(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872073
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】無線通信方法及び無線通信システム
(51)【国際特許分類】
H03M 13/27 20060101AFI20210510BHJP
H03M 13/45 20060101ALI20210510BHJP
H04L 27/18 20060101ALI20210510BHJP
H04L 27/26 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
H03M13/27
H03M13/45
H04L27/18 Z
H04L27/26 410
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-500266(P2020-500266)
(86)(22)【出願日】2018年10月12日
(86)【国際出願番号】JP2018038055
(87)【国際公開番号】WO2019159430
(87)【国際公開日】20190822
【審査請求日】2020年7月29日
(31)【優先権主張番号】特願2018-27242(P2018-27242)
(32)【優先日】2018年2月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】特許業務法人藤央特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 敬亮
【審査官】
福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2017/168821(WO,A1)
【文献】
特開2013−168719(JP,A)
【文献】
LI,Xiaodong et al.,Bit-interleaved coded modulation with iterative decoding,IEEE Communications Letters,米国,1997年11月,Vol. 1, No. 6,Pages 169 - 171
【文献】
西本浩 他,BICM-DPSKにおけるブラインド繰り返し復号,電子情報通信学会技術研究報告,2008年 2月27日,Vol.107, No.518,pp.193-198,RCS2007-218
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 13/27
H03M 13/45
H04L 27/18
H04L 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信装置から受信装置へデータを送信する無線通信方法であって、
前記送信装置は、OFDMを用いてDPSK信号を並列に出力する変調器を有し、
前記受信装置は、
無線信号を復調し、ビット情報を出力するMLSE復調器と、
前記ビット情報を復号する復号器と、
前記ビット情報のビット順序を入れ替えるインタリーブ処理を行うインタリーブ処理部と、
差動位相偏移用デインタリーバと、前記差動位相偏移用デインタリーバよりブロック長が小さい繰り返し復号用デインタリーバとから構成され、前記ビット情報のビット順序を入れ替えるデインタリーブ処理を行うデインタリーブ処理部とを有し、
前記方法は、
前記差動位相偏移用デインタリーバ及び前記MLSE復調器が、OFDM復調器から出力された第1の無線信号にデインタリーブ処理及び復調処理を行い、第1のビット情報を出力し、
前記繰り返し復号用デインタリーバが、前記第1のビット情報に対し、前記インタリーブ処理で入れ替えられたビットの順序を元に戻すデインタリーブ処理を行い、第2のビット情報を出力し、
前記復号器が、前記第2のビット情報を復号して、第3のビット情報を出力し、
前記インタリーブ処理部が、前記第3のビット情報に対し、前記デインタリーブ処理の逆となるインタリーブ処理を行って第4のビット情報を生成し、前記第4のビット情報を事前情報として前記MLSE復調器へ入力し、
以上の処理によって繰り返し復号処理を行うことを特徴とする無線通信方法。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信方法であって、
前記差動位相偏移用デインタリーバは、前記MLSE復調器の前段に配置されており、
前記方法は、
前記差動位相偏移用デインタリーバが、前記第1の無線信号をデインタリーブ処理した第2の無線信号を出力し、
前記MLSE復調器が、前記事前情報を用いて第2の無線信号を復調し、第1のビット情報を出力することを特徴とする無線通信方法。
【請求項3】
請求項1に記載の無線通信方法であって、
前記繰り返し復号用デインタリーバは、少なくとも二つ以上のOFDM信号に跨ってビット順序を入れ替えることを特徴とする無線通信方法。
【請求項4】
請求項1に記載の無線通信方法であって、
前記繰り返し復号用デインタリーバは、入れ替えるビット情報の大きさが一つのOFDMシンボルと異なって、少なくとも二つ以上のOFDM信号に跨ってビット順序を入れ替えることを特徴とする無線通信方法。
【請求項5】
請求項1に記載の無線通信方法であって、
前記繰り返し復号用デインタリーバは、入れ替えるビット情報の大きさが一つのOFDMシンボルと同一で、少なくとも二つ以上のOFDM信号に跨って、異なる入れ替えパターンでビット順序を入れ替えることを特徴とする無線通信方法。
【請求項6】
請求項5に記載の無線通信方法であって、
