(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記連結機構が、前記第1自在継手および前記第2自在継手を連結する連結軸と、前記連結軸の軸方向に、前記連結軸に対して前記出力軸を相対移動させる移動機構とを有する、請求項1に記載の車両用操舵装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
転舵輪が転舵される際、ストラットは、ベアリングによって支持された部分を揺動中心として揺動する。車両用操舵装置における各部品の組み付け公差や、転舵輪からの荷重の入力によって、キングピン軸とストラットの中心軸線との間の角度が僅かに変化し、ストラットにおいてベアリングに支持された部分と、揺動中心とがずれることがある。
ストラットにおいてベアリングに支持された部分と揺動中心とがずれた状態でストラットがキングピン軸まわりに揺動すると、ベアリングと車体との間に介在するゴムが伸縮したり、当該ゴムがキングピン軸まわりに揺動したりする。これによって、ストラットとウォームホイールとが正規の相対位置からずれるようにストラットに荷重が負荷される。
【0005】
特許文献1に記載の車両用操舵装置では、ストラットとウォームホイールとがスプライン結合により連結されているため、ウォームホイールの中心軸線とストラットの中心軸線とをずらすことができない。したがって、ウォームホイールの中心軸線が延びる方向と交差する方向からストラットに荷重が負荷された場合、ストラットに応力が集中してストラットが変形してしまい、転舵輪に動力を正確に伝達できないという課題が提起されている。
【0006】
その対策として、ウォームホイールの中心軸線とストラットの中心軸線とをずらす手段として、ウォームホイールとストラットとの間にゴムを介在させることが提案されている。しかし、この場合、ウォームホイールの回転とストラットの回転とに時間差が生じるため、ステアリングホイールの回転を転舵輪に正確に伝達できないおそれがある。
この発明は、かかる背景のもとでなされたものであり、転舵輪を正確に転舵させることができる車両用操舵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、転舵輪(3L,3R)を転舵させる転舵機構(5L,5R)と、前記転舵輪を転舵させるための駆動力を前記転舵機構に付与するアクチュエータ(4L,4R)とを含む車両用操舵装置(1;1P;1Q;1R;1S)であって、前記転舵機構が、前記アクチュエータからの駆動力が入力される入力軸(30)と、前記入力軸からの駆動力を前記転舵輪に出力する出力軸(40)と、前記入力軸に対して前記出力軸を偏角させた状態で前記入力軸から前記出力軸への駆動力の伝達が可能な自在継手(51;51P;51R,52;52P;52R,111,130)を有し、前記入力軸および前記出力軸を連結する連結機構(50;50P;50Q;50R;50S)とを含み、前記出力軸がサスペンション(S)の一部を構成し、前記連結機構において、前記自在継手が第1自在継手(51;51P;51R)および第2自在継手(52;52P;52R)を有し、前記第1自在継手および前記第2自在継手が、前記入力軸に対して前記出力軸を二段階で偏角可能であ
り、前記連結機構が、前記入力軸に対して前記出力軸を偏心させる偏心継手(110)を有する、車両用操舵装置である。
【0008】
請求項
2に記載の発明は、前記連結機構が、前記第1自在継手および前記第2自在継手を連結する連結軸(53;53P)と、前記連結軸の軸方向(X3)に、前記連結軸に対して前記出力軸を相対移動させる移動機構(52P;53)とを有する、請求項2に記載の車両用操舵装置である。
【0009】
請求項
3に記載の発明は、前記連結機構が、前記入力軸または前記出力軸の軸方向(X1;X2)に、前記入力軸に対して前記出力軸を相対移動させる移動機構(111;128)を有する、請求項1
または2のいずれか一項に記載の車両用操舵装置である。
【0010】
請求項
4に記載の発明は、転舵輪(3L,3R)を転舵させる転舵機構(5L,5R)と、前記転舵輪を転舵させるための駆動力を前記転舵機構に付与するアクチュエータ(4L,4R)とを含む車両用操舵装置(1;1P;1Q;1R;1S)であって、前記転舵機構が、前記アクチュエータからの駆動力が入力される入力軸(30)と、前記入力軸からの駆動力を前記転舵輪に出力する出力軸(40)と、前記入力軸に対して前記出力軸を偏角させた状態で前記入力軸から前記出力軸への駆動力の伝達が可能な自在継手(51;51P;51R,52;52P;52R,111,130)を有し、前記入力軸および前記出力軸を連結する連結機構(50;50P;50Q;50R;50S)とを含み、前記出力軸がサスペンション(S)の一部を構成し、前記アクチュエータを収容し、車体に対して移動可能に取り付けられたハウジング(90)をさらに含み、前記転舵機構が、前記ハウジングに取り付けられ、前記入力軸の中心軸線まわりに前記自在継手が回転可能なように前記自在継手を支持する支持部材(136)を含み、前記支持部材において前記自在継手を支持する部分(138;145)と、前記自在継手において前記支持部材によって支持される部分(139;146)とが軸受(150;151)を構成し、前記連結機構には、前記自在継手および前記支持部材がそれぞれ1つずつ設けられ、前記球面軸受の回転中心と前記自在継手の偏角中心(B)とが一致する、車両用操舵装置である。
【0011】
請求項
5に記載の発明は、前記アクチュエータおよび前記転舵輪の間に設けられた隔壁(14)をさらに含む、請求項1〜
4のいずれか一項に記載の車両用操舵装置である。
請求項
6に記載の発明は、前記アクチュエータの少なくとも一部が、前記入力軸の軸方向に対する直交方向に前記連結機構と並んでいる、請求項
5に記載の車両用操舵装置である。
【0012】
請求項
7に記載の発明は、前記アクチュエータが、回転軸(23)を有する電動モータであり、前記回転軸が、前記入力軸の軸方向に対して交差する方向に延びている、請求項
5または
6に記載の車両用操舵装置である。
請求項
8に記載の発明は、前記出力軸が、前記出力軸の軸方向に伸縮可能、かつ、前記出力軸の中心軸線まわりに回転可能である、請求項1〜
7のいずれか一項に記載の車両用操舵装置である。
【0013】
請求項
9に記載の発明は、前記出力軸は、ストラット式サスペンションに用いられるストラットダンパであり、その一端が前記転舵輪を支持するナックル(10)に連結され、その他端が前記連結機構に連結されている、請求項
8に記載の車両用操舵装置である。
なお、上記において、括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、アクチュエータからの駆動力が入力される入力軸と当該駆動力を転舵輪に出力する出力軸とが、自在継手を有する連結機構によって連結されている。自在継手によって入力軸に対して出力軸を偏角させた状態で入力軸に対する出力軸の駆動力の伝達が可能なので、入力軸に対する出力軸の偏角量を充分に確保することができる。「偏角」とは、2つの軸部材の中心軸線の間に角度差が発生する(異なる方向に延びる)ように軸部材同士がずれていることをいう。したがって、入力軸の軸方向に対する交差方向から出力軸に荷重が負荷された場合であっても、入力軸に対して出力軸が偏角することによって、出力軸に生じる応力を低減することができる。また、自在継手によって入力軸から出力軸へ駆動力を速やかに伝達することができるので、アクチュエータからの駆動力を転舵輪に正確に伝達することができる。したがって、転舵輪を正確に転舵させることができる。
【0015】
さらに、第1自在継手および第2自在継手が入力軸に対して出力軸を二段階に偏角可能なので、入力軸に対する出力軸の偏角量を一層充分に確保することに加え、入力軸に対して出力軸を偏心させることが可能となる。「偏心」とは、2つの軸部材の中心軸線が平行に並ぶように軸部材同士がずれていることをいう。そのため、出力軸に生じる応力を一層低減できるので、転舵輪を一層正確に転舵させることができる。
さらに、偏心継手によって入力軸に対して出力軸が偏心させられる。そのため、出力軸は、入力軸に対して偏角し、かつ、入力軸に対して偏心した状態で、入力軸からの駆動力を転舵輪に出力することができる。そのため、出力軸に生じる応力を一層低減できるので、転舵輪を一層正確に転舵させることができる。
【0016】
請求項
