特許第6871932号(P6871932)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6871932弁の油圧作動駆動部を制御するための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871932
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】弁の油圧作動駆動部を制御するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/04 20060101AFI20210510BHJP
   F15B 11/042 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   F15B11/04 A
   F15B11/042
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-541541(P2018-541541)
(86)(22)【出願日】2016年11月3日
(65)【公表番号】特表2018-532969(P2018-532969A)
(43)【公表日】2018年11月8日
(86)【国際出願番号】EP2016076543
(87)【国際公開番号】WO2017076965
(87)【国際公開日】20170511
【審査請求日】2019年7月18日
(31)【優先権主張番号】102015119108.3
(32)【優先日】2015年11月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518148353
【氏名又は名称】プライガー マシーネンバウ ゲーエムベーハー ウント コンパニ カーゲー
【氏名又は名称原語表記】PLEIGER MASCHINENBAU GMBH & CO.KG
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(72)【発明者】
【氏名】リチコ,ビョーン
【審査官】 中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−133401(JP,A)
【文献】 特開平07−167109(JP,A)
【文献】 特開平06−143378(JP,A)
【文献】 特開2002−147405(JP,A)
【文献】 特開昭59−086702(JP,A)
【文献】 実開昭63−006202(JP,U)
【文献】 実開平01−173503(JP,U)
【文献】 特開昭55−152901(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0209471(US,A1)
【文献】 米国特許第04215844(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/04
F15B 11/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧作動駆動部(1〜3)、特に弁又は制御装置用の油圧作動駆動部を所定の変位量制御する方法であって、
前記油圧作動駆動部の変位の少なくとも一部において変位速度(v’)が、少なくとも2つの測定点における前記変位の距離測定と時間測定の組み合わせによって検出され、前記変位速度の所定の目標値(v)と比較されて、
前記変位速度の実際の値(v’)と前記目標値(v)の間に差異がある場合は、前記油圧作動駆動部(1〜3)の前記変位速度(v’)が前記目標値(v)に適合し、前記油圧作動駆動部(1〜3)が一定の所定変位時間で前記所定の変位量を移動するように前記油圧作動駆動部の制御が変更され
前記油圧作動駆動部(1〜3)の前記変位速度(v’)が、部分区間(S1からS3)において測定され、前記所定変位時間を満たすために残りの変位経路を移動する時間を計算する根拠として使用される、方法。
【請求項2】
前記変位の開始時の前記変位速度(v’)が、部位置(S1)から始まる前記部分区間(S1からS3)において測定される、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記油圧作動駆動部(1〜3)の前記変位速度(v’)が継続的に検出されて前記所定の目標(v)と比較され、前記目標値と前記変位速度の実際の値の間に差異が生じたら、所定の目標変位時間が維持されるように前記油圧作動駆動部の制御が連続的に変更される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記油圧作動駆動部は、ばね荷重式ピストン(1)を有し、
