【課題を解決するための手段】
【0007】
この目標を達成するために、本発明は、体外診断用自動分析システムであって、
各々がベースを備え、分析対象の生体液体サンプルを収容することを目的とする複数の反応キュベットを保存する保存機器と、
1つの反応キュベットを少なくとも部分的に受容および収容するように構成された少なくとも1つの受容キャビティを有する少なくとも1つのサンプル処理ステーションと、
反応キュベットを変位させるように構成された変位機器と、を備え、
少なくとも1つの受容キャビティは、反応キュベットを少なくとも1つの受容キャビティに導入可能に構成された下向きに開口する下部導入口を有し
変位機器はさらに、反応キュベットを保存機器から取り出すように構成されるとともに、各々の導入口を経由して、反応キュベットを少なくとも1つのサンプル処理ステーションの少なくとも1つの受容キャビティに装填したり、該少なくとも1つの受容キャビティから取り出したりするように構成されており、
変位機器は、
略水平である第1の変位方向に従って移動可能に装着された第1の支持要素と、
第1の変位方向に略直交する略水平である第2の変位方向に従って移動可能に第1の支持要素上に装着された第2の支持要素と、
略垂直である第3の変位方向に従って移動可能に第2の支持要素上に装着された駆動部材と、を有し、
駆動部材は、反応キュベットのベースと協働するように構成されるとともに、駆動動作を該反応キュベットに伝達するように構成されている体外診断用自動分析システムに関する。
【0008】
変位機器および少なくとも1つのサンプル処理ステーションのかかる構成によれば、反応キュベットを底部で取り扱うことが可能となるため、自動分析システムに属する変位機器と回収分注機器との間の干渉リスクを回避することが可能となる。これら装置によれば、自動分析システムの信頼性および単純性の大幅な改善が可能となる。
【0009】
また、変位機器および少なくとも1つのサンプル処理ステーションのかかる構成によれば、自動分析システムのコンパクト性を向上し、反応キュベットを分析システムの異なる箇所に迅速、かつ正確に変位させることも、可能となる。
【0010】
さらに、本発明に係る自動分析システムの構成によれば、インキュベーションエリアと計測エリアを分離して実装されているため、それによって異なる温度にすることが可能となる。
【0011】
また、変位機器および少なくとも1つのサンプル処理ステーションのかかる構成によれば、反応キュベットの変位中に反応キュベットが汚染するリスクを制限することが可能となる。
【0012】
自動分析システムは、また、以下の特徴のうちの1つ以上を、個別にまたは組み合わせにより、提供してもよい。
【0013】
本発明の1実施形態によれば、少なくとも1つのサンプル処理ステーションは、体外診断用の、より具体的には、全血検査等の血液検査実施用の、分析および/または計測ステーションによって構成されていてもよい。
【0014】
本発明の1実施形態によれば、変位機器は、少なくとも1つのサンプル処理ステーションの下に配置される。
【0015】
本発明の1実施形態によれば、変位機器は、デカルト変位に応じて、反応キュベットを変位させるように構成される。
【0016】
本発明の1実施形態によれば、駆動部材は、反応キュベットを支持するように構成される。
【0017】
本発明の1実施形態によれば、各反応キュベットのベースは、下向きに開口する受容ハウジングを備え、駆動部材は、反応キュベットの受容ハウジング内に少なくとも部分的に受容されるように構成される。
【0018】
本発明の1実施形態によれば、変位機器は、第1の支持要素を第1の変位方向に従って並進駆動するように構成された第1の並進駆動手段と、第2の支持要素を第2の変位方向に従って並進駆動するように構成された第2の並進駆動手段と、駆動部材を第3の変位方向に従って並進駆動するように構成された第3の並進駆動手段と、を備える。
【0019】
本発明の1実施形態によれば、自動分析システムは、各々が少なくとも1つの受容キャビティを備える複数のサンプル処理ステーションを備える。
【0020】
本発明の1実施形態によれば、変位機器は、反応キュベットの変位中に、該反応キュベットを駆動部材上に保持するように構成された吸引手段を備える。
【0021】
本発明の1実施形態によれば、吸引手段は、駆動部材上に設けられ、真空源に接続されることを目的とする吸引オリフィスを含む。
