特許第6872018号(P6872018)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6872018混練機制御装置、混練機制御方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872018
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】混練機制御装置、混練機制御方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   B29B 7/28 20060101AFI20210510BHJP
   B29B 7/20 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   B29B7/28
   B29B7/20
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-528286(P2019-528286)
(86)(22)【出願日】2017年7月6日
(86)【国際出願番号】JP2017024834
(87)【国際公開番号】WO2019008727
(87)【国際公開日】20190110
【審査請求日】2019年11月21日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】松下 洋一
(72)【発明者】
【氏名】曽我 良太
(72)【発明者】
【氏名】野口 晋一
(72)【発明者】
【氏名】新谷 幸司
【審査官】 菅原 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−142125(JP,A)
【文献】 特開2016−043486(JP,A)
【文献】 特開平11−57445(JP,A)
【文献】 特開平7−124942(JP,A)
【文献】 特開2013−18212(JP,A)
【文献】 特開2016−37039(JP,A)
【文献】 M.Bratina,Predictive Control of Rubber Mixing Process Based on Neural Network Models,KGK,2009年,p28−p32,URL,https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200902241930674060
【文献】 Dr.S.Brassas,Efficiency through Intelligence,KGK,2013年,p.18−23,URL,https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201402243874685935&rel=1#%7B%22category%22%3A%220%22%2C%22keyword%22%3A%22Efficie
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/00−11/14
B29B 13/00−15/06
B29C 31/00−31/10
B29C 37/00−37/04
B29C 71/00−71/02
G06N 20/00−20/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練機が混練するゴム材の温度に関係するゴム温度パラメータと、前記混練機の混練による前記ゴム温度パラメータの値の変化に相関の有る相関パラメータであって相関解析によって特定した少なくとも前記混練機の運転制御パラメータを含む前記相関パラメータの計測値を取得する計測値取得部と、
前記運転制御パラメータと前記相関パラメータとを含んで構成されるゴム温度パラメータ算出モデル式を変形した式であって、複数の前記運転制御パラメータのうちの所定の運転制御パラメータを算出する運転制御パラメータ算出モデル式に前記計測値を代入し、機械学習アルゴリズムを用いて前記運転制御パラメータと前記相関パラメータとの係数と定数とを算出する機械学習部と、
前記機械学習アルゴリズムを用いて算出した前記係数と前記定数とにより特定される運転制御パラメータ算出式を用いて、前記ゴム温度パラメータを所定の値に制御する場合の前記所定の運転制御パラメータを算出する運転制御パラメータ算出部と、
を備え、
前記計測値取得部は、前記混練機または前記ゴム材の識別情報と前記混練機の動作形態を示す識別情報との組み合わせ毎に、前記ゴム温度パラメータの値の変化との相関性が相対的に高い相関パラメータの種類を特定し、当該特定した種類の相関パラメータの計測値を取得する、
混練機制御装置。
【請求項2】
前記所定の運転制御パラメータは前記混練機が前記ゴム材を混練するロータの単位時間当たり回転数であり、
前記運転制御パラメータ算出部は、前記ロータの単位時間当たり回転数の算出を行う前記運転制御パラメータ算出式を用いて、前記ゴム温度パラメータを所定の値に制御する場合の前記ロータの単位時間当たり回転数を算出する
請求項1に記載の混練機制御装置。
【請求項3】
前記所定の運転制御パラメータは前記混練機が前記ゴム材を冷却する冷却水温度であり、
前記運転制御パラメータ算出部は、前記冷却水温度の算出を行う前記運転制御パラメータ算出式を用いて、前記ゴム温度パラメータを所定の値に制御する場合の前記冷却水温度を算出する
請求項1または請求項2に記載の混練機制御装置。
【請求項4】
前記所定の運転制御パラメータは前記混練機が前記ゴム材を混練室へ圧入するラムの圧力であり、
前記運転制御パラメータ算出部は、前記ラムの圧力の算出を行う前記運転制御パラメータ算出式を用いて、前記ゴム温度パラメータを所定の値に制御する場合の前記ラムの圧力を算出する
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の混練機制御装置。
【請求項5】
前記所定の運転制御パラメータは前記混練機を構成する冷却対象を冷却する冷却水の水量であり、
