特許第6872004号(P6872004)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872004
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】ねじおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16B 33/02 20060101AFI20210510BHJP
   B21H 3/06 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   F16B33/02 D
   B21H3/06 A
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-502336(P2019-502336)
(86)(22)【出願日】2017年2月28日
(86)【国際出願番号】JP2017007939
(87)【国際公開番号】WO2018158845
(87)【国際公開日】20180907
【審査請求日】2020年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大森 勇作
(72)【発明者】
【氏名】横田 正典
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−146115(JP,U)
【文献】 特開2003−247522(JP,A)
【文献】 特開2002−020839(JP,A)
【文献】 特開平07−310723(JP,A)
【文献】 特開平02−268935(JP,A)
【文献】 特開昭56−141932(JP,A)
【文献】 韓国登録実用新案第20−0437133(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 23/00−43/02
B21H 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
おねじの有効径(ΦA)とほぼ同径に設定された素材脚部(6)に螺旋状の完全なおねじ山形を成す完全おねじ部(21)と、この完全おねじ部(21)に連設され不完全なおねじ山形を成す不完全おねじ部(22)とを転造により成形したねじ(1)において、
前記素材脚部(6)は、前記有効径(ΦA)に設定された有効径軸部(6c)と、この有効径軸部(6c)よりも小径の環状溝(6b)とを一体に備えて成り、
前記環状溝(6b)は、前記有効径(ΦA)よりも小さくかつ前記完全おねじ部(21)の谷径(ΦH)よりも大きな直径を備え、
前記素材脚部(6)が前記転造されることで前記完全おねじ部(21)と前記不完全おねじ部(22)とから成るねじ部(20c)および前記環状溝(6b)よりも軸長の短い環状溝部(20b)へ成形されたねじ脚部(20)に塑性変形され、
前記不完全おねじ部(22)は、前記素材脚部(6)の有効径軸部(6c)から環状溝(6b)にかけて漸減する不完全なおねじ山形を成すこと特徴とするねじ。
【請求項2】
前記素材脚部(6)は、前記環状溝(6b)に連設し前記有効径軸部(6c)とほぼ同径に寸法設定された首下部(6a)と、この首下部(6a)へ挿通された座金(40)とを備えて成り、
前記座金(40)は、前記ねじ部(20c)に抜け止めされ遊嵌自在に配されて成ることを特徴とする請求項1に記載のねじ。
【請求項3】
前記座金(40)は、前記ねじ脚部(20)の環状溝部(20b)を少なくとも一部内包して成ることを特徴とする請求項2に記載のねじ。
【請求項4】
おねじの有効径(ΦA)とほぼ同径の線材から大径の頭部(10)および前記有効径(ΦA)と同径の素材脚部(6)を圧造成形する圧造工程(P)と、この圧造工程(P)により成形された前記素材脚部(6)に前記有効径(ΦA)よりも小径の環状溝(6b)を転造成形する溝転造工程(Ra)と、前記溝転造工程(Ra)により成形された素材(5)に螺旋状の完全なおねじ山形を成す完全おねじ部(21)および不完全なおねじ山形を成す不完全おねじ部(22)を転造成形するねじ山転造工程(Rb)とを含むことを特徴とするねじの製造方法。
【請求項5】
