特許第6871960号(P6871960)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871960
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】基材表面の改質方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   C09K3/00 R
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-42128(P2019-42128)
(22)【出願日】2019年3月8日
(65)【公開番号】特開2020-109144(P2020-109144A)
(43)【公開日】2020年7月16日
【審査請求日】2019年3月20日
(31)【優先権主張番号】特願2018-179685(P2018-179685)
(32)【優先日】2018年9月26日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2019-587(P2019-587)
(32)【優先日】2019年1月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591167430
【氏名又は名称】株式会社KRI
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正洋
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 玄
(72)【発明者】
【氏名】北島 さつき
【審査官】 磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−331987(JP,A)
【文献】 特開2012−072216(JP,A)
【文献】 特開2011−241268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面を改質する改質剤であって、1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ピリジンジオール、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン及び1,4-ベンゾキノンのうちの少なくとも1種以上の芳香族化合物と、アミノ基及び加水分解可能な官能基を有するシラン化合物の反応物を含む改質剤。
【請求項2】
アミノ基及び加水分解可能な官能基を有するシラン化合物の加水分解可能な官能基がアルコキシ基である請求項1に記載の改質剤。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の改質剤で、金属、樹脂、炭素及びセラミックス(シリカを除く)用改質剤。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかに記載の改質剤を基材の表面に接触させることを特徴とする基材表面の改質方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便で材料選択性が広く、生体安全性も高い、金属、樹脂、炭素又はセラミックスからなる材料の表面を機能性化合物により化学修飾する基材表面改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属、樹脂、炭素又はセラミックスからなる基材の表面を改質して様々な機能を付与する試みが広く行われている。例えば、材料の表面を親水化する方法として、プラズマ処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、オゾン処理、表面グラフト処理又は紫外線照射処理等が知られている。
【0003】
本発明者らは無機及び有機基材に塗布できる改質方法(例えば、防曇性コーティング剤)として、スルホベタイン系ケイ素化合物で修飾された金属酸化物ゾル及び該金属酸化物ゾルからなるからなる防曇性コーティング組成物を見出し、特許出願(例えば、特許文献1)している。
【0004】
特許文献2には、ドーパミンやジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)を介し
た材料表面の修飾方法が開示されている。特許文献2に記載された発明は、ドーパミンやDOPAと機能性化合物とを反応させてジヒドロキシフェニル基を有する機能性化合物を調製し、該ジヒドロキシフェニル基を有する機能性化合物を材料に接触させることにより、材料の表面に機能性化合物を固定するというものである。ジヒドロキシフェニル基を有する機能性化合物の高い反応性を利用した特許文献2に記載された材料表面の修飾方法は、金属、樹脂、セラミックス等の広い材料に対して適用可能であり、材料選択性が広いという点で優れている。また、生体由来分子であるドーパミンやDOPAを用いていることから生体安全性も高い。