特許第6871944号(P6871944)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871944
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】電磁波信号伝送のための導波管
(51)【国際特許分類】
   H01P 3/127 20060101AFI20210510BHJP
   H01P 3/12 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   H01P3/127
   H01P3/12 200
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-551263(P2018-551263)
(86)(22)【出願日】2017年3月28日
(65)【公表番号】特表2019-510434(P2019-510434A)
(43)【公表日】2019年4月11日
(86)【国際出願番号】KR2017003336
(87)【国際公開番号】WO2017171358
(87)【国際公開日】20171005
【審査請求日】2018年11月6日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0037121
(32)【優先日】2016年3月28日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0037141
(32)【優先日】2016年3月28日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0104466
(32)【優先日】2016年8月17日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514291196
【氏名又は名称】コリア アドバンスト インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】ペ,ヒョン・ミン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ハ・イル
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジュン・ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユン,テ・フン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ヒョ・サップ
【審査官】 福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0188206(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0368301(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0295297(US,A1)
【文献】 米国特許第03703690(US,A)
【文献】 米国特許第04216449(US,A)
【文献】 中国特許出願公開第1365160(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第1745497(CN,A)
【文献】 特開2007−235630(JP,A)
【文献】 特開昭53−100488(JP,A)
【文献】 特開2008−028523(JP,A)
【文献】 特開2003−069312(JP,A)
【文献】 特開2004−015483(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/102157(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 3/127
H01P 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波信号伝送のための導波管(waveguide)であって、
誘電率が互いに異なる二以上の誘電体を含む誘電体部、および
前記誘電体部の少なくとも一部を囲む伝導体部を含み、
前記二以上の誘電体は、前記導波管の長手方向に延在する第1誘電体および第2誘電体が含まれ、前記第2誘電体は前記第1誘電体のすべてを囲み、
前記第1誘電体は互いに分離された二以上の部分誘電体からなり、前記二以上の部分誘電体のうち第1部分誘電体の中心軸は前記伝導体部の中心軸と一致し、前記第2誘電体は前記二以上の部分誘電体のすべての長手方向の表面を囲み、
前記二以上の部分誘電体は空気からな
前記導波管を通じて伝送される信号は、前記二以上の部分誘電体と前記第2誘電体の間の境界(boundary)に沿ってガイドされるか前記第2誘電体と前記伝導体部の間の境界に沿ってガイドされる(guided)、導波管。