【0022】
本発明の1実施形態によれば、各受容キャビティは、該受容キャビティに受容された反応キュベットを保持するように構成された少なくとも1つの保持要素(retaining element)を備える。
【0023】
本発明の1実施形態によれば、少なくとも1つの保持要素は、各々の受容キャビティに受容された反応キュベットの側壁との摩擦により協働するように構成される。
【0024】
本発明の1実施形態によれば、保存機器に保存されることを目的とする反応キュベットは、可撓性封止フィルムによって互いに接続されることで反応キュベットプレートを形成し、該プレートの反応キュベットはマトリックス状に配置され、可撓性封止フィルムは、該反応キュベットの開口部を封止する。かかる可撓性封止フィルムがあることにより、一方では反応キュベットが保存機器に装填される前の反応キュベットの取り扱いが容易になり、他方では反応キュベットに収容された液体の蒸発と、反応キュベットおよびその内容物の汚染リスクとを大幅に減少させる。
【0025】
本発明の1実施形態によれば、前記プレートの反応キュベットは並置される。
【0026】
本発明の1実施形態によれば、可撓性封止フィルムは、複数の封止部の範囲を定める複数の刻み線(score lines)を有し、各封止部は、各反応キュベットの開口部を封止する。
【0027】
本発明の1実施形態によれば、可撓性封止フィルムは、反応キュベットの行間に延在する第1系列刻み線と、反応キュベットの列間に延在する第2系列刻み線を有する。好ましくは、第1系列刻み線は、第2系列刻み線に略直交して延在する。
【0028】
本発明の1実施形態によれば、変位機器は、保存機器に保存された反応キュベットを持ち上げることによって、各々の封止部の範囲を定める刻み線を破るように構成される。
【0029】
本発明の1実施形態によれば、保存機器は、通路孔(passage hole)を有する止め部材(stop member)を備え、保存機器は、保存機器に保存された反応キュベットを変位機器が持ち上げる間、止め部材が持ち上げられた反応キュベットに隣接する反応キュベットの位置を固定するとともに、通路孔が持ち上げられた反応キュベットの少なくとも一部を通過させることができるように構成される。
【0030】
本発明の1実施形態によれば、各反応キュベットは、その側壁の各々に、隣接する反応キュベットと協働するように構成された少なくとも1つの位置決めリブ(positioning rib)を有することにより、2つの隣接する反応キュベットの開口部間に少なくとも1つの空間を形成する。位置決めリブは、さらに、反応キュベットの組み付けの前後に、該反応キュベットの光学面を保護するように構成される。
【0031】
本発明の1実施形態によれば、各位置決めリブは、隣接する反応キュベットの位置決めリブと協働することで、少なくとも1つの空間の各々を形成するように構成される。
【0032】
本発明の1実施形態によれば、各反応キュベットの位置決めリブは略平行である。
【0033】
本発明の1実施形態によれば、反応キュベットの各側壁に設けられた少なくとも1つの位置決めリブは、該反応キュベットに対向する側壁に設けられた少なくとも1つの位置決めリブに対して横方向にずれている。これらの配置により、反応キュベットの行列での位置決めが容易になり、かつ、例えば、振動ボウル内で反応キュベットを位置決めする際に、欠陥を自動で発見することが可能となる。
【0034】
本発明の1実施形態によれば、各位置決めリブは、各々の反応キュベットの、高さの少なくとも一部、例えば、略全高にわたって延在する。
【0035】
本発明の1実施形態によれば、可撓性封止フィルムは、反応キュベットの上縁に固定される。例えば、かかる固定は、ボンディング、溶接、またはヒートシーリングによって実現される。
【0036】
本発明の1実施形態によれば、自動分析システムは、各々が少なくとも部分的に1つの反応キュベットを受容および収容するように各々構成された複数のインキュベーションキャビティを備えるインキュベーション機器を備える。各インキュベーションキャビティは、下向きに開口し、反応キュベットを各々のインキュベーションキャビティに導入可能に構成された下部導入口を備える。変位機器は、各々の導入口を経由して、反応キュベットをインキュベーションキャビティに装填したり、該インキュベーションキャビティから取り出したりするように構成されている。特に、複数のインキュベーションキャビティがあることにより、インキュベーション機器に受容された反応キュベットの温度を様々な温度値に設定可能となる。
