特許第6871955号(P6871955)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871955
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】オフセットクラッチ連結解除プーリー
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/36 20060101AFI20210510BHJP
   F16D 41/20 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   F16H55/36 Z
   F16D41/20 A
【請求項の数】16
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-567719(P2018-567719)
(86)(22)【出願日】2017年6月30日
(65)【公表番号】特表2019-525084(P2019-525084A)
(43)【公表日】2019年9月5日
(86)【国際出願番号】EP2017066356
(87)【国際公開番号】WO2018002343
(87)【国際公開日】20180104
【審査請求日】2020年5月19日
(31)【優先権主張番号】1656151
(32)【優先日】2016年6月30日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591136931
【氏名又は名称】ハッチンソン
【氏名又は名称原語表記】HUTCHINSON
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルジャワ ジャン−マルク
(72)【発明者】
【氏名】ギヨ ブノア
(72)【発明者】
【氏名】ヴァラン エルヴェ
【審査官】 鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0252884(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0276039(US,A1)
【文献】 登録実用新案第3177056(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/36
F16D 41/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向軸(AX)を有する連結解除プーリー(100、100’、100’’、100’’’、100’’’’)であって、前記プーリーは、
リム(1)であって、前記リムを第1動力伝達要素に接続するベルトが装着されるように設計された第1領域(11)と、前記第1領域(11)の軸方向、具体的には前記プーリーの前記長手軸(AX)により画定される方向の延長線上に配置された第2領域(12)とを有するリム(1)と、
第2動力伝達要素に固定されるように設計されたハブ(2、2’、2’’)と、
ここで前記動力伝達要素の一方が駆動要素となり、他方が被駆動となり、
リング(3)であって、前記リング(3)が前記リム(1)および/または前記ハブ(2、2’、2’’)に対して、前記長手方向軸中心に回転可能なように、前記リム(1)の前記第2領域(12)の下で、前記ハブ(2、2’、2’’)の周りに取り付けられるリング(3)と、
前記ハブ(2、2’、2’’)と、前記リング(3)との間に取り付けられる弾性変形要素(4、4’、4’’)と、
一方の端部(51)が前記リング(3)に固定され、残りの部分(52)が前記リム(1)の前記第2領域(12)の下、前記リング(3)の上の両方に取り付けられるワンウェイクラッチ(5)と、を備え、
前記プーリーはさらに、
前記リム(1)の前記第1領域(11)は、内径(D11)を有し、
前記リム(1)の前記第2領域(12)は、内径(D12)を有し、前記第2領域(12)の前記内径(D12)が前記第1領域(11)の前記内径(D11)よりも大きくなるように構成される、プーリー。
【請求項2】
フード(8)が、前記リム(1)に固定され、前記リング(3)に接触するように設けられる、請求項1に記載のプーリー(100、100’、100’’、100’’’、100’’’’)。
【請求項3】
前記弾性変形要素は、前記ハブ(2)を中心としたねじりばね(4、4’)である、請求項1または2に記載のプーリー(100、100’、100’’、100’’’、100’’’’)。
【請求項4】
前記ワンウェイクラッチ(5)の前記端部(51)は、前記ねじりばね(4、4’)の一端部(41、41’)と接触するように配置される、請求項3に記載のプーリー(100、100’、100’’、100’’’、100’’’’)。
【請求項5】
前記ワンウェイクラッチ(5)に接触する、前記ねじりばね(4)の前記端部(41)が、その他に対して湾曲しているため、前記ねじりばね(4)が略円筒形に画定され、
前記ワンウェイクラッチ(5)の前記端部(51)は、前記ねじりばね(4)の前記湾曲端部(41)の側面(410)に接触する、
請求項4に記載のプーリー(100、100’、100’’、100’’’、100’’’’)。
【請求項6】
前記ワンウェイクラッチ(5)に接触する前記ねじりばね(4)の前記端部(41)が、その他に対して湾曲していないため、前記ねじりばね(4)が略円筒形に画定され、
前記ワンウェイクラッチ(5)の前記端部(51)と、前記ねじりばね(4’)のこの非湾曲端部(41’)と端部同士がつながるように接触するように配置される、
請求項4に記載のプーリー(100’’’)。
【請求項7】
前記ハブ(2)は少なくとも1つの突起(21、22、23)を備え、
前記リング(3)は前記ハブ(2)の前記少なくとも1つの突起(21、22、23)を収容する少なくとも1つのオリフィス(31、32、33)をさらに備え、
それによって、前記ねじりばね(4、4’’)は、前記リム(1)と前記ハブ(2)との間の相対回転方向で、前記ハブ(2)の前記少なくとも1つの突起(21、22、23)が前記リング(3)の前記少なくとも1つのオリフィス(31、32、33)の一端部(311、321、331)に当接するまで、前記ハブ(2)に係合する、
請求項4から6のいずれか1項に記載のプーリー(100、100’’’)。