前記ばね荷重式ピストンに作用する油圧が戻り管(10)内の通路断面積を変更することにより制御される、請求項1からのいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記油圧作動駆動部は、ピストンの両側に作動油の作用を受ける前記ピストン(1)を有し、
圧力を伝達する油圧管(4.4)内の通路断面積を変更することにより前記作動油が制御される、請求項1からのいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
電気油圧駆動における前記油圧作動駆動部の前記制御は、前記油圧作動駆動部に作動油を供給するポンプを駆動するモータのモータ回転数の変更、又は前記モータ(M)のオンとオフを切り替えることにより制御される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
油圧作動駆動部、特に弁の油圧作動駆動部を所定の変位量制御するための装置であって、前記装置は、
油圧シリンダ(2)内のばね(3)によりばね荷重ピストン(1)と、
供給管(4)を介して前記ばね荷重式ピストン(1)に圧力をかけるための油圧ポンプ(6)と、
戻り管(10)内に設けられて前記戻り管の断面を開放及び閉鎖する少なくとも1つの制御弁(8、9)と、を備え、
前記所定の変位量のための所定変位時間を記憶し前記ばね荷重式ピストンの変位速度(v’)の実際の値と目標変位速度(v)とを比較して制御信号を出力する処理部(11)に接続されて、前記処理部から前記制御信号を出力される制御部(14)によって、前記所定変位時間を満たすように前記戻り管(10)の断面積が制御可能である、前記装置。
【請求項8】
油圧作動駆動部、特に弁の油圧作動駆動部を所定の変位量制御するための装置であって、前記装置は、
油圧シリンダ(2)内でピストンの両側に作動油の作用を受ける前記ピストン(1)と、
前記ピストン(1)に圧力をかけるための油圧ポンプ(6)と、
前記油圧シリンダ(2)へ通じる油圧管(4.1、4.2)を供給管と戻り管の間で切り替えるための制御弁(15)と、
前記供給管内で圧力源(6、16)と制御弁(15)の間に配置され、バイパス管(4.41)を開放及び閉鎖するための弁(18)が内部に置かれたバイパス管により迂回される絞り弁(17)と、を備え、
前記所定の変位量のための所定変位時間を記憶し前記ピストンの変位速度(v’)の実際の値と目標変位速度(v)とを比較して制御信号を出力する処理部(11)に接続されて、前記処理部から前記制御信号を出力される制御部(14)によって、前記所定変位時間を満たすように前記供給管(4.4)と前記弁(15、18)の通路断面積が制御可能である、前記装置。
【請求項9】
油圧作動駆動部、特に弁の油圧作動駆動部を制御するための装置であって、
駆動モータ(M)により駆動され、所定の変位量を有する前記油圧作動駆動部のピストン(1)に対して作動油を使って作用する油圧ポンプ(6)を備え、
前記所定の変位量のための所定変位時間を記憶し前記ピストンの変位速度(v’)の実際の値と目標変位速度(v)とを比較して、前記駆動モータ(M)の同期した動作のため又は前記駆動モータ(M)の回転数の変更のために、前記所定変位時間を満たすように制御信号を出力する処理部(11)に接続され、前記処理部から前記制御信号を出力される制御部(14)によって、前記駆動モータ(M)が制御可能である、前記装置。
【請求項10】
前記油圧作動駆動部の変位速度を検出するために、変位経路の少なくとも部分区間に行程に依存して作動するスイッチ(S1からS4)が備えられる、請求項7から9のいずれか一つに記載の装置。
【請求項11】
前記油圧作動駆動部の変位はポテンショメータにより検出される、請求項7から9のいずれか一つに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
弁又は制御装置の油圧作動駆動の場合、例えば北極地方から亜熱帯地方へと移動する船舶上ではしばしば周囲温度の100°Cを超える変化のために作動油の粘度が変わり、粘度の変化により、油圧作動駆動部によって、例えば開放位置から閉鎖位置へと弁が動かされる時間にも変化が生じる。