しかしながら、ジヒドロキシフェニル基とアミノ基を有するドーパミンは極めて反応性が高いことから、安定に保存するため塩酸塩にする必要がある、またドーパミンの反応によって得られる溶液は黒褐色の為、コーティング処理した基材が着色するという等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2016−123562号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0330025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記事案に鑑み、本発明は、簡便で基材選択性が広く、着色の問題も少なく、生体安全性も高い、金属、樹脂、炭素又はセラミックスからなる材料の表面を機能性化合物により化学修飾する基材表面改質方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、金属、樹脂、炭素又はセラミックスからなる材料の表面を機能性化合物により化学修飾する基材表面改質方法であって、上記の様な従来技術の問題点に留意しつつ研究を進めた結果、容易に入手できる市販の芳香環に少なくとも2つの置換基を有する芳香族化合物とアミノ基等を有するシラン化合物又は複数のアミノ基を有する化合物の反応混合物を、金属、樹脂炭素、又はセラミックスからなる材料に接触させることにより、従来技術の問題点が大幅に軽減されることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下の構成からなることを特徴とし、上記課題を解決するものである。
〔1〕 基材の表面を改質する改質剤であって、芳香環に少なくとも2つの置換基を有する芳香族化合物で、前記芳香族化合物の前記置換基がそれぞれ独立して水酸基、アミノ基、チオール基及び酸素二重結合のいずれかである芳香族化合物と、アミノ基及び加水分解可能な官能基を有するシラン化合物又は複数のアミノ基を有する化合物の反応物を含む改質剤。
〔2〕 前記芳香族化合物の芳香環が、ベンゼン環、縮合環及びヘテロ原子を含む芳香環のいずれかである前記〔1〕に記載の改質剤。
〔3〕 アミノ基及び加水分解可能な官能基を有するシラン化合物の加水分解可能な官能基がアルコキシ基である前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の改質剤。
〔4〕 前記芳香族化合物の前記置換基の一つが水酸基であり、他の一つが水酸基、アミノ基及びチオール基のいずれかであることを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の改質剤。
〔5〕 前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の改質剤を基材の表面に接触させることを特徴とする基材表面の改質方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の改質方法では、安定で取扱いが容易な原料を用いて、金属、樹脂、炭素又はセラミックスを表面改質することが可能で、例えば、処理した表面を疎水性から親水性に変換させることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において使用する芳香環に少なくとも2つの置換基を有する芳香族化合物(以下、「2置換基以上の芳香族化合物」という場合がある。)の芳香環は、芳香環であればどのようなものであってもよいが、ベンゼン環、縮合環及びヘテロ原子を含む芳香環のいずれかであることが好ましい。
【0011】
縮合環としては、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等が例示できる。
また、ヘテロ原子を含む芳香環としては、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、キノリン環、キノキサリン環、インドール環、チオフェン環等が例示できる。
【0012】
前記芳香族化合物が有する少なくとも2つの置換基の位置は、特に制限されないが、芳香環の隣接した位置(オルト位)又は芳香環の対向した位置(パラ位)であることが特に好ましい。
【0013】
本発明に使用する2置換基以上の芳香族化合物の置換基は、それぞれ独立して水酸基、アミノ基、チオール基及び酸素二重結合のいずれかを有していれば良いが、芳香環にその他の置換基を有しても良い。また、2置換基以上の芳香族化合物の置換基は、水酸基、アミノ基、チオール基及び酸素二重結合以外で、窒素二重結合(=N−H結合)、イオウ二重結合であっても良い。
【0014】
本発明に使用する2置換基以上の芳香族化合物の好ましい化合物としては、2置換基以上の芳香族化合物の置換基が、一つが水酸基であり、他の一つが水酸基、アミノ基及びチオール基のいずれかである2置換基以上の芳香族化合物である。
【0015】
以下に、本発明に使用する2置換基以上の芳香族化合物を具体的に例示するが、これらの化合物は単独で用いても良いし、複数の化合物の混合物として用いても良い。
【0016】