【請求項8】
前記リム(1)と前記ハブ(2)との間に位置決めされた少なくとも1つの軸受(6)を備える、請求項4から7のいずれか1項に記載のプーリー(100、100’、100’’)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの軸受(6)は、径方向に延在し、前記ハブ(2、2’)に接触する少なくとも1つの面(61)を備える、請求項8に記載のプーリー(100、100’、100’’)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの軸受(6)は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二硫化モリブデン(MoS)入りポリアミド(PA)、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)入りポリアミド(PA)のいずれかから選択されたプラスチック材料、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)入り外部層で被膜された、金属または金属合金の内部層により作製される、請求項8または9に記載のプーリー(100、100’、100’’)。
【請求項11】
前記弾性変形要素内に、エラストマー、または熱可塑性エラストマー製の部材(4’’)が存在する、請求項1または2に記載のプーリー(100’’)。
【請求項12】
前記ハブ(2’’)と前記リム(1)との間であって前記リム(1)の前記第1領域(11)の下に配置される少なくとも1つのローラー軸受(6’’)が設けられる、請求項11に記載のプーリー(100’’)。
【請求項13】
前記ワンウェイクラッチ(5)の前記端部(51)が前記リング(3)のスロット(35)内に収容され、前記プーリーがさらに前記スロット(35)内で、前記ワンウェイクラッチ(5)の前記端部(51)に隣接して配置される爪(60)をさらに備える、請求項1から12のいずれか1項に記載のプーリー(100、100’、100’’’)。
【請求項14】
カウンターリング(300、300’)であって、前記リング内に設けられた前記オリフィス(L1、L2)と、前記カウンターリング内に設けられた突起(E1、E2)とにより、前記リング(30、30’)と協働するカウンターリング(300、300’)を備える、請求項1から12のいずれか1項に記載のプーリー(100’’’’)。
【請求項15】
前記ワンウェイクラッチ(5)は、接触巻線を有するコイルばねである、請求項1から14のいずれか1項に記載のプーリー(100、100’、100’’、100’’’、100’’’’)。
【請求項16】
記接触巻線を有するコイルばねは、
円筒形と、
前記リングに固定されるその端部(51)から延長する円筒形第1部位と、前記第1部位から延長する円錐形第2部位とを有する形状と、
樽型と、
前記リングに固定されるその端部(51)から延長する円錐形第1部位と、前記第1部位から延長する円筒形第2部位とを有する形状と、
から選択された形状を有する、請求項15に記載のプーリー(100、100’、100’’、100’’’、100’’’’)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結解除プーリーの分野に関する。
【0002】
この種のプーリーは、例えば欧州特許0989479号(D1)という文献に提示されている。
【0003】
このプーリーを、図1の長手方向断面図に示す。
【0004】
プーリーPは、ねじりばねRTにより互いに連結可能なリムJおよびハブMと、ねじりばねRTに連続して取り付けられるワンウェイクラッチEUとを備える。
【0005】
ねじりばねRTは、例えばリムに取り付けられて駆動軸に接続されたベルトにより、リムJ上に発生した回転運動を、ハブMに送るように製造および配置される。これにより、例えばオルタネータ等の補機の軸に取り付けられるように設計されたハブMを、リムと同じ方向に駆動できる(連結モード)。
【0006】
さらに、ワンウェイクラッチEUは、特に、例えばモーターの減速により、プーリーが減速した際、リムJの回転速度よりも高速で、ハブM、延いては当該ハブが取り付けられるように設計された軸が回転できるように、製造および配置される(「自由回転」モード)。
【0007】
したがって、従来「連結」モードでは、モータートルクは、ベルト、リムJ、リムJとの摩擦で駆動されるワンウェイクラッチEU、ワンウェイクラッチEUに連続して取り付けられたねじりばね、ねじりばねが取り付けられたハブM(したがって、ねじりばねはハブMに固定された部品Cに接触する)、そして最後にハブが取り付けられたシャフトに伝達される。
【0008】
一方、「自由回転」モードでは、ワンウェイクラッチEUはリムJから連結解除され、ワンウェイクラッチに連続して取り付けられたねじりばねRTが、ゼロトルクで中立位置に配置される。
【0009】
文献D1に開示されたプーリーでは、「連結」モードにおいてねじりばねRTが大きく変形する(径方向に広がる)可能性があるという実際に欠点が認められる。実際、この動作モードでは、ねじりばねRTによりトルクが送られるが、トルク印加によるねじりばねの径方向の広がりが制限されない。
【0010】
したがって、ワンウェイクラッチEUに接触するまで、ねじりばねRTが径方向に広がり得るのである。実際、文献D1において、ベルトの装着領域DEに配置されたワンウェイクラッチEUは、直接ねじりばねRT周りに設けられる。
【0011】
これにより装置が動作不能に陥る可能性もある。
【0012】
これは周知の問題であって、ねじりばねの径方向の広がりを制限する手法が既に提案されている。
【0013】
即ち、この問題を解決するため、米国特許第7,975,821B2(D2)号という文献は、ねじりばねと、ワンウェイクラッチとの間に中間部位(文献D2の図2における参照符号110)を設けることを開示する。
【0014】
しかし、文献D2で提案された解決手段は、ベルトの装着領域の段階で、プーリーの直径が、文献D1に開示されたプーリーの直径よりも大きくなることを伴う。
【0015】