2に記載の発明によれば、移動機構が、第1自在継手および第2自在継手を連結する連結軸の軸方向に、連結軸に対して出力軸を相対移動させる。そのため、連結軸の軸方向に沿って出力軸に荷重が負荷された場合であっても出力軸に生じる応力を低減できるので、転舵輪を正確に転舵させることができる。さらに、入力軸に対する出力軸の偏心に起因して第1自在継手および第2自在継手の中心間距離が変位してもその変位を吸収させることができる。
【0017】
請求項
3に記載の発明によれば、移動機構が、入力軸または出力軸の軸方向に、入力軸に対して出力軸を相対移動させる。そのため、入力軸または出力軸の軸方向に沿って出力軸に荷重が負荷された場合であっても出力軸に生じる応力を低減できるので、転舵輪を正確に転舵させることができる。
【0018】
請求項
4に記載の発明によれば、アクチュエータからの駆動力が入力される入力軸と当該駆動力を転舵輪に出力する出力軸とが、自在継手を有する連結機構によって連結されている。自在継手によって入力軸に対して出力軸を偏角させた状態で入力軸に対する出力軸の駆動力の伝達が可能なので、入力軸に対する出力軸の偏角量を充分に確保することができる。したがって、入力軸の軸方向に対する交差方向から出力軸に荷重が負荷された場合であっても、入力軸に対して出力軸が偏角することによって、出力軸に生じる応力を低減することができる。また、自在継手によって入力軸から出力軸へ駆動力を速やかに伝達することができるので、アクチュエータからの駆動力を転舵輪に正確に伝達することができる。したがって、転舵輪を正確に転舵させることができる。
さらに、請求項
4に記載の発明によれば、支持部材によって、入力軸の中心軸線まわりに回転可能なように自在継手が支持されている。また、支持部材は、車体に対して移動可能なハウジングに取り付けられている。そのため、入力軸、出力軸および連結機構をハウジングとともに車体に対して移動させることができる。したがって、出力軸に荷重が負荷された場合であっても、入力軸、出力軸、連結機構およびハウジングが一体移動して、出力軸に生じる応力を低減することができる。さらにハウジングに収容されたアクチュエータに対する負担も低減できる。したがって、転舵輪を一層正確に転舵させることができる。
【0019】
さらに、請求項
4に記載の発明によれば、支持部材において自在継手を支持する部分と、自在継手において支持部材によって支持される部分とが球面軸受を構成している。そして、自在継手の偏角中心と、球面軸受の回転中心とが一致している。そのため、1つの自在継手と1つの支持部材とを用いることで、自在継手の偏角中心と出力軸の揺動中心とを一致させた状態で出力軸を揺動させることができる。つまり、自在継手および支持部材を複数設けることなく入力軸に対する出力軸の偏心を許容することができる。さらに、複数の自在継手を上下方向に並べて配置する必要がないので、連結機構を上下方向にコンパクトにできる。
【0020】
請求項
5に記載の発明によれば、アクチュエータおよび転舵輪の間には、隔壁が設けられている。そのため、車両の走行中に、転舵輪によってはねられた泥水や石などからアクチュエータを保護できるので、アクチュエータの性能が維持される。したがって、アクチュエータが正確な駆動力を転舵輪に伝達することができるので、転舵輪を正確に転舵させることができる。
【0021】
請求項
6に記載の発明によれば、アクチュエータの少なくとも一部が、入力軸の軸方向に対する直交方向に自在継手と並んでいる。そのため、入力軸の軸方向においてアクチュエータおよび転舵機構を小型化できる。したがって、アクチュエータおよび転舵機構の搭載性の向上を図りつつ、アクチュエータを保護することができる。
請求項
7に記載の発明によれば、電動モータであるアクチュエータの回転軸が、入力軸の軸方向に対して交差する方向に延びている。そのため、入力軸の軸方向においてアクチュエータおよび転舵機構を一層小型化できる。
【0022】
請求項
8に記載の発明によれば、出力軸は出力軸の軸方向に伸縮可能であり、かつ、出力軸の中心軸線まわりに回転することができる。そのため、出力軸が転舵輪に駆動力を出力する際や、転舵輪から出力軸に荷重が伝達された際に出力軸に発生する応力を低減できる。そのため、出力軸は、入力軸からの駆動力を転舵輪に正確に出力することができる。したがって、転舵輪を正確に転舵させることができる。
【0023】
請求項
9に記載の発明のように、出力軸は、ストラット式サスペンション用のストラットダンパに適用することができるため、転舵機構の汎用性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用操舵装置1の構成を説明するための模式図である。
車両用操舵装置1は、左右独立転舵システムが採用されたステア・バイ・ワイヤシステムの構成を備えている。車両用操舵装置1は、運転者が操向のために操作する操舵部材としてのステアリングホイール2と、車両の前方側に配置された左転舵輪3Lおよび右転舵輪3Rとを含む。
【0026】
車両用操舵装置1は、左転舵輪3Lを転舵させる左転舵機構5Lと、ステアリングホイール2の回転操作に応じて左転舵輪3Lを転舵させるための駆動力(回転駆動力)を発生させる左転舵モータ4Lと、左転舵モータ4Lからの回転を減速させる左減速機構6Lとをさらに含む。左転舵モータ4Lは、電動モータであり、左転舵輪3Lを転舵させるための駆動力を左転舵機構5Lに付与する左アクチュエータの一例である。
【0027】
車両用操舵装置1は、右転舵輪3Rを転舵させる右転舵機構5Rと、ステアリングホイール2の回転操作に応じて右転舵輪3Rを転舵させるための駆動力(回転駆動力)を発生させる右転舵モータ4Rと、右転舵モータ4Rからの回転を減速させる右減速機構6Rとをさらに含む。右転舵モータ4Rは、電動モータであり、右転舵輪3Rを転舵させるための駆動力を右転舵機構5Rに付与する右アクチュエータの一例である。
【0028】
ステアリングホイール2と左転舵機構5Lおよび右転舵機構5Rとの間には、ステアリングホイール2に加えられた操舵トルクが左転舵機構5Lおよび右転舵機構5Rに機械的に伝達されるような機械的結合はない。左転舵輪3Lは、左転舵モータ4Lからの駆動力のみによって転舵され、右転舵輪3Rは、右転舵モータ4Rからの駆動力のみによって転舵される。
【0029】
左転舵モータ4Lおよび右転舵モータ4Rは、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)7に接続されている。左転舵モータ4Lおよび右転舵モータ4Rは、ECU7によって駆動制御される。ECU7には、例えば、ステアリングホイール2の操舵角を検出する操舵角センサ8からの信号が入力される。ECU7は、この入力信号に基づいて左転舵モータ4Lおよび右転舵モータ4Rを駆動制御する。
【0030】
図2は、左転舵輪3Lの周辺を模式的に示した断面図である。
図3は、左転舵モータ4Lの周辺を模式的に示した断面図である。以下では、左転舵モータ4L、左転舵機構5Lおよび左減速機構6Lについて詳しく説明する。右転舵モータ4R、右転舵機構5Rおよび右減速機構6Rのそれぞれは、左転舵モータ4L、左転舵機構5Lおよび左減速機構6Lのそれぞれと同様の構成を有する。そのため、右転舵モータ4R、右転舵機構5Rおよび右減速機構6Rの構成については、その説明を省略する。
【0031】
図3を参照して、左転舵機構5Lは、左転舵モータ4Lからの駆動力が入力される入力軸30と、入力軸30からの駆動力を左転舵輪3Lに出力する出力軸40と、入力軸30と出力軸40とを連結する連結機構50とを含む。入力軸30は、円筒状の軸であり、上下に延びている。入力軸30は、略上下に延びる中心軸線C1を有する。中心軸線C1が延びる方向を入力軸30の軸方向X1という。出力軸40は、入力軸30の下方に配置されている。出力軸40は、略上下に延びる中心軸線C2を有する。中心軸線C2が延びる方向を出力軸40の軸方向X2という。
【0032】
図2を参照して、出力軸40は、出力軸40の軸方向X2に伸縮可能な伸縮軸である。出力軸40は、スプライン嵌合等により一体回転可能(動力伝達可能)に、かつ、出力軸40の軸方向X2に相対移動可能に互いに連結された第1軸41および第2軸42を含む。第1軸41は、下方から第2軸42に挿入(内嵌)されている。本実施形態では、第2軸42に対して第1軸41が挿入されているが、本実施形態とは異なり、第1軸41に対して第2軸42が挿入されていてもよい。
【0033】