ベンゼン環に2つの置換基を有する芳香族化合物としては、1,2−ジヒドロキシベンゼン、2−アミノフェノール、2−ヒドロキシチオフェノール、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、4−アミノフェノール、4−ヒドロキシチオフェノール、タンニン、ウルシオール、ラッコール、チチオール、マンゴール、カルドール、1,2−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン及び4,4−ジアミノジフェニルエーテル等が挙げられる。
【0017】
また、置換基が酸素二重結合である2置換基以上の芳香族化合物としては、1,4−ベンゾキノン、1,2−ベンゾキノン、1,4−ナフトキノン、1,2−ナフトキノン、2,6−ナフトキノン、アントラキノン及び1,4−アントラキノン等が挙げられる。
【0018】
ベンゼン環に3つ以上の置換基を有する置換芳香族化合物としては、ドーパミン、ドーパミン塩酸塩、3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−DL−アラニン、3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−L−アラニン、2,3−ジヒドロキシベンズアルデヒド、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシベンズアミド、3,4−ジヒドロキシベンジルアルコール、3,4−ジヒドロキシベンズアミド、2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,4−ジヒドロキシベンズアミド、3,5−ジヒドロキシベンズアミド、3,5−ジヒドロキシベンジルアルコール、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシベンズニトリル、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸、3’,4’−ジヒドロキシアセトフェノン、2’,4’−ジヒドロキシアセトフェノン、2’,5’−ジヒドロキシアセトフェノン、2’,6’−ジヒドロキシアセトフェノン、3’,5’−ジヒドロキシアセトフェノン、2’,3’、4’−トリヒドロキシアセトフェノン、2’,4’、6’−トリヒドロキシアセトフェノン、2,3,4,トリヒドロキシベンズアルデヒド、2,4,5−トリヒドロキシベンズアルデハイド、2,4,6−トリヒドロキシベンズアルデハイド、3,4,5−トリヒドロキシベンズアルデハイド、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、2,4,6−トリヒドロキシ安息香酸、2,3,4−トリヒドロキシ安息香酸、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシジフェニルメタン等が挙げられる。
【0019】
芳香環が縮合環である置換芳香族化合物としては、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、9,10−ジヒドロキシアントラセン、1,5−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン及び2、3−ジアミノナフタレン等が挙げられる。
【0020】
芳香環がヘテロ原子を含む芳香環であるオルト置換芳香族化合物としては、2,3−ジヒドロキシピリジン、2,3−ジヒドロキシキノキサリン及び2,3−ジアミノピリジン等が挙げられる。
【0021】
前記例示した2置換基以上の芳香族化合物のうち好ましいのは1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン、3’,4’−ジヒドロキシアセトフェノン、2,3−ジヒドロキシベンズアルデヒド、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシベンズアミド、3,4−ジヒドロキシベンズアミド、3,4−ジヒドロキシベンジルアルコール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3,4,トリヒドロキシベンズアルデヒド、2,4,5−トリヒドロキシベンズアルデハイド、3,4,5−トリヒドロキシベンズアルデハイド、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、2,3,4−トリヒドロキシ安息香酸、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシジフェニルメタン、2,3−ジヒドロキシピリジン、2,3−ジヒドロキシキノキサリン、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸、2−アミノフェノール、4−アミノフェノールであり、特に好ましいのは1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン及び、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ベンゾキノン及びこれらの混合物である。
【0022】