これは現実的な問題を生じ得る。即ち、機械メーカーまたは、具体的には自動車のような車両メーカーにより設定される、ベルトの装着領域段階におけるプーリーの最大許容直径により、上述のプーリーが 、あらゆる種類の用途に利用不能となってしまうのである。これにより、モーターのクランクシャフトと、オルタネータとの間で得られるギア比が限定される。現実的には、好適な有効径が50mmとなる歯付き領域は不可能である。したがって、ワンウェイクラッチを形成するばねの寸法設定についても自由度が限定される。
【0016】
また、リムとハブとの間で伝達されるトルクはワンウェイクラッチも通過することから、ワンウェイクラッチの寸法設定についてもさらに自由度が限定される。
【0017】
本発明の目的は、前記の欠点の少なくとも1つを呈さない、ワンウェイクラッチを実現する連結解除プーリーを提示することである。
【0018】
したがって、本発明は、長手方向軸を有する連結解除プーリーであって、前記プーリーは、
リムであって、前記リムを第1動力伝達要素に接続するベルトが装着されるように設計された第1領域と、前記第1領域の軸方向、具体的には前記プーリーの前記長手方向軸により画定される方向の延長線上に配置された第2領域とを有するリムと、
第2動力伝達要素に固定されるように設計されたハブと、
ここで前記動力伝達要素の一方が駆動要素となり、他方が被駆動となり、
リングであって、前記リングが前記リムおよび/または前記ハブに対して、前記長手方向軸中心に回転可能なように、前記リムの前記第2領域の下で、前記ハブの周りに取り付けられるリングと、
前記ハブと、前記リングとの間に取り付けられる弾性変形要素と、
一方の端部が前記リングに固定され、残りの部分が前記リムの前記第2領域の下、前記リングの上の両方に取り付けられるワンウェイクラッチと、を備え、
前記プーリーはさらに、
前記リムの前記第1領域は、内径を有し、
前記リムの前記第2領域は、内径を有し、前記第2領域の前記内径が前記第1領域の前記内径よりも大きくなるように構成されるプーリーを提案する。
【0019】
前記装置は、以下の特徴の少なくとも1つを個別に、または組み合わせで有してもよい。
前記プーリーが、前記リムに固定され、前記リングに接触するように設けられるフードを備える。
前記ワンウェイクラッチは、例えば接触巻線を有するコイルばねである。
前記ワンウェイクラッチの前記端部が前記リングのスロット内に収容され、前記プーリーがさらに前記スロット内で、前記ワンウェイクラッチの前記端部に隣接して配置される爪をさらに備える。
前記弾性変形要素は、前記ハブを中心とするねじりばねである。
前記ワンウェイスプリングの前記端部は、前記ねじりばねの端部と接触するように配置される、
前記ワンウェイクラッチに接触する、前記ねじりばねの前記端部が、前記ねじりばねの略円筒形を画定する前記その他に対して湾曲し、前記ねじりばねの略円筒形を画定し、前記ワンウェイクラッチの前記端部は、前記ねじりばねの前記湾曲端部の側面に接触するように、前記プーリーが構成される。
前記ワンウェイクラッチに接触する前記ねじりばねの前記端部が、前記ねじりばねの略円筒形を画定する前記その他に対して湾曲しておらず、前記ワンウェイクラッチの前記端部と、前記ねじりばねのこの湾曲端部と端部同士がつながるように配置されるように前記プーリーが構成される。
前記ハブが少なくとも1つの突起を備え、前記リングが前記ハブの前記少なくとも1つの突起を収容する少なくとも1つのオリフィスをさらに備え、それによって、前記ねじりばねは、前記リムと、前記ハブとの間の相対回転方向で、前記ハブの前記少なくとも1つの突起が前記リングの前記少なくとも1つのオリフィスの一端部に当接するまで、前記ハブに係合するように構成されるように、前記プーリーが構成される。
前記プーリーは、前記リムと、前記ハブとの間に配置される少なくとも1つの軸受を備え、少なくとも1つの軸受が、径方向に延在し、前記ハブに接触する少なくとも1つの面を備える。
前記少なくとも1つの軸受は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二硫化モリブデン(MoS)入りポリアミド(PA)、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)入りポリアミド(PA)のいずれかから選択されたプラスチック材料、
またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)入り外部層で被膜された、金属または金属合金の内部層により作製される。
前記弾性変形要素が、エラストマー、または熱可塑性エラストマー製の部材である。
前記プーリーに、前記ハブと、前記リムとの間、有利には前記リムの前記第1領域の下に配置される少なくとも1つのローラー軸受が設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
添付の図面を参照に以下の説明を読むことで、本発明がよりよく理解でき、本発明のその他目的、効果、および特徴が明らかになろう。図面は以下のとおりである。
図2図2は、本発明の第1実施形態を、長手方向断面図で示す。
図3図3は、図2に示すプーリーの分解図である。
図4図4は、図2に示すプーリーの断面斜視図である。
図5図5は、図4に示す断面斜視図とは異なる、図2に示すプーリーの断面斜視図である。
図6図6は、リングを省略して、図2に示すプーリーの別の斜視図である。
図7図7は、図2に示すプーリーを、図4と同様であるが、別の動作モードで示す断面図である。
図8図8は、駆動要素(例えば、リム)と、被駆動要素(この例では、ハブ)との間で、これら要素間の角度増大に基づいて伝送されるトルクの増加を示すグラフである。
図9図9は、本発明のプーリーの第2実施形態を、長手方向断面斜視図に示す。
図10図10は、図9に示すプーリーの分解図である。
図11図11は、本発明のプーリーの第3実施形態を、長手方向断面斜視図で示す。
図12図12は、図11に示すプーリーの分解図である。
図13図13は、本発明のプーリーの第4実施形態を、リングなしで、長手方向断面斜視図で示す。
図14図14は、図13に示すプーリーの分解図である。
図15図15は、本発明のプーリーの第1実施形態による、プーリーの前断面図である。
図16図16は、プーリーのワンウェイクラッチと、ワンウェイクラッチと共に使用可能な爪を示す。