【請求項2】
前記導波管を通じての信号伝送チャネルで周波数の変化により表される群遅延(group delay)の変化の程度が既設定された水準以下である、
請求項1に記載の導波管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁波信号伝送のための導波管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
データトラフィックの急激な増加につれて、集積回路(IC)を連結する入力/出力バス(I/O bus)のデータ送受信速度も急速に増加している。過去数十年の間、コスト効率性および電力効率性が優秀な伝導体基盤のインタコネクト(interconnect)(例えば、銅線など)が有線通信システムにおいて広く適用されてきた。しかし、伝導体基盤のインタコネクトは、電磁誘導による表皮効果(skin effect)によって、チャネル帯域幅(channel bandwidth)に根本的な限界を有している。
【0003】
一方、伝導体基盤のインターコネクトに対する代案として、データ送受信速度の速い光(optical)基盤のインタコネクトが紹介されて広く使われているが、光基盤のインタコネクトは設置およびメンテナンス費用が非常に大きいため、伝導体基盤のインタコネクトを完璧に代替し難いという限界が存在する。
【0004】
最近では、誘電体からなる導波管で構成された新しいインタコネクトが紹介された。このような新しいインタコネクト(別名、イーチューブ(E−TUBE))は金属と誘電体の長所を共に有しているインタコネクトであって、費用および電力の側面での効率性が高く、短い範囲で速い速度のデータ通信を可能とする長所を有しているため、チップ・ツー・チップ(chip−to−chip)通信に活用され得るインタコネクトとして脚光を浴びている。
【0005】
ところが、従来に紹介された誘電体導波管を使う場合にも、非線形的な位相応答(non−linear phase response)により時間ドメインで発生する群遅延(group delay)の変化または偏差(variation)が大きく表される問題点や、実際の通信環境において導波管の長さ(length)やベンディング(bending)により信号の損失(loss)が大きく発生する問題点が存在する。
【0006】
そこで、本発明者は、位相応答の非線形性を改善し、実際の通信環境における信号の損失を緩和させることができる新しい構造の誘電体導波管に関する技術を提案する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前述した問題点をすべて解決することをその目的とする。
【0008】
また、本発明は、誘電率が互いに異なる二以上の誘電体を含む誘電体部と前記誘電体部の少なくとも一部を囲む伝導体部を含む導波管(waveguide)を提供することによって、チップ・ツー・チップ(chip−to−chip)通信での位相応答の非線形性を改善し、実際の通信環境における信号の損失を緩和できるようにすることを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための本発明の代表的な構成は次の通りである。
【0010】
本発明の一態様によると、電磁波信号伝送のための導波管(waveguide)として、誘電率が互いに異なる二以上の誘電体を含む誘電体部、および前記誘電体部の少なくとも一部を囲む伝導体部を含む導波管が提供される。
【0011】
この他にも、本発明を実現するための他の導波管がさらに提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、導波管を利用したチップ・ツー・チップ通信での位相応答の非線形性を改善することによって、周波数の変化により時間ドメインで発生し得る群遅延の変化の程度を減少させることができる効果が達成される。
【0013】
また、本発明によると、導波管が誘電率が互いに異なる二以上の誘電体で構成される誘電体部を含ませることによって、導波管を通じて伝送される信号の搬送周波数(carrier frequency)を低くすることができるため、信号伝送チャネルの帯域幅を効果的に使用できる効果が達成される。
【0014】
本発明によると、導波管の長さが長くなるか導波管が曲がる実際の通信環境において信号伝送チャネルの損失を減らすことができる効果が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施例により2−ポート(port)ネットワークで相互に連結されたチップ・ツー・チップインタフェース(chip−to−chip interface)装置の構成を概念的に示す図面。
図2】従来技術に係る導波管の構成を例示的に示す図面。