前記運転制御パラメータ算出部は、前記冷却水の水量の算出を行う前記運転制御パラメータ算出式を用いて、前記ゴム温度パラメータを所定の値に制御する場合の前記冷却水の水量を算出する
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の混練機制御装置。
【請求項6】
前記所定の運転制御パラメータは前記混練機が前記ゴム材を混練室へ圧入するラムの基準位置からの移動量であり、
前記運転制御パラメータ算出部は、前記ラムの基準位置からの移動量の算出を行う前記運転制御パラメータ算出式を用いて、前記ゴム温度パラメータを所定の値に制御する場合の前記ラムの基準位置からの移動量を算出する
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の混練機制御装置。
【請求項7】
前記ゴム温度パラメータは所定時間での前記ゴム材の温度変化の割合を示す
請求項1から請求項6の何れか一項に記載の混練機制御装置。
【請求項8】
前記計測値取得部は、前記混練機が前記ゴム材を混練する動作形態それぞれについての前記ゴム温度パラメータと前記相関パラメータとの計測値を取得し、
前記機械学習部は、前記動作形態それぞれに対応する場合の前記運転制御パラメータと前記相関パラメータとの係数と定数とを算出し、
前記運転制御パラメータ算出部は、前記動作形態それぞれについて前記ゴム温度パラメータを所定の値に制御する場合の前記所定の運転制御パラメータを算出する
請求項1から請求項7の何れか一項に記載の混練機制御装置。
【請求項9】
混練機が混練するゴム材の温度に関係するゴム温度パラメータと、前記混練機の混練による前記ゴム温度パラメータの値の変化に相関の有る相関パラメータであって相関解析によって特定した少なくとも前記混練機の運転制御パラメータを含む前記相関パラメータの計測値を取得するステップと、
前記運転制御パラメータと前記相関パラメータとを含んで構成されるゴム温度パラメータ算出モデル式を変形した式であって、複数の前記運転制御パラメータのうちの所定の運転制御パラメータを算出する運転制御パラメータ算出モデル式に前記計測値を代入し、機械学習アルゴリズムを用いて前記運転制御パラメータと前記相関パラメータとの係数と定数とを算出するステップと、
前記機械学習アルゴリズムを用いて算出した前記係数と前記定数とにより特定される運転制御パラメータ算出式を用いて、前記ゴム温度パラメータを所定の値に制御する場合の前記所定の運転制御パラメータを算出するステップと、
を備え、
前記計測値を取得するステップでは、前記混練機または前記ゴム材の識別情報と前記混練機の動作形態を示す識別情報との組み合わせ毎に、前記ゴム温度パラメータの値の変化との相関性が相対的に高い相関パラメータの種類を特定し、当該特定した種類の相関パラメータの計測値を取得する、
混練機制御方法。
【請求項10】
混練機制御装置のコンピュータに、
混練機が混練するゴム材の温度に関係するゴム温度パラメータと、前記混練機の混練による前記ゴム温度パラメータの値の変化に相関の有る相関パラメータであって相関解析によって特定した少なくとも前記混練機の運転制御パラメータを含む前記相関パラメータの計測値を取得するステップと、
前記運転制御パラメータと前記相関パラメータとを含んで構成されるゴム温度パラメータ算出モデル式を変形した式であって、複数の前記運転制御パラメータのうちの所定の運転制御パラメータを算出する運転制御パラメータ算出モデル式に前記計測値を代入し、機械学習アルゴリズムを用いて前記運転制御パラメータと前記相関パラメータとの係数と定数とを算出するステップと、
前記機械学習アルゴリズムを用いて算出した前記係数と前記定数とにより特定される運転制御パラメータ算出式を用いて、前記ゴム温度パラメータを所定の値に制御する場合の前記所定の運転制御パラメータを算出するステップと、
を実行させ、
前記計測値を取得するステップでは、前記混練機または前記ゴム材の識別情報と前記混練機の動作形態を示す識別情報との組み合わせ毎に、前記ゴム温度パラメータの値の変化との相関性が相対的に高い相関パラメータの種類を特定し、当該特定した種類の相関パラメータの計測値を取得する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム材の混練機を制御する混練機制御装置、混練機制御方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤやその他のゴム製品の製造過程においてはゴムとシリカ、カーボン等の添加剤を混練機に投入して混練する場合がある。この混練機の混練動作においてゴムと添加剤がより良く混練されるために適正なゴムと添加剤とを含むゴム材の温度制御を行う必要がある。なお関連する技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−018212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術ではPID(Proportional-Integral-Differential)制御によって混練室内の実側温度が目標温度となるように撹拌ロータの回転速度を自動制御する技術が開示されている。しかしながら、PID制御による温度制御の場合には所望の温度に制御するための回転速度の算出に時間がかかる。したがってより早く精度高い混練時のゴム材の温度制御を行う技術が求められている。
【0005】