本発明において使用するアミノ基及び加水分解可能な官能基を有するシラン化合物(「以下、「アミノ基等を有するシラン化合物」という場合がある。)は、アミノ基及び加水分解可能な官能基を有するシラン化合物であれば特に制限はないが、加水分解する官能基がアルコキシ基であることが好ましく、特に、アルコキシ基がケイ素と結合しているアミノ基等を有するケイ素化合物が好ましい。
【0023】
アミノ基等を有するシラン化合物の具体的な化合物としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等及びこれらの混合物が挙げられる。
これらのうち好ましいのは3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン及びN−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシランであり、特に好ましいのは3−アミノプロピルトリメトキシシランである。
【0024】
複数のアミノ基を有する化合物(多価アミン)としては、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,2−ジアミノブタン、1,3−ジアミノペンタン、1,3−ジアミノ−2−プロパノール、2,2’−ジアミノ−N−メチルジエチルアミン、3,3’−ジアミノ−N−メチルジプロピルアミン、1,2−ジアミノ−2−メチルプロパン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)ブタン−1,4−ジアミン、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、N−(3−アミノプロピル)ブタン−1,4−ジアミン、プトレシン、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタン、1,3−ビス(3−アミノプロポキシ)−2,2−ジメチルプロパン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルプロパン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)−ブチルアミン、ラウリルイミノビスプロピルアミン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)−1,3−プロピレンジアミン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)−1,3−ブチレンジアミン、3,3’−ジアミノジプロピルアミン、1,2−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン及びポリエチレンイミン等が挙げられる。
【0025】
これらのうち好ましいのは、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1、4−ジアミノブタン、1,2−ジアミノブタン、ジエチレントリアミン及びポリエチレンイミンである。
【0026】
本発明の改質剤は、2置換基以上の芳香族化合物とアミノ基等を有するシラン化合物あるいは複数のアミノ基を有する化合物を溶媒に溶かすことにより改質剤が生成する。この際、2置換基以上の芳香族化合物とアミノ基等を有するシラン化合物あるいは複数のアミノ基を有する化合物を溶媒に溶かす順番は問わない。どちらか一方を溶媒に溶かした後他の一方を加えるかあるいは同時に溶媒に加えて溶かしてもよい。
【0027】
アミノ基等を有するシラン化合物あるいは複数のアミノ基を有する化合物の塩基性のため、溶解した2置換基以上の芳香族化合物は、アミノ基等を有するシラン化合物あるいは複数のアミノ基を有する化合物のアミノ基を取り込んで重合が起こり、窒素原子を取り込んだ複雑な重合体になる。この重合体には骨格内に多くのヒドロキシル基、アミノ基、シラノール基ならびに芳香族環(ベンゼン環やナフタレン環等)を有する。このため、無機材料、金属材料には水素結合や配位結合により、疎水性の樹脂材料などにはπ−π相互作用などの疎水性相互作用により結合し、材質を問わず様々な材料表面に被覆が可能である。テフロン(登録商標)やポリジメチルシロキサンなど、従来の手法では改質しづらい材料表面にも適用できる。
【0028】
また、アミノ基等を有するシラン化合物を用いた場合、処理した表面に存在するシラノール基と反応する他のシランカップリング剤等を反応させることにより、基材のさらなる表面改質が可能である。
【0029】
反応溶媒としては、処理する基材(金属、樹脂、炭素又はセラミックス)が腐食されず、水酸基を含む2置換基以上の芳香族化合物と、アミノ基等を有するシラン化合物が溶解する溶媒であれば特に限定されない。具体的には、水、アルコール系溶媒(メチルアルコール、エチルアルコール及びイソプロピルアルコール等)、エーテル系溶媒(ジエチルエーテル、テトラハイドロフラン、エチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル及びエチレングリコールジメチルエーテル等)、芳香族炭化水素系溶媒(ベンゼン、トルエン及びキシレン等)、非プロトン性溶媒(ジメチルスルオキサイド、N,N−ジメチルホルムアミド及びN−メチルピロリドン等)及びこれらの混合溶媒が挙げられる。これらのうち好ましくは水、アルコール及びそれらの混合溶媒であり、特に好ましくは水及び混合溶媒である。
