピースであり、アンカープレートに対するインターフェースとして、別個のアダプタが可能である。ギヤユニットハウジングは、一方では、アンカープレートに対するインターフェースと、電気インターフェースを含めたモータを収容するための隆起したモータドームを有する桶状のギヤユニットハウジングを有する。完成のため、スピンドル装置をガイドするためのギヤユニットドームを一体的に形成したねじり剛性を有するように取り付けられたギヤユニットハウジングカバーが使用され、それらの軸A1,A2は、互いにほぼ直角かつ軸間隔Xを置いて位置ズレされて配置されていること。
【0015】
油圧配管及び配線用の全てのインターフェースが、いわばまとめてホイール回転軸の上のセクタ内(アンカープレートの9時の位置と3時の位置の間)に集中させて設けられている場合に、車両メーカに付加価値が提供される。別の集中させた形態では、前記のインターフェース集中は、特に保護されてアンカープレートの12時の位置と3時の位置の間にまとめて設けられていてもよい。ラインガイド(油圧+電気)が、まとめて設けられていてもよい。
【0016】
モータシャフト自由端におけるヘリカルホイールピニオンの自由に突出する“片持ち式”の軸受手段と関係して、特に効率的なインターフェース構成と、関与する構成要素の間の組立が、モータハウジングとギヤユニットハウジング内のモータシャフト軸受手段により得られ、これは、取付け費用を合理化する。換言すれば、ヘリカルホイール歯部からの横力成分は、直接的にギヤユニットハウジング内のシャフト軸受手段を介して受け止められるのではなく、モータシャフト軸受手段(A軸受/B軸受への部分的な軸受力分配)と、モータドーム内の間接的又は直接的にモータハウジング収容部を介して受け止められる。この場合、モータ調心収容部は、モータカップ底を介して又はメタル軸受、エンドシールドもしくは隔壁、軸受フレーム又は同様の部品を介して、前記特徴の任意の組合せ及び相互作用により間接的又は直接的にモータに作用することができる。純粋に模範的に、A軸受(固定軸受、好ましくは転がり軸受の形態をした)の軸受(アウタ)リングは、モータハウジングのカップ底の一体の軸受座内に収容されている。特にパーキングブレーキの操作時及び場合によっては非通電のセルフロック時にモータシャフトに作用するヘリカルホイール歯部からの軸方向に向いたスラスト力は、ヘリカルホイールピニオン、モータシャフト、A軸受及びモータハウジングを介する力の流れ内で、主に、モータドームの自由端の領域内で軸方向のストッパ毎にギヤユニットハウジングに導入される。
【0017】
この形態のバリエーション内で、モータシャフトのA軸受が、外側からモータに被動側に突出するように配置され、その軸受アウタリングが、ギヤユニットハウジングの収容部の固定の座内に調心されて収容及び固定され、これにより、ヘリカルホイールギヤユニットからの力(縦力及び横力)が、中央で直接的にA軸受を介してギヤユニットハウジングに導入され得ることが可能である。加えて、カップ底又はエンドシールドの形態のモータハウジングが、A軸受のアウタリングと協働するために調心カラーを備えられることが可能であるが、強制的ではない。従って、モータシャフトとギヤユニットハウジングの間の調心及び固定軸受けが、A軸受を介して行なわれ、B軸受は、横力伝達用の可動軸受として役立つ。
【0018】
図面に、部分的に概略的にまた部分的に異なったスケールで、断面図、外観図又は斜視図を示す:
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一般的な説明のための、国際公開第2012/104395による公知の電気機械式のドラムブレーキアクチュエータ
【
図2】内側のほぼ縮尺通りの本発明によるドラムブレーキシステム
【
図3】
図2の線III−IIIに沿った拡大した断面図
【
図4】電気機械式のパーキングブレーキアクチュエータの斜視図にし、部分的に切り開き、拡大して説明されるパワートレイン
【
図5a】パーキングブレーキアクチュエータの唯一のマルチホイールギヤユニット段(ヘリカルホイールギヤユニット段)の外観図
【
図5b】パーキングブレーキアクチュエータの唯一のマルチホイールギヤユニット段(ヘリカルホイールギヤユニット段)の外観図
【
図5c】パーキングブレーキアクチュエータの唯一のマルチホイールギヤユニット段(ヘリカルホイールギヤユニット段)の外観図
【
