(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記磁気脱進機は、前記機械式共振子の折り返しで振動するたびに前記機械式共振子を前記ガンギ車群(20、20B、20C)に瞬間的に結合するストッパ(30、30B、30C)を備え、前記ストッパは、前記磁気要素または前記複数の磁気要素を有し、前記機械式共振子(14、14B)が振動すると、休止段階を伴って揺れ動く往復運動に供され、前記休止段階で前記ストッパは、前記2つの休止位置で交互に停止することと、
前記少なくとも1つの磁気構造は、前記ストッパの前記2つの休止位置で、第1の磁気ポテンシャルエネルギー曲線(66)および第2の磁気ポテンシャルエネルギー曲線(68)をそれぞれ画定し、両エネルギー曲線は、前記ガンギ車群の角度によって変化し、各エネルギー曲線は、
−前記少なくとも1つの磁気構造と、前記ストッパの対応する休止位置で前記少なくとも1つの磁気構造と結合している前記磁気要素または複数の磁気要素からなる磁気要素の群との間の磁気相互作用に対する増大部分(PC1、PC2)であって、
前記増大部分は、通常の計時器ムーブメントの動作過程で、前記磁気要素または前記磁気要素によって、この磁気要素の群によって上がるのに適しているように構成される、増大部分と、
−それぞれが前記増大部分に続く磁気障壁であって、前記磁気障壁は、前記ストッパが対応する休止位置にある間に、前記ガンギ車群の角度を成した進行を停止するのに適しているように構成される、磁気障壁(BM1、BM2)と
を有し、
前記第1の磁気ポテンシャルエネルギー曲線の前記増大部分は、前記第2の磁気ポテンシャルエネルギー曲線の前記増大部分に対してそれぞれが角度を成してずれており、前記第1の磁気ポテンシャルエネルギー曲線と前記第2の磁気ポテンシャルエネルギー曲線のいずれか一方の各磁気障壁は、前記第1の磁気ポテンシャルエネルギー曲線と前記第2の磁気ポテンシャルエネルギー曲線のもう一方の2つの連続する磁気障壁の間に角度を成して位置していて、
前記磁気脱進機は、
−前記エネルギー蓄積段階が、本質的にそれぞれが前記ストッパの前記連続する休止段階で起こるように構成され、
−各エネルギー蓄積段階で、その時点で前記少なくとも1つの磁気構造と結合している前記磁気要素または前記複数の磁気要素からなる磁気要素の群が、前記ガンギ車群のある特定の回転過程で、前記増大部分のうちの1つを少なくとも部分的に上がるのに適しているように構成され、
−前記第1の磁気ポテンシャルエネルギー曲線および前記第2の磁気ポテンシャルエネルギー曲線の前記増大部分が、前記通常の計時器ムーブメントの動作過程で、連続するエネルギー蓄積段階で少なくとも部分的に、それぞれが交互に登り得るように構成されることと、
前記磁気脱進機はさらに、
−前記エネルギー伝達段階が、前記ストッパの前記往復運動の連続する折り返し時にそれぞれ起こるように構成され、
−前記磁気脱進機が、前記通常の計時器ムーブメントの動作過程で、前記ストッパの前記往復運動の連続する毎回の折り返し時に、全体的に磁気ポテンシャルエネルギー(D1、D2)の低下に供されるように構成され、
−前記磁気脱進機の磁気ポテンシャルエネルギーが低下することは、本質的に、前の休止段階で前記少なくとも1つの磁気構造と結合していた前記磁気要素または複数の磁気要素からなる磁気要素群の各磁気要素に印加された径方向の磁力(FR1、FR2)の作用から生じるように構成され、よって前記径方向の磁力の作用は、前記作用のほとんどを前記機械式共振子に伝達するように構成されている前記ストッパに供給され、それによって前記機械式共振子は、前記ストッパの前記往復運動の毎回の折り返し時に機械エネルギーインパルスを受けることができることと
を特徴とする、請求項1に記載の計時器。
前記トゥールビヨンはさらに、中間歯車(76)が前記ガンギカナ(24)と噛み合い、中間カナ(78)が前記計時器ムーブメントに含まれている固定された第2の歯車(80)と噛み合うという中間歯車群(74)を有し、前記中間歯車群は、前記ガンギ車群の回転数を減らす減衰歯車群であり、前記トゥールビヨンのキャリッジが1分にそれ自体が1回転するように構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の計時器。
前記ガンギ車群の前記回転周波数(FRot)の値は、前記機械式共振子の前記振動周波数(Fo)の4分の1から16分の1までの間(両数字を含む)である(Fo/4<=FRot<=Fo/16)ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の計時器。
前記磁気脱進機は、少なくとも2つの同様の磁気要素(32、33)を備え、前記磁気要素は、前記磁気構造(26)の同じ側に位置し、前記それぞれの磁気結合が一緒に加えられるように、両磁気要素が前記磁気構造と同時に結合することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の計時器。
前記磁気脱進機は、少なくとも1対の同様の磁気要素(32C、33C)を備え、前記磁気要素は、それぞれ前記磁気構造(26C)の上と下に位置し、前記それぞれの磁気結合が一緒に加えられるように、両磁気要素が前記磁気構造と同時に結合することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の計時器。
