特許第6872171号(P6872171)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872171
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】バルブ構造
(51)【国際特許分類】
   F16K 41/08 20060101AFI20210510BHJP
   F16K 1/32 20060101ALI20210510BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20210510BHJP
   F16J 15/50 20060101ALI20210510BHJP
   F16J 15/06 20060101ALI20210510BHJP
   F16K 1/22 20060101ALN20210510BHJP
   F02D 9/10 20060101ALN20210510BHJP
【FI】
   F16K41/08
   F16K1/32 B
   F16J15/10 U
   F16J15/50
   F16J15/06 L
   !F16K1/22 A
   !F02D9/10 E
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-109543(P2017-109543)
(22)【出願日】2017年6月1日
(65)【公開番号】特開2018-204668(P2018-204668A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年4月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】今井 博之
(72)【発明者】
【氏名】魚里 進
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−125652(JP,U)
【文献】 特開2015−10679(JP,A)
【文献】 米国特許第3351351(US,A)
【文献】 実開昭58−130178(JP,U)
【文献】 実公昭45−11892(JP,Y1)
【文献】 国際公開第2016/067464(WO,A1)
【文献】 実開昭51−93062(JP,U)
【文献】 特開2004−332780(JP,A)
【文献】 特開2010−7786(JP,A)
【文献】 実開昭53−73354(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 41/00−41/18
F16K 1/00− 1/54
F16J 15/06
F16J 15/10
F16J 15/50
F02D 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に開閉弁が設けられるバルブ構造であって、
所定の軸方向に沿って延びる小径内周面と、前記小径内周面よりも大径で前記軸方向に沿って延びる大径内周面と、前記軸方向と交叉して前記小径内周面と前記大径内周面とを連結する環状の中間面とを有し、前記大径内周面を前記小径内周面よりも前記ハウジングの外部側に配置した状態で前記ハウジングに固定され、前記小径内周面、前記中間面、及び前記大径内周面がシャフト挿通孔を区画するブッシュと、
前記ブッシュの前記小径内周面に支持される被支持外周面と、前記ブッシュの前記大径内周面と対向する位置に配置される被シール外周面とを有し、前記シャフト挿通孔を挿通した状態で前記軸方向に沿って延びて前記ブッシュに回転自在に支持され、前記開閉弁に固定されるシャフトと、
前記ブッシュよりも外部側で前記ブッシュの前記大径内周面よりも径方向の内側へ突出して前記ブッシュの前記中間面と対向する位置に配置される突出対向面を有し、前記ブッシュ側に支持される抑え部材と、
前記軸方向に沿って延びて前記シャフトの前記被シール外周面に当接するシール内周面と、前記軸方向に対して傾斜して前記軸方向の一方側から他方側へ向かって径方向外側へ拡径するテーパ状の傾斜外周面と、前記他方側の端部に配置されて前記軸方向と交叉する第1のスラスト面とを有し、径方向の外端が前記ブッシュの前記大径内周面から径方向内側に離間した位置に配置され、前記ブッシュ側に支持される膨張黒鉛製の環状のシールリングと、