低温で高粘度の場合、弁を十分速く動かす、又は変位させることがしばしばできず、高温で低粘度の場合は、しばしば弁の動作があまりに速いため圧力が急上昇し、弁が組み込まれているパイプライン内でいわゆる油圧衝撃が発生することがある。
【背景技術】
【0002】
しかし、実質的に一定の変位時間が実践上重要であり、特に、非常に異なる周囲温度の下で動作しなければならない船舶用弁では重要となる。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、弁が変位される際に周囲温度の変化と関係なく実質的に同じ変位時間が維持されるように、油圧作動駆動部(特に弁の油圧作動駆動部)を制御、又は起動することである。この目的と課題は、請求項1に係る方法を有する本発明に従い、請求項9、10及び11の特徴を有する装置によって解決される。
【0004】
この目的は、本発明に従い、特に、駆動部の変位経路の少なくとも一部において変位速度が検出され電子メモリに記憶された所定の目標変位速度と比較されて目標値と実際の値の間に差異が生じたらすぐに、駆動部が所定の変位時間内に変位量を動くように駆動部の制御が補正されることで、解決される。本発明によれば、変位速度は対応するセンサを介して直接、又は間接的に検出できる。後者は、例えば、距離及び時間の測定によって可能となる。
【0005】
所定の変位量全体にわたる所定の変位時間を達成するため、それぞれの場合において、変位の測定される部分において駆動部の動作が速すぎる場合は、例えば駆動部を一時的に停止することによってさらなる変位に対して変位速度を低下させることが可能であり、駆動部の変位動作が遅すぎる場合は、例えば駆動部のばね荷重式ピストンでの作動油をさらに減圧することにより残りの変位量に対する変位速度が早められる。
【0006】
このようにして、周囲温度に関係なく、したがってそれぞれの場合に粘度に関係なく、常に同じ変位時間で弁を変位させることができる。したがって、極端な周囲条件下においても、そのような弁をより正確に制御することが可能となる。
【0007】
本発明によれば、駆動部の変位の部分区間において変位時間が検出され、こうして得られた速度値から、駆動部が変位量全体を移動するのにどれだけの時間がかかるかが計算されて、全体の変位時間が一つの測定値をもとにすでに計算できる。好適には、変位速度は変位の開始時に、端部位置から測定される。しかし、変位量以内で駆動部のピストンの中間位置から始まる部分区間で速度を測定することも可能である。
【0008】
温度測定に基づいて駆動部の駆動速度を判定する場合と比較すると、本発明による中間部時間測定を行うことの利点は、変位時間が現在の動作点で直接測定されることである。温度測定によれば、変位時間に対する作動油の粘度の影響は間接的にしか検知できないので、異なる温度に対する一連の測定値が検出される必要があり、値は制御装置のプログラムコードに記憶される必要がある。さらに、例えば異なる水力損失のような、変位時間に対するさらなる影響は、温度測定の場合は検出されない。
【0009】
本発明は、油圧作動駆動部、特に弁用の油圧作動駆動部を制御するための請求項1に係る方法に関し、駆動部の変位経路の少なくとも一部において変位速度(v’)が検出されて所定の目標変位速度(v)と比較され、速度の実際の値(v’)と目標値(v)の間に差異がある場合はすぐに、駆動部の変位速度(v’)が目標値(v)へ適合するように駆動部の制御が変更される。
【0010】
本発明の有利な実施形態によれば、変位速度(v’)は、少なくとも2つの測定点における変位の距離測定と時間測定の組み合わせによって検出される。例えば、それぞれの場合に、2つのスイッチ点において距離と時間が測定され、このように弁の既知の変位量の変位速度が簡単な方法で計算できる。したがって、少ない技術的努力と適度なコストで正確な測定と制御が可能になる。
【0011】
本発明の有利な実施形態によれば、駆動部の変位速度(v’)は、部分区間(S1からS3)において測定され、残りの変位量に対する変位時間を計算する根拠として使用される。
【0012】
本発明の別の有利な実施形態によれば、変位速度(v’)は、端部位置(S1)から始まる変位の開始時に部分区間(S1からS3)で測定される。
【0013】
本発明の別の有利な実施形態によれば、駆動部の変位速度(v’)は継続的に検出されて所定の目標変位速度(v)と比較され、目標値と実際の値の間に差異が生じたらすぐに、所定の目標変位時間が維持されるように駆動部の制御が連続的に変更される。
【0014】
