特許第6872072号(P6872072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6872072
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】汚染土壌の浄化方法
(51)【国際特許分類】
   B09C 1/08 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   B09C1/08
【請求項の数】4
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2020-200048(P2020-200048)
(22)【出願日】2020年12月2日
【審査請求日】2020年12月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩野 芳章
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 将文
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 拓也
【審査官】 三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−039092(JP,A)
【文献】 特開2017−148719(JP,A)
【文献】 特開2004−337673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09C 1/00−1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染土壌の水分含有量を20質量%以下に調整する第1工程と、
前記水分含有量を調整した前記汚染土壌に対して鉄粉および紙粉を添加して混合する第2工程と、
前記汚染土壌から磁選により鉄粉を回収する第3工程と、
を備える汚染土壌の浄化方法。
【請求項2】
前記第2工程において、前記汚染土壌に対して0.5〜10質量%の前記紙粉を添加する請求項1に記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項3】
前記第2工程において、前記汚染土壌に対して前記鉄粉を添加して混合した後に、前記汚染土壌に対して前記紙粉を添加する請求項1又は請求項2に記載の汚染土壌の浄化方法。
【請求項4】
汚染土壌の水分含有量を20質量%以下に調整する第1工程と、
前記水分含有量を調整した前記汚染土壌に対して鉄粉および紙粉を同時に添加して混合する第2工程と、
前記汚染土壌から磁選により鉄粉を回収する第3工程と、
を備える汚染土壌の浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁着物中への土壌の巻込み量を低減した汚染土壌の浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
汚染土壌の無害化処理方法が存在する(特許文献1参照)。この方法は、汚染土壌に対して鉄粉を添加し、汚染土壌の水分含有量を36質量%以下に調整し、当該鉄粉に有害物質を吸着させ、当該水分含有量を調整した汚染土壌から鉄粉を乾式磁選により回収除去することで、汚染土壌を浄化土壌としている。また鉄粉とともに中性固化材を添加している。中性固化材としては、半水石膏を主成分とするものが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5647371号公報
【特許文献2】特開2003−290757号公報
【特許文献3】特許第6692136号公報、段落[0028]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の方法では、乾式磁選時に鉄粉のみならず多量の土壌を鉄粉とともに回収してしまう問題がある。この場合に、鉄粉とともに回収された土壌は汚染土壌として扱う必要があるため、鉄粉とともに回収された土壌の増加は、処理コストの増大に直結する。また、上記従来の方法では中性固化材を用いているが、中性固化材には、有害物質を不溶化する効果がある(特許文献2、3参照)。このため、非磁着物である浄化土中に、有害物質が不溶化されて残留してしまう問題がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、磁着物中への土壌の巻込み量を低減するとともに、有害物質の不溶化の問題も生じることがない汚染土壌の浄化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の本発明により解決される。すなわち、本発明(1)の汚染土壌の浄化方法は、汚染土壌の水分含有量を20質量%以下に調整する第1工程と、