前記繰り返し復号用デインタリーバは、入れ替えるビット情報の大きさが一つのOFDMシンボルと同一のデインタリーバと、一つのOFDMシンボル内で遅延時間が異なるインタリーバとで構成されることを特徴とする無線通信方法。
【請求項7】
送信装置から受信装置へデータを送信する無線通信システムであって、
前記送信装置は、OFDMを用いてDPSK信号を並列に出力する変調器を有し、
前記受信装置は、
無線信号を復調し、ビット情報を出力するMLSE復調器と、
前記ビット情報を復号する復号器と、
前記ビット情報のビット順序を入れ替えるインタリーブ処理を行うインタリーブ処理部と、
差動位相偏移用デインタリーバと、前記差動位相偏移用デインタリーバよりブロック長が小さい繰り返し復号用デインタリーバとから構成され、前記ビット情報のビット順序を入れ替えるデインタリーブ処理を行うデインタリーブ処理部とを有し、
前記差動位相偏移用デインタリーバ及び前記MLSE復調器は、OFDM復調器から出力された第1の無線信号にデインタリーブ処理及び復調処理を行い、第1のビット情報を出力し、
前記繰り返し復号用デインタリーバは、前記第1のビット情報に対し、前記インタリーブ処理で入れ替えられたビットの順序を元に戻すデインタリーブ処理を行い、第2のビット情報を出力し、
前記復号器は、前記第2のビット情報を復号して、第3のビット情報を出力し、
前記インタリーブ処理部は、前記第3のビット情報に対し、前記デインタリーブ処理の逆となるインタリーブ処理を行って第4のビット情報を生成し、前記第4のビット情報を事前情報として前記MLSE復調器へ入力し、
以上の処理によって繰り返し復号処理を行うことを特徴とする無線通信システム。
【請求項8】
請求項7に記載の無線通信システムであって、
前記差動位相偏移用デインタリーバは、前記MLSE復調器の前段に配置されており、
前記差動位相偏移用デインタリーバは、前記第1の無線信号をデインタリーブ処理した第2の無線信号を出力し、
前記MLSE復調器は、前記事前情報を用いて第2の無線信号を復調し、第1のビット情報を出力することを特徴とする無線通信システム。
【請求項9】
請求項7に記載の無線通信システムであって、
前記繰り返し復号用デインタリーバは、少なくとも二つ以上のOFDM信号に跨ってビット順序を入れ替える機能を有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項10】
請求項7に記載の無線通信システムであって、
前記繰り返し復号用デインタリーバは、入れ替えるビット情報の大きさが一つのOFDMシンボルと異なって、少なくとも二つ以上のOFDM信号に跨ってビット順序を入れ替える機能を有する無線通信システム。
【請求項11】
請求項7に記載の無線通信システムであって、
前記繰り返し復号用デインタリーバは、入れ替えるビット情報の大きさが一つのOFDMシンボルと同一で、少なくとも二つ以上のOFDM信号に跨って、異なる入れ替えパターンでビット順序を入れ替える機能を有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項12】
請求項11に記載の無線通信システムであって、
前記繰り返し復号用デインタリーバは、入れ替えるビット情報の大きさが一つのOFDMシンボルと同一のデインタリーバと、一つのOFDMシンボル内で遅延時間が異なるインタリーバとで構成されることを特徴とする無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、平成30年(2018年)2月19日に出願された日本出願である特願2018−27242の優先権を主張し、その内容を参照することにより、本出願に取り込む。
【技術分野】
【0002】
本発明は、無線伝搬路を介してデータを送受信する無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0003】
本技術分野の背景技術として、BICM−ID(Bit Interleaved Coded Modulation with Iterative decoding)という技術が提案されている。例えば、特許文献1や非特許文献2に記載されるように、BICM−IDでは、変調に対する復調処理と符号化に対する復号処理とを繰り返して優れた特性を得ることができる。BICM−IDの特性は、復調器と復号器の各々の特性ではなく、それらの整合(マッチング)によって決定される。このため、EXIT(Extrinsic Information Transfer)解析を用いて収束特性を解析し、優れた特性を実現する復調器と復号器を設計することができる(例えば、非特許文献3参照)。
【0004】
また、直交周波数分割多重(OFDM)と差動位相偏移(DPSK)変調を組み合わせて用いる方式の受信装置において、DPSK変調信号の最尤系列推定(MLSE)の軟判定結果及び復号器を用いてBICM−IDを行うことにより、BICM−IDを用ない通常の遅延検波より特性を改善する方式が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−124367号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】D. Garg, F. Adachi, "Rate Compatible Punctured Turbo-Coded Hybrid ARQ for OFDM in a Frequency Selective Fading Channel", IEEE VTC 2003 Spring, pp. 2725-2729, April 2003.