本発明の別の有利な実施形態によれば、ばね荷重式ピストンを有する駆動部に対して、ピストンに作用する油圧は戻り管内の通路断面積を変更することにより制御される。
【0015】
本発明の別の有利な実施形態によれば、ピストン両側に作動油の作用を受けるピストンを有する駆動部に対して、油圧は圧力を伝達する油圧管内の通路断面積を変更することにより制御される。
【0016】
本発明の別の有利な実施形態によれば、電気油圧駆動に対して、駆動部の制御は、モータ回転数の変更、又はモータ(M)のオンとオフを切り替えることにより制御される。
【0017】
同様に、本発明は、油圧シリンダ内でばねの作用を受けるピストン、供給管を介してばね荷重式ピストンに圧力負荷をかけるための油圧ポンプ、及び戻り管を開放及び閉鎖するために戻り管内に設けられた少なくとも一つの制御弁を備える油圧作動駆動部、特に弁の油圧作動駆動部を制御するための装置に関し、戻り管の断面積は、処理部に接続された制御部によって制御可能であり、処理部ではピストン速度(v’)の実際の値が目標変位速度(v)と比較され、制御信号を制御部へ出力する。
【0018】
同様に、本発明は、油圧シリンダ内でピストン両側に作動油の作用を受けるピストン、ピストンに圧力をかけるための油圧ポンプ、油圧シリンダへ通じる油圧管を供給管と戻り管の間で切り替えるための制御弁及び、供給管内で圧力源と制御弁の間に配置され、バイパス管を開放及び閉鎖するための弁が内部に置かれたバイパス管により迂回される絞り弁を備える油圧作動駆動部、特に弁の油圧作動駆動部を制御するための装置に関し、供給管の通路断面積は、処理部に接続された制御部によって制御可能であり、処理部ではピストン速度(v’)の実際の値が目標変位速度(v)と比較され、制御信号を制御部へ出力する。
【0019】
同様に、本発明は、駆動モータ(M)により駆動され、駆動部のピストンに対して作動油を使って作用する油圧ポンプを備える油圧作動駆動部、特に弁の油圧作動駆動部を制御するための装置に関し、駆動モータ(M)は処理部に接続された制御部によって制御可能であり、処理部ではピストン速度(v’)の実際の値が目標変位速度(v)と比較され、モータ(M)の同期した動作のため又はモータ(M)の回転数を変更するために制御信号を制御部へ出力する。
【0020】
装置の有利な実施形態によれば、変位の少なくとも部分区間に、駆動部の変位速度を検出するために行程に依存して作動するスイッチ(S1からS4)が備えられる。
【0021】
装置の別の有利な実施形態によれば、駆動部の変位はポテンショメータにより検出される。
【0022】
以下では、本発明の例示の実施形態が図面を参照して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】弁(図示せず)用の、ばね荷重式ピストンを有する駆動部の制御の概略図である。
図2】駆動部の動作が速すぎる場合の変位時間の検出及び補正を示す図である。
図3】駆動部の動作が遅すぎる場合の図2に対応する図である。
図4】制御部を有する制御手段の略図である。
図5】その両側に作動油の作用を受けるピストンを有する駆動部の図1に対応する図である。
図6図5の駆動部の制御の図2に対応する図である。
図7図5の駆動部の制御の図3に対応する図である。
図8】別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1はシリンダ2内のピストン1を示し、ピストン1は一方の側でばね3の作用を受け、ピストン1の反対側には、接続部2.1における作動油の圧力が加えられ、ばね3の力に抗して変位した場所でピストン1を保持する。作動油の圧力を変更することで、ピストン1はばね3の力に抗して、又はばね3により変位する。
【0025】
この実施形態では、シリンダ2内でばね3の作用を受けるピストン1は駆動部を形成し、弁(図示せず)を変位させて、例えばパイプライン内のドアを旋回させる。
【0026】
示される実施形態では、ピストン1が移動する変位量は図1でS1からS2にわたり、S2はS1から始まる変位量の100%に相当する。
【0027】
変位の部分区間がS1からS3で与えられ、例えばS1は弁の開放位置に相当し、S2は閉鎖位置に相当する。
【0028】
供給管4a及び4bによって、シリンダ2には、モータMにより駆動されるポンプ6を介して貯留槽5から供給される作動油が作用する。参照符号7は、管部4a内の戻し弁を指す。参照符号8及び9は、貯留槽5へと延びる戻り管10内の並列回路中の制御弁を指す。随意で備えられる絞り弁8.1及び9.1は、制御弁の前にそれぞれ直列に接続されている。