図17図17は、リングがカウンターリングと協働する、本発明のプーリーの第5実施形態を、長手方向断面図で示す。
図18図18は、図17のリングの前面図を示す。
図19図19は、図18のリングを協働するように設計された、図17のカウンターリングの後斜視図である。
図20図20は、本発明の目的のために使用可能なワンウェイクラッチを、側面図で示す。
図21図21は、本発明の目的のために使用可能な別のワンウェイクラッチを、側面図で示す。
図22図22は、本発明の目的のために使用可能なさらに別のワンウェイクラッチを、側面図で示す。
図23図23は、図17に示す本発明のプーリーの第5実施形態によるリングと、カウンターリングを、図22に係わるワンウェイクラッチとともに示す分解図である。
図24図24は、図23に対して反対側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のプーリー100の第1実施形態を、図2から図7の異なる図で示す。
【0022】
本発明の連結解除プーリー100は、第1動力伝達要素(図示せず。例えば、車両の駆動軸に接続されるベルトであって、この場合駆動側となる)に固定されるように設計されたリム1を備える。リム1は、ベルト(ここでは、ポリV(登録商標)型ベルトである)を装着するための第1領域11が設けられる。これにより、リム1と、第1動力伝達要素とが接続可能となる。リム1はさらに、軸方向、即ちプーリー100の、長手方向軸AXにより定義される方向で第1領域11から延在する、第2領域12が設けられる。
【0023】
リム1の第2領域12の内径D12が、このリム1の第1領域11の内径D11よりも大きいことが有利である。
【0024】
プーリー100はさらに、第2動力伝達要素(例えば、オルタネータ軸であって、この場合は被駆動側となる)に固定され、この第1実施形態においては少なくとも、軸方向(図2の長手軸AX)に延在することが有利な、突起21、22、23を備えるハブ2を備える。
【0025】
動力伝達要素の内の一方は駆動要素となり、他方が被駆動となる。
【0026】
プーリー100はさらに、リム1の第2領域12の下、そしてハブ2の周りに取り付けられるリング3を備える。さらにリング3は、リム1および/またはハブ2に対して、長手方向軸AX中心に回転できるように、プーリー100内に取り付けられる。この回転運動は、以下の記載により詳細に説明する。この第1実施形態において、リング3はハブ2の前記少なくとも1つの突起21、22、23を収容する少なくとも1つのオリフィス31、32、33をさらに備える。前記または各オリフィス31、32、33は、2つの端部310と311、320と321、330と331を備える。これらの端部は、プーリー100の動作モードに応じて、ハブ2の対応する突起21、22、23に対する終止端となるように構成される。
【0027】
プーリー100はさらに、この第1実施形態に特有の場合ではねじりばねとなる、弾性変形要素4が設けられる。
【0028】
このねじりばね4は、ハブ2と、リング3との間に取り付けられる。より具体的には、ねじりばね4は、ハブ2を中心とする。ハブ2は、ねじりばね4を収容する、外周溝25が設けられることが有利である。ハブ2と、リング3との間に確実に挿入されるように、ねじりばね4はハブ2と、リング3との両方に固定されることが有利である。ねじりばね4は、圧力ばめまたは、ハブ2およびリング3内に設けられた保持形状により、ハブ2およびリング3に取り付けることができる。例えば、添付の図では、ねじりばね4の端部41がリング3に圧力ばめされ(図5)、ねじりばね4の他端部42がハブ2に圧力ばめされ(図2)されているように示される。
【0029】
プーリー100は、ここでは例示的に、接触巻線を有するコイルばねの形態をとるワンウェイクラッチ5も備える。
【0030】
このワンウェイクラッチ5は、リム1内に取り付けられる。より具体的には、ワンウェイクラッチ5は、例えばリング3内に設けられた開口部またはスロット35内に挿入、あるいは圧力ばめにより、リング3に固定される端部51を備える。ワンウェイクラッチ5の残りの部分52は、例えばリム1の第1領域12の下、そしてリング3の上の両方に取り付けられる。なお、この部分52は、円筒形の概略形状を有する。
【0031】
ワンウェイクラッチ5の他端部(添付の図では図示せず)は、自由端として、リング3にもリム1にも固定されないことが有利である。この場合、ワンウェイクラッチ5は通常状態において、リム1よりも大径となるように選択される。これにより、ワンウェイクラッチ5が、リム1の第2領域12の内孔内に挿入された際に、確実に与圧される。
【0032】
添付の図1から図7に示すように、ワンウェイクラッチ5の端部51は、アームの形態をとることが有利である。この端部またはアーム51は、トルク伝達を向上するように、ねじりばね4の端部41に接触していることが有利である。より具体的には、ねじりばね4の、ワンウェイクラッチ5に接触する端部41は、ねじりばねの、略円筒形を画定する他部に対して湾曲している。これにより、ワンウェイクラッチの端部51は、ねじりばね4の湾曲端部41の側面410に接触する。この設計は、アーム51の湾曲53により実現されやすくなる。実際の状況では、この湾曲端部は実質的に径方向に延在可能である。この特定の設計により、「連結」モードにおいて、ねじりばね4の、ハブ2の壁27に対して閉じる力を向上する。
【0033】
なお、リング3のスロット35内で、ワンウェイクラッチ5の端部またはアーム51に隣接して、爪60を設けることが可能であることが有利である。この爪60は、トルク伝達中にアーム51を定位置に保持しやすくする。この爪60は、図2図4、およびワンウェイクラッチ5と、爪60(図3では図示せず)とを示す部分分解図である図16に、特に明確に示されている。爪60により、リング3の、アーム51を収容するスロット35内に、アーム51を保持しやすくする。特に、トルク伝達中に、アーム51の座屈を防止する。
【0034】
なお、ワンウェイクラッチ5が、ねじりばね4に対して、これらの接触状態を維持するリング3により、連続して取り付けられることが理解されよう。
【0035】