【0030】
2置換基以上の芳香族化合物とアミノ基等を有するシラン化合物あるいは複数のアミノ基を有する化合物の混合比は2置換基以上の芳香族化合物1モルに対してアミノ基等を有するシラン化合物あるいは複数のアミノ基を有する化合物が0.5モル〜100モルであり、好ましくは1モル〜80モルであり、特に好ましくは2モル〜50モルである。
【0031】
2置換基以上の芳香族化合物とアミノ基等を有するシラン化合物あるいは複数のアミノ基を有する化合物に溶解させる際の温度は通常0℃〜用いる溶媒の沸点であり、好ましくは室温〜用いる溶媒の沸点である。
【0032】
2置換基以上の芳香族化合物とアミノ基等を有するシラン化合物あるいは複数のアミノ基を有する化合物総量の溶媒に対する濃度は0.01重量%〜10重量%であり、好ましくは0.01重量%〜7.5重量%であり、特に好ましくは0.05重量%〜5重量%である。
【0033】
次に、本発明の基材表面の改質方法について説明する。
本発明の基材表面の改質方法は、前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の改質剤を基材の表面に接触させることを特徴とする。
【0034】
本溶液を用いて表面修飾できる基材としては、金属、樹脂、炭素及びセラミックスが挙げられる。
金属としては、鉄、アルミニウム、銅、ステンレス、ニッケル、金、白金、黄銅及びこれらの合金等が挙げられる。
【0035】
樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ABS、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ、不飽和ポリエステル、メラミン、ジアリルフタレート、ポリイミド、ウレタン、ナイロン、アラミド、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリフタルアミド、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリエーテルサルフォン、ポリスルフォン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリベンゾオキサゾール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体樹脂、エチレン・四フッ化エチレン共重合体樹脂、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体樹脂等)、ポリジメチルシロキサン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、SBR、ニトリルラバー、EPM、EPDM、エピクロルヒドリンラバー、ネオプレンラバー、ポルサルファイド及びブチルラバー等}、セラミックスとしては、アルミナ、サファイア、シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミナ等が挙げられる。
【0036】
上記基材の形状は、本発明の改質剤を表面に接触させることができれば、どのような形状であっても良く、例示すると板、粒子、繊維状などの基材を示すことができる。
【0037】
上記基材を処理する方法は、通常、本発明の改質剤が溶解した溶液中に上記基材を浸漬することにより行うことが出来る。この際撹拌してもしなくてもよいが、撹拌を行う方が好ましい。
【0038】
浸漬する際の温度は通常室温〜用いた溶媒の沸点であり、好ましくは室温〜50℃である。
また、浸漬する時間は通常0.5時間〜24時間であり、好ましくは1時間〜12時間であり、特に好ましくは2時間〜12時間である。
【0039】
浸漬後、水洗して乾燥することにより、表面の親水化を行うことが可能である。
【0040】
また、親水化された基材の耐久性を高めるため、乾燥時加熱してもよい。
乾燥温度は通常80℃〜300℃であり、好ましくは80℃〜200℃であり、特に好ましくは80℃〜150℃である。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明する。実施例は、本発明を説明するものであり、制限を加えるものではない。以下、特記しない限り、部は重量部を意味する。
【0042】
〔実施例1〕
1,2−ジヒドロキシベンゼン(ナカライテスク社製)25mg(0.23mmol)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)1.23g(6.87mmol)を水100gに溶解させ、ゆっくり撹拌しながらスライドガラスサイズのポリプロピレン製のシートを投入して2時間放置した。取り出した後、流水で洗浄し室温で乾燥することにより表面を改質したほぼ白色のポリプロピレン製シートを得た。
【0043】
〔実施例2〕〜〔実施例9〕