前記素材(5)に熱処理を施して表面硬度を高める熱処理工程(S)が、前記ねじ山転造工程(Rb)前に設定されていることを特徴とする請求項4に記載のねじの製造方法。
【請求項6】
前記素材(5)に前記頭部(10)よりも大径の座金(40)を組み込む座金組込工程(F)が、前記熱処理工程(S)後に設定されていることを特徴とする請求項5にねじの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク表面に密着するまで螺入できるねじおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のねじおよびその製造方法は、特許文献1ないし特許文献5に開示されており、以下に説明する。まず、従来のねじは、大径の頭部と、この頭部に隣接したおねじを有するねじ脚部とを備え、前記おねじは完全な山形を成す完全おねじ部およびこの完全おねじ部に連設され徐々にねじ山高さを漸減された不完全な山形を成す不完全おねじ部によって構成される。また、従来のねじは、特許文献4に開示されるように前記頭部の首下に配置された溝部を備え、この溝部の直径が前記完全おねじ部の谷径よりも小径に設定されている。さらに、前記溝部は、前記不完全おねじ部の終端に接続されて成る。なお、前記頭部および前記おねじによって軸方向へ抜け止めされた座金を備えるものもある。このように構成された従来のねじは、前記完全おねじ部に螺合可能なめねじを有するワークへ螺入され所定の締付けトルクによって締結されるが、前記頭部の首下に位置する溝部の直径が完全おねじ部の谷径、つまり前記めねじの内径よりも小径のため、前記頭部がワークに密着してもめねじに干渉しない。よって、頭部がワーク表面と密着するまで浮くことなく最後まで螺入できるという特徴がある。
【0003】
次に、従来のねじの製造方法は、所定の直径に設定された線材を押圧して前記頭部およびこの頭部よりも小径かつ円柱状のリベットを一体に成形する圧造工程と、前記圧造工程により成形したリベットの外周に螺旋状の前記おねじを転造するねじ山転造工程と、このねじ山転造工程後またはねじ山転造工程前に所定温度加熱して前記圧造工程またはねじ山転造工程によって塑性変形した部位の歪みなどを修正する熱処理工程とを含む。また、前記線材および前記リベットの直径は、ねじ山転造工程により成形するおねじの有効径とほぼ同寸法になるよう設定されている。なお、前記座金を備えた従来のねじの製造方法は、前記圧造工程を終えたリベットへ当該座金を組み込む座金組込工程を含み、当該座金組込工程が前記ねじ山転造工程前に設定されている。この従来のねじの製造方法は、前記ねじ山転造工程において、前記有効径のリベットを一対の往復移動可能な転造工具へ供給し当該有効径から拡径させた山頂部および縮径させた谷部となる前記完全おねじ部を成形するので、これら拡径および縮径の変形割合がおおよそ半々とバランスよく分散される。よって、転造工具の寿命が延びるという特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5878074号公報
【特許文献2】特開2002−147425号公報
【特許文献3】特開昭60−201107号公報
【特許文献4】国際特許公開番号WO2015/005347号公報
【特許文献5】特許5513823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のねじは、ワークの表面に密着するまで螺入できるものの、頭部が着座した後に生じるトルクおよび軸力の高まりを受けて、前記完全おねじ部の谷径から破断するのではなく、当該谷径よりも小径に設定されている前記溝部から破断し易く高い締付けトルクによって締結できないという問題があった。
【0006】