【非特許文献2】X. Li and J. A. Ritcey, "Bit-Interleaved Coded Modulation with Iterative Decoding," IEEE Communications Letters, vol. 1, pp. 169171, 1997.
【非特許文献3】S. ten Brink, "Convergence Behavior of Iteratively Decoded Parallel Concatenated Codes," IEEE Transactions on Communications, vol. 49, No. 10, pp. 1727-1737, October 2001.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のOFDMでDPSK信号を並列に送信するシステムにおいて、MLSE及びBICM−ID方式を復調処理に用いた繰り返し復号処理を適用することによって良好な特性を実現する方式が提案されている。しかしながら、MLSE及びBICM−IDを用いた繰り返し復号方式では、BICM−IDで良好な収束特性を実現するためのDPSK信号のシンボル長が大きくなるため、良好な特性が得られるシンボル長においては、繰り返し復号処理部の回路規模の増大が課題となる。特に信号の順序をランダムに入れ替えるインタリーバ及びデインタリーバの回路規模は、処理するデータのサイズにより決定されるため、回路規模削減のボトルネックとなり得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、送信装置から受信装置へデータを送信する無線通信方法であって、前記送信装置は、OFDMを用いてDPSK信号を並列に出力する変調器を有し、前記受信装置は、無線信号を復調し、ビット情報を出力するMLSE復調器と、前記ビット情報を復号する復号器と、前記ビット情報のビット順序を入れ替えるインタリーブ処理部と、差動位相偏移用デインタリーバと、前記差動位相偏移用デインタリーバよりブロック長が小さい繰り返し復号用デインタリーバとから構成され、前記ビット情報のビット順序を入れ替えるデインタリーブ処理部とを有し、前記差動位相偏移用デインタリーバは、並列に送信されたDPSK信号の時間順序を入れ替えることによってデインタリーブ処理を行う機能を有し、前記方法は、前記差動位相偏移用デインタリーバ及び前記MLSE復調器が、OFDM復調器から出力された第1の無線信号にデインタリーブ処理及び復調処理を行い、第1のビット情報を出力し、前記繰り返し復号用デインタリーバが、前記第1のビット情報に対し、インタリーブ処理で入れ替えられたビットの順序を元に戻すデインタリーブ処理を行い、第2のビット情報を出力し、前記復号器が、前記第2のビット情報を復号して、第3のビット情報を出力し、前記インタリーブ処理部が、前記第3のビット情報に対し、前記デインタリーブ処理の逆となるインタリーブ処理を行って第4のビット情報を生成し、前記第4のビット情報を事前情報として前記MLSE復調器へ入力することにより、繰り返し復号処理を行う。
【発明の効果】
【0009】
本発明の代表的な実施の形態によれば、繰り返し復号処理による特性を改善しつつ、繰り返し復号処理の回路規模の増大を抑制できる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例の無線通信システムの構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施例の再送方法における繰り返し復号処理を示す図であり、
図2(A)は本実施例における受信側の繰り返し復号処理部を示す図であり、
図2(B)はEXIT解析結果を示す図である。
【
図3】本発明の実施例の繰り返し復号処理を示す図であり、
図3(A)はインタリーバ及びデインタリーバを差動位相偏移用と繰り返し復号処理用に分割した構成を示す図であり、
図3(B)は差動位相偏移用デインタリーバを繰り返し復号処理部の外部に設けた構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施例のOFDM及びDPSKを用いた繰り返し復号処理を示す図である。
【
図5】本発明の実施例のOFDM及びDPSKを用いた繰り返し復号処理を示す図である。
【
図6】DPSK用デインタリーブ処理の一例を示す図である。
【
図7】本発明の実施例のDPSK用デインタリーブ処理の一例を示す図である。
【
図8】繰り返し復号処理用デインタリーブ処理の一例を示す図である。
【