実施例1と同様の操作で得た溶液に、ポリカーボネート(実施例2)、ポリメチルメタクリレート(実施例3)、PTFE(実施例4)、ポリジメチルシロキサン(実施例5)、ガラス(実施例6)、SUS(実施例7)、銅(実施例8)、アルミニウム(実施例9)からなるスライドガラスサイズのシートを投入してゆっくり撹拌しながら4時間放置した。取り出した後、流水で洗浄し室温で乾燥することにより表面を改質したシートを得た。
【0044】
〔実施例10〕
1,2−ジヒドロキシベンゼン(ナカライテスク社製)25mg(0.23mmol)、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)1.60g(7.21mmol)を水100gに溶解させ、ゆっくり撹拌しながらスライドガラスサイズのポリプロピレン製のシートを投入して4時間放置した。取り出した後、流水で洗浄し室温で乾燥することにより表面を改質したほぼ白色のポリプロピレン製シートを得た。
【0045】
〔実施例11〕
1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(ナカライテスク社製)29mg(0.23mmol)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)1.90g(10.6mmol)を水100gに溶解させ撹拌しながらスライドガラスサイズのポリプロピレン製のシートを投入して一晩放置した。取り出した後、流水で洗浄し室温で乾燥することにより表面を改質したポリプロピレン製シートを得た。
【0046】
〔実施例12〕
1,2,4−トリヒドロキシベンゼン(ナカライテスク社製)29mg(0.23mmol)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)1.90g(10.6mmol)を水100gに溶解させ撹拌しながらスライドガラスサイズのポリプロピレン製のシートを投入して一晩放置した。取り出した後、流水で洗浄し室温で乾燥することにより表面を改質したポリプロピレン製シートを得た。
【0047】
〔実施例13〕
3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(ナカライテスク社製)32mg(0.23mmol)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)1.90g(10.6mmol)を水100gに溶解させ撹拌しながらスライドガラスサイズのポリプロピレン製のシートを投入して一晩放置した。取り出した後、流水で洗浄し室温で乾燥することにより表面を改質したポリプロピレン製シートを得た。
【0048】
〔実施例14〕
2,3−ジヒドロキシナフタレン(ナカライテスク社製)37mg(0.23mmol)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)1.90g(10.6mmol)を水100gに溶解させ撹拌しながらスライドガラスサイズのポリプロピレン製のシートを投入して一晩放置した。取り出した後、流水で洗浄し室温で乾燥することにより表面を改質したポリプロピレン製シートを得た。
【0049】
〔実施例15〕
2−アミノフェノール(ナカライテスク社製)25mg(0.23mmol)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)1.90g(10.6mmol)を水100gに溶解させ撹拌しながらスライドガラスサイズのポリプロピレン製のシートを投入して一晩放置した。取り出した後、流水で洗浄し室温で乾燥することにより表面を改質したポリプロピレン製シートを得た。
【0050】
〔実施例16〕
2,3−ピリジンジオール(東京化成工業株式会社製)26mg(0.23mmol)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)1.90g(10.6mmol)を水100gに溶解させ撹拌しながらスライドガラスサイズのポリプロピレン製のシートを投入して一晩放置した。取り出した後、流水で洗浄し室温で乾燥することにより表面を改質したポリプロピレン製シートを得た。
【0051】
〔実施例17〕
1,2−ジヒドロキシベンゼン(ナカライテスク社製)25mg(0.23mmol)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)1.23g(6.87mmol)、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン東京化成工業社製)0.50g(2.55mmol)を水100gに溶解させ一晩室温で撹拌した。得られた無色の水溶液をゆっくり撹拌しながらスライドガラスサイズのポリプロピレン製のシートを投入して一晩時間放置した。取り出した後、流水で洗浄し室温で乾燥することにより表面を改質したポリプロピレン製シートを得た。
【0052】
〔実施例18〕
1,4−ジヒドロキシベンゼン(ナカライテスク社製)25mg(0.23mmol)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)1.60g(8.94mmol)を水100gに溶解させ、ゆっくり撹拌しながらスライドガラスサイズのポリプロピレン製のシートを投入して2時間放置した。取り出した後、流水で洗浄し室温で乾燥することにより表面を改質したほぼ白色のポリプロピレン製シートを得た。
