(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872169
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】排ガス処理装置及び排ガス処理方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/64 20060101AFI20210510BHJP
B01D 53/81 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
B01D53/64 100
B01D53/81ZAB
【請求項の数】14
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-71913(P2017-71913)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-171585(P2018-171585A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2019年8月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100138140
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 努
(72)【発明者】
【氏名】長尾 厚志
(72)【発明者】
【氏名】平山 敦
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】三浦 崇
(72)【発明者】
【氏名】臼井 祐人
【審査官】
壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2016/132894(WO,A1)
【文献】
国際公開第2013/082157(WO,A1)
【文献】
特開2016−097321(JP,A)
【文献】
特開2015−196127(JP,A)
【文献】
特開2001−198434(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/136714(WO,A1)
【文献】
特開2004−066229(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0231560(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0165416(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/34−53/73,53/74−53/85,53/92,53/96
F27D17/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の炉から排出され水銀を含む排ガスを処理するために、各炉から排出される排ガスを導くそれぞれの排ガス流路に、該排ガスを除塵処理する集塵装置と、集塵装置の上流側で各排ガス流路へ活性炭を吹き込む活性炭供給装置とを備える排ガス処理装置において、
それぞれの排ガス流路における炉の下流側でかつ集塵装置の上流側の位置で排ガス流路から採取した排ガスの合流物の水銀濃度を活性炭の吹込み位置よりも上流側で測定する水銀濃度測定装置と、複数の活性炭供給装置の活性炭供給量を制御する制御装置とを備え、
制御装置は、活性炭供給量を水銀濃度測定装置による水銀濃度測定値に基づき、上記集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、活性炭供給量を制御することを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項2】
複数の炉から排出され水銀を含む排ガスを処理するために、各炉から排出される排ガスを導くそれぞれの排ガス流路に、該排ガスを除塵処理する集塵装置と、集塵装置の上流側で各排ガス流路へ活性炭を吹き込む活性炭供給装置とを備える排ガス処理装置において、
それぞれの排ガス流路における炉の下流側でかつ集塵装置の上流側の位置で排ガス流路から採取した排ガスの合流物の水銀濃度を活性炭の吹込み位置よりも上流側で測定する上流側水銀濃度計と、それぞれの排ガス流路における集塵装置の下流側で排ガス中の水銀濃度を測定する下流側水銀濃度計とを有する水銀濃度測定装置と、活性炭供給装置の活性炭供給量を制御する制御装置とを備え、
制御装置は、活性炭供給量を上流側水銀濃度計による水銀濃度測定値と下流側水銀濃度計による水銀濃度測定値とに基づき、上記集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、活性炭供給量を制御することを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項3】
複数の炉から排出され水銀を含む排ガスを処理するために、各炉から排出される排ガスを導くそれぞれの排ガス流路に、該排ガスを除塵処理する集塵装置と、集塵装置の上流側で各排ガス流路へ活性炭を吹き込む活性炭供給装置とを備える排ガス処理装置において、
それぞれの排ガス流路における炉の下流側でかつ集塵装置の上流側の位置で排ガス流路から採取した排ガスの合流物の水銀濃度を活性炭の吹込み位置よりも上流側で測定する上流側水銀濃度計と、それぞれの排ガス流路における集塵装置の下流側で排ガス中の水銀濃度を測定する下流側水銀濃度計と、複数の活性炭供給装置の活性炭供給量を制御する制御装置とを備え、
制御装置は、上流側水銀濃度計による水銀濃度測定値に基づき活性炭供給量を制御する第一の制御と、下流側水銀濃度計による水銀濃度測定値に基づき、それぞれの集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、活性炭供給量を制御する第二の制御を行うことを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項4】
制御装置は、活性炭供給量を所定の最小値以上に維持するように制御することとする請求項1ないし請求項3のうちの一つに記載の排ガス処理装置。
【請求項5】
制御装置は、水銀濃度測定装置による水銀濃度測定値が所定水銀濃度以上であるとき、活性炭供給量を所定の最大値に保つように制御することとする請求項1ないし請求項4のうちの一つに記載の排ガス処理装置。
【請求項6】
制御装置は、水銀濃度測定装置による排ガス中の水銀濃度測定値が零又は測定可能な限界最小値未満の値から、第一の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、所定の最小値の活性炭供給量のもとに活性炭を供給し、水銀濃度測定値が上記第一の所定水銀濃度に達した後に、水銀濃度測定値の増加にしたがって、所定の最小値から直線的に活性炭供給量を増大させ、水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の最大値の供給量とし、水銀濃度測定値が上記第二の所定水銀濃度に達した後には、水銀濃度測定値の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つこととする請求項1ないし請求項5のうちの一つに記載の排ガス処理装置。
【請求項7】
制御装置は、水銀濃度測定装置による排ガス中の水銀濃度測定値が零又は測定可能な限界最小値未満の値から、第一の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、所定の最小値で第一の供給量とする活性炭供給量のもとに活性炭を供給し、水銀濃度測定値が上記第一の所定水銀濃度に達したときに、階段状に活性炭供給量を所定の第二の供給量にまで増大させ、水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、活性炭供給量を第二の供給量で一定に保ち、さらに、水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の第三の供給量にまで増大させるように、水銀濃度測定値の増加にしたがって、階段状に活性炭供給量を増大させることを繰り返し、活性炭供給量を所定の最大値にまで増大させた後は、水銀濃度測定値の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つこととする請求項1ないし請求項5のうちの一つに記載の排ガス処理装置。
【請求項8】
