(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
荷物を積載していない船舶は、当該船舶を安定させるためにバラスト水を搭載して航行し、荷物を積載する海域において前記バラスト水を排出する。バラスト水は、通常、バラスト水を搭載する海域とは異なる海域に排出されるので、バラスト水にプランクトンや細菌等の微生物が含まれていると、微生物が本来の生息地以外の海域に排出されることになる。このことは、生態系破壊等の問題を引き起こす虞がある。
【0003】
このような問題に対処するために、バラスト水の規制に関する国際的なルールが策定され、「船舶のバラスト水および沈殿物の規制および管理のための国際条約(バラスト水管理条約)」が採択されている。
【0004】
バラスト水管理条約に関連する「バラスト水サンプリングに関するガイドライン(G2)」では、「バラスト水排出基準(D−2)」において、船舶から排出されるバラスト水に含まれて生存している水生生物の許容個体数が、水生生物の最小サイズごとに規定されている。具体的には、例えば、最小サイズが50μm以上の水生生物(以下、「Lサイズ生物」という。)についての排出基準は、10個/m
3以下であり、最小サイズが10μm以上50μm未満の水生生物(以下、「Sサイズ生物」という。)についての排出基準は、10個/mL以下である。
【0005】
このような排出基準を満たしているか否かを確認するための検査手法として、例えば、バルクFDA(fluorescein diacetate)、クロロフィル蛍光、PAM、ATP、パルスカウンティングFDAが知られている。パルスカウンティングFDAでは、試料液内の微生物を染色し、試料液に励起光を照射することによって得られる微生物の蛍光が検出器で検出される。そして、一定以上の振幅を有するパルスを計数することによって生物個体数が測定される(例えば、下記特許文献1〜3)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
種々の検査手法において、Sサイズ生物量の測定は、一般的に、メッシュフィルタ(例えば、50μmの対角距離を有する)に通すことによってLサイズ生物が分離された試料液に対して行われる。このメッシュフィルタの開口は、Lサイズ生物よりも小さいので、理論上は、分離後のサンプル水にはLサイズ生物は含まれない。しかしながら、実際には、Lサイズ生物の中には、柔軟な微生物が含まれている。このような微生物は、変形することによって、メッシュフィルタを通過してしまうことがある。このような事象が生じると、Sサイズ生物量を測定するための試料液にLサイズ生物が混入することによって、測定精度の悪化を招くことになる。
【0008】
かかる問題は、バラスト水の検査に限らず、他のサイズの微生物から予め分離された特定サイズの微生物の量を測定する場合に共通する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0010】
本発明の第1の形態によれば、試料液中の微生物量を測定するための測定装置が提供される。この測定装置は、試料液に対して励起光を照射するための光源と、励起光によって蛍光発光された光を受光して、電気信号に変換する受光部と、電気信号に含まれる第1の所定値以上の振幅を有するパルスの数に基づいて微生物量を算出する算出部と、を備えている。算出部は、第1の所定値よりも大きな第2の所定値以上の振幅を有するパルスが電気信号に含まれる場合に、第1の所定値以上の振幅を有するパルスの数に基づいて算出される微生物量よりも小さな値の微生物量を微生物量として算出するように構成される。
【0011】
かかる測定装置によれば、試料液中に測定対象外の大きなサイズの微生物が混入している場合に、その微生物の混入分を控除した微生物量を算出することによって、微生物量の測定精度を向上できる。例えば、バラスト水の検査において、Sサイズ生物量を測定するための試料液中にLサイズ生物が混入している場合に、測定される微生物量に対するLサイズ生物の影響を軽減することができる。
【0012】
本発明の第2の形態によれば、第1の形態において、算出部は、第2の所定値以上の振幅を有するパルスが電気信号に含まれる場合に、第1の所定値以上、かつ、第2の所定値未満の振幅を有するパルスの数と、第2の所定値以上の振幅を有するパルスの数と、に基づいて微生物量を算出する。かかる形態によれば、測定対象の試料液において実際に測定された検出量を使用して、測定対象外の大きなサイズの微生物の混入分を控除した微生物量を算出することができる。したがって、測定精度をさらに向上させることができる。
【0013】
本発明の第3の形態によれば、第1の形態において、算出部は、第2の所定値以上の振幅を有するパルスが電気信号に含まれる場合に、試料液に関する条件ごとに予め定められた係数を使用して微生物量を算出する。かかる形態によれば、測定対象外の大きなサイズの微生物の混入分を控除した微生物量を簡略的に算出することができる。したがって、測定装置の演算負荷が低減される。