添付の図1から図7、特に図2図3図4に示すように、プーリーは、例えば円筒形リングの形態をとり、ハブ2とリム1との間に挿入される少なくとも1つの軸受6を備える。そして軸受6は、ハブ2に対するガイドとして作用し、ねじりばね4の形態では特に煩雑な、1または複数のローラーベアリングにとって代わるものである。前記少なくとも1つの軸受6は、径方向に延在し、ハブ2と接触する面61を備えることが有利である。この面61は、軸受6を定位置に取り付け、保持しやすくするものである。さらに、軸受6は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二硫化モリブデン(MoS)入りポリアミド(PA)、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)入りポリアミド(PA)のいずれかから選択されたプラスチック材料で作製できる。別の変形例では、軸受6は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)入り外部層で被膜された、金属または金属合金の内部層により作成できる。
【0036】
最後にプーリー100は、シーリングプラグ9に関連付けられたフード8を備える。フード8は、リム1を、リムの第2領域12の段階で覆うように構成され、このリム1に固定される。添付の図2から図7に示すように、フード8はリング3に接触するように取り付けられ、特にフード8に対向するリング3の側面37に接触することが有利である。最後にプーリー100は、フード8の反対側で、リム1の側方開口部内に位置するガスケット10を備える。
【0037】
次に、この本発明の第1実施形態によるプーリー100の作用を説明する。
【0038】
スタンバイ状態、即ち例えばねじりばねのような、弾性変形要素4が誘動していないと、プーリー100は図5に示す構成となる。
【0039】
プーリー100、より具体的にはリム1が、例えばモーターに接続されたベルトにより回転駆動されると(典型的には、モーターの加速状態にある場合)、リム1が回転される(一般的には時計回り)。
【0040】
リム1の回転により、ワンウェイクラッチ5が径方向膨張し、それによりリム1の内孔に対して径方向に負荷がかかる。その結果、リム1は摩擦によりワンウェイクラッチ5を回転駆動する。ワンウェイクラッチ5は、リング3にも接続されているため、リング3も回転駆動される。ワンウェイクラッチ5は、リング3によりねじりばね4に連続して取り付けられているため、ねじりばね4も閉じて、ハブ2のリム1の回転方向での駆動を生じる。
【0041】
ねじりばね4がハブ2、より具体的にはハブ2の壁27上に閉じると、リング3(またはリム1でも同じ)と、ハブ2との間の相対位置が、図5に示す位置から、図7に示す位置に移動する。言い換えると、リング3の前記または各オリフィス31、32、33が、ハブ2の前記または各対応する突起21、22、23に対して移動する。実際の状況では、リング3と、ハブ2との間の相対位置は、伝達トルクの値に依存する。したがって、前記または各オリフィス31、32、33は、対応する突起21、22、23に対して、対応するオリフィス31、32、33の2つの両端310、311、320、321、330、331間に画定された(突起の幅に対する公差あり)、最大角度アルファ1(α1)未満の角度で移動可能である。前記または各オリフィス31、32、33はさらに、図7に示すように、突起21、22、23と、前記または各オリフィス31、32、33の反対側端部311、321,331とが当接するまで、即ちこの最大角度アルファ1(α1)いっぱいまで移動できる。この当接は、ハブ2の前記または各終止端21、22、23と、リング3の対応するオリフィス31、32、33との存在により実現されるもので、ねじりばね4の径方向変形を限定する。実際、この当接に至ると、前記または各終止端により、過剰なトルクがリング3からハブ2に伝達される。この設計により、特に伝達されるトルクが大きな用途において、ねじりばね4、延いてはプーリー100の寿命を長くすることが可能となる。
【0042】
なお、角度アルファ1は、第1実施形態によるプーリー100の、図5に対応する位置での正面図である図15に示す。
【0043】
図8は、プーリー100のリム1とハブ2との間で伝達されるトルクを示す。トルクはこれら要素の角度増大に基づく。基準(角度0)は、プーリーのスタンバイ位置に対応する(図5)。
【0044】
この図8(実寸ではない)を参照して説明する作用は、負またはゼロ角度に対応する。初期トルク(ゼロ角度)は、ハブ2に対して若干の摩擦を生じる軸受6の存在に関連付けられた値C(ゼロではない)を有する。そこから、トルクは直線的に増加する。これはねじりばね4がハブ2に係合した実際を反映している。そして、値アルファ1(α1)により定義された角度となって、前記または各終止端部21、22、23が対応するオリフィス31、32、33の反対側端部311,321,331に接触すると(図7)、リム1とハブ2との間で伝達される過剰なトルクが、リング3を通過する。
【0045】
本発明の第1実施形態によるプーリー100の作用に関する全ての上述の記載は、「連結」モードについてのものである。
【0046】
リム1が減速すると(例えば、それを駆動するモーターが減速すると)、ワンウェイクラッチ5が径方向に収縮する。これにより、リム1と、ワンウェイクラッチ5との間、即ちハブ2へのトルク伝達が止まる。したがって、ハブ2がリム1に対して、さらにリング3に対して過速度となることで、ねじりばね4が径方向膨張して、平衡点に戻り(図5、誘動なし)、同時にハブ2の前記または各突起21,22,23も図5の位置へと戻っていく。
【0047】
図5の位置に到達すると、ゼロ角度となる(図7)。その結果、上述の理由から、トルクは値Cとなる。
【0048】
ただし、ハブ2の過速度が十分に大きいと、ハブ2はリム1、延いてはリム1に固定されて、リング3の面37に接触しているフード8に対して過速度となるようにリング3を駆動する。バネ4の軸方向与圧により、リング3と、フード8との間に接触力が生じる。この与圧は、必要なCレベルに応じて調整可能である。この接触により、フード8と、リング3との間に、トルクを値Cから値Cに変化させる摩擦が生じる(フード/リング摩擦がハブ/軸受摩擦に加わるため、|C1|>C0となる)。なお、その後ねじりばね4を介することなく、前記または各突起21、22、23と、対応するオリフィス31、32、33の端部310、320、330との接触により、駆動が実現される。そして、フード8とリング3との間の摩擦により、ハブ2をより迅速に減速可能となる。これは、ハブ2のリム1に対する過速度により生じるノイズ現象を制限できるという点で、特に注目に値する。