図6】ほぼ縮尺通りのパーキングブレーキアクチュエータの分解図
【
図7】分解されたスピンドル装置の重要な部品の拡大図
【
図8】予め組み立てられたスピンドル装置の重要な部品の拡大図
【
図9】解除位置にあるギヤユニットハウジング内の
図7及び8によるスピンドルアッセンブリの部品の軸受手段
【
図10】部分的に力の流れを明らかにした操作位置にあるギヤユニットハウジング内の
図7及び8によるスピンドルアッセンブリの部品の軸受手段
【
図11】パーキングブレーキアクチュエータのスピンドルに関する、力(F)と調整距離sの間の理想化−モデル化した関係
【
図12】後方のブレーキ操作力のないパーキングブレーキアクチュエータエンドストッパセンサなしで検知するための方法を明らかにするための、
図11と関連した検出された電流必要量Iと時間tの理想化−モデル化したステージシーケンスI−V
【
図13】特に電気機械式に駆動されるパーキングブレーキアクチュエータの横力の作用を受けるモータシャフト軸受手段、ギヤユニットシャフト軸受手段又は駆動ナット軸受手段用に使用するための、改善された自己補償型転がり軸受手段の細部
【発明を実施するための形態】
【0020】
自動車のアクスル部品に配置するための公知の電気機械式に操作可能なドラムブレーキモジュールは、
図1によれば、内側13の示してないブレーキドラム内に設けられたブレーキシュー6a,bを支承したアンカープレート2を有する。アンカープレート2の反対の側(外側12)には、電気モータで駆動されるパーキングブレーキアクチュエータ3が固定され、このパーキングブレーキアクチュエータは、ギヤユニット4及び後に配置された操作ケーブル5を介して、1つ又は複数のブレーキシュー6a,bに、この又はこれらブレーキシュー6a,bが、運転機能及び/又はパーキングブレーキ機能を実施するためにブレーキドラムの方向の操作運動Bを実施し得るように作用する。ギヤユニット4は、ギヤユニットハウジング8を有し、このギヤユニットハウジングは、モータ7(図面ではスピンドル装置9によって覆われている)を収容又は支持する。モータ7は、直流電圧を消費し、機械的又は電子的に整流され、安価に入手可能な標準タイプである。
【0021】
図1は、軸方向間隔Xを置いて図面背景へ後退させた、即ち平行で合同的にスピンドル装置9(図面前景内の)の軸A2の後方に後退させたモータ7の軸A1を示す。スピンドル装置9を有する軸A2は、いわばパワートレインの被動部である。パーキングブレーキアクチュエータ3とアンカープレート2の間には、自動車内の異なるスペース及び取付け関係への容易な適合及び適応を可能にするためにアダプタ10が設けられている。アダプタ10は、ギヤユニットハウジング8の1ピースの構成要素であるか、別個の部品である。別の特徴は、パーキングブレーキアクチュエータ3が、車両の前進走行方向とは反対に、即ち前進走行方向に関してホイールハブの後方で、ホイールハブに関してほぼ3時の位置に、アンカープレート2に緊密に角度をなして配置されている。これにより、風化や落石のような環境の影響に対するパーキングブレーキアクチュエータ3の特に良好な保護が得られる。僅かな突出量Ue(軸A1,A2の平行度による)を有するパーキングブレーキアクチュエータ3の少ない全長と、操作ケーブル5の柔軟性は、基本的にアンカープレート2における自在に適応可能な配置を可能にする。
【0022】
図1による駆動及びギヤトレインには、減速タイプのトルクコンバータとして多段の、特に2段の歯車ギヤユニットが属する。この場合、2段のマルチホイールギヤユニットが、約7:1〜25:1の範囲内の減速比を可能にする。後に配置された、ブレーキシュー6a,bの領域内のレバー機構が約5:1の減速を可能にする場合、約125:1の減速比が得られる。更に、回転−並進−コンバータの減速作用が加わり、これは、少なくとも約250:1のオーダーのパワートレイン全体にわたる総減速作用を可能にする。このギヤトレインにより、モータ7のコスト及び性能の要求が、付加的に明らかに低減されている。
【0023】
この場合、パーキングブレーキアクチュエータ3は、別個に取扱い可能な構造ユニットとしてアンカープレート2の一方の側12に設けられている。回転−並進−コンバータをスピンドル装置9としてギヤユニットハウジング8に一体化し、ギヤユニットハウジング内に、回転不能に、滑らかな動きで、遊びなく案内することが可能である。
【0024】