また、従来のねじの製造方法は、前記溝部を備えない前記リベットに予め熱処理を施しこの熱処理工程後に前記ねじ山転造工程を設定している場合、前記転造工具の端部(上述の首下に相当の位置)が欠け易く転造工具の寿命が短くなるという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、おねじの有効径(ΦA)とほぼ同径に設定された素材脚部(6)に螺旋状の完全なおねじ山形を成す完全おねじ部(21)と、この完全おねじ部(21)に連設され不完全なおねじ山形を成す不完全おねじ部(22)とを転造により成形したねじ(1)において、前記素材脚部(6)は、前記有効径(ΦA)に設定された有効径軸部(6c)と、この有効径軸部(6c)よりも小径の環状溝(6b)とを一体に備えて成り、前記環状溝(6b)は、前記有効径(ΦA)よりも小さくかつ前記完全おねじ部(21)の谷径(ΦH)よりも大きな直径を備え、前記素材脚部(6)が前記転造されることで前記完全おねじ部(21)と前記不完全おねじ部(22)とから成るねじ部(20c)および前記環状溝(6b)よりも軸長の短い環状溝部(20b)へ成形されたねじ脚部(20)に塑性変形され、前記不完全おねじ部(22)は、前記素材脚部(6)の有効径軸部(6c)から環状溝(6b)にかけて漸減する不完全なおねじ山形を成すこと特徴とする。なお、前記素材脚部(6)は、前記環状溝(6b)に連設し前記有効径軸部(6c)とほぼ同径に寸法設定された首下部(6a)と、この首下部(6a)へ挿通された座金(40)とを備えて成り、前記座金(40)は、前記完全おねじ部(21)に抜け止めされ遊嵌自在に配されてもよい。また、前記座金(40)は、前記ねじ脚部(20)の環状溝部(20b)を少なくとも一部内包して成ることが好ましい。
【0008】
また、本発明に係るねじの製造方法は、おねじの有効径(ΦA)とほぼ同径の線材から大径の頭部(10)および前記有効径(ΦA)と同径の素材脚部(6)を圧造成形する圧造工程(P)と、この圧造工程(P)により成形された前記素材脚部(6)に前記有効径(ΦA)よりも小径の環状溝(6b)を転造成形する溝転造工程(Ra)と、前記溝転造工程(Ra)により成形された素材(5)に螺旋状の完全なおねじ山形を成す完全おねじ部(21)および不完全なおねじ山形を成す不完全おねじ部(22)を転造成形するねじ山転造工程(Rb)とを含むことを特徴とする。なお、前記素材(5)に熱処理を施して表面硬度を高める熱処理工程(S)が、前記ねじ山転造工程(Rb)前に設定されていてもよい。また、前記素材(5)に前記頭部(10)よりも大径の座金を組み込む座金組込工程(F)は、前記熱処理工程(S)後に設定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のねじは、そのねじ脚部に前記有効径よりも小さくかつ前記谷径よりも大径の環状溝部を備えるため、従来よりも高い破断トルクとなり従来に比べて高い締付けトルクによって締結できるという利点がある。
【0010】
さらに、本発明のねじは、前記有効径とほぼ同径に設定された首下部に遊嵌自在に配置した座金を前記完全おねじ部によって抜け止めして成るため、座金を組み込んだねじとしても使用用途を広げることができるという利点もある。
【0011】
また、本発明のねじは、前記環状溝部の一部を少なくとも前記座金で内包しているので、前記不完全おねじ部を前記座金の一端側へ接近させて配置できる。これにより、本発明のねじは、上述したように単に使用用途を広げられるのみならず、前記めねじの山形に収まり螺合する不完全おねじ部を構成することができるという利点もある。
【0012】
本発明に係るねじの製造方法は、前記環状溝を転造する溝転造工程を前記ねじ脚部を転造するねじ山転造工程よりも前に設定しているので、前記不完全おねじ部を転造成形する前記転造工具が前記有効径よりも小径の環状溝に接触するので当該転造工具の端部に大きな負荷が加わらず欠け等の破損が生じ難いという利点がある。
【0013】
また、本発明に係るねじの製造方法は、上述のように小径の環状溝を備える素材脚部を転造工具によって転造し当該転造工具に掛かる負荷を低減できるため、前記熱処理工程によって強度を向上させた素材脚部を転造する場合であっても、前記転造工具の不完全ねじ部を成形する部位に大きな負荷が生じ難い。よって、本発明に係るねじの製造方法は、前記熱処理工程をねじ山転造工程の前工程に設定することができ、製造工程に係る設計の自由度を高められるという利点もある。
【0014】
さらに、本発明に係るねじの製造方法は、前記熱処理工程を経た前記素材に座金を組み込む座金組込工程を設定されているので、従来のように既に熱処理された座金が再度加熱されることが無い。よって、再加熱による座金の強度低下という問題を解消でき、前記素材の材質に見合った温度設定および加熱時間により最適な熱処理条件を設定できるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る一実施形態を示すねじの一部切欠き断面図である。