【0014】
本発明の第4の形態によれば、第1ないし第3のいずれかの形態において、測定装置は、第2の所定値以上の振幅を有するパルスが電気信号に所定数以上含まれる場合に、報知を行う報知部を備える。かかる形態によれば測定対象外の大きなサイズの微生物が、試料液中に偶発的に多く混入している場合に、そのことをユーザに報知することができる。この報知を受けたユーザが試料液を再度調製して測定し直せば、測定精度を向上させることができる。
【0015】
本発明の第5の形態によれば、試料液中の微生物量を測定するための測定方法が提供される。この測定方法は、試料液に対して励起光を照射する工程と、励起光によって蛍光発光された光を電気信号に変換する工程と、電気信号に含まれる第1の所定値以上の振幅を有するパルスの数に基づいて微生物量を算出する工程と、を備えている。微生物量を算出する工程は、第1の所定値よりも大きな第2の所定値以上の振幅を有するパルスが電気信号に含まれる場合に、第1の所定値以上の振幅を有するパルスの数に基づいて算出される微生物量よりも小さな値の微生物量を微生物量として算出する工程を備えている。第5の形態によれば、第1の形態と同様の効果を奏する。
【0016】
本発明の第6の形態によれば、微生物量を測定するためのコンピュータプログラムが提供される。このコンピュータプログラムは、入力される電気信号第1の所定値以上の振幅を有するパルスの数に基づいて微生物量を算出する機能と、第1の所定値よりも大きな第2の所定値以上の振幅を有するパルスが電気信号に含まれる場合に、第1の所定値以上の振幅を有するパルスの数に基づいて算出される微生物量よりも小さな値の微生物量を微生物量として算出する機能と、をコンピュータに実現させる。第6の形態によれば、第1の形態と同様の効果を奏する。
【0017】
第5または第6の形態に第2ないし第4のいずれかの形態を適用することもできる。また、本発明は、上述の形態の他に、測定装置を制御するための制御装置、上記コンピュータプログラムが記録された記憶媒体など、種々の形態で実現可能である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の一実施形態としての測定装置10の概略構成を示す機能ブロック図である。測定装置10は、パルスカウンティングFDAの手法を利用して試料液中の微生物量を測定するための装置である。本実施形態においては、試料液としてバラスト水が使用され、測定装置10は、Sサイズ生物量の測定に用いられる。
【0020】
測定装置10は、光源部20と受光部30とCPU40と試料容器収容部50とを備えている。光源部20は、試料容器収容部50内に収容された試料容器51に向けて励起光を照射する。受光部30は、以下で詳しく説明するが、励起光によって蛍光発光された光を受光して、電気信号に変換する。
【0021】
CPU40は、ROM41またはRAM42に記憶されたプログラムを実行することによって、測定装置10の動作全般を制御する。特に、CPU40は、受光部30によって得られる電気信号のパルス数に基づいて発光数を検出し、当該発光数に基づいて微生物量を算出する算出部としても機能する。ただし、CPU40の機能の少なくとも一部は、特定の機能に特化されたハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0022】
試料容器収容部50は、その内部に試料容器51を収容する。試料容器51は、光を透過する透明な材質(例えば、ガラスや石英やアクリル樹脂等)で形成されている。試料容器51には、微生物量の測定対象となる試料液と、発光試薬と、が収容される。本実施形態では、試料液には、メッシュフィルタによってLサイズ生物が除去されたバラスト水が使用される。試料容器51内には、試料液を撹拌するための回転子52が挿入される。測定時には、回転子52は、試料容器51内においてマグネティックスターラ43により回転駆動される。
【0023】
試料容器収容部50は、保持プレート54,55を備えている(
図2参照)。保持プレート54,55は、試料容器51が試料容器収容部50内に収容された時に、試料容器51を少なくとも2面で支持する。保持プレート54,55は、光源部20からの光を遮断しない位置に設けられている。
【0024】
測定装置10は、さらに、操作部61と表示部62とを備えている。操作部61は、ユーザからの指示を受け付けるためのユーザインタフェースである。表示部62は、測定結果等を表示するためのディスプレイである。
【0025】