前記水分含有量を調整した前記汚染土壌に対して鉄粉および紙粉を添加して混合する第2工程と、
前記汚染土壌から磁選により鉄粉を回収する第3工程と、
を備える。
【0007】
また、本発明(2)の汚染土壌の浄化方法は、(1)記載の汚染土壌の浄化方法であって、
前記第2工程において、前記汚染土壌に対して0.5〜10質量%の前記紙粉を添加する。
【0008】
また、本発明(3)の汚染土壌の浄化方法は、(2)記載の汚染土壌の浄化方法であって、
前記第2工程において、前記汚染土壌に対して前記鉄粉を添加して混合した後に、前記汚染土壌に対して前記紙粉を添加する。
【0009】
また、本発明(4)の汚染土壌の浄化方法は、
汚染土壌の水分含有量を20質量%以下に調整する第1工程と、
前記水分含有量を調整した前記汚染土壌に対して鉄粉および紙粉を同時に添加して混合する第2工程と、
前記汚染土壌から磁選により鉄粉を回収する第3工程と、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、磁着物中への土壌の巻込み量を低減するとともに、有害物質の不溶化の問題も生じることがない汚染土壌の浄化方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の汚染土壌の浄化方法を示すフローチャートである。
図2図1に示すフローチャート中の各工程を模式的に示す模式図である。
図3図1に示す模式図の鉄粉の一例を示す写真である。
図4図1に示す模式図の紙粉の一例を示す写真である。
図5】鉄粉に対する砒素の固定化メカニズムを模式的に示す模式図である。
図6】実施例A1〜A4、比較例A1の磁着物への土壌巻込み率を示すグラフである。
図7】実施例B1〜B4の磁着物への土壌巻込み率を示すグラフである。
図8】実施例B5〜B8の磁着物への土壌巻込み率を示すグラフである。
図9】比較例C1、C2の磁着物への土壌巻込み率を示すグラフである。
図10】紙粉添加後の土壌の流動性の評価を行うための装置構成を示す側面図である。
図11図10に示す装置によって評価された紙粉添加後の土壌の流動性の結果を示すグラフである。
図12】土壌改質剤および紙粉を添加した模擬汚染土壌からの砒素の溶出量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、汚染土壌の水分含有量を20質量%以下に調整する第1工程と、前記水分含有量を調整した前記汚染土壌に対して鉄粉および紙粉を添加して混合する第2工程と、前記汚染土壌から磁選により鉄粉を回収する第3工程と、を備える汚染土壌の浄化方法に関するものである。
【0013】
図1に実施形態の汚染土壌の浄化方法のフローチャートを示す。図2に、実施形態の汚染土壌の浄化方法の各工程を模式的に示したフロー図を示す。本発明の汚染土壌の浄化方法は、大きく、汚染土壌中の水分含有量を調整する第1工程と、汚染土壌に鉄粉および紙粉を添加して混合する第2工程と、磁石を用いた磁選によって汚染土壌から汚染物質を吸着した鉄粉を回収する第3工程と、を含む。
【0014】
第1工程は、汚染土壌に対して水を添加したり、或いは汚染土壌を乾燥させたりすることで、汚染土壌中の水分含有量を調整する。具体的には、汚染土壌に対して水分含有量を20質量%以下、例えば、1〜20質量%に調整する。汚染土壌に対する水分含有量は、5〜20質量%であることが好ましく、10〜16質量%であることがさらに好ましい。汚染土壌に対して水分含有量が20質量%を超えると、汚染土壌の粘性が増大し、磁着物中に含まれる土壌の量(土壌巻込み率)が増加する。一方、汚染土壌に対する水分含有量を1%以下にすると、次に述べる第2工程において鉄粉に汚染物質を吸着させる反応が進まなくなる。
【0015】