図2】本発明に係る他の実施形態を示すねじの一部切欠き断面図である。
図3】本発明に係るねじの製造方法を示す概略工程図である。
図4図2のねじ1を転造により成形し始めるねじ山転造工程を説明するための説明図である。
図5図4のねじ山転造工程を終えた直後の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係るねじおよびその製造方法について図1ないし図5に基づき説明する。まず、本発明のねじ1は、大径の頭部10と、この頭部10よりも小径のねじ脚部20とから構成されている。
【0017】
前記ねじ脚部20は、完全なおねじ山形を成す完全おねじ部21および不完全なおねじ山形を成す不完全おねじ部22を有するねじ部20cと、前記頭部10に連設され前記完全おねじ部21の有効径ΦAに設定された首下部6aと、この有効径ΦAよりも小径かつ前記完全おねじ部21の谷径ΦHよりも大径の環状溝部20bとから構成される。また、前記完全おねじ部21の山径ΦM、谷径ΦH、前記有効径ΦA、前記環状溝部20bおよび後記環状溝6bの外径ΦDの寸法関係は、ΦM>ΦA>ΦD>ΦHとなっている。
【0018】
前記不完全おねじ部22は、前記完全おねじ部21の終端から前記環状溝部20bに連設されており、不完全なおねじ山形を成している。また、その山頂高さが有効径軸部6cから環状溝6bに向かって径方向へ漸減するよう成形されており、前記完全おねじ部21の延長上に成形され、図5に示すように完全なおねじ山形内に収まっている。これにより、本発明に係るねじ1は、ワークへ螺入される過程において、当該ワークに予め成形され前記完全おねじ部21に螺合可能なめねじ(図示せず。図5の後記固定側転造ダイス51および後記可動側転造ダイス52に相当)に前記完全おねじ部21および不完全おねじ部22が干渉しない。したがって、前記ねじ1は、ワークの表面に前記頭部10が密着するまで前記ねじ部20cを変形させることなく円滑に螺入可能に構成されている。
【0019】
また、本発明に係るねじ1は、前記有効径ΦAより小径かつ完全おねじ部21の谷径ΦHよりも大径の環状溝6bを備えた素材脚部6を転造しねじ部20cが成形されているので、ねじ山転造時に用いられる転造工具(51,52に相当)の一端に大きな負荷が掛かり難い。しかも、本発明に係るねじ1は、前記環状溝部20bの直径を完全おねじ部21の谷径ΦHよりも太くして成るため、従来に比べて高い締付けトルクに耐え得る。
【0020】
また、本発明に係るねじ1は、前記頭部10と前記ねじ部20cとの間に座金40を配置して成り、座金40は、前記首下部6aを挿通可能な挿通穴40aを備えて成る。したがって、前記座金40は、前記挿通穴40aよりも大径を成すねじ部20cに抜け止めされ、挿通穴40aよりも小径の前記首下部6aおよび環状溝6bに遊嵌自在に支持されて成る。
【0021】
本発明に係るねじ1の製造方法は、前記有効径ΦAに設定された線材を圧造して前記有効径ΦAとほぼ同径の素材脚部6とこの素材脚部6に連設された前記頭部10とを成形する圧造工程Pと、この圧造工程Pにより成形した素材脚部6に前記有効径ΦAよりも小径の環状溝6bを転造成形する溝転造工程Raと、この溝転造工程Raを終えた前記素材脚部6と前記環状溝6bの一部とに前記ねじ部20cを成形するねじ山転造工程Rbとを少なくとも含む。なお、本発明に係るねじ1の製造方法は、前記溝転造工程Raによって転造成形された素材5を熱処理する熱処理工程Sを含んでもよく、この熱処理工程Sは、前記ねじ山転造工程Rbの前工程として設定してもよい。また、本発明に係るねじ1の製造方法は、前記溝転造工程Raを終えた前記素材5に座金40を組み込む座金組込工程Fを含んでもよく、この座金組込工程Fは、前記熱処理工程Sの後工程として設定してもよい。
【0022】