左転舵機構5Lは、出力軸40の第1軸41の下端に連結されたハブキャリア10と、ハブキャリア10に連結され、左転舵輪3Lに固定されたハブ11と、ハブキャリア10に連結されたロアアーム12と、ロアアーム12とハブキャリア10とを連結し、左転舵輪3Lを回動させる際の中心軸線であるキングピン軸Kを有するガイドジョイント13とをさらに含む。ハブキャリア10は、ナックルともいう。ハブキャリア10は、ハブ11を介して左転舵輪3Lを支持している。出力軸40は、下端(一端)がハブキャリア10に連結され、他端(上端)が連結機構50に連結されている(
図3も参照)。ハブキャリア10、ハブ11および出力軸40は、サスペンションS(懸架機構)を構成している。出力軸40は、サスペンションSの一部を構成するサスペンション構成体である。すなわち、サスペンションSの一部を構成する出力軸40が、左転舵機構5Lとして利用される。この実施形態では、出力軸40は、ストラット式のサスペンションSに用いられるストラットダンパである。
【0034】
ハブ11には、等速ジョイント15を介してドライブシャフト16の一端が連結されている。ドライブシャフト16の他端には、エンジン22からの回転駆動力が伝達される。そして、エンジン22からの回転駆動力は、ドライブシャフト16からハブ11を介して左転舵輪3Lに伝達され、水平に延びる回転軸線Aまわりに左転舵輪3Lが回転される。
ハブ11とハブキャリア10との間には、左転舵輪3Lの回転軸線Aまわりにハブ11とハブキャリア10とを相対回転させる軸受(図示せず)が介在されており、ハブキャリア10に連結されたロアアーム12は、車体9に支持されている。そのため、エンジン22からの回転駆動力に起因する回転軸線Aまわりのハブキャリア10の回転が防止される。
【0035】
車両用操舵装置1は、車体に固定され、左転舵輪3Lを少なくとも上方から覆うカバー14をさらに含む。カバー14は、車体の一部であってもよい。カバー14は、左転舵輪3L付近において、エンジンルームや車室と、車体の外側とを区画している。左転舵輪3Lは、エンジンルームや車室の外側に隔離されている。左転舵モータ4Lおよび左減速機構6Lは、車室またはエンジンルームに配置されている。すなわち、カバー14は、左転舵輪3Lと、左転舵モータ4Lおよび左減速機構6Lとの間に設けられた隔壁である(
図3も参照)。
【0036】
第2軸42は、カバー14を上下に貫通する貫通孔14aに挿通されている。第2軸42の上端は、カバー14から上方に突出している。カバー14には、第2軸42において貫通孔14aに挿通された部分の周辺を取り囲み下方に延びる固定部材17が固定されている。左転舵機構5Lは、固定部材17に取り付けられ、第2軸42において貫通孔14aに挿通された部分の周辺を取り囲むストラットマウント18と、ストラットマウント18に取り付けられ、第2軸42が出力軸40の中心軸線C2まわりに回転可能なように第2軸42を支持する深溝軸受19とを含む。深溝軸受19は、例えば深溝玉軸受やアンギュラ玉軸受である。
【0037】
ストラットマウント18は、ゴム等の弾性体によって形成されている。第1軸41には、固定部材17に下方から対向する対向部材20が設けられている。対向部材20と固定部材17との間には、キングピン軸Kが延びる方向に沿って伸縮するスプリング21が配置されている。
下方へのストラットマウント18の抜け止めは、連結機構50の第2自在継手52(後述する)とカバー14との当接によって達成される。第2自在継手52とカバー14との間には、緩衝材(図示せず)が介在されていてもよい。
【0038】
左転舵モータ4Lからの駆動力は、入力軸30、連結機構50、出力軸40、ハブキャリア10およびハブ11を介して左転舵輪3Lに伝達される(
図3も参照)。これにより、左転舵輪3Lは、キングピン軸Kまわりに回動されることによって転舵される。左転舵輪3Lが転舵される際、出力軸40は、キングピン軸Kと中心軸線C2との交点を揺動中心Cとして揺動する。左転舵輪3Lが転舵する際、揺動中心Cは、出力軸40において深溝軸受19によって支持されている部分の偏角中心Bと一致していることが好ましい。
【0039】
図3を参照して、左転舵モータ4Lは、少なくともその一部が入力軸30の軸方向X1に対する直交方向(略水平方向)に連結機構50と並んで配置されている。左転舵モータ4Lは、回転軸23と、回転軸23の回転を駆動する駆動源24とを含む。駆動源24は、ロータおよびステータ(図示せず)を含む。左減速機構6Lは、回転軸23の回転を減速させる第1減速機80と、第1減速機80によって減速された回転をさらに減速して入力軸30に伝達する第2減速機81と、第1減速機80および第2減速機81を連結する中間軸82とを含む。
【0040】
車両用操舵装置1は、左転舵モータ4Lおよび左減速機構6Lを収容するハウジング90をさらに含む。ハウジング90は、左転舵モータ4Lの駆動源24を収容するモータハウジング91と、回転軸23および左減速機構6Lを収容するギヤハウジング92とを含む。ギヤハウジング92は、たとえば複数のねじで、カバー14に固定されている。
ギヤハウジング92は、モータハウジング91に略水平方向から当接する第1部分92Aと、第1部分92Aに上方から当接する第2部分92Bとを含む。第1部分92Aと第2部分92Bとによって、回転軸23および左減速機構6Lが配置される収容空間93が区画されている。収容空間93は、モータハウジング91の内部空間と連通している。ギヤハウジング92の第1部分92Aおよび第2部分92Bは、複数のねじ94によって互いに固定されている。ギヤハウジング92の第1部分92Aと、モータハウジング91とは、複数のねじ95によって互いに固定されている。
【0041】
回転軸23の軸方向における略中央部には、カップリング25が設けられていてもよい。回転軸23は、ギヤハウジング92の第1部分92Aと回転軸23との間に設けられた軸受26を介して、回転軸23の中心軸線に回転可能なようにギヤハウジング92によって支持されている。中間軸82の下端は、軸受27を介してギヤハウジング92の第1部分92Aによって支持されており、中間軸82の上端は、軸受28を介してギヤハウジング92の第2部分92Bによって支持されている。これにより、中間軸82は、中間軸82の中心軸線まわりに回転可能なようにギヤハウジング92によって支持されている。入力軸30は、入力軸30の上端とギヤハウジング92の第2部分92Bとの間に設けられた軸受29を介して、入力軸30の中心軸線C1まわりに回転可能なようにギヤハウジング92によって支持されている。
【0042】
第1減速機80は、回転軸23の先端に設けられた第1歯車83と、第1歯車83と噛み合い、中間軸82に設けられた第2歯車84とを含む。第2減速機81は、中間軸82において第2歯車84よりも上方に設けられた第3歯車85と、第3歯車85と噛み合い、入力軸30と一体回転可能に設けられた第4歯車86とを含む。
第1歯車83は、例えば、ベベルアンギュラーギヤ(かさ歯車)である。第2歯車84は、例えば、ゼロールベベルアンギュラーギヤである。そのため、回転軸23は、中間軸82の軸方向と交差する方向に延びている。第3歯車85および第4歯車86は、例えば、平歯車である。そのため、中間軸82は、入力軸30の軸方向と平行に延びている。したがって、回転軸23は、入力軸30の軸方向X1に対して交差する方向に延びている。第3歯車85および第4歯車86は、はすば歯車であってもよい。
【0043】
第2歯車84がベベルアンギュラーギヤである場合、回転軸23は、入力軸30から離れるにしたがって下方に向かうように軸方向X1に対して交差する方向に延びる。第2歯車84は、この実施形態とは異なり、直交軸ベベルギヤであってもよく、この場合、回転軸23は、入力軸30の軸方向X1に対して直交する方向(略水平方向)に延びる。第2歯車84がベベルアンギュラーギヤである場合、第2歯車84が直交軸ベベルギヤである場合と比較して、駆動源24を下方に配置することができる。
【0044】
第2歯車84の歯数は、第1歯車83の歯数よりも多く、第4歯車86の歯数は、第3歯車85の歯数よりも多い。言い換えると、第1減速機80の減速比が1よりも大きく、第2減速機81の減速比が1よりも大きい。そのため、回転軸23から中間軸82に伝達される回転が第1歯車83と第2歯車84との間で減速され、中間軸82から入力軸30に伝達される回転が第3歯車85と第4歯車86との間で減速される。つまり、左転舵モータ4Lからの回転が、第1減速機80および第2減速機81によって二段階で減速されて入力軸30に伝達される。左減速機構6L全体の減速比が50〜100程度であることが好ましい。
【0045】