ギヤユニットハウジング8は、多部材から構成されている。ギヤユニットハウジング8は、複数のギヤユニット構造要素を収容し、これらギヤユニット構造要素は、主に、トルク変換(低入力トルク、高出力トルク)のために使用され、非通電のパーキングブレーキ機能も、セルフロックにより可能にすることができる。モータシャフト及びギヤユニットシャフトの軸A1,A2は、軸間隔Xを置いて互いに合同的に平行に設けられている。少なくとも所定のギヤユニット構造要素は、少なくとも部分的に安価なプラスチック材料を備えることができる。好ましくは、非通電セルフロック手段は、回転−並進−コンバータ(スピンドルユニット9)内に設けられているので、ギヤトレインの残りは、原則的にブレーキ操作力から実質的に解放されている。
【0025】
図1によれば、ギヤユニットハウジング8は、少なくとも部分的に付加的に回転入力運動を並進出力運動に変換するためのスピンドル装置9を有する回転−並進−コンバータアッセンブリを収容する。従って、コンバータ、公知のドラムブレーキ装置への省スペースの一体化のために安価であり、パーキングブレーキアクチュエータ3とアンカープレート2の間のインターフェース内に省スペースに(コンパクトに)挿入され、それにもかかわらずギヤユニットハウジング内に案内されているので、電気機械式のパーキングブレーキアクチュエータへの換装のために、ドラムブレーキ機構、特にレバー機構又はアンカープレート2における何らかの変更は、全く必要ない。
【0026】
ブレーキ操作力の力の流れは、
図1で明らかにしたように、以下のようになる。ブレーキシュー6a,b及び操作ケーブル5から始まり、引張力は、スピンドル装置9、駆動ナット14、軸受15を介してアンカープレート2に達する。軸受15は、有利には、低摩擦の転がり軸受(アンギュラコンタクト軸受、分離形軸受、アキシャル軸受、深溝玉軸受)として設計されている。説明した軸受15は、駆動ナット14用の半径方向に向いた支承も可能にする。デザインの小変更内で、駆動ナット14の特に精密な耐傾倒性の支持のために、発明から逸脱することなく、それぞれ1つの駆動側軸受と付加的な被動側軸受を設けることができる。
【0027】
ガイド17及び操作ケーブル5の方向転換部は、潤滑剤コーティング及び/又はシース18を有する又は有しない注意深く丸められた操作ケーブルの設置が行なわれることによって、ほぼ無摩擦に形成されている。この場合、シール措置は、シース18の有無にかかわらず、操作ケーブル5の具体的な構成に適応させるべきである。
【0028】
スピンドル装置9は、駆動ナット14と係合しており、ギヤユニットハウジング8内に回転不能で軸方向に移動可能に案内されて配置されている。この目的のため、ギヤユニットハウジング8のギヤユニットハウジングカバーは、噛合い係合の作用を有する手段としてガイド及び回転防止機能のために寄与する少なくとも1つ又は複数の適合されたリンク要素を有するプリズム状又はシリンダ状のガイド19を備える。パーキングブレーキアクチュエータ3の有利な電気的な遮断を可能にするために、スピンドル装置9は、ストッパ20を備えており、このストッパは、ハウジング側のアバットメント21に当接するために使用される。更に、アバットメント21とストッパ20の間に、少なくとも1つの弾性要素22が設けられている。弾性要素22は、好ましくは皿バネ装置として形成され、この皿バネ装置は、場所の必要量が少なくても剛性のあるバネ特性曲線を可能にする。これは、モータ7の電力の必要量の測定及び観察と関係して制御ユニット53による有利かつ早期の自動的な電気的な遮断を可能にする。
【0029】
特にコンパクトなパーキングブレーキアクチュエータスタイルは、スピンドル装置9が、少なくとも部分的にギヤユニットハウジング8のコネクタ23内に移動可能に案内されて収容されていることを内容とする。コネクタ23は、アンカープレート2の貫通口24と関係して調心されて配置されている。好ましくは、コネクタ23は、スピンドル装置9の少なくとも一部がブレーキドラムの内部へ移動され得るように、貫通口24に係合する。これは、操作ケーブル5の自動的な調心のためにも使用される。
【0030】
パーキングブレーキアクチュエータ3は、外部媒体(汚れ、摩耗片、液体)の侵入又は注入された潤滑剤の流出に対して完全に保護されている。このため、ギヤユニットハウジング8をシールするために、操作ケーブル5の出口の領域に、少なくとも1つのシール要素26が設けられている。
【0031】