【0037】
本発明の1実施形態によれば、インキュベーション機器は、各々のインキュベーションキャビティ内へ開口する複数の上部通路オリフィスを有し、各上部通路オリフィスは、インキュベーション機器に受容された各反応キュベットに分析対象の生体液体サンプルおよび/または試薬製品を供給することが可能な回収針(collection needle)を通過させるためのものである。
【0038】
本発明の1実施形態によれば、インキュベーション機器は、固定化要素(immobilization element)を備え、固定化要素は、導入位置と固定化位置との間を移動可能に装着されている。導入位置では、反応キュベットをインキュベーションキャビティに装着したり、反応キュベットをインキュベーションキャビティから取り出したりすることが可能である。固定化位置では、各々のインキュベーションキャビティから反応キュベットが外れることを固定化要素が防ぐ。特に、これらの装置により、反応キュベットに生体液体サンプルおよび/または試薬製品を供給するための回収針が各封止部を穿孔している間に、反応キュベットがインキュベーション機器から外れることを回避することが可能となる。
【0039】
本発明の1実施形態によれば、固定化要素は、導入位置にあるときにはインキュベーションキャビティの導入口を開いた状態にし、固定化位置にあるときにはインキュベーションキャビティの導入口に少なくとも部分的に対向して延在するように構成される。
【0040】
本発明の1実施形態によれば、各インキュベーションキャビティは、反応キュベットを完全に収容するように構成される。
【0041】
本発明の1実施形態によれば、各インキュベーションキャビティは、反応キュベットを実質的に相補的な形状を呈する。これらの装置により、インキュベーションキャビティに受容された反応キュベットとインキュベーション機器との間に広い熱交換面を確保することが可能となり、それによって、該反応キュベットに収容された液体の温度をより良く調節することが可能となる。
【0042】
本発明の1実施形態によれば、固定化要素は、複数の通路口を含む。各通路口は、固定化要素が導入位置にあるときには各々のインキュベーションキャビティの導入口に対向して延在し、固定化要素が固定化位置にあるときには各々のインキュベーションキャビティの導入口に対して横方向にずれるように構成される。
【0043】
本発明の1実施形態によれば、インキュベーション機器のインキュベーションキャビティは、行列マトリックスに従って配置される。
【0044】
本発明の1実施形態によれば、インキュベーション機器は、インキュベーションキャビティに受容された各反応キュベットの温度を、所定の温度範囲に維持するように構成される。好ましくは、インキュベーション機器は、自動温度調節(thermostated)される。
【0045】
好ましくは、各インキュベーションキャビティは、インキュベーション機器の下面に開口する。
【0046】
本発明の1実施形態によれば、少なくとも1つのサンプル処理ステーションは、各々の受容キャビティ内に開口して回収針を通過させるための複数の上部通路オリフィスを備える。
【0047】
本発明の1実施形態によれば、自動分析システムは、少なくとも1つの回収機器を備える。回収機器は、自動分析システムに装填された容器内の分析対象の生体液体サンプルおよび/または試薬製品を回収し、この生体液体サンプルおよび/または試薬製品を反応キュベットに供給し、例えば、この生体液体サンプルおよび/または試薬製品を、インキュベーション機器および/または少なくとも1つのサンプル処理ステーションに受容された反応キュベットに供給するように配置される。
【0048】
本発明の1実施形態によれば、少なくとも1つのサンプル処理ステーションは、測光読取機器(photometric reading device)、蛍光読取機器(fluorescence reading device)、発光読取機器(luminescence reading device)、サイトメトリ計測機器(cytometric measurement device)、および凝固計測機器(coagulation measurement device)のうち少なくとも1つの機器を含む。例えば、少なくとも1つのサンプル処理ステーションは、いくつかの凝固計測機器を含んでいてもよい。