図3】本発明の一実施例に係る導波管の構成を例示的に示す図面。
図4】従来技術に係る導波管を利用して信号を送受信する場合と本発明の一実施例に係る導波管を利用して信号を送受信する場合のそれぞれに対して時間ドメインでの群遅延(group delay)を測定した実験の結果を示す図面。
図5】本発明の一実施例に係る導波管を利用して信号を送受信する場合に活用され得る帯域幅を例示的に示す図面。
図6】従来技術に係る導波管を利用して信号を送受信する場合と本発明の一実施例に係る導波管を利用して信号を送受信する場合のそれぞれに対して信号の損失(loss)を測定した実験の結果を示す図面。
図7】本発明の一実施例により信号伝送チャネル間の干渉をシミュレーションした結果を例示的に示す図面。
図8】本発明の一実施例により信号伝送チャネル間の干渉をシミュレーションした結果を例示的に示す図面。
図9】本発明の他の実施例に係る導波管の構成を例示的に示す図面。
【発明を実施するための形態】
【0016】
後述する本発明に対する詳細な説明は、本発明が実施され得る特定の実施例を例示として図示する添付図面を参照する。これらの実施例は、当業者が本発明を実施できるように充分かつ詳細に説明される。本発明の多様な実施例は互いに異なるが互いに排他的である必要はないということが理解されるべきである。例えば、ここに記載されている特定の形状、構造および特性は、一実施例に関連して本発明の精神および範囲を逸脱することなく他の実施例で具現され得る。また、それぞれの開示された実施例内の個別構成要素の位置または配置は、本発明の精神および範囲を逸脱することなく変更され得ることが理解されるべきである。したがって、後述する詳細な説明は限定的な意味ではなく、本発明の範囲は、適切に説明されるのであれば、その請求項が主張するものと均等なすべての範囲と共に添付された請求項によってのみ限定される。図面において類似する参照符号は、様々な側面にかけて同じであるか類似する機能を指し示す。
【0017】
以下、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できるようにするために、本発明の好ましい実施例に関して添付された図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
チップ・ツー・チップインタフェース装置の構成
図1は、本発明の一実施例により2−ポート(port)ネットワークで相互に連結されたチップ・ツー・チップインタフェース(chip−to−chip interface)装置の構成を概念的に示す図面である。
【0019】
図1を参照すると、本発明の一実施例に係るチップ・ツー・チップインタフェース装置には、物理的に分離されている二つのボード(図示されず)にそれぞれ存在するか、一つのボード(図示されず)に存在する二つのチップ(図示されず)間の電磁波信号伝送(例えば、データ通信など)のための相互間のに連結(すなわち、インタコネクト)手段である導波管100および前記二つのチップからの信号を導波管100に伝達するか導波管100からの信号を前記二つのチップに伝達する手段であるマイクロストリップ回路200a、200bが含まれ得る。本発明におけるチップ(chip)は、トランジスタのような半導体などが複数個集まって構成される伝統的な意味の電子回路部品を意味するだけでなく、相互間に電磁波信号をやり取りできるすべての類型の構成要素または素子(素子、element)を包括する最広義の概念として理解されるべきである。
【0020】
本発明の一実施例によると、第1チップから発生する信号は、第1マイクロストリップ回路200aのフィーディングライン(feeding line)およびプローブ(probe)に沿って伝播(propagate)され得、第1マイクロストリップ回路200aと導波管100の間のインピーダンス不連続面でトランジション(transition)されることにより導波管100を通じて第2チップに対して伝送され得る。
【0021】
また、本発明の一実施例によると、導波管100を通じて伝送された信号は、導波管100と第2マイクロストリップ回路200bの間のインピーダンス不連続面でトランジションされることによって、第2マイクロストリップ回路200bを通じて第2チップに伝送され得る。
【0022】
導波管の構成
以下、本発明の実現のために重要な機能を遂行する導波管100の内部構成および各構成要素の機能について詳察する。
【0023】
図2は、従来技術に係る導波管の構成を例示的に示す図面である。
【0024】
図2を参照すると、従来技術に係る導波管10は、誘電体コア(dielectric core)11および誘電体コア11を囲む金属クラッディング (metal cladding)12を含むことができる。
【0025】