以下の説明は、本発明の違いの説明に限定される。
図1とほとんど一致する特徴は、他の図で、一致する符号で示されている。
【0032】
図2からわかるように、組み合わされて操作可能なドラムブレーキシステムは、ホイールブレーキシリンダ52毎に求められる運転ブレーキ要求と、電気機械式のパーキングブレーキアクチュエータごとに求められるパーキングブレーキ要求の両方を解釈する。この場合、運転ブレーキ機能は、油圧のホイールブレーキシリンダ52によって直接的に両ブレーキシュー6a,bに伝達され、これらブレーキシューの解除位置は、示してないブレーキロータ(ブレーキドラム)に関して、一方では伸縮可能な支持装置11によって、他方では支持ブロック35によって規定され、バネ要素51は、ブレーキシュー6a,bに基本的に互いに予張力を付与する。非通電のセルフロックを含めたパーキングブレーキ機能は、パーキングブレーキアクチュエータ3からレバーアーム40を介してブレーキシュー6a,bに伝達される。パーキングブレーキアクチュエータ3は、アンカープレート2の外側に配置されている。
【0033】
図4−8は、モジュール式にただ2つのサブアッセンブリに分割されたギヤユニット4の可動の系を認めさせるものであり、この系は、駆動側に、モータ7を含めた軸A1、モータシャフト自由端27及び回転不能に取り付けられたヘリカルホイールピニオン28を有する。被動側は、(出力の)スピンドル装置9の軸A2が支配する。これは、方向転換のためにほぼ直角(≒90°)に位置ズレされ、軸A1に対して所定の軸間隔Xを置いて配置されている。従って、本発明は、周知の遊星歯車式及び平歯車式のギヤユニットアクチュエータを合理化するものであり、これらギヤユニットアクチュエータは、互いに平行に整向された軸の間の高精度に公差付けされた(ギヤユニットハウジング−)軸間隔を含めた、高精度に形成されかつミクロ範囲で公差付けされた歯の噛合い部を必要とする。むしろ、唯一の単純な一段のヘリカルホイールギヤユニット段が規定され、このヘリカルホイールギヤユニット段の軸A1は、鉛直に、即ちホイール回転軸Dに対して直交して整向されている。これに対して、軸A2は、ホイール回転軸Dに対してねじれの位置に整向され、操作ケーブル5は、少なくともアンカープレート2の内側13で3次元曲線Rに沿って湾曲されて方向転換され、それ以外はほぼ水平に案内されていればよい。
【0034】
図3+6が認めさせるように、ギヤユニットハウジング8は、特に合理的にアンカープレート2に回転不能に配置するための桶状のギヤユニットハウジング
下シェル8aと、画一的な分割平面TEを有するギヤユニットハウジングカバー8bによる2ピースに形成されており、この分割平面は、軸A1に対して平行で軸A2に対して直交するように向けられて配置されている。この場合、ギヤユニットハウジング8のギヤユニットハウジング
下シェル8aは、モータ7を収容するために、電気インターフェース(2極ブッシュ)を有する一体的なモータ収容部を形成し、モータハウジングは、回転不能でギヤユニットハウジング8内で横力方向に収容されている。この場合、モータ収容部は、シールのために、ギヤユニットハウジング8内の独立した、分離された、シールされた取付けスペースを形成するので、モータ内部、軸受、コミュテータ等の部品は、例えば噴水、オイル、グリース又パーティクルのような外部媒体によって汚染又は損傷されることはできない。モータ収容部に対して直角、即ちモータドーム36に対して直交するようにv字状に屈曲されて整向されて、ギヤユニットドーム37が延在し、このギヤユニットドームは、スピンドル装置9の並進移動可能なスピンドルを、ガイド19を介して回転不能に支承し、軸A1,A2は、ほぼ直角である。この場合、ギヤユニットハウジング8内のギヤユニットドーム37が独立して分離された、外部媒体に対してシールされたスピンドル装置9用の取付けスペースを画成する場合が、好都合である。ギヤユニットドーム37が主にギヤユニットハウジングカバー8bの1ピースの突出部として形成されていることが認められる。
図2及び4と関係して、全体的な状況下でのインターフェース構成は、全てのインターフェース(電気+油圧インターフェース、特にパーキングブレーキアクチュエータライン及びセンサラインのような油圧配管並びに配線)が非常に組み立て易くまとめられてホイール回転軸Dの上の保護されたセクタ内に、例えばアンカープレート2の2時の位置に集中化され、これにより、付随的に車両メーカにおける組立ての容易化も可能にされ得ることが、明らかになる。