図9】本発明の実施例の繰り返し復号処理用デインタリーブ処理の一例を示す図である。
【
図10】本発明の実施例の繰り返し復号用デインタリーバの構成を示す図である。
【
図11】本発明の実施例の繰り返し復号処理用デインタリーブ処理の一例を示す図である。
【
図12】本発明の実施例の無線通信システムにおける誤り率特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施例1>
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施例の無線通信システムの構成を示す図である。
【0013】
本実施例の無線通信システムは、符号器10、インタリーバ11、DPSK(差動位相偏移)変調器12、OFDM(直交周波数分割多重)変調器13及びアンテナ14を有する送信機、及びOFDM復調器17、繰り返し復号処理部21及びアンテナ16を有する受信機によって構成される。送信機と受信機との間は、無線伝搬路15を介して接続されている。
【0014】
送信機では、符号器10が情報ビットを符号化し、符号器10から出力される符号語内のビット順序をインタリーバ11が入れ替え、DPSK変調器12が差動偏移変調を行い、OFDM変調器13が複数のDPSK信号をサブキャリアに乗せてアンテナ14から出力する。
【0015】
受信機の繰り返し復号処理部21は、DPSK復調器18、デインタリーバ19、復号器20及びインタリーバ24を有する。受信機では、無線伝搬路15を介して信号を受信し、受信した信号をOFDM復調器17が復調し、復調結果をDPSK復調器18が復調し、インタリーバ11の逆処理を行うデインタリーバ19がビット順序を元に戻し、復号器20が復号する。復号結果はインタリーバ24を介してDPSK復調器18に入力され、DPSK復調器18は復号器20の復号結果を参照してさらに高精度の復調結果を出力する(BICM−ID処理)。
【0016】
図2(A)は、本実施例における受信機の繰り返し復号処理部21を示す図であり、
図2(B)は、繰り返し復号処理のEXIT解析結果を示す図である。DPSKの軟判定復号処理には最尤系列推定(MLSE)を用いたブラインド(チャネル情報なし)復調が用いられる。
【0017】
BICM−IDで復調器と復号器の間でやり取りされる尤度情報としては、ビット単位の対数尤度比(LLR:Log Likelihood Ratio)が一般的に用いられる。LLRは、当該ビットbが0である確率と1である確率の比の対数表現であり、数式(1)で表される。
【0019】
数式(1)において、P(b=0)はbが0である確率、P(b=1)はbが1である確率を示す。
【0020】
BICM−IDの繰り返し復号処理の収束特性は、非特許文献3に記載されたEXIT(Extrinsic Information Transfer)解析によって解析できる。EXIT解析では、復号器、復調器の入出力特性を、数式(2)で表わされるビットの相互情報量Imの形で表示し、両者の特性を重ねて一つのチャートにプロットすることによって繰り返し復号処理で得られる情報量を解析できる。
【0022】
数式(2)の相互情報量は、ビットの相互情報量の符号語全体の平均であり、0〜1の値で表され、1に近いほど符号語全体のビット尤度が大きいことを示す。
【0023】
復調器の事前情報I
A,DEMと復号器の外部情報I
E,DECを横軸に、復調器の外部情報I
A,DEM、復号器の事前情報I
E,DECを縦軸に取ると、繰り返し復号処理により相互情報量はそれぞれの特性に沿って増加する。両者の特性が交差している場合、交差点で相互情報量の増加が停止し、復号結果に誤りが残留する。
図2(B)において、解析結果23で復調器と復号器の収束特性は交差していないため、誤りのない結果を得ることが可能となる。但し、収束特性は符号語全体の平均によって決定されるため、平均値に十分に漸近する程度の符号語が必要となる。OFDMを用いたDPSK変調では、チャネルの時間変動に追従するために時間方向にDPSK変調を用いるが、この場合、各サブキャリアのDPSK変調データは一つのOFDMシンボル当たり1個であり、良好な収束特性が得られるためのDPSK変調データを得るには1000OFDMシンボル以上必要となることが一般的である。この場合、繰り返し復号処理部で処理するデータ規模が大きくなり、特にインタリーバ、デインタリーバの規模が回路規模を削減する上でボトルネックになり得る。
【0024】