複数の炉から排出され水銀を含む排ガスを処理するために、各炉から排出される排ガスを導くそれぞれの排ガス流路で該排ガスを集塵装置により除塵処理し、集塵装置の上流側で各排ガス流路へ活性炭供給装置から活性炭を吹き込むこととする排ガス処理方法において、
それぞれの排ガス流路における炉の下流側でかつ集塵装置の上流側の位置で排ガス流路から採取した排ガスの合流物の水銀濃度を活性炭の吹込み位置よりも上流側で水銀濃度測定装置により測定し、複数の活性炭供給装置の活性炭供給量を制御装置で制御することとし、
制御装置により、活性炭供給量を水銀濃度測定装置による水銀濃度測定値に基づき、上記集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、活性炭供給量を制御することを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項9】
複数の炉から排出され水銀を含む排ガスを処理するために、各炉から排出される排ガスを導くそれぞれの排ガス流路で該排ガスを集塵装置により除塵処理し、集塵装置の上流側で各排ガス流路へ活性炭供給装置から活性炭を吹き込むこととする排ガス処理方法において、
それぞれの排ガス流路における炉の下流側でかつ集塵装置の上流側の位置で排ガス流路から採取した排ガスの合流物の水銀濃度を活性炭の吹込み位置よりも上流側で測定する上流側水銀濃度計と、それぞれの排ガス流路における集塵装置の下流側で排ガス中の水銀濃度を測定する下流側水銀濃度計を有する水銀濃度測定装置により水銀濃度を測定し、
複数の活性炭供給装置の活性炭供給量を制御することとし、
制御装置により、活性炭供給量を上流側水銀濃度計による水銀濃度測定値と下流側水銀濃度計による水銀濃度測定値とに基づき、上記集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、活性炭供給量を制御することを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項10】
複数の炉から排出され水銀を含む排ガスを処理するために、各炉から排出される排ガスを導くそれぞれの排ガス流路で該排ガスを集塵装置により除塵処理し、集塵装置の上流側で各排ガス流路へ活性炭供給装置から活性炭を吹き込むこととする排ガス処理方法において、
それぞれの排ガス流路における炉の下流側でかつ集塵装置の上流側の位置で排ガス流路から採取した排ガスの合流物の水銀濃度を活性炭の吹込み位置よりも上流側で測定する上流側水銀濃度計と、それぞれの排ガス流路における集塵装置の下流側で排ガス中の水銀濃度を測定する下流側水銀濃度計を有する水銀濃度測定装置により水銀濃度を測定し、
複数の活性炭供給装置の活性炭供給量を制御することとし、
制御装置により、上流側水銀濃度計による水銀濃度測定値に基づき活性炭供給量を制御する第一の制御を行い、下流側水銀濃度計による水銀濃度測定値に基づき、それぞれの集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、活性炭供給量を制御
する第二の制御を行うことを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項11】
制御装置は、活性炭供給量を所定の最小値以上に維持するように制御することとする請求項8ないし請求項10のうちの一つに記載の排ガス処理方法。
【請求項12】
制御装置は、水銀濃度測定装置による水銀濃度測定値が所定水銀濃度以上であるとき、活性炭供給量を所定の最大値に保つように制御することとする請求項8ないし請求項11のうちの一つに記載の排ガス処理方法。
【請求項13】
制御装置は、水銀濃度測定装置による排ガス中の水銀濃度測定値が零又は測定可能な限界最小値未満の値から、第一の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、所定の最小値の活性炭供給量のもとに活性炭を供給し、水銀濃度測定値が上記第一の所定水銀濃度に達した後に、水銀濃度測定値の増加にしたがって、所定の最小値から直線的に活性炭供給量を増大させ、水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の最大値の供給量とし、水銀濃度測定値が上記第二の所定水銀濃度に達した後には、水銀濃度測定値の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つこととする請求項8ないし請求項12のうちの一つに記載の排ガス処理方法。
【請求項14】
制御装置は、水銀濃度測定装置による排ガス中の水銀濃度測定値が零又は測定可能な限界最小値未満の値から、第一の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、所定の最小値で第一の供給量とする活性炭供給量のもとに活性炭を供給し、水銀濃度測定値が上記第一の所定水銀濃度に達したときに、階段状に活性炭供給量を所定の第二の供給量にまで増大させ、水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、活性炭供給量を第二の供給量で一定に保ち、さらに、水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の第三の供給量にまで増大させるように、水銀濃度測定値の増加にしたがって、階段状に活性炭供給量を増大させることを繰り返し、活性炭供給量を所定の最大値にまで増大させた後は、水銀濃度測定値の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つこととする請求項8ないし請求項12のうちの一つに記載の排ガス処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物焼却施設、セメント製造工場、火力発電所、非鉄金属製錬工場等の各種工場から排出される水銀を含む排ガスの処理装置及び排ガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントキルン炉、非鉄金属製錬炉から排出される排ガスや、水銀を含んだ廃棄物が廃棄物焼却炉で焼却され排出される排ガス中に水銀が含まれることがあり、そのまま大気に放出されると、大気汚染を引き起こし問題となる。そこで、排ガス中の水銀を除去することが求められている。
【0003】
さらに、「水銀に関する水俣条約」が2013年に採択され、世界的な水銀管理強化の動きが進行している。この条約発効後、水銀排出規制対象施設に対して水銀の排出を抑制する対策が検討されている。水銀排出規制対象施設としては、石炭火力発電所、石炭焚きボイラ、非鉄金属製錬施設、廃棄物焼却施設、セメント製造施設が挙げられる。かかる状況において、これらの施設から排出される排ガス中の水銀を効率的に除去する処理方法の要望が高まっている。
【0004】
例えば、廃棄物焼却炉やボイラ火炉から排出される排ガス中の水銀の一般的な除去方法としては、排ガス中のダストを除塵するバグフィルタや電気集塵機へ排ガスを導くダクト内へ、バグフィルタ等に対して上流側位置で粉粒状の活性炭を吹き込み、該活性炭に水銀を吸着させ、この水銀を吸着した活性炭をダストとともにバグフィルタ等で集塵して排ガスから除去する方法が知られている。
【0005】
焼却炉で焼却処理される廃棄物の種類や、セメントキルン炉、非鉄金属製錬炉で製錬される原料の種類によっては、排ガス中の水銀濃度が一時的に高くなるような変動が生じる場合がある。この場合においても煙突から排出する排ガス中の水銀濃度を低く維持するためには、ダクトへ吹き込む活性炭の供給量を常時多量に吹き込む必要がある。
【0006】
このように、一時的に高くなる水銀濃度を想定して活性炭を常時多量にダクト内へ供給すると、上述の一時的な時間帯を除いた多くの時間帯で活性炭を過度に供給する結果となってしまい、活性炭の使用量が多大となり、排ガス処理費用が嵩むという問題や、集塵したダスト等の量が多大となり、除塵処理費用が嵩むという問題が生じる。そこで、特許文献1では、炉から排出され水銀を含む排ガスを導く排ガス流路に、排ガスを除塵処理する集塵装置と、排ガス流路へ活性炭を吹き込む活性炭供給装置とを備え、炉の下流側でかつ集塵装置の上流側で排ガス中の水銀濃度を測定する上流側水銀濃度計と、活性炭供給装置の活性炭供給量を制御する制御装置を備え、制御装置が、上流側水銀濃度計による水銀濃度測定値に基づき、集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、活性炭供給量を制御することとする排ガス処理装置が開示されている。この特許文献1の排ガス処理装置によると、炉よりも下流側で集塵装置よりも上流側で、水銀濃度を水銀濃度計で測定し、その測定値に基づき活性炭供給量を調整して集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を許容される設定値以下とする。炉からの排ガス中の水銀濃度が変動した場合に、排ガスの集塵装置への流入前に水銀濃度を測定しその測定値に基づき、速やかに活性炭供給量を適正量に調整することができ、水銀濃度の変動に対して遅れが生じることなく確実に煙突から排出される排ガス中の水銀濃度を許容される設定値以下とすることができるとともに、活性炭の供給量を常時多量に吹き込む必要がないため、活性炭の使用量を低減して運転費用を削減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開2016/132894