【0053】
〔実施例19〕
1,4−ジヒドロキシナフタレン(ナカライテスク社製)37mg(0.23mmol)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)1.90g(10.6mmol)を水100gに溶解させ撹拌しながらスライドガラスサイズのポリプロピレン製のシートを投入して一晩放置した。取り出した後、流水で洗浄し室温で乾燥することにより表面を改質したポリプロピレン製シートを得た。
【0054】
〔実施例20〕
2,6−ジヒドロキシナフタレン(ナカライテスク社製)37mg(0.23mmol)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)1.90g(10.6mmol)を水100gに溶解させ撹拌しながらスライドガラスサイズのポリプロピレン製のシートを投入して一晩放置した。取り出した後、流水で洗浄し室温で乾燥することにより表面を改質したポリプロピレン製シートを得た。
【0055】
〔実施例21〕
1,4-ベンゾキノン(ナカライテスク社製)25mg(0.23mmol)、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)1.60g(8.94mmol)を水100gに溶解させ、ゆっくり撹拌しながらスライドガラスサイズのポリプロピレン製のシートを投入して2時間放置した。取り出した後、流水で洗浄し室温で乾燥することにより表面を改質したほぼ白色のポリプロピレン製シートを得た。
【0056】
〔比較例1〕
1,2−ジヒドロキシベンゼン(ナカライテスク社製)25mg(0.23mmol)を水100gに溶解させ撹拌しながらスライドガラスサイズのポリプロピレン製のシートを投入して一晩放置した。取り出した後、流水で洗浄し室温で乾燥することにより表面を改質したポリプロピレン製シートを得た。
【0057】
〔比較例2〕
3−アミノプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)1.23g(6.87mmol)を水100gに溶解させ撹拌しながらスライドガラスサイズのポリプロピレン製のシートを投入して一晩放置した。取り出した後、流水で洗浄し室温で乾燥することにより表面を改質したポリプロピレン製シートを得た。
【0058】
〔実施例22〕
2,3−ジヒドロキシナフタレン(ナカライテスク社製)37mg(0.23mmol)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)1.9g(10.6mmol)を水100gに加え30分間撹拌した。次に窒化ホウ素(昭和電工社製 UHP−2)10.0gを加えそのまま24時間撹拌した。処理した窒化ホウ素を吸引濾過にて単離後、メタノールにて洗浄、乾燥することにより表面処理窒化ホウ素を約10g得た。
【0059】
〔実施例23〕
2,3−ジヒドロキシナフタレン(ナカライテスク社製)74mg(0.46mmol)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業株式会社社製)1.9g(10.6mmol)を水150gに加え30分間撹拌した。次にアラミド繊維のチョプドファイバー(東レ・デュポン社製:ケブラー(登録商標)、0.6mm長)10.0gを加えそのまま24時間撹拌した。処理したアラミド繊維を吸引濾過にて単離後、メタノールにて洗浄することにより表面処理アラミド繊維を約10g得た。
【0060】
〔実施例24〕
2,3−ジヒドロキシナフタレン(ナカライテスク社製)185mg(1.16mmol)、1,4−フェニレンジアミン(ナカライテスク社製)125mg(1.16mmol)を水とメタノールの混合溶媒(水50g、メタノール50g)に加えた。次いでスライドガラスサイズのポリプロピレン製のシートを投入して一晩撹拌した。取り出した後、流水で洗浄し室温で乾燥することにより表面を改質したポリプロピレン製シートを得た。
【0061】
〔実施例25〕
実施例24において1,4−フェニレンジアミンの代わりに1,2−エチレンジアミン(ナカライテスク社製)70mg(1.16mmol)を用いた以外は同様の操作を行うことにより表面を改質したポリプロピレン製シートを得た。
【0062】
〔実施例26〕
実施例24において1,4−フェニレンジアミンの代わりに1,3−プロピレンジアミン(ナカライテスク社製)86mg(1.16mmol)を用いた以外は同様の操作を行うことにより表面を改質したポリプロピレン製シートを得た。
【0063】
〔実施例27〕
1,4−フェニレンジアミン(ナカライテスク社製)125mg(1.16mmol)、1,3−プロピレンジアミン(ナカライテスク社製)86mg(1.16mmol)を水とメタノールの混合溶媒(水50g、メタノール50g)に加えた。次いでスライドガラスサイズのポリプロピレン製のシートを投入して一晩撹拌した。取り出した後、流水で洗浄し室温で乾燥することにより表面を改質したポリプロピレン製シートを得た。
【0064】
〔実施例28〕