【0049】
したがって、リム1の減速についての上述の全ての記載は、「自由回転」モードに関するものである。
【0050】
上記全てに鑑み、フード8とリング3との間の摩擦が、「自由回転」モードでのみ生じることが理解されよう。実際、「連結」モードにおいては、リング3はリム1により駆動されるため、フード8とリング3との間に相対的速度が存在しない。したがって、上述の摩擦は、有用な場合、即ち「自由回転」モードでのみ利用される。具体的には、ハブ2の過速度がノイズ現象を生じるため、それを抑制するために、ハブ2をより迅速に減速するのである。さらに、「連結」モードにおいて、フード8と、リング3との間に相対移動が存在しないことで、摩擦による機械的損失が避けられる。
【0051】
一方、プーリーの機能モードにかかわらず、即ち「連結」モードでも、「自由回転」モードでも、ハブ2と軸受6との間の摩擦は生じる。
【0052】
なお、本発明の目的のために、リング3の側面37と、フード8との間の接触は必須ではないことが理解されよう。
【0053】
次に、本発明の第2実施形態によるプーリー100’を、図9および図10を参照して説明する(ガスケット10は存在しているが、これら図では省略する。これはさらに図10にのみ該当する。即ち、図9では爪60が示されるが、図10では示されていない。この爪60は、有利に設けられる場合、図16に示すような形態となる)。
【0054】
この第2実施形態では、第1実施形態と同じ参照符号は、同じ要素を示す。
【0055】
第2実施形態は、ハブとリングの設計が異なるという点で、第1実施形態と異なる。
【0056】
実際、この第2実施形態において、プーリー100’は、突起を要さないハブ2’と、したがって対応するオリフィスを要さないリング3’とを備える。図9および図10は、突起のないハブ2’と、オリフィスのないリング3’を示す。
【0057】
そのため、第2実施形態においては、第1実施形態ではアルファ1と称する最大角度での当接が生じない。したがって、「連結」モードにおいて、リング3’とハブ2’との間で、ねじりばね4を通過することなくトルクが直接伝達されることが保証される。
【0058】
実際、この当接は、リム1とハブ2’との間で伝達されるトルクが限定的な特定な用途では、必須ではないのである。
【0059】
この第2実施形態では、「自由回転」モードにおいて、フード8とリング3との間の摩擦トルクが、直接ねじりばね4に伝達される。これはばねの開きに直結する。
【0060】
これ以外、プーリー100’の設計は、第1実施形態のプーリー100と同一である。これは特に、ワンウェイクラッチ5と、任意で図16に示す爪60について該当する。また、有利であるが必須ではない、リング3’とフード8との接触による設計や、例えば軸受6に対して使用される異なる様々な材料の選択についても該当する。したがって、プーリー100’のブロック図は、図8に示すものに対応する。ただし、第2実施形態では、角度アルファ1でのトルク上昇(垂直線)が存在しない。
【0061】
次に、図11および図12を参照にして、本発明のプーリー100’’の第3実施形態を説明する(ガスケット10は存在しているが、これら図では省略する)。
【0062】
この第3実施形態では、弾性変形要素がねじりばね4ではなくなっている。
【0063】
実際、ねじりばねの代わりに、エラストマーまたは熱可塑性エラストマー製の部材4’’が使用される。
【0064】
この設計のため、ハブ2’’はこのエラストマーまたは熱可塑性エラストマー製の部材4’’を接着またはオーバーモールドにより装着するための形状を呈する。さらに、エラストマーまたは熱可塑性エラストマー製の部材4’’は、接着またはオーバーモールドによりリング3’’に固定できる。ワンウェイクラッチ5は、第1実施形態および第2実施形態のものと同様であってもよい。特に、例えばアーム51形状で、リング3に挿入される端部の存在と、有利なことに図16で示す爪60の存在について顕著である(ただし、図11および図12に対しては、アーム51と、爪60が見えないような切り取り面が選択されている)。ただしここでは、アームの端部はエラストマー、または熱可塑性エラストマー製の部材4’’と接触する必要はないので、リング3内に単純に収容される。さらに、ハブ2’’と、リム1との間にハブ2を回転誘導するように、ローラー軸受6’’が設けられている。ここで、有利にはローラー軸受6’’は、リム1の第1領域11の下に配置される。ねじりばね4が存在しないため、空間が空いているためである。ローラー軸受6’’が存在するため、軸受6も存在する必要がなくなる。なお、第2実施形態と同様、ハブ2’’は突起を一切有さず、したがってリング3’’は当該突起を収容するようなオリフィスを一切有さない。
【0065】
作用的態様としては、第3実施形態には「連結」モードにおける最大移動角度α1が存在しない。トルクCの値は、若干のベアリング/ハブ摩擦ではなく、ローラー軸受6’’内の残留摩擦に紐付けられる。それ以外は、プーリー100’’はプーリー100と同じように作用する。具体的には、部材4’’は、図8の負の角度範囲で作用、即ち弾性変形せず、正の角度範囲では誘起されない。さらに、リング3の側面37が、フード8に接触するように取り付けられると、トルクC−Cがフード8とリング3との間の摩擦の寄与に対応する。
【0066】
次に、図13および図14を参照に、本発明のプーリーの第4実施形態を説明する。
【0067】
これら図において、第4実施形態は、第1実施形態の変形例として示されている。
【0068】
この第4実施形態において、ねじりばねは「連結」モードにおいて、閉じるのではなく開くことで作用する。
【0069】
ここで、ハブ2は外周溝25を有し、これにより、ねじりばね4’が開いて作動すると、外周溝25の内壁26に押し付けられる。内壁26は、ハブ2の外周溝25内での径方向で最外壁である。
【0070】