前記磁気構造は第1の磁気構造(26)であり、前記ガンギ車群は第2の磁気構造(40)を備え、前記第2の磁気構造は、前記第1の磁気構造と面対称であり、前記複数の磁気要素(32、33)の前記磁気要素または各磁気要素が前記振動運動をしている間に前記第1の磁気構造と第2の磁気構造との間に少なくとも瞬間的に位置することが可能なように、前記第1の磁気構造から一定の距離を保って位置していることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の計時器。
前記第1の磁気構造および前記第2の磁気構造は、それぞれが第1の永久磁石および第2の永久磁石で形成され、各々の永久磁石は、軸方向の磁化および同じ極性を有することと、前記複数の磁気要素(32、33)の前記磁気要素または各磁気要素は永久磁石で形成され、前記永久磁石は、軸方向の磁化を有し、前記第1の磁石および第2の磁石とは逆の極性を有し、それによって前記2つの磁気構造の各々との磁気反発力に供されることとを特徴とする、請求項8に記載の計時器。
前記ガンギ車群(20)は、第1の強磁性構造(44)および第2の強磁性構造(46)を有し、前記強磁性構造は、前記第1の磁気構造および第2の磁気構造からなる群の両外側で前記第1の磁気構造および第2の磁気構造(26、40)をそれぞれ覆い、それによって、前記磁気要素が両磁気構造の間に位置して前記磁気構造と磁気結合しているときに、前記第1の磁気構造および第2の磁気構造の遮蔽および各磁気要素の遮蔽を形成することを特徴とする、請求項9に記載の計時器。
前記テンプ(16A)は、前記トゥールビヨンの前記キャリッジ(6A)内で磁気により回動し、そのために前記トゥールビヨンは2つの磁気ベアリング(84、86)を備えていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の計時器。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1〜
図11を参照して、本発明の第1の実施形態および特に本発明によるトゥールビヨンに組み込まれた磁気脱進機の具体的な動作を説明する。
【0018】
本計時器は、トゥールビヨン4を具備した計時器ムーブメント2を備え、トゥールビヨンは、主軸8の周りに回転式に構成されたキャリッジ6と、機械エネルギーを蓄積するように構成された香箱10と、トゥールビヨンのキャリッジを香箱に運動学的に接続する歯車列11とを備えている。トゥールビヨンは、テンプ16およびヒゲゼンマイ15で形成された機械式共振子14と、脱進装置18とを有する。トゥールビヨンは、底板3と受け9との間で回動する。脱進装置は、ガンギカナ24および第1のガンギ車22で形成されたガンギ車群20を備えている磁気脱進機からなり、この磁気脱進機は、全体的に環状で、ガンギ車群の回転軸28を中心とする第1の磁気構造26を備えている。
【0019】
磁気脱進機は、機械式共振子14が振動して折り返すたびにこの機械式共振子をガンギ車群20に瞬間的に結合するストッパ30を備えている。このストッパおよびガンギ車群は、キャリッジ6の一部とこのキャリッジが有するガンギ受け19との間で回動する。ストッパは、機械式共振子が振動すると、休止段階を伴って揺れ動く往復運動に供され、休止段階でストッパは、2つの休止位置で交互に停止し、2つのピン36および37それぞれに当接する。
【0020】
図示した変形例では、ストッパは、2つの磁気要素32および33を有するアンクルで形成され、各磁気要素は、機械式共振子の振動と同期して本質的にアンクルの回転軸28に対して径方向に沿った向きの振動運動を起こすように構成されている。2つの磁気要素は、ほぼ同じもので、ガンギ車22の同じ側に位置している。2つの磁気要素は、両方が同じように第1の磁気構造と同時に結合するが、これは、この2つの磁気要素が連続的に(またはほぼ連続的に)第1の磁気構造と結合するように、かつそれぞれの磁気結合が一緒に加わるように構成される。この磁気脱進機の動作を以下にさらに詳細に説明する。
【0021】
図示した変形例では、ガンギ車群20は、第2の磁気構造40を備えている第2の歯車38を備え、第2の磁気構造は、第1の磁気構造26と面対称であり、2つの磁気要素32および33が振動したときに第1の磁気構造と第2の磁気構造との間に少なくとも瞬間的に位置することが可能なように、第1の磁気構造から一定の距離を保って位置している。2つの磁気要素32および33は、同じように第1の磁気構造および第2の磁気構造と同時に相互作用し、それによって作用が一緒に加わる。2つの磁気要素は、テンプ16が振動周期ごとに所定の角周期にわたってガンギ車群が回転するように、第1の磁気構造および第2の磁気構造と結合する。第1の磁気構造および第2の磁気構造は、それぞれ第1の永久磁石および第2の永久磁石で形成され、各々の永久磁石は、軸方向の磁化および同じ極性を有する。アンクルの2つの磁気要素は、各々が永久磁石で形成され、永久磁石は、軸方向の磁化を有し、第1の磁石および第2の磁石とは逆の極性を有し、それによって2つの磁気構造の各々との磁気反発力に供される。
【0022】
好ましくは、第1の歯車22および第2の歯車38は、それぞれ第1の強磁性構造44および第2の強磁性構造46を有し、強磁性構造は、この第1の磁気構造および第2の磁気構造からなる群の両外側で、第1の磁気構造および第2の磁気構造をそれぞれ覆い、それによって2つの強磁性構造の各々から出ているいくつかの固定ピン(