そこでこの発明は、上述の課題を解決する混練機制御装置、混練機制御方法、プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、混練機制御装置は、混練機が混練するゴム材の温度に関係するゴム温度パラメータと、前記混練機の混練による前記ゴム温度パラメータの値の変化に相関の有る相関パラメータであって相関解析によって特定した少なくとも前記混練機の運転制御パラメータを含む前記相関パラメータの計測値を取得する計測値取得部と、前記運転制御パラメータと前記相関パラメータとを含んで構成されるゴム温度パラメータ算出モデル式を変形した式であって、複数の前記運転制御パラメータのうちの所定の運転制御パラメータを算出する運転制御パラメータ算出モデル式に前記計測値を代入し、機械学習アルゴリズムを用いて前記運転制御パラメータと前記相関パラメータとの係数と定数とを算出する機械学習部と、前記機械学習アルゴリズムを用いて算出した前記係数と前記定数とにより特定される運転制御パラメータ算出式を用いて、前記ゴム温度パラメータを所定の値に制御する場合の前記所定の運転制御パラメータを算出する運転制御パラメータ算出部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上述の混練機制御装置において、前記所定の運転制御パラメータは前記混練機が前記ゴム材を混練するロータの単位時間当たり回転数であり、前記運転制御パラメータ算出部は、前記ロータの単位時間当たり回転数の算出を行う前記運転制御パラメータ算出式を用いて、前記ゴム温度パラメータを所定の値に制御する場合の前記ロータの単位時間当たり回転数を算出してよい。
【0008】
また上述の混練機制御装置において、前記所定の運転制御パラメータは前記混練機が前記ゴム材を冷却する冷却水温度であり、前記運転制御パラメータ算出部は、前記冷却水温度の算出を行う前記運転制御パラメータ算出式を用いて、前記ゴム温度パラメータを所定の値に制御する場合の前記冷却水温度を算出してよい。
【0009】
また上述の混練機制御装置において、前記所定の運転制御パラメータは前記混練機が前記ゴム材を混練室へ圧入するラムの圧力であり、前記運転制御パラメータ算出部は、前記ラムの圧力の算出を行う前記運転制御パラメータ算出式を用いて、前記ゴム温度パラメータを所定の値に制御する場合の前記ラムの圧力を算出してよい。
【0010】
また上述の混練機制御装置において、前記所定の運転制御パラメータは前記混練機を構成する冷却対象を冷却する冷却水の水量であり、前記運転制御パラメータ算出部は、前記冷却水の水量の算出を行う前記運転制御パラメータ算出式を用いて、前記ゴム温度パラメータを所定の値に制御する場合の前記冷却水の水量を算出してよい。
【0011】
また上述の混練機制御装置において、前記所定の運転制御パラメータは前記混練機が前記ゴム材を混練室へ圧入するラムの基準位置からの移動量であり、前記運転制御パラメータ算出部は、前記ラムの基準位置からの移動量の算出を行う前記運転制御パラメータ算出式を用いて、前記ゴム温度パラメータを所定の値に制御する場合の前記ラムの基準位置からの移動量を算出してよい。
【0012】
また上述の混練機制御装置において、前記ゴム温度パラメータは所定時間での前記ゴム材の温度変化の割合を示してよい。
【0013】
また上述の混練機制御装置において、前記計測値取得部は、前記混練機が前記ゴム材を混練する動作形態それぞれについての前記ゴム温度パラメータと前記相関パラメータとの計測値を取得し、前記機械学習部は、前記動作形態それぞれに対応する場合の前記運転制御パラメータと前記相関パラメータとの係数と定数とを算出し、前記運転制御パラメータ算出部は、前記動作形態それぞれについて前記ゴム温度パラメータを所定の値に制御する場合の前記所定の運転制御パラメータを算出してよい。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、混練機制御方法は、混練機が混練するゴム材の温度に関係するゴム温度パラメータと、前記混練機の混練による前記ゴム温度パラメータの値の変化に相関の有る相関パラメータであって相関解析によって特定した少なくとも前記混練機の運転制御パラメータを含む前記相関パラメータの計測値を取得し、前記運転制御パラメータと前記相関パラメータとを含んで構成されるゴム温度パラメータ算出モデル式を変形した式であって、複数の前記運転制御パラメータのうちの所定の運転制御パラメータを算出する運転制御パラメータ算出モデル式に前記計測値を代入し、機械学習アルゴリズムを用いて前記運転制御パラメータと前記相関パラメータとの係数と定数とを算出し、前記機械学習アルゴリズムを用いて算出した前記係数と前記定数とにより特定される運転制御パラメータ算出式を用いて、前記ゴム温度パラメータを所定の値に制御する場合の前記所定の運転制御パラメータを算出することを特徴とする。
【0015】
本発明の第3の態様によれば、プログラムは、混練機制御装置のコンピュータを、混練機が混練するゴム材の温度に関係するゴム温度パラメータと、前記混練機の混練による前記ゴム温度パラメータの値の変化に相関の有る相関パラメータであって相関解析によって特定した少なくとも前記混練機の運転制御パラメータを含む前記相関パラメータの計測値を取得する計測値取得手段、前記運転制御パラメータと前記相関パラメータとを含んで構成されるゴム温度パラメータ算出モデル式を変形した式であって、複数の前記運転制御パラメータのうちの所定の運転制御パラメータを算出する運転制御パラメータ算出モデル式に前記計測値を代入し、機械学習アルゴリズムを用いて前記運転制御パラメータと前記相関パラメータとの係数と定数とを算出する機械学習手段、前記機械学習アルゴリズムを用いて算出した前記係数と前記定数とにより特定される運転制御パラメータ算出式を用いて、前記ゴム温度パラメータを所定の値に制御する場合の前記所定の運転制御パラメータを算出する運転制御パラメータ算出手段、として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、より早く精度高く混練機において混練されるゴム材の温度制御を行うことができる。また本発明によればその温度制御の為の混練機の運転制御パラメータを容易に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】混練機制御装置を含む混練機システムの構成を示すブロック図である。
図2】混練機の概略図である。
図3】混練機制御装置のハードウェア構成を示す図である。
図4】混練機制御装置の機能ブロック図である。
図5】第一の実施形態による混練機制御装置の処理フローを示す図である。
図6】第二の実施形態による混練機制御装置の処理フローを示す図である。
図7】第1実施例による混練機制御装置の動作結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態による混練機制御装置を図面を参照して説明する。