【0035】
パワートレインは、高い効率(低減された機械的損失)及び高い動きのスムーズさにおける単純化内で、唯一のマルチホイールギヤユニット段、即ちヘリカルホイールピニオン28とこれと噛合う斜歯を付けたヘリカルホイール29だけを有するヘリカルホイールギヤユニット段を有する。ヘリカルホイールピニオン28は、説明した実施形態では、3段式に巻かれ、モータシャフトのモータシャフト自由端27に回転不能にプレス装着されている。ヘリカルホイールピニオン28の軸受けは、片持ち式であり、モータハウジング内のモータシャフト軸受手段を介して間接的に実現されるので、ブレーキ操作過程時の半径方向力と、歯部から生じる軸方向スラスト力は、ヘリカルホイール噛合い部とモータシャフトを介して、2つのモータシャフトベアリング(ブラシ保持プレートのエンドシールド内の固定軸受形成のA軸受収容部、モータカップ底内の可動軸受形成のB軸受収容部であるかその逆)を介して最後にギヤユニットハウジング8に導出される。従って、モータシャフト軸受手段は、半径方向力と軸方向スラスト力の両方を受け止めることができる少なくとも1つの転がり軸受を必要とする。即ち、ギヤユニットハウジング8内にスピンドル装置9を軸受けするために、軸方向力と半径方向力の両方をギヤユニットハウジング8、特にギヤユニットハウジング
下シェル8aに伝達することができる複合型軸受、特に深溝玉軸受が使用される。複合型軸受は、その軸受アウタリングを介してギヤユニットハウジング8の収容部内の座内に収容及び固定されている。このため、斜歯を付けたヘリカルホイール29は、好ましくはプラスチックから成り、金属の駆動ナット14と回転不能に結合される(
図8)か、選択的にこの駆動ナットとワンピースに形成されている(
図9)。ギヤユニットハウジング8内に駆動ナット14と共にヘリカルホイールを軸方向に不動に共に回転式に軸受けするために、軸受ジャーナルが使用され、この軸受ジャーナルは、半径方向力成分と、ヘリカルホイール歯部から生じる軸方向に向いたスラスト力成分の両方がギヤユニットハウジング8に導入されるように複合型転がり軸受を支持する。
ギヤユニットハウジング下シェル8a内では、モータシャフト自由端27に緊急軸受41が付設されており、この緊急軸受は、ヘリカルホイールギヤユニットの歯の噛合い部に直径上で対向して、プラスチック材料から成るギヤユニットハウジング下シェル8aの一体的なモータシャフト収容部42として形成されており、そして緊急軸受41の領域で、ギヤユニットハウジング8b内には、潤滑剤リザーバ43が設けられている。
【0036】
サブアッセンブリ及び構成要素のモジュール式の最終組立のプロセスは、
図6から特に明確にわかる。これは、その組立て順序内に以下のステップ+サブアッセンブリを含む:
【0037】
1.)アンカープレートインターフェースを含めた桶状のハウジング
下シェル8aを有するギヤユニットハウジング8と、ギヤユニットハウジングカバー調心手段、隔壁及び膜44の形態の(空気圧で有効な水密の)圧力均等化装置を有するモータドーム36と、電気インターフェース50を提供及び固定するステップ;
【0038】
2.)電気接点及び軸固定のヘリカルホイールピニオン28を含めたモータ7をギヤユニットハウジング
下シェル8aに挿入するステップ;
【0039】
3.)電気インターフェース50とモータ接点の間の電気的接続を生成するステップ(ろう付け、溶接、圧着、接点タブの圧接による);
【0040】
4.)操作ケーブル5、スピンドル、駆動ナット14、アキシャル軸受38及び弾性要素22を有するスピンドル装置90をギヤユニットハウジング
下シェル8aに挿入し、ヘリカルホイールピニオン28とヘリカルホイール29をペアリングするステップ;
【0041】
5.)ギヤユニットハウジング
下シェル8aに対してギヤユニットハウジングカバー調心手段とギヤユニットドーム37を有するギヤユニットハウジングカバー8bの調心、載置及び固定をし、分割平面TE(ギヤユニットハウジング分割部)が軸A2に対して直交するように向けられているようにするステップ。
【0042】
図6−9は、(ブレーキ操作力のない後方の円度ストッパをセンサなしで検知するための)パーキングブレーキシステムの改善された電気的な閉ループ制御をするためのハードウエア構成にも関する。