図3を参照)と共に、第1の磁気構造および第2の磁気構造の特定の遮蔽、およびその間に位置している各磁気要素の特定の遮蔽を形成して互いを磁気結合する。2つの強磁性構造は、2つの磁気構造に対する2つの支持体をそれぞれ形成する。図示した変形例では、2つの磁気要素は第1の磁気構造および第2の磁気構造と連続的に結合し、よって2つの強磁性構造の間に位置したままであるため、磁気脱進機は部分的に遮蔽されている。さらに、磁気構造の磁場および磁気要素の磁場は、第1の強磁性構造および第2の強磁性構造に閉じ込められる。
【0023】
一般法則として、磁気脱進機は、通常の計時器ムーブメントの動作で、香箱によって供給された機械エネルギーを磁気脱進機内で磁気ポテンシャルエネルギーに変換することから生じるエネルギー蓄積段階と、磁気脱進機に蓄積されたエネルギーを磁気共振子に伝達する段階とが交互に起こるように構成される。各エネルギー蓄積段階およびそれに続くエネルギー伝達段階は、機械式共振子の振動周期の半分に等しい時間間隔にわたって起こる。
【0024】
第1の実施形態の範囲内では、前段落で言及した磁気脱進機の構成およびこの磁気脱進機の動作を
図5〜
図9を参照して以下に説明する。
図5は、2つの磁気ポテンシャルエネルギー曲線66および68を示し、それぞれがアンクル30の2つの休止位置に対するものであり、休止位置では、アンクルは停止材36および37をそれぞれ押圧し、各停止材は、ガンギ車群20の角度位置を表す角度θに応じた磁気脱進機内の磁気ポテンシャルエネルギーE
PMに対応し、したがって磁気構造26および40に対応している(この角度θはガンギ車群の回転方向、すなわち
図6〜
図9に示した例では右回り方向に沿って測定されることに注意されたい)。本発明の第1の実施形態に対して選択した種類の磁気脱進機が欧州特許出願第3208667A1号に開示されている。同文献の動作、および本発明の範囲内で使用したこの動作の特定の特徴を説明する。
図6〜
図9は、テンプ16の折り返しおよびこのテンプと瞬間的に結合したアンクル30の折り返し(すなわち半サイクル)の4つの連続する瞬間を示している。
【0025】
まず、2つの磁気構造26および40は、アンクル30の2つの休止位置の各々で、ここでは連続的に2つの磁気構造と結合しているアンクル30の磁気要素32および33に対して、増大する磁気ポテンシャルエネルギー部分PC1およびPC2を共に画定する。記載した変形例では、これらの増大部分は、実質的に2つの磁気構造26および40の各々に含まれる磁気トラック58によって画定され、この磁気トラックは、特定の輪郭を有し、中央の幾何学円に対して再入出を交互に行う。通常の計時器ムーブメントの動作では、この特定の輪郭は、ある特定の磁気距離にわたってガンギ車群の回転に対して磁気ポテンシャルエネルギーを蓄積するのに適しているのに対し、アンクルは、交互にその両方の休止位置になる。各磁気トラック58は、対応する磁気構造を構成している永久磁石で形成され、この永久磁石は、前述したように、両方の磁気要素32および33を構成している永久磁石と磁気反発する状態に構成される。
【0026】
増大部分PC1およびPC2は、このように、磁気脱進機内の磁気ポテンシャルエネルギーの蓄積勾配を画定する。各エネルギー蓄積段階では、2つの磁気構造26、40およびそれに伴いガンギ車群は、(
図8および
図9に2つの接線矢印FTで概略的に表した)磁気トルクに供され、この磁気トルクは、(これらの図に円状矢印で示した)ガンギ車群の回転方向とは逆方向、すなわち香箱によってトゥールビヨンのキャリッジを介してガンギ車群に印加される駆動トルクとは逆で、かつこの駆動トルクよりも強度が小さく、それによってガンギ車群は、磁気脱進機にある特定の磁気ポテンシャルエネルギーを蓄積できるようにある特定の角度を回転する。2つの磁気要素32および33は、それに応じて、各々が磁力FM1、およびFM2に供され、この磁力は、ガンギ車群の回転軸に対してゼロとは異なる接線成分(すなわち回転軸28を中心とする幾何学円に対してあらゆる点で接する成分)を有することに注意されたい。さらに、この磁力FM1およびFM2は、アンクルが磁気トルクにも供されるように向けられ、磁気トルクは、問題となるエネルギー蓄積段階でアンクルがその2つの休止位置のいずれかにあるかどうかに応じて、フォーク部52が停止ピン36および37を押圧した状態に維持する。エネルギー蓄積段階の実質的に開始時の磁気脱進機の状態を示している
図8では、磁力FM1およびFM2は、アンクルに印加された磁気トルクがエネルギー蓄積段階の終わりにこのアンクルに印加された磁気トルクよりも大きくなるように向けられる(
図6に相当する状態だが、エネルギー蓄積段階での磁気脱進機の中間状態を示している
図9に既に見られる)。
【0027】
各エネルギー蓄積段階では、両方の磁気構造26および40と結合しているアンクルの2つの磁気要素32および33は、ガンギ車群のある特定の回転によって、角度のある磁気ポテンシャルエネルギーの蓄積勾配PC1およびPC2のいずれか一方を共に上がるのに対し、アンクル30は休止段階にあると言える。ただし、これは磁気による相互作用エネルギーからなるものであるため、角度のある磁気ポテンシャルエネルギーの勾配を上がる「磁気構造および磁気要素」の集合体であることに注意されたい。計時器ムーブメントに関連する座標参照の場合、実際にはむしろ、ポテンシャルエネルギー曲線66および68の増大部分PC1およびPC2を上がるのはガンギ車群である。なぜなら、ガンギ車群は、磁気要素が動かない間に回転するからである。しかしながら、ガンギ車群に関連し、ガンギ車群に対して固定された座標参照を考慮すれば、増大部分を上がるのはこの2つの磁気要素である。したがって、これは同じことであると理解される。