第1減速機80がベベルアンギュラーギヤや直交軸ベベルギヤといった比較的伝達効率が高い歯車によって構成され、第2減速機81がはすば歯車や平歯車といった比較的伝達効率が高い歯車によって構成されているため、左転舵モータ4Lの回転を二段階で減速させつつ左減速機構6Lの伝達効率を向上させることができる。よって、左減速機構6Lの伝達効率は、ウォームとウォームホイールとによって構成される減速機構と比較して格段に高い。
【0046】
ギヤハウジング92の第1部分92Aと回転軸23との間に設けられた軸受26は、たとえば、回転軸23の軸方向に互いに隣接して配置された一対のアンギュラ玉軸受によって構成されていてもよい。この場合、ギヤハウジング92に対する回転軸23の固定が安定するので、第1歯車83と第2歯車84との噛み合いが安定する。
次に、連結機構50の詳細について説明する。連結機構50は、入力軸30に対して出力軸40を二段階に偏角させた状態で入力軸30から出力軸40への駆動力の伝達が可能な第1自在継手51および第2自在継手52と、第1自在継手51および第2自在継手52を連結する連結軸53とを含む。詳しくは、第1自在継手51は、入力軸30に対して連結軸53を偏角させた状態で入力軸30から連結軸53への駆動力の伝達が可能である。第2自在継手52は、連結軸53に対して出力軸40を偏角させた状態で連結軸53から出力軸40への駆動力の伝達が可能である。連結軸53は、略上下に延びる中心軸線C3を有する。中心軸線C3が延びる方向を連結軸53の軸方向X3という。
【0047】
図4は、第1自在継手51の模式的な斜視図である。
図3および
図4を参照して、第1自在継手51は、中心軸線C1まわりに入力軸30と一体回転するように入力軸30に連結された外側環状部材54と、外側環状部材54と連結され、外側環状部材54の内側に配置された内側環状部材55とを含む。第1自在継手51は、内側環状部材55と連結され、内側環状部材55の内側に配置され、中心軸線C3まわりに連結軸53と一体回転するように連結軸53に連結されたヨーク56をさらに含む。
【0048】
外側環状部材54と内側環状部材55とは、入力軸30の中心軸線C1に対して直交する回転軸線A1まわりに相対回転可能に連結されている。内側環状部材55とヨーク56とは、連結軸53の中心軸線C3と回転軸線A1とに対して直交する回転軸線A2まわりに相対回転可能に連結されている。
第1自在継手51は、回転軸線A1を有し、回転軸線A1まわりに外側環状部材54と内側環状部材55とを相対回転可能に連結する一対の第1中心軸(第1支軸)57と、回転軸線A2を有し、回転軸線A2まわりに内側環状部材55とヨーク56とを相対回転可能に連結する一対の第2中心軸(第2支軸)58とをさらに含む。
【0049】
外側環状部材54は、入力軸30に対して下方から例えば圧入状態で内嵌されて入力軸30に連結されている。これにより、第1自在継手51が入力軸30に取り付けられている。外側環状部材54は、入力軸30の上端に設けられたフランジ31によって、入力軸30の軸方向X1において位置決めされている。第1自在継手51のヨーク56は、連結軸53の上端が固定された基部56Aと、対応する第2中心軸58が挿通される挿通孔をそれぞれ有し、基部56Aから第2自在継手52に向けて延びる一対の腕部56Bとを一体に含む。
【0050】
第2自在継手52は、中心軸線C2まわりに出力軸40と一体回転する外側環状部材60と、外側環状部材60に連結され、外側環状部材60の内側に配置された内側環状部材61とを含む。第2自在継手52は、内側環状部材61に連結され、内側環状部材61の内側に配置され、連結軸53の中心軸線C3まわりに連結軸53と一体回転するように連結軸53に連結されたヨーク62をさらに含む。
【0051】
外側環状部材60と内側環状部材61とは、出力軸40の中心軸線C2に対して直交する回転軸線A3まわりに相対回転可能に連結されている。内側環状部材61とヨーク62とは、連結軸53の中心軸線C3と回転軸線A3とに対して直交する回転軸線A4まわりに相対回転可能に連結されている。
第2自在継手52は、回転軸線A3を有し、回転軸線A3まわりに外側環状部材60と内側環状部材61とを相対回転可能に連結する一対の第1中心軸(第1支軸)63と、回転軸線A4を有し、回転軸線A4まわりに内側環状部材61とヨーク62とを相対回転可能に連結する一対の第2中心軸(第2支軸)64とをさらに含む。
図3では、一対の第1中心軸63のうち、一方の第1中心軸63のみを図示している。
【0052】
第2自在継手52は、第2自在継手52を出力軸40に取り付けるための取付部材65をさらに含む。取付部材65は、外側環状部材60と一体に設けられており、ねじ(図示せず)が捻じ込まれることによって出力軸40の第2軸42の上端を締め付けて、出力軸40に固定される。
第2自在継手52のヨーク62は、連結軸53の下端が固定された基部62Aと、対応する第2中心軸64が挿通される挿通孔をそれぞれ有し、基部62Aから第1自在継手51に向けて延びる一対の腕部62Bとを一体に含む。
【0053】
連結軸53は、例えば、連結軸53の軸方向X3に伸縮可能な伸縮軸である。連結軸53は、軸方向X3に互いに相対移動可能であり、連結軸53の中心軸線C3まわりに一体回転可能な第1軸66および第2軸67を含む。第1軸66は、第2軸67に上方から挿入されている。
連結軸53は、連結軸53の軸方向X3に並んで第1軸66と第2軸67との間に配置された複数のボール(剛球)68をさらに含む。複数のボール68が第1軸66および第2軸67の間で転動することによって、第1軸66および第2軸67が連結軸53の軸方向X3に滑らかに相対移動可能である。このように、連結軸53は、連結軸53の軸方向X3に、連結軸53に対して出力軸40を相対移動させる移動機構として機能する。
【0054】
本実施形態では、第2軸67に対して第1軸66が挿入されているが、本実施形態とは異なり、第1軸66に対して第2軸67が挿入されていてもよい。また、本実施形態では、第1軸66と第2軸67との間に複数のボール68が配置されているが、本実施形態とは異なり、第1軸66と第2軸67とがスプライン嵌合により連結されていてもよい。
ここで、車両用操舵装置1における各部品の組み付け公差や、転舵輪3L,3Rからの荷重の入力によって、ストラットマウント18が撓み、揺動中心Cが上下、左右および前後に動かされる。また、転舵により中心軸線C2はキングピン軸Kまわりにすりこぎ運動をする。これによって、入力軸30と出力軸40とが正規の相対位置からずれるように出力軸40に荷重が負荷される。出力軸40の応力集中を回避するためには、入力軸30に対する出力軸40のずれ量を充分に確保する必要がある。
【0055】
第1実施形態によれば、転舵モータ4L,4Rからの駆動力が入力される入力軸30と当該駆動力を転舵輪3L,3Rに出力する出力軸40とが、第1自在継手51および第2自在継手52を有する連結機構50によって連結されている。第1自在継手51および第2自在継手52によって入力軸30に対して出力軸40を偏角させた状態で入力軸30に対する出力軸40の駆動力の伝達が可能なので、入力軸30に対する出力軸40の偏角量を充分に確保することができる。したがって、入力軸30の軸方向X1に対する交差方向から出力軸40に荷重が負荷された場合であっても、入力軸30に対して出力軸40が偏角することによって、出力軸40に生じる応力を低減することができる。また、入力軸30と出力軸40との間にゴムを介在させることなく、第1自在継手51および第2自在継手52によって入力軸30から出力軸40へ駆動力を速やかに伝達することができるので、転舵モータ4L,4Rからの駆動力を転舵輪3L,3Rに正確に伝達することができる。したがって、転舵輪3L,3Rを正確に転舵させることができる。
【0056】
また、第1実施形態によれば、第1自在継手51および第2自在継手52によって、入力軸30に対して出力軸40を二段階で偏角可能なので、入力軸30に対する出力軸40の偏角量を一層充分に確保することができる。また、入力軸30に対して連結軸53を偏角させ、連結軸53に対して出力軸40を偏角させることによって、入力軸30の中心軸線C1と出力軸40の中心軸線C2とが平行にずれるように入力軸30に対して出力軸40を配置することができる。すなわち、入力軸30に対して出力軸40を偏心させることができる。そのため、入力軸30に対する出力軸40の偏角に加えて入力軸30に対して出力軸40を偏心させることによって、出力軸40に生じる応力を一層低減することができるので、転舵輪3L,3Rを一層正確に転舵させることができる。
【0057】