前記ブッシュの前記大径内周面から径方向内側に離間した位置に配置されて前記軸方向に沿って延びる外周面と、前記軸方向に対して傾斜して前記軸方向の前記他方側から前記一方側へ向かって径方向内側へ縮径するテーパ状の傾斜内周面と、前記一方側の端部に配置されて前記軸方向と交叉する第2のスラスト面とを有し、前記傾斜内周面が前記シールリングの前記傾斜外周面と当接した状態で前記ブッシュ側に支持される環状の当接リングと、を備え、
前記シールリングの前記第1のスラスト面は、前記ブッシュの前記中間面または前記抑え部材の前記突出対向面のうちの一方の面に当接し、
前記当接リングの前記第2のスラスト面は、前記ブッシュの前記中間面または前記抑え部材の前記突出対向面のうちの他方の面側から支持される
ことを特徴とするバルブ構造。
【請求項2】
請求項1に記載のバルブ構造であって、
前記当接リングの前記第2のスラスト面と前記他方の面との間に配置されて、前記他方の面側から前記第2のスラスト面を押圧して前記当接リングを付勢する付勢部材を備え、
前記当接リングの前記第2のスラスト面は、前記付勢部材を介して前記他方の面側から支持される
ことを特徴とするバルブ構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のバルブ構造であって、
膨張黒鉛よりも硬質の環状の座金を備え、
前記シールリングは、前記第1のスラスト面と前記シール内周面との角部が切り欠かれた環状の切欠部を有し、
前記座金は、前記シールリングの前記シール内周面と略同一径の座金内周面と、前記シールリングの前記第1のスラスト面と略同一平面上の座金表面を有し、前記シールリングの前記切欠部内に配置される
ことを特徴とするバルブ構造。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載のバルブ構造であって、
前記軸方向に沿った前記シールリングの断面における前記シール内周面と前記傾斜外周面との間の角度は、45度よりも小さい
ことを特徴とするバルブ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、排気ブレーキバルブが記載されている。この排気ブレーキバルブは、ハウジングのブッシュに軸受部とシール部とを備える。シール部内の弁軸の外周には、複数のシールリングが配設されてラビリンスシールを形成している。ラビリンスシールは、直径が大きい方の厚肉シールリングと直径が小さい方の薄肉シールリングとを交互に配列して構成されている。厚肉シールリングは、その内周と弁軸の外周との間に大きな隙間があり、その外周面とブッシュのシール部における内周面との間に小さな隙間を形成するように寸法設定されている。薄肉シールリングは、その内周面が弁軸の外周面との間に小さな隙間を形成するように寸法設定されている。
【0003】
特許文献2には、バルブ箱とバルブ蓋との間をシールするシール構造が記載されている。このシール構造は、バルブ箱とバルブ蓋との間のリング収容部内に、石綿繊維の編組品や膨張黒鉛を成形した非金属製の軟質シールリングとスペーサリングとを配置する。リング収納部を形成するために、バルブ蓋の外周面には、流体圧が加わる方向に向かって縮径するように加圧テーパ面が形成され、加圧テーパ面上方には、軸方向と平行な被シール面が形成されている。また、バルブ箱の内周面には、軸方向と平行な被シール面が形成されている。軟質シールリングは、バルブ蓋の被シール面と接する内側シール面と、バルブ箱の被シール面と接する外側シール面と、バルブ蓋の加圧テーパ面に接する受圧傾斜面(テーパ面)とを有する。スペーサリングは、軟質シールリングの上部に配置され、スペーサリングの内周面とシールリングの内側シール面とは面一であり、スペーサリングの外周面とシールリングの外側シール面も面一である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−166428号公報
【特許文献2】特開2004−332780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のように、ラビリンスシールでは、直径が大きいシールリングと直径が小さいシールリングとを交互に配列するので、ブッシュに対する弁軸(シャフト)のラジアル方向への移動が可能となる。しかし、直径が大きい方のシールリングは、その内周とシャフトの外周との間に大きな隙間があり、その外周面とブッシュの内周面との間に小さな隙間がある。また、直径が小さい方のシールリングは、その内周とシャフトの外周との間に小さな隙間がある。このため、ブッシュとシールリングとの間の隙間や、シャフトとシールリングとの間の隙間等から排気ガス(流体)が外部へ流出する可能性がある。