前記圧造工程Pは、前記線材を受け駒(図示せず)へ挿通し当該受け駒から一部突出させ、この突出した線材を金型により押圧して前記頭部10を圧造成形する工程である。この圧造工程Pにより成形された頭部10は、JIS規格に規定されたなべ、バインド、六角などの形状を成し、その頭頂部に回転工具を係合可能な十字穴などの係合部を備えてもよく、当該頭部10は、前記受け駒に挿通されていた前記有効径ΦAとほぼ同径の軸部を一体に備える。
【0023】
前記溝転造工程Raは、前述の円柱状に成形された軸部を転造して前記有効径ΦAよりも小径な前記環状溝6bを成形する工程であり、この溝転造工程Raを終えた素材5は、前記頭部10に連設された前記有効径ΦAとほぼ同径の首下部6aと、この首下部6aに連設された前記環状溝6bと、この環状溝6bに連設され前記有効径ΦAとほぼ同径の有効径軸部6cとから成る素材脚部6を備える。
【0024】
前記熱処理工程Sは、前記転造工程Raを経た前記素材5を所定の温度により一定時間加熱し鋼材から成る素材5の組織を調質する工程である。これにより、素材5は、ねじに適した高い表面硬度かつ高い靱性へ変化する。
【0025】
前記座金組込工程Fは、前記熱処理工程Sを経た前記素材5に前記座金40を組み込む工程であり、前記頭部10が当該座金40によって吊下される。この座金組込工程Fは、後記ねじ山転造工程Rbで稼働する前記ねじ部20cを転造成形可能な転造装置(図示せず)の座金組込ユニット(図示せず)の動作によって実現されている。
【0026】
前記ねじ山転造工程Rbは、座金組込工程Fを経た前記素材5の素材脚部6および前記環状溝6bの一部に前記ねじ部20cを転造成形する工程であり、前記転造装置によって実現する工程である。前記転造装置は、前記素材5を一対の固定側転造ダイス51および可動側転造ダイス52によって挟み込み可動側転造ダイス52の往復運動により前記素材5を回転させ前方へ排出して前記ねじ部20cを成形可能に構成されている。また、この転造装置は、前記素材5を固定側転造ダイス51および可動側転造ダイス52へ供給する前に、当該素材5に前記座金40を組み込む前記座金組込ユニットを備える。
【0027】
これにより、前記ねじ山転造工程Rbは、図4から図5に示すような過程を経て前記有効径軸部6cおよび前記環状溝6bの一部を前記完全おねじ部21および前記不完全おねじ部22へ成形する。また、固定側転造ダイス51および可動側転造ダイス52に付された傾斜山形は、図4に示す位置から図5に示す位置へと互いに接近することで前記ねじ部20cを徐々に完成させるが、前記有効径ΦAに設定されていた前記有効径部6cには深く干渉するものの、前記有効径ΦAよりも小径に設定されていた前記環状溝6bには浅くしか干渉しない。よって、前記固定側転造ダイス51および可動側転造ダイス52の一端側は、前述の浅く干渉する環状溝6bの一部を塑性加工して正規の完全なおねじ山形に収まる不完全おねじ部22を成形する。
【0028】
また、このねじ山転造工程Rbを終えたねじ1は、図1および図2ならびに図5に示すように前記環状溝6bの一部に前記ねじ部20cを形成して成るので、これを転造する前の環状溝6bからその軸長を若干短くした環状溝部20bへと変化する。よって、前記ねじ1は、前記環状溝6bと同径の環状溝部20bおよびこの環状溝部20bに連設された不完全おねじ部22ならびに前記完全おねじ部21から成るねじ脚部20と、このねじ脚部20と一体な頭部10とから構成され、前記座金組込工程Fが設定されている場合であれば前記不完全おねじ部22に抜け止めされ遊嵌自在な前記座金40とを備えて成る。また、前記座金40は、前記環状溝部20bを少なくとも一部内包して取り付けられて成る。
【0029】
このように本発明に係るねじ1は、座金40を組み込むものに限定されるのではなく、前記素材脚部6に前記首下部6aを備えない前記環状溝6bと、前記有効径軸部6cとのみから構成され前記素材5を転造した図1に示すような構成であってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1…ねじ
5…素材
6…素材脚部
6a…首下部
6b…環状溝
6c…有効径軸部
10…頭部
20…ねじ脚部
20b…環状溝部
20c…ねじ部
21…完全おねじ部
22…不完全おねじ部
40…座金
ΦA…おねじの有効径
ΦD…環状溝6bの外径
ΦD…環状溝部20bの外径
ΦH…完全おねじ部21の谷径
ΦM…完全おねじ部21の山径
図1
図2
図3
図4
図5