(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記冷媒は、前記第1の加熱部、および、前記第2の加熱部の少なくともいずれかの内部に設けられた冷却体の内部に供給される請求項2または3記載の有機膜形成装置。
前記排気部は、前記冷却部が前記冷却ガスまたは前記冷媒を供給する間、一定時間動作して停止した後、再度動作するように間欠して動作することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の有機膜形成装置。
前記第1の排気部は、前記冷却部が冷却ガスまたは冷媒を供給する間、一定時間動作して停止した後、再度動作するように間欠して動作することを特徴とする請求項6または7に記載の有機膜形成装置。
前記冷却部は、前記第1の加熱部の内部に導入する冷却ガスの導入方向とは異なる方向から前記第2の加熱部の内部に冷却ガスを導入することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の有機膜形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本実施の形態に係る有機膜形成装置1を例示するための模式斜視図である。
なお、
図1中のX方向、Y方向、およびZ方向は、互いに直交する三方向を表している。本明細書における上下方向は、Z方向とすることができる。
【0011】
ワーク100は、基板と、基板の上面に塗布された溶液と、を有する。
基板は、例えば、ガラス基板や半導体ウェーハなどとすることができる。ただし、基板は、例示をしたものに限定されるわけではない。
溶液は、有機材料と溶剤を含んでいる。有機材料は、溶剤により溶解が可能なものであれば特に限定はない。溶液は、例えば、ポリアミド酸を含むワニスなどとすることができる。ただし、溶液は、例示をしたものに限定されるわけではない。
【0012】
図1に示すように、有機膜形成装置1には、チャンバ10、排気部20、処理部30、冷却部40、および制御部50が設けられている。
チャンバ10は、箱状を呈している。チャンバ10は、大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能な気密構造を有している。チャンバ10の外観形状には特に限定はない。チャンバ10の外観形状は、例えば、直方体とすることができる。チャンバ10は、例えば、ステンレスなどの金属から形成することができる。
【0013】
チャンバ10の一方の端部にはフランジ11を設けることができる。フランジ11には、Oリングなどのシール材12を設けることができる。チャンバ10の、フランジ11が設けられた側の開口は、開閉扉13により開閉可能となっている。図示しない駆動装置により、開閉扉13がフランジ11(シール材12)に押し付けられることで、チャンバ10の開口が気密になるように閉鎖される。図示しない駆動装置により、開閉扉13がフランジ11から離隔することで、チャンバ10の開口を介したワーク100の搬入または搬出が可能となる。
【0014】
チャンバ10の他方の端部にはフランジ14を設けることができる。フランジ14には、Oリングなどのシール材12を設けることができる。チャンバ10の、フランジ14が設けられた側の開口は、蓋15により開閉可能となっている。例えば、蓋15は、ネジなどの締結部材を用いてフランジ14に着脱可能に設けることができる。メンテナンスなどを行う際には、蓋15を取り外すことで、チャンバ10の、フランジ14が設けられた側の開口を露出させる。
【0015】
チャンバ10の外壁には冷却部16を設けることができる。冷却部16には、図示しない冷却水供給部が接続されている。冷却部16は、例えば、ウォータージャケット(Water Jacket)とすることができる。冷却部16が設けられていれば、チャンバ10の外壁温度が所定の温度よりも高くなるのを抑制することができる。
【0016】
排気部20は、チャンバ10の内部を排気する。排気部20は、第1の排気部21と、第2の排気部22を有する。
第1の排気部21は、チャンバ10の底面に設けられた排気口17に接続されている。 第1の排気部21は、排気ポンプ21aと、圧力制御部21bを有する。
排気ポンプ21aは、例えば、ドライ真空ポンプなどとすることができる。
圧力制御部21bは、排気口17と排気ポンプ21aとの間に設けられている。
圧力制御部21bは、チャンバ10の内圧を検出する図示しない真空計などの出力に基づいて、チャンバ10の内圧が所定の圧力となるように制御する。
圧力制御部21bは、例えば、APC(Auto Pressure Controller)などとすることができる。
【0017】
第2の排気部22は、チャンバ10の底面に設けられた排気口18に接続されている。 第2の排気部22は、排気ポンプ22aと、圧力制御部22bを有する。
排気ポンプ22aは、例えば、ターボ分子ポンプ(TMP:Turbo Molecular Pump)などとすることができる。
第2の排気部22は、高真空の分子流領域まで排気可能な排気能力を有する。
圧力制御部22bは、排気口18と排気ポンプ22aとの間に設けられている。
圧力制御部22bは、チャンバ10の内圧を検出する図示しない真空計などの出力に基づいて、チャンバ10の内圧が所定の圧力となるように制御する。
圧力制御部22bは、例えば、APCなどとすることができる。
【0018】
チャンバ10の内部を減圧する場合には、まず、第1の排気部21によりチャンバ10の内圧が10
Pa程度になるようにする。次に、第2の排気部22によりチャンバ10の内圧が10Pa〜1×10−2Pa程度となるようにする。この様にすれば、所望の圧力まで減圧するのに必要となる時間を短くすることができる。
【0019】
前述したように、第1の排気部21は、大気圧から所定の内圧まで粗引き排気を行う排気ポンプである。したがって、第1の排気部21は排気量が多い。また、第2の排気部22は、粗引き排気完了後、さらに低い所定の内圧まで排気を行う排気ポンプである。少なくとも第1の排気部21で排気が開始された後、後述する加熱部32に電力を印加して、加熱を開始することができる。
【0020】
第1の排気部21に接続された排気口17及び第2の排気部22に接続された排気口18は、チャンバ10の底面に配置されている。そのため、チャンバ10内及び処理部30内にチャンバ10の底面に向かうダウンフローの気流を形成することができる。その結果、有機材料と溶媒を含む溶液が塗布されたワーク100を加熱することで生じる、有機材料が含まれた昇華物がダウンフローの気流に乗ってチャンバ10外に排出され易くなる。この様にすれば、ワーク100に昇華物などの異物が付着するのを抑制することができる。これにより、ワーク100に昇華物が付着することなく有機膜を形成することができる。
【0021】
また、排気量の多い第1の排気部21に接続された排気口17がチャンバ10の底面の中心部分に配置されていれば、チャンバ10を平面視したときに、チャンバ10の中心部分に向かう均一な気流を形成することができる。そのため、気流の流れの偏りによる昇華物の滞留が生じるのが抑制され、昇華物の排出が容易となる。この様にすれば、ワーク100に昇華物などの異物が付着するのを抑制することができる。そのため、ワーク100に昇華物が付着することなく有機膜を形成することができる。
【0022】
処理部30は、フレーム31、加熱部32、ワーク支持部33、均熱部34、均熱板支持部35、および、カバー36を有する。
処理部30の内部には、処理領域30aおよび処理領域30bが設けられている。処理領域30a、30bは、ワーク100に処理を施す空間となる。ワーク100は、処理領域30a、30bの内部に支持される。処理領域30bは、処理領域30aの上方に設けられている。なお、2つの処理領域が設けられる場合を例示したがこれに限定されるわけではない。1つの処理領域のみが設けられるようにすることもできる。また、3つ以上の処理領域が設けられるようにすることもできる。本実施の形態においては、一例として、2つの処理領域が設けられる場合を例示するが、1つの処理領域、および、3つ以上の処理領域が設けられる場合も同様に考えることができる。
