(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記欠陥低減領域は、分割された1cm×1cm領域において、幅が0.2μm〜3μmで、深さが0.3μm〜5μmで、長さがそれぞれ2μm以上3μm未満、3μm以上5μm未満、5μm以上10μm未満、10μm以上である第1溝、第2溝、第3溝および第4溝が、それぞれ10個以下、5個以下、3個以下および0個を満足する領域のことを意味する、請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
前記欠陥低減領域は、分割された1cm×1cm領域において、幅が0.15μm〜3μmで、深さが0.2μm〜5μmで、長さがそれぞれ2μm以上3μm未満、3μm以上5μm未満、5μm以上10μm未満、10μm以上である第1溝、第2溝、第3溝および第4溝が、それぞれ10個以下、5個以下、3個以下および0個を満足する領域のことを意味する、請求項2に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
前記欠陥低減領域は、分割された1cm×1cm領域において、前記第1溝の数が5個以下で、前記第2溝の数が3個以下で、前記第3溝の数が1個以下である、請求項3に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
前記欠陥低減領域は、分割された1cm×1cm領域において、前記第1溝、前記第2溝、および前記第3溝の数がそれぞれ0個である、請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
前記前駆体が、芳香族ジアミン化合物と、芳香族ジアンヒドリド化合物と、ジカルボニル化合物とを重合して形成された重合体を含む、請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
前記研磨段階が、平均径30nm〜100nmである研磨粒子および研磨液を含むスラリーを用いて前記注型体の表面を研磨する、請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施形態の説明において、各フィルム、ウィンドウ、パネルまたは層などが、各フィルム、ウィンドウ、パネルまたは層などの「上(on)」または「下(under)」に形成されるものとして記載される場合において、「上(on)」と「下(under)」は、「直接(directly)」または「他の構成要素を介して(indirectly)」形成されるものをすべて含む。また、各構成要素の上/下に対する基準は、図面に基づいて説明する。図面における各構成要素の大きさは、説明のために誇張されることがあり、実際に適用される大きさを意味するものではない。
【0014】
以下、実施形態により本発明を詳細に説明する。実施形態は、発明の要旨を変更しない限り、様々な形態に変形され得る。
【0015】
本明細書において「含む」ということは、特別な記載がない限り、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0016】
また、本明細書に記載された構成成分の量、反応条件などを表すすべての数字および表現は、特別な記載がない限り、すべての場合に「約」という用語により修飾されるものと理解するべきである。
【0017】
本明細書において、第1、第2などの用語は様々な構成要素を説明するために用いられるものであり、前記構成要素は、前記用語によって限定されてはならない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素と区別する目的にのみ用いられる。
【0018】
実施形態は、無色透明でありながらも機械的物性と光学的物性に優れ、表面粗度の低いポリイミドフィルム、これを含むカバーウィンドウ、これを含むディスプレイ装置およびその製造方法を提供する。
【0019】
一実施形態によるポリイミドフィルムの製造方法は、注型体の表面を研磨する段階と、前記注型体の研磨された表面に前駆体をキャスティングし、乾燥させ、ゲルシートを製造する段階と、前記ゲルシートを熱処理してポリイミドフィルムを製造する段階とを含む。
【0020】
前記注型体は、ポリアミック酸またはポリアミドイミド重合体などの前駆体をキャスティングする。
前記注型体はキャスティングベルトまたはキャスティングロールなどであり得る。具体的に、前記注型体はキャスティングベルトであり得るが、これに限定されるものではない。
【0021】
前記キャスティングベルトは、ステンレス鋼などのような柔軟な金属で形成され得るが、これに限定されるものではない。
前記注型体のキャスティング面は研磨される。前記注型体は周期的に研磨され得る。
【0022】
図1に示すように、前記注型体30は、研磨体50によって研磨され得る。前記研磨体50はパッド状を有し、自主的に回転することができる。前記研磨体50の回転速度は、約10rpm〜約3000rpmであり得る。具体的には、前記研磨体50の回転速度は、約10rpm〜約2000rpm、約10rpm〜約1500rpm、約10rpm〜約1000rpm、約10rpm〜約500rpm、約10rpm〜約300rpmの範囲であり得るが、これらに限定されるものではない。前記研磨体50の回転速度は、研磨効率、注型体の研磨面の粗さなどを考慮して適切に調節され得る。
【0023】
一実施形態において、前記研磨体50は、パッド状の多孔質ポリマーまたはパッド状の多孔質無機物であり得るが、これらに限定されるものではない。この際、前記「パッド状」とは、所定の厚さを有する板状のことを意味する。前記研磨体50は円板状であり得るが、これに限定されるものではない。
具体的に、前記研磨体50は、パッド状の多孔質ポリウレタン、パッド状の多孔質金属体、またはパッド状の多孔質石板であり得る。
【0024】
前記研磨体50の平均気孔サイズは、約10μm〜約100μmであり得るが、これに限定されるものではない。前記研磨体50の気孔サイズが小さくて均一であるほど、前記注型体30の研磨面は均一に研磨され得る。
例えば、前記研磨体50としてローム・アンド・ハース社のIC1000などが使用され得る。前記研磨体50は、適切な直径を有する円板状に切断して使用され得る。
【0025】
前記注型体30には、研磨スラリー噴射部60を介してスラリーが噴射される。前記注型体の表面を研磨する段階で、前記スラリーは研磨粒子、研磨液またはこれらのいずれも含むことができる。
【0026】
前記研磨液は、水または酸化剤を含み得る。前記酸化剤は、過酸化水素などであり得るが、これに限定されるものではない。また、前記研磨液は、酸または塩基によってpHが調節され得る。前記研磨液が酸化剤を含む場合、前記酸化剤の含有量は、約0.5重量%〜約10重量%、または約1重量%〜約7重量%であり得る。また、前記研磨液のpH範囲は1〜4または9〜11であり得る。具体的に、前記研磨液のpH範囲は1〜3.5、または1.5〜3.0であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0027】