図2は、測定装置10の原理を示す模式図である。光源部20は、光源21とコリメータ22とバンドパスフィルタ23とを備えている。この光源部20は、試料容器51の被照射面51aに対して直交する方向に励起光が入射されるように配置されている。光源21には、任意の発光手段を用いることができ、光源21は、例えば、LEDであってもよい。光源21からの光は、コリメータ22に入射され、コリメートされる。コリメータ22は、平行光を照射することが可能な光源(例えば、平行光LED、レーザ光源など)を光源21として使用するときは不要である。コリメートされた光は、バンドパスフィルタ23に入射され、その後、スリット状の平行光が励起光として試料容器51内の試料液に照射される。
【0026】
受光部30は、光電子増倍管31とバンドパスフィルタ32と集光用レンズ33とスリット34とリレーレンズ35とを備えている。試料液に励起光が照射されると、試料液中を浮遊する微生物に含まれる蛍光物質が励起され、蛍光発光する。蛍光発光された光は、リレーレンズ35によって集光され、結像される。リレーレンズ35によって結像された光は、スリット34を通過し、集光用レンズ33によって集光される。スリット34は、蛍光発光された光の観察面をスリット状に狭めるために設置される。これにより、受光面31aの受光面積が狭まるので、ノイズとなるバックグラウンドの蛍光発光の面積も狭まる。したがって、バックグラウンドに対する微生物の蛍光発光の信号の比(SN比)が改善され、蛍光発光の検出精度が向上する。
【0027】
スリット34を通過した光は、バンドパスフィルタ32を介して光電子増倍管31に入射される。光電子増倍管31の受光面31aは、光源部20からの入射光の入射方向に対して垂直に設けられている。光電子増倍管31に代えて、任意の受光センサ(例えば、シリコンフォトダイオード(SiPD)、アヴァランシェフォトダイオード(APD)など)が使用されてもよい。
【0028】
上述した測定装置10は、例えば、以下のようにして使用される。まず、ユーザは、ピペット等を使用して、20℃程度の温度のバラスト水(メッシュフィルタによってLサイズ生物は除去されている)から100ミリリットルを試料として採取し、試料容器51に投入する。次に、試料容器51内に蛍光染色試薬を添加する。この蛍光染色試薬は、一般的に知られているカルセインAM(Calcein-AM,ドイツ国Promocell GMBH 社製)や、FDAなどを使用することができる。次に、ユーザは、試料容器51に回転子52を投入する。次に、ユーザは、試料容器51を試料容器収容部50に収容し、蓋53(
図1参照)を装着する。これによって、測定準備が完了する。
【0029】
次に、ユーザは、操作部61を操作して、測定装置10を起動させる。これによって、マグネティックスターラ43が駆動され、回転子52が回転を開始し、試料液が撹拌される。次いで、光源21が点灯し、試料容器51内の試料液に励起光が照射される。励起光は、例えば、450nm〜490nmの波長を有している。励起光の照射によって、試料容器51内の検体(微生物)が蛍光発光する。そして、この蛍光が、上述の通り、リレーレンズ35、スリット34、集光用レンズ33およびバンドパスフィルタ32を介して、光電子増倍管31により検知される。
【0030】
光電子増倍管31は、光電効果の利用によって、受光した光エネルギーを電気エネルギー(電気信号)に変換する。この電気信号は、増幅回路(図示せず)によって増幅され、CPU40に入力される。増幅された電気信号は、バンドパスフィルタなどによってノイズ除去された後に、CPU40に入力されてもよい。
【0031】
CPU40は、上述した算出部の処理として、電気信号のパルス数に基づいて発光数を検出し、当該発光数に基づいて、試料液中の微生物量(ここでは、Sサイズ生物の個体数)を算出する。具体的には、CPU40は、入力された電気信号に含まれる、第1の所定値Th
S以上の振幅(パルス高さ)を有するパルスの数をカウントし、発光数(受光カウント値)を検出する。第1の所定値Th
Sは、パルスがSサイズ生物に対応しているか否かを判定するための閾値であり、Sサイズ生物のパルスとバックグラウンドとを区別できる値に設定される。パルスカウンティングFDA法では、蛍光強度(すなわち、パルスの振幅)は微生物の大きさに依存するので、振幅の大きさに基づいて微生物の大きさを判定することができる。本実施形態では、Lサイズ生物は、メッシュフィルタによって予め除去されているので、試料液には、本来、Lサイズ生物は含まれていないはずである。このため、第1の所定値Th
