【実施例】
【0030】
以下本発明を図示の実施の形態に基づいて具体的に説明する。符号Aは本発明に係る多機能抽出装置であって、このものは
図1及び
図2に示すように抽出器1に対し、給液タンク2と冷却器3と排気ピット4とを前後にそれぞれの接続用の配管を介して接続させて成るものである。まず多機能抽出器1について具体的に説明する。このものは容器本体10を主要部材とするものであり、飲料製造という高度に衛生管理が要求される分野であることに因み、容器本体10並びに関連部材の多くはステンレス材料が用いられる。この容器本体10は適宜の架台Fに支持されており、容器本体10は円胴状の胴部11と、その上下に設けられる蓋部12とに分割されるものであり、この蓋部12を区別するときは下蓋部12Aと上蓋部12Bとして示す。これら蓋部12は下蓋部12A、上蓋部12B共に開閉機構13により胴部11に対し開閉自在に取り付けられている。具体的構成はピボット状のヒンジ13Aに対し側面から見てベルクランク状のアーム13Bを回転自在に支持させ、このアーム13Bの一端に前記蓋部12を固定するとともに、他端にシフトシリンダ13Cの摺動子を接続させている。
【0031】
なおこのシフトシリンダ13Cは一例として電動タイプのものが用いられるものであり、シリンダ駆動モータ13Dにより駆動される。また蓋部12の閉鎖状態は前記シフトシリンダ13Cの伸長時において蓋部12が胴部11に対し密着して得られるが、その状態を更にボルト状のクランプ13Eにより締め合わせその固定を図るようにしている。もちろんクランプ13Eはこのような手法のほか、トグルクランプを用いたバックル状のもの、あるいはバイヨネットクラッチ状の自動ロック可能な機構等、適宜高圧容器の蓋部閉鎖機構に用いられる機構をとり入れることが可能である。
【0032】
更に容器本体10は処理液Lによって材料Wのエキス分を抽出するにあたって、その効果をより高めるために全体を振動させることもできる加振装置14を具える。すなわち容器本体10における胴部11にはモータと重心を偏心させた回転体を一体とさせた加振装置14を取り付け、モータを回転させることにより一定周波数の機械的振動が発生するようにしているものである。
【0033】
このような容器本体10はその内部を中空とするものであり、この内部は前記下蓋部12Aの内部を下方の通液部10Aとし、また上蓋部12Bの内部を上方の通液部10Bとし、その中間の胴部11の内側を材料受入部10Cとする。そして材料受入部10Cとその上下双方の通液部10A、10Bの間には仕切フィルタ15が設けられている。この仕切フィルタ15は全体として円形の平板状部材であり、
図1に示すように円環状のリム15Aに対し一定間隔毎に帯状金属材から成るサポート杆15Bを粗い簀子状に形成し、更にサポート杆15Bの材料受入部10C側にフィルタエレメント15Cを張設したものである。このフィルタエレメント15Cは、要は材料Wの通過を許さない程度の濾過作用ができればよいものであるが、請求項3で定義したように楔断面の金属線材を多数密に簀子状に配設したものとする。
【0034】
なおフィルタエレメント15Cの個々の金属線材が断面楔状であることに因み、処理液Lの通過方向に見て通過開始端と通過終了端の通過幅Dがそれぞれ異なるが、その配設態様は
図3に示すように下方の通液部10Aと材料を受け入れる材料受入部10Cとの間に設ける仕切フィルタ15にあっては、下方を幅広とし、上方の通液部10Bと材料受入部10Cとの境界部の仕切フィルタ15については、逆に材料受入部10C側を狭く、上方の通液部10B側を広くするような配設態様とするのである。要はフィルタエレメント15Cの楔状先端は、いずれも通液部10A、10B側に向けるように設定する。
【0035】
このような仕切フィルタ15は更に容器本体10側に設ける支持枠16によって支承される。具体的には格子状の支持枠16を容器本体10における上下の蓋部12に設けるようにする。更に処理液Lの供給、取り出しのために前記下蓋部12Aには一例としてそのほぼ中央に短寸の管状の給液口17を形成し、一方、上蓋部12Bには同様に短寸の管状の取出口18を設ける。また更に