前記研磨粒子は、シリカ、セリア、アルミナ、チタニア、炭素粒子、ダイヤモンド粒子、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1種以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0028】
前記研磨粒子の平均径は30nm〜100nmであり得る。また、前記研磨粒子の平均径は30nm〜80nm、30nm〜70nmまたは30nm〜50nmであり得るが、これらに限定されるものではない。また、前記研磨粒子は単分散であり得る。前記研磨粒子の直径が小さく、単分散であるほど、前記注型体30の研磨面が均一に研磨され得る。
【0029】
前記研磨粒子の多分散指数(PDI、polydispersity index)は0.05以下であり得る。また、前記研磨粒子の多分散指数は0.005〜0.05であり得るが、これに限定されるものではない。ここで、前記多分散指数はマルボン(Malvern)社のゼータサイザー(zetasizer)により得ることができ、粒径分布がガウス分布を有するとき、PDIは(粒径分布幅/平均粒径)^2であり得る。単分散に近いほどPDIは低い値を有する。
【0030】
前記スラリーが研磨粒子を含む場合、前記研磨粒子の含有量は、前記スラリーの総重量を基準に5重量%〜30重量%である。具体的に、前記研磨粒子の含有量は、前記スラリーの総重量を基準に5重量%〜20重量%、5重量%〜15重量%であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0031】
前記注型体30が研磨体50によって研磨されるとき、研磨体の研磨圧力は1psi〜10psi、1psi〜7psi、1psi〜5psi、または2psi〜5psiであり得るが、これらに限定されるものではない。
【0032】
前記注型体30が研磨体50によって研磨される時間は、1分〜30分である。具体的に、前記研磨時間は1分〜20分、または3分〜10分であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0033】
また、前記注型体30が研磨された後、洗浄液噴射部70を介して噴射される洗浄液により、前記研磨面が洗浄され得る。前記洗浄液として水が使用され得るが、これに限定されるものではない。
【0034】
前記研磨体50および前記スラリーが適切に使用され、前記注型体30の研磨面が均一に研磨される。前記注型体30が洗浄された後、前記注型体30の研磨された表面は3D顕微鏡などにより検査され、スクラッチなどの溝がなく、適切な粗度になるまで研磨を行う。つまり、最終的に研磨された注型体30の表面は下記の条件を満たす。
【0035】
図2および
図3に示すように、前記注型体30の研磨された表面には、スクラッチなどの溝31が形成され得る。前記溝31は、ポリイミドフィルムの製造過程においてポリイミドフィルムの機械的、光学的特性に影響を与え得る。具体的に、前記ポリイミドフィルムの機械的、光学的特性に影響を与え得る溝は、幅(W)、深さ(D)および長さ(L)に応じて、下記のように定義され得る。
【0036】
第1溝は、幅が0.3μm〜3μmで、深さが0.5μm〜5μmで、長さが2μm以上3μm未満である。第2溝は、幅が0.3μm〜3μmで、深さが0.5μm〜5μmで、長さが3μm以上5μm未満である。第3溝は、幅が0.3μm〜3μmで、深さが0.5μm〜5μmで、長さが5μm以上10μm未満である。第4溝は、幅が0.3μm〜3μmで、深さが0.5μm〜5μmで、長さが10μm以上である。具体的に、第4溝の長さは10μm〜100000μmである。
【0037】
または、第1溝は、幅が0.2μm〜3μmで、深さが0.3μm〜5μmで、長さが2μm以上3μm未満であり得る。第2溝は、幅が0.2μm〜3μmで、深さが0.3μm〜5μm、長さが3μm以上5μm未満であり得る。第3溝は、幅が0.2μm〜3μmで、深さが0.3μm〜5μmで、長さが5μm以上10μm未満であり得る。第4溝は、幅が0.2μm〜3μmで、深さが0.3μm〜5μmで、長さが10μm以上であり得る。
【0038】
または、第1溝は、幅が0.15μm〜3μmで、深さが0.2μm〜5μmで、長さが2μm以上3μm未満であり得る。第2溝は、幅が0.15μm〜3μmで、深さが0.2μm〜5μmで、長さが3μm以上5μm未満であり得る。第3溝は、幅が0.15μm〜3μmで、深さが0.2μm〜5μmで、長さが5μm以上10μm未満であり得る。第4溝は、幅が0.15μm〜3μmで、深さが0.2μm〜5μmで、長さが10μm以上であり得る。
【0039】
前記注型体の研磨された表面は、1cm×1cmに分割され得る。それぞれの分割された研磨された注型体の表面において下記条件を満たす場合、欠陥(defect)低減領域として定義され得る。
【0040】
前記欠陥低減領域は、前記研磨された注型体の表面を1cm×1cmに分割する場合、前記第1溝の数が10個以下、前記第2溝の数が5個以下、前記第3溝の数が3個以下、第4溝の数が0個の領域として定義され得る。
【0041】
つまり、前記欠陥低減領域は、分割された1cm×1cmの領域において、幅が0.3μm〜3μmであり、深さが0.5μm〜5μmであり、長さがそれぞれ2μm以上3μm未満、3μm以上5μm未満、5μm以上10μm未満、10μm以上である、第1溝、第2溝、第3溝および第4溝がそれぞれ10個以下、5個以下、3個以下および0個を満足する領域のことを意味する。
【0042】
または、前記欠陥低減領域は、分割された1cm×1cmの領域において、幅が0.2μm〜3μmであり、深さが0.3μm〜5μmであり、長さがそれぞれ2μm以上3μm未満、3μm以上5μm未満、5μm以上10μm未満、10μm以上である、第1溝、第2溝、第3溝および第4溝がそれぞれ10個以下、5個以下、3個以下および0個を満足する領域のことを意味し得る。
【0043】
または、前記欠陥低減領域は、分割された1cm×1cmの領域において、幅が0.15μm〜3μmであり、深さが0.2μm〜5μmであり、長さがそれぞれ2μm以上3μm未満、3μm以上5μm未満、5μm以上10μm未満、10μm以上である、第1溝、第2溝、第3溝および第4溝がそれぞれ10個以下、5個以下、3個以下および0個を満足する領域を意味し得る。
【0044】
また、前記欠陥低減領域は、前記研磨された注型体の表面を1cm×1cmに分割する場合、前記第1溝の数が5個以下、前記第2溝の数が3個以下、前記第3溝の数が1個以下、前記第4溝の数が0個である領域として定義され得る。
【0045】
より具体的に、前記欠陥低減領域は、前記研磨された注型体の表面を1cm×1cmに分割する場合、前記第1溝の数が5個以下、前記第2溝の数が3個以下、第3溝の数が0個、第4溝の数が0個である領域として定義され得る。
【0046】