【0029】
図示のスイッチ位置において、2つの制御弁8及び9を閉じて、戻し弁7が戻り流れを防ぐぎ、ポンプ6を介して供給管4b内で高められた圧力を維持する。2つの制御弁のうち一方、又は両方の弁を切り替えることにより、通路断面積は供給管4bから貯留槽5へ戻り管10を通って開放することができ、供給管4b内の圧力を低下させて、ピストン1をばね3によって矢印で示される変位位置へと変位させることができる。
【0030】
制御弁8及び9は、電気的に制御可能な二方弁として描かれている。また、駆動部の制御を制御するため、以下に説明される部材1〜3で別の弁構造を与えることも可能である。
【0031】
図示の実施形態では、制御弁8又は9の一つを開放することで作動油の圧力が低下するとすぐに、ピストン1はばね3を介して矢印の方向へ動かされる。
【0032】
図2は、図内に変位時間tにわたるピストン1の変位量Sを示し、理論的に理想的な目標変位速度vが破線で表され、この速度でピストン1が所定の目標変位時間t=100%内にS1からS2まで所定の目標変位量を移動する。目標変位時間は、駆動部により駆動される弁の種類及び、例えば駆動部のピストン1で動かされる歯付ラックによって歯車を回転させることでピストンを介して所定の回転角にわたって旋回されるパイプライン内のドアの弁を通って制御される流体の種類を特に考慮して予め決められている。
【0033】
図2の例では、所定の単位時間taの後で、かつS1からS3までの変位の移動部分saの後で(移動部分saは、好適には変位の始まりにS1の端部位置から開始してよい)、ピストン1の速度が測定され、すぐに計測されたピストン速度v’が記憶部に記憶された目標速度vと比較され、例えば周囲温度が高くて作動油の粘度が低いために、駆動部の動作が速すぎてピストン1があまりに速く動いていると判定される。駆動部の速すぎる動作を補正するため、例えばS3で制御弁8及び/又は9を閉じ、ピストン速度v’の水平方向で示されるように、駆動部が所定の時間の間、S3で停止する。処理部により決定された停止時間の後で、ピストン1がさらなる部分区間に沿ってばね3の力によって動かされるように制御弁8及び9の一つがふたたび開けられ、すぐに、図2のピストン速度v’のステップ状の線で表されるように、処理部により予め決められたステップに対応する、駆動部の同期制御が繰り返される。ここで、停止時間はステップごとに変えることができる。同様に、変位の部分区間の長さに亘る変位時間は、特にピストン速度がさらなる中間部分でさらに調査される場合に、処理部での計算結果に応じて変えることができる。
【0034】
図3は、駆動部の動作が遅すぎる場合の駆動部の制御を示す。この例で、理論的に理想的な速度vと比較すると、ピストン1による変位量がS3に到達する際の変位時間taの測定値は、駆動部の動作が遅すぎる結果となる。制御弁8と9の両方を開放することで対応する通路断面積を大きくして供給管4b内の作動油をさらに減圧することで、作動油の粘度が高い場合、シリンダ2内の圧力をより早く低下させることができて、図3におけるtaの後のピストン速度v’のより急勾配の線が示すように、単位時間当たりにピストン1からより大きな変位量を移動できる。
【0035】
図2及び3に示される実施形態の場合、所定の変位量に対する所定の目標変位時間が維持されるように、制御弁8と9の一方又は両方を同期して開放及び閉鎖することで駆動部が制御され、部分区間でのピストン速度v’が測定されて目標値vと比較され、実際の値と目標値の間に差異がある場合はすぐに、所定の目標変位時間が維持されるように駆動部の制御が変更される。
【0036】
シリンダ2内を減圧する場合に作動油の通路断面積を大きくする役割をする2つの制御弁8及び9の代わりに単一の制御弁を与えることも可能であり、これにより戻り管10内の通路断面積をより大きく又はより小さく調整することが可能となる。
【0037】
制御弁8及び9が異なる大きさの通路断面積を持つことにより、どちらの制御弁が開放されるかに応じてピストン1での減圧の制御を異ならせることもまた可能である。
【0038】
変位時間の測定は、例えば3つの行程に依存して作動するスイッチによって行うことができる。それぞれの場合に、端部位置S1及びS2にスイッチが備えられる。S3における第3スイッチはS1からS3への変位時間を計算の根拠として検出するのに役立つ。S1とS3の間のピストン速度v’が処理部により検出されるとすぐに、この計測されたピストン速度及び変位速度を残りの変位量に対する変位時間の計算に使用することができる。