図1は同実施形態による混練機制御装置を含む混練機システム100の構成を示すブロック図である。
この図が示すように、混練機システム100は混練機制御装置1と混練機2とが通信接続されることにより構成される。混練機制御装置1は混練機2に内包されるものであってもよい。混練機制御装置1は混練機2を制御するコンピュータであり混練機2に対して各指令信号を出力する。混練機2は混練機制御装置1から得た指令信号に基づいて駆動対象を制御する。駆動対象は例えば混練機2を構成する混練用ロータ等である。
【0019】
本実施形態において混練機2はゴムやシリカやその他の添加剤を、混練用ロータを回転させることによって混練する。混練機2で混練されたゴム材はタイヤやその他のゴム製品に成形される。
【0020】
図2は混練機の概略図である。
図2に示すように混練機2は、混練用ロータ20,21を備える。混練機2はケーシング11の内部に混練室12を形成している。混練機2は、混練室12の内部に、一対の混練用ロータ20,21が平行に配置される。一対の混練用ロータ20,21は、不図示のモータ等の駆動源により互いに逆方向に回転する。また一対の混練用ロータ20,21は、それぞれの外表面に、それぞれ外側に向かって張り出した翼部22,23を形成している。翼部22,23は、例えば、混練用ロータ20,21の軸線24,25に対して螺旋状にねじれて形成されている。これら翼部22,23は、混練用ロータ20,21の回転により互いに噛み合うように配置されている。
【0021】
混練機2は、その上部に、混練室12に連通してゴム原料や添加剤などを含むゴム材が投入されるホッパ13と、このホッパ13に投入されたゴム材を混練室12へ圧入するラム14とが設けられている。
また、混練機2は、その底部に、混練されたゴム材を外部に取り出すためのドロップドア15を開閉可能に取り付けている。
【0022】
混練機2は、ホッパ13を介して投入されたゴム材を、ラム14によって混練室12内に圧入する。
次に、互いに逆方向に回転する混練用ロータ20,21の噛み合い作用および混練用ロータ20,21と混練室12の内表面との間に発生するせん断作用によってゴム材を混練する。
そして、混練機2は、混練したゴム材を、混練室12の底部に設けられたドロップドア15を開放することにより混練室12から外部へ取り出して他の工程に搬送する。
なお図2で示す混練機2の構造は一例であって、混練機2は他の構造を有するものであってもよい。例えば混練機2は、翼部22,23が回転により互いにかみ合うことによりゴム材を混練する変わりに、接線式ロータにより混練するものなどであってもよい。また混練機2は、ホッパ13以外にスライド形式の開閉口からゴム材が投入される機構を有するものであってよい。また混練機2は混練されたゴム材の排出機構としてドロップドアの代わりに混合槽を反転する機構を有するニーダ型混練機であってもよい。
【0023】
また混練機2には図2に示すように冷却水が還流する。冷却水配管は、ラム、混練室、ロータ等の各部に接続され、その各部内部には流路が形成され冷却水が流れる。冷却水配管は、ラムを冷却するラム冷却水が還流する第一配管26、混練室を冷却する混練室冷却水が還流する第二配管27、ロータを冷却するロータ冷却水が還流する第三配管28などがある。
【0024】
図3は本実施形態による混練機制御装置のハードウェア構成を示す図である。
図3で示すように混練機制御装置1は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、HDD(Hard Disk Drive)104、信号受信モジュール105を備えるコンピュータである。
【0025】
図4は本実施形態による混練機制御装置の機能ブロック図である。
混練機制御装置1のCPU101は予め自装置で記憶するプログラムを実行する。これにより混練機制御装置1は、制御部111、計測値取得部112、機械学習部113、運転制御パラメータ算出部114の各構成を備える。
【0026】
制御部111は混練機制御装置1の各機能部を制御する。
計測値取得部112は、混練機2が混練するゴム材の温度に関係するゴム温度パラメータの計測値を取得する。また計測値取得部112は、混練機2の混練によるゴム温度パラメータの値の変化に相関の有る相関パラメータであって相関解析によって特定した少なくとも混練機の運転制御パラメータを含む相関パラメータの計測値を取得する。
機械学習部113は、運転制御パラメータと相関パラメータとを含んで構成されるゴム温度パラメータ算出モデル式を変形した式であって、複数の運転制御パラメータのうちの所定の運転制御パラメータを算出する運転制御パラメータ算出モデル式に計測値を代入する。 機械学習部113は、機械学習アルゴリズムを用いて運転制御パラメータと相関パラメータとの係数と定数とを算出する。
【0027】
運転制御パラメータ算出部114は、機械学習アルゴリズムを用いて算出した係数と定数とにより特定される運転制御パラメータ算出式を用いて、ゴム温度パラメータを所定の値に制御する場合の所定の運転制御パラメータを算出する。
なお、本実施形態において所定の運転制御パラメータは混練機2がゴム材を混練する混練用ロータ20,21の単位時間当たり回転数である。ゴム温度パラメータを所定の値に制御する場合の所定の運転制御パラメータは、冷却水入口温度やラム圧力の少なくとも一方または両方であってもよいし、それら3つのパラメータ全てであってもよい。なお冷却水は、ゴム材を直接冷却する水ではなく、混練室、ロータ、ラムを冷却する(管に通水し熱交換を行う)ことでゴム材を冷却するための媒体である。
運転制御パラメータ算出部114は、混練用ロータ20,21の単位時間当たり回転数の算出モデル式を用いて、ゴム温度パラメータを所定の値に制御する場合の混練用ロータ20,21の単位時間当たり回転数を算出する。ゴム温度パラメータは、本実施形態においては所定時間tにおけるゴム材の温度変化Tの割合を示す。
【0028】
(第一の実施形態)
図5は第一の実施形態による混練機制御装置の処理フローを示す図である。
次に第一の実施形態による混練機制御装置の処理フローについて説明する。