具体的に、前記欠陥低減領域は、前記研磨された注型体の表面を1cm×1cmに分割する場合、前記第1溝の数が3個以下、前記第2溝の数が3個以下、前記第3溝の数が1個以下、第4溝の数が0個である領域として定義され得る。
【0047】
より具体的に、前記欠陥低減領域は、前記研磨された注型体の表面を1cm×1cmに分割する場合、前記第1溝の数が2個以下、前記第2溝の数が1個以下、第3溝の数が0個、第4溝の数が0個である領域として定義され得る。
【0048】
さらにより具体的に、前記欠陥低減領域は、前記研磨された注型体の表面を1cm×1cmに分割する場合、前記第1溝、前記第2溝、前記第3溝および前記第4溝の数がそれぞれ0個である領域として定義され得る。
【0049】
前記注型体の研磨された表面において、前記前駆体がキャスティングされる面積のうち、前記欠陥低減領域に該当する面積が90%以上であり得る。具体的に、前記注型体の研磨された表面において、前記前駆体がキャスティングされる面積のうち、前記欠陥低減領域に該当する面積が95%以上であり得る。より具体的に、前記注型体の研磨された表面において、前記前駆体がキャスティングされる面積のうち、前記欠陥低減領域に該当する面積が99%以上であり得る。
【0050】
前記注型体の研磨された表面の粗度は、約0.1nm〜160nmであり得る。具体的に、前記注型体の研磨された表面の粗度は、約0.1nm〜60nmであり得る。より具体的に、前記注型体の研磨された表面の粗度は、約0.1nm〜11nmであり得る。さらにより具体的に、前記注型体の研磨された表面の粗度は、約0.1nm〜3nmであり得るが、これに限定されるものではない。ここで、注型体およびフィルムの表面粗度は、二乗平均平方根粗度(root mean square surface roughness)のことを意味する。
【0051】
前記注型体の研磨された表面にキャスティングされるために前駆体が調製される。前記前駆体は、ポリアミック酸またはポリアミドイミド重合体を含むことができる。
例えば、前記前駆体は、ポリアミドイミド重合体溶液であり得る。
【0052】
前記ポリアミドイミド重合体は、前記芳香族ジアミン化合物と前記芳香族ジアンヒドリド化合物との重合から由来のイミド(imide)繰り返し単位と、前記芳香族ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物との重合から由来のアミド(amide)繰り返し単位を含む。
前記ポリアミドイミド重合体から製造されたフィルムは、イミド(imide)繰り返し単位を含むので、広い意味でポリイミドフィルムに該当し得る。
【0053】
具体的に、前記前駆体は、芳香族ジアミン化合物、芳香族ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を重合して形成された重合体を含む。前記ジカルボニル化合物は、第1ジカルボニル化合物および/または第2ジカルボニル化合物を含み得る。例えば、前記ポリアミドイミド重合体は、芳香族ジアミン化合物、芳香族ジアンヒドリド化合物、第1ジカルボニル化合物および第2ジカルボニル化合物を有機溶媒上で重合して得られる。
【0054】
一実施形態による、ポリイミドフィルムの製造方法は、芳香族ジアミン化合物、芳香族ジアンヒドリド化合物、第1ジカルボニル化合物および第2ジカルボニル化合物を有機溶媒上で重合して、第1重合体溶液を得る段階と、前記第1重合体溶液に前記第2ジカルボニル化合物をさらに添加して、粘度が10万cps〜50万cpsである第2重合体溶液を得る段階と、前記第2重合体溶液を押出およびキャスティングした後乾燥し、熱処理する段階とを含むことを特徴とする。
【0055】
前記重合反応において用いられる有機溶媒は、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide、DMF)、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide、DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(N−methyl−2−pyrrolidone、NMP)、m−クレゾール(m−cresol)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)、およびクロロホルムからなる群より選択された1種以上であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0056】
前記第1重合体溶液を得る段階は、前記芳香族ジアミン化合物、前記芳香族ジアンヒドリド化合物、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物を同時または順次重合し得る。
具体的に、前記第1重合体溶液を得る段階は、前記芳香族ジアミン化合物、前記芳香族ジアンヒドリド化合物、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物を同時に重合し得る。
【0057】
また、前記第1重合体溶液を得る段階は、前記芳香族ジアミン化合物および前記芳香族ジアンヒドリド化合物を重合してポリアミック酸溶液を得る段階と、前記ポリアミック酸溶液に前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物を添加して重合する段階とを含み得る。
前記ポリアミック酸溶液は、ポリアミック酸を含む溶液である。
【0058】
これとは別に、前記第1重合体溶液を得る段階は、前記芳香族ジアミン化合物、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物を重合してアミド重合体溶液を得る段階と、前記アミド重合体溶液に前記芳香族ジアンヒドリド化合物を添加して重合する段階とを含み得る。
前記アミド重合体溶液は、アミド繰り返し単位を有する重合体を含む溶液である。
【0059】
前記芳香族ジアミン化合物は、前記芳香族ジアンヒドリド化合物とイミド結合し、前記ジカルボニル化合物とアミド結合して、共重合体を形成する化合物である。
【0060】
一実施形態において、前記芳香族ジアミン化合物として、1種の芳香族ジアミンが使用され得る。単一種類の芳香族ジアミン化合物を用いることにより、前記ポリアミドイミド重合体の化学構造の設計が容易であり得、工程の効率を高め得る。
【0061】
例えば、前記芳香族ジアミン化合物は、下記化学式1で表される2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル(2,2'−Bis(trifluoromethyl)−4,4'−diaminodiphenyl、TFDB)を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0063】
前記芳香族ジアンヒドリド化合物は、複屈折値が低いため、前記ポリイミドフィルムの透過度のような光学的物性の向上に寄与することができる化合物である。
【0064】