【0039】
図示の実施形態では、高粘度である低温での駆動部の変位時間t=100%がプリセットされる。プリセットはより高い温度の場合にも行うことができる。より高い温度の場合に一定の変位時間を得るため、図2で矢印の方向へ弁を閉鎖する間、変位時間及び変位速度がS3における第3位置スイッチを使って測定されてすぐに、処理部での対応する計算により、制御弁8及び9が同期して閉鎖及び開放される。
【0040】
ばね3の力に抗してピストン1を変位させることで弁を開放するため、ポンプ6によるシリンダ2内の圧力上昇の制御を異ならせることができる。
【0041】
図1〜3による実施形態において、駆動部は、図1の矢印の方向のピストンの工程の間のみ同期して制御される。ピストンの工程が所定の目標変位時間内に反対方向へ、すなわちばね3の力に抗して進む場合も、端部位置S2から始まる短い距離に図1で破線で示される位置スイッチS4が備えられ、これによりピストン1の反対方向の変位速度v’が検出される。
【0042】
ピストン1の変位速度が目標変位速度vと異なる場合、ばね3の力に抗して端部位置S1の方へピストン1をより早く変位させるために、駆動モータMの回転数を上昇させることで、ポンプ6を介して、シリンダ2内の圧力をより迅速に上昇させることができる。これに対応して、モータMをより低い回転数とする、又はモータMの電源を同期して切ることによって、ピストン1を反対方向へより遅く変位させることができる。
【0043】
変位(図2及び3)の部分区間でピストン速度及び変位速度v’を検出する代わりに、変位速度v’を継続的に測定して、継続的に所定の目標変位速度vと比較することも可能である。ここで、駆動部の制御のために備えられる制御弁(又は必要なら複数の制御弁)は、ピストン速度v’を理論的目標変位速度vの近くに保つために継続的に作動される。
【0044】
例として、連続的に流れの断面積を変更するために、連続的に調整可能な絞り弁を制御弁8又は9に備えることができる。
【0045】
代替の変位時間の検出は、駆動部での連続的な距離測定によって例えばS1からS2までの変位距離全体にわたる変位が記録されるポテンショメータを使って行うことができる。
【0046】
図1の駆動部のピストン1をS1の端部位置まで戻すことに関して上述したのと同様に、電気油圧システムで使用されて油圧ポンプ6を駆動する電気モータMを、対応して同期するように制御することも可能である。
【0047】
図4は、例として、それぞれの場合に弁に対して予め決められている目標変位速度vが記憶される記憶部12を有する処理部11を模式的に示す。比較部13を使って、計測された変位速度v’は目標変位速度vと比較され、差異がある場合はすぐに、駆動部をどのように補正するかが処理部11により検出され、動作が速すぎる場合はピストン運動を停止し、動作が遅すぎる場合は減圧を大きくする。処理部11は制御信号を制御部14へ出力し、制御部はそれに対応して制御弁8、9を制御する。
【0048】
図1の実施形態では、ばね荷重式ピストン1はシリンダ2内に駆動部として描かれている。本発明による同期制御は、ピストン両側に作動油の作用を受ける駆動部のピストンに対しても同様に行うことができる。
【0049】
図5は、図1に対応する図における、ピストン両側に作動油の作用を受ける駆動部のピストン1を示す。参照符号2.1及び2.2は油圧管4.1と4.2の接続部を指し、これらは共通の制御弁15により制御される。電磁的に作動される四方弁として形成しうる制御弁15の図示のスイッチ位置では、2つの油圧管4.1及び4.2は塞がれ、ピストン1はその位置で保たれる。
【0050】
制御弁15の模式的に示されるスイッチ位置Yb1では油圧管4.2は管4.3の一部と連通して、ピストン1の底部側での圧力が低下して作動油が貯留槽5へ供給され、一方でポンプ6を有する管4.4の一部は油圧管4.1と連通して、圧力がかけられた作動油が接続部2.1に印加される。制御弁15のスイッチ位置Yb2では、管4.3の一部が油圧管4.1と連通して管4.4の一部が管4.2と連通しており、矢印の方向が作動油の流れの方向を示す。
【0051】
ポンプ6は、管4.4の一部の中の制御弁15と貯留槽5の間に、戻し弁7とともに配置される。参照符号16は圧力貯留槽を指す。正常動作中は、シリンダ2内で圧力を上昇させる場合、圧力貯留槽16からの圧力が接続部2.1及び2.2の一方へ導かれるので、ピストン1に加圧するたびにポンプ6を動作させる必要はない。