混練機制御装置1の計測値取得部112は、混練機2でゴム材を混練する制御をしている間、混練機2から各種計測値を取得する(ステップS101)。当該計測値は、混練機2が混練するゴム材の温度に関係するゴム温度パラメータの計測値と、その他の運転制御パラメータや他の取得パラメータの計測値である。運転制御パラメータは混練機2を動作させるための混練機2への入力値である。なおゴム材には、ゴム原料、シリカ、カーボン、カップリング剤などが含まれる。
【0029】
運転制御パラメータは、具体的には、混練用ロータ20,21の単位時間当たりの回転数、混練機2に入力される瞬時電力、現時点で混練機2に入力された積算電力、ラム圧力、ラム14の位置(基準位置からの移動量であるラムリフト量)、冷却水入口温度、冷却水流量などである。またその他の取得パラメータは、ゴム材に含まれる各材料品種、混練機2においてゴム材を混練する動作形態、混練室12の容積に対するゴム材の容積率などが含まれる。これらの運転制御パラメータや取得パラメータの内の一部のパラメータの値は、混練機2から入力されなくとも混練機制御装置1の記憶部で予め記憶していてもよい。
【0030】
機械学習部113は計測値取得部112の取得した計測値のうちのゴム材の温度に基づいて、所定時間tにおけるゴム材の温度の温度変化Tの割合(T÷t)を算出する(ステップS102)。ゴム材の温度の所定時間tにおける温度変化Tの割合(T÷t)はゴム温度パラメータの一態様である。ゴム材の温度の所定時間tにおける温度変化Tの割合(T÷t)を以下、ゴム温度勾配とも呼ぶ。機械学習部113はこのゴム温度勾配の値の変動に相関の高い相関パラメータを、運転制御パラメータやその他の取得パラメータの中から相関解析により特定する。相関パラメータに含まれる運転制御パラメータとしては、少なくとも混練用ロータ20,21の単位時間当たり回転数は含まれる。相関解析の手法は公知の技術であればどのような手法を用いてもよい。機械学習部113は混練機2のID(識別情報)や、ゴム材を特定するゴム材IDと、混練機のゴム材を混練する際の動作形態を示す動作形態IDの組み合わせ毎に、ゴム温度勾配の値の変動に相関の高い相関パラメータを相関解析により特定する(ステップS103)。
【0031】
なお混練機2はゴム材の混練動作において複数の異なる動作形態によりゴム材を混練する。ゴム材を混練する動作形態とは、ゴム材に含まれるゴム原料やシリカやその他の添加剤の混練機2への投入タイミング、混練用ロータ20,21の単位時間当たり回転数、混練時間、ラム14の位置の上げ下げタイミングなどの組み合わせで特定される。1つのゴム材の混練完了までに、動作形態1,動作形態2,・・・動作形態nなどの複数の動作形態により混練機2の制御を行うこともある。本実施形態において混練機制御装置1は動作形態IDによって一つの動作形態または複数の動作形態の組み合わせによる混練機2の制御を特定することができる。混練機2のIDは、混練機2のメーカ、型式などに基づいて混練機2を一意に特定するIDである。
【0032】
機械学習部113は、ゴム材のID、混練機2のID、動作形態のIDの組み合わせ毎に、ゴム材の温度変化の割合(ゴム温度勾配)の値に相関の高い相関パラメータを記憶部に記録する(ステップS104)。ゴム温度勾配の値に相関の高い相関パラメータの、ゴム材のID、混練機2のID、動作形態のIDの組み合わせに応じた特定は、運用担当者が計算して行うようにしてもよい。
【0033】
計測値取得部112は、実際のゴム製造過程において、混練機2が現在混練作業を行っているゴム材のID、混練機2のID、動作形態のIDなどのゴム製造態様が特定できる識別情報を取得する。これらの情報は運用担当者によって予め混練機制御装置1の記憶部に記録されていてよい。計測値取得部112は、取得したゴム材のID、混練機2のID、動作形態のIDなどの組み合わせに関連付けられて記憶部で記憶する相関パラメータを特定する(ステップS105)。これにより計測値取得部112は、ゴム材のID、混練機2のID、動作形態のIDに基づく相関パラメータを認識することができる。ステップS105で特定した相関パラメータを含んで構成されるゴム温度パラメータ算出モデル式(1)は、
【0034】
【数1】
【0035】
により表される。この式(1)で示すゴム温度勾配は、当該式(1)を構成する相関パラメータのうち主に運転制御パラメータに基づいて変動する。具体的にはゴム温度勾配の変動に大きく寄与する相関パラメータは、運転制御パラメータのうち、混練用ロータ20,21の単位時間当たり回転数の変動である。したがって混練機制御装置1はゴム温度パラメータ算出モデル式(1)を変形した混練用ロータ回転数算出モデル式(2)を用いて処理を行う。
【0036】
【数2】
【0037】
具体的には混練機制御装置1の機械学習部113がステップS105で特定された各相関パラメータにより構成される混練用ロータ回転数算出モデル式(2)を、モデル式(1)を変形して特定する(ステップS106)。機械学習部113は、そのモデル式(2)を構成する混練用ロータ20,21の単位時間当たり回転数や、それ以外の運転制御パラメータを含む各相関パラメータと、ゴム温度勾配の計測値とを混練機2に取り付けられたセンサから得た信号に基づいて特定する(ステップS107)。機械学習部113はそれらステップS107で特定した各パラメータの計測値と、モデル式(2)とを用いた回帰解析を用いて、混練用ロータ20,21の単位時間当たり回転数(目的変数)と、ゴム温度勾配や当該ゴム温度勾配の値の変動に相関の高い相関パラメータ(説明変数)との関係に基づく各パラメータの係数と定数とを算出する(ステップS108)。これにより、モデル式(2)で示す係数1,2,3,4,・・・と、定数とが算出され、機械学習部113は、ゴム温度勾配が所望のゴム温度勾配となる場合の混練用ロータ20,21の単位時間当たり回転数を決定する混練用ロータ回転数算出式を特定する(ステップS109)。なお機械学習部113は回帰解析以外の機械学習手法を用いてモデル式(2)を構成する各パラメータの係数と定数とを算出するようにしてもよい。
【0038】