また、第1自在継手51および第2自在継手52によって入力軸30の回転(駆動力)が出力軸40に伝達されるので、入力軸30と出力軸40との間にゴムを介在させる構成と比較して転舵輪3L,3Rに対するステアリングホイール2の応答性が向上されている。また、第1減速機80および第2減速機81のそれぞれは、伝達効率の高い歯車対(歯車83,84からなる歯車対と歯車85,86からなる歯車対)によって構成されているので、減速機効率が高い。そのため、車両が旋回するときの位置から車両が直進するときの位置に転舵輪3L,3Rが戻る際、ステアリングホイール2が操舵中立位置に速やかに戻る。また、入力軸30と出力軸40との間にゴムを介在させる構成と比較して連結機構50が劣化しにくいので耐久性の向上が図れる。
【0058】
また、第1実施形態によれば、移動機構である連結軸53が伸縮することによって、連結軸53の軸方向X3に、連結軸53に対して出力軸40が相対移動する。連結軸53の軸方向X3に沿って出力軸40に荷重が負荷された場合であっても出力軸40に生じる応力を低減できるので、転舵輪3L,3Rを一層正確に転舵させることができる。さらに、入力軸30に対する出力軸40の偏心に起因して第1自在継手51および第2自在継手52の中心間距離が変位してもその変位を吸収させることができる。
【0059】
また、第1実施形態によれば、転舵モータ4L,4Rおよび転舵輪3L,3Rの間には、隔壁としてのカバー14が設けられている。そのため、車両の走行中に、転舵輪3L,3Rによってはねられた泥水や石などから転舵モータ4L,4Rを保護できるので、転舵モータ4L,4Rの性能が維持される。したがって、転舵モータ4L,4Rの駆動力を転舵機構5L,5Rが転舵輪3L,3Rに正確に伝達することができるので、転舵輪3L,3Rを正確に転舵させることができる。
【0060】
また、第1実施形態によれば、転舵モータ4L,4Rの少なくとも一部が、入力軸30の軸方向X1に対する直交方向に第1自在継手51と並んでいる。そのため、入力軸30の軸方向X1において、転舵モータ4L,4Rおよび転舵機構5L,5Rを小型化できる。詳しくは、転舵モータ4L,4Rを車室またはエンジンルーム内に配置しつつ、軸方向X1において転舵モータ4L,4Rおよび転舵機構5L,5Rの嵩を低減できる。したがって、転舵モータ4L,4Rおよび転舵機構5L,5Rの搭載性の向上を図りつつ、転舵モータ4L,4Rを保護することができる。
【0061】
また、第1実施形態によれば、電動モータである転舵モータ4L,4Rの回転軸23が、入力軸30の軸方向X1に対して交差する方向に延びている。そのため、入力軸30の軸方向X1において転舵モータ4L,4Rおよび転舵機構5L,5Rを一層小型化できる。
また、第1実施形態によれば、出力軸40は、軸方向X2に伸縮可能であり、かつ、中心軸線C2まわりに回転することができる。そのため、出力軸40が転舵輪3L,3Rに駆動力を出力する際や、転舵輪3L,3Rから出力軸40に荷重が伝達された際に出力軸40に発生する応力を低減できる。そのため、出力軸40は、入力軸30からの駆動力を転舵輪3L,3Rに正確に出力することができる。したがって、転舵輪3L,3Rを正確に転舵させることができる。
【0062】
また、第1実施形態によれば、出力軸は40、ストラット式サスペンション用のストラットダンパに適用することができるため、転舵機構5L,5Rの汎用性の向上を図ることができる。
第1実施形態とは異なり、連結機構50が、第2自在継手52および連結軸53を含んでおらず、第1自在継手51のみを含んでいて、第1自在継手51が、入力軸30に対して出力軸40を偏角させた状態で入力軸30から出力軸40に駆動力を伝達することができるように構成されていてもよい。この場合、第1自在継手51のヨーク56が中心軸線C2まわりに出力軸40と一体回転するように出力軸40に連結されている。
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態に係る車両用操舵装置1Pの連結機構50Pの周辺を模式的に示した断面図である。
図5の第2実施形態では、今まで説明した部材と同じ部材には同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0063】
第2実施形態に係る車両用操舵装置1Pが第1実施形態に係る車両用操舵装置1(
図3参照)と主に異なる点は、連結機構50Pにおいて、第2自在継手52Pが、連結軸53Pの軸方向X3に、連結軸53Pに対して出力軸40を相対移動させる移動機構として機能し、連結軸53Pが、第1実施形態の連結軸53とは異なり、伸縮しない一本の軸である点である。第1実施形態の連結機構50と同様に、第2実施形態の連結機構50Pでは、第1自在継手51Pおよび第2自在継手52Pが、入力軸30に対して出力軸40を二段階で偏角させた状態で入力軸30から出力軸40へ駆動力を伝達する。詳しくは、第1自在継手51Pが、入力軸30に対して連結軸53Pを偏角させた状態で、入力軸30から連結軸53Pへ駆動力を伝達し、第2自在継手52Pが、連結軸53Pに対して出力軸40を偏角させた状態で、連結軸53Pから出力軸40へ駆動力を伝達する。
【0064】
詳しくは、第2実施形態の第1自在継手51Pは、例えば、ボール型の等速ジョイントである。第1自在継手51Pは、中心軸線C1まわりに入力軸30と一体回転する外輪100と、中心軸線C3まわりに連結軸53と一体回転する内輪101と、外輪100と内輪101との間で動力が伝達されるように、かつ、外輪100に対して内輪101を傾けることができるように外輪100と内輪101との間に配置された複数のボール102とを含む。
【0065】
外輪100は、入力軸30の上端に設けられたフランジ31に圧入されることによって入力軸30に固定されている。外輪100は、下方に開口を有する有底の筒状である。内輪101は、外輪100の内側に配置されるように下方から外輪100に挿入されている。内輪101は、連結軸53Pの上端に設けられている。複数のボール102は、外輪100と内輪101との間に周方向に並んで配置されている。
【0066】
外輪100の内周面には、外輪溝100aがボール102と同数設けられている。内輪101の外周面には、内輪溝101aがボール102と同数設けられている。各ボール102は、外輪溝100aおよび内輪溝101aの両方に嵌っており、外輪100と内輪101との間で動力の伝達が可能である。また、対応する外輪溝100aの底面上および内輪溝101aの底面上で各ボール102が転動することで、外輪100が固定された入力軸30に対して内輪101が固定された連結軸53Pを偏角させることができる。
【0067】
第2実施形態の第2自在継手52Pは、トリポード型の等速ジョイントである。第2自在継手52Pは、中心軸線C2まわりに出力軸40と一体回転する外輪103と、中心軸線C3まわりに連結軸53と一体回転するトラニオン104とを含む。第2自在継手52Pは、外輪103とトラニオン104との間で動力が伝達されるように、かつ、外輪103に対してトラニオン104を傾けることができるように外輪103とトラニオン104との間に配置された複数のローラ105をさらに含む。
【0068】
外輪103は、出力軸40の上端に、たとえば、セレーション嵌合された状態でねじ止めされることによって出力軸40に固定されている。外輪103は、上方に開口を有する有底の筒状である。トラニオン104は、外輪103の内側に配置されるように上方から外輪103に挿入されている。トラニオン104は、連結軸53Pの下端に設けられている。複数のローラ105は、外輪103とトラニオン104との間で周方向に並んでいる。
【0069】
外輪103の内周面には、出力軸40の軸方向X2に沿ってトラニオン104および複数のローラ105を案内する案内溝103aがローラ105と同数設けられている。トラニオン104は、連結軸53Pに連結された基部104Aと、基部104Aから径方向外方に突出する複数(ローラ105と同数)の軸部104Bとを含む。各ローラ105は、トラニオン104の対応する軸部104Bまわりに回転可能に軸部104Bに取り付けられている。各ローラ105は、外輪103とトラニオン104との間で動力の伝達ができるように、対応する案内溝103aに嵌っている。そのため、外輪103とトラニオン104との間で動力の伝達が可能である。各ローラ105は、対応する軸部104Bに対して軸部104Bの軸方向に移動可能であり、対応する軸部104Bに対して揺動可能であり、対応する軸部104Bに対して回転可能である。そのため、トラニオン104が固定された連結軸53Pに対して外輪103が固定された出力軸40を偏角させることができる。