第2工程は、汚染土壌に対して鉄粉および紙粉を添加して混合する。第2工程において汚染土壌に対して鉄粉および紙粉を添加する手順としては、汚染土壌に対してまず鉄粉を添加して混合し、所定時間静置し、その後に汚染土壌に対して紙粉を添加して混合してもよい。或いは、汚染土壌に対して鉄粉および紙粉を同時に添加してもよい。第2工程では、汚染土壌に対して鉄粉および紙粉を添加した後、例えば、混合機を用いて汚染土壌を混合する。混合機としては、公知のものを使用することができ、具体的にはせん断式混合機、例えば、二軸式パドル混合機などを用いることができる。汚染土壌に対して鉄粉および紙粉を添加した後に、汚染土壌を混合することで、あるいは汚染土壌に対して鉄粉添加して、混合し、更に紙粉を添加して、汚染土壌を混合することで、鉄粉に対して汚染物質を吸着させることができる。図5に、鉄粉に対する汚染物質(砒素)の吸着メカニズムを示す。図5の模式図は、藤浦貴保ほか:神戸製鋼技報,Vol.59 No.1(Apr. 2009)から一部改変して作成した。
【0016】
図5に示すように、鉄粉から鉄イオンFe2+が溶出し、水中の砒酸イオンと反応して、砒酸鉄の結晶を生成する。砒酸鉄の結晶は、鉄粉表面に強く吸着される。このため、磁選によって鉄粉を除去することで、汚染土壌を浄化土として浄化することができる。鉛は、砒素と概ね同様に、鉛イオンを経由した反応によって鉄粉に吸着される。
【0017】
第2工程において、汚染土壌に対して、好ましくは10質量%以下の鉄粉が添加される。鉄粉は、汚染土壌に対して1〜10質量%添加されることが、鉄粉の使用量を削減しつつ、処理された処理土から溶出される汚染物質溶出量を十分に低減して、処理コストを低減できる点でさらに好ましい。
【0018】
第2工程において汚染土壌に添加する鉄粉は、例えば、8.8μm〜12.00mm、好ましくは180μm〜10.00mm、更に好ましくは250μm〜5.6mmの粒径を有する。粒径が8.8μm〜12.00mmの場合、D50は、54μm〜6.0mmが好ましく、粒径が180μm〜10.00mmの場合、D50は、360μm〜5.0mmが好ましく、粒径が250μm〜5.6mmの場合、D50は、480μm〜3.0mmが好ましい。この場合、D50は、JIS A 1204 土の粒度試験に準拠して測定されたものである。
【0019】
鉄粉の粒度分布は、正規分布のように中央値の存在比が大きい分布となっていてもよい。鉄粉の粒度(粒径)および粒度分布は、一例として、JIS Z 2510 金属粉―乾式ふるい分けによる粒度試験方法およびJIS Z 2510において引用されるJIS Z 8801−1 試験用ふるい −第1部:金属製網ふるいに記載の方法により測定することができる。
【0020】
鉄粉は、商業的に入手可能な鉄粉を使用することができる。鉄粉は、JFE製の識別名称K−3M、宝鋼集団有限公司製の識別名称B−3M、および莱蕪鋼鉄集団有限公司製の識別名称R−3Mをそのまま使用してもよい。図3に、鉄粉の一例であるJFE製の識別名称K−3Mの写真を示す。同図中のスケールの1目盛の単位は、mmである。或いは、鉄粉は、JFE製の識別名称K−3M、宝鋼集団有限公司製の識別名称B−3M、および莱蕪鋼鉄集団有限公司製の識別名称R−3M、の粒度分布を調整した鉄粉を使用してもよい。
【0021】
第2工程において、汚染土壌に添加する紙粉は、商業的に入手可能な各種の紙粉を用いることができる。紙粉は、一例として、セルロースの紙状体を微細な粉状にするとともに、一部のセルロース繊維を毛羽立たせて綿状にしたものである。紙粉の一例として、日本紙通商株式会社製の識別名称:紙粉の写真を図4に示す。同図中のスケールの1目盛の単位は、mmである。紙粉は、粉砕古紙を原料にするものであってもよいし、粉末状の100%セルロースパルプを原料とするものであってもよい。紙粉の形態は種々の形態であってよく、上記綿状であってもよいし、或いは粉末状であってもよいし、或いは繊維状であってもよいし、或いはそれらが混合した形態であってもよい。
【0022】
紙粉は、日本紙通商株式会社製の紙粉、絵具屋三吉製の紙粉(細目)および紙粉(粗目)、ジャペット株式会社製の各種紙粉であってもよい。ここで、細目とは、紙粉を構成する粒子の粒径が比較的に小さいことを意味する。粗目とは、紙粉を構成する粒子の粒径が比較的に大きいことを意味する。