図6−9は、解除された状態(ブレーキ操作力のない解除位置)のセンサなしで改善された検出をするために弾性要素22を使用した、改善されかつセルフロック式に設計されたスピンドルアッセンブリ9を示す。この場合、加えて、この場合、収容部39内で弾性要素22を省取付けスペースに軸受けしつつ改善されたアッセンブリの構成が可能にされている。弾性要素22は、弾性要素22、スピンドル及び駆動ナット14を経る力の流れがギヤユニットハウジング8の介入なしでそれ自身完結しているように、スピンドルと駆動ナット14の間に挟まれて設けられている。これによりまた、弾性要素22は、スピンドルアッセンブリの予組立て可能な構成要素である。これにより、閉じられた力の流れは、スピンドル装置9から弾性要素22に加えられた力が間接的又は直接的にまさにギヤユニットハウジング8内の転がり軸受によって支持されているように存在する。従って、ギヤユニットハウジング8内の別個のアバットメントが省略される。力の流れは、この実施形態では、スピンドル、弾性要素22、アキシャル軸受(ディスク)38、駆動ナット14、軸受15(転がり軸受)及びギヤユニットハウジング8を介してアンカープレート2へ行なわれる。加えて、この新式の力の流れのガイドによって、弾性要素22が、アキシャル軸受38、駆動ナット14及び弾性要素22の収容部39と共に、スピンドル装置9のアッセンブリ式に予組立てされた構成要素として存在することが可能にされている。選択的に、転がり軸受は、完全に予組立てされてギヤユニットハウジング8内に存在することができ、予組立てされたスピンドルアッセンブリ9は、転がり軸受の軸受インナリング内へ挿入される。更に選択的に、転がり軸受が、分割されて形成され、転がり軸受アウタリングが、ギヤユニットハウジング8内に予組立てされて存在することが可能であり、これに対して、転動体並びに好ましくは転動体ケージを有する転がり軸受インナリングは、スピンドル装置9の予組立てされた構成要素である。いずれにしても、スピンドル装置9は、弾性要素22と共に転がり軸受アウタリングを介してギヤユニットハウジング8内に軸受け及び調心されている。弾性要素22には、調心及び組立の補助具として、スピンドル装置9の構成要素である収容部39を付設することができる。構成要素数及び部品数が著しく低減された主に予組立て可能な主要構成要素の前記新式の規定は、手で製造される小量生産とロボットに適した大量生産組立の両方に関係した安価な、それにもかかわらず容易に量を拡張可能な最終組立のためのパーキングブレーキアクチュエータ3を予定する。
【0043】
弾性要素22が、カプセル化手段、クランプ手段としての組立補助具、ケージ又はそれ以外の結束措置によって接合され得る及び/又は弾性的に予張力を受け得る複数の個々のバネの相互連結も含むことができることを補足すべきである。従って、取付けスペースを節約するために、皿バネの使用が推奨される。
【0044】
別の態様は、
図11+12により図示され、電気パーキングブレーキアクチュエータ3用の運転方法に関する。それぞれモデルにより理想化された特性曲線推移内に、電気機械的なブレーキ操作プロセスが二重矢印によって特徴付けられているが、電気機械的な解除プロセスは、一重の矢印によって逆方向へ象徴化されている。この場合、パーキングブレーキアクチュエータ3のスピンドルは、それぞれ破線(赤)又はバツ点(緑)で特徴付けられた特性曲線部分で引張力なしである。バツ点(緑)でマーキングされた特性曲線領域だけで、弾性要素22が有効である。その結果、弾性要素22は、進んだ調整経路sに依存して、軸受力の力の流れ内へ弾性的に組み込まれたエンドストッパとして作用し、その結果、電流−時間推移内に、制御ユニット53による電流推移の監視によって処理及び使用されるセンサなしで検出可能な特性曲線変化が存在する。これは、詳細には、スピンドルがフェーズIVの開始時並びにフェーズV内で弾性要素22によって増々作用を受けていることによって生じさせられる。それに対して、
図11+12内にそれぞれ円で示された他の特性曲線領域は、パーキングブレーキアクチュエータの引張力の負荷を受ける調整領域に関する。解除プロセスは、それぞれ操作状態bから始まり解除方向に見て、即ち全く基本的に以下のプロセスフェーズに分割される:
・フェーズI :解除方向のモータの始動(通電開始)
・フェーズII :解除方向の力の低下
・フェーズIII:解除方向のアイドリング
・フェーズIV :弾性要素への作用
・フェーズV :操作終了(通電終了)