【0023】
処理領域30a、30bは、加熱部32と加熱部32との間に設けられている。処理領域30a、30bは、均熱部34(上部均熱板34a(第1の均熱板の一例に相当する)、下部均熱板34b(第2の均熱板の一例に相当する)、側部均熱板34c、側部均熱板34d)により囲まれている。後述するように、上部均熱板34a同士の間、下部均熱板34b同士の間には隙間が設けられているが、処理領域30a、30bは、仕切られた空間となる。
【0024】
処理領域30a、30bとチャンバ10の内部の空間は、上部均熱板34a同士の間、および下部均熱板34b同士の間などに設けられた隙間を介して繋がっている。そのため、処理領域30a、30bにおいてワーク100を加熱する際には、処理領域30a、30bの内部の空間とともにチャンバ10の内壁と処理部30との間の空間の圧力が減圧される。チャンバ10の内壁と処理部30との間の空間の圧力が減圧されていれば、処理領域30a、30bから外部に放出される熱を抑制することができる。すなわち、蓄熱効率が向上する。そのため、ヒータ32a(第1のヒータ、および第2のヒータの一例に相当する)に印加する電力を低減させることができる。また、ヒータ32aの温度が所定の温度以上となるのを抑制することができるので、ヒータ32aの寿命を長くすることができる。
また、蓄熱効率が向上するので、急激な温度上昇を必要とする処理であっても所望の温度上昇を得ることができる。また、チャンバ10の外壁の温度が高くなるのを抑制することができるので、冷却部16を簡易なものとすることができる。
【0025】
フレーム31は、細長い板材や形鋼などからなる骨組み構造を有している。フレーム31の外観形状は、チャンバ10の外観形状と同様とすることができる。フレーム31の外観形状は、例えば、直方体とすることができる。
【0026】
加熱部32は、複数設けられている。加熱部32は、処理領域30a、30bの下部、および処理領域30a、30bの上部に設けることができる。処理領域30a、30bの下部に設けられた加熱部32は、下部加熱部(第2の加熱部の一例に相当する)となる。処理領域30a、30bの上部に設けられた加熱部32は、上部加熱部(第1の加熱部の一例に相当する)となる。下部加熱部は、上部加熱部と対向している。なお、複数の処理領域が上下方向に重ねて設けられる場合には、下側の処理領域に設けられた上部加熱部は、上側の処理領域に設けられた下部加熱部と兼用とすることができる。
【0027】
例えば、処理領域30aに支持されたワーク100の下面(裏面)は、処理領域30aの下部に設けられた加熱部32により加熱される。処理領域30aに支持されたワーク100の上面は、処理領域30aと処理領域30bとにより兼用される加熱部32により加熱される。処理領域30bに支持されたワーク100の下面(裏面)は、処理領域30aと処理領域30bとにより兼用される加熱部32により加熱される。処理領域30bに支持されたワーク100の上面は、処理領域30bの上部に設けられた加熱部32により加熱される。
この様にすれば、加熱部32の数を減らすことができるので消費電力の低減、製造コストの低減、省スペース化などを図ることができる。
【0028】
複数の加熱部32のそれぞれは、少なくとも1つのヒータ32aと、一対のホルダ32bを有する。なお、以下においては、複数のヒータ32aが設けられる場合を説明する。
一対のホルダ32bは、処理領域30a、30bの長手方向(
図1中のX方向)に延びるように設けられている。
ヒータ32aは、棒状を呈し、一対のホルダ32bの間をY方向に延びるように設けられている。
複数のヒータ32aは、ホルダ32bが延びる方向に並べて設けることができる。例えば、複数のヒータ32aは、処理領域30a、30bの長手方向(
図1中のX方向)に並べて設けることができる。複数のヒータ32aは、等間隔に設けることが好ましい。ヒータ32aは、例えば、シーズヒータ、遠赤外線ヒータ、遠赤外線ランプ、セラミックヒータ、カートリッジヒータなどとすることができる。また、各種ヒータを石英カバーで覆うこともできる。本明細書においては、石英カバーで覆われた各種ヒータをも含めて「棒状のヒータ」と称する。
【0029】
ただし、ヒータ32aは、例示をしたものに限定されるわけではない。ヒータ32aは、大気圧よりも減圧された雰囲気においてワーク100を加熱することができるものであればよい。すなわち、ヒータ32aは、放射による熱エネルギーを利用したものであればよい。
【0030】
上部加熱部および下部加熱部における複数のヒータ32aの仕様、数、間隔などは、加熱する溶液の組成(溶液の加熱温度)、ワーク100の大きさなどに応じて適宜決定することができる。複数のヒータ32aの仕様、数、間隔などは、シミュレーションや実験などを行うことで適宜決定することができる。また、「棒状を呈する」とは、断面形状が限定されず、円柱状や角柱状なども含まれる。
【0031】
また、複数のヒータ32aが設けられた空間は、ホルダ32b、上部均熱板34a、下部均熱板34b、側部均熱板34cにより囲まれている。複数のヒータ32aが設けられた空間は、均熱部34により処理領域30aと、処理領域30bとに仕切られている。この場合、上部均熱板34a同士の間、下部均熱板34b同士の間には隙間が設けられているが、複数のヒータ32aが設けられた空間は、ほぼ閉鎖された空間となる。そのため、冷却部40から、複数のヒータ32aが設けられた空間に供給された後述する冷却ガスが、処理領域30a、30bに漏れるのを抑制することができる。
【0032】
ワーク100は、上部加熱部と下部加熱部によって加熱される。ワーク100は、処理領域30a、30bにおいて、上部均熱板34aおよび下部均熱板34bを介して加熱される。ここで、溶液を加熱する際に生じた昇華物を含む蒸気は、加熱対象であるワーク100の温度よりも低い温度の物に付着しやすい。しかしながら、上部均熱板34aおよび下部均熱板34bは加熱されているので、昇華物が上部均熱板34aおよび下部均熱板34bに付着するのが抑制され、前述したダウンフローの気流に乗ってチャンバ10外に排出される。そのため、昇華物がワーク100に付着するのを抑制することができる。また、両面側からワーク100を加熱するので、ワーク100を高温にするのが容易となる。
【0033】
一対のホルダ32bは、複数のヒータ32aが並ぶ方向と直交する方向において、互いに対向させて設けられている。一方のホルダ32bは、フレーム31の開閉扉13側の端面に固定されている。他方のホルダ32bは、フレーム31の開閉扉13側とは反対側の端面に固定されている。一対のホルダ32bは、例えば、ネジなどの締結部材を用いてフレーム31に固定することができる。一対のホルダ32bは、ヒータ32aの端部近傍の非発熱部を保持する。一対のホルダ32bは、例えば、細長い金属の板材や形鋼などから形成することができる。一対のホルダ32bの材料には特に限定はないが、耐熱性と耐食性を有する材料とすることが好ましい。一対のホルダ32bの材料は、例えば、ステンレスなどとすることができる。
【0034】
ワーク支持部33は、上部加熱部と下部加熱部との間にワーク100を支持する。ワーク支持部33は、複数設けることができる。複数のワーク支持部33は、処理領域30aの下部、および、処理領域30bの下部に設けられている。複数のワーク支持部33は、棒状体とすることができる。
複数のワーク支持部33の一方の端部(
図1における上方の端部)は、ワーク100の下面(裏面)に接触する。そのため、複数のワーク支持部33の一方の端部の形状は、半球状などとすることが好ましい。複数のワーク支持部33の一方の端部の形状が半球状であれば、ワーク100の下面に損傷が発生するのを抑制することができる。また、ワーク100の下面と複数のワーク支持部33との接触面積を小さくすることができるので、ワーク100から複数のワーク支持部33に伝わる熱を少なくすることができる。
【0035】