S以上の振幅を有するパルスは、Sサイズ生物に対応していると判断することができる。また、発光数と、試料液内に存在する微生物量と、は相関関係を有している。このため、当該相関関係を実験等によって予め把握しておくことによって、試料液中のSサイズ生物個体数を推定することができる。つまり、CPU40は、当該相関関係に基づいて受光カウント値を換算して、微生物量(ここでは、Sサイズ生物の個体数)を算出する。相関関係は、関数、マップなどの形態でROM41またはRAM42に記憶されていてもよい。こうして算出された微生物量は、表示部62に表示される。表示部62は、微生物量に代えて、または、加えて、ROM41またはRAM42に予め記憶された基準値(例えば、バラスト水排出基準)を当該微生物量が満たすか否かについての情報を表示してもよい。
【0032】
上述した測定装置10は、試料液中に測定対象外の大きなサイズの微生物が混入している場合に、微生物量を補正することによって、測定精度を向上できる。本願において、「補正」とは、一度算出した値を補正することに限らず、通常時とは異なる方法で値を算出することを含む。以下では、バラスト水の検査において、Sサイズ生物量を測定するための試料液中にLサイズ生物が混入している場合に、測定値に対するLサイズ生物の影響を軽減するための補正について説明する。
【0033】
CPU40は、入力された電気信号に第2の所定値Th
L以上の振幅を有するパルスが含まれる場合に、第1の所定値Th
S以上の振幅を有するパルスの数に基づいて算出される微生物量よりも小さな値の微生物量を微生物量として算出するように構成される。換言すれば、CPU40は、入力された電気信号に第2の所定値Th
L以上の振幅を有するパルスが含まれる場合に、微生物量を減じる補正を行うように構成されている。第2の所定値Th
Lは、パルスがLサイズ生物に対応しているか否かを判定するための閾値であり、Lサイズ生物の最小サイズに対応するように設定される。つまり、CPU40は、Sサイズ生物のみが含まれているべき試料液中にLサイズ生物が含まれる場合に、微生物量の補正を行う。
【0034】
図3は、Lサイズ生物のみを含む(つまり、Sサイズ生物を含まない)試料液についてのヒストグラムである。横軸はパルス高さであり、縦軸はパルスの出現頻度である。Lサイズ生物の個体数NL
1は次式(1)によって表すことができる。
NK
1=K
L×CL
1a ・・・(1)
ここで、K
Lは、係数であり、上述の相関関係に基づいて決定される。CL
1aは、
図3に示すとおり、第2の所定値Th
L以上の振幅を有するパルスの数である。
【0035】
理論上は、パルス数CL
1aが、Lサイズ生物の個体量に対応している。しかしながら、実際には、Lサイズ生物に対して、第2の所定値Th
L未満の振幅を有するパルスが生成されることがある。例えば、受光部30の光学系の焦点からずれた位置をLサイズ生物が通過した場合には、そのような事象が生じ得る。このため、Lサイズ生物に由来して生成されるパルスには、第1の所定値Th
S以上、かつ、第2の所定値Th
L未満の振幅を有するパルスも含まれる。この第1の所定値Th
S以上、かつ、第2の所定値Th
L未満の振幅を有するパルスの数は、
図3において、CL
1bとして表されている。
【0036】
図4は、メッシュフィルタによってLサイズ生物が除去された後の試料液についてのヒストグラムである。縦軸および横軸は、
図3と同様である。このヒストグラムは、上述したように測定装置10に試料容器51を装着して試料容器51内の試料液を測定する際に、CPU40によってカウントされたパルス数に基づいて作成されている。ただし、このヒストグラムには、試料液にLサイズ生物が混入することによって、Sサイズ生物由来のパルスと、Lサイズ生物由来のパルスとが混在している。
【0037】
図5は、
図4のヒストグラムを、Lサイズ生物由来のヒストグラムH
LとSサイズ生物由来のヒストグラムH
Sとに分離した図である。第1の所定値Th
S以上、かつ、第2の所定値Th
L未満の振幅を有するパルス(Lサイズ生物由来のパルスとSサイズ生物由来のパルスとを含む)の数CA
2は、次式(2)によって表すことができる。
CA
2=CL
2b+CS
2 ・・・(2)
【0038】
ここで、CL
2bは、第1の所定値Th
S以上、かつ、第2の所定値Th
L未満の振幅を有するLサイズ生物由来のパルスの数であり、CS
2は、第1の所定値Th
S以上、かつ、第2の所定値Th
L未満の振幅を有するSサイズ生物由来のパルスの数である。
図5において、CL
2aは、第2の所定値Th
L以上の振幅を有するLサイズ生物由来のパルスの数である。パルス数CA
2およびパルス数CL
2aは、CPU40に入力される電気信号に含まれるパルスのパルス高さに基づいて、実際にカウントすることができる。一方、パルス数CL
2bおよびパルス数CS
2は、各パルスがLサイズ生物由来であるか、それとも、Sサイズ生物由来であるかを判別することができないので、実際にそれぞれカウントすることはできない。
【0039】
式(2)を変化させると、次式(3)が得られる。
CS
2=CA
2−CL
2b ・・・(3)
【0040】
ここで、試料液中におけるLサイズ生物由来のパルスの高さが、