このブッシュとシャフトとの間の隙間からの流体の流出を防止するために、上記文献2に記載のシール構造をブッシュとシャフトとの間に適用することが考えられる。しかし、シャフトとブッシュとの間に上記文献2に記載のシール構造のシールリング及びスペーサリングを設けると、スペーサリングが、ブッシュに対するシャフトのラジアル方向への移動を阻害してしまう可能性があり、シャフトを傷つけたり、シャフトが回転し難くなったりするおそれがある。また、ブッシュに対するシャフトのラジアル方向への移動やシャフトの熱膨張等によって、シャフトとブッシュとの間の膨張黒鉛等の軟質シールリングにラジアル方向への大きな圧力が加わると、軟質シールリングが破損して、流体が流出してしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、ブッシュに対するシャフトのラジアル方向への移動を許容し、且つ流体の流出を抑制することが可能なバルブ構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、ハウジング内に開閉弁が設けられるバルブ構造であって、ブッシュとシャフトと抑え部材と環状のシールリングと環状の当接リングとを備える。ブッシュは、所定の軸方向に沿って延びる小径内周面と、小径内周面よりも大径で軸方向に沿って延びる大径内周面と、軸方向と交叉して小径内周面と大径内周面とを連結する環状の中間面とを有し、大径内周面を小径内周面よりもハウジングの外部側に配置した状態でハウジングに固定される。ブッシュの小径内周面、中間面、及び大径内周面は、シャフト挿通孔を区画する。シャフトは、ブッシュの小径内周面に支持される被支持外周面と、ブッシュの大径内周面と対向する位置に配置される被シール外周面とを有し、シャフト挿通孔を挿通した状態で軸方向に沿って延びてブッシュに回転自在に支持され、開閉弁に固定される。抑え部材は、ブッシュよりも外部側でブッシュの大径内周面よりも径方向の内側へ突出してブッシュの中間面と対向する位置に配置される突出対向面を有し、ブッシュ側に支持される。環状のシールリングは、軸方向に沿って延びてシャフトの被シール外周面に当接するシール内周面と、軸方向に対して傾斜して軸方向の一方側から他方側へ向かって径方向外側へ拡径するテーパ状の傾斜外周面と、他方側の端部に配置されて軸方向と交叉する第1のスラスト面とを有し、径方向の外端がブッシュの大径内周面から径方向内側に離間した位置に配置され、ブッシュ側に支持される。シールリングは、膨張黒鉛製である。環状の当接リングは、ブッシュの大径内周面から径方向内側に離間した位置に配置されて軸方向に沿って延びる外周面と、軸方向に対して傾斜して軸方向の上記他方側から上記一方側へ向かって径方向内側へ縮径するテーパ状の傾斜内周面と、上記一方側の端部に配置されて軸方向と交叉する第2のスラスト面とを有し、傾斜内周面がシールリングの傾斜外周面と当接した状態でブッシュ側に支持される。シールリングの第1のスラスト面は、ブッシュの中間面または抑え部材の突出対向面のうちの一方の面に当接する。当接リングの第2のスラスト面は、ブッシュの中間面または抑え部材の突出対向面のうちの他方の面側から支持される。
【0008】
上記構成では、シールリングの第1のスラスト面が、ブッシュの中間面または抑え部材の突出対向面のうちの一方の面に当接し、当接リングの第2のスラスト面が、ブッシュの中間面または抑え部材の突出対向面のうちの他方の面側から支持される。すなわち、シールリング及び当接リングの軸方向への移動は、ブッシュの中間面と抑え部材の突出対向面とによって規制されている。このように、シールリング及び当接リングの軸方向への移動が規制された状態で、軸方向に対して傾斜する当接リングの傾斜内周面とシールリングの傾斜外周面とが当接し、シールリングのシール内周面とシャフトの被シール外周面とが当接するので、ハウジング内から外部へのシャフトの被シール外周面に沿った流体の流出を抑えることができる。
【0009】
また、シールリングが膨張黒鉛製であり、金属製に比べて弾性を有しているので、シールリングを軸方向に圧縮した状態でシールリングのシール内周面をシャフトの被シール外周面に当接させることができ、流体の流出を抑制可能な面圧を確保することができる。また、シールリングが膨張黒鉛製であり、耐熱性が高く熱劣化し難いので、シールリングの耐摩耗性を確保することができる。
【0010】