【0028】
図5には、第1の磁気ポテンシャルエネルギー曲線66の増大部分PC1が第2の磁気ポテンシャルエネルギー曲線68の増大部分PC2に対して角度のある半周期P/2の分だけそれぞれずれるように磁気脱進機が構成されていることがわかる。そのため、2つの磁気構造は、2つの磁気要素32および33に対して、アンクルの2つの休止位置の各々で、増大部分PC1およびPC2に続く磁気障壁BM1およびBM2を画定する。磁気ポテンシャルエネルギー曲線66、68磁気障壁BM1およびBM2はそれぞれ、磁化トラック58の両側に交互に位置している磁化領域60および62で形成される。そのため各磁気障壁BM1は、2つの連続する磁気障壁BM2どうしの間に角度を成して位置している(したがってこの逆も同様である)。
【0029】
さらに詳細には、記載した変形例では、2つの連続する磁気障壁BM1またはBM2は、角周期Pごとに角度を成してずれている。アンクルの両磁気要素は、回転軸28に対して、実質的には3P/2(一般には奇数の半周期P/2)に等しい分だけ角度を成してずれている。アンクルの2つの休止位置の各々では、2つの磁気要素のいずれか一方がトラック58の出る部分と結合しているとき、もう一方はこのトラックの再入部分と結合している。次に、第1の磁気要素が外側の磁化領域60の正面にあるとき、第2の磁気要素は、内側の磁化領域62の正面にあり、この逆も同様である。
【0030】
通常の計時器ムーブメントの動作では、磁気障壁は、前の角度勾配を上がった2つの磁気要素に対し、香箱によってガンギ車群に印加された駆動トルクとは逆の比較的高い磁気トルクを発生させるように構成され、それによってガンギ車群が角度を成して進行するのを停止できる。ある一定の機械力トルクに対して、ガンギ車群は最終的に、実質的に所定の角度位置(
図6に相当する状態)で停止し、この位置は、
図5の曲線66および68に交互にある安定点E
1、E
3、E
2N+1(式中N>0)に相当する。ガンギ車群がこれらの安定点の周りである特定の振動に供されるようにわずかなリバウンドが起こることがあるが、これは通常の計時器の歯車群の摩擦作用によって比較的迅速に減衰されることに注意されたい。好適な変形例では、計時器ムーブメント2は、香箱10によってトゥールビヨンのキャリッジ6に供給された力トルクを等しくするためのフュージー12を備え、それによってガンギ車群は、計時器の有用な動作範囲内で実質的に一定のトルクに供される。そのため、この動作範囲全体を通して、前述した安定点は、同じ値のポテンシャル磁気エネルギーに相当する。
【0031】
次に、各エネルギー伝達段階では、両磁気要素32および33は、各々が、その振動運動の折り返し過程で、この折り返しのこの振動運動の方向で、ガンギ車群の回転軸28に対して径方向の磁力FR1およびFR2に供される(
図7に相当する状態)。この径方向の磁力は、一般に、各々磁気要素に印加された磁力全体の径方向成分であることに注意されたい。磁気要素の振動運動は、図示した好適な変形例では、ガンギ車群の回転軸28に対して、したがって全体的にこの回転軸を中心とする磁気構造26および40の回転軸28に対して、実質的に径方向であることに注意されたい。アンクルの回転軸は、この目的のために計時器ムーブメント内に位置している。したがって、アンクルのそれぞれの磁気要素に作用し、磁気トルクの作用という形態で、機械エネルギーをこのアンクルに供給する磁力は、本明細書では実質的には径方向成分FR1、FR2であり、それぞれの磁力全体の径方向磁力としても知られている。
【0032】
従来のスイスレバー脱進機のように、アンクル30の毎回の折り返しは、アンクルのフォーク部52の2つの爪石の間に設置されている(円錐台形のディスク状の輪郭を有する)インパルスピン50を介してテンプによってこのアンクルを最初に駆動させることで始まる。この最初の段階で、磁気要素32および33の各々が最初の径方向運動に供されてから、その振動運動の問題となる後続の折り返し段階で磁気ポテンシャルエネルギーの降下に供されることが可能になり、それによって磁気脱進機は、テンプ16の振動の毎回の折り返しで、よってアンクル30の振動運動の毎回の折り返しで全体的な磁気ポテンシャルエネルギーの低下に供される(
図5に符号D1およびD2で表記)。このような折り返し過程では、アンクルは、問題となる折り返し開始時に、アンクルが最初に2つの休止位置の一方にあるかもう一方にあるかに応じて、磁気脱進機の磁気ポテンシャルエネルギーが変化して曲線66で描いた状態から曲線68で描いた状態に、またはこの逆に切り替わるように、一方の休止位置からもう一方の休止位置に動く。
【0033】