前述したように、ワーク100は、大気圧よりも減圧された雰囲気において放射による熱エネルギーによって加熱される。したがって、複数のワーク支持部33は、上部加熱部からワーク100の上面までの距離、及び下部加熱部からワーク100の下面までの距離が、ワーク100の加熱を行うことが可能な距離となるように、ワーク100を支持する。
なお、この距離は、放射による熱エネルギーが加熱部32からワーク100に到達できる距離である。
【0036】
複数のワーク支持部33の他方の端部(
図1における下方の端部)は、処理部30の両側の側部の一対のフレーム31の間に架け渡された複数の棒状部材または板状部材などに固定することができる。この場合、複数のワーク支持部33が着脱可能に設けられていれば、メンテナンスなどの作業が容易となる。例えば、ワーク支持部33の他方の端部に雄ネジを設け、複数の棒状部材または板状部材に雌ネジを設けることができる。
また、例えば、複数のワーク支持部33は、処理部30の両側の側部にあるフレーム31の間に架け渡された複数の棒状部材または板状部材などに固定されずに載置されるだけでもよい。例えば、この棒状部材または板状部材には複数の孔が形成されており、複数のワーク支持部33をこの孔に差し込むことで、複数のワーク支持部33が棒状部材または板状部材に保持されるようにすることができる。なお、孔の直径は、ワーク支持部33が熱膨張しても以下のようになるものとすることができる。例えば、孔の直径は、ワーク支持部33が熱膨張しても、ワーク支持部33と孔の内壁との間の空気が逃げられる程度とすることが好ましい。この様にすれば、孔の中の空気が熱膨張してもワーク支持部33が押し出されないようにすることができる。
【0037】
複数のワーク支持部33の数、配置、間隔などは、ワーク100の大きさや剛性(撓み)などに応じて適宜変更することができる。複数のワーク支持部33の数、配置、間隔などは、シミュレーションや実験などを行うことで適宜決定することができる。
複数のワーク支持部33の材料には特に限定はないが、耐熱性と耐食性を有する材料とすることが好ましい。複数のワーク支持部33の材料は、例えば、ステンレスなどとすることができる。
【0038】
また、複数のワーク支持部33の、少なくともワーク100に接触する端部を熱伝導率
の低い材料から形成することができる。熱伝導率の低い材料は、例えば、セラミックスと
することができる。この場合、セラミックスの中でも20℃における熱伝導率が32W/
(m・k)以下の材料とすることが好ましい。セラミックスは、例えばアルミナ(Al2
O3)、窒化珪素(Si3N4)、ジルコニア(
ZrO2)などとすることができる。
【0039】
均熱部34は、複数の上部均熱板34a、複数の下部均熱板34b、複数の側部均熱板34c、および、複数の側部均熱板34dを有する。複数の上部均熱板34a、複数の下部均熱板34b、複数の側部均熱板34c、および、複数の側部均熱板34dは、板状を呈している。
複数の上部均熱板34aは、上部加熱部の下部加熱部側(ワーク100側)に設けられている。複数の上部均熱板34aは、複数のヒータ32aと離隔して設けられている。すなわち、複数の上部均熱板34aの上側表面と複数のヒータ32aの下表面との間には隙間が設けられている。複数の上部均熱板34aは、複数のヒータ32aが並ぶ方向(
図1中のX方向)に並べて設けられている。
複数の下部均熱板34bは、下部加熱部の上部加熱部側(ワーク100側)に設けられている。複数の下部均熱板34bは、複数のヒータ32aと離隔して設けられている。すなわち、複数の下部均熱板34bの下側表面と複数のヒータ32aの上側表面との間には隙間が設けられている。複数の下部均熱板34bは、複数のヒータ32aが並ぶ方向(
図1中のX方向)に並べて設けられている。
側部均熱板34cは、複数のヒータ32aが並ぶ方向において、処理領域30a、30bの両側(
図1のX方向)の側部のそれぞれに設けられている。側部均熱板34cは、カバー36の内側に設けることができる。また、側部均熱板34cとカバー36との間に、側部均熱板34cおよびカバー36と離隔して設けられた少なくとも1つのヒータ32aを設けることもできる。
側部均熱板34dは、複数のヒータ32aが並ぶ方向と直交する方向において、処理領域30a、30bの両側(
図1のY方向)の側部のそれぞれに設けられている。
処理領域30a、30bは、複数の上部均熱板34a、複数の下部均熱板34b、複数の側部均熱板34c、および、複数の側部均熱板34dにより囲まれている。また、これらの外側をカバー36が囲んでいる。
【0040】
前述したように、複数のヒータ32aは、棒状を呈し、所定の間隔を空けて並べて設けられている。ヒータ32aが棒状である場合、ヒータ32aの中心軸から放射状に熱が放射される。この場合、ヒータ32aの中心軸と加熱される部分との間の距離が短くなるほど加熱される部分の温度が高くなる。そのため、複数のヒータ32aに対して対向するようにワーク100が保持されたとき、ヒータ32aの直上または直下に位置するワーク100における領域は、複数のヒータ32a同士の間の空間の直上または直下に位置するワーク100における領域よりも温度が高くなる。すなわち、棒状を呈する複数のヒータ32aを用いてワーク100を直接加熱すると、加熱されたワーク100に不均一な温度分布が生じる。
ワーク100に不均一な温度分布が生じると、形成された有機膜の品質が低下するおそれがある。例えば、温度が高くなった部分に泡が発生したり、温度が高くなった部分において有機膜の組成が変化したりするおそれがある。
【0041】
本実施の形態に係る有機膜形成装置1には、前述した複数の上部均熱板34aおよび複数の下部均熱板34bが設けられている。そのため、複数のヒータ32aから放射された熱は、複数の上部均熱板34aおよび複数の下部均熱板34bに入射し、これらの内部を面方向に伝搬しながらワーク100に向けて放射される。その結果、ワーク100に不均一な温度分布が生じるのを抑制することができ、ひいては形成された有機膜の品質を向上させることができる。すなわち、本実施の形態に係る有機膜形成装置1によれば有機材料と溶媒を含む溶液が塗布された基板を均一に加熱し、基板面内において均一な有機膜を形成することができる。
【0042】
この場合、ヒータ32aの表面と直下にある上部均熱板34aとの間の距離、および、ヒータ32aの表面と直上にある下部均熱板34bとの間の距離を短くしすぎると、上部均熱板34aおよび下部均熱板34bに不均一な温度分布が生じ、ひいてはワーク100に不均一な温度分布が生じるおそれがある。また、これらの距離を長くしすぎると、ワーク100の温度上昇が遅くなるおそれがある。本発明者らの得た知見によれば、これらの距離は、20mm以上、100mm以下とすることが好ましい。
【0043】
複数の上部均熱板34aおよび複数の下部均熱板34bの材料は、熱伝導率の高い材料とすることが好ましい。複数の上部均熱板34aおよび複数の下部均熱板34bは、例えば、アルミニウム、銅、およびステンレスの少なくともいずれかを含むものとすることができる。
後述するように、複数のヒータ32aが設けられた領域には、冷却部40から冷却ガスが供給される。この場合、冷却ガスとしてドライエアーが用いられる場合がある。そのため、ドライエアー中の酸素と、加熱された複数の上部均熱板34aおよび複数の下部均熱板34bの材料とが反応するおそれがある。
【0044】
複数の上部均熱板34aおよび複数の下部均熱板34bが銅やアルミニウムなどを含む場合には、酸化しにくい材料を含む層を表面に設けることが好ましい。例えば、複数の上部均熱板34aおよび複数の下部均熱板34bが銅を含む場合には、ニッケルを含む層を表面に設けることが好ましい。例えば、銅を含む複数の上部均熱板34aおよび複数の下部均熱板34bの表面をニッケルメッキすることができる。複数の上部均熱板34aおよび複数の下部均熱板34bがアルミニウムを含む場合には、酸化アルミニウムを含む層を表面に設けることが好ましい。例えば、アルミニウムを含む複数の上部均熱板34aおよび複数の下部均熱板34bの表面をアルマイト処理することができる。