【0052】
圧力貯留槽16内での決められた圧力低下の後に、圧力貯留槽16内の作動油の圧力がポンプ6によって再び高められる。
【0053】
さらに、絞り弁17が管4.4の一部に配置され、この絞り弁は、その構成が図1の弁8及び9の一方に相当する弁18が配置されたバイパス通路4.41によって迂回される。
【0054】
弁18の示されるスイッチ位置では、バイパス管4.41は閉鎖され、制御弁15を位置Yb1又はYb2の一方へ切り替える場合は作動油の圧力が絞り弁17を通ってシリンダ2へ達する。
【0055】
弁18のスイッチ位置Yaでは、絞り弁17は迂回され、圧力貯留槽16の油圧が全通路断面積を通って直接シリンダ2へ達する。
【0056】
時間t,1及びt,0において、図5に示される位置にある弁18は閉じられており(Ya=0)、時間t,1では制御弁15が位置Yb2=1にあり、t,0では図5に示される塞がれた位置(Yb2=0)にある。
【0057】
図6図2に対応し、ピストン1の速度v’の経過を示し、taはS1とS3の間の変位の一部saの終端にあるスイッチ点S3へ達するまでの時間を表す。
【0058】
図7図3に対応し、遅すぎる駆動の場合の制御弁15及び18の切り替えプロセスを示す。時間t,2において、弁18は開放位置(Ya=1)にあり、制御弁15はスイッチ位置Yb1=1に位置している。
【0059】
言い換えれば、図6で速すぎる駆動の場合は期間t,0にわたって、弁15及び18で図5に示される切り替え状態が維持され、時間t,1にわたって、2つの油圧管4.1及び4.2はスイッチ位置Yb2にあり、圧力が絞り弁17を通って油圧管4.2へと導かれる。
【0060】
これに対応して、図7の遅すぎる駆動の場合、絞り弁17は時間t,2の間はピストン1の底部側での圧力を上げるために迂回され、一方で期間t,1にわたり弁18が閉じられて、絞り弁17の流れの断面積に対して圧力が上昇する。
【0061】
図1のばね荷重式ピストン1を有する実施形態では、駆動部は戻り管10内の弁の制御により同期して制御され、図5の両側に作用を受ける、又は加圧されるピストン1を有する実施形態に対しては、供給管4.4内の通路断面積の変化が与えられる。ここで、ピストンの工程は、図1及び5の矢印の方向に対してのみステップ状に制御される。
【0062】
ピストンの工程が図1及び5の矢印で示される変位に逆らって所定の変位時間内に同様に移動する場合には、戻り経路上のピストン速度を検出するために、端部位置S2から始まる部分区間にさらなるスイッチS4が与えられる。
【0063】
図1を使って説明されたように、ピストン1の変位時間は供給管内の圧力負荷を変更することで変えることができる。
【0064】
一方では図1に示される戻り管内の弁制御、他方では図5の供給管内の弁制御の代わりに、ピストン1の所定の変位時間を維持するために、電気油圧駆動のポンプ6のモータMを同期して制御することができる。図5の配置で、図8が示すように圧力貯留槽16並びに弁18及び絞り弁17は省略可能であり、モータMのオンとオフを切り替えることで図8のポンプ6を同期して動作させることにより、ピストン1の工程経路の両方を、それぞれの場合に制御弁15の位置に応じて同期して制御することができる。
【0065】
図2、3及び図6、7で示される制御ステップの数の代わりに、より少ない、又はより多いステップを与えることも可能である。理論的には、変位量全体に対するピストン1の変位時間を所定の変位時間へ適合させるために、ピストン運動及びピストン加速を停止するステップだけをまた与えることができる。
【0066】
図中では、駆動部の同期制御の個々のステップが等しい時間間隔tで示されている。しかし、変位量全体を所定の変位時間内に移動するために、変位に沿って異なる長さを有するようにステップを調整することも可能である。
【0067】
説明された駆動部の変位速度の補正は、好適には弁の変位ごとに行われ、それぞれの場合に駆動部の変位速度は現在の状況に適合される。
【0068】
また、油圧作動駆動部の変位時間の補正は、特に船舶上での弁の作動以外の領域で使用することも可能である。例えば、本発明に従って同期して制御される駆動部は、所定時間内に所定の変位を行う必要があるレバー機構も作動させることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8