【0049】
本発明の1実施形態によれば、少なくとも1つのサンプル処理ステーションは、測光読取機器と、各々が1つの反応キュベットを少なくとも部分的に受容および収容するように各々構成された複数の受容キャビティを有するインキュベータとを備える測光読取ステーション(photometric reading station)を含む。測光読取機器は、インキュベータの受容キャビティに受容された反応キュベットの測光読み取りを行うことが可能である。
【0050】
本発明の1実施形態によれば、インキュベータは、
略垂直な回転軸を持ち、複数の受容キャビティを備えるインキュベーションロータと、
インキュベーションロータの下に配置された固定支持部と、を備え、
固定支持部は、インキュベーションロータ上に設けられた受容キャビティに受容された反応キュベットが、インキュベーションロータの動作によって変位可能である変位軌道(displacement track)の範囲を定め、該変位軌道は環状であるとともに上部が開放されている。
【0051】
本発明の1実施形態によれば、変位軌道は温度管理される。
【0052】
本発明の1実施形態によれば、固定支持部は、変位軌道へと開口し、反応キュベットが変位機器によってインキュベータに装填される際に通過可能な下部装填開口(lower loading opening)部を備える。
【0053】
本発明の1実施形態によれば、固定支持部は、変位軌道へと開口し、反応キュベットがインキュベータから取り出される際に通過可能な下部取出開口部(lower unloading opening)を備える。
【0054】
本発明の1実施形態によれば、インキュベータは、インキュベーションロータに関連付けられ、インキュベーションロータを回転軸周りに回転駆動するように配置された回転駆動手段を備える。
【0055】
本発明の別の実施形態によれば、測光読取機器は、変位軌道内に受容された反応キュベットの測光読み取りを行う測光器を備える。
【0056】
本発明の1実施形態によれば、インキュベータは固定されており、測光読取機器はインキュベータに対して移動可能に装着され、インキュベータの受容キャビティに受容された反応キュベットの測光読み取りを行うように構成される。本発明のかかる実施形態によれば、インキュベータの受容キャビティは、整列している。
【0057】
本発明の1実施形態によれば、少なくとも1つのサンプル処理ステーションは、洗浄・磁気沈殿ステーション(washing and magnetic sedimentation station)を含む。洗浄・磁気沈殿ステーションは、1つの反応キュベットを少なくとも部分的に受容および収容するように構成された少なくとも1つの受容キャビティを備える。少なくとも1つの洗浄・磁気沈殿ステーションの少なくとも1つの受容キャビティは、下向きに開口し、反応キュベットを該少なくとも1つの受容キャビティに導入可能に構成された下部導入口を備える。変位機器は、各々の導入口を経由して、反応キュベットを該少なくとも1つの受容キャビティに装填したり、該少なくとも1つの受容キャビティから取り出したりするように構成されている。
【0058】
本発明の1実施形態によれば、洗浄・磁気沈殿ステーションは、少なくとも1つの洗浄・磁気沈殿ステーションの少なくとも1つの受容キャビティに受容された反応キュベットに収容された液体を吸い出し、洗浄液を該反応キュベットに導入するように構成された少なくとも1つの分注装置を備える。
【0059】
本発明の1実施形態によれば、洗浄・磁気沈殿ステーションは、永久磁石または電磁石等の少なくとも1つの磁界発生器を備える。
【0060】
本発明の1実施形態によれば、各反応キュベットは、少なくとも1つの対称面を持ち、また、例えば、2つの直交する対称面を有していてもよい。
【0061】
本発明の1実施形態によれば、サンプル処理ステーションは、インキュベーション機器の周りに配置される。
【0062】
本発明の1実施形態によれば、少なくとも1つのサンプル処理ステーションは、PCR増幅・計測ステーション等の分子生物学用増幅・計測ステーションを含む。例えば、PCR増幅・計測ステーションは、蛍光読取機器、または発光読取機器を備えていてもよい。
【0063】
本発明の1実施形態によれば、少なくとも1つのサンプル処理ステーションは、溶出ステーション(elution station)を含む。