一実施形態において、前記芳香族ジアンヒドリド化合物として、1種の芳香族ジアンヒドリドが使用され得る。単一種類の芳香族ジアンヒドリド化合物を使用することにより、前記ポリアミドイミド重合体の化学構造を、所望の物性が実現されるように設計することができ、工程効率を高めることができる。
【0065】
例えば、前記芳香族ジアンヒドリド化合物は、下記化学式2で表される2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(2,2'−Bis−(3、4−Dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6−FDA)を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0067】
前記芳香族ジアミン化合物および前記ジアンヒドリド化合物が重合して、ポリアミック酸を生成することができる。
次いで、前記ポリアミック酸は、脱水反応によりポリイミドに転換され得、前記ポリイミドはイミド(imide)繰り返し単位を含む。
例えば、前記ポリイミドは、下記化学式3で表される化合物を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0068】
[化3]
前記化学式3のnは1〜400の整数である。
【0069】
前記ジカルボニル化合物は、第1ジカルボニル化合物および/または第2ジカルボニル化合物を含むことができる。
【0070】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、芳香族ジカルボニル化合物(aromatic dicarbonyl compound)であり得る。
【0071】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、互いに異なる化合物であり得る。
【0072】
例えば、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物が、互いに異なる芳香族ジカルボニル化合物であり得るが、これに限定されるものではない。
【0073】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物が、それぞれ芳香族ジカルボニル化合物である場合、ベンゼン環を含んでいるので、製造されたポリイミドフィルムの表面硬度および引張強度のような機械的物性を向上させるのに寄与することができる。
【0074】
一実施形態において、前記ジカルボニル化合物として2種の芳香族ジカルボニル化合物が使用され得る。2種の芳香族ジカルボニル化合物を使用することにより、前記ポリアミドイミド重合体の化学構造を、所望の物性が実現されるように設計することができ、工程効率を高めることができる。
【0075】
前記芳香族ジカルボニル化合物は、1,1'−ビフェニル−4,4'−ジカルボニルジクロリド(1,1'−biphenyl−4,4'−dicarbonyl dichloride、BPDC)およびテレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC)のいずれかから選択され得るが、これらに限定されるものではない。
【0076】
例えば、前記第1ジカルボニル化合物は、化学式4で表される1,1'−ビフェニル−4,4'−ジカルボニルジクロリド(1,1'−biphenyl−4,4'−dicarbonyl dichloride、BPDC)を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0078】
また、前記第2ジカルボニル化合物は、化学式5で表されるテレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC)を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0080】
前記第1ジカルボニル化合物として1,1'−ビフェニル−4,4'−ジカルボニルジクロリド(BPDC)、前記第2ジカルボニル化合物としてテレフタロイルクロリド(TPC)が適切に組み合わされて用いられる場合、製造されたポリイミドフィルムは高い耐酸化性を有し得る。
【0081】
また、前記芳香族ジアミン化合物は前記ジカルボニル化合物と反応および結合して化学式6および化学式7で表されるアミド(amide)繰り返し単位を形成することができる。
【0083】
[化7]
前記化学式6のxは1〜400の整数である。
前記化学式7のyは1〜400の整数である。
【0084】
前記第1重合体溶液を得る段階において、さらに触媒を添加し得る。
前記触媒の例として、β-ピコリン(β−picoline)または無水酢酸(acetic anhydride)などが挙げられる。
【0085】
前記触媒をさらに添加することにより、反応速度を速くすることができ、繰り返し単位構造間または繰り返し単位構造内の結合力を向上させる効果がある。
【0086】
前記芳香族ジアミン化合物は、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル(2,2'−Bis(trifluoromethyl)−4,4'−diaminobiphenyl、TFDB)を含み、前記芳香族ジアンヒドリド化合物は、2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(2,2'−Bis−(3,4−Dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6−FDA)を含み、前記第1ジカルボニル化合物は1,1'−ビフェニル−4,4'−ジカルボニルジクロリド(1,1'−biphenyl−4,4'−dicarbonyl dichloride、BPDC)を含み、前記第2ジカルボニル化合物はテレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC)を含み得るが、これらに限定されるものではない。
【0087】
前記芳香族ジアミン化合物は、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニル(2,2'−Bis(trifluoromethyl)−4,4'−diaminobiphenyl、TFDB)であり、前記芳香族ジアンヒドリド化合物は、2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(2,2'−Bis−(3,4−Dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6−FDA)であり、前記第1ジカルボニル化合物は1,1'−ビフェニル−4,4'−ジカルボニルジクロリド(1,1'−biphenyl−4,4'−dicarbonyl dichloride、BPDC)であり、前記第2ジカルボニル化合物はテレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC)であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0088】