【0045】
加熱の際に、複数の上部均熱板34aおよび複数の下部均熱板34bの温度が300℃以下となる場合には、アルミニウムを含む複数の上部均熱板34aおよび複数の下部均熱板34bを用いることができる。
【0046】
加熱の際に、複数の上部均熱板34aおよび複数の下部均熱板34bの温度が500℃以上となる場合には、ステンレスを含む複数の上部均熱板34aおよび複数の下部均熱板34bとするか、銅を含み表面にニッケルを含む層を有する複数の上部均熱板34aおよび複数の下部均熱板34bとすることが好ましい。この場合、ステンレスを含む複数の上部均熱板34aおよび複数の下部均熱板34bとすれば、汎用性やメンテナンス性などを向上させることができる。
【0047】
また、複数の上部均熱板34aおよび複数の下部均熱板34bから放射された熱の一部は、処理領域の側方に向かう。そのため、処理領域の側部には、前述した側部均熱板34c、34dが設けられている。側部均熱板34c、34dに入射した熱は、側部均熱板34c、34dを面方向に伝搬しながら、その一部がワーク100に向けて放射される。そのため、ワーク100の加熱効率を向上させることができる。
また、前述したように、側部均熱板34cの外側に、少なくとも1つのヒータ32aを設ければ、ワーク100の加熱効率をさらに向上させることができる。また、有機膜を加熱する際に生じた昇華物は、周囲の温度よりも低い箇所に付着しやすい。側部均熱板34cをも加熱することで、昇華物が側部均熱板34cに付着するのを抑制することができる。
【0048】
ここで、側部均熱板34c、34dに、上部均熱板34aおよび下部均熱板34bとは異なる不均一な温度分布が生じると、ワーク100に不均一な温度分布が生じるおそれがある。そのため、側部均熱板34c、34dの材料は、前述した上部均熱板34aおよび下部均熱板34bの材料と同じとすることが好ましい。
【0049】
前述したように、複数の上部均熱板34aおよび複数の下部均熱板34bの温度は、500℃以上となる場合がある。そのため、上部均熱板34aおよび下部均熱板34bの伸び量が大きくなったり、熱変形による反りが発生したりするおそれがある。そのため、複数の上部均熱板34a同士の間には隙間を設けることが好ましい。複数の下部均熱板34b同士の間には隙間を設けることが好ましい。これらの隙間は、加熱温度、複数の上部均熱板34aが並ぶ方向における上部均熱板34aの寸法、複数の下部均熱板34bが並ぶ方向における下部均熱板34bの寸法、上部均熱板34aおよび下部均熱板34bの材料などにより適宜決定することができる。例えば、所定の最高加熱温度において、複数の上部均熱板34a同士の間、および複数の下部均熱板34b同士の間に、それぞれ1mm〜2mm程度の隙間が生じるようにすることができる。この様にすれば、加熱時に、複数の上部均熱板34a同士が干渉したり、複数の下部均熱板34b同士が干渉したりするのを抑制することができる。
【0050】
なお、複数の上部均熱板34aおよび複数の下部均熱板34bは、複数のヒータ32aが並ぶ方向に並べて設けられているものとして説明したが、上部均熱板34aおよび下部均熱板34bの少なくとも一方は、単一の板状部材とすることもできる。この場合、上部均熱板34aおよび下部均熱板34bの少なくとも一方は、フレーム31の両端に最も近い一対の均熱板支持部35によって支持されることになる。
【0051】
複数の均熱板支持部35(上部均熱板支持部)は、複数の上部均熱板34aが並ぶ方向に並べて設けられている。均熱板支持部35は、複数の上部均熱板34aが並ぶ方向において、上部均熱板34a同士の間の直下に設けることができる。
複数の均熱板支持部35は、ネジなどの締結部材を用いて一対のホルダ32bに固定することができる。一対の均熱板支持部35は、上部均熱板34aの両端を着脱自在に支持する。なお、複数の下部均熱板34bを支持する複数の均熱板支持部(下部均熱板支持部)も同様の構成を有するものとすることができる。
【0052】
上部均熱板34aおよび下部均熱板34bが、ネジなどの締結部材を用いて固定されていると、熱膨張により上部均熱板34aおよび下部均熱板34bが変形することになる。上部均熱板34aおよび下部均熱板34bが変形すると、上部均熱板34aとワーク100との間の距離、および下部均熱板34bとワーク100との間の距離が局所的に変化して、ワーク100に不均一な温度分布が生じるおそれがある。
一対の均熱板支持部35により、上部均熱板34aおよび下部均熱板34bが支持されていれば、熱膨張による寸法差を吸収することができる。そのため、上部均熱板34aおよび下部均熱板34bが変形するのを抑制することができる。
【0053】
カバー36は、板状を呈し、フレーム31の上面、底面、および側面を覆っている。すなわち、カバー36によりフレーム31の内部が覆われている。ただし、開閉扉13側のカバー36は、例えば、開閉扉13に設けることができる。
カバー36は処理領域30a、30bを囲っているが、フレーム31の上面と側面の境目、フレーム31の側面と底面の境目や開閉扉13の付近には、チャンバ10の内壁とカバー36との間の空間と、処理領域30a、30bとがつながる隙間が設けられている。
また、フレーム31の上面および底面に設けられるカバー36は複数に分割されている。また、分割されたカバー36同士の間には隙間が設けられている。すなわち、処理部30(処理領域30a、処理用域30b)内の空間はチャンバ10内の空間に連通した空間となっている。そのため、チャンバ10の内壁とカバー36との間の空間と、処理領域30a、30bとが繋がっているので、処理領域30a、30b内の圧力が、チャンバ10の内壁とカバー36との間の空間の圧力と同じになるようにすることができる。カバー36は、例えば、ステンレスなどから形成することができる。
なお、フレーム31の上面および底面に設けられるカバー36は単一の板状部材とすることもできる。
チャンバ10の内壁とカバー36との間には空間が設けられている。すなわち、有機膜形成装置1は、チャンバ10と処理部30(処理領域30a、30b)とによる二重構造となっている。この様にすれば、処理領域30a、30bから外部に逃げる熱を少なくすることができるので加熱効率を向上させることができる。
また、カバー36は、ヒータ32a側から入射した熱を、処理領域30a、30b側に反射する反射する機能を有することもできる。したがって、カバー36を設ければ、処理室30a、30bから外部に逃げる熱を少なくすることができるので加熱効率を向上させることができる。
【0054】
冷却部40は、複数のヒータ32aが設けられた空間に冷却ガスを供給する。冷却部40は、処理領域30a、30bに冷却ガスを直接供給しない。冷却部40は、冷却ガスにより、処理領域30a、30bを囲む均熱部34を冷却し、冷却された均熱部34により高温状態にあるワーク100を冷却する。すなわち、冷却部40は、冷却ガスにより、高温状態にあるワーク100を間接的に冷却する。
【0055】
冷却部40は、ノズル41、ガス源42、およびガス制御部43を有する。
ノズル41は、複数のヒータ32aが設けられた空間に接続されている。ノズル41は、例えば、側部均熱板34cやフレーム31などに取り付けることができる。ノズル41の数や配置は適宜変更することができる。例えば、
図1に例示をしたものの場合には、
図1中の処理部30におけるX方向の一方の側にノズル41を設けているが、
図1中の処理部30におけるX方向の両側にノズル41を設けることもできる。また、
図1中のY方向の一方の側や両方の側にノズル41を設けることもできる。
また、複数のノズル41を並べて設けることもできる。
【0056】
ガス源42は、冷却ガスをノズル41に供給する。ガス源42は、例えば、高圧ガスボンベ、工場配管などとすることができる。また、ガス源42は、複数設けられていてもよい。例えば、第1の冷却ガスを供給する第1のガス源と、第2の冷却ガスを供給する第2のガス源とが設けられていてもよい。
【0057】