ここで、このことはまた、ねじりばねのその他に対して湾曲した端部41の不在に直結する。したがって、ねじりばね4’は円筒形の概略形状を有する。言い換えると、ワンウェイクラッチ5に接触するねじりばね4’の端部41’はその他に対して湾曲していないため、該ねじりばね4’が略円筒形に画定される。ワンウェイクラッチのアーム51の端部と、ねじりばね4’の端部41’との接触は、図5に示すようなアーム51の端部を、ねじりばね4の端部41の側面410に押し付ける(第1実施形態)のではなく、ワンウェイクラッチの端部51を、ねじりばね4’の非湾曲端部41’に対して端部同士がつながるように配置することで実現される。この設計により、「連結」モードにおいて、ハブ2の壁26に対して、ねじりばね4’が開きやすくなる。この設計であれば、ねじりばね4’の製造が簡略化される。即ち、ワンウェイクラッチ5は、第1実施形態と同じにでき、したがって爪60は同様の実施条件で提供できる。
【0071】
より大きくみると、その他は同一である。
【0072】
なお、この第4実施形態は、第2実施形態の変形例としても適用できる。
【0073】
図17に、本発明の第5実施形態の長手方向断面を示す。この図17は、図4において、リング30と協働するカウンターリング300を適用したものである。
【0074】
カウンターリング300は、爪60と目的が同じである。したがって、カウンターリング300は爪60に取って代わるものである。その他は図4と同一であるため、図17では参照符号を振っていない。
【0075】
このカウンターリング300は、用途によっては、爪60を使用するよりも有利となる。実際、カウンターリング300による形態の方がワンウェイクラッチの端部51をより容易に取り付けられる。さらにこの形態では、ワンウェイクラッチの端部51をリング30内に取り付ける際に、リング30の変形が制限される。これは、爪60の場合と異なり、リング内へ圧力ばめする必要がないためである。
【0076】
図18は、リング30の正面図を示し、図19は、カウンターリング300の斜視後面図を示す。ここで、リング30は、カウンターリング300の対応する突起E1、E2を収容するように構成された2つのオリフィスL1、L2を有する。カウンターリング300がリング30内に設置されると、それ以上の相対移動がそれらの間で起こり得なくなる。このような取り付けは、例えば、特にリング30とカウンターリングとがプラスチック材料製の場合に、超音波手法により実現できる。当然、その他取り付け手段も考えられる(留め具、接着等々)。図18では、ワンウェイクラッチの端部51を収容するように構成されたハウジング350と、ねじりばね4を収容するように構成された別のハウジング360が存在することも見て取れよう。概して、カウンターリング300は、リング30の形状に嵌るような形状を有する。
【0077】
なお、ワンウェイクラッチ5はいくつかの異なる設計が可能であることが理解されよう。
【0078】
一般的に、ワンウェイクラッチ5はコイルばねの形態をとるが、好ましくは、接触巻線を有することが好ましい。
【0079】
従来どおり、このコイルスプリングは円筒形であってもよい。実際に従来、端部51以外では、全ての巻線の直径は一定である。これは、例えば本発明のプーリーの最終取り付け前(即ち、クラッチばねがプーリーのその他構成により拘束される前)の、図3,10,12,14,または16に示される。
【0080】
ただし、このコイルばねの円筒形よりも有利なその他形態も想定される。
【0081】
実際、ワンウェイクラッチ5は摩擦により作動される。したがって、クラッチを介してトルクを伝達する目的の場合、滑りを防止することが必要となる。
【0082】
円筒形は多くの場合において適切である。
【0083】
しかし、伝達されるトルクが大きい特定の用途では、円筒形のクラッチばねだと、トルクが伝達不能となる滑り限界に達してしまう可能性もある。
【0084】
出願人は、円筒形以外の形状により、滑り限界を高め、巻線数を増やさずに、高トルクを伝達可能なプーリーを提供できることを発見した。これは空間利用制御という点で注目に値する。
【0085】
したがって、図20は、円筒形ではなく(ここでも端部51’については例外とする)、接触巻線を有するコイルばねの形態をとるワンウェイクラッチ5’の第1の例を示す。実際、この例では、巻線SP1、SP2、SP3は全て直径が同じである。しかし、巻線SP4は、巻線SP1からSP3よりも大径で、巻線SP5は巻線SP4よりも大径で、巻線SP6は巻線SP5よりも大径である。図20に示すように、巻線SP4、SP5、SP6は、直径の増加が一定であることが有利である。言い換えると、各巻線SP4、SP5、SP6それぞれの頂部S4,S5,S6上を通る直線Dが描けるのである。この構成は、線Dと、巻線SP1、SP2、SP3の頂部を通る線dとの間の角度αによっても定義できる(線dは、ワンウェイクラッチ5’の長手方向軸に平行である)。角度αは、具体的には5°から10°の範囲であってもよく、例えば7.5°である。
【0086】
概して、このクラッチばね(点線を参照)の形状は、端部51’から延びる円筒形(ここでは巻線SP1からSP3により形成される)でリングに固定されるように構成された第1部位と、第1部位から延びる円錐台形(ここでは巻線SP4からSP6により形成される)の第2部位とにより画定される。
【0087】
この設計により、クラッチ5’のばねを、巻線SP1からSP3に対する従来の締め付けにより取り付け可能で、巻線SP4からSP6に対する締め付けを強めることができる。さらに、巻線毎の直径に応じて締め付けを強めることもできる。巻線SP4からSP6の締め付けを強めることで、滑り限界を上げて、より大きなトルクが伝送可能となる。さらに、この設計は、円筒形ばねと比較して、プーリーが自由回転モードで動作する際の特定の問題を呈さない。ただし、この設計だと、クラッチばねの自由端部(端部51’の反対側にあるもので、図20では図示せず)の取り付けの複雑性が多少増す。
【0088】
これを踏まえ、図21にさらに、円筒形ではなく(ここでも端部51’’については例外とする)、接触巻線を有するコイルばねの形態をとるワンウェイクラッチ5’’の第2の例を示す。実際、この例では、概略形状が樽型である。したがって、端部巻線SP10、SP15が小径となり、中央巻線SP12、SP13が大径となる。中間巻線SP11,SP14は、端部巻線SP10、SP15よりも大径で、中央巻線SP12、SP13よりも小径となる。