図2に骨格的に示すように下蓋部12Aには給気口、例えば加熱した蒸気や、処理液Lの上方からの排出用の加圧空気(あるいは酸化を嫌う場合は窒素ガス等)を供給できる給気口19を形成する。
【0036】
このような多機能抽出器1に対し、更にその上流側に給液タンク2が接続されるとともに、下流側に冷却器3と、排気ピット4とが接続される。以下これらの配管構造について説明すると、給液配管20は、前記給液タンク2から適宜ポンプP等を介して給液口17に接続され、更に出口側には取出配管21を設けてこれを前記冷却器3に至らせる。また容器本体10における前記給気口19に対しては給気配管22が設けられるものであり、この給気配管22は適宜エアフィルタ等をその途中に具えるとともに、必要に応じてこの配管途中を分岐させ、取出配管21に合流させる。なおこの給気配管22によって、例えば冷水等で抽出を行う場合、抽出速度が鈍りがちな材料Wにあらかじめ蒸気等を供給して加熱し、活性化させる予備処理や抽出器内部の加熱殺菌処理等が行える。
【0037】
更にこの実施の形態では反転配管23を有する。すなわちこの装置は通常下方から処理液Lを供給するのであるが、それを反転して上方から供給できるようにするための配管であり、
図2の骨格図において二点鎖線で示す経路である。もちろんそれらはその途中で切替弁24を具え、経路の選択が図られるのは言うまでもない。
【0038】
更に冷却器3は冷水を通す冷媒コイル30を冷却器3の冷却液31内を通過させ、冷却液31を冷却するものであり、この冷却器3内を製品を移送する取出配管21が通過することにより、その冷却が図られるのである。これによって理解されるように材料Wのエキス分を抽出して製品となった処理液Lは密閉状態のまま冷却がなされるのである。
そしてこの冷却器3の前段における取出配管21には、その途中から分岐するように圧力開放配管25が接続されている。この圧力開放配管25は、その途中に圧力開放弁26を具えると共に、その端部は排気ピット4至り、その後は適宜のダクトにより内部気体が適宜の環境保全がされた状態で外気へ排出されるように構成されている。
更に前記取出配管21は、冷却器3の前段に排圧調整弁35を具える。この排圧調整弁35は、取出配管21の管流路を絞ることができるものであって、結果的に抽出器1内に背圧を加えることができるように作用する。
【0039】
本発明の多機能抽抽出システムは以上述べたような構成を有するものであり、次のような作動の下にその抽出がなされる。
(1)材料の準備
材料Wとしては、以下コーヒーのエスプレッソを中心に述べるが、このようなコーヒー以外にも紅茶、緑茶、ウーロン茶、更にはドクダミ茶、その他エキスを抽出して飲用として適する素材すべてが適用可能である。またそれらの一般的な飲料のほか、薬用の飲料として朝鮮人参等を材料Wとして適用できる。抽出にあたっては、まずこのような材料Wを容器本体10における材料受入部10Cに所定量投入する。もちろんこの際は胴部11に対し、下蓋部12Aを閉鎖した状態にし、且つその間に下方の仕切フィルタ15を挟み込んで保持したような状態とし、一方、上蓋部12Bを開放した状態としてこの作業を行う。
【0040】
なお材料Wを材料受入部10Cに充填するにあたっては、材料エキス分を有効に抽出する濃厚抽出を行うべく、材料Wを適度に加圧し、密に充填することが好ましい。因みにその加圧手段としては、例えば加振装置14によって胴部11を振動させる形態や、ランマー等によって材料Wを適度に押し固めるタッピングを行う形態が採り得るし、あるいは特に器具等を使わずに、作業者が直接手で押さえるようにしても構わない。またタッピングを行うタイミングも所定量すべてを一度に投入した後、最後に加圧する形態はもとより、投入を何回かに分散し、投入と加圧とを繰り返し行う形態等が採り得る。
【0041】