冷却ガスは、例えば、ドライエアー、窒素ガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスなどとすることができる。ただし、冷却ガスの種類は例示をしたものに限定されるわけではない。
なお、冷却ガスが酸素を含むものである場合には、高温状態にある均熱部34や有機膜が酸化するおそれがある。そのため、冷却ガスは、酸素を含まないガス、例えば、窒素ガスや不活性ガスなどとすることが好ましい。ただし、窒素ガスや不活性ガスなどは価格が高い。一方、ドライエアーは価格が安い。そのため、均熱部34や有機膜が高温状態にある場合には窒素ガスや不活性ガスなどを用い、均熱部34や有機膜の温度が低下した後にドライエアーを用いることもできる。この様にすれば、製造コストの低減を図ることができる。
また、冷却ガスの温度は、例えば常温以上50℃以下とすることができる。ただし、冷却ガスの温度は、これに限定されるものではない。例えば、ワーク100の温度が、有機膜形成装置1から大気中にワーク100を取り出した際に結露しない程度の温度以上、且つ、有機膜形成装置1から次工程などにワーク100を搬送する際に搬送に悪影響が生じない程度の温度以下となればよい。
【0058】
ガス制御部43は、ノズル41とガス源42との間に設けられている。ガス制御部43は、例えば、冷却ガスの供給と停止、流量や圧力の制御などを行うものとすることができる。また、複数種類の冷却ガスを用いる場合には、ガス制御部43は、冷却ガスの切り替えを行うこともできる。
【0059】
ガス制御部43による冷却ガスの供給タイミングは、ワーク100に対する加熱処理が完了した後とすることができる。なお、加熱処理の完了とは、有機膜が形成される温度を所定時間維持した後とすることができる。
この場合、例えば、冷却ガスの供給タイミングは、有機膜が形成された直後とすることもできるし、チャンバ10の内圧を大気圧に戻す途中とすることもできる。この場合、冷却ガスはチャンバ10の内圧を大気圧に戻すベントガスとしても機能させることができる。また、冷却ガスの供給タイミングをチャンバ10の内圧を大気圧に戻した後とすることもできる。
有機膜が形成された直後においては、チャンバ10の内圧が大気圧よりも低い、すなわち、チャンバ10の内部にガスが少ない状態となっている。そのため、冷却ガスをチャンバ10の内部に供給しても、供給された冷却ガスにより処理領域30a、30bに存在する昇華物などが飛散するのを抑制することができる。また、冷却時間と、大気圧に戻す際のチャンバ10の内圧の調整時間を重複させることができる。すなわち、実質的な冷却時間の短縮を図ることができる。
一方、チャンバ10の内圧を大気圧に戻す途中や、チャンバ10の内圧を大気圧に戻した後においては、チャンバ10の内部にガスがあるので、対流による放熱を利用することができる。
【0060】
チャンバ10の内圧を大気圧に戻す途中に冷却ガスの供給を行う場合は、第2の排気部22を停止させ、第1の排気部21のみ稼働させた状態で冷却ガスを供給することができる。この状態では、第1の排気部21によってチャンバ10の内圧は10Paから大気圧の間で減圧し続けていることになる。このため、チャンバ10内及び処理部30内にチャンバ10の底面に向かうダウンフローの気流を形成することができる。その結果、有機材料と溶媒を含む溶液が塗布されたワーク100を加熱することで生じる、有機材料が含まれた昇華物がダウンフローの気流に乗ってチャンバ10外に排出され易くなる。この様にすれば、昇華物の滞留が生じるのが抑制されるので、昇華物の排出が容易となる。また、供給した冷却ガスが処理領域30aおよび処理領域30bに漏れたとしても、ダウンフローの気流によって排出されるので、ワーク100に昇華物などの異物が付着するのを抑制することができる。すなわち、対流による放熱と、昇華物の滞留の抑制とが可能となる冷却を行うことできる。また、前述したように、第1の排気部21の排気ポンプ21aは排気量が多いポンプであるため、第1の排気部21を使用することにより、速い排気速度で高温の気体を排出することができる。なお、排出される気体が高温の場合、排気ポンプ21aの破損を防止するため、必要に応じて排気ポンプ21aと排気口17との間に冷却部を設け、所定温度以上の気体が排気ポンプ21aに収容されないようにしてもよい。 また、チャンバ10の内圧を大気圧に戻す途中に、第1の排気部21は、一定時間動作して停止した後、再度、排気動作するように間欠して動作させても良い。このように、第1の排気部21を間欠的に動作させることで、停止中はチャンバ10内に対流による熱交換を促し、動作中は熱交換が行われた後の熱を含んだ気体が排出されるため、チャンバ10内の熱をより効率的に排出することができる。
【0061】
この様に、ワーク100の種類や大きさなどにより、昇華物などの飛散抑制や、実質的な冷却時間の短縮を図る場合には、有機膜が形成された直後に冷却ガスを供給することが好ましい。また、冷却効率の向上を図る場合には、チャンバ10の内圧を大気圧に戻す途中や、チャンバ10の内圧を大気圧に戻した後に冷却ガスを供給することが好ましい。
なお、冷却ガスの供給流量はチャンバ10の内圧の変化に伴って可変にしてもよい。この場合、チャンバ10の内圧が大気圧よりも低い場合には、第1の流量の冷却ガスを供給してチャンバ10の内圧を大気圧に戻しつつ冷却を行い、その後、チャンバ10の内圧が大気圧に戻った後は第1の流量よりも少ない第2の流量の冷却ガスを供給して引き続き冷却を行うことができる。このようにすれば、より早く大気圧に戻すことができるとともに、大気圧に戻った後は対流をできるだけ起こさないようにして冷却を続けることができる。
【0062】
図2(a)〜(d)は、冷却ガスGの供給形態を例示するための模式図である。
図2(a)に示すように、冷却ガスGは、
図1中のX方向から、ヒータ32aに向けて供給することができる。
図2(b)に示すように、冷却ガスGは、
図1中のX方向から、ヒータ32aの上方、およびヒータ32aの下方に向けて供給することができる。
図2(c)に示すように、冷却ガスGは、
図1中のX方向の一方の側からヒータ32aの上方に供給し、X方向の他方の側からヒータ32aの下方に供給することができる。この様にすれば、冷却ガスGの流れが円滑になる。冷却ガスGの流れが円滑になれば、複数のヒータ32aが設けられた空間に供給された冷却ガスGが、処理領域30a、30bに漏れるのを抑制することが容易となる。
図2(d)に示すように、
図1中のX方向の一方の側から冷却ガスGを供給し、X方向の他方の側から冷却ガスGを吸引することもできる。例えば、排出ノズル44を複数のヒータ32aが設けられた空間に接続し、排出ノズル44に吸引部45を接続することができる。吸引部45は、例えば、ブロアなどとすることができる。この様にすれば、冷却ガスGの流れおよび排出が円滑になる。また、複数のヒータ32aが設けられた空間の圧力が上昇するのを抑制することができる。そのため、複数のヒータ32aが設けられた空間に供給された冷却ガスが、処理領域30a、30bに漏れるのを抑制することが容易となる。
冷却ガスGが処理領域30a、30bに漏れるのを抑制することができれば、処理領域30a、30bに存在している昇華物がワーク100の有機膜に付着することを抑制することができる。
【0063】
なお、
図1中のX方向から冷却ガスGが供給される場合を例示したが、
図1中のY方向から冷却ガスGが供給される場合も同様とすることができる。
図2(a)〜(d)に示すように、水平方向(X方向またはY方向)から冷却ガスGを供給すれば、冷却ガスGは、上部均熱板34bおよび下部均熱板34aの少なくともいずれかの主面に沿うように流れて、水平方向における冷却ガスGの流れが形成される。ワーク100の表面は、
図1中の水平方向(X方向またはY方向)に延在しているため、ワーク100の表面が延在する方向に冷却ガスGが流れることになる。したがって、処理領域30a、30bに冷却ガスGが漏れたとしてもワーク100の表面に衝突するようなZ方向における冷却ガスGの流れが形成されるのを抑制することができる。これにより、冷却ガスGの流れにのって昇華物がワーク100の表面に衝突するのを抑制することができるので、処理領域30a、30bに存在している昇華物がワーク100の有機膜に付着するのを抑制することができる。