【0089】
図20に示す設計と同様に、円筒形クラッチばねの場合よりも、最大径の巻線SP12、SP13がより締め付けられる。この場合にも、滑り限界が高くなり、より大きなトルクを伝達可能となる。さらに、クラッチばねの自由端は、図20の設計よりも誘動されにくい。これにより、取り付けの容易さに関しては不利な効果を呈する。しかし、図21の設計では、自由回転モードでの動作中に、プーリーにおいて無視できないほど大きい残留摩擦が生じる。
【0090】
図22は、円筒形ではなく(ここでも端部51’’’については例外とする)、接触巻線を有するコイルばねの形態をとるワンウェイクラッチ5’’’の第3の例を示す。この例では、巻線SP110は第1径を有し、巻線SP130、SP140、SP150、SP160は共通第2径を有し、巻線SP120は中間巻線であって、巻線SP110と、巻線SP130との間で増加する直径を有する。第2径は第1径よりも大きい。
【0091】
概して、このクラッチばね(点線を参照)の形状は、端部51’から延びる円錐台形(ここでは巻線SP110からSP120により形成される)でリングに固定されるように構成された第1部位と、第1部位から延びる円筒形(ここでは巻線SP130からSP160により形成される)の第2部位とにより画定される。
【0092】
円筒形ばねと比較して、図22の設計は滑り限界が高くなる。それでいて、円筒形の設計同様、取り付けに関する問題は生じず、プーリーが「自由回転」モードで動作する際に特定の欠点を呈さない。
【0093】
したがって、この最後の設計は特に有利である。
【0094】
例示的に、直径D12=58mmとして、本発明のプーリー内に配置されるように構成された円筒形を呈する、接触巻線を有するコイルばねの形態をとる、ワンウェイクラッチ5も考えられる。1.6mmの均一な締め付けが実施される。なお、これは取り付け前のクラッチばねの直径が59.6mmであることを意味する。さらに、この場合のワンウェイクラッチ5は、EN10270−1SH規格に応じた鋼鉄製である。リム1は、AISI1018型の鋼鉄製で、ワンウェイクラッチとの接触面は窒化処理されて、硬度が300HV0.1を超える。
【0095】
同様に、図22によるワンウェイクラッチ5’’’と、同じく直径D12=58mmとしたプーリーとに対して、1mmの締め付けを巻線SP110に実施し、2mmの締め付けを巻線SP130からSP160に実施する。なお、これら締め付け値が、移行巻線SP120の締め付けを定義する。さらに、この場合のワンウェイクラッチは、EN10270−1SH規格に応じた鋼鉄製である。リム1は、AISI1018型の鋼鉄製で、ワンウェイクラッチとの接触面は窒化処理されて、硬度が300HV0.1を超える。
【0096】
図23および図24は、取り付け前の、図22に示す設計に応じたリング30、カウンターリング300およびワンウェイクラッチ5’’’を示す。
【0097】
想定される実施形態に関わらず、本発明のプーリーは従来技術を超える利点をいくつか有する。
【0098】
実際、ワンウェイクラッチ5、5’、5’’、5’’’を、リム1の第1領域11に対して軸方向でずらし、このずらしを同じく軸方向でずらした、ワンウェイクラッチを機械的に支持するリング3、30により実現するようにすれば、所定の自由度により有利となる設計となる。
【0099】
これは、ワンウェイクラッチが完全にリム1の第2領域12下に位置し(したがって、リム1の第1領域11の下には全く、即ち部分的にも存在しない)、さらに/あるいはリング3、30、30’も完全にリム1の第2領域12下に位置し(したがって、リム1の第1領域11の下には全く、即ち部分的にも存在しない)、そして直径D11とD12が等しい、または直径D12が直径D11よりも(断然)大きい場合に特に顕著である。
【0100】
したがって、ねじりばね4が本発明の文脈で使用される場合、ハブ2とリム1との間の空間を空けることができ、軸受6が挿入可能となる。したがって、ねじりばねとクラッチとの間に径方向間隙がないために側部に装着される1つまたは複数のローラーベアリングの使用(文献D1)を避けることができる。これにより、より軽量で、軸方向の使用空間が低減されたプーリーを実現できる。
【0101】
また、本発明の目的のために弾性変形部材4’’を使用すると、リム1の第1領域11(ベルト装着領域)下を中心とするローラー軸受を、空間の全てが空いているため、リムのこの領域11の段階でプーリーの半径を増やすことなく、軸方向空間を大きく占有することなく実現できる。
【0102】
概して、リング3、30は、ワンウェイクラッチ5、5’、5’’、5’’’に機械的支持を提供する。これは有利でしかない。
【0103】
リング3、30は、当該リング内のオリフィスの存在により、ねじりばね4の変形を制限するために、ハブの突起との直接相互作用も可能とする。
【0104】
さらに、リム1、さらに/あるいは動作モードによってはハブ2に対して回転可能なリングを実現することは特に注目に値する。実際、リング3、30がフード8と接触すると、「自由回転」モードでブレーキがかかる。ブレーキは「自由回転」モードでのみかかることから、必要な時(例えば、リム1に対して過速度となったハブ2と、リング3との回転による騒音を抑えたい場合)にのみ実現される。「連結」モードではこのような摩擦が生じないことから、リング3、30またはフード8の不要な摩耗を生じることなく、トルク伝達を向上できる。
【0105】
さらに、リムの第1領域11の内径D11よりも大きい内径D12を有する、リム1の第2領域12の場合、文献D1に開示の直径よりも大きい直径のワンウェイクラッチ5を実現可能となる。これは、ワンウェイクラッチ5、5’、5’’、5’’’により伝送される傾向のあるトルクは当該直径により限定される点で注目に値する。したがって、本発明の文脈において、より大きなトルクを伝達可能なワンウェイクラッチを実現できる。なお、印加されるあらゆる所与のトルクに対して、ワンウェイクラッチにかかる接線応力(リム1との摩擦)は、文献D1におけるものよりも小さくなる。
【0106】
したがって、ワンウェイクラッチ5、5’、5’’、5’’’の寿命が延長されるのみである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24