機械学習部113はゴム材のID、混練機2のID、動作形態のIDなどの組み合わせ毎に、式(2)を構成する各パラメータの係数と定数とを算出する処理を繰り返す。機械学習部113はゴム材のID、混練機2のID、動作形態のIDなどの組み合わせ毎に算出した混練用ロータ回転数算出式を構成する各パラメータの係数と定数とを、ゴム材のID、混練機2のID、動作形態のIDなどの組み合わせを示すIDに対応付けて記憶部に記録する(ステップS110)。
【0039】
機械学習部113は機械学習を停止するかを判定する(ステップS111)。機械学習部113は機械学習を停止するまで、ステップS107からの処理を繰り返し、混練用ロータ20,21の単位時間当たり回転数やそれ以外の運転制御パラメータを含む各相関パラメータ、ゴム温度勾配の計測値を取得する。そして、機械学習部113は回帰解析等の機会学習手法を用いて式(2)を構成する各パラメータの係数と定数とを算出する処理を繰り返す。
【0040】
次に、現在混練機2が混練作業を行っているゴム材の温度の所定時間tにおける温度変化Tの割合T÷t(ゴム温度勾配)が所望の値となるよう制御したい場合には、運用担当者はそのゴム温度勾配(T÷t)の値を混練機制御装置1へ入力する。これにより運用担当者は混練用ロータ20,21の単位時間当たり回転数の算出を指示する。なおこの算出の指示は予めプログラムされており、運転制御パラメータ算出部114が自動的に算出してもよい。上述の運用担当者によるゴム温度勾配(T÷t)の値の混練機制御装置1へ入力を行う代わりに、例えば、運用担当者が目標のゴム温度と目標温度到達までの時間を混練機制御装置1へ入力することで、混練機制御装置1が自動で目標のゴム温度勾配を算出するようにしてもよい。
【0041】
運転制御パラメータ算出部114は、混練用ロータ20,21の単位時間当たり回転数の算出指示を受け付ける(ステップS112)。運転制御パラメータ算出部114は、現在、混練機2が行っている作業におけるゴム材のID、混練機2のID、動作形態のIDを記憶部等から取得する(ステップS113)。運転制御パラメータ算出部114はゴム材のID、混練機2のID、動作形態のIDの組み合わせに対応付けられて記憶部に記録されている式(2)を構成する各パラメータの係数と定数とを取得する(ステップS114)。運転制御パラメータ算出部114は取得した各パラメータの係数と定数とにより特定される混練用ロータ回転数算出式に、ステップS112の回転数の算出指示において入力されたゴム温度勾配(T÷t)の値や、その他のパラメータについての現在の混練機2の混練動作における計測値や算出値(ゴム温度、瞬時電力、積算電力・・・など)を代入する。これにより運転制御パラメータ算出部114は、ゴム材の温度の所定時間tにおける温度変化Tの割合T÷t(ゴム温度勾配)が所望の値となる場合の混練用ロータ20,21の単位時間当たり回転数を算出する(ステップS115)。
【0042】
運転制御パラメータ算出部114は算出した混練用ロータ20,21の単位時間当たり回転数を用いて混練機2を制御する(ステップS116)。これにより混練機2は混練機制御装置1の制御に基づき混練用ロータ20,21の単位時間当たり回転数を調整し、ゴム材の混練動作を行う。混練機2において混練されているゴム材の温度勾配が、運用担当者所望の値となる。
【0043】
上述の混練機制御装置1の処理によれば、事前の機械学習によりゴム温度勾配が所望の値となる場合の混練用ロータ20,21の単位時間当たり回転数を算出できる混練用ロータ回転数算出モデル式(2)を特定しておくことができる。したがって混練機制御装置1は、ゴム温度勾配の所望の値に応じた混練用ロータ20,21の単位時間当たり回転数を直ちに算出し、混練機2の混練用ロータ20,21の単位時間当たり回転数がその値となるよう制御することができる。
【0044】
また上述の処理によれば、ゴム材のID、混練機2のID、動作形態のIDなどの組み合わせ毎に機械学習により算出された混練用ロータ回転数算出モデル式(2)を特定することができる。これにより混練機制御装置1は混練作業を行っているゴム材のID、混練機2の種別、混練機2の動作形態に応じた場合の、混練用ロータ20,21の単位時間当たり回転数を直ちに算出することができる。
【0045】
(第二の実施形態)
第二の実施形態において、運転制御パラメータ算出部114は、機械学習アルゴリズムを用いて算出した係数と定数とにより特定される運転制御パラメータ算出式を用いて、ゴム温度パラメータを所定の値に制御する冷却水入口温度、冷却水量、ラム圧力、ラム位置の少なくとも一つを算出する。冷却水入口温度、冷却水量、ラム圧力、ラム位置は所定の運転制御パラメータの一つである。
【0046】
図6は第二の実施形態による混練機制御装置の処理フローを示す図である。
混練機制御装置1の計測値取得部112は、混練機2でゴム材を混練する制御をしている間、混練機2から各種計測値を取得する(ステップS201)。当該計測値は、混練機2が混練するゴム材の温度に関係するゴム温度パラメータの計測値と、その他の運転制御パラメータや他の取得パラメータの計測値である。運転制御パラメータは混練機2を動作させるための混練機2への入力値である。なおゴム材には、ゴム原料、シリカ、カーボン、カップリング剤などが含まれる。
【0047】
運転制御パラメータは、具体的には、混練用ロータ20,21の単位時間当たりの回転数、混練機2に入力される瞬時電力、現時点で混練機2に入力された積算電力、ラム圧力、ラム14の位置、第一配管26〜第三配管28の何れかを流れる冷却水の冷却水入口温度(冷却水温度の一例)、冷却水流量などである。なお冷却水入口温度と出口温度の温度差や、冷却水出口温度を、冷却水温度と定義してもよい。またその他の取得パラメータは、ゴム材に含まれる各材料品種、混練機2においてゴム材を混練する動作形態、混練室12の容積に対するゴム材の容積率などが含まれる。これらの運転制御パラメータや取得パラメータの内の一部のパラメータの値は、混練機2から入力されなくとも混練機制御装置1の記憶部で予め記憶していてもよい。
【0048】