したがって、2つの曲線66および68の各々のグラフが得られる上記の磁気脱進機の構成によって、この磁気脱進機が、前のエネルギー蓄積段階で蓄積された機械エネルギーを磁気ポテンシャルエネルギーに変換し、それによってこのエネルギーをアンクルが回転する間に力のトルク動作の形態でアンクルに供給することが可能になる。そのため、アンクルは、駆動体となってエネルギーインパルスをアンクルのフォーク部50を介してテンプに供給して、従来の機械式脱進機のように、ばね仕掛けのテンプの振動を維持する。本発明の範囲内で選択した磁気脱進機の顕著な点は、特定の変形例に対する
図5に示したように、エネルギー伝達をガンギ車群の一切の回転なしに起こすことができ、ガンギ車群は、アンクルの毎回の折り返し時に角度位置にとどまり、毎回の折り返しの終わりでの磁気ポテンシャルエネルギーが、交互に曲線68上および曲線66上にある点E
2、E
4、E
2N(N>0)に相当するという点である。香箱の駆動トルク、トゥールビヨンのキャリッジの慣性および磁気構造の特有の構成に応じて、ガンギ車群は、アンクルの折り返し、特に折り返しの最終段階で小さい回転を受けることがあることに注意されたい。このような変形例を
図5にも示しており、この図では、磁気脱進機は、折り返しの終わりの点E
2*、E
4*、E
2N*(N>0)にある。選択した磁気脱進機の種類の重要な特徴は、エネルギーインパルスを機械式共振子に伝達する過程でガンギ車が回転するか回転しないかではなく、ガンギ車のある特定の角度のある運動は、テンプがフォーク部を介してアンクルと機械的に結合していれば、このエネルギーインパルスを引き起こすために必要ではなく、かつエネルギーインパルスを完全に発生させるためにも必要ではないため、エネルギーインパルスの強度は、香箱とガンギ車群との間にある要素の慣性に左右されるのではなく、特にトゥールビヨンのキャリッジの慣性に左右されるのではないという点である。
【0034】
第1の実施形態の範囲内で選択した磁気脱進機は、実質的に一定の力を受けていることに注意されたい。すなわち、テンプへのエネルギー伝達段階での磁気ポテンシャルエネルギーの低下は、計時器の有用な動作範囲では実質的に一定のままである。これは、選択した磁気脱進機の磁気システムの特性である(
図5を参照)。実際、香箱によってガンギ車群に印加された力トルクを等しくするための装置がなくとも、この有用な動作範囲で機械式共振子に供給された維持インパルス(香箱によってガンギ車群に印加された力トルクは値の所与の範囲内で変化する)は、同様の値を有するエネルギーの量にそれぞれ一致する。したがって、香箱によってトゥールビヨンのキャリッジ/ガンギ車群に供給された力トルクを等しくするためのフュージー12は、ここではシステム(計時器ムーブメント)全体の効率を高める役割を果たす。
【0035】
一般法則として、第1の実施形態の範囲内では、選択した磁気脱進機は、機械式共振子が振動する毎回の折り返しで、ガンギ車群を含むこの機械式共振子と瞬間的に結合するストッパを備え、ストッパは、1つの磁気要素または複数の磁気要素を有し、機械式共振子が振動すると、休止段階を伴って揺れ動く往復運動に供され、休止段階でストッパは、2つの休止位置で交互に停止する。1つの磁気構造または複数の磁気構造は、ストッパの2つの休止位置で、第1の磁気ポテンシャルエネルギー曲線および第2の磁気ポテンシャルエネルギー曲線をそれぞれ画定し、両エネルギー曲線は、ガンギ車群の角度によって変化し、各エネルギー曲線は、
−1つまたは複数の磁気構造と、前記磁気要素、または磁気構造と結合し、ストッパの対応する休止位置で磁気構造とそれぞれ結合している複数の磁気要素からなる磁気要素群との間の磁気相互作用に対する増大部分であって、これらの増大部分は、通常の計時器ムーブメントの動作過程で、この磁気要素によって、この磁気要素群によって、サイクルごとかつ周期ごとに上がるのに適しているように構成される、増大部分と、
−それぞれが増大部分に続く磁気障壁であって、これらの磁気障壁は、ストッパが対応する休止位置にある間に、ガンギ車群の角度を成した進行を停止するのに適しているように構成される、磁気障壁と
を有する。
【0036】
次に、第1の磁気ポテンシャルエネルギー曲線の増大部分は、第2の磁気ポテンシャルエネルギー曲線の増大部分に対してそれぞれが角度を成してずれており、第1の磁気ポテンシャルエネルギー曲線と第2の磁気ポテンシャルエネルギー曲線のいずれか一方の各磁気障壁は、この第1の磁気ポテンシャルエネルギー曲線と第2の磁気ポテンシャルエネルギー曲線のもう一方の2つの連続する磁気障壁の間に角度を成して位置している。
【0037】
さらに、磁気脱進機は、
−エネルギー蓄積段階が、本質的にそれぞれがストッパの連続する休止段階で起こるように構成され、
−各エネルギー蓄積段階で、その時点で1つまたは複数の磁気構造と結合している前記磁気要素または複数の磁気要素からなる磁気要素の群が、ガンギ車群のある特定の回転過程で、増大部分のうちの1つを少なくとも部分的に上がるのに適しているように構成され、
−第1の磁気ポテンシャルエネルギー曲線および第2の磁気ポテンシャルエネルギー曲線の増大部分が、通常の計時器ムーブメントの動作過程で、連続するエネルギー蓄積段階で少なくとも部分的に、それぞれが交互に上がり得るように構成される。
【0038】
最後に、磁気脱進機はさらに、
−エネルギー伝達段階が、ストッパの往復運動の連続する折り返し時にそれぞれ起こるように構成され、
−この磁気脱進機が、通常の計時器ムーブメントの動作過程で、ストッパの往復運動の連続する毎回の折り返し時に、全体的に磁気ポテンシャルエネルギーの低下に供されるように構成され、