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
複数の各炉に対応して複数の排ガス流路を備える施設に、特許文献1の排ガス処理装置を適用しようとすると、それぞれの排ガス流路に付設する排ガス処理装置毎に水銀濃度計を設置する必要がある。集塵装置の上流側に設置する水銀濃度計は、ダストを含む排ガスを測定するため、ダストを濾過して水銀濃度測定センサ部に排ガスを導入するようにフィルタ機構が備えられていて高価格であり、かかる水銀濃度計を複数備えることとなるので、排ガス処理装置の設備費用が嵩むという問題が生じる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑み、複数の炉を備える施設において、排ガス中の水銀を確実に吸着除去し、排ガス中の水銀濃度が変動してもこれに適切な活性炭量で活性炭を供給するとともに、設備費用の高騰を抑制する排ガス処理装置及び排ガス処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると、上述の課題は、次の排ガス処理装置さらには排ガス処理方法により解決される。
【0011】
[排ガス処理装置]
本発明における排ガス処理装置は、次の第一発明、第二発明そして第三発明のごとく構成され、いずれによっても上述の課題は解決される。
【0012】
<第一発明>
複数の炉から排出され水銀を含む排ガスを処理するために、各炉から排出される排ガスを導くそれぞれの排ガス流路に、該排ガスを除塵処理する集塵装置と、集塵装置の上流側で各排ガス流路へ活性炭を吹き込む活性炭供給装置とを備える排ガス処理装置において、
それぞれの排ガス流路における炉の下流側でかつ集塵装置の上流側の位置で排ガス流路から採取した排ガスの合流物の水銀濃度を測定する水銀濃度測定装置と、複数の活性炭供給装置の活性炭供給量を制御する制御装置とを備え、
制御装置は、活性炭供給量を水銀濃度測定装置による水銀濃度測定値に基づき、上記集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、活性炭供給量を制御することを特徴とする排ガス処理装置。
【0013】
<第二発明>
複数の炉から排出され水銀を含む排ガスを処理するために、各炉から排出される排ガスを導くそれぞれの排ガス流路に、該排ガスを除塵処理する集塵装置と、集塵装置の上流側で各排ガス流路へ活性炭を吹き込む活性炭供給装置とを備える排ガス処理装置において、
それぞれの排ガス流路における炉の下流側でかつ集塵装置の上流側の位置で排ガス流路から採取した排ガスの合流物の水銀濃度を測定する上流側水銀濃度計と、それぞれの排ガス流路における集塵装置の下流側で排ガス中の水銀濃度を測定する下流側水銀濃度計とを有する水銀濃度測定装置と、複数の活性炭供給装置の活性炭供給量を制御する制御装置とを備え、制御装置は、活性炭供給量を上流側水銀濃度計による水銀濃度測定値と下流側水銀濃度計による水銀濃度測定値とに基づき、上記集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、活性炭供給量を制御することを特徴とする排ガス処理装置。
【0014】
<第三発明>
複数の炉から排出され水銀を含む排ガスを処理するために、各炉から排出される排ガスを導くそれぞれの排ガス流路に、該排ガスを除塵処理する集塵装置と、集塵装置の上流側で各排ガス流路へ活性炭を吹き込む活性炭供給装置とを備える排ガス処理装置において、
それぞれの排ガス流路における炉の下流側でかつ集塵装置の上流側の位置で排ガス流路から採取した排ガスの合流物の水銀濃度を測定する上流側水銀濃度計と、それぞれの排ガス流路における集塵装置の下流側で排ガス中の水銀濃度を測定する下流側水銀濃度計と、複数の活性炭供給装置の活性炭供給量を制御する制御装置とを備え、制御装置は、上流側水銀濃度計による水銀濃度測定値に基づき活性炭供給量を制御する第一の制御と、下流側水銀濃度計による水銀濃度測定値に基づき、それぞれの集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、活性炭供給量を制御する第二の制御を行うことを特徴とする排ガス処理装置。
【0015】
第一ないし第三発明においては、制御装置は、活性炭供給量を所定の最小値以上に維持するように制御することが好ましい。所定の最小値を保つようにすることで、集塵装置のバグフィルタには、活性炭の吸着層が常に形成されているようになるので、高濃度の水銀を含む排ガスが排出された際にも、予め形成された上記吸着層による吸着除去作用とその際に吹き込まれる活性炭による吸着除去作用とにより水銀を速やかにかつ確実に吸着除去でき、集塵後の排ガスの水銀濃度を十分に低濃度とすることができる。
【0016】
第一ないし第三発明においては、制御装置は、水銀濃度測定装置による水銀濃度測定値が所定水銀濃度以上であるとき、活性炭供給量を所定の最大値に保つように制御することが好ましい。時間平均としてはさほど水銀濃度が高くないにも拘らず一時的に急激に水銀濃度が高くなったときに、この高い水銀濃度に合せて多量の活性炭を供給すると、その後の時間にわたり過剰に活性炭を供給してしまう結果になる。このような過剰な供給となることを、上記活性炭供給量を所定の最大値に保つように制御することにより防止できる。
【0017】
また、第一ないし第三発明において、活性炭供給量の最小値から最大値へ向けた増大に関しては、制御装置は、排ガス中の水銀濃度測定値が零又は測定可能な限界最小値未満の値から、第一の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、所定の最小値の活性炭供給量のもとに活性炭を供給し、水銀濃度測定値が上記第一の所定水銀濃度に達した後に、水銀濃度測定値の増加にしたがって、所定の最小値から直線的に活性炭供給量を増大させ、水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の最大値の供給量とし、水銀濃度測定値が上記第二の所定水銀濃度に達した後には、水銀濃度測定値の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つようにすることができる。
【0018】
さらに、第一ないし第三発明において、活性炭供給量の最小値から最大値に向けた増大に関しては、制御装置は、排ガス中の水銀濃度測定値が零又は測定可能な限界最小値未満の値から、第一の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、所定の最小値で第一の供給量とする活性炭供給量のもとに活性炭を供給し、水銀濃度測定値が上記第一の所定水銀濃度に達したときに、階段状に活性炭供給量を所定の第二の供給量にまで増大させ、水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、活性炭供給量を第二の供給量で一定に保ち、さらに、水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の第三の供給量にまで増大させるように、水銀濃度測定値の増加にしたがって、階段状に活性炭供給量を増大させることを繰り返し、活性炭供給量を所定の最大値にまで増大させた後は、水銀濃度測定値の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つようにすることもできる。
【0019】
上述のように、排ガス中の水銀濃度測定値に基づき、活性炭供給量を最小値から最大値へ向けて増大させることにより、活性炭供給装置の供給量調整機構にとって不具合が生じることもなく、活性炭供給量を円滑に制御することができる。
【0020】