【0070】
第2自在継手52Pにおいて案内溝103aに沿って複数のローラ105およびトラニオン104を軸方向X3に移動させることで、連結軸53の軸方向X3に、連結軸53に対して出力軸40を相対移動させることができる。なお、第1自在継手51Pと第2自在継手52Pとの間は、ベローズ106によって防水されていてもよい。
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0071】
また、第2実施形態によれば、移動機構である第2自在継手52Pにおいて外輪103に対してトラニオン104が移動することによって、連結軸53の軸方向X3に、連結軸53に対して出力軸40が相対移動する。そのため、連結軸53の軸方向X3に沿って出力軸40に荷重が負荷された場合であっても出力軸40に生じる応力を低減できるので、転舵輪3L,3Rを正確に転舵させることができる。
【0072】
第2実施形態とは異なり、連結機構50Pが、第2自在継手52Pおよび連結軸53Pを含んでおらず、第1自在継手51Pのみを含んでいて、第1自在継手51Pが、入力軸30に対して出力軸40を偏角させた状態で入力軸30から出力軸40への駆動力の伝達が可能であるように構成されていてもよい。この場合、第1自在継手51Pの内輪101が中心軸線C2まわりに出力軸40と一体回転するように出力軸40に連結されている。
【0073】
また、第2実施形態とは異なり、連結機構50Pが、第1自在継手51Pおよび連結軸53Pを含んでおらず、第2自在継手52Pのみを含んでいて、第2自在継手52Pが、入力軸30に対して出力軸40を偏角させた状態で入力軸30から出力軸40への駆動力の伝達が可能であるように構成されていてもよい。この場合、第2自在継手52Pのトラニオン104が中心軸線C1まわりに入力軸30と一体回転するように入力軸30に連結されている。
【0074】
また、第2実施形態とは異なり、第1自在継手51Pでは、内輪101が入力軸30に連結されており、外輪100が連結軸53Pに連結されていてもよいし、第2自在継手52Pでは、外輪103が連結軸53Pに連結されており、トラニオン104が出力軸40に連結されていてもよい。
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態に係る車両用操舵装置1Qの連結機構50Qの周辺を模式的に示した断面図である。
図6の第3実施形態では、今まで説明した部材と同じ部材には同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0075】
第3実施形態に係る車両用操舵装置1Qが第1実施形態に係る車両用操舵装置1(
図3参照)と主に異なる点は、連結機構50Qが、第1自在継手51、第2自在継手52および連結軸53の代わりに、入力軸30に対して出力軸40を偏心させる偏心継手110と、入力軸30に対して出力軸40を偏角させる自在継手111とを含み、偏心継手110および自在継手111によって入力軸30から出力軸40に駆動力が伝達される点である。偏心継手110は、入力軸30から自在継手111へ駆動力を伝達することができ、自在継手111は、偏心継手110から出力軸40へ駆動力を伝達することができる。
【0076】
偏心継手110は、オルダム継手である。偏心継手110は、中心軸線C1まわりに入力軸30と一体回転する。偏心継手110は、入力軸30に固定された第1継手部材112と、自在継手111を介して出力軸40に連結された第2継手部材113と、第1継手部材112と第2継手部材113との間に配置された中間部材114とを含む。第1継手部材112は、入力軸30の上端に設けられたフランジ31に圧入されることによって入力軸30に固定されている。
【0077】
偏心継手110は、軸方向X1に対して直交する方向に、第1継手部材112に対して中間部材114を相対移動させる第1直交移動機構115と、軸方向X1に対して直交する方向に、中間部材114に対して第2継手部材113を相対移動させる第2直交移動機構116とをさらに含む。第1継手部材112に対して中間部材114が相対移動する方向を第1直交方向Y1とし、中間部材114に対して第2継手部材113が相対移動する方向を第2直交方向Y2とする。第1直交方向Y1と第2直交方向Y2とは、互いに直交している。
【0078】
第1直交移動機構115は、入力軸30の軸方向X1の下方における第1継手部材112の端面に設けられ、第1直交方向Y1に延びる第1凹部115aと、軸方向X1の上方における中間部材114の端面に設けられ、第1継手部材112から中間部材114へ駆動力を伝達できるように第1凹部115aに嵌合される第1凸部115bとを含む。
第2直交移動機構116は、入力軸30の軸方向X1の下方における中間部材114の端面に設けられ、第2直交方向Y2に延びる第2凹部116aと、軸方向X1の上方における第2継手部材113の端面に設けられ、中間部材114から第2継手部材113へ駆動力を伝達できるように第2凹部116aに嵌合される第2凸部116bとを含む。
【0079】
第1直交移動機構115によって第1継手部材112に対して中間部材114を第1直交方向Y1に移動させたり、第2直交移動機構116によって中間部材114に対して第2継手部材113を第2直交方向Y2に移動させたりすることによって、入力軸30に対して出力軸40を偏心させることができる。
自在継手111は、トリポード型の等速ジョイントである。自在継手111は、偏心継手110の第2継手部材113とともに入力軸30の中心軸線C1まわりに一体回転する外輪117と、中心軸線C2まわりに出力軸40が一体回転するトラニオン118とを含む。自在継手111は、外輪117とトラニオン118との間で動力が伝達されるように、かつ、外輪117に対してトラニオン118を傾けることができるように外輪117とトラニオン118との間に配置された複数のローラ119をさらに含む。
【0080】
外輪117は、下方に開口を有する有底の筒状である。トラニオン118は、外輪117の内側に配置されるように外輪117に下方から挿入されている。トラニオン118は、出力軸40の上端に設けられている。複数のローラ119は、外輪117とトラニオン118との間で周方向に並んでいる。
外輪117の内周面には、入力軸30の軸方向X1に沿って延びる案内溝117aがローラ119と同数設けられている。トラニオン118は、出力軸40に連結された基部118Aと、基部118Aから径方向外方に突出する複数(ローラ119と同数)の軸部118Bとを含む。各ローラ119は、トラニオン118の対応する軸部118Bまわりに回転可能に軸部118Bに取り付けられている。各ローラ119は、外輪117とトラニオン118との間で動力の伝達ができるように、対応する案内溝117aに嵌っている。各ローラ119は、対応する軸部118Bに対して軸部118Bの軸方向に移動可能であり、対応する軸部118Bに対して揺動可能であり、対応する軸部118Bに対して回転可能である。そのため、偏心継手110を介して外輪117が連結された入力軸30に対してトラニオン118が固定された出力軸40を偏角させることができる。
【0081】
自在継手111において案内溝117aに沿って複数のローラ119およびトラニオン118を軸方向X2に移動させることで、出力軸40の軸方向X2に、入力軸30に対して出力軸40を相対移動させることができる。
第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。
また、第3実施形態によれば、移動機構である自在継手111において外輪117に対してトラニオン118が移動することによって、入力軸30の軸方向X1に、入力軸30に対して出力軸40が相対移動する。そのため、入力軸30の軸方向X1に沿って出力軸40に荷重が負荷された場合であっても出力軸40に生じる応力を低減することができるので、転舵輪3L,3Rを正確に転舵させることができる。
【0082】
また、第3実施形態によれば、偏心継手110によって、入力軸30に対して出力軸40が偏心させられる。そのため、出力軸40は、入力軸30に対して偏角し、かつ、入力軸30に対して偏心した状態で、入力軸30からの駆動力を転舵輪3L,3Rに出力することができる。そのため、出力軸40に生じる応力を一層低減できるので、転舵輪3L,3Rを一層正確に転舵させることができる。
【0083】