図4に示すLサイズ生物についてのヒストグラムの、パルス数CL
1b(第1の所定値Th
S以上、かつ、第2の所定値Th
L未満の振幅を有するパルスの数)とパルス数CL
1a(第2の所定値Th
L以上の振幅を有するパルスの数)との比と同一の比で発生すると仮定すれば、第1の所定値Th
S以上、かつ、第2の所定値Th
L未満の振幅を有するLサイズ生物由来のパルス数CL
2bは、式(4)によって推定することができる。
CL
2b=CL
2a×CL
1b/CL
1a ・・・(4)
【0041】
したがって、パルス数CS
2は、式(3)および式(4)から、次式(5)によって表される。
CS
2=CA
2−CL
2a×CL
1b/CL
1a ・・・(5)
【0042】
また、Lサイズ生物が混入した試料液中のSサイズ生物の個体数NS
2は次式(6)によって表すことができる。
NS
2=K
S×CS
2 ・・・(6)
ここで、K
Sは、係数であり、上述の相関関係に基づいて決定される。
【0043】
したがって、式(5)および式(6)から、Lサイズ生物が混入した試料液中のSサイズ生物の個体数NS
2は次式(7)によって表すことができる。
NS
2=K
S×(CA
2−CL
2a×CL
1b/CL
1a) ・・・(7)
【0044】
式(7)において、パルス数CA
2およびパルス数CL
2aは、CPU40に入力される電気信号に含まれるパルスの高さに基づいて、実際にカウントすることができるので、係数K
S、パルス数CL
1bおよびパルス数CL
1aを予め実験的に求めておけば、CPU40は、式(7)を用いて、試料液に含まれるSサイズ生物の個体数NS
2を算出することができる。式(7)は、ROM41またはRAM42に記憶されていてもよい。
【0045】
以上説明した測定装置10によれば、CPU40は、式(3)から最もよく理解できるように、試料液中にLサイズ生物が混入している場合に、その混入分を控除することによって、Sサイズ生物の個体量を補正することができる。その結果、測定精度が向上する。しかも、測定装置10は、第1の所定値Th
S以上、かつ、第2の所定値Th
L未満の振幅を有するパルスの数(パルス数CA
2)と、第2の所定値Th
L以上の振幅を有するパルスの数(パルス数CL
2a)と、に基づいて補正を行う。つまり、測定対象の試料液において実際に測定された検出量を使用して補正を行う。したがって、試料液の特性に応じた補正を行うことができ、測定精度をさらに向上できる。
【0046】
上述した測定装置10において、微生物量の補正は、試料液に関する条件ごとに予め定められた係数を使用して、簡略的に行われてもよい。例えば、試料液に関する条件ごとに設定された係数と、第1の所定値Th
S以上の振幅を有するパルスの数と、を乗算することによって、Sサイズ生物の個体量が算出されてもよい。あるいは、試料液に関する条件ごとに設定された係数と、第1の所定値Th
S以上、かつ、第2の所定値Th
L未満の振幅を有するパルスの数と、を乗算することによって、Sサイズ生物の個体量が算出されてもよい。これらの係数は、ROM41またはRAM42に記憶されていてもよい。試料液に関する条件とは、Lサイズ生物の特性(例えば、メッシュフィルタのすり抜けやすさ)に影響を与える種々の要因とすることができ、例えば、試料液の採取地域や、採取の季節などであってもよい。かかる構成の場合、測定装置10は、ユーザが入力する試料液に関する条件を操作部61によって受け付けて、入力された条件に応じた係数を選択して、微生物量の算出に用いてもよい。かかる構成によれば、簡略的に補正を行うことができ、CPU40の演算負荷が低減される。
【0047】
また、上述した測定装置10において、CPU40は、第2の所定値Th
L以上の振幅を有するパルスが電気信号に所定数以上含まれる場合に、報知を行う報知部として機能してもよい。報知は、任意の形態とすることができる。例えば、表示部62にメッセージが表示されてもよいし、音による報知が行われてもよい。かかる構成によれば、試料液中にLサイズ生物が偶発的に多く混入している場合に、そのことをユーザに報知することができる。この報知を受けたユーザが試料液を再度調製して測定し直せば、測定精度を向上することができる。かかる報知機能は、上述した補正機能を備えていない測定装置において採用されてもよい。
【0048】
上述した測定装置10の具体的な構成は一例に過ぎず、上述した補正機能は、パルスカウンティングFDA法を使用する任意の微生物量測定装置に適用することができる。また、測定装置10の測定対象物は、バラスト水に限らず、他のサイズの微生物から予め分離された特定サイズの微生物の量を測定する場合の任意の試料液であってもよい。
【0049】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の組み合わせ、または、省略が可能である。