従来技術に係る導波管を利用して信号を伝送する場合には、非線形的な位相応答(non−linear phase response)により時間ドメインで発生する群遅延(group delay)の変化または偏差(variation)が大きく表される問題点が発生する可能性があり、実際の通信環境において導波管の長さ(length)やベンディング(bending)により信号の損失(loss)が大きく発生する問題点も発生する可能性がある。
【0026】
図3は、本発明の一実施例に係る導波管の構成を例示的に示す図面である。
【0027】
図3を参照すると、本発明の一実施例に係る導波管100は、誘電率が互いに異なる二以上の誘電体を含む誘電体部と前記誘電体部の少なくとも一部を囲む伝導体部130を含むことができる。
【0028】
具体的には、本発明の一実施例によると、誘電体部に含まれる二以上の誘電体には第1誘電体(dielectric)110および第2誘電体120が含まれ得、第2誘電体120は第1誘電体110の少なくとも一部を囲む形状を有することができる。例えば、第2誘電体120は第1誘電体110をすべて取り囲んだり第1誘電体を部分的に取り囲むことができる。
【0029】
より具体的には、本発明の一実施例によると、図3に図示された通り、導波管100をその長さに垂直な方向に切断した断面で見た時、第1誘電体110は円形のコア(core)の形状を有し得、第2誘電体120および伝導体部130は環状のクラッディング (cladding)の形状を有し得る。また、本発明の一実施例によると、誘電体部の中心軸(より具体的には、第1誘電体110の中心軸および第2誘電体120の中心軸)と伝導体部130の中心軸とは互いに一致し得る。
【0030】
ただし、本発明に係る導波管100の内部構成または形状は必ずしも前記に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲内でいくらでも変更することができる。
【0031】
一方、本発明の一実施例によると、伝導体部130は電気伝導性を有する物質で構成され得る。例えば、本発明の一実施例に係る伝導体部130は、伝統的に広く使われている銅(Cu)のような金属性物質で構成されるかグラフェン(graphene)のような非金属性物質で構成され得る。
【0032】
図9は、本発明の他の実施例に係る導波管の構成を例示的に示す図面である。
【0033】
図9の(a)を参照すると、本発明の他の実施例に係る導波管100に含まれる第1誘電体110は互いに分離された二以上の部分誘電体110a、110bで構成され得、第2誘電体120は前記二以上の部分誘電体の少なくとも一部を囲む形状を有し得る。図9の(a)の実施例において、第1誘電体110は空気で構成され得る。
【0034】
図9の(b)を参照すると、本発明の他の実施例に係る導波管100には、第1誘電体110および伝導体部130の間に配置され、第1誘電体110および伝導体部130の間で第2誘電体120が存在する空間が維持されるようにする機能を遂行する支持部140がさらに含まれ得る。図9の(b)の実施例において、第2誘電体120は空気で構成され得る。
【0035】
一方、本発明の一実施例によると、第1誘電体110の誘電率(permittivity)は第2誘電体120の誘電率より大きいか小さくてもよい。より具体的には、本発明の一実施例によると、誘電率が互いに異なる第1誘電体110および第2誘電体120を使うことによって、導波管100を通じての信号伝送チャネルで周波数の変化に伴って表される群遅延の変化の程度を画期的に減らすことができる。特に、図3の実施例において、第1誘電体110の誘電率が第2誘電体120の誘電率より大きいほど前記群遅延の変化の程度が小さくなり得る。群遅延に関する詳しい説明は後述する。
【0036】
例えば、第1誘電体110は誘電定数(dielectric constant)が約2.0であるテフロン(teflon)からなり得、第2誘電体120は誘電定数が約1.2であるポリエチレン(polyethylene)からなり得る。また、別の例として、第1誘電体110は誘電定数が約1.0である空気からなり得、第2誘電体120は誘電定数が約2.0であるテフロンからなり得る。その反対に、第1誘電体110はテフロンからなってもよく、第2誘電体120は空気からなってもよい。
【0037】
したがって、本発明の一実施例によると、導波管100を通じて伝送される信号(すなわち、電磁波)は、誘電率が互いに異なる第1誘電体110と第2誘電体120の間の境界(boundary)に沿ってガイドされたり第1誘電体110または第2誘電体120と伝導体部130の間の境界に沿ってガイドされ(guided)得る。
【0038】
一方、図面によって図示されてはいないが、本発明の一実施例によると、二以上の導波管100(すなわち、二以上の導波管100のそれぞれが第1誘電体110、第2誘電体120および伝導体部130を含む)が、二以上が所定の配列をなした状態で結合されて束を形成することができ、このような束に含まれる二以上の導波管100のそれぞれは互いに異なる信号伝送チャネルを通じて信号を伝送する機能を遂行することができる。