【0023】
第2工程では、汚染土壌に対して適宜の質量%で紙粉を添加する。汚染土壌に対する水分の含有量を1〜20質量%とした場合には、汚染土壌に対して10質量%以下、好ましくは0.5〜10質量%、さらに好ましくは1〜10質量%の紙粉を添加する。当該量の紙粉を汚染土壌に添加することによって、汚染土壌を磁選に適するように粘度が低く、流動性が高いサラサラな状態にすることができる。また、紙粉は、水溶性であるために、汚染物質を土壌に対して不溶化して閉じ込めてしまうことがない。このため、本方法によって浄化された土壌を「土壌汚染対策法に基づく調査および措置に関するガイドライン 改定第3版 環境省」上の不溶化処理土壌ではなく、浄化土壌(オンサイト浄化土壌、浄化等済土壌)として扱うことができる。
【0024】
第3工程では、汚染物質を吸着した鉄粉を汚染土壌から磁石を用いて回収(乾式磁選)する。磁石としては、商業的に入手可能な各種の磁石(永久磁石、電磁石)を用いることができる。
【0025】
上記実施形態および下記した実施例によれば、以下のことがいえる。
【0026】
汚染土壌の浄化方法は、汚染土壌の水分含有量を20質量%以下に調整する第1工程と、前記水分含有量を調整した前記汚染土壌に対して鉄粉および紙粉を添加して混合する第2工程と、前記汚染土壌から磁選により鉄粉を回収する第3工程と、を備える。
【0027】
この構成によれば、汚染土壌に対して鉄粉を添加することで、汚染物質を鉄粉に吸着させ、当該鉄粉を磁選で除去することで、土壌を浄化することができる。また、鉄粉に加えて、汚染土壌に対して紙粉を添加することによって、汚染土壌中の粘性を低く(流動性を高く)調整して、汚染土壌をサラサラな状態にすることができる。これによって、磁選時に鉄粉に付着して、鉄粉に巻き込まれてしまう土壌の量を低減することができる。磁選時に鉄粉に巻き込まれた土壌は、汚染土壌として処理する必要があるために、鉄粉に巻き込まれる土壌の量を低減することは、そのまま処理コストの低減につながる。したがって、上記のように鉄粉に巻き込まれてしまう土壌の量を低減することで、汚染土壌の処理コストを低下することができる。さらに、紙粉には、汚染物質を不溶化する性質がない。このため、磁選で鉄粉が除去された浄化土壌中に、不溶化された汚染物質が残留してしまう可能性を低減できる。よって、本方法で浄化された土壌を「土壌汚染対策法に基づく調査および措置に関するガイドライン 改定第3版 環境省」上の不溶化処理土壌ではなく、浄化土壌(オンサイト浄化土壌、浄化等済土壌)として扱うことができる。
【0028】
この場合、前記第2工程において、前記汚染土壌に対して前記紙粉を0.5〜10質量%添加する。この構成によれば、紙粉の添加量を上記範囲とすることで、汚染土壌の粘性を低く調整して、汚染土壌をサラサラな状態にすることができる。これによって、磁選時に鉄粉に付着して、鉄粉に巻き込まれてしまう土壌の量を低減することができる。
【0029】
この場合、第2工程において、前記汚染土壌に対して前記鉄粉を添加して混合した後に、前記汚染土壌に対して前記紙粉を添加する。第2工程で鉄粉に汚染物質を吸着させる反応は、イオンを介した反応であるために、土壌中にある程度の水分が含まれることが必要となる。一方、磁選時には、土壌の含水量が大きいと、土壌の粘性が増大して土壌がベトベトした状態になり、鉄粉に付着する土壌の量が増加してしまう問題がある。上記の構成によれば、第2工程において鉄粉と汚染物質とを反応させる際には、土壌中に十分な水分量を確保することができる。一方、磁選を行う第3工程の開始直前には、粘性を低下させて、土壌をサラサラな状態にすることができる。これによって、磁選時に鉄粉に巻き込まれてしまう土壌の量を低減できる。以上より、上記構成によれば、汚染物質の十分な吸着性能と、磁選時の土壌の巻込み量の低減と、の両立を図ることができる。
【0030】
また、汚染土壌の浄化方法は、汚染土壌の水分含有量を20質量%以下に調整する第1工程と、前記水分含有量を調整した前記汚染土壌に対して鉄粉および紙粉を同時に添加して混合する第2工程と、前記汚染土壌から磁選により鉄粉を回収する第3工程と、を備える。
【0031】
この構成によれば、鉄粉と紙粉とを同時に投入すればよいために、現場での作業を簡略化して現場作業を行う作業者の作業負担を低減できる。