[排ガス処理方法]
本発明における排ガス処理方法は、次の第四発明、第五発明そして第六発明のごとく構成され、いずれによっても上述の課題は解決される。
【0021】
<第四発明>
複数の炉から排出され水銀を含む排ガスを処理するために、各炉から排出される排ガスを導くそれぞれの排ガス流路で該排ガスを集塵装置により除塵処理し、集塵装置の上流側で各排ガス流路へ活性炭供給装置から活性炭を吹き込むこととする排ガス処理方法において、
それぞれの排ガス流路における炉の下流側でかつ集塵装置の上流側の位置で複数の排ガス流路から採取した排ガスの合流物の水銀濃度を水銀濃度測定装置で測定し、複数の活性炭供給装置の活性炭供給量を制御装置で制御することとし、
制御装置により、活性炭供給量を水銀濃度測定装置による水銀濃度測定値に基づき、上記集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、活性炭供給量を制御することを特徴とする排ガス処理方法。
【0022】
<第五発明>
複数の炉から排出され水銀を含む排ガスを処理するために、各炉から排出される排ガスを導くそれぞれの排ガス流路で該排ガスを集塵装置により除塵処理し、集塵装置の上流側で各排ガス流路へ活性炭供給装置から活性炭を吹き込むこととする排ガス処理方法において、
それぞれの排ガス流路における炉の下流側でかつ集塵装置の上流側の位置で複数の排ガス流路から採取した排ガスの合流物の水銀濃度を測定する上流側水銀濃度計と、それぞれの排ガス流路における集塵装置の下流側で排ガス中の水銀濃度を測定する下流側水銀濃度計を有する水銀濃度測定装置により水銀濃度を測定し、
複数の活性炭供給装置の活性炭供給量を制御することとし、
制御装置により、活性炭供給量を上流側水銀濃度計による水銀濃度測定値と下流側水銀濃度計による水銀濃度測定値とに基づき、上記集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、活性炭供給量を制御することを特徴とする排ガス処理方法。
【0023】
<第六発明>
複数の炉から排出され水銀を含む排ガスを処理するために、各炉から排出される排ガスを導くそれぞれの排ガス流路で該排ガスを集塵装置により除塵処理し、集塵装置の上流側で各排ガス流路へ活性炭供給装置から活性炭を吹き込むこととする排ガス処理方法において、
それぞれの排ガス流路における炉の下流側でかつ集塵装置の上流側の位置で複数の排ガス流路から採取した排ガスの合流物の水銀濃度を測定する上流側水銀濃度計と、それぞれの排ガス流路における集塵装置の下流側で排ガス中の水銀濃度を測定する下流側水銀濃度計を有する水銀濃度測定装置により水銀濃度を測定し、
複数の活性炭供給装置の活性炭供給量を制御することとし、
制御装置により、上流側水銀濃度計による水銀濃度測定値に基づき活性炭供給量を制御するとともに、下流側水銀濃度計による水銀濃度測定値に基づき、それぞれの集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を設定値以下とするように、活性炭供給量を制御することを特徴とする排ガス処理方法。
【0024】
第四ないし第六発明においては、制御工程は、活性炭供給量を所定の最小値以上に維持するように制御することが好ましい。所定の最小値を保つようにすることで、集塵装置のバグフィルタには、活性炭の吸着層が常に形成されているようになるので、濃度の高い高濃度の水銀を含む排ガスが排出された際にも、予め形成された上記吸着層による吸着除去作用とその際に吹き込まれる活性炭による吸着除去作用とにより水銀を速やかにかつ確実に吸着除去でき、集塵後の排ガスの水銀濃度を十分に低濃度とすることができる。
【0025】
第四ないし第六発明においては、制御工程は、水銀濃度測定装置による水銀濃度測定値が所定水銀濃度以上であるとき、活性炭供給量を所定の最大値に保つように制御することが好ましい。時間平均としてはさほど水銀濃度が高くないにも拘らず一時的に急激に水銀濃度が高くなったときに、この高い水銀濃度に合せて多量の活性炭を供給すると、その後の時間にわたり過剰に活性炭を供給してしまう結果になる。このような過剰な供給となることを、上記活性炭供給量を所定の最大値に保つように制御することにより防止できる。
【0026】
また、第四ないし第六発明において、活性炭供給量の最小値から最大値へ向けた増大に関しては、制御工程は、排ガス中の水銀濃度測定値が零又は測定可能な限界最小値未満の値から、第一の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、所定の最小値の活性炭供給量のもとに活性炭を供給し、水銀濃度測定値が上記第一の所定水銀濃度に達した後に、水銀濃度測定値の増加にしたがって、所定の最小値から直線的に活性炭供給量を増大させ、水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の最大値の供給量とし、水銀濃度測定値が上記第二の所定水銀濃度に達した後には、水銀濃度測定値の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つようにすることができる。
【0027】
さらに、第四ないし第六発明において、活性炭供給量の最小値から最大値に向けた増大に関しては、制御工程は、排ガスの水銀濃度測定値が零又は測定可能な限界最小値未満の値から、第一の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、所定の最小値で第一の供給量とする活性炭供給量のもとに活性炭を供給し、水銀濃度測定値が上記第一の所定水銀濃度に達したときに、階段状に活性炭供給量を所定の第二の供給量にまで増大させ、水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、活性炭供給量を第二の供給量で一定に保ち、さらに、水銀濃度測定値が第二の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の第三の供給量にまで増大させるように、水銀濃度測定値の増加にしたがって、階段状に活性炭供給量を増大させることを繰り返し、活性炭供給量を所定の最大値にまで増大させた後は、水銀濃度測定値の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つようにすることもできる。
【0028】
上述のように、排ガスの水銀濃度測定値に基づき、活性炭供給量の最小値から最大値へ向けて増大させることにより、活性炭供給装置の供給量調整機構にとって不具合が生じることもなく、活性炭供給量を円滑に制御することができる。
【0029】
このような本発明によれば、第一発明そして第四発明では、炉よりも下流側で集塵装置よりも上流側で、水銀濃度を水銀濃度計で測定し、その測定値に基づき活性炭供給量を調整して集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度を許容される設定値以下とする。炉からの排ガス中の水銀濃度が変動した場合に、排ガスの集塵装置への流入前に水銀濃度を測定しその測定値に基づき、速やかに活性炭供給量を適正量に調整することができ、水銀濃度の変動に対して遅れが生じることなく確実に煙突から排出される排ガス中の水銀濃度を許容される設定値以下とすることができる。
【0030】
しかも、第一発明そして第四発明では、複数のそれぞれの排ガス流路の排ガスを採取してそれらを合流物として、この合流物の水銀濃度を測定することとしているので、排ガス流路が複数でも水銀濃度測定装置は一つで済む。測定された合流物の水銀濃度は、複数の排ガス流路における排ガスの水銀濃度の平均値ということになるが、活性炭供給量をこの平均値に見合った活性炭供給量よりも高めに設定しておけば、どの排ガス流路に対しても十分に対応できる。水銀濃度測定装置は、ダストを含む排ガスの水銀濃度を測定できるようにダストを除塵するフィルタを備えており高価なので、上述のように、排ガス流路が複数でも水銀濃度測定装置が一つで済むということは、各排ガス流路に水銀濃度測定装置を備える場合にくらべ、設備コストが低減され経済的に有利である。
【0031】