また、連結機構50Qは、第3実施形態とは異なり、
図7に示すように、自在継手111が、偏心継手110の第2継手部材113とともに入力軸30の中心軸線C1まわりに一体回転するトラニオン118と、中心軸線C2まわりに出力軸40が一体回転する外輪117とを含む構成であってもよい。トラニオン118が、第2継手部材113と一体に形成されており、外輪117は、出力軸40の上端に、たとえば、セレーション嵌合された状態でねじ止めされることによって出力軸40に固定されている。
【0084】
この構成であっても、
図6に示す構成と同様の効果を奏する。また、この構成であれば、外輪117は、上方に開口を有する有底の筒状である。そのため、ローラ119と案内溝117aおよび軸部118Bとの間の摩擦を低減するために外輪117内に収容されるグリースを外輪117内に保持し易い。
<第4実施形態>
図8は、第4実施形態に係る車両用操舵装置1Rの連結機構50Rの周辺を模式的に示した断面図である。
図8の第4実施形態では、今まで説明した部材と同じ部材には同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0085】
第4実施形態に係る車両用操舵装置1Rが第1実施形態に係る車両用操舵装置1(
図3参照)と主に異なる点は、連結機構50Rが、出力軸40の軸方向X2に、連結軸53Pに対して出力軸40を相対移動させる移動機構128を含み、連結軸53Rが、伸縮しない一本の軸である点である。
詳しくは、連結機構50Rは、入力軸30に対して出力軸40を二段階に偏角させた状態で入力軸30から出力軸40への駆動力の伝達が可能な第1自在継手51Rおよび第2自在継手52Rと、第1自在継手51Rおよび第2自在継手52Rを連結する連結軸53Rとを含む。第1自在継手51Rは、入力軸30に対して連結軸53Rを偏角させた状態で入力軸30から連結軸53Rへの駆動力の伝達が可能であり、第2自在継手52Rは、連結軸53Rに対して出力軸40を偏角させた状態で連結軸53Rから出力軸40への駆動力の伝達が可能である。
【0086】
第1自在継手51Rは、中心軸線C1まわりに入力軸30と一体回転するように入力軸30に連結された環状部材120と、環状部材120と連結され、環状部材120の内側に配置され、連結軸53Rの中心軸線C3まわりに連結軸53Rと一体回転するように連結軸53Rに連結された継手部材121とを含む。
環状部材120と入力軸30とは、入力軸30の中心軸線C1に対して直交する回転軸線A5まわりに相対回転可能に連結されている。環状部材120と継手部材121とは、連結軸53Rの中心軸線C3と回転軸線A5とに対して直交する回転軸線A6まわりに相対回転可能に連結されている。
【0087】
第1自在継手51Rは、回転軸線A5を有し、回転軸線A5まわりに入力軸30と環状部材120とを相対回転可能に連結する一対の第1中心軸(第1支軸)122と、回転軸線A6を有し、回転軸線A6まわりに環状部材120と継手部材121とを相対回転可能に連結する第2中心軸(第2支軸)123とをさらに含む。
入力軸30は、第2減速機81の第4歯車86と一体回転するように、第4歯車86に圧入状態で挿入されている。この実施形態とは異なり、入力軸30は、第2減速機81の第4歯車86と一体に形成されていてもよい。継手部材121は、連結軸53Rの一端に連結されている。
【0088】
第2自在継手52Rは、連結軸53Rの下端に連結された第1ヨーク124と、出力軸40に連結された第2ヨーク125と、第1ヨーク124および第2ヨーク125を連結する十字軸126とを含む。第2自在継手52Rの第1ヨーク124は、連結軸53の下端に連結され互いに対向する一対の腕部124Bを含む。第2自在継手52Rの第2ヨーク125は、出力軸40の上端が固定された基部125Aと、基部125Aによって支持され互いに対向する一対の腕部125Bとを含む。十字軸126は、一対の腕部124Bおよび一対の腕部125Bに連結されている。
【0089】
移動機構128は、スプライン嵌合する第2自在継手52Rと出力軸40とによって構成されている。詳しくは、移動機構128は、第2ヨーク125の基部125Aに形成され、出力軸40の上端が挿通される挿通孔125aの内周に形成された雌スプライン128Aと、雌スプライン128Aに嵌合され、出力軸40の上端の外周に形成された雄スプライン128Bとを含む。そのため、出力軸40の軸方向X2に、第2自在継手52Rおよび連結軸53Rに対して出力軸40が相対移動できる。この実施形態とは異なり、第2自在継手52Rと出力軸40との間に出力軸40の軸方向X2に沿って並ぶボールが複数設けられており、移動機構128が、第2自在継手52R、出力軸40および当該複数のボールによって構成されていてもよい。
【0090】
第4実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。
また、第4実施形態によれば、移動機構128が、出力軸40の軸方向X3に、入力軸30に対して出力軸40を相対移動させる。そのため、出力軸40の軸方向X2に沿って出力軸40に荷重が負荷された場合であっても出力軸40に生じる応力を低減できるので、転舵輪3L,3Rを正確に転舵させることができる。
【0091】
第4実施形態とは異なり、連結機構50Rが、第2自在継手52Rおよび連結軸53Rを含んでおらず、第1自在継手51Rのみを含んでいて、第1自在継手51Rが、入力軸30に対して出力軸40を偏角させた状態で入力軸30から出力軸40への駆動力の伝達が可能であるように構成されていてもよい。この場合、第1自在継手51Rの継手部材121が中心軸線C2まわりに出力軸40と一体回転するように出力軸40に連結されている。
【0092】
<第5実施形態>
図9は、第5実施形態に係る車両用操舵装置1Sの連結機構50Sの周辺を模式的に示した断面図である。
図9の第5実施形態では、今まで説明した部材と同じ部材には同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
第5実施形態に係る車両用操舵装置1Sが第1実施形態に係る車両用操舵装置1(
図3参照)と主に異なる点は、連結機構50Sが、第1自在継手51、第2自在継手52および連結軸53の代わりに、自在継手130を含み、転舵機構5L,5Rが、自在継手支持機構131を含み、転舵機構5L,5Rが、第1実施形態のストラットマウント18(
図2参照)の代わりに、弾性支持機構132を含む点である。
【0093】
自在継手130は、入力軸30に対して出力軸40を偏角させた状態で、入力軸30から出力軸40への駆動力の伝達が可能である。自在継手支持機構131は、入力軸30の中心軸線C1まわりに自在継手130が回転可能なように自在継手130を支持する。弾性支持機構132は、車体に対してハウジング90が移動できるようにハウジング90を弾性的に支持する。また、第1実施形態では、入力軸30は円筒状であったが、第5実施形態では、入力軸30は、略上下に延びる円柱状である。
【0094】
自在継手130は、ボール型の等速ジョイントである。自在継手130は、中心軸線C2まわりに出力軸40と一体回転する外輪133と、中心軸線C1まわりに入力軸30と一体回転する内輪134と、外輪133と内輪134との間で動力が伝達されるように、かつ、外輪133に対して内輪134を傾けることができるように外輪133と内輪134との間に配置された複数のボール135とを含む。外輪133は、上方に開口を有する有底の筒状である。
【0095】
外輪133は、出力軸40の上端に連結されることによって出力軸40に固定されている。内輪134は、入力軸30の下端に連結されることによって入力軸30に固定されている。内輪134は、外輪133の内側に配置されるように上方から外輪133に挿入されている。複数のボール135は、外輪133と内輪134との間で周方向に並んでいる。
【0096】
外輪133の内周面には、外輪溝133aがボール135と同数設けられている。内輪134の外周面には、内輪溝134aがボール135と同数設けられている。各ボール135は、外輪溝133aおよび内輪溝134aの両方に嵌っており、外輪133と内輪134との間で動力の伝達が可能である。また、各ボール135が対応する外輪溝133aの底面上および内輪溝134aの底面上で転動することで、内輪134が固定された入力軸30に対して外輪133が固定された出力軸40を偏角させることができる。
【0097】