【実施例】
【0032】
<土壌巻込み率の評価>
使用する汚染土壌として、以下の条件の土壌を用いた。
【0033】
【表1】
第1工程として、上記表1の汚染土壌の試料を風乾または蒸留水を添加し、水分含有量を15.1%に調整した。汚染土壌に添加する紙粉としては以下を用いた。
【0034】
【表2】
【0035】
汚染土壌に添加する鉄粉(K-3M、JFEスチール製)の粒度分布を下記に示す。
【表3】
【0036】
粒度分布は、JIS Z 2510 金属粉―乾式ふるい分けによる粒度試験方法およびJIS Z 2510において引用されるJIS Z 8801−1 試験用ふるい −第1部:金属製網ふるいに記載の方法により測定した。表2中において、+2.8mmは、2.8mmよりも粒径が大きい(粗い)ことを示し、2.8mm以上で5.6mm未満の粒度を示す。−0.15mmは、0.15mmよりも粒径が小さい(細かい)ことを示す。鉄粉(K-3M、JFEスチール製)のD50(50%粒子径)は、1.2mmである。
【0037】
水分含有量15.1%に調整された汚染土壌を実施例A1〜A4、比較例A1のそれぞれに対応するように、100gずつに小分けした。第2工程として、100gずつに小分けされた土壌に、鉄粉(K-3M、JFEスチール製)10gを添加し、卓上ミキサー(KPL9000S、愛工舎製作所製)で10分間混合した。10分間静置した後、表4に示す量の紙粉(日本紙通商製)を添加して、薬さじで5分間程度混合した。その後、第3工程として、土壌をプラスチックバットに薄く広げ、土壌表面上に表面磁力1000Gの磁石棒(KGM−HM13−S18476、カネテック製)を走査して磁着物と非磁着物に磁性分離した。得られた磁着物は汚染物質含有量分析(底質調査法)を実施し、非磁着物は汚染物質含有量分析と汚染物質溶出量分析(環境告示18号)とを実施した。結果を表4〜表6に示す。
【0038】
【表4】
ここで土壌巻込み率(%)は、以下の式1により算出した。
【0039】
土壌巻込み率(%)=(磁着物質量−投入鉄粉質量)/(投入土壌質量+投入紙粉質量)×100 … 式1
また、汚染物質回収率(%)は以下の式2より算出した。
【0040】
汚染物質回収率(%)=(磁着物の汚染物質含有量×磁着物質量)/{(磁着物の汚染物質含有量×磁着物質量)+(非磁着物の汚染物質含有量×非磁着物質量)}×100 … 式2
【0041】
【表5】
【0042】
【表6】
【0043】
表4〜表6に示す結果から、ふっ素を除き、第2工程において投入する紙粉の質量によっては、汚染物質回収率、汚染物質含有量、および汚染物質溶出量に有意な差がみられないことが理解される。ふっ素に関しては、第2工程において投入する紙粉の質量を大きくするにつれて、汚染物質回収率が向上するとともに汚染物質溶出量が低下する。
【0044】
実施例A1〜A4および比較例A1の砒素の汚染物質溶出量(mg/L)は、すべて土壌汚染対策法に規定される溶出量基準値以下である。実施例A1のふっ素の汚染物質溶出量(mg/L)は、土壌汚染対策法に規定される溶出量基準値以下である。実施例A1〜A4および比較例A1の鉛の汚染物質溶出量(mg/L)は、すべて土壌汚染対策法に規定される溶出量基準値以下である。
【0045】
図6に、実施例A1〜A4の土壌巻込み率(%)と比較例A1の土壌巻込み率(%)とを比較したグラフを示す。
【0046】
図6より、第2工程において汚染土壌に紙粉を添加した実施例A1〜A4は、第2工程において汚染土壌に紙粉を添加しない比較例A1に比して、土壌巻込み率(%)が著しく低減されたことが理解される。
<他の紙粉を用いた場合の土壌巻込み率の評価>
【0047】
使用する汚染土壌として、以下の条件の土壌を用いた。
【0048】
【表7】
【0049】
第1工程として、上記表7の汚染土壌の試料を風乾または蒸留水を添加し、水分含有量を12.6〜15.2%に調整した。紙粉として、以下を用いた。
【0050】
【表8】
【0051】
上記表7の汚染土壌100gに対する、実施例B1〜B8の紙粉添加量を以下の表9のようにした。
【0052】
【表9】
【0053】