【0045】
ブレーキ操作プロセスが全く逆に進行することがわかる。
【0046】
図11から、パーキングブレーキアクチュエータ調整経路sにわたる(引張)力推移Fがわかる。この場合、特性曲線支線f(s)は、原理的に、スピンドルと操作ケーブルの間の力の関係、即ちスピンドルと操作ケーブル5の間の引張り力作用の支線を示す。この特性曲線支線は、(引張力のない)アイドル経路の経路インターバル内を破線(赤)で、また、引張力の負荷を受ける経路インターバル内を円(青)でマーキングされている。逆に、0点を越えて存在する、加えてバツ点(緑)でマーキングされた特性曲線支線h(s)は、スピンドルに対する弾性要素22の力の作用を示す。この力の作用は、0点の交差と後方のエンドストッパへの到達の間のインターバル内でだけ生じる。弾性要素22のこの力の作用は、スピンドルの解除運動とは反対に向けられている。
【0047】
図11から詳細にわかるように、パーキングブレーキアクチュエータは、破線(赤)で示された特性曲線部分に応じて、フェーズIIIのブレーキ操作時に実質的に無力(F0)アイドル経路s0を克服する。経路マークscpの達成により、フェーズIIで調整力(引張力)が増加される。特に通電のオン及びオフのような調整のために、電子制御ユニット53が使用される。パーキングブレーキアクチュエータの通電が終了される前に、一方では必要とされるブレーキ操作力が達成されているか、他方では解除状態が確実に達成されているかを検出するために、ブレーキ操作時とパーキングブレーキの解除時の両方で、電流推移が制御ユニット53によって監視される。
【0048】
制御ユニット53は、メモリを有するマイクロプロセッサを含み、EDVに支援されたソフトウエアに基づいた周期的に実施される制御ルーチンに応じて、ソフトウエアに基づいて記憶された物理的なシステムモデルにより、ブレーキシュー6a,bがそのブレーキ操作力のない解除位置に達した時に、ドラムブレーキシステムが常に確実に解除位置へ移動されていることから出発する。これは、ブレーキシュー6a,bが未だ予張力を与えられたバネ要素51の作用下で、即ちブレーキ操作力はないがそれにもかかわらず限定的に支持装置11上に載置されている時に達成されている。従って、制御ユニット53は、フェーズIII、即ちブレーキ操作力のないアイドリングレベルが克服されており、フェーズIVも終了された後に、前記モデルに応じてフェーズVを検出する。その結果、パーキングブレーキアクチュエータの電流必要量が、フェーズIVの終了に対する回答として、著しく再現可能に防護されて増加するかどうかが監視され、相応に検知される。換言すると、パーキングブレーキアクチュエータ3がその“後の”確実に解除された最終位置、即ち0点を超えた解除位置へ入る時に、弾性要素22の弾性変形によって線形又は漸進的に増加する明らかな変化が、電流−時間−特性曲線の推移内で示される特異性が考慮される。この事実は、制御ユニット53による特性曲線の監視によって自動的に監視及び検知される。検知後、パーキングブレーキアクチュエータ3の電流供給は、制御ユニット53によって自動的に遮断され、パーキングブレーキアクチュエータ3のパワートレイン内の慣性効果が未だ快適さを阻害する何らかの効果(後続の作動)を発生させ得ることはない。通電の遮断後、パーキングブレーキアクチュエータ3のパワートレインは、達成された解除位置でのセルフロックのために一時的に静止する。
【0049】
重要な態様は、
図13からわかり、
図13a)は、従来の軸受形成を説明する。リニアガイド品質が同時に十分である時の高いアクチュエータ力下での効果的な均等化及び/又は自己調心用の特別に形成された軸受座の領域内の特別措置は、
図13b〜
図13eで、転がり軸受15を取り付けた相応に示された駆動ナット14によりわかる。原理的に、駆動ナット14は、完全に金属材料から製造可能である。しかしながらまた、駆動ナット14が転がり軸受リング用の金属のキャリヤ及び歯付リングを形成し、プラスチック材料から成る歯付リングが金属のキャリヤ体に回転不能に取り付けられていることも可能である。その点で、歯付リングとキャリヤ体の間に、既にある程度の弾性が形成可能である。この関係で、駆動ナット(もしくはキャリヤ体)における軸受ジャーナル又はそれに応じてギヤユニットハウジング8(これも付設された転がり軸受リング用のキャリヤ体として有効であり得る)内の軸受孔は、製造を単純化しつつ特別に形成された準弾性的な軸受座を備えることができ、この軸受座は、加えて、置換、不正確、弾性変形及び対にされた部品の間の角度誤差を許容及び補償する。