自在継手支持機構131は、自在継手130を中心軸線まわりに回転可能に支持する支持部材136と、ハウジング90のギヤハウジング92から下方に延び、支持部材136を収容する収容部材137とを含む。収容部材137は、ギヤハウジング92の第1部分92Aと一体に形成されている。支持部材136は、収容部材137を介してハウジング90に取り付けられている。支持部材136は、収容部材137に対して中心軸線C1まわりに回転可能である。自在継手130は、支持部材136に対して傾斜可能である。収容部材137は、下方が開放された有底の筒状である。
【0098】
支持部材136において自在継手130を支持する部分と、自在継手130において支持部材136によって支持される部分とが球面軸受150を構成している。すなわち、支持部材136において自在継手130を支持する部分が球面軸受150の外輪138に相当し、自在継手130において支持部材136によって支持される部分が球面軸受150の内輪139に相当する。連結機構50Sでは、自在継手130および支持部材136が、それぞれ1つずつ設けられており、球面軸受150の回転中心と自在継手130の偏角中心Bとが一致している。
【0099】
自在継手支持機構131は、収容部材137に対して支持部材136を円滑に回転させるための転動体140をさらに含む。転動体140は、例えばころであり、外輪138の上面と収容部材137の底面との間に設けられている。転動体140は、中心軸線C1まわりの周方向に間隔を空けて複数設けられている。収容部材137には、支持部材136を収容部材137内に保持するために支持部材136に下方から当接するストッパ141が設けられている。第5実施形態では、ストッパ141は、収容部材137とは別部材であり、圧入などにより収容部材137の内周面に固定されている。
【0100】
弾性支持機構132は、収容部材137を介してハウジング90に固定された固定部材142と、車体に固定されたカバー14と固定部材142との間に設けられ、弾性変形可能なゴム等の弾性部材143と、カバー14と固定部材142とを遊びをもって連結する連結部材144とを含む。固定部材142は、収容部材137の下端から径方向外方に広がるフランジ状である。そのため、弾性部材143は、第1実施形態のストラットマウント18と比較して大きい内径および外径を有する円環状である。そのため、弾性部材143は、充分な剛性を有するので、転舵時に小さな弾性変形量で転舵の反力を支持する(受ける)ことができる。よって、左転舵輪3Lを正確に転舵させることができる。
【0101】
第5実施形態によれば、転舵モータ4L,4Rからの駆動力が入力される入力軸30と当該駆動力を転舵輪3L,3Rに出力する出力軸40とが、自在継手130を有する連結機構50Sによって連結されている。自在継手130によって入力軸30に対して出力軸40が偏角させられるので、入力軸30に対する出力軸40の偏角量を充分に確保することができる。したがって、入力軸30の軸方向X1に対する交差方向から出力軸40に荷重が負荷された場合であっても、入力軸30に対して出力軸40が偏角することによって、出力軸40に生じる応力を低減することができる。また、入力軸30と出力軸40との間にゴムを介在させることなく、自在継手130によって入力軸30から出力軸40へ駆動力を速やかに伝達することができるので、転舵モータ4L,4Rからの駆動力を転舵輪3L,3Rに正確に伝達することができる。したがって、転舵輪3L,3Rを正確に転舵させることができる。
【0102】
また、第5実施形態によれば、支持部材136によって、入力軸30の中心軸線C1まわりに回転可能なように自在継手130が支持されている。また、支持部材136は、車体に対して移動可能なハウジング90に取り付けられている。そのため、入力軸30、出力軸40および連結機構50Sをハウジング90とともに車体に対して移動させることができる。したがって、出力軸40に荷重が負荷された場合であっても、入力軸30、出力軸40、連結機構50Sおよびハウジング90が一体移動して、出力軸40に生じる応力を低減することができる。さらにハウジング90に収容された転舵モータ4L,4Rに対する負担も低減できる。したがって、転舵輪3L,3Rを一層正確に転舵させることができる。
【0103】
また、第5実施形態によれば、支持部材136において自在継手130を支持する部分(外輪138)と、自在継手130において支持部材136によって支持される部分(内輪139)とが球面軸受150を構成している。そして、自在継手130の偏角中心Bと、球面軸受150の回転中心とが一致している。そのため、1つの自在継手130と1つの支持部材136とを用いることで、自在継手130の偏角中心Bと出力軸40の揺動中心Cとを一致させた状態で出力軸40を揺動させることができる。つまり、自在継手130および支持部材136を複数設けることなく入力軸30に対する出力軸40の偏心を許容することができる。さらに、複数の自在継手130を上下方向(軸方向X1)に並べて配置する必要がないので、連結機構50Sを軸方向X1にコンパクトにできる。
【0104】
第5実施形態とは異なり、
図10に示すように、支持部材136において自在継手130を支持する部分(外輪145)と、自在継手130において支持部材136によって支持される部分(内輪146)とがスラスト球面ころ軸受151を構成していてもよい。すなわち、支持部材136において自在継手130を支持する部分がスラスト球面ころ軸受151の外輪145に相当し、自在継手130において支持部材136によって支持される部分がスラスト球面ころ軸受151の内輪146に相当する。連結機構50Sでは、自在継手130および支持部材136が、それぞれ1つずつ設けられており、スラスト球面ころ軸受151の回転中心と自在継手130の偏角中心Bとが一致している。
【0105】
スラスト球面ころ軸受151は、収容部材137に固定された外輪145と、中心軸線C2まわりに出力軸40と一体回転可能な内輪146と、内輪146と外輪145との間に配置された複数のころ147とを含んでいる。
スラスト球面ころ軸受151の回転中心は、自在継手130の偏角中心Bと一致しているため、
図9に示す構成と同様の効果を奏する。また、内輪146は、自在継手130の外輪133と一体に形成されていることが好ましい。これにより、出力軸40に負荷された荷重が、外輪133および内輪146を介して、収容部材137で支持される(受けられる)ため、自在継手130への荷重の負荷を抑制することができる。よって、左転舵輪3Lを正確に転舵させることができる。
【0106】
また、第5実施形態では、自在継手130は、ボール型の等速ジョイントであったが、第5実施形態とは異なり、自在継手130がトリポード型の等速ジョイントであってもよい。この場合、自在継手130は、第2実施形態の第2自在継手52Pと同様の構造を有する。すなわち、図示は省略するが、自在継手130は、中心軸線C1まわりに入力軸30と一体回転するトラニオンと、中心軸線C2まわりに出力軸40と一体回転する外輪と、外輪とトラニオンとの間で動力が伝達されるように、かつ、トラニオンに対して外輪を傾けることができるように外輪とトラニオンとの間に配置された複数のローラとを含んでいてもよい。
【0107】
上述の各実施形態の自在継手51,51P,51R、52,52P,52R,111,130および偏心継手110を構成する部材であって駆動力の伝達に関与する部材は、例えば鋼、アルミ合金、チタン合金など、高強度、高剛性を有する金属によって形成されていることが好ましい。しかし、これらの継手を構成する部材は、金属製に限られず、ヤング率が1GPaよりも大きい材料によって形成されていればよい。例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ナイロン等の樹脂製であってもよいし、炭化ケイ素等によって形成されていてもよい。
【0108】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
例えば、転舵輪3L,3Rは、車両の後方側に配置された転舵輪であってもよい。また、車両の前方側に配置された転舵輪および後方側に配置された転舵輪の両方に対して、転舵機構5L,5R、転舵モータ4L,4Rおよび減速機構6L,6Rをそれぞれ設けてもよい。
【0109】
また、上述の各実施形態において、減速機構6L,6Rの第1減速機80および第2減速機81のうちの一方が、波動減速機であってもよい。
その他、本発明は特許請求の範囲記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。