第二発明、第三発明、第五発明そして第六発明では、複数のそれぞれの排ガス流路について炉の下流側で集塵装置よりも上流側で採取した排ガスの合流物の水銀濃度を、上流側水銀濃度計で測定するとともに、集塵装置の下流側でも各排ガス流路について個別に水銀濃度を下流側水銀濃度計で測定し、これらの二つの測定値に基づき活性炭供給量を調整して集塵装置の下流側での水銀濃度を設定値以下とする。このように、それぞれの排ガス流路における炉の下流側で集塵装置よりも上流側で採取した排ガスの合流物の水銀濃度測定値に基づき、活性炭供給量のベース値を定める第一の制御を速やかに行い、さらに、集塵装置の下流側での水銀濃度測定値に基づき、各排ガス流路に対し個別に活性炭供給量を上記ベース値に対して増減して調整するように、活性炭供給量を補完して第二の制御を行う。このようにすることにより、水銀濃度の変動に対して遅れが生じることなくしかも、より確実に煙突から排出される排ガス中の水銀濃度を設定値以下にできる。集塵装置の下流側での水銀濃度測定に基づき各排ガス流路に対し個別に、活性炭供給量を補完するように活性炭を供給するので、合流物の水銀濃度の測定に基づく制御を行う第一そして第四発明では水銀濃度が低い排ガス流路に対して設定される活性炭供給量が高めとされることにくらべて低く抑制できる。
【発明の効果】
【0032】
このように本発明によれば、複数の炉のそれぞれに設けられた排ガス流路における排ガス中の水銀濃度を集塵装置の上流側で測定し、あるいは集塵装置の上流側そして下流側で測定して、水銀濃度測定値にもとづき吹き込む活性炭の供給量を調整するので、煙突から排出される排ガス中水銀濃度は確実に所定値以下となり、しかも活性炭は過不足なく供給されることとなり、活性炭の使用量を抑制できるとともに、排ガス処理費用の低減化を図れる。しかも、本発明では、集塵装置の上流側での水銀濃度の測定は、複数の排ガス流路から採取された排ガスの合流物について一つの水銀濃度測定装置で行うこととしたので、各排ガス流路に水銀濃度測定装置を設ける場合にくらべ、設備コストが低減されて、経済的に有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の第一実施形態装置の概要構成図である。
【
図2】本発明の第二実施形態装置の概要構成図である。
【
図3】(A)〜(H)は排ガス中水銀濃度と活性炭供給量との関係として、採用可能な各種パターンを示している。
【
図4】本発明の比較例において用いられた、バグフィルタ入口水銀濃度と活性炭供給量との関係を示す図である。
【
図5】本発明の実施例において用いられた、排ガス合流物水銀濃度と活性炭供給量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施の形態を説明する。
【0035】
以下に示される本実施形態では、水銀を含む排ガスを排出する炉として、廃棄物を焼却する焼却炉について説明しているが、本発明は、これに限らず、セメントキルン炉、非鉄金属製錬炉等の各種炉から排出される水銀を含む排ガスの処理装置及び処理方法として用いることができる。
【0036】
廃棄物を焼却する焼却炉からの排ガスに対して、集塵のために設置したバグフィルタの上流位置で排ガス流路へ活性炭を吹き込むことで、バグフィルタの下流側での水銀濃度を極低濃度レベルに抑制することが可能であるが、従来は廃棄物の種類や量の変動により、焼却炉からの排ガス中の水銀濃度が変動しバグフィルタの下流側において一時的に水銀濃度が上昇する場合に備え、活性炭を常時、多量に吹き込む必要があり、排ガス処理費用が嵩むことになっている。そこで、本実施形態では、水銀濃度計により水銀濃度を測定し、測定された水銀濃度にもとづき、過不足ない活性炭量を排ガス流路へ吹き込むこととしている。水銀濃度計は、連続的に測定する形式が好ましい。
【0037】
<第一実施形態>
本実施形態装置の概要構成を示す
図1において、二つの焼却炉1A;1Bのそれぞれから排出される排ガスを別途の経路で煙突4A;4Bまで導く二つの排ガス流路A;Bが設けられている。本実施形態では、二つの焼却炉1A;1Bに対応して二つの排ガス流路A;Bが設けられている例を示しているが、本発明では、これに限定されず、三つ以上の焼却炉に対応して三つ以上の排ガス流路が設けられていることとしてもよい。
図1において、二つの排ガス流路A;Bのそれぞれに対応して設けられている諸装置には、数字符号にそれぞれA;B符号を付し、両排ガス流路A;Bに対して共通して設けられている諸装置には、数字符号のみを付すものとする。
【0038】
上記二つの排ガス流路A;Bのそれぞれには、それらの上流側(図にて左側)から下流側に向け、焼却炉1A;1B、ボイラ2A;2B、集塵装置としてバグフィルタ3A;3Bそして煙突4A;4Bが設けられている。上記排ガス流路A;Bのボイラ2A;2Bとバグフィルタ3A;3Bの間には、管路の側方に、活性炭供給装置5A;5Bが設けられていて、バグフィルタ3A;3Bの上流側に接続されている。
【0039】
図1においては、二つの排ガス流路A;Bには、排ガス中の水銀濃度を測定するために排ガスを採取する採取管6A;6Bがボイラ2A;2Bとバグフィルタ3A;3Bの間で接続されており、両採取管6A;6Bは合流するよう接続されていて、採取された両排ガス流路A;Bからの排ガスが合流物をなすようになっている。上記両採取管6A;6Bの合流位置に接続して水銀濃度測定装置7の検出部7−1が配設されている。水銀濃度測定装置7は排ガスの合流物の水銀濃度を測定し、制御装置8へ合流物の水銀濃度測定値を送るように該制御装置8に接続されており、該制御装置8は上記活性炭供給装置5A;5Bに接続されていて両活性炭供給装置5A;5Bへ活性炭供給指令信号を発する。該制御装置8は水銀濃度測定装置7から受けた排ガス合流物の水銀濃度測定値に基づき、バグフィルタ3A;3Bよりも下流位置での水銀濃度を予め定められた所定水銀濃度値以下とするように、活性炭供給装置5A;5Bを制御する。
【0040】
本実施形態では、
図1に見られるように、排ガス流路A;Bにおける焼却炉1A;1Bの下流側かつバグフィルタ3A;3Bよりも上流側であって、活性炭供給装置5A;5Bによる活性炭吹込み位置よりも上流側の位置から排ガスを採取する採取管6A;6Bが接続されており、水銀濃度測定装置7は採取管6A;6Bの合流位置での排ガス合流物の水銀濃度を測定するように配設されている。本実施形態では、制御装置8によりこの排ガス合流物の水銀濃度および活性炭供給量と、バグフィルタ3A;3Bよりも下流位置での水銀濃度との関係が蓄積されたデータにもとづき把握されている。したがって、活性炭吹込み位置よりも上流側の位置で採取する排ガスの合流物の水銀濃度を測定しその水銀濃度測定値と活性炭供給量とから、バグフィルタ3A;3Bの下流での水銀濃度を推定できる。すなわち、制御装置8によって上記活性炭吹込み位置よりも上流側の位置で採取する排ガスの合流物の水銀濃度測定値に基づき、バグフィルタ3A;3Bの下流での水銀濃度を推定し、その推定水銀濃度を予め定める所定水銀濃度値以下とするために必要な活性炭供給量を求めることができ、活性炭供給装置3の活性炭供給量を制御する。その結果としてバグフィルタ3A;3Bの下流での水銀濃度を所定水銀濃度値以下としている。
【0041】
上記活性炭供給装置5A;5Bは、図示はしないが、具体的には、例えば活性炭を収容するホッパと、該ホッパの下部出口に設けられたロータリ形式の切出し部材と、さらにその下方に設けられたバルブまたはダンパとを有している。かかる活性炭供給装置5A;5Bでは、制御装置8からの指令信号を受けて、切出し部材のロータリの回転数、バルブの開度及びダンパが開度のうち少なくとも一つが調整され活性炭が調整された供給量のもとで上記排ガス流路A;Bへ供給される。
【0042】
かかる本実施形態では、焼却炉1A;1Bからの排ガス中の水銀濃度に変動があった場合、焼却炉1A;1Bの下流側かつ活性炭供給装置5A;5Bによる活性炭吹込み位置よりも上流側の位置で採取する排ガスの合流物の水銀濃度を水銀濃度測定装置7が測定して、この水銀濃度の変動を検知するため、速やかに活性炭供給量を調整する対応ができるので、タイムラグがなく、煙突内の排ガス中の水銀濃度を確実に設定値以下に維持することができる。
【0043】
このような本実施形態において、排ガス流路Aにおける焼却炉1Aからの排ガスと、排ガス流路Bにおける焼却炉1Bから排ガスとにおいて、排ガス中の水銀濃度が異なる場合、両方の排ガス流路A;Bから採取管6A;6Bにより排ガスの一部が採取され合流して合流物となった状態で、検出部7−1で検出された合流物について水銀濃度測定装置7により水銀濃度が測定される。測定された水銀濃度は、両方の排ガス流路A,Bにおける排ガスの水銀濃度の平均値となる。本実施形態では、制御装置8においては、この平均値に相当する水銀濃度に対して必要な活性炭供給量にくらべ高めの活性炭供給量が設定されている。すなわち、各排ガス流路A;Bにおける排ガスの水銀濃度のバラツキをそれらの実績から予想した高い方の水銀濃度に対して適切な活性炭供給量に設定されている。したがって、活性炭供給装置5A;5Bからは、上記平均値よりも低い水銀濃度の一方の排ガス流路AもしくはBに対しては、多少過剰に活性炭が供給されることとなる。