本発明では、回路規模の問題を解決するため、並列に送信されるDPSK信号をインタリーバ24、復号器20及びデインタリーバ19を介して関連付けることにより、少ないOFDMシンボルのDPSK信号をサブキャリア方向に束ねて良好な収束特性が得られる符号語を構成する信号処理方法と、インタリーバ24及びデインタリーバ19を複数に分割し、繰り返し復号部に含まれるインタリーバ24及びデインタリーバ19を小さくする方法を提供する。
【0025】
図3は、本発明の実施例の繰り返し復号処理部21を示す図であり、
図3(A)は、デインタリーバを差動位相偏移用デインタリーバ31と繰り返し復号用デインタリーバ32に分割し、かつ、インタリーバを差動位相偏移用33と繰り返し復号処理用32に分割した構成を示す図であり、
図3(B)は、差動位相偏移用デインタリーバ31を繰り返し復号処理部21の外部に設けた構成を示す図である。
【0026】
本発明の実施例では、複数サブキャリアのDPSK信号を束ねて一つの符号語として扱うため、BICM−IDで良好な特性を得るために最低限の必要なOFDMシンボル長を短くできる。しかし、インタリーバの本来の大きさはチャネルの変動に対してダイバーシチを得るのに十分な大きさとなるように選択されるため、BICM−IDの収束特性に必要な符号語サイズのみでは決定されない。そこで、チャネル変動に対して大きさが選択される差動位相偏移用デインタリーバ31と繰り返し復号処理部21で必要なデインタリーバ32に分割し、差動位相偏移用デインタリーブ処理は繰り返し復号の前に行う構成とする。
図3(A)において、差動位相偏移用デインタリーバ31は繰り返し復号用デインタリーバ32より大きなブロックサイズを有し、チャネルの変動に対して十分なダイバーシチが得られるように設計される。
【0027】
ここで、MLSE復調器22は、隣接信号の位相差から送信ビットを推定する処理を実行し、差動位相偏移用デインタリーバ31においてDPSK信号の前後関係が保持されるのであれば、MLSEとの順序を入れ替え、繰り返し復号処理部21の外に出すことができる。すなわち、
図3(B)に示すように、差動位相偏移用デインタリーバ31はMLSE復調器22の前段に設けられており、繰り返し復号処理部21の外部で処理を実行するため、差動位相偏移用デインタリーブ処理は不要となる。このような構成とすることで繰り返し復号処理部21の回路規模を小さくできる。デインタリーブ処理はインタリーブ処理の逆処理であり、以下、主に受信側でのデインタリーブ処理を用いて、本発明の実施例のインタリーブ及びデインタリーブ処理を説明する。
【0028】
図4は、OFDM及びDPSKを用いた繰り返し復号処理を示す図である。DPSK信号41はOFDM時間方向に配置されており、周波数方向のDSPK信号はそれぞれ独立している。MLSEにおいて、DPSKシンボル42の処理には、隣接するDPSK信号が必要となるため、DPSK信号の時間方向の順序をインタリーブで入れ替えた場合には、MLSE22と復号器20の間で、インタリーブ、デインタリーブが必要となる。繰り返し復号処理部21では、十分な長さのDPSK信号と復号器20の復号結果を各サブキャリア毎に繰り返し復号処理をする。
【0029】
図5は、本発明の実施例のOFDM及びDPSKを用いた繰り返し復号処理を示す図である。DPSK信号は差動位相偏移用デインタリーバ31のシンボル長より短く、複数サブキャリアのDPSK信号を一つのMLSEグループとして処理する。復号結果も時間及びサブキャリア方向に纏めたものを一つの符号語として用い、繰り返し復号を行う。
【0030】
次に、
図6及び
図7を用いて、本発明の実施例の差動位相偏移用インタリーブ処理及びデインタリーブ処理を説明する。
【0031】
図6は、従来の差動位相偏移用デインタリーブ処理の一例を示す図であり、100OFDMシンボルの時間順序をランダムに入れ替えるデインタリーブ処理前後のサブキャリアのDPSK信号41内のDPSKシンボル42の時間順序を示す。
図6においてデインタリーブ結果61は、デインタリーブ前からサブキャリア内でDPSKシンボル42の時間順序が入れ替わるため、MLSEの前に入れ替えた順序を元に戻す必要があり、差動位相偏移用デインタリーバ31を繰り返し復号の外に出すことは困難となる。
【0032】
図7は、本発明の実施例の差動位相偏移用デインタリーブ処理の一例を示す図である。
図7においてデインタリーブ結果71は、サブキャリアのDPSK信号41内のDPSKシンボル42の時間順序を保持しつつ、サブキャリア間の時間順序を異ならせることによってデインタリーブ機能を実現している。デインタリーブ後のDPSKシンボル42には、サブキャリア毎にランダムに1から100シンボルの遅延が挿入されており、サブキャリア数が十分に大きければ、100シンボル分のダイバーシチ効果が期待できる。この場合、DPSK信号41内では、デインタリーブ前後でDPSKシンボル42の時間順序は維持されており、MLSEで必要な隣接するDPSKシンボル42の関係は維持されていることから、MLSEとインタリーブの順序を容易に入れ替えることができる。