−磁気脱進機の磁気ポテンシャルエネルギーが低下することは、本質的に、前の休止段階で1つまたは複数の磁気構造と結合していた前記磁気要素または複数の磁気要素からなる磁気要素群の各磁気要素に印加された径方向の磁力の作用から生じるように構成され、よってこの径方向の磁力の作用は、この作用のほとんどを機械式共振子に伝達するように構成されているストッパに供給され、それによってこの機械式共振子は、このストッパの往復運動の毎回の折り返し時に機械エネルギーインパルスを受けることができる。
【0039】
図示した第1の実施形態の変形例は、ガンギ車を瞬間的に停止する多くの磁気停止材として形成された6つの外側磁化領域60を含み、同じく多くの磁気停止材として形成された5つの内側磁化領域62も含んでいる。外側/内側磁化領域の数は、これとは異なっていてよく、好ましくはこれよりも多くてもよいことに注意されたい。そのため、他の変形例では、外側/内側磁化領域の数は、10または12である。さらに、別の変形例では、内側磁化領域のみまたは、好ましくは外側磁化領域のみを有することが構想されることに注意されたい。
【0040】
図2および
図6〜
図9に示した有利な変形例では、磁気脱進機によって継続して受けやすい衝撃またはその他の強い加速があった場合に備えて、安全機構を構想する。安全機構は、両方の磁石32および33をそれぞれが有するアンクルのアーム54および55に構成されたガンギ車群に固定された歯70によって得られ、これらの歯は、両アームの端部にそれぞれが位置している2つのフィンガと係合するのに適している。アンクルの各休止位置では、前述した磁気障壁が、ガンギ車群が磁気障壁を横切らないようにする十分な停止トルクをかけていなければ、2つのフィンガの一方は歯70のうちの1つに当たって停止する。
【0041】
本発明では、ばね仕掛けのテンプの振動周波数を上げることが可能で、しかも大幅に可能なため、そのために特に、トゥールビヨンのキャリッジの角速度を1分1回転に維持することを構想し、トゥールビヨンは、中間歯車76がガンギカナ24と噛み合い、中間カナ78が計時器ムーブメントに含まれている固定された第2の歯車80と噛み合うという中間歯車群74を有することを構想する。中間歯車群は、ガンギ車群の回転周波数を減らす減衰歯車群であり、ここではトゥールビヨンのキャリッジが1分にそれ自体が1回転するように構成される。有利な変形例では、機械式共振子の振動周波数Foは5ヘルツよりも大きい(Fo>5Hz)。好適な変形例では、この周波数は実質的に6Hz以上であり(Fo>=6Hz)、特定の変形例では、機械式共振子の振動周波数の値は、8ヘルツから12ヘルツまでの間(両数字を含む)にある(8Hz=<Fo=<12Hz)。中間歯車群は、ばね仕掛けのテンプの振動周波数が低い場合、例えば3ヘルツ(Fo=3Hz)の場合に有用であることに注意されたい。なぜならガンギ車群は、図示した例ではばね仕掛けのテンプの6振動周期あたり1回転を行い、これは従来の歯のあるガンギ車よりも遙かに大きい回転周波数に相当するからである。
【0042】
ガンギ車の回転周波数F
Rotは、機械式共振子の周波数Foと、外側磁化領域60の数および内側磁化領域62の数とで決定される。一般的な変形例では、ガンギ車群回転周波数F
Rot(1秒あたりの回転数)は、機械式共振子の振動周波数Foの4分の1から16分の1までの間(両数字を含む)である(Fo/16=<F
Rot=<Fo/4)。これは、外側60または内側62磁化領域/磁気停止材の数N
PAは、F
Rot=Fo/N
PAであるため、4から16まで(4<=N
PA<=16)という意味である。機械式共振子が3ヘルツ(Fo=3Hz)で振動し、固定歯車(80)の歯列には歯が108本あるという第1の例では、中間カナには歯が70本あり、ガンギカナ(24)には歯が18本ある。機械式共振子が6ヘルツ(Fo=6Hz)で振動し、固定歯車の歯列には歯が120本あるという第2の例では、中間カナには歯が12本あり、中間歯車には歯が72本あり、ガンギカナには歯が12本ある。
【0043】
図10は、
図3とほぼ同じ断面に、本発明の第2の実施形態を示している。この第2の実施形態の特徴である要素のみを以下に説明する。磁気脱進機は、第1の実施形態のものと同じであり、この第1の実施形態に対して記載した変形例はすべて第2の実施形態に対しても当てはまり、第2の実施形態は、トゥールビヨン4Aのキャリッジ6A内で磁気により回動するテンプ16Aを備えている機械式共振子14Aを配置することを特徴とすることに注意されたい。キャリッジは、そのために、2つの磁石88および90でそれぞれが形成されている2つの磁気ベアリング84および86と、2つの磁石の間で一直線になるように強磁性材料内に構想されるテンプ16Aの軸92とを備えている。このような磁気による回動の動作、可能性のある様々な変形例に関して、欧州特許第2450758号、同3109712号および同3106933号を参照してよい。テンプをトゥールビヨン内で回動させるためのこのような磁気システムの顕著な点は、ムーブメントの水平位置と垂直位置との動作差を大幅に減らすことが可能になると同時に、トゥールビヨンによって様々な垂直位置どうしの動作差を平均することが可能になる点である。
【0044】
第1の実施形態および第2の実施形態の2つの変形例を以下に説明する。第1の変形例は、