一実施形態は、イミド繰り返し単位およびアミド繰り返し単位の含有量を適切に調節することにより、複雑な過程がなくても光学的特性、機械的物性、および柔軟性がバランスよく改善されたポリイミドフィルムが得られることを特徴とする。
【0089】
前記イミド繰り返し単位およびアミド繰り返し単位のそれぞれの含有量は、前記芳香族ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物の投入量で調節され得る。
【0090】
他の実施形態は、第1重合体溶液を得る段階において、過量の芳香族ジアミン化合物に、前記芳香族ジアンヒドリド化合物、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物を投入することを含む。
【0091】
具体的に、前記芳香族ジアンヒドリド化合物、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物の総モルを基準に、前記芳香族ジアンヒドリドを20モル%〜50モル%で含み得るが、これに限定されるものではない。
前記芳香族ジアンヒドリド化合物の含有量が前記範囲であると、ポリイミドフィルムの表面硬度、引張強度などの機械的物性に優れる。
【0092】
また、前記芳香族ジアンヒドリド化合物、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物の総モルを基準に、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物を50モル%〜80モル%で含み得るが、これに限定されるものではない。
前記ジカルボニル化合物の含有量が前記範囲であると、ポリイミドフィルムの透過度、ヘイズなどの光学的物性に優れる。
【0093】
また他の実施形態は、第1重合体溶液を得る段階において、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物の総モルを基準に、前記第1ジカルボニル化合物を50モル%〜70モル%で含み得るが、これに限定されるものではない。
【0094】
前記第1ジカルボニル化合物は、1,1'−ビフェニル−4,4'−ジカルボニルジクロリド(1,1'−biphenyl−4,4'−dicarbonyl dichloride、BPDC)を含み、前記第2ジカルボニル化合物は、テレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC)を含み得る。
前記第1ジカルボニル化合物の含有量が50モル%未満の場合、ポリイミドフィルムの引張強度(modulus)が低下され得、70モル%超過の場合はヘイズなどの光学的物性が低下され得る。
【0095】
好ましくは、第1重合体溶液を得る段階において、i)残りの反応物質と同一モル(mole)以上の過量の芳香族ジアミン化合物、ii)前記芳香族ジアンヒドリド化合物、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物の総モルを基準に、20モル%〜50モル%の芳香族ジアンヒドリド化合物、およびiii)前記芳香族ジアンヒドリド化合物、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物の総モルを基準に、50モル%〜80モル%の前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物を使用して調製することができる。
【0096】
具体的に、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物の総モルを基準に、50モル%〜70モル%の前記第1ジカルボニル化合物(1,1'−ビフェニル−4、4'−ジカルボニルジクロリド(1,1'−biphenyl−4,4'−dicarbonyl dichloride、BPDC))および30モル%〜50モル%の前記第2ジカルボニル化合物(テレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC))を用いて調製することができる。
【0097】
前記第1重合体溶液を得る段階において、イミド繰り返し単位およびアミド繰り返し単位それぞれの含有量を適切に調節することにより、従来のように沈殿、ろ過および乾燥、再溶解などの過程を経なくても、光学的特性、機械的物性および柔軟性がバランスよく改善されたポリイミドフィルムを得ることができる。
【0098】
前記第1重合体溶液を得る段階の後に、前記第1重合体溶液に前記第2ジカルボニル化合物をさらに添加して、粘度が10万cps〜50万cpsである第2重合体溶液を得ることができる。
【0099】
前記第1重合体溶液を得る段階および前記第2重合体溶液を得る段階で添加する第2ジカルボニル化合物の重量比は、90:10〜99:1であり得るが、これに限定されるものではない。
【0100】
また、前記第2重合体溶液を得る段階で添加する第2ジカルボニル化合物は、有機溶媒と混合して5重量%〜20重量%の濃度で調製された第2ジカルボニル化合物溶液として用いられるが、これに限定されるものではない。
これにより、所望の粘度を正確に達成することができる。
【0101】
前記第2重合体溶液の粘度は10万cps〜50万cps、または15万cps〜35万cpsであり得るが、これに限定されるものではない。
前記第2重合体溶液の粘度が前記範囲であると、押出およびキャスティング工程において効率的にポリイミドフィルムが製造され得る。また、製造されたポリイミドフィルムは、向上されたモジュラスなどの機械的物性を有し得る。
【0102】
一実施形態において、第2重合体溶液に含まれている固形分の含有量は10重量%〜20重量%であり得る。具体的に、第2重合体溶液に含まれている固形分の含有量は、12重量%〜18重量%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0103】
前記第2重合体溶液に含まれている固形分の含有量が前記範囲であると、押出およびキャスティング工程において効率的にポリイミドフィルムが製造され得る。また、製造されたポリイミドフィルムは、向上されたモジュラスなどの機械的物性および低い黄色度などの光学的物性を有することができる。
【0104】
前記第2重合体溶液を得る段階の後、前記第2重合体溶液を押出およびキャスティングした後乾燥し、熱処理してポリイミドフィルムを製造することができる。
前記押出およびキャスティング工程の際、前述の有機溶媒が使用され得る。
【0105】
前記第2重合体溶液は押出され、前記注型体の研磨された表面にキャスティングされる。この際、約5m/分〜約15m/分の速度で、また、400μm〜500μmの厚さで前記注型体にキャスティングされ得る。押出およびキャスティング速度が前記範囲内である時、実施形態による製造方法によって製造されたポリイミドフィルムは、向上された光学的特性および機械的特性を有し得る。
【0106】