【0044】
かくして、水銀が活性炭により吸着された状態でバグフィルタ3A;3Bで除去され、排ガスは無害化された状態で煙突4A;4Bから大気へ放出される。
【0045】
<第二実施形態>
図2に示される本実施形態は、前出の第一実施形態に比し、水銀濃度測定装置が別位置で測定する第一水銀濃度計と第二水銀濃度計から成っている点で特徴がある。すなわち、本実施形態では、活性炭供給装置5A;5Bによる活性炭吹込み位置よりも上流側の位置から採取された排ガスの合流物の水銀濃度を測定する第一実施形態の水銀濃度測定装置に対応する第一水銀濃度計7に加え、バグフィルタ3A;3Bの下流側であるバグフィルタ3A;3Bの出口又は煙突4A;4Bにて排ガス中の水銀濃度を測定する第二水銀濃度計9A;9Bも設けられている。第一水銀濃度計7は二つの排ガス流路A;Bから排ガスを採取して合流させた排ガスの合流物に対して一つだけ設けられているが、第二水銀濃度計は二つの排ガス流路A;Bに対してそれぞれ設けられている。上記第二水銀濃度計9A;9Bの測定値は出力信号として制御装置8へ送られるようになっている。本実施形態は、この第二水銀濃度計に関する点以外は第一実施形態と同じである。したがって、
図2では、
図1の第一実施形態における部位と共通な部位について同一符号を付すことで、その説明は省略する。
【0046】
本実施形態では、
図2に見られるように、既述の第一実施形態での活性炭供給装置5A;5Bによる活性炭吹込み位置よりも上流側の位置から採取された排ガスの合流物の水銀濃度を測定する第一水銀濃度計7に加え、一方の排ガス流路Aにおけるバグフィルタ3Aの出口に第二水銀濃度計9Aが設けられ、そして他方の排ガス流路Bにおけるバグフィルタ3Bの出口にもう一つの第二水銀濃度計9Bが設けられている。第一実施形態と同様に、活性炭供給装置5A;5Bによる活性炭吹込み位置よりも上流側の位置から採取された排ガスの合流物の水銀濃度を測定する第一水銀濃度計7による測定値に基づいて、第一の制御として、活性炭供給量のベース値を制御することに加え、本実施形態では、さらにバグフィルタ3A;3Bの出口における第二水銀濃度計9A;9Bによる測定値に基づき、第一水銀濃度計7による測定値に基づく第一の制御を補完するようにして、第二の制御として活性炭供給量を増減するように制御する。第二水銀濃度計9A;9Bは、二つの排ガス流路A;Bに対してそれぞれ専用に設けられているので、制御装置8は二つの活性炭供給装置5A;5Bに対して別途の指令信号を発し、活性炭供給装置5A;5Bのそれぞれから排ガス流路A;Bに適切な補完量で活性炭が供給される。
【0047】
第一実施形態では、両方の排ガス流路A、Bから採取した排ガスの一部の合流物の水銀濃度が測定され、測定された水銀濃度は、両方の排ガス流路A,Bにおける排ガスの水銀濃度の平均値となっており、制御装置8において、この平均値に相当する水銀濃度に対して必要な活性炭供給量にくらべ高めの活性炭供給量が設定されていて、活性炭供給装置5A;5Bからは、上記平均値よりも低い水銀濃度の一方の排ガス流路AもしくはBに対しては、多少過剰に活性炭が供給されることとなる。第二実施形態では、バグフィルタ3A;3Bの出口における第二水銀濃度計9A;9Bによる測定値に基づき、第一水銀濃度計7による測定値に基づく第一の制御を補完するようにして、第二の制御として活性炭供給装置5A;5Bの活性炭供給量を別個に増減するように制御するので、活性炭供給装置5A;5Bのそれぞれから排ガス流路A;Bに適切な補完量で活性炭が供給され、過剰に活性炭を供給することがなく、活性炭使用量を適切にすることができる。
【0048】
第二水銀濃度計9A;9Bは、
図2にて、それぞれの検出部9A−1,9B−1を排ガス流路A;Bに直接配設した例を示したが、これに限定されず、排ガス流路A;Bから第一水銀濃度計7の場合と同様な採取管を設け、各採取管にそれぞれ検出部9A−1,9B−1を配設することとしてもよい。
【0049】
本実施形態において、活性炭供給装置5A;5Bによる活性炭吹込み位置よりも上流側の位置から採取された排ガスの合流物の水銀濃度を測定する第一水銀濃度計7による水銀濃度測定値が短時間で増加する現象(水銀濃度測定値ピークという)が検出されてから、バグフィルタ3A;3Bの出口において、第二水銀濃度計9A;9Bによる水銀濃度測定値ピークが検出されるまではタイムラグがあるので、活性炭供給装置3による活性炭吹込み位置よりも上流側の水銀濃度測定値ピークが検出されなくなったときでもバグフィルタ3A;3Bの出口において水銀濃度測定値ピークが検出される可能性がある。そこで、第二水銀濃度計9A;9Bを設置しバグフィルタ3A;3Bの出口の水銀濃度測定値に基づき活性炭供給量を制御することによって、第一水銀濃度計7の測定値に基づく制御を補完して、煙突内の排ガス中の水銀濃度をさらに確実に設定値以下にまで下げることができる。
【0050】
本発明の実施の形態では、制御装置は、水銀濃度計による水銀濃度測定値と活性炭供給量との予め定める対応関係に基づき、活性炭供給量を制御するようにしてもよい。予め定める水銀濃度測定値と活性炭供給量との対応関係としては、種々の形態を適用することができる。
【0051】
予め定める水銀濃度測定値と活性炭供給量との対応関係としては、水銀濃度測定装置により測定した排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、活性炭供給量を、所定の最小値から始まり次第に増加して所定の最大値とする対応関係の形態にしてもよい。活性炭供給量の所定の最小値としては、焼却炉1から排ガスが排出されている運転中は排ガス中の水銀濃度が極めて低い場合にも、最低限としてこの最小値の供給量で常時活性炭を吹き込むことにより、煙突内の排ガス中の水銀濃度を設定値以下に確実に維持できるようにする活性炭供給量の値を定める。排ガス中水銀濃度測定値の増加にしたがって、活性炭供給量を所定の最小値から次第に増加させ、排ガス中水銀濃度に対して適正な量の活性炭を供給する。活性炭供給量を所定の最小値から次第に増大させる対応関係の形態では、水銀濃度の増加にしたがって、活性炭供給量を直線的に増大させてもよいし、複数段階に分けて階段状に増大させるようにしてもよく、種々の対応関係の形態を採用できる。活性炭の供給量を調整する手段として、活性炭供給装置のロータリバルブ形式である場合には切出し部材のロータリの回転数、バルブの開度及びダンパの開度などを単独で又は組み合わせて調整することを行うが、これらの調整機構の調整範囲や調整の特性(例えば供給量の増減が連続的に可能、又は段階的に可能等)に適した対応関係の形態を採用することが好ましい。
【0052】
水銀濃度測定値と活性炭供給量との対応関係の各種形態の例を
図3に示す。
【0053】
図3(A)に示す形態は、排ガス中水銀濃度の測定値が零又は測定可能な限界最小値未満の値から、予め定める所定水銀濃度までの範囲には、所定の最小値の活性炭供給量のもとに活性炭を供給し、水銀濃度の測定値が上記所定水銀濃度に達したときに、ステップ状に活性炭供給量を所定の最大値にまで増大させ、さらに、排ガス中水銀濃度の増加に対して、活性炭供給量をその所定の最大値で一定に保つ形態である。水銀濃度の測定値が所定水銀濃度より低い場合には活性炭供給量を所定の最小値とし、所定水銀濃度より高い場合には活性炭供給量を所定の最大値とする対応関係の形態であり、簡単な制御機構で活性炭供給量を制御することができる。
【0054】
図3(B)に示す形態は、排ガス中水銀濃度の測定値が零又は測定可能な限界最小値未満の値から、第一の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、所定の最小値の活性炭供給量(第一の供給量)のもとに活性炭を供給し、水銀濃度の測定値が上記第一の所定水銀濃度に達したときに、ステップ状に活性炭供給量を所定の第二の供給量にまで増大させ、排ガス中水銀濃度の増加に対して活性炭供給量を第二の供給量で一定に保ち、さらに、水銀濃度の測定値が第二の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の第三の供給量にまで増大させるように、排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、細かい階段状で活性炭供給量を増大させることを繰り返し、活性炭供給量を所定の最大値にまで増大させた後は、排ガス中水銀濃度の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つ形態である。排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、活性炭供給量を所定の最小値から所定の最大値にまで階段状で増大させることにより、排ガス中水銀濃度に対して活性炭の供給をより適正な量で供給するように制御することができる。