【0064】
次に、
図1に戻って、制御部50について説明する。
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)などの演算部と、メモリなどの記憶部とを備えている。
制御部50は、記憶部に格納されている制御プログラムに基づいて、有機膜形成装置1に設けられた各要素の動作を制御する。
【0065】
図3は、他の実施形態に係る冷却部40aを例示するための模式図である。
冷却部40aは、冷却体41aおよび冷媒供給部42aを有する。
冷却体41aは、上部均熱板34aと複数のヒータ32aとの間、および下部均熱板34bと複数のヒータ32aとの間の少なくともいずれかに設けられている。
図3に例示をした冷却部40aは、上部均熱板34aと複数のヒータ32aとの間、および下部均熱板34bと複数のヒータ32aとの間のそれぞれに冷却体41aを有している。なお、冷却体41aの配置は例示をしたものに限定されるわけではない。冷却体41aは、例えば、ヒータ32aとヒータ32aとの間に、ヒータ32aと平行に設けることもできる。
冷却体41aの内部には、冷媒の流路が設けられている。
【0066】
冷却を行う際には、冷媒供給部42aは、冷却体41aの内部に冷媒を供給し、冷却体41aから排出された冷媒を回収する。冷媒供給部42aは、冷媒を循環させるものとすることができる。
複数のヒータ32aによる加熱を行う際には、冷媒供給部42aは、冷却体41aの内部から冷媒を排出させる。
冷媒供給部42aは、例えば、回収タンク、送液ポンプ、冷却器などを備えたものとすることができる。
冷媒は、液体であれば特に限定はない。冷媒は、例えば、水などとすることができる。
以上に説明したように、冷却部40、40aは、上部加熱部、および、下部加熱部の少なくともいずれかの内部に冷却ガスまたは冷媒を供給する。
なお、上部加熱部の内部、下部加熱部の内部とは、ヒータ32aが存在する空間であって、かつ、上部均熱板または下部均熱板によって処理領域30a、30bとは仕切られた空間である。
冷媒は、上部加熱部、および、下部加熱部の少なくともいずれかの内部に設けられた冷却体41aの内部に供給される。
そして、処理領域30a、30bに支持されたワーク100が、冷却ガスまたは冷媒が供給された上部加熱部、および、下部加熱部の少なくともいずれかにより冷却される。
なお、冷却部40、40aを両方備え、冷却ガスと冷媒による冷却をともに行うこともできる。
【0067】
また、以上に説明したように、本実施の形態に係る有機膜の製造方法は、以下の工程を備えることができる。
大気圧よりも減圧された雰囲気において、基板と、基板の上面に塗布された有機材料と溶媒とを含む溶液と、を有するワーク100を加熱する工程。
加熱を行うことで有機膜が形成されたワーク100を冷却する工程。
この場合、ワーク100を加熱する工程においては、上部加熱部と、下部加熱部と、の間の処理領域30a、30bにおいてワーク100が加熱される。
ワーク100を冷却する工程においては、上部加熱部、および、下部加熱部の少なくともいずれかの内部に冷却ガスまたは冷媒を供給する。処理領域30a、30bに支持されたワーク100が、冷却ガスまたは冷媒が供給された上部加熱部、および、下部加熱部の少なくともいずれかにより冷却される。
なお、各工程の内容は、前述したものと同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0068】
ここで、ワーク100の加熱温度、すなわち、有機材料と溶剤を含む溶液の加熱温度は、100℃〜600℃程度となる場合がある。そのため、有機膜が形成された直後のワーク100の温度は、100℃〜600℃程度となる場合がある。
有機膜が形成された基板は、有機膜形成装置1から取り出され、次工程などに搬送される。この場合、高温状態にあるワーク100を有機膜形成装置1から取り出したり、搬送したりするのは困難である。また、高温状態にあるワーク100を冷却するための装置や載置部を別途設けると、装置や載置部を設置するための場所が必要となったり、製造設備のコストが増大する。
【0069】
この場合、処理領域30a、30bに冷却ガスを直接供給して、高温状態にあるワーク100を冷却することもできる。冷却ガスにより、高温状態にあるワーク100を冷却すれば冷却時間を短縮することができる。そのため、ワーク100における有機膜の形成が終了してから、次のワーク100における有機膜の形成が開始されるまでの間の時間を短縮することができる。
ところが、有機材料と溶媒を含む溶液を加熱して有機膜を形成すると、昇華物などが生成されて、昇華物などが、処理領域30a、30bの内部に付着したり、内部の空間に浮遊していたりする場合がある。そのため、処理領域30a、30bに冷却ガスを直接供給すると、付着している昇華物などが剥離したり、浮遊している昇華物が冷却ガスの流れにのったりして、有機膜の上に付着するおそれがある。有機膜の上に昇華物などの異物が付着すると、有機膜の品質が悪くなるおそれがある。
【0070】
そこで、本実施の形態に係る冷却部40は、複数のヒータ32aが設けられた空間に冷却ガスを供給している。前述したように、複数のヒータ32aが設けられた空間は、均熱部34により処理領域30a、30bと仕切られている。複数のヒータ32aが設けられた空間は、仕切られた空間となる。そのため、冷却部40から、複数のヒータ32aが設けられた空間に供給された冷却ガスが、処理領域30a、30bに漏れるのを抑制することができる。
また、
図2に例示をしたように、ワーク100の表面が延在する方向と同じ水平方向(X方向またはY方向)に、冷却ガスGの流れを形成することができる。均熱部34には隙間が設けられているが、前述したように、均熱板34の隙間から冷却ガスGが漏れたとしても、ワーク100の表面に衝突するような流れは形成されない。
ワーク100の表面に衝突する流れが形成されるのを抑制することができれば、冷却ガスが処理領域30a、30bに漏れたとしても、処理領域30a、30bの内部に付着している昇華物などが剥離して、有機膜の上に付着するのを抑制することができる。
また、本実施の形態に係る冷却部40においては、ワーク100を挟んで上下に設けられた上部加熱部の内部および下部加熱部の内部に冷却ガスGを導入することが可能である。上下の加熱部32の内部に冷却ガスGを導入することができれば、ワーク100の両面側からワーク100を間接的に冷却することができる。そのため、冷却効率を向上させることができる。
以上に説明したように、本実施の形態によれば、有機膜が形成された基板の冷却時間を短縮することができ、且つ、有機膜の品質を維持することができる。
【0071】
図4は、他の実施形態に係る有機膜形成装置1aを例示するための模式図である。なお、この実施形態では、前述した実施形態との相違点(第3の排気部23)について説明し、その他の説明を省略する。
チャンバ10の内圧が大気圧に戻る際に、対流により温度の高い気体がチャンバ10の上方空間に滞留し、下方空間と比較して上方空間の温度が高くなる場合がある。すなわち、チャンバ10内の上方空間と下方空間とで温度差が生じる場合がある。この場合、有機膜形成装置1aからワーク100を取り出したり、搬送するための搬送装置がチャンバ10内に侵入するときに、温度が高い上方空間の温度が所定の温度に下がるまで待つ必要が生じる。また、次のワーク100が上下の処理領域に搬入され、加熱処理される際に、上方の処理領域と下方の処理領域で処理される複数のワーク100の間で形成される有機膜の品質にばらつきが生じるおそれがある。そのため、チャンバ10内の温度分布が均一になってから次のワーク100を搬入するために、温度の高い上方空間の温度が下がるまで待つ必要が生じる。
【0072】
そこで、本実施の形態に係る有機膜形成装置1aには、第3の排気部23が設けられている。
第3の排気部23は、チャンバ10の内部を排気する。