すなわち、前記第2重合体溶液が前記のような粘度を有すると、前記のような押出速度で押出されキャスティングされることが、向上された光学的特性および機械的特性を有するために有利であり得る。
【0107】
前記第2重合体溶液が注型体にキャスティングされた後、前記第2重合体溶液に含まれている溶媒を、乾燥工程により除去することによって、前記注型体上にゲルシートが形成される。
前記乾燥工程は、約60℃〜約150℃の温度で、約5分〜約60分間行える。
【0108】
その後、前記ゲルシートは、大気雰囲気下で熱処理する段階を経て、実施形態によるポリイミドフィルムが製造され得る。
【0109】
前記熱処理段階は、約60℃〜約470℃の温度で、約5分〜約20分間行える。より詳細に、前記熱処理段階は、入口の温度が約80℃〜約300℃であり、1℃/min〜25℃/minの昇温条件を有するインライン熱処理装置において、約5分〜約15分間行える。
【0110】
前記ポリアミドイミド重合体は高い耐酸化性を有するので、前記熱処理工程の際、大気中に含まれている酸素の影響をほとんど受けない。したがって、実施形態によるポリイミドフィルムは、向上された光学的特性を有し得る。
【0111】
また、従来は、ポリイミドフィルムを製造するにおいて、製膜過程の熱処理の際、窒素ガスのパージにより前記フィルムの黄変を防止して透明性を確保したが、前記実施形態によれば、このような窒素ガスのパージがなくても、光学的特性に優れたポリイミドフィルムが得られる。
【0112】
また、実施形態によるポリイミドフィルムが適切な結晶性を有することにより、優れた機械的物性を有し得る。例えば、実施形態によるポリイミドフィルムをUTM圧縮モードにより2.5mm球状のチップで押して、穿孔時の強度を測定すると、厚さ30μm〜50μmを基準に、穿孔強度が約20kgf以上であり得る。
具体的に、前記条件において穿孔強度が約25kgf以上であり得る。より具体的に、前記条件において穿孔強度が約30kgf以上であり得る。
【0113】
また、穿孔径は、クラックなどを含めて約55mm以内であり得る。具体的に、前記穿孔径は、約50mm以内であり得る。より具体的に、前記穿孔径は、約40mm以内であり得る。さらにより具体的に、前記穿孔径は約30mm以内であり得る。
【0114】
また、実施形態によるポリイミドフィルムは、シリカ粒子などの無機粒子を含み得る。前記シリカ粒子の直径は約10nm〜200nmであり得る。実施形態によるポリイミドフィルムにおいて、原子間力顕微鏡(AFM)の画像上において、表面に見えるシリカ粒子の数が、10μm×10μmを基準に約5個〜約30個であり得る。これにより、実施形態によるポリイミドフィルムは、向上された巻取性を有しながらも、低いヘイズを有し得る。
【0115】
実施形態によるポリイミドフィルムは、機械方向(MD)基準に約±30°〜約±50°の配向角度を有し得る。一実施形態による前記ポリイミドフィルムが、前記配向角度を有すると、向上された光学的特性および機械的特性を有し得る。前記ポリイミドフィルムの配向角度とは、前記ポリイミドフィルムのキャスティングされる方向(MD方向)を基準に、フィルム内部のポリイミド樹脂が配向された角度のことを意味する。
【0116】
実施形態により製造されたポリイミドフィルムのモジュラスは5GPa以上である。例えば、前記ポリイミドフィルムのモジュラスは5GPa〜10GPaであり得る。具体的に、実施形態によるポリイミドフィルムのモジュラスは5.2GPa以上であり得る。より具体的に、実施形態によるポリイミドフィルムのモジュラスは5.5GPa以上であり得る。さらにより具体的に、実施形態によるポリイミドフィルムのモジュラスは6GPa以上であり得る。実施形態によるポリイミドフィルムのモジュラスの最大値は10GPaであり得る。
【0117】
実施形態により製造されたポリイミドフィルムは、厚さ20μm〜70μmを基準に、より具体的には厚さ25μm〜60μmを基準に、表面硬度が約HB以上であり得る。さらにより具体的に、一実施形態によるポリイミドフィルムは、前記厚さを基準に、表面硬度が約H以上であり得る。
【0118】
図4および
図5に示すように、実施形態によるポリイミドフィルム20は、前記注型体のキャスティング表面と直接接触する第1面22および前記第1面22に対向する第2面23を含む。前記第1面22は、前記注型体の研磨された表面と直接接触して形成されるため、前記第1面22の粗度は前記第2面23の粗度よりも高い。また、前記注型体の研磨された表面が前記第1面22に、そのまま転写され得る。これにより、前記第1面22は、前記注型体の研磨された表面に対応する形状を有することができる。
【0119】
前記第1面22には、前記注型体の研磨された表面に形成された溝によって転写される突起21が形成され得る。前記突起21は、前記ポリイミドフィルムの機械的、光学的特性に影響を与え得る。特に、前記ポリイミドフィルムの機械的、光学的特性に影響を与え得る突起21は、幅(W)、高さ(H)および長さ(L)に応じて、以下のように定義され得る。
【0120】
第1突起は幅が0.3μm〜3μmで、高さが0.5μm〜5μmで、長さが2μm以上3μm未満である。第2突起は、幅が0.3μm〜3μmで、高さが0.5μm〜5μmで、長さが3μm以上5μm未満である。第3突起は幅が0.3μm〜3μmで、高さが0.5μm〜5μmで、長さが5μm以上10μm未満である。第4突起は幅が0.3μm〜3μmで、高さが0.5μm〜5μmで、長さが10μm以上である。具体的に、第4突起の長さは10μm〜100000μmある。
【0121】
具体的に、第1突起は幅が0.2μm〜3μmで、高さが0.3μm〜5μmで、長さが2μm以上3μm未満である。第2突起は幅が0.2μm〜3μmで、高さが0.3μm〜5μmで、長さが3μm以上5μm未満である。第3突起は幅が0.2μm〜3μmで、高さが0.3μm〜5μmで、長さが5μm以上10μm未満である。第4突起は幅が0.2μm〜3μmで、高さが0.3μm〜5μmで、長さが10μm以上である。
【0122】
より具体的に、第1突起は幅が0.15μm〜3μmで、高さが0.2μm〜5μmで、長さが2μm以上3μm未満である。第2突起は幅が0.15μm〜3μmで、高さが0.2μm〜5μmで、長さが3μm以上5μm未満である。第3突起は幅が0.15μm〜3μmで、高さが0.2μm〜5μmで、長さが5μm以上10μm未満である。第4突起は幅が0.15μm〜3μmで、高さが0.2μm〜5μmで、長さが10μm以上である。
【0123】
前記第1面は、1cm×1cmに分割され得る。それぞれの分割された第1面において下記条件を満たす場合、無欠陥領域として定義され得る。
【0124】
前記無欠陥領域は、前記第1面を1cm×1cmに分割する場合、前記第1突起の数が10個以下、前記第2突起の数が5個以下、前記第3突起の数が3個以下、第4突起の数が0個である領域として定義され得る。
【0125】