水分含有量12.6〜15.2%に調整した汚染土壌を実施例B1〜B8にそれぞれ対応するように、100gずつに小分けした。第2工程として、100gずつに小分けされた土壌に、鉄粉(K-3M、JFEスチール製)10gを添加し、卓上ミキサー(KPL9000S、愛工舎製作所製)で10分間混合した。10分間静置した後、表9に示す量の紙粉を添加して、薬さじで5分間程度混合した。その後、第3工程として、土壌をプラスチックバットに薄く広げ、土壌表面上に表面磁力1000Gの磁石棒(KGM−HM13−S18476、カネテック製)を走査して磁着物と非磁着物に磁性分離した。得られた磁着物は汚染物質含有量分析(底質調査法)を実施し、非磁着物は汚染物質含有量分析と汚染物質溶出量分析(環境告示18号)とを実施した。結果を表10〜表15に示す。
【0054】
【表10】
【0055】
【表11】
【0056】
【表12】
【0057】
【表13】
【0058】
【表14】
【0059】
【表15】
【0060】
表10〜表15に示す結果から、実施例B1〜B4のふっ素を除き、第2工程において投入する紙粉の種類および紙粉の質量によっては、汚染物質回収率、汚染物質含有量、および汚染物質溶出量に有意な差がみられないことが理解される。実施例B1〜B4のふっ素に関しては、第2工程において投入する紙粉の質量を大きくするにつれて、汚染物質回収率が向上するとともに汚染物質溶出量が低下する。
【0061】
図7に実施例B1〜B4の土壌巻込み率(%)を示したグラフを示す。図7および図6に示す比較例A1の土壌巻込み率(%)の結果から、紙粉として絵具屋三吉製の紙粉(細目)を用いた場合でも、比較例A1よりも低い土壌巻込み率が維持されることが理解される。
【0062】
図8に実施例B5〜B8の土壌巻込み率(%)を示したグラフを示す。図8および図6に示す比較例A1の土壌巻込み率(%)の結果から、紙粉としてジャペット製の紙粉(製品2)を用いた場合でも、比較例A1よりも低い土壌巻込み率が維持されることが理解される。
<鉄粉300Rを用いた実施例の土壌巻込み率の評価>
【0063】
使用する汚染土壌として、以下の条件の土壌を用いた。
【表16】
第1工程として、上記表16の汚染土壌の試料を風乾または蒸留水を添加し、水分含有量を15.1%に調整した。汚染土壌に添加する紙粉としては以下を用いた。
【0064】
【表17】
汚染土壌に添加する鉄粉(300R、JFEスチール製)の粒度分布を下記に示す。
【0065】
【表18】
【0066】
上記表18の粒度分布は、JIS Z 2510 金属粉―乾式ふるい分けによる粒度試験方法およびJIS Z 2510において引用されるJIS Z 8801−1 試験用ふるい −第1部:金属製網ふるいに記載の方法により測定した。表2中において、+150μmは、150μmよりも粒径が大きい(粗い)ことを示し、150μm以上で180μm未満の粒度を示す。−45μmは、45μmよりも粒径が小さい(細かい)ことを示す。鉄粉(300R、JFEスチール製)のD50(50%粒子径)は、67μmである。
【0067】
水分含有量12.9〜13.4%に調整された汚染土壌を実施例C1〜C7、比較例C1のそれぞれに対応するように、100gずつに小分けした。第2工程として、100gずつに小分けされた土壌に、鉄粉(300R、JFEスチール製) を表19に示す量を添加し、卓上ミキサー(KPL9000S、愛工舎製作所製)で10分間混合した。10分間静置した後、表19に示す量の紙粉(日本紙通商製)を添加して、薬さじで5分間程度混合した。その後、第3工程として、土壌をプラスチックバットに薄く広げ、土壌表面上に表面磁力1000Gの磁石棒(KGM−HM13−S18476、カネテック製)を走査して磁着物と非磁着物に磁性分離した。得られた磁着物は汚染物質含有量分析(底質調査法)を実施し、非磁着物は汚染物質含有量分析と汚染物質溶出量分析(環境告示18号)とを実施した。結果を表19〜表21に示す。
【0068】
【表19】
【0069】
【表20】
【0070】
【表21】
【0071】
紙粉を添加している実施例C1〜C7すべては、紙粉を添加していない比較例C1と比して、土壌巻込み率が低い。また、実施例C1〜C7のすべては、鉄粉としてK−3Mを用いた実施例A1〜A4、実施例B1〜B8よりも土壌巻込み率が高い。
【0072】