【0055】
図3(C)に示す形態は、排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、所定の最小値から直線的に活性炭供給量を増大させる形態である。また、
図3(D)に示す形態は、排ガス中水銀濃度の測定値が所定水銀濃度に達するまでの範囲には、排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、所定の最小値から直線的に活性炭供給量を増大させ、水銀濃度の測定値が上記所定の排ガス中水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の最大値の供給量とし、活性炭供給量を所定の最大値にまで増大させた後は、排ガス中水銀濃度の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つ形態である。
図3(C)、(D)に示す形態では、排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、所定の最小値から連続的に活性炭供給量を増大させることにより、排ガス中水銀濃度に対してきめ細かく適正量で活性炭を供給するように制御することができる。
【0056】
図3(E)に示す形態は、排ガス中水銀濃度の測定値が零又は測定可能な限界最小値未満の値から、第一の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、所定の最小値の活性炭供給量のもとに活性炭を供給し、水銀濃度の測定値が上記第一の所定水銀濃度に達した後に、排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、所定の最小値から直線的に活性炭供給量を増大させ、水銀濃度の測定値が第二の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の最大値の供給量とし、活性炭供給量を所定の最大値にまで増大させた後は、排ガス中水銀濃度の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つ形態である。
図3(E)に示す形態は、
図3(A)と(C)に示す形態を組み合わせた形態であり、それぞれの形態の特徴、効果を併せもつ。
【0057】
図3(F)に示す形態は、排ガス中水銀濃度の測定値が零又は測定可能な限界最小値未満の値から、第一の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、所定の最小値の活性炭供給量(第一の供給量)のもとに活性炭を供給し、水銀濃度の測定値が上記第一の所定水銀濃度に達した後に、排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、第一の供給量から直線的に活性炭供給量を増大させ、第二の所定水銀濃度に対応する第二の供給量にまで増大させ、その後排ガス中水銀濃度の増加に対して活性炭供給量を第二の供給量で一定に保ち、さらに、第三の所定水銀濃度に達したときに、第二の供給量から直線的に活性炭供給量を増大させ、第四の所定水銀濃度に対応する第三の供給量にまで増大させ、その後排ガス中水銀濃度の増加に対して活性炭供給量を第三の供給量で一定に保ち、このような排ガス中水銀濃度の増加に対して活性炭供給量を一定に保つことと増大させることを繰り返し、活性炭供給量を所定の最大値にまで増大させた後は、排ガス中水銀濃度の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つ形態である。
図3(F)に示す形態は、
図3(B)と(D)に示す形態を組み合わせた形態であり、それぞれの形態の特徴、効果を併せもつ。
【0058】
図3(G)に示す形態は、排ガス中水銀濃度の測定値が所定水銀濃度に達するまでの間、排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、所定の最小値から直線的に活性炭供給量を増大させ、水銀濃度の測定値が上記所定水銀濃度に達したときに、ステップ状に活性炭供給量を所定の最大値にまで増大させ、活性炭供給量を所定の最大値にまで増大させた後は、排ガス中水銀濃度の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つ形態である。排ガス中水銀濃度の測定値が比較的中程度の所定の値より低い場合には、排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、所定の最小値から連続的に活性炭供給量を増大させることにより、排ガス中水銀濃度に対してきめ細かく適正量で活性炭を供給するように制御することができ、排ガス中水銀濃度の測定値が比較的中程度の所定水銀濃度より高い場合には、活性炭供給量を所定の最大値とすることとする対応関係であり、活性炭の供給量を調整する複数の手段を有効に利用して活性炭供給量を適切量で制御することができる。
【0059】
図3(H)に示す形態は、排ガス中水銀濃度の測定値が第一の所定水銀濃度に達するまでの間、排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、所定の最小値から直線的に活性炭供給量を増大させ、水銀濃度の測定値が上記第一の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の第一の供給量とし、水銀濃度の測定値が第二の所定水銀濃度に達するまでの間、活性炭供給量を所定の第一の供給量で一定に保ち、水銀濃度の測定値が上記第二の所定水銀濃度に達したときに、ステップ状に活性炭供給量を所定の最大値にまで増大させ、活性炭供給量を所定の最大値にまで増大させた後は、排ガス中水銀濃度の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つ形態である。
図3(H)に示す形態は、
図3(G)に示す形態に、排ガス中水銀濃度の測定値が比較的中程度の所定の範囲(第一の所定水銀濃度から第二の所定銀濃度までの範囲)では、活性炭供給量を第一の所定供給量で一定に保つことを組み合わせた形態であり、活性炭の供給をより適正な量で供給するように制御することができる。
【0060】
また、制御装置は、水銀濃度計による水銀濃度測定値と活性炭供給量とを予め定める対応関係に基づき活性炭供給量を制御する場合に、予め定める水銀濃度測定値と活性炭供給量との対応関係の形態として、測定した排ガス中水銀濃度が零又は水銀濃度計の測定可能な限界最小値未満又は予め定める所定値より低い場合には、活性炭の供給を行わず、排ガス中水銀濃度が零又は測定可能な限界最小値又は予め定めた所定値より高い場合には、排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、活性炭供給量を次第に増加させる対応関係の形態としてもよい。また、排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、活性炭供給量を増加させる際に、直線的に増加させてもよいし、階段状に増加させてもよい。
【0061】
また、上記対応関係の他の形態としては、測定した排ガス中水銀濃度が零又は水銀濃度計の測定可能な限界最小値未満又は予め定める第一の所定水銀濃度より低い場合には、活性炭の供給を行わず、排ガス中水銀濃度が零又は測定可能な限界最小値又は予め定める第一の所定水銀濃度より高く、予め定める第二の所定水銀濃度より低い範囲で、排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、活性炭供給量を次第に増加させ、排ガス中水銀濃度の測定値が上記第二の所定水銀濃度より高い範囲で、活性炭供給量を所定の供給量として一定に保つ対応関係の形態としてもよい。また、排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、活性炭供給量を増加させる際に、直線的に増加させてもよいし、階段状に増加させてもよい。
【0062】
本発明において、排ガス中の水銀濃度と活性炭供給量とを予め定める対応関係にもとづいて、活性炭供給量を制御する場合、その最小値から最大値までの活性炭供給量の増大について種々の形態をとれることは