図11に簡易に示されている。脱進装置18Bは、アンクル30Bおよびガンギ車群20Bを備え、ガンギ車群は、前述した変形例のものとほぼ同じ単一の歯車22で形成されているため磁気構造26を有し、磁気構造についてはここでは再度説明しない。
図11には中央幾何学円96が示されており、この中央幾何学円の周りには、アンクル30Bに供給される各々のエネルギーインパルスが発生し、アンクルはこのエネルギーインパルスを機械式共振子14B(図にはテンプ16Aのみが概略的に示されている)に伝達する。この中央幾何学円96は、磁気トラック58の再進入部分を進入部分から分離し、外側停止ピン領域60も内側停止ピン領域62から分離し、これが前述の磁気障壁を形成する。さらに一般的には、この円96は、2つの環状の途切れのない磁気トラック98と100とを分離し、両磁気トラックは、アンクルの単一の磁気要素32Bと対面して位置し、それぞれがこのアンクルの両方の休止位置にあり、よって磁気脱進機の連続する磁気ポテンシャルエネルギー蓄積段階では交互になる。この磁気脱進機の動作は、前述した動作とほぼ同様である。この変形例の主な相違点は、アンクル30Bに単一の磁石32Bが具備され、この磁石が磁化した磁気構造26を反発させるように配置されている点、およびガンギ車群が単一の磁気構造しか備えておらず、この磁気構造がガンギ車群よりも低い/高いレベルに配置され、計時器ムーブメントが動作しているときに磁石が振動するという点である。
【0045】
図12の変形例は、磁気脱進機18Cを形成している様々なパーツの材料配置が特徴である。ただし、動作は前述の変形例とほぼ同じであり、磁気構造26Cは、平面図では構造26の設計と同じである。磁気構造26Cを有するガンギ車群20Cおよびその歯車22Cはそれぞれ、前図の歯車群20Bおよびその歯車22とは異なり、構造26Cは、その周縁がコア23に向かって横方向に延びているのに対し、構造26は支持ディスク上に配置されている(場合によっては変形例に応じて高い透磁率を有する)。アンクル30Cは、変形例によれば、アンクル30または30Bとほぼ同じだが、磁気要素の配置を除く。さらに詳細には、アンクル30Cは、少なくとも1対の同様の磁気要素32Cおよび33C(図示した例では2つの同一の磁石)を備え、磁気要素は、それぞれ磁気構造26Cの上と下に位置し、両方がこの磁気構造とほぼ同じように結合しているため、その磁気結合は一緒に加えられる。好ましくは、磁石の各対は、全体的に「C」型の高透磁率(特に強磁性)に作製された支持体31が有するものである。
【0046】
図13および
図14を参照し、以下に本発明の第3の実施形態を説明する。第3の実施形態の特徴は、磁気脱進機118にストッパがなく、ガンギ車群120が磁気により(概略的に示した)機械式共振子114と直接結合し、テンプ116が磁気要素102および103を有することである。テンプは、ヒゲゼンマイ115とつながっている。トゥールビヨンのキャリッジ106は、ヒゲゼンマイの一方の端部が固定されている部分が概略的に示されており、テンプ116および歯車群120を有し、両者は、キャリッジ106内でそれぞれが前の2つの実施形態のように2つの回転軸8および28の周りを回動するように構成される。ガンギ車群120は、機械式共振子の振動と同期して連続的に回転する(すなわち、ガンギ車はテンプ116の振動周期ごとに所定の角周期で回転する)。ガンギ車群の角速度は、振動周期ごとに、特にエネルギー蓄積段階に当てはまるかエネルギー伝達段階に当てはまるかに応じて、ある特定の変化があってよいことに注意されたい。
【0047】
磁気構造126は、環状であり、磁石102および103が交互に対面したときにこの両磁石と磁気反発する磁石が配置されている環状セクタ128と、真鍮またはアルミニウムなどの非磁気材料で形成された環状セクタ130とで交互に形成されている。隣り合う環状セクタからなる各対は、磁気構造の角周期を画定する。好ましくは、磁気構造126の磁石は、ガンギ車群に対して想定される回転方向とは逆方向に厚みが角度を伴って増し、それによって(ガンギ車群が回転したときに)上を通る各磁石102、103との間の空隙が小さくなり、磁束も強化される。このような有利な変形例に関して、
図14は、2つの磁石102および103の一方またはもう一方の相対角度位置に応じて、(ここでは磁気構造126とテンプに固定された2つの磁石102および103とで構成されている)磁気脱進機の磁気ポテンシャルエネルギーに対するレベル曲線134を表している。機械式共振子114が振動すると、この2つの磁石は位相シフト180°で振動し、各磁石は、ガンギ車群に関連する極座標系では曲線140で表される輪郭に沿って振動する。各環状セクタ128は、レベル曲線の1群128Aを画定し、2つの連続する群128Aは、環状セクタ126で画定されるゼロ磁気ポテンシャルエネルギーのセクタ126Aで分離されている。レベル曲線134は、内側に向かって大きくなる、すなわち外側の曲線はポテンシャルエネルギーがその中の次の曲線よりも低く、その次も同様に低くなる。さらに他の変形例については、第3の実施形態の範囲内で選択した種類の磁気脱進機を説明している欧州特許第2891930号を参照する。
【0048】
機械式共振子が中立位置(