砒素の溶出量は、実施例C1〜C7、比較例C1のいずれもすべて土壌汚染対策法に規定される溶出量基準値以下である。ふっ素の溶出量は実施例C1〜C5で土壌汚染対策法に規定される溶出量基準値以下となった。ふっ素の溶出量は鉄粉および紙粉の添加量を増加させるに従い減少した。鉛の溶出量は、実施例C1〜C7、比較例C1のいずれもすべて土壌汚染対策法に規定される溶出量基準値以下である。
<混合前含水量を大きくした場合の土壌巻込み率の評価>
【0073】
使用する汚染土壌として、以下の条件の土壌を用いた。
【0074】
【表22】
【0075】
第1工程として、上記表22の汚染土壌の試料を風乾または蒸留水を添加し、水分含有量を29.4%に調整した。紙粉種類および添加量は以下のようにした。
【0076】
【表23】
【0077】
水分含有量29.4%に調整した汚染土壌を実施例B1〜B8にそれぞれ対応するように、100gずつに小分けした。第2工程として、100gずつに小分けされた土壌に、鉄粉(K-3M、JFEスチール製)10gを添加し、卓上ミキサー(KPL9000S、愛工舎製作所製)で10分間混合した。10分間静置した後、表23に示す量の紙粉を添加して、薬さじで5分間程度混合した。その後、第3工程として、土壌をプラスチックバットに薄く広げ、土壌表面上に表面磁力1000Gの磁石棒(KGM−HM13−S18476、カネテック製)を走査して磁着物と非磁着物に磁性分離した。得られた磁着物は汚染物質含有量分析(底質調査法)を実施し、非磁着物は汚染物質含有量分析と汚染物質溶出量分析(環境告示18号)とを実施した。結果を表24〜表26に示す。
【0078】
【表24】
【0079】
【表25】
【0080】
【表26】
【0081】
表24〜表26に示す結果から、汚染土壌中の水分含有量29.4%とすると、実施例A1〜A4に比して、汚染物質回収率が向上することが理解される。
【0082】
図9に比較例D1、D2の土壌巻込み率(%)を示したグラフを示す。図9の比較例D1、D2の土壌巻込み率(%)および図6に示す実施例A1〜A4の土壌巻込み率(%)の結果から、汚染土壌中の水分含有量29.4%とすると、土壌巻込み率が著しく悪化することが理解される。
<紙粉添加後の土壌の流動性の評価>
【0083】
土壌に水および紙粉を添加して、土壌の流動性がどのように変化するかを評価した。使用する土壌として、実施例A1〜A4、比較例A1、比較例B1〜B8、実施例C1〜C46、実施例D1〜D8、比較例E1、E2で用いた土壌と同じ礫混じり粘性土質砂で、汚染物質を含まないものを用いた。
【0084】
紙粉は、実施例A1〜A4で用いた紙粉(製品1、日本紙通商製)と同じ紙粉を用いた。
【0085】
本評価は、JIS Z 2502 金属粉−流動度測定法を応用して実施した。参考比較例1〜23は、上記の土壌に下記表に示す含水量(%)になるように水を添加して均一になるように混合した。各例の土壌は、加水前の重量で200g用意した。含水量は、加熱乾燥式水分計(株式会社エー・アンド・ディ製、型式番号ML 50)で測定した。
【0086】
図10に示すように、漏斗を用意し、この漏斗の下側の小さい開口部(オリフィス)を指で押さえ、上側の大きい開口部に参考比較例1〜23の加水した土壌を投入した。指を離してオリフィスを開放し、開放からすべての土壌が小さい開口部を通過するまでの時間をストップウォッチで計測した。
【0087】
JIS Z 2502に準拠し、オリフィスを開けても粉が流れ出さない場合には,流れ出すよう漏斗を軽く数回(例えば、2〜5回)たたいて振動を加えた。その場合には、振動有すなわち〇の表記とした。結果を表27および図11のグラフに示す。直線は、参考比較例1〜23の値から得られた回帰直線を示す。
【表27】
【0088】
参考比較例23では、土壌の流れが止まったため、この評価での流動性なし、すなわち評価×とした。表27に示す結果から、含水量が10質量%を超えると、流動性が著しく低下し、含水量が14.4質量%のときに流動性がなくなった。
【0089】
同様に、上記土壌に水および紙粉を添加して、参考例の土壌の流動性を評価した。参考例1〜11は、上記の土壌に下記表に示す含水量14.4質量(%)になるように水を添加して薬さじで均一になるように混合した。各例の土壌は、加水前の重量で200g用意した。含水量は、加熱乾燥式水分計(株式会社エー・アンド・ディ製、型式番号ML 50)で測定した。さらに紙粉を下記表28に示す質量%で添加して、薬さじで均一になるように混合した。紙粉添加後の含水量は表28のようになった。