第3の排気部23はチャンバ10の上方に設けられた排気口19に接続されている。 第3の排気部23は、例えば、処理部30が設置される工場建屋内の排気を行う排気装置とすることができる。
第3の排気部23は、排気口19と排気装置の間に、排出した気体の排熱を行う冷却部を備えてもよい。
【0073】
排気口19は、例えば、チャンバ10の側壁のZ方向において中央より上の位置、またはチャンバ10の天井に設けられている。チャンバ10の側壁に排気口19が設けられる場合、より好ましくは、チャンバ10の側壁のZ方向において、最も上に位置する処理領域(
図4の場合は処理領域30b)よりも上方に排気口19が設けられている。チャンバ10の天井に排気口19を設ける場合は、平面視において、フレーム31とチャンバ10の内壁の間に排気口19を設けることができる。
排気口19がチャンバ10の上方に設けられていることにより、第3の排気部23によって、排気口19を介してチャンバ10の上方空間の気体を積極的に排出することができる。その結果、上方空間に滞留した温度の高い気体が排出され、上方空間をより効率的に降温することができる。また、有機材料と溶媒を含む溶液が塗布されたワーク100を加熱することで生じる、有機材料が含まれた昇華物が上方空間に滞留していたとしても、第3の排気部23によって排出することができる。このようにすれば、昇華物の滞留が上方空間においても生じることが抑制され、昇華物の排出が容易となる。
【0074】
図5は、他の実施形態に係る有機膜形成装置1bを例示するための模式図である。
図6は、供給配管を一系統にする場合を例示するための模式図である。
なお、有機膜形成装置1bにおける冷却部40の構成は、
図2(a)〜(d)に例示した冷却部40と同様とすることができる。
図5においては、処理部30において、下方の複数のヒータ32aが設けられた空間よりも、上方の複数のヒータ32aが設けられた空間に供給する冷却ガスGの供給量を多くする。例えば、
図5における下方の複数のヒータ32aが設けられた空間Cよりも上方の複数のヒータ32aが設けられた空間Aに供給する冷却ガスGの供給量を多くする。
または空間Cよりも空間B、空間Bよりも空間Aに供給する冷却ガスGの供給量を多くする。
この場合、冷却部40は、各々の空間A〜Cに供給する冷却ガスGの供給量をそれぞれ制御するように、各々の空間A〜Cに接続されたノズル41をそれぞれ別のガス源42に接続してもよい。または、各々の空間A〜Cに接続されたノズル41を同一のガス源42に接続し、ガス源42とノズル41の間に各々の空間A〜Cに供給する冷却ガスGの供給量を制御する流量制御部を設けてもよい。
これにより、チャンバ10の内圧が大気圧に戻る際に、対流により温度の高い気体がチャンバ10の上方空間に滞留したとしても、上方空間を積極的に冷却することで上方空間の降温時間を短くすることができる。
図6に示すように、供給配管を一系統にする場合、上方の複数のヒータ32aが設けられた空間が上流になるように上方から冷却ガスGが流れるようにしてもよい。
【0075】
また、
図5に示すように、冷却ガスGを噴射するノズル41において噴射口の側を細くしてもよい。これにより、冷却ガスGの流速を速くすることができ、冷却ガスGが複数のヒータ32aに行き渡るようにすることができる。また、冷却ガスGの流速を速くすることで、チャンバ10内の対流をより多く起こし、上方空間と下方空間の温度差を少なくすることができる。
【0076】
図7は、他の実施形態に係る有機膜形成装置1cを例示するための模式図である。なお、有機膜形成装置1cにおける冷却部40aの構成は、
図3に例示した冷却部40aと同様とすることができる。
図7においては、処理部30において、下方の複数のヒータ32aが設けられた空間よりも上方の複数のヒータ32aが設けられた空間に供給する冷媒の流量を多くする。例えば、
図7における下方の複数のヒータ32aが設けられた空間Cよりも上方の複数のヒータ32aが設けられた空間Aに供給する冷媒の供給量を多くする。
または空間Cよりも空間B、空間Bよりも空間Aに供給する冷媒の供給量を多くする。 この場合、冷却部40aは、各々の空間A〜Cに供給する冷媒の供給量をそれぞれ制御するように、各々の空間A〜Cに接続された冷却体41aをそれぞれ別の冷媒供給部42aに接続してもよい。または、各々の空間A〜Cに接続された冷却体41aを同一の冷媒供給部42aに接続し、冷媒供給部42aと冷却体41aの間に各々の空間A〜Cに供給する冷媒の供給量を制御する流量制御部を設けてもよい。
これにより、チャンバ10の内圧が大気圧に戻る際に、対流により温度の高い気体がチ
ャンバ10の上方空間に滞留したとしても、上方空間を積極的に冷却することで上方空間
の降温時間を短くすることができる。
【0077】
なお、
図4の排気部を備えた有機膜形成装置1aにおいて、
図5の冷却部40または
図7の冷却部40aのいずれか一方または両方備えることもできる。
【0078】
図8は他の実施形態に係る有機膜形成装置1dを例示するための模式図である。
なお、この実施形態では、前述した実施形態との相違点(排気空間を有する筐体62)について説明し、その他の説明を省略する。
前述した通り、冷却ガスGの供給開始後、チャンバ10の内圧が大気圧に戻る際に、対流により温度の高い気体がチャンバ10の上方空間に滞留し、下方空間と比較して上方空間の温度が高くなる場合がある。チャンバ10の内部空間の降温時間を短縮するためには、上方空間の温度の高い気体をより速く排気することが必要となる。
そこで本実施形態の有機膜形成装置1dは、チャンバ10に、排気空間を有する筐体62が接続されている。この筐体62は、第1のバルブ60を介してチャンバ10に接続され、第2のバルブ61を介して第3の排気部23に接続されている。
冷却ガスGの供給開始後、一定時間が経過するまで第1のバルブ60及び第2のバルブ61は閉じられている。このとき、チャンバ10内部は対流により温度の高い気体がチャンバ10の上方空間に滞留する。また、第1のバルブ60及び第2のバルブ61が閉じている状態のチャンバ10の内圧は、冷却ガスGの供給開始後は昇圧し、密閉空間である筐体62内部の内圧よりも相対的に高くなる。
続いて、冷却ガスGの供給を開始してから一定時間が経過した後、第1のバルブ60及び第2のバルブ61が開放される。第1のバルブ60及び第2のバルブ61を開放することによって、チャンバ10内の空間と、筐体62内部の空間とが連通し、チャンバ10の上方空間に滞留している温度の高い気体は、チャンバ10の内圧よりも圧力の低い筐体62内部に吸引され、第3の排気部23によって排出される。
このように、チャンバ10内の内圧よりも圧力が低い排気空間を有する筐体62をチャンバ10に接続することで、筐体62とチャンバ10との差圧によって生じる筐体62に引き込む吸引力によってチャンバ上部に滞留する高温の気体を急速に排気することができる。このため、排気部に至る配管の流路抵抗や排気部の排気能力によって排気速度が左右されることなく、チャンバの降温時間を短縮することができる。
【0079】
図9は、他の実施形態に係る有機膜形成装置1eを例示するための模式図である。
なお、この実施形態では、前述した実施形態との相違点(酸素濃度センサ63、真空センサ64、開口66、バルブ65、配管67)について説明し、その他の説明を省略する。
本実施形態の有機膜形成装置1eには、酸素濃度センサ63、真空センサ64、チャンバ10に開口した開口66、バルブ65を介して接続された配管67が設けられている。
酸素濃度センサ63はチャンバ10内の酸素濃度を検出し、真空センサ64はチャンバ10内の真空度を検出する。これらのセンサは次のように用いられる。
酸素濃度センサ63によって検出されたチャンバ10内の酸素濃度に応じて、加熱部32による加熱の開始・停止動作や、加熱部32に印加する電力パワー(加熱温度)を制御する。また、真空センサ64によって検出されたチャンバ10内の真空度に応じて、第1の排気部21と第2の排気部22による排気の開始・停止動作を制御する。例えば、第1の排気部21によって排気を開始した後、所定の内圧に到達したことを真空センサ64によって検出した後、第2の排気部22によって排気を開始する。また、第1の排気部21によって排気を開始した後、所定の酸素濃度以下になったことを酸素濃度センサ63によって検出した後、加熱部32によって加熱を開始する。