【0033】
次に、
図8から
図11を用いて本発明の実施例の繰り返し復号用インタリーブ、デインタリーブ処理を説明する。
【0034】
図8は、従来のインタリーバを繰り返し復号処理用デインタリーバとして用いたデインタリーブ処理の一例を示す図である。繰り返し処理用のデインタリーブでは、差動位相偏移用デインタリーブで時間方向のデインタリーブが行われた信号をデインタリーブする。繰り返し復号部のデインタリーブ処理は可能な限り処理量が少ないことが望ましいが、単純にOFDMシンボル単位の周波数方向のデインタリーブを組み合わせた場合、繰り返し復号処理において各サブキャリアのDPSK信号41の尤度情報が交換されず、良好な収束特性を実現できない。繰り返し復号処理におけるDPSK信号41の関連付けの有無は、デインタリーブ後81のサブキャリア方向のインデックスで確認できる。
図8に示すデインタリーブ結果81では、DPSK信号41のサブキャリア方向のインデックスはf75を含むのみであり、DPSK信号41間での関連付けは限定的である。
【0035】
図9は、本発明の実施例の繰り返し復号処理用デインタリーブ処理の一例を示す図である。
図9に示すデインタリーバは復調器のMLSEグループ内の時間及び周波数方向の両方をランダムに入れ替えている。
図9に示すデインタリーブ結果91のDPSK信号41において、周波数方向のインデックスはf75、f99、f72、f42を含んでおり、これらのサブキャリアのDPSK信号間で尤度情報が交換される。この場合、MLSE前後でインタリーブ処理及びデインタリーブ処理が必要となるが、差動位相偏移用デインタリーバよりシンボル長が短いため、回路規模を削減できる。
【0036】
図9のブロックインタリーバを用いれば良好な特性が得られるが、本発明の実施例の繰り返し復号用インタリーバとして必要な機能は、インタリーブ処理が一つのOFDMシンボル単位と異なればよい。すなわち、
図8に示すように、インタリーブ処理の単位が一つのOFDMシンボル単位と等しければ、OFDMシンボル単位でインタリーブ処理が行われるが、
図9に示すように、インタリーブ処理の単位が一つのOFDMシンボル単位と異なれば、インタリーブ処理毎にズレ幅が変化しつつ、OFDMシンボル単位とインタリーブ処理がずれる。すなわち、MLSEグループ内の全てのDPSK信号のインタリーブ処理及びデインタリーブ処理が完了した後に一つのサブキャリアのDPSK信号41に複数サブキャリアの尤度情報が含まれることになる。このため、より良好な特性が実現できる。なお、インタリーブ処理の単位は、一つのOFDMシンボル単位より大きいことが望ましいが、小さくてもよい。
【0037】
また、インタリーブ処理が一つのOFDMシンボル単位と同一でも、畳み込みビットインタリーブや、複数個のインタリーブを組み合わせることによって良好な特性が実現できる。
【0038】
図10は、インタリーブ処理が一つのOFDMと同一で、畳み込みビットインタリーバと組み合わせた場合の繰り返し復号用デインタリーバ32の構成を示す。ブロックデインタリーバ102は、例えば一つのOFDMシンボル内のサブキャリアの位置を(サブキャリア単位でサブキャリア上のビットを)インタリーブでランダムに入れ替えたものを元の順番に戻すデインタリーバである。デインタリーバの出力はビット単位の畳み込みデインタリーバ101で遅延を加えられ、インタリーブで加えられた遅延を元の順番へ戻す。この場合、ブロックデインタリーバ102によるデインタリーブ処理は一つのOFDMシンボル内で閉じているものの、その後の畳み込みデインタリーバで一つのOFDMシンボル内の一部のビットが他のOFDMシンボル内のビットと混ざるので、本発明の繰り返し復号では良好な特性を実現できる。
【0039】
図10に示す繰り返し復号用デインタリーバ32では、ビット単位でみた場合、異なる入れ替えパターンでビット順序を入れ替えることができる。つまり、OFDMシンボル毎にインタリーブパターンを切り替えることができ、サブキャリアのDPSK信号間で尤度情報が交換され、良好な特性が実現できる。
【0040】
図11は、複数個のOFDMシンボル単位のデインタリーバを組み合わせた例を示す図である。