つまり、前記無欠陥領域は分割された1cm×1cmの領域において、幅が0.3μm〜3μmであり、高さが0.5μm〜5μmであり、長さがそれぞれ2μm以上3μm未満、3μm以上5μm未満、5μm以上10μm未満、10μm以上である第1突起、第2突起、第3突起および第4突起が、それぞれ10個以下、5個以下、3個以下および0個を満足する領域のことを意味する。
【0126】
具体的に、前記無欠陥領域は分割された1cm×1cmの領域において、幅が0.2μm〜3μmであり、高さが0.3μm〜5μmであり、長さがそれぞれ2μm以上3μm未満、3μm以上5μm未満、5μm以上10μm未満、10μm以上である第1突起、第2突起、第3突起および第4突起が、それぞれ10個以下、5個以下、3個以下および0個を満足する領域のことを意味する。
【0127】
より具体的に、前記無欠陥領域は分割された1cm×1cmの領域において、幅が0.15μm〜3μmであり、高さが0.2μm〜5μmであり、長さがそれぞれ2μm以上3μm未満、3μm以上5μm未満、5μm以上10μm未満、10μm以上である第1突起、第2突起、第3突起および第4突起が、それぞれ10個以下、5個以下、3個以下および0個を満足する領域のことを意味する。
【0128】
具体的に、前記無欠陥領域は、前記第1面を1cm×1cmに分割する場合、前記第1突起の数が5個以下、前記第2突起の数が3個以下、前記第3突起の数が1個以下、第4突起の数が0個である領域として定義され得る。
【0129】
より具体的に、前記無欠陥領域は、前記第1面を1cm×1cmに分割する場合、前記第1突起の数が5個以下、前記第2突起の数が3個以下、前記第3突起の数が0個、第4突起の数が0個である領域として定義され得る。
【0130】
さらにより具体的に、前記無欠陥領域は、前記第1面を1cm×1cmに分割する場合、前記第1突起の個数が3個以下、前記第2突起の数が3個以下、前記第3突起の数が1個以下、第4突起の数が0個である領域として定義され得る。
【0131】
さらにより具体的に、前記無欠陥領域は、前記第1面を1cm×1cmに分割する場合、前記第1突起の数が2個以下、前記第2突起の数が1個以下、前記第3突起の数が0個、第4突起の数が0個である領域として定義され得る。
【0132】
さらにより具体的に、前記無欠陥領域は、前記第1面を1cm×1cmに分割する場合、前記第1突起、前記第2突起、第3突起および前記第4突起の数がそれぞれ0個である領域として定義され得る。
【0133】
前記第1面の面積のうち、前記無欠陥領域に該当する面積が90%以上であり得る。具体的に前記第1面の面積のうち、前記無欠陥領域に該当する面積が95%以上であり得る。より具体的に前記第1面の面積のうち、前記無欠陥領域に該当する面積が99%以上であり得る。
【0134】
前記第1面の表面粗度は、約0.1nm〜約150nmであり得る。具体的に、第1面の表面粗度は、約0.1nm〜約50nmであり得る。より具体的に、第1面の表面粗度は、約0.1nm〜約10nmであり得る。さらにより具体的に、第1面の表面粗度は、約0.1nm〜約3nmであり得るが、これらに限定されるものではない。
【0135】
前記第2面の表面粗度は、前記第1面の表面粗度よりも小さいことがあり得る。前記第2面の表面粗度は、約0.1nm〜約40nmであり得る。具体的に、第2面の表面粗度は、約0.1nm〜約20nmであり得る。より具体的に、第2面の表面粗度は、約0.1nm〜約5nmであり得る。さらにより具体的に、第2面の表面粗度は、約0.1nm〜約2nmであり得るが、これらに限定されるものではない。
【0136】
実施形態によるポリイミドフィルムが前記のように製造され、向上された機械的、光学的特性を有することができる。
【0137】
前記実施形態により製造されたポリイミドフィルムは、厚さ20μm〜70μmを基準に、より詳細には厚さ約25μm〜約60μmを基準に、550nmで測定した透過度が88%以上であり、ヘイズが2%以下であり、黄色度(YI)が5以下であり得る。
【0138】
具体的に、前記実施形態により製造されたポリイミドフィルムは、厚さ20μm〜70μmを基準に、より詳細には厚さ約25μm〜約60μmを基準に、550nmで測定した透過度が88%以上であり、ヘイズが1%以下であり、黄色度(YI)が3以下であり得る。
【0139】
また、前記実施形態により製造されたポリイミドフィルムは、厚さ20μm〜70μmを基準に、より詳細には厚さ約25μm〜約60μmを基準に、550nmで測定した透過度が89%以上であり、ヘイズが0.6%以下であり、黄色度(YI)が3以下であり得る。
【0140】
図6に示すように、実施形態によるディスプレイ装置は、ディスプレイパネル10と、前記ディスプレイパネル10上に配置されたカバーウィンドウ11とを含む。
【0141】
前記ディスプレイパネル10は、液晶パネルまたは有機ELパネルであり得る。
前記有機ELパネルは、ピクセル単位の自己発光により画像を表示する。前記有機ELパネルは、有機EL基板および駆動基板を含み得る。
【0142】
前記有機EL基板は、ピクセルにそれぞれ対応する複数の有機電界発光ユニットを含む。前記有機電界発光ユニットは、それぞれ負極、電子輸送層、発光層、正孔輸送層および正極を含むことができる。前記負極などの構成に関する具体的な説明は省略する。
【0143】
前記駆動基板は、前記有機EL基板に駆動的に結合される。すなわち、前記駆動基板は、前記有機EL基板に駆動電流などのような駆動信号を印加できるように結合され得る。より詳細に、前記駆動基板は、前記有機電界発光ユニットにそれぞれ電流を印加して、前記有機EL基板を駆動することができる。
【0144】
前記カバーウィンドウ11は、前記ディスプレイパネル10上に配置される。前記カバーウィンドウ11は前記ディスプレイパネル10を覆う。前記カバーウィンドウ11は、実施形態によるディスプレイ装置の最外郭に位置して、前記ディスプレイパネルを保護する。
【0145】
前記カバーウィンドウ11は、実施形態によるポリイミドフィルム20およびハードコート層40を含み得る。前記ハードコート層40は、前記第1面22上に形成され得る。前記ハードコート層40は前記第1面22を覆う。つまり、前記のハードコート層40は、前記第2面22が相対的に高い粗度を有する光学的特性を補償することができる。前記ハードコート層40に使用される物質の種類としてアクリル系樹脂などが挙げられる。
【0146】
実施形態によるポリイミドフィルム20は、向上された機械的、光学的特性を有するので、前記カバーウィンドウ11もまた向上された機械的、光学的特性を有することができる。また、前記カバーウィンドウ11は、フォルダブルディスプレイなどのようなフレキシブルディスプレイに適用され、向上された折り畳み特性を実現することができる。つまり、実施形態によるディスプレイ装置は、フレキシブルディスプレイであり得る。前記ディスプレイパネル10および前記カバーウィンドウ11は、容易に曲がることができ、実施形態によるディスプレイ装置は向上された画質を有するとともに、向上され折り畳みおよび曲げ特性を有することができる。
[発明を実施するための形態]
【0147】