この関係で、模範的に図面内で説明された複合型転がり軸受形成が提案される。複合型転がり軸受の共に回転する軸受インナリングは、ヘリカルホイールギヤユニットの斜歯部から周方向荷重を受ける。複合型転がり軸受の回転不能の軸受アウタリングは、転動体から点荷重を受ける。課題の解決策内で、金属の軸受インナリングが、駆動ナット14のシリンダ状に研削された軸受座の高精度に製造された軸受ジャーナルに単純に直接的にかつ金属的に高剛性に取り付けられていないことが企図される。むしろ、軸受座は、所定の弾性を備えており、これは、少なくとも極僅かな弾性、即ち可撓性を許容する。従って、
図13eによる実施形態の場合、キャリヤ体は、チューブ状に一貫した、シリンダ状に取り巻く、弾性的な非金属のライニング、即ち転がり軸受インナリングを支持する中間層を備えている。基本的に、中間層は、それぞれのキャリヤ体と回転不能に結合されている。この場合、中間層は、噛合い係合式にキャリヤ体に作用する一体的に形成されたドライバを有し得る。ドライバは、特別な成形体として存在し得る。
図13cによる形態から、軸方向外側の終端に中間層の部分的に階段状に肥大した段部として形成されかつ半径方向内側に向いたドライバが読み取り可能である。
【0050】
図13c及び
図13dによる形態では、軸受ジャーナル上の軸受座が、非金属材料から成る成形体及び準弾性的な中間層を使用した部分的に異なるように柔軟な中間層を有するキャリヤ体として形成されている。このため、キャリヤ体は、スプライン歯部、溝装置、又は突出部及びキャビティを有する同様に噛合い係合式の作業面形成部のような成形部を含むことができ、キャビティは、準弾性的な中間層の材料で半径方向に過大寸法を有するようにコーティングされている。局所的な過大寸法は、
図13bから明らかである。中間層は、熱可塑性のプラスチック材料から形成することができ、このプラスチック材料は、特に射出成型によってキャリヤ体に取り付けられている。全体で、軸受座の周囲に規則的に分配された残留支持部が残っていることも可能であり、これら残留支持部は、交互に位置をずらしたプレスばめ下にある(準弾性的な中間層の領域内の)ゾーンと、金属のすき間ばめ又は中間ばめ下にあるゾーンが実現されるように寸法設定されている。要約すると、準弾性的な軸受インナリング支持部によって、原理的に、軸受ジャーナルにおける円筒研削プロセスによる手間のかかる外側加工を、また、駆動ナット14への移行部内の特別な軸受アンダカットの製造を、廃止することができる。軸受孔内へ導入すべきである転がり軸受座に関係する限り、基本的に相応のことが、更に手間のかかる内側加工の廃止に対しても当て嵌まる。その結果、製造コストは、この適用例に対しても低くなっている。加えて、説明した補償特性は、騒音を減衰させた快適なシステム操作を可能にし、付加的に、歯部の製造に対する精度要求が低減可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 ドラムブレーキモジュール
2 アンカープレート
3 パーキングブレーキアクチュエータ
4 ギヤユニット
5 操作ケーブル
6 ブレーキシュー
7 モータ
8 ギヤユニットハウジング
9 スピンドル装置
10 アダプタ
11 支持装置
12 外側
13 内側
14 駆動ナット
15 軸受
16 載置面
17 ガイド
18 シース
19 ガイド
20 ストッパ
21 アバットメント
22 弾性要素
23 コネクタ
24 貫通口
25 出口
26 シール要素
27 モータシャフト自由端
28 ヘリカルホイールピニオン
29 ヘリカルホイール
30 固定手段
31 回転防止手段
32 突出部
33 空所
34 調心フレーム
35 支持ブロック
36 モータドーム
37 ギヤユニットドーム
38 アキシャル軸受
39 収容部
40 レバーアーム
41 緊急軸受
42 モータシャフト収容部
43 潤滑剤リザーバ
44 膜
50 インターフェース
51 バネ要素
52 ホイールブレーキシリンダ
53 制御ユニット
A1,A2 軸
ax 軸方向
B 操作方向
b 操作状態
D 回転軸
F (引張)力
I 電流(必要量)
R 3次元曲線
r 半径方向
s 距離
t 時間
TE 分割平面
U 突出両
X 軸間隔
I,II,II,IV,V プロセス段階