図3にて説明したとおりであるが、所定の最小値そして所定の最大値をどのようにして定めるか、その一例として
図3(E)の形態で活性炭供給量を増大する場合について次に説明する。すなわち、水銀濃度測定値と活性炭供給量との対応関係が次に示す形態である。排ガス中水銀濃度の測定値が零又は測定可能な限界最小値未満の値から、第一の所定水銀濃度に達するまでの範囲には、所定の最小値の活性炭供給量のもとに活性炭を供給し、水銀濃度の測定値が上記第一の所定水銀濃度に達した後に、排ガス中水銀濃度の増加にしたがって、所定の最小値から直線的に活性炭供給量を増大させ、水銀濃度の測定値が第二の所定水銀濃度に達したときに、活性炭供給量を所定の最大値の供給量とし、活性炭供給量を所定の最大値にまで増大させた後は、排ガス中水銀濃度の増加に対してその所定の最大値で活性炭供給量を一定に保つ形態である。
【0063】
発明者等は
図1に示す排ガス処理装置を用いて、水銀を含む排ガスの処理を行う際の上記所定の最小値と所定の最大値を定めるための諸条件を検討した。その検討に際しては、集塵装置入口(上流側)での排ガス中の水銀濃度を測定し、この水銀濃度測定値と集塵装置の下流側での排ガス中の水銀濃度の設定値との比率(上流側水銀濃度比率)を20倍〜200倍となる範囲で変えた場合について、活性炭による水銀吸着除去プロセスをシミュレーションして活性炭供給量の所定の最小値と所定の最大値の適切な範囲を求めた。上記上流側水銀濃度比率は20倍〜200倍の間を複数の段階に区分して、各区分の範囲において、所定の最小値と所定の最大値についての適切な範囲を求めた。得られた結果は表1に示すとおりである。
【0064】
表1において、例えば上記上流側水銀濃度比率が100倍以上120倍未満の範囲となる水銀を含む排ガスが炉から排出されると予測される場合には、処理排ガス流量に対する活性炭吹込み重量として定められる活性炭供給量の所定の最小値を60〜200mg/Nm
3と設定し、活性炭供給量の所定の最大値を300〜1000mg/Nm
3と設定する。
【0066】
この表1において、上記上流側水銀濃度比率の各区分範囲について、所定の最小値の下限は排ガス中の水銀濃度測定値が低い場合または集塵装置の下流側での水銀濃度設定値が高い場合に対応し、所定の最小値の上限は排ガス中の水銀濃度測定値が高い場合または集塵装置の下流側での水銀濃度設定値が低い場合に対応する。
【0067】
また、表1において、上記上流側水銀濃度比率の各区分範囲について、所定の最大値の下限は排ガス中の水銀濃度測定値が低い場合または集塵装置の下流側での水銀濃度設定値が高い場合に対応し、所定の最大値の上限は排ガス中の水銀濃度測定値が高い場合または集塵装置の下流側での水銀濃度設定値が低い場合に対応する。
【0068】
このようにして、活性炭供給量の所定の最小値を設定することにより、集塵装置のバグフィルタに活性炭を付着させ吸着層を予め十分に形成しておくことになり、高濃度の水銀を含む排ガスが排出された際に速やかに、既に形成されている活性炭吸着層とその際に吹き込まれる活性炭により水銀を吸着除去でき、水銀濃度を十分に低濃度にまで低下させることができる。
【0069】
また、活性炭供給量の所定の最大値を定めることにより、活性炭の過剰供給を行わないようにして高濃度の水銀を十分に吸着除去できる。
【0070】
以下、本発明についての実施例を比較例とともに説明する。
【0071】
[比較例]
後述する
図1に示す排ガス処理装置を用いた実施例に対する比較例について、実施例と異なる構成について説明する。二つの焼却炉のそれぞれから排出される排ガスをそれぞれの経路で煙突まで導く二つの排ガス流路が設けられ、廃棄物焼却炉から排出される排ガスは、煙突からの排ガス量がそれぞれ10,000Nm
3/hであり、煙突内の排ガス中水銀濃度を1時間平均値で50μg/Nm
3以下とするように、それぞれの排ガス流路に設けられた活性炭供給装置から常時一定量である供給量0.5kg/hで活性炭を吹込んでいる。定常時のバグフィルタ上流部の排ガス中の水銀濃度は100μg/Nm
3である。それぞれの排ガス流路のバグフィルタ上流位置に水銀濃度計をそれぞれ設置して、水銀濃度計による水銀濃度測定値が500μg/Nm
3以上に増加した場合、
図4に示すバグフィルタ上流水銀濃度と活性炭供給量の対応関係に基づき、水銀濃度測定値の上昇に伴って、活性炭供給量をステップ状に増加して供給するように制御する。
【0072】
供給されるごみ性状の変動によって、バグフィルタ上流位置での排ガス中の水銀濃度が1,600μg/Nm
3まで上昇したが、煙突における排ガス中の水銀濃度は50μg/Nm
3以下に抑えられた。供給されるごみ性状の変動によって排ガス中の水銀濃度が変動し、その変動に対する活性炭供給量の制御を行った期間において、バグフィルタ上流位置での水銀濃度測定値が500μg/Nm
3を超えてから500μg/Nm
3未満に下がるまでに供給した活性炭量は0.33kgであった。
【0073】
[実施例1]
実施例1では
図1に示す排ガス処理装置を用いて、水銀を含む排ガスの水銀の除去処理を行い、効果を確認した。それぞれの排ガス流路のバグフィルタ上流位置から採取した排ガスの合流物の水銀濃度を1台の水銀濃度計で測定し、
図5に示されている排ガス合流物水銀濃度と活性炭供給量の対応関係に基づき活性炭供給量を増加して供給するように制御する。水銀濃度測定値が300μg/Nm
3未満の時には活性炭供給量を0.5kg/hとし、水銀濃度測定値が300μg/Nm
3以上の場合には水銀濃度測定値の上昇に伴って、活性炭供給量をステップ状に増加させ、最大値として5kg/hとするようにしている。それぞれの排ガス流路において定常時のバグフィルタ上流部の排ガス中の水銀濃度は100μg/Nm
3であるが、一方の排ガス流路におけるバグフィルタ上流部の排ガス中の水銀濃度が500μg/Nm
3まで上昇すると、合流物の水銀濃度計測定値は300μg/Nm
3を示すため、
図5に示すように水銀濃度測定値が300μg/Nm
3以上の場合に活性炭供給量を増加して供給するように制御する。
【0074】
供給されるごみ性状の変動によって、それぞれの排ガス流路のバグフィルタ上流位置から採取した排ガスの合流物の水銀濃度の測定値が1,600μg/Nm
3まで上昇したが、煙突における水銀濃度の最大値を50μg/Nm
3以下に抑えることができた。供給されるごみ性状の変動によって比較例の場合と同様な排ガス中の水銀濃度の変動が生じる際に、その変動に対する活性炭供給量の制御を行った期間において、合流物の水銀濃度測定値が300μg/Nm
3を超えてから、300μg/Nm
3未満に下がるまでに供給した活性炭量は0.56kgであった。比較例では水銀濃度計を2台必要としていることに対して、水銀濃度計を1台として設備費用を低減することができた。
【0075】
[実施例2]
実施例2では
図2に示す排ガス処理装置を用いて、水銀を含む排ガスの水銀の除去処理を行い、効果を確認した。それぞれの排ガス流路のバグフィルタ上流位置から採取した排ガスの合流物の水銀濃度を1台の第一水銀濃度計で測定し、
図5に示されている水銀濃度測定値と活性炭供給量の対応関係に基づき活性炭供給量を増加して供給するように第一の制御として制御する。第一の制御を実施例1と同様に行い、さらに、それぞれのバグフィルタの下流側位置にて排ガス中の水銀濃度を測定する第二水銀濃度計も設け、第二水銀濃度計による測定値に基づき、第一水銀濃度計による水銀濃度測定値に基づく第一の制御を補完するようにして、第二の制御として活性炭供給量を増減するように制御する。
【0076】
供給されるごみ性状の変動によって、それぞれの排ガス流路のバグフィルタ上流位置から採取した排ガスの合流物の水銀濃度の測定値が1,600μg/Nm
3まで上昇したが、煙突における水銀濃度の最大値を50μg/Nm
3以下に抑えることができた。供給されるごみ性状の変動によって比較例の場合と同様な排ガス中の水銀濃度の変動が生じる際に、その変動に対する活性炭供給量の制御を行った期間において、合流物の水銀濃度測定値が300μg/Nm
3を超えてから、300μg/Nm
3未満に下がるまでに供給した活性炭量は0.46kgであり、実施例1よりも活性炭供給量を低減させることができた。比較例では水銀濃度計を2台必要としていることに対して、水銀濃度計を1台として設備費用を低減することができた。
【符号の説明】
【0077】
1A;1B 炉(焼却炉)
3A;3B 集塵装置(バグフィルタ)
5A;5B 活性炭供給装置
7 水銀濃度測定装置(第一水銀濃度計)
8 制御装置
9A;9B 第二水銀濃度計