【0039】
図4は、従来技術に係る導波管を利用して信号を送受信する場合と本発明の一実施例に係る導波管を利用して信号を送受信する場合のそれぞれに対して時間ドメインでの群遅延を測定した実験の結果を示す図面である。
【0040】
まず、図4の(a)を参照すると、従来技術に係る導波管(すなわち、誘電体コア11および金属クラッディング 12で構成される導波管)を使う場合に、非線形的な位相応答(non−linear phase response)が激しく表され得、このため、導波管を通じての信号伝送チャネルで周波数の変化による群遅延の変化の程度が大きく表され得る。実際に、図4の(a)のグラフを参照すると、50GHzの周波数での群遅延が無限大に近い反面、73GHzの周波数での群遅延は20ns程度であり、周波数帯域が変わることにより表される伝送信号の時間ドメインでの群遅延の偏差(または変化)が非常に大きいことを確認することができる。
【0041】
次に、図4の(b)を参照すると、本発明の一実施例に係る導波管(すなわち、第1誘電体110、第2誘電体120および伝導体部130で構成される導波管)を使う場合に、非線形的な位相応答を減らし、それによって導波管を通じての信号伝送チャネルに表され得る周波数の変化による群遅延の変化の程度も画期的に減らすことができる。実際に、図4の(b)のグラフを参照すると、50GHzから73GHzまでの全周波数帯域にわたって群遅延が7ns〜8nsの水準を一定に維持するものと表されたし、このような実験結果から、本発明の一実施例に係る導波管100を使うと、周波数帯域が変わることにより表される伝送信号の時間ドメインでの群遅延の偏差(または変化)が画期的に低下され得ることを確認することができる。
【0042】
図5は、本発明の一実施例に係る導波管を利用して信号を送受信する場合に活用され得る帯域幅を例示的に示す図面である。
【0043】
図5を参照すると、本発明の一実施例に係る導波管100は、誘電率が互いに異なる第1誘電体110および第2誘電体120を含むことによって、導波管100を通じての信号伝送チャネルで周波数の変化により表され得る群遅延の変化を画期的に低くすることができ、これに伴い、使用者(または設計者)にとって導波管100を通じて伝送される信号の搬送周波数(carrier frequency)をアッパーコーナー周波数(upper corner frequency)(図5の(a)のfc1)からロウアーコーナー周波数(lower corner frequency)(図5の(a)のfc2)に低くすることができる。
【0044】
したがって、本発明の一実施例に係る導波管100によると、単側波帯伝送(single side band transmission)が可能となるため信号伝送チャネルの帯域幅を効果的に使用できるようになり、搬送周波数を低くすることができるため導波管100をはじめとするチップ−ツー−チップインタフェース(ひいては、信号送受信機)が信頼性を有して動作できるようになり、チップ−ツー−チップインターフェースの低電力設計を可能とする効果が達成される。
【0045】
これに対し、第2誘電体120を含まない従来技術に係る導波管を使う場合には(図4の(a)参照)、ロウアーコーナー周波数付近ですでに相当な非線形的位相応答が発生するため、もし搬送周波数をロウアーコーナー周波数に服くすると、伝送信号が激しく歪む(distortion)ことを避けられなくなる。
【0046】
図6は、従来技術に係る導波管を利用して信号を送受信する場合と本発明の一実施例に係る導波管を利用して信号を送受信する場合のそれぞれに対して信号の損失を測定した実験の結果を示す図面である。図6の実施例において、本発明の一実施例に係る導波管と従来技術に係る導波管はその長さがいずれも15cmであり、前記二つの導波管は同じ程度に曲がった状態で信号を伝送した。
【0047】
図6の(c)を参照すると、本発明の一実施例により第1誘電体、第2誘電体および伝導体部をすべて含む導波管(図6の(a)参照)の信号伝送チャネル特性と、従来技術により第1誘電体および第2誘電体のみを含む(すなわち、伝導体部を含まない)導波管(図6の(b)参照)の信号伝送チャネル特性をそれぞれ確認することができる。具体的には、図6の(c)を参照すると、本発明の一実施例に係る導波管は、従来技術に係る導波管に比べて導波管内に信号を閉じ込めることができる性能が高いため(high confinement)、広い周波数帯域(例えば、70GHz〜100GHz)にわたって従来技術に係る導波管より信号の損失が少なく表されること(すなわち、信号の強度が大きく表されること)を確認することができる。
【0048】