機械学習部113は計測値取得部112の取得した計測値のうちのゴム材の温度に基づいて、所定時間tにおけるゴム材の温度の温度変化Tの割合(T÷t)を算出する(ステップS202)。ゴム材の温度の所定時間tにおける温度変化Tの割合(T÷t)はゴム温度パラメータの一態様である。ゴム材の温度の所定時間tにおける温度変化Tの割合(T÷t)を以下、ゴム温度勾配とも呼ぶ。機械学習部113はこのゴム温度勾配の値の変動に相関の高い相関パラメータを、運転制御パラメータやその他の取得パラメータの中から相関解析により特定する。相関パラメータに含まれる運転制御パラメータとしては、少なくとも混練用ロータ20,21の単位時間当たり回転数、混練開始からのラム圧力の時間推移、混練制御開始からの冷却水入口温度の時間推移、混練制御開始からの冷却水量の時間推移、混練制御開始からのラム位置の時間推移の何れか一つは含まれる。相関解析の手法は公知の技術であればどのような手法を用いてもよい。機械学習部113は混練機2のID(識別情報)や、ゴム材を特定するゴム材IDと、混練機のゴム材を混練する際の動作形態を示す動作形態IDの組み合わせ毎に、ゴム温度勾配の値の変動に相関の高い相関パラメータを相関解析により特定する(ステップS203)。
【0049】
なお混練機2はゴム材の混練動作において複数の異なる動作形態によりゴム材を混練する。ゴム材を混練する動作形態とは、ゴム材に含まれるゴム原料やシリカやその他の添加剤の混練機2への投入タイミング、混練用ロータ20,21の単位時間当たり回転数、混練開始からのラム圧力の時間推移、混練制御開始からの冷却水入口温度の時間推移、、混練制御開始からの冷却水量の時間推移、混練時間、ラム14の位置の上げ下げタイミング(混練制御開始からのラム位置の時間推移)などの組み合わせで特定される。1つのゴム材の混練完了までに、動作形態1,動作形態2,・・・動作形態nなどの複数の動作形態により混練機2の制御を行うこともある。本実施形態において混練機制御装置1は動作形態IDによって一つの動作形態または複数の動作形態の組み合わせによる混練機2の制御を特定することができる。混練機2のIDは、混練機2のメーカ、型式などに基づいて混練機2を一意に特定するIDである。
【0050】
機械学習部113は、ゴム材のID、混練機2のID、動作形態のIDの組み合わせ毎に、ゴム材の温度変化の割合(ゴム温度勾配)の値に相関の高い相関パラメータを記憶部に記録する(ステップS204)。ゴム温度勾配の値に相関の高い相関パラメータの、ゴム材のID、混練機2のID、動作形態のIDの組み合わせに応じた特定は、運用担当者が計算して行うようにしてもよい。
【0051】
計測値取得部112は、実際のゴム製造過程において、混練機2が現在混練作業を行っているゴム材のID、混練機2のID、動作形態のIDなどのゴム製造態様が特定できる識別情報を取得する。これらの情報は運用担当者によって予め混練機制御装置1の記憶部に記録されていてよい。計測値取得部112は、取得したゴム材のID、混練機2のID、動作形態のIDなどの組み合わせに関連付けられて記憶部で記憶する相関パラメータを特定する(ステップS205)。これにより計測値取得部112は、ゴム材のID、混練機2のID、動作形態のIDに基づく相関パラメータを認識することができる。ステップS205で特定した相関パラメータを含んで構成されるゴム温度パラメータ算出モデル式(1)は、
【0052】
【数3】
【0053】
により表される。この式(1)で示すゴム温度勾配は、当該式(1)を構成する相関パラメータのうち主に運転制御パラメータに基づいて変動する。具体的にはゴム温度勾配の変動に大きく寄与する相関パラメータは、運転制御パラメータのうち、混練用ロータ20,21の単位時間当たり回転数の変動である場合もあるし、冷却水入口温度、冷却水量、ラム圧力、ラム位置の各変動の場合もある。以下ゴム温度勾配の変動に大きく寄与する相関パラメータが冷却水入口温度、冷却水量、ラム圧力、ラム位置の少なくとも一つである場合について説明する。混練機制御装置1はゴム温度パラメータ算出モデル式(1)を変形した冷却水入口温度(またはラム圧力)算出モデル式(3)を用いて処理を行う。
【0054】
【数4】
【0055】
具体的には混練機制御装置1の機械学習部113がステップS205で特定された各相関パラメータにより構成される冷却水入口温度(または冷却水量、ラム圧力、ラム位置)算出モデル式(3)を、モデル式(1)を変形して特定する(ステップS206)。機械学習部113は、そのモデル式(3)を構成する冷却水入口温度(または冷却水量、ラム圧力、ラム位置)や、それ以外の運転制御パラメータを含む各相関パラメータと、ゴム温度勾配の計測値とを混練機2に取り付けられたセンサから得た信号に基づいて特定する(ステップS207)。機械学習部113はそれらステップS207で特定した各パラメータの計測値と、モデル式(3)とを用いた回帰解析を用いて、目的変数となる冷却水入口温度(または冷却水量、ラム圧力、ラム位置)と、説明変数となるゴム温度勾配や当該ゴム温度勾配の値の変動に相関の高い相関パラメータとの関係に基づく各パラメータの係数と定数とを算出する(ステップS208)。これにより、モデル式(3)で示す係数1,2,3,4,・・・と、定数とが算出され、機械学習部113は、ゴム温度勾配が所望のゴム温度勾配となる場合の冷却水入口温度(または冷却水量、ラム圧力、ラム位置)の時間推移を決定する冷却水入口温度(または冷却水量、ラム圧力、ラム位置)算出式を特定する(ステップS209)。なお機械学習部113は回帰解析以外の機械学習手法を用いてモデル式(3)を構成する各パラメータの係数と定数とを算出するようにしてもよい。
【0056】
機械学習部113はゴム材のID、混練機2のID、動作形態のIDなどの組み合わせ毎に、式(3)を構成する各パラメータの係数と定数とを算出する処理を繰り返す。機械学習部113はゴム材のID、混練機2のID、動作形態のIDなどの組み合わせ毎に算出した冷却水入口温度(または冷却水量、ラム圧力、ラム位置)算出式を構成する各パラメータの係数と定数とを、ゴム材のID、混練機2のID、動作形態のIDなどの組み合わせを示すIDに対応付けて記憶部に記録する(ステップS210)。