しかしながら、これら酸素濃度センサ63や真空センサ64は、高温(例えば200℃以上)環境下での使用を想定しておらず、耐熱加工されていない場合がある。
これらの酸素濃度センサ63、真空センサ64はチャンバ10内においてカバーや反射板によって囲まれた処理領域30a、30bの外に設けられている。加熱処理中、チャンバ10内は減圧雰囲気であるため、処理領域30a、30b内で発生する熱や昇華物は処理領域30a、30bに閉じ込められ、処理領域30a、30bの外のセンサが設けられている空間には熱や昇華物が拡散しない。
しかしながら、加熱処理が終了し、チャンバ10内が、減圧雰囲気から大気圧に戻る過程で起こる対流により熱や昇華物が処理領域外まで拡散する。このような拡散が起こると、これらのセンサに昇華物や高温の気体が接触し、センサが故障したりセンサの検出精度が悪くなるおそれがある。
そこで、酸素濃度センサ63と真空センサ64は、開口66を上流側とした配管66において、バルブ65よりも下流側に設けられている。すなわち、バルブ65を閉じることで、これらのセンサが設けられた空間がチャンバ10内の空間と隔離され、バルブ65を開放することで、これらのセンサが設けられた空間をチャンバ10内の空間に連通させることができる。排気部20によってチャンバ10内を減圧しているときは、このバルブ65を開放し、チャンバ内の空間と連通させ、真空度や酸素濃度を検出する。また、加熱を開始してから一定の時間が経過して加熱処理が完了した後、チャンバ10内の空間を大気圧に戻すときに、バルブ65を閉じ、チャンバ10内の空間からセンサを隔離する。このようにバルブ65の開閉動作によって、必要なときはチャンバ10内の真空度や酸素濃度を検出することができる。一方、チャンバ10内に拡散する昇華物や高温の気体がセンサに接触することを抑止し、センサの故障やセンサの検出精度の悪化を抑止することができる。
また、前述したように、有機膜が形成された直後や、チャンバ10の内圧を大気圧に戻す途中、チャンバ10の内圧を大気圧に戻した後でガス源43から冷却ガスGの導入を開始し、チャンバ10内の温度が所定の値以下になった後、チャンバ10の開閉扉13を開放し、ワーク100を搬出する。チャンバ10内の温度が所定の値以下になった後、センサが耐えられる所定の温度までチャンバ10内の温度が降温した場合、バルブ65を再び開き、必要に応じてチャンバ内の酸素濃度または真空度を検出するようにしてもよい。チャンバ10内の温度が所定の値以下になったことは、チャンバ10内の温度を測定する温度計による温度検出、または所定の降温時間が経過したかどうかで判断される。
なお、上述した酸素濃度センサ63や真空センサ64の検出結果に基づく加熱部32による加熱の開始・停止動作、第1の排気部21と第2の排気部22による排気の開始・停止動作、バルブ65の開閉動作など、各種要素の動作も制御部50によって制御される。
なお、
図9では酸素濃度センサ63と真空センサ64は同じ配管67内に設けられるものとしたが、配管67は複数設けられても良く、それぞれの配管67に酸素濃度センサ63と真空センサ64を配置してもよい。また、酸素濃度センサ63と真空センサ64をともに配管67に設けるものに限られず、酸素濃度センサ63または真空センサ64のいずれか一方を配管67に設けるものとしてもよい。また配管67は、バルブ65によって閉塞される空間を維持できる部材であればよく、管形状に限定されない。
【0080】
図10(a)は、他の実施形態に係る有機膜形成装置1fを例示するための模式図である。
図10(b)は、有機膜形成装置1fに係る冷却ガスの供給形態を例示するための模式図である。
なお、この実施形態では、前述した実施形態との相違点(冷却ガスの供給形態)について説明し、その他の説明を省略する。
処理領域30a、30bの複数の加熱部32(上部加熱部、下部加熱部)の内部に対し、全て同じ方向から冷却ガスを導入すると、加熱部32の内部の、600℃程度まで加熱される複数のヒータ32b表面を同じ方向に流れて通過する。そして、ヒータ32bからの熱が伝達されることで温度の上昇した冷却ガスは、チャンバ10の内壁とカバー36との間の空間と、処理領域30a、30bとがつながる隙間などから漏れだしてチャンバ10の内壁とカバー36との間の空間に同じ方向から排出される。このように、複数の加熱部32に対し、同じ方向から冷却ガスを導入すると、温度の上昇した冷却ガスが同じ方向から排出される。すなわち、温度の上昇した冷却ガスが排出される空間が偏り、チャンバ10内において偏った空間が高温空間となる。偏った空間が高温空間となると、その部分は降温が遅くなり、チャンバ10の開閉扉13を開放する前に降温時間を要し、待ち時間が生じる。また、チャンバ10内で温度差が生じると、高温空間でガス化している昇華物が低温空間で析出し、チャンバ10内の部材、例えばチャンバ10の内壁に付着する。チャンバ10内の部材に昇華物が付着すると、次の処理を行うワーク100に昇華物が付着する恐れがある。また付着した昇華物を除去する必要が生じメンテナンス性が悪化する。このため、冷却ガスを加熱部32の内部に導入するときに、偏った空間が高温空間とならないように、チャンバ10内の熱分布を均一にすることが必要であった。
そこで、複数の加熱部32のうち少なくとも1つの加熱部32の冷却ガスの導入方向と、他の加熱部32の内部に導入する冷却ガスの導入方向を異なるものとする。これにより、高温空間が分散され、チャンバ10の熱分布が均一となる。その結果、高温空間の降温を待つ必要がなく、チャンバ10の開放時の待ち時間がなくなり、チャンバ10内壁への昇華物の付着を抑制できる。
例えば、
図10(a)(b)のように、冷却部40は、上部加熱部の内部に導入する冷却ガスの導入方向とは異なる方向から下部加熱部の内部に冷却ガスを導入する。すなわち、Z方向(上下方向)に隣接して位置する複数の加熱部32の内部に対し、それぞれ逆方向から冷却ガスを導入する。これにより、温度の上昇した冷却ガスが、チャンバ10内部において隣接して位置する複数の加熱部32からそれぞれ逆方向から排出され、効率的に高温空間Hが分散されることで、チャンバ10の熱分布が均一となる。その結果、高温空間の降温を待つ必要がなく、チャンバ10の開放時の待ち時間がなくなり、チャンバ10内壁への昇華物の付着を抑制できる。
なお、
図10(a)、(b)はX方向において逆方向から冷却ガスを導入しているが、Y方向において逆方向から冷却ガスを導入してもよいし、X方向とY方向を組み合わせて異なる方向から冷却ガスを導入してもよい。
なお、
図10(a)(b)は上部均熱板34aおよび下部均熱板34bは複数のヒータ32aが並ぶ方向に並べて設けられているものとしているが、前述した他の実施形態と同様、少なくとも一方は、単一の板状部材とすることもできる。
また、
図10(a)は、Z方向(上下方向)に隣接して位置する複数の加熱部32の内部に対し、それぞれ逆方向から冷却ガスを導入するように、処理部30におけるX方向の一方の側にノズル41を一段おきに逆方向に配置しているが、これに限るものではない。例えば、処理部30のX方向の両側にノズル41を設けることもできる。この場合、両側のノズル41はそれぞれガス制御部43を介してガス源42に接続され、両側のノズル41の供給流量をそれぞれ調整することによって冷却ガスが排出される方向を制御するようにしてもよい。
また、
図10(c)のように、1つの加熱部32に対して平面視からみて異なる方向から冷却ガスを導入し、異なる方向から排出されるようにして高温空間を分散するようにしてもよい。
【0081】
以上、実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、有機膜形成装置1の形状、寸法、配置などは、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。