より具体的には、従来技術により伝導体部を含まないまま第1誘電体および第2誘電体のみを含む導波管では、第1誘電体および第2誘電体の間の境界で行われる全反射によって信号がガイドされ得るが、もし前記のような全反射が発生できなくなる程度にまで導波管がひどく曲がると、信号が導波管内で正しくガイドされずに導波管の外に抜け出され得、これによって信号の損失が発生するようになる。これとは異なり、本発明により第1誘電体、第2誘電体および伝導体部をすべて含む導波管では、第1誘電体および第2誘電体の間の境界に全反射が行われなくなるほど導波管がひどく曲がっても、第1誘電体および第2誘電体の間の境界で全反射されずに外に抜け出た信号が第2誘電体および伝導体部の間の境界に沿ってガイドされ得るため、信号が導波管の外に漏れることを防止して信号の損失を減らすことができる。また、信号の周波数が低いほど信号の波長は長くなるため、従来技術に係る導波管と本発明に係る導波管の間の性能(すなわち、導波管の曲げによる信号の損失防止性能)の差は伝送される信号の周波数が低いほどさらに克明となり得る。
【0049】
したがって、本発明の一実施例に係る導波管によると、導波管の長さが長くなったり導波管が曲がる実際の通信環境での信号伝送チャネルの損失を減らすことができる効果を達成することができる。
【0050】
図7および図8は、本発明の一実施例により信号伝送チャネル間の干渉をシミュレーションした結果を例示的に示す図面である。
【0051】
図7の実施例において、0.5mmの間隔を置いて近く配置された二つの導波管711、721のそれぞれを通じて電磁波信号を伝送する場合を仮定する。
【0052】
このような場合に、図8を参照すると、第1−1マイクロストリップ回路712および第1導波管711の間のトランジション714と第2−1マイクロストリップ回路722および第2導波管721の間のトランジション724の間の信号伝達係数(すなわち、図8のS31および810)が−30dB以下と非常に小さく示されるので、前記両トランジション714、715間の干渉(すなわち、図7の731)が無視できるほど小さいことを確認することができる。
【0053】
引き続き図8を参照すると、第1−1マイクロストリップ回路712および第1導波管711の間のトランジション714と第2−2マイクロストリップ回路723および第2導波管721の間のトランジション725の間の信号伝達係数(すなわち、図8のS41および820)も−30dB以下と非常に小さく示されるので、前記両導波管711、721の間の干渉(すなわち、図7の732)も無視できるほど小さいことを確認することができる。
【0054】
したがって、本発明の一実施例によると、図7および図8の実施例で確認できるように、隣接した二つの導波管711、721に含まれる伝導体部が隣接した両導波管711、721の相互間の信号の干渉を防止する顕著な効果が達成されると言える。
【0055】
以上では本発明に係る導波管に含まれる誘電体部が誘電率が互いに異なる二つの誘電体(すなわち、第1誘電体110および第2誘電体)で構成される場合について主に説明されたが、本発明に係る導波管の誘電体部の構成は必ずしも前記説明に限定されず、本発明の目的または効果を達成できる範囲内でいくらでも変更することができる。例えば、本発明の他の実施例に係る導波管の誘電体部には、誘電率が互いに異なる三以上の誘電体が含まれてもよい。
【0056】
以上、本発明に係る導波管に含まれる構成要素に関する細部仕様またはパラメーターについて具体的に説明されたが、本発明に係るマイクロストリップ回路の構成は必ずしも前記説明に限定されず、本発明の目的または効果を達成できる範囲内でいくらでも変更することができる。
【0057】
以上、本発明を具体的な構成要素などのような特定の事項と限定された実施例および図面によって説明したが、これは本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたものに過ぎず、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者であればこのような記載から多様な修正および変形を試みることができる。
【0058】
したがって、本発明の思想は前記説明された実施例に限定して定まってはならず、後述する特許請求の範囲だけでなくこの特許請求の範囲と均等または等価的に変形された全てのものは本発明の思想の範疇に属するものと言える。
【符号の説明】
【0059】
10、20:従来技術に係る導波管
11:従来技術に係る導波管のコア
12:従来技術に係る導波管のクラッディング
100:導波管
110:第1誘電体
120:第2誘電体
130:伝導体部
200aおよび200b:第1マイクロストリップ回路および第2マイクロストリップ回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9