以下、本発明を下記実施例によりさらに詳細に説明する。但し、下記実施例は、本発明を例示するためのものであるのみ、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
(製造例)
【0148】
温度調節が可能な二重ジャケットの1L用ガラス反応器に、20℃の窒素雰囲気下において有機溶媒であるジメチルアセトアミド(DMAc)710.8gを満たした後、芳香族ジアミンである2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4、4'−ジアミノビフェニル(TFDB)64g(0.2mоl)を徐々に投入しながら溶解させた。
【0149】
次いで、芳香族ジアンヒドリドである2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(6−FDA)26.6g(0.06mоl)を徐々に投入しながら1時間撹拌した。
【0150】
そして、第1ジカルボニル化合物として1,1'−ビフェニル−4,4'−ジカルボニルジクロリド(BPDC)23.4g(0.084mol)を投入した後1時間撹拌させ、第2ジカルボニル化合物としてテレフタロイルクロリド(TPC)を、投入モル対比96%である9.74g(0.048mol)を投入した後1時間撹拌して、第1重合体溶液を調製した。
【0151】
調製された第1重合体溶液の粘度を測定して、測定された粘度が所望の粘度に達していない場合は、35cpsの粘度になるまで、DMAc有機溶媒に10重量%のTPC溶液を調製して1mL添加した後、30分間撹拌する過程を繰り返して第2重合体溶液を調製した。
【0152】
(実施例)
ステンレス鋼プレート(ワイドミュラー社製品、ステンレス鋼1.4301、厚さ1.5mm)を切断して、直径30cmのステンレス鋼プレートを製造した。その後、研磨スラリーを噴射しながら円板状の多孔質ポリウレタン研磨体を約100rpmの速度で回転させ、ステンレス鋼プレートの表面を研磨した。前記研磨スラリーは、溶媒として水が使用され、約30nmのコロイダルシリカが全重量基準で約10重量%含まれ、酸化剤として過酸化水素が約5重量%含まれた。前記研磨スラリーのpHは約2.6であり、前記研磨体の研磨圧力は約3psiであった。前記研磨工程を約5分間行い、研磨工程の完了後、研磨されたステンレス鋼プレートを、脱イオン水を用いて洗浄した。
【0153】
その後、前記製造例において製造された第2重合体溶液を、前記ステンレス鋼プレートの研磨面に塗布した後、80℃の熱風により30分乾燥させた。乾燥されたポリイミド重合物をステンレス鋼プレート上から剥離させた後、ピンフレームに固定させ、80℃〜300℃の温度範囲で2℃/minの速度で昇温される工程により熱処理して、厚さ50μmのポリイミドフィルムを製造した。
(比較例)
【0154】
ステンレス鋼プレートを研磨する工程を除いて、残りの工程は実施例と同様に行ってポリイミドフィルムを製造した。
[評価例]
【0155】
前記実施例および比較例によるポリイミドフィルムについて、次のような物性を測定および評価した。その結果を下記表1に示した。
[評価例1:フィルムの厚さ測定]
【0156】
日本ミツトヨ社のデジタルマイクロメーター547−401を使用して、幅方向に5ポイント測定し、平均値で厚さを測定した。
[評価例2:透過度(TT)およびヘイズ(HZ)測定]
【0157】
日本電色工業社のヘイズメーターNDH−5000Wを使用して、550nmにおける透過度およびヘイズを測定した。
[評価例3:黄色度(YI)測定]
【0158】
黄色度(Yellow Index、YI)は、分光光度計(UltraScan(登録商標) PRO、Hunter Associates Laboratory)によりCIE表色系を用いて測定した。
[評価例4:引張強度(modulus)測定]
【0159】
インストロン社の万能試験機UTM5566Aを用いて、サンプルの主収縮方向と直交する方向に5cm以上および主収縮方向に10mmに切り、5cm間隔のクリップに装着した後、常温において5mm/minの速度で伸しながら、破断が起きるまで応力−ひずみ曲線を得た。前記応力−ひずみ曲線において、初期変形に対する荷重の傾きをモジュラス(GPa)とした。
[評価例5:表面観察]
【0160】
OPTO KOREA社のLEXT OLS4000−3Dレーザー測定顕微鏡によりステンレス鋼プレートおよびポリイミドフィルムの表面を観察して、スクラッチなどを確認した。
【0161】
[5−1:欠陥低減領域]
ステンレス鋼プレートの表面を1cm×1cmに分割し、それぞれの分割された領域を観察して、第1溝が2つ以下、第2溝が1つ以下、第3溝および第4溝がそれぞれ0個である場合、当該領域を欠陥低減領域として定義した。
【0162】
前記第1溝、前記第2溝、前記第3溝および前記第4溝の幅が0.15μm〜3μmであり、前記第1溝、前記第2溝、前記第3溝および前記第4溝の深さが0.2μm〜5μmある。前記第1溝の長さは2μm以上3μm未満であり、前記第2溝の長さは3μm以上5μm未満であり、前記第3溝の長さは5μm以上10μm未満であり、前記第4溝の長さは10μm以上である。
【0163】
[5−2:無欠陥領域]
ポリイミドフィルムを1cm×1cmに分割し、それぞれの分割された領域を観察して、第1突起が2個以下、第2突起が1つ以下、第3突起および第4突起がそれぞれ0個である場合、当該領域を無欠陥領域として定義した。
【0164】
前記第1突起、前記第2突起、第3突起および前記第4突起の幅が0.15μm〜3μmであり、前記第1突起、前記第2突起、第3突起および前記第4突起の高さが0.2μm〜5μmある。前記第1突起の長さは2μm以上3μm未満であり、前記第2突起の長さは3μm以上5μm未満であり、前記第3突起の長さは5μm以上10μm未満であり、前記第4突起の長さは10μm以上である。
前記突起の観察面は、ステンレス鋼と直接接触される面(第1面)を基準にしたものである。
[評価例6:表面粗度]
【0165】
表面粗度はAFM装置(メーカー:Park System、装置名:XE−150)で測定した。
【0169】
表2に示すように、実施例によるステンレス鋼プレートの研磨された表面では、100nm以上の深さを有する溝がほとんど観察されなかったが、比較例による研磨されていないステンレス鋼プレートの表面では、深さが0.5μm以上で、長さが10μm以上の溝がほぼ全表面においてむらなく観察された。
【0170】
表3から分かるように、実施例によるポリイミドフィルムのステンレス鋼と直接接触される面(第1面)では、100nm以上の高さを有する突起がほとんど観察されなかったが、比較例によるポリイミドフィルムの第1面では、高さが0.5μm以上で、長さが10μm以上の突起がほぼ全表面からむらなく観察された。
【0171】
また、表1〜表3から分かるように、実施例は比較例に比べて改善された機械的、光学的物性および低い表面粗度を有することが確認できた。また、柔軟性に優れるので、フレキシブル(flexible)ディスプレイ分野において有用に用いられる。