図13に示した機械エネルギーが最小の位置)にあるとき、2つの磁石102、103はゼロ位置円132に位置している。機械式共振子が振動すると、これらの磁石は、テンプがこの磁気構造と常に磁気により結合しているように磁気構造の上に交互に進入する。この2つの磁石が磁気構造との同じ結合を交互に行うように、両磁石は、磁気構造の奇数の角度半周期の角度位相シフトを有する。そのため、ガンギ車群は、テンプの振動周期ごとに所定の角周期を回転する。さらに、前の実施形態とほぼ同じように、2つの磁石102および103は、テンプが振動すると、ガンギ車群の回転軸28に対して本質的に径方向の動きに供される。好ましくは、この動きは、両磁石が(磁気構造の外円に相当する)ゼロ位置円132に交わると径方向を向く。記載したように、本明細書で提案する変形例では、2つの磁石102および103は、磁化した環状セクタ128のいずれか1つとの連続的な磁気結合に供されるように、磁気構造と交互に結合する。そのため、磁気脱進機118の全体的な磁気ポテンシャルエネルギーは、
図14のレベル曲線134で表される。
【0049】
図14では、磁気脱進機は、通常の計時器ムーブメントの動作で、香箱によって供給された機械エネルギーを磁気脱進機内で磁気ポテンシャルエネルギーに変換することによるエネルギー蓄積段階と、磁気脱進機に蓄積されたエネルギーを磁気共振子に伝達する段階とを交互に起こすように構成されていることがわかる。磁気脱進機は、角度を成して上昇する磁気ポテンシャルエネルギーの蓄積勾配136を画定し、磁気構造が連続回転する間、磁石102と103は交互に、連続するエネルギー蓄積段階でこの磁気ポテンシャルエネルギーの蓄積勾配に供され、両磁石は、エネルギー蓄積段階で、角度を成して上昇するこれらの勾配を連続的かつ部分的に上がる。磁石102、103と磁気構造との間の磁気による相互作用の力は、レベルライン134に対して垂直に向いているため、これらの磁石は、半径に対して本質的に垂直である回転軸28で形成される磁力に供される。そのため、磁気構造126(およびそれに伴いガンギ車群)は、このエネルギー蓄積段階では、磁気構造の回転軸に対して、香箱によってトゥールビヨンのキャリッジを介してガンギ車群に印加される駆動トルクとは逆方向の磁気トルクに供される。磁石102、103の構成および磁化した環状セクタ128の構成は、通常の動作モードで磁気トルクの強度が駆動トルクの強度よりも小さくなるように、また、ガンギ車群が回転し続けてある特定の角度を回転できることによって磁気脱進機でのポテンシャルエネルギーの蓄積が可能になるように構想されることに注意されたい。
【0050】
磁気脱進機は、下降する径方向の磁気ポテンシャルエネルギー勾配138も画定し、2つの磁石102および103それぞれが角度を成して上昇する勾配136を上がった後に、両磁石がこの勾配を交互に下降する。下降する径方向の勾配を下りていく各磁石102、103にかかる磁力は、レベルライン134に対して垂直に向いているため、エネルギー伝達段階では、機械式共振子の振動運動の毎回の折り返しで、この折り返し過程でこの振動運動の方向に、本質的に回転軸28に対して径方向の磁力に供され、それによって磁気脱進機は、その後、前のエネルギー蓄積段階で蓄積された機械エネルギーを磁気ポテンシャルエネルギーに変換して機械式共振子の振動を維持できるようにする。したがって、磁気脱進機での磁気ポテンシャルエネルギーの低下は、本質的に、2つの磁気要素の各々に交互に印加された径方向の磁力の作用から生じ、この径方向の磁力の作用は、機械式共振子に直接伝達され、それによってこの機械式共振子は、その振動運動の毎回の折り返しで機械エネルギーインパルスを受け取る。
【0051】
下降する径方向の勾配138は、ガンギ車の連続する動きが本発明の範囲内で得られる特定の特徴に関して反動を起こさないように、ある特定の角度距離にわたって広がっている。実際、重要なのは、テンプに固定された2つの磁石の各々に交互にかかる主な径方向の力は、実際にはガンギ車群のいかなる回転にも左右されないという点である。実際、
図14から、磁気構造の構成により、ガンギ車群の回転がなくともテンプに対してエネルギーインパルスを発生させることが可能であることが観察される。ガンギ車群がエネルギー蓄積段階の終わりに停止したとしても、テンプはいずれにしても、エネルギー伝達段階である特定の回転運動に供されたときに受けたエネルギーと同量のエネルギーをインパルスという形で受け取ることになる。さらに、このエネルギー量は、テンプの角速度が低かろうと比較的高かろうとほぼ一定のままであることが観察されているが、それにもかかわらず磁気脱進機は、通常の動作で、エネルギー蓄積段階の終わりに上昇する角度勾配136の頂点に達することがないように構成される。この条件は、この第3の実施形態による磁気脱進機で構想される。
【0052】
最後に、計時器ムーブメントにフュージー(第1の実施形態の範囲内で示したフュージー12とほぼ同じもの)を組み込むことで、香箱によってトゥールビヨンのキャリッジに供給される力トルクを等しくすることが可能になり、それによってガンギ車群が通常の計時器ムーブメントの動作過程で一定のトルクに供されることに注意されたい。第3の実施形態の範囲内では、このようなフュージーによって、計時器ムーブメントの有用な動作範囲全体にわたって不変の動作段階を得ることが可能になり、テンプの振動幅は一定のままになり、維持インパルスはテンプに同量の機械エネルギーを供給する。従来の機械式計時器ムーブメントで力トルクを等しくするフュージーによってもたらされるあらゆる利点が、この第3の実施形態による計時器にもたらされる。