図11においてデインタリーバは、一つのOFDMシンボル内のサブキャリアをランダムに入れ替えるものである。但し、OFDMシンボル毎に異なるインタリーブパターンを用いており、デインタリーブ結果111のDPSK信号41は、周波数インデックスf75、f99、f72、f42を含んでおり、これらのサブキャリアのDPSK信号間で尤度情報が交換される。
図11に示す例おいては、
図10のような畳み込みデインタリーバ101と組み合わせることなく良好な特性を実現できる。
【0041】
図12は、本発明の実施例の無線通信システムにおける誤り率特性を示す図である。BICM−IDを用いない場合の遅延検波の特性を□で表し、BICM−IDを用いた場合の特性を○で表し、本発明の実施例の繰り返し復号部を用いた特性を×で表す。
図12より、本発明の手法を用いることで、回路規模を削減しつつ、BICM−IDよりSNRを改善できる。
【0042】
以上に説明したように、本発明の実施例によると、送信装置から受信装置へデータを送信する無線通信システムであって、差動位相偏移用デインタリーバ31及びMLSE復調器22は協働して、OFDM復調器17から出力された第1の無線信号にデインタリーブ処理及び復調処理を行い、第1のビット情報を出力し、繰り返し復号用デインタリーバ32は、第1のビット情報に対し、インタリーブ処理で入れ替えられたビットの順序を元に戻すデインタリーブ処理を行い、第2のビット情報を出力し、復号器20は、第2のビット情報を復号して、第3のビット情報を出力し、インタリーブ処理部34は、第3のビット情報に対し、デインタリーブ処理の逆となるインタリーブ処理を行って第4のビット情報を生成し、第2のビット情報を事前情報としてMLSE復調器へ入力することにより、繰り返し復号処理を行うので、繰り返し復号処理による特性を改善(誤り率特性における所要SNRを低減)しつつ、繰り返し復号処理の回路規模の増大を抑制できる。
【0043】
また、差動位相偏移用デインタリーバ31は、MLSE復調器22の前段に配置されており、差動位相偏移用デインタリーバ31は、第1の無線信号をデインタリーブ処理した第2の無線信号を出力し、MLSE復調器22は、事前情報を用いて第2の無線信号を復調し、第1のビット情報を出力するので、差動位相偏移用デインタリーバ31を繰り返し復号処理部21の外部に配置でき、差動位相偏移用デインタリーブ処理が不要となり、繰り返し復号処理部21の回路規模を小さくできる。
【0044】
また、繰り返し復号用デインタリーバ32は、少なくとも二つ以上のOFDM信号に跨ってビット順序を入れ替える機能を有し、MLSE復調器22は、差動位相偏移用デインタリーバ31よりブロックサイズが小さいDPSK変調信号を復調し、繰り返し復号用デインタリーバ32によってビット順序が入れ替えられたDPSK信号の復調結果を、復号器20の間で繰り返し復号処理を行うので、OFDMシンボル単位とインタリーブ処理がずれるため、サブキャリアのDPSK信号間で尤度情報が交換され、より良好な特性が実現できる。
【0045】
また、繰り返し復号用デインタリーバ32は、入れ替えるビット情報の大きさが一つのOFDMシンボルと異なって、少なくとも二つ以上のOFDM信号に跨ってビット順序を入れ替える機能を有するので、OFDMシンボル単位とインタリーブ処理がずれるため、サブキャリアのDPSK信号間で尤度情報が交換され、より良好な特性が実現できる。
【0046】
また、繰り返し復号用デインタリーバ32は、入れ替えるビット情報の大きさが一つのOFDMシンボルと同一で、少なくとも二つ以上のOFDM信号に跨って、異なる入れ替えパターンでビット順序を入れ替える機能を有するので、OFDMシンボル単位とインタリーブ処理がずれるため、サブキャリアのDPSK信号間で尤度情報が交換され、より良好な特性が実現できる。
【0047】
また、繰り返し復号用デインタリーバ32は、入れ替えるビット情報の大きさが一つのOFDMシンボルと同一のデインタリーバと、一つのOFDMシンボル内で遅延時間が異なるインタリーバとで構成されるので、OFDMシンボル毎にインタリーブパターンを切り替えることができ、サブキャリアのDPSK信号間で尤度情報が交換され、良好な特性が実現できる。
【0048】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
【0049】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0050】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0051】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。