【0090】
図10に示す漏斗の下側の小さい開口部(オリフィス)を指で押さえ、上側の大きい開口部にこの参考例1〜11の土壌を投入した。指を離してオリフィスを開放し、開放からすべての土壌が小さい開口部を通過するまでの時間をストップウォッチで計測した。
【0091】
JIS Z 2502に準拠し、オリフィスを開けても粉が流れ出さない場合には,流れ出すよう漏斗を軽く数回(例えば、2〜5回)たたいて振動を加えた。その場合には、振動有すなわち〇の表記とした。結果を表28および図11のグラフに示す。
【表28】
【0092】
参考例1〜11では、参考比較例に比して流動性が向上した。紙粉添加前の含水量が14.4質量%である参考例1〜11の流動性は、含水量8〜10質量%の参考比較例9〜20と同等であった。このため、含水させた土壌に紙粉を添加すると、含水量にかかわらず、流動性が向上して土壌が低粘度かつサラサラな状態になることが理解される。
<紙粉の不溶化効果に関する評価>
【0093】
使用する模擬汚染土壌として、以下の条件の土壌を用いた。
【0094】
【表29】
【0095】
使用する土質改質剤又は紙粉として、以下を用いた。土質改質剤としては、泥ん固シリーズ EP-ライト、泥ん固シリーズ No.7、ジプサンダーC、ジプサンダーB、ワトルを用いた。紙粉としては、実施例A1〜A4で用いた紙粉(製品1)を用いた。
【0096】
泥ん固シリーズ EP−ライトおよび泥ん固シリーズ No.7は、無機系固化材(Si−Ca−Al系固化材)である。ジプサンダーCは、焼石膏を主成分とした石膏系中性固化材である。ジプサンダーBは、ジプサンダーCに高分子凝集剤を配合したものであり、焼石膏を主成分とした石膏系中性固化材である。ワトルは、ペーパースラッジ焼却灰(PS灰)に特殊薬剤を混合し水和処理した吸水性泥土改質材である。
【0097】
【表30】
【0098】
第1工程として、上記表27の模擬汚染土壌(宇部珪砂新特5号A)の試料を風乾または蒸留水を添加し、水分含有量を表27のように調整した。
【0099】
水分含有量を調整した実汚染土壌および模擬汚染土壌を各土質改質剤および紙粉(製品1)にそれぞれ対応するように、100gずつに小分けした。第2工程として、100gずつに小分けされた土壌に、鉄粉(K-3M、JFEスチール製)10gを添加し、卓上ミキサー(KPL9000S、愛工舎製作所製)で10分間混合した。10分間静置した後、表22の土質改質剤のいずれか1種を10g又は紙粉(製品1)10gを添加して、薬さじで5分間程度混合した。得られた非磁着物について汚染物質溶出量分析(環境告示18号)を実施した。模擬汚染土壌を用いた場合の汚染物質の溶出量の結果を表29に示す。
【0100】
【表31】
【0101】
図12に模擬汚染土壌の砒素の溶出量を示したグラフを示す。0.01mg/Lの破線の位置が土壌汚染対策法に規定される溶出量基準値を示す。表29および図12に示す結果から、土質改質剤又は紙粉を添加していない原土(模擬汚染土壌)からの砒素の溶出量に対して、紙粉(製品1)を添加した模擬汚染土壌からの溶出量にほとんど減少は見られなかった。これに対して、EP−ライト、No.7、ジプサンダーC、ジプサンダーB、ワトルといった土壌改質剤(中性固化材)を添加した模擬汚染土壌からの溶出量は、紙粉(製品1)を添加した模擬汚染土壌からの溶出量よりも著しく小さい溶出量(1/10以下)となっている。このため、紙粉(製品1)は、その水溶性の性質から、土質改質剤に比して汚染物質を模擬汚染土壌中に不溶化する性質がないことが理解される。
【要約】
【解決課題】磁着物中への土壌の巻込み量を低減するとともに、有害物質の不溶化の問題も生じることがない汚染土壌の浄化方法を提供する。
【解決手段】 汚染土壌の浄化方法は、汚染土壌の水分含有量を20質量%以下に調整する第1工程と、前記水分含有量を調整した前記汚染土壌に対して鉄粉および紙粉を添加して混合する第2工程と、前記汚染土壌から磁選により鉄粉を回収する第3工程と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12