このような手法を採るに当り、既に述べた排圧調整弁35を操作し、取出配管21の流路を絞り込むことによって抽出器内の液圧を上げ、前記タッピング処理を擬似的に行うことができ、通常のタッピングによる効果と同様の効果を得ることができる。
この手法について本明細書では「擬似的タッピング」と定義するものであって、具体的手法については後述の「特殊な抽出」の項で説明する。
【0042】
(2)処理液の注入
このような作業が終了した後、上蓋部12Bを上方の仕切フィルタ15を挟み込むような状態に閉鎖する。このような状態で給液タンク2からの処理液Lを給液配管20を通って給液口17から容器本体10内に注入する。なおこの処理液L自体は当然コーヒー等を抽出させる場合には熱水であるが、前記生薬等のエキス分を抽出する場合には例えばアルコール等を用いることも可能である。なおこのエスプレッソコーヒー等を抽出する場合には、この処理液Lは加圧した状態とすることが好ましい。その圧力はほぼ20kg/cm
2 前後を上限とした圧力とすることが好ましい。もちろん処理液Lを容器本体10に対し下方から供給し、上方から抜き出すわけであるから、そのような動きが達成される相応の圧力を最低限有することは言うまでもない。
【0043】
(3−i)抽出
このようにして処理液Lが容器本体10に供給されてくると、まず下方の通液部10Aを満たした後、液面が更に上昇して処理液Lはフィルタエレメント15Cを通って材料Wと接し、その材料Wのエキスを充分抽出しながら上方の通液部10Bを満たし、更にここから逸流する処理液Lは取出口18から取出配管21に取り出されてゆくのである。この抽出作用を行う際、前記請求項7または9において定義したように加振装置14を作動させ、材料Wと処理液Lとに振動を与え、抽出をより効果的に行わせることが好ましい。もちろんこの加振にあたっては請求項9の記載からも理解されるように、加振手段は必ずしも請求項7で定義したような容器本体10に取り付けた加振装置14であることを要しない。例えば加振棒を容器本体10内、特に材料受入部10C等に設け、材料W、処理液Lに直接接触しながら加振するようなものであってもよい。
【0044】
因みにこの抽出は処理液Lを連続的に送り込みながら順次取出口18から取り出す連続的な抽出のほか、容器本体10内を処理液Lで満たした後、一旦注液を止め、抽出を促したのち、これを排出するような使用方法がとり得る。もちろんこの際、最後の処理液Lを上方から抜くわけであるから、前記給気口19から加圧用の空気あるいは必要に応じて窒素ガスを供給して容器本体10の内部圧力を高め、処理液Lの抜き取りを完了するのである。もちろん加圧用の空気等は給気口19から供給することを限定されず、例えば給液口17に空気供給管路を切替自在に接続させておいて、ここから供給するようにしてもよい。
【0045】
(3−ii) 特殊な抽出
更に本発明では、取出配管21に設けた排圧調整弁35を絞り込むことによって、エスプレッソコーヒー等を抽出する際に、別途タッピングを行わなくとも擬似的にタッピングを行った状態とすることができる。もちろんこの場合、コーヒー粉の材料Wは、物理的なタッピングは行っていないので、抽出速度等が極端に遅くなってしまうことがなく、効果的な抽出ができる。
【0046】
具体的には抽出器1のラボ装置を用い、未タッピングのコーヒー粉を材料Wとして投入し、一方は通常のタッピングを行い、他方はタッピングを行わない状態で抽出状態の比較を行った。
その結果、抽出器1内で本発明の擬似的タッピングによる抽出、即ち排圧調整弁35を絞った状態での抽出は、タッピングを行った従来手法と比べ、同様の抽出が行われていることが確認された。即ち抽出安定温度に到達する時間についても同等であるし、払い出し流量(抽出後の取出流量)も同等である。
一方で抽出器1内の圧力は、現行手法より低くした場合でも同等の抽出が可能であることが確認された。
結果的に本発明の擬似的タッピングでは、製造工程全体で俯瞰すると次のような効果が得られる。
【0047】