1,4−フェニレンジアミン(ナカライテスク社製)125mg(1.16mmol)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)475mg(2.65mmol)を水とメタノールの混合溶媒(水50g、メタノール50g)に加えた。次いでスライドガラスサイズのポリプロピレン製のシートを投入して一晩撹拌した。取り出した後、流水で洗浄し室温で乾燥することにより表面を改質したポリプロピレン製シートを得た。
【0065】
〔実施例29〕
1,2−ジヒドロキシベンゼン(ナカライテスク社製)640mg(5.81mmol)、1,3−プロピレンジアミン(ナカライテスク社製)430mg(5.81mmol)を水とメタノールの混合溶媒(水50g、メタノール50g)に加えた。次いでスライドガラスサイズのポリプロピレン製のシートを投入して一晩撹拌した。取り出した後、流水で洗浄し室温で乾燥することにより表面を改質したポリプロピレン製シートを得た。
【0066】
〔比較例3〕
1,4−フェニレンジアミン(ナカライテスク社製)125mg(1.16mmol)を水とメタノールの混合溶媒(水50g、メタノール50g)に加えた。次いでスライドガラスサイズのポリプロピレン製のシートを投入して一晩撹拌した。取り出した後、流水で洗浄し室温で乾燥することにより表面を改質したポリプロピレン製シートを得た。
【0067】
〔比較例4〕
1,3−プロピレンジアミン(ナカライテスク社製)430mg(5.81mmol)を水とメタノールの混合溶媒(水50g、メタノール50g)に加えた。次いでスライドガラスサイズのポリプロピレン製のシートを投入して一晩撹拌した。取り出した後、流水で洗浄し室温で乾燥することにより表面を改質したポリプロピレン製シートを得た。
【0068】
〔元素分析〕
実施例1及び実施例23でそれぞれ得たポリプロピレン製シート及びアラミド繊維の表面をエネルギー分散型X線分析(EDX分析)を行ったところ、ケイ素原子の存在を確認した。
【0069】
〔水との濡れ性評価〕
上記実施例で得た表面改質試験板を水の中に投入後、引き上げて水との濡れ性を目視にて観測した。結果を表1に示した。
【0070】
【表1】
【0071】
〔表面処理窒化ホウ素を含むエポキシ樹脂組成物の作製〕
ビフェニル型エポキシ(日本化薬製:NC−3000)1.10gとフェノールノボラック(DIC製:TD2131)0.42g、2−エチル−4−メチルイミダゾール(ナカライテスク製:2E4MZ)0.015gを、2-ブタノン(ナカライテスク製:MEK)5.0gで溶解した。さらに実施例22で作製した表面処理窒化ホウ素3.12g、アルミナ(昭和電工製:CB-A20S)5.91gを添加し、さらにΦ5のアルミナボール10gを加え、60rpmで2時間混練してエポキシ樹脂混合物を得た(窒化ホウ素添加量は35vol%、フィラー総添加量は70vol%)。得られた混合物をPETフィルムに塗布し、120℃で4分間乾燥し、真空プレス機にて140℃/20MPa/5分加熱加圧した後、さらに180℃/0.5MPa/2時間プレスを行い、エポキシ樹脂硬化物を得た。同様に未処理の窒化ホウ素でもエポキシ樹脂硬化物を作製した。
【0072】
〔熱伝導率評価〕
べテル製サーモウェーブアナライザ TA(周期加熱方式)を用いて、得られたエポキシ樹脂硬化物の厚み方向の熱伝導率を算出した。未処理の窒化ホウ素を使用したエポキシ樹脂化合物の熱伝導率が3.8W/m・Kであるのに対し、表面処理窒化ホウ素を使用したエポキシ樹脂化合物の熱伝導率は4.6W/m・Kと向上した。
【0073】
EDXの分析結果より、ケイ素原子の存在が確認されたことから、水酸基、アミノ基及びチオール基を2つ以上(少なくとも1個は水酸基)有する芳香族化合物とシラン化合物を同時に用いて処理することにより、シラン化合物が基材の表面に加水分解して析出していることは明らかである。本処理によって未処理の基材は疎水性が強く水をはじくが、表1から明らかなように本発明の改質方法によって得られた基材は非常に親水性が高く、また種々の基板にも適用でき、製造工程が短く安価に製造出来ることから、表面親水化基材を安価に製造する際において有用な処理方法である。また本発明の改質方法はプライマー処理法としても利用可能で、不活性な基材表面に処理することにより、他の物質との接着性の向上を図ることが可能であり、表面が不活性な窒化ホウ素を本方法で処理することにより、マトリックス樹脂との親和性が向上して窒化ホウ素とマトリックス樹脂との界面抵抗が減少することから、窒化ホウ素と樹脂コンポジットの熱伝導率の向上に有用である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の表面改質方法は、温和な条件で種々の基板に対して、安価で簡便に改質することが可能である。例えば、今まで疎水性であった基材に対して親水性付与による新たな機能を付与することが可能で非常に有用である。また本表面改質方法によって得られた表面改質層をプライマー層として利用することも可能で、今まで化学的に不活性なポリオレフィン、フッ素樹脂などの表面改質も可能となる。また化学的に不活性なフィラーの表面を改質することによりの本フィラーを用いたコンポジットの機械物性、熱伝導性等を改善することが可能である。