【0057】
機械学習部113は機械学習を停止するかを判定する(ステップS211)。機械学習部113は機械学習を停止するまで、ステップS207からの処理を繰り返し、冷却水入口温度(または冷却水量、ラム圧力、ラム位置)やそれ以外の運転制御パラメータを含む各相関パラメータ、ゴム温度勾配の計測値を取得する。そして、機械学習部113は回帰解析等の機会学習手法を用いて式(3)を構成する各パラメータの係数と定数とを算出する処理を繰り返す。
【0058】
次に、現在混練機2が混練作業を行っているゴム材の温度の所定時間tにおける温度変化Tの割合T÷t(ゴム温度勾配)が所望の値となるよう制御したい場合には、運用担当者はそのゴム温度勾配(T÷t)の値を混練機制御装置1へ入力する。これにより運用担当者は冷却水入口温度(または冷却水量、ラム圧力、ラム位置)の算出を指示する。なおこの算出の指示は予めプログラムされており、運転制御パラメータ算出部114が自動的に算出してもよい。上述の運用担当者によるゴム温度勾配(T÷t)の値の混練機制御装置1へ入力を行う代わりに、例えば、運用担当者が目標のゴム温度と目標温度到達までの時間を混練機制御装置1へ入力することで、混練機制御装置1が自動で目標のゴム温度勾配を算出するようにしてもよい。
【0059】
運転制御パラメータ算出部114は、冷却水入口温度(または冷却水量、ラム圧力、ラム位置)の算出指示を受け付ける(ステップS212)。運転制御パラメータ算出部114は、現在、混練機2が行っている作業におけるゴム材のID、混練機2のID、動作形態のIDを記憶部等から取得する(ステップS213)。運転制御パラメータ算出部114はゴム材のID、混練機2のID、動作形態のIDの組み合わせに対応付けられて記憶部に記録されている式(2)を構成する各パラメータの係数と定数とを取得する(ステップS214)。運転制御パラメータ算出部114は取得した各パラメータの係数と定数とにより特定される冷却水入口温度(または冷却水量、ラム圧力、ラム位置)算出式に、ステップS212の算出指示において入力されたゴム温度勾配(T÷t)の値や、その他のパラメータについての現在の混練機2の混練動作における計測値や算出値(混練用ロータ20,21の単位時間当たり回転数、ゴム温度、瞬時電力、積算電力・・・など)を代入する。これにより運転制御パラメータ算出部114は、ゴム材の温度の所定時間tにおける温度変化Tの割合T÷t(ゴム温度勾配)が所望の値となる場合の冷却水入口温度(または冷却水量、ラム圧力、ラム位置)を算出する(ステップS215)。運転制御パラメータ算出部114は冷却水入口温度、冷却水量、ラム圧力、ラム位置の全て、またはそのうちの複数を算出してもよい。
【0060】
運転制御パラメータ算出部114は算出した冷却水入口温度(または冷却水量、ラム圧力、ラム位置)を用いて混練機2を制御する(ステップS216)。これにより混練機2は混練機制御装置1の制御に基づき冷却水入口温度(または冷却水量、ラム圧力、ラム位置)を調整し、ゴム材の混練動作を行う。混練機2において混練されているゴム材の温度勾配が、運用担当者所望の値となる。
【0061】
上述の混練機制御装置1の処理によれば、事前の機械学習によりゴム温度勾配が所望の値となる場合の冷却水入口温度(または冷却水量、ラム圧力、ラム位置)を算出できる冷却水入口温度(または冷却水量、ラム圧力、ラム位置)算出モデル式(3)を特定しておくことができる。したがって混練機制御装置1は、ゴム温度勾配の所望の値に応じた冷却水入口温度(または冷却水量、ラム圧力、ラム位置)を直ちに算出し、混練機2の冷却水入口温度、または冷却水量、またはラム圧力、またはラム位置、またはその全てや複数がその算出した値となるよう制御することができる。
【0062】
また上述の処理によれば、ゴム材のID、混練機2のID、動作形態のIDなどの組み合わせ毎に機械学習により算出された冷却水入口温度(または冷却水量、ラム圧力、ラム位置)算出モデル式(3)を特定することができる。これにより混練機制御装置1は混練作業を行っているゴム材のID、混練機2の種別、混練機2の動作形態に応じた場合の、冷却水入口温度(または冷却水量、ラム圧力、ラム位置)を直ちに算出することができる。またそのゴム温度制御の為の混練機1の運転制御パラメータである冷却水入口温度や冷却水量、ラム圧力、ラム位置を容易に算出することができる。
【0063】
(第1実施例)
図7は第1実施例による混練機制御装置の動作結果を示す図である。
図7において実線Aは目標のゴム温度を示し、破線Bは第一の実施形態による混練機制御装置1の制御結果であるゴム温度を示している。
この図が示すように、第一の実施形態による混練機制御装置1の制御によれば、時刻t1までのゴム温度の上昇区間α、時刻t1から時刻t2までの一定区間β、時刻t2以降の一定区間γにおいて、実際に混練中のゴム温度の計測値が目標温度に追随することができる。特に、一定区間β、一定区間γにおいては許容誤差±3℃の範囲にゴム温度を目標温度に近づけることができた。
【0064】
上述の混練機制御装置1は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、混練機制御装置1に上述した各処理を行わせるためのプログラムは、当該混練機制御装置1のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムを混練機制御装置1のコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0065】
また、上記プログラムは、前述した各処理部の機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、ゴム材の混練機を制御する混練機制御装置、混練機制御方法、プログラムに関する。
【符号の説明】
【0067】
1・・・混練機制御装置
2・・・混練機
111・・・制御部
112・・・計測値取得部
113・・・機械学習部
114・・・運転制御パラメータ算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7