先ず濃厚抽出を行う場合、物理的な現行(従来)手法のタッピングは不要であり、単に多機能抽出装置Aの中で圧力や送液流量をコントロールするだけで目的とする抽出が可能となる。このことは人力、材料Wの処理態様等の二次的な関連要素が少なくなることであり、抽出の安定化が図られる。
またコーヒー豆を例にとると、この場合コーヒー豆の投入量について、タッピングを行った場合、抽出器1の実機で重量を検証することが不可欠である。一方、タッピングを行わない本発明の擬似的タッピングの場合には、抽出器1内の容積分しか投入できないため、粉砕したコーヒー豆のかさ密度等で投入量は事前にある程度、予測乃至は目安を立てられる。
因みに従来のタッピングを行う場合、コーヒー粉の性状により実投入量に差が出てしまう。
このような効果が得られる結果、抽出にあたってのいわゆる段取り作業に要する人力、労力、時間等を充分省力化することが可能となった。
【0048】
(4)フィルタエレメントの作用
このような抽出にあたり、フィルタエレメント15Cは楔状断面の部材であり、且つサポート杆15Bとの組み合わせによって充分な剛性を発揮し、処理液L等の材料Wあるいは処理液L等の圧力等に充分耐え得るものである。そして特に処理液Lの流れ方向に見て、材料受入部10Cと上方の通液部10Bとの間では処理液Lの上流側においてフィルタエレメント15Cの通過幅Dが狭く、下流側(通液部10B側)が広くなっているから、フィルタエレメント15Cにおいて材料Wの目詰まりが生じにくくなっているのである。
【0049】
もちろんこの目詰まりが回避しやすい現象は処理液Lが通常の重力方向と逆に下方から上方に向かっていることも一つの要因である。また仕切フィルタ15に対しては比較的過大な機械的負荷が生じない状態で抽出がされている。すなわち処理液Lが下方から上方に向かっていることにより材料Wの荷重等がむしろ減殺され、仕切フィルタ15にそのまま重量がかからないためである。因みに処理液Lが上方から下方に向かった場合、材料Wの重量が下方に向かい且つ処理液Lが上方に供給されて、更にそこでの抽出がされると、材料W自体が流路抵抗となって処理液Lの流動抵抗と材料Wの重量とがすべて仕切フィルタ15にかかってしまうのである。このような好ましくない状況は、処理液Lの自然流下の状況でも生ずるものであるから、ましてや抽出効率を上げるべく加圧状態に処理液Lを供給した場合より顕著なものとなってしまうのである。
【0050】
(5)冷却
このようにして抽出された材料Wのエキスを抽出したほぼ製品となった処理液Lは冷却器3を通り、その管路が冷却液31中に浸漬されていることにより冷却液31との間で熱交換を行い、例えばエスプレッソコーヒーの場合、ほぼ110℃の温度をほぼ20℃に低下させるようにしているのである。
【0051】
(6)冷水抽出の方法
このような基本的な操作により処理液Lによる材料Wのエキス分の抽出が行われるわけであるが、例えば処理液Lが冷水の場合、例えば緑茶等であってもエキス分の抽出が充分に行われない場合が生ずる。この場合、例えば前記給気口19から加熱した蒸気またはシャワー状の熱水を供給して例えば茶葉のような材料Wの場合、材料の茶葉を開かせるようにして抽出がより活性化できるような状態に予備処理を行う。そしてその後冷水の処理液Lを通過させて抽出を行う。
【0052】
(7)抽出終了後の保全作業
更に本発明の特徴として、抽出終了後の機材の保守、点検、材料取出等の作業を、安全に且つ周辺環境を汚損することなく行うことができる。
即ち抽出の工程終了後、例えば茶等において顕著であるが、材料が密に積層して抽出器1の内部圧力が残存してしまいがちの場合、先ず圧力開放配管25に設けられている圧力開放弁26を開放する。この圧力開放弁26は、実質的に抽出器1の内部と連通しているから、抽出器1内の圧力が排気ピット4に開放される。この結果、次に行う上蓋部12Bを開けての保守作業に際して、抽出器1の内部残留圧力に起因する材料W等の飛散が防止される。
因みに圧力開放弁26は、圧力開放配管25に設けたものであるが、実質的に抽出器1内部と連通していればよいから、例えば上蓋部12Bに直接設けるような形態を採ることもできる。