また、シールリングの径方向の外端がブッシュの大径内周面から径方向内側に離間した位置に配置され、且つ当接リングの外周面がブッシュの大径内周面から径方向内側に離間した位置に配置される。すなわち、シールリング及び当接リングと、ブッシュの大径内周面との間に筒状の空間(以下、筒状空間という。)が区画される。このため、ブッシュに対するシャフトのラジアル方向への移動を許容することができる。また、シャフトがブッシュに対してラジアル方向へ移動する際に、シールリング及び当接リングをシャフトの移動に追従して移動させることができるので、被シール部材(シャフト、ブッシュ、及び抑え部材を含む)に対するシールリングの面圧を確保した状態でブッシュに対するシャフトのラジアル方向への移動が許容され、且つ流体の流出を抑えることができる。
【0011】
また、シャフトがブッシュに対してラジアル方向へ移動する際に、シールリング及び当接リングをシャフトの移動に追従して移動させることができるので、膨張黒鉛製のシールリングに掛かる圧力を抑えてシールリングの破損を防止することができる。
【0012】
また、シールリングの第1のスラスト面をブッシュの中間面に当接させる場合には、シールリングの第1のスラスト面とブッシュの中間面との間からの流体の流出を抑えることができる。また、シールリングの第1のスラスト面を抑え部材の突出対向面に当接させる場合には、抑え部材の突出対向面を環状の突出対向面にすることによって、筒状空間に流体が流入した際に、シールリングの第1のスラスト面と抑え部材の突出対向面との間からの流体の流出を抑えることができる。このように、シールリングのシール内周面のみならず、第1のスラスト面によっても流体の流出を抑えるので、効果的に流体の流出を抑えることができる。
【0013】
従って、ブッシュに対するシャフトのラジアル方向への移動を許容し、且つ流体の流出を抑制することができる。
【0014】
本発明の第2の態様のバルブ構造は、上記第1の態様のバルブ構造であって、付勢部材を備える。付勢部材は、当接リングの第2のスラスト面と上記他方の面との間に配置されて、上記他方の面側から第2のスラスト面を押圧して当接リングを付勢する。当接リングの第2のスラスト面は、付勢部材を介して上記他方の面側から支持される。
【0015】
上記構成では、上記他方の面(ブッシュの中間面または抑え部材の突出対向面)と当接リングの第2のスラスト面との間に配置される付勢部材が、上記他方の面側から第2のスラスト面を押圧して当接リングを付勢する。すなわち、付勢部材が当接リングを軸方向のシールリング側へ付勢するので、シールリングを軸方向に圧縮して、シールリングのシール内周面とシャフトの被シール外周面との間の面圧、及びシールリングの第1のスラスト面と上記一方の面(ブッシュの中間面または抑え部材の突出対向面)との間の面圧を確保することができ、流体の流出を抑えることができる。
【0016】
本発明の第3の態様のバルブ構造は、上記第1の態様または上記第2の態様のバルブ構造であって、膨張黒鉛よりも硬質の環状の座金を備える。シールリングは、第1のスラスト面とシール内周面との角部が切り欠かれた環状の切欠部を有する。座金は、シールリングのシール内周面と略同一径の座金内周面と、シールリングの第1のスラスト面と略同一平面上の座金表面を有し、シールリングの切欠部内に配置される。
【0017】
上記構成では、シールリングが、第1のスラスト面とシール内周面との角部が切り欠かれた環状の切欠部を有し、この切欠部内に座金が配置される。このように、シールリングの第1のスラスト面側(厚肉側)に、膨張黒鉛よりも硬質の座金を設けるので、シールリングの厚肉側の型崩れを防止することができる。
【0018】
また、シールリングの第1のスラスト面のシール内周面側に座金を設けるので、シールリングの第1のスラスト面のシール内周面側の破損を防止することができ、シールリングの第1のスラスト面とシール内周面との角部側からのシールリングの断片の発生を防止することができる。このため、シールリングの前記角部側からシャフトの被シール外周面とシールリングのシール内周面との間へのシールリングの断片の浸入を防止して、シールリングの断片によるシャフトの回転の阻害を防止することができる。
【0019】
本発明の第4の態様のバルブ構造は、上記第1の態様〜上記第3の態様のいずれかのバルブ構造であって、軸方向に沿ったシールリングの断面におけるシール内周面と傾斜外周面との間の角度は、45度よりも小さい。
【0020】
上記構成では、軸方向に沿ったシールリングの断面におけるシール内周面と傾斜外周面との間の角度が45度よりも小さいので、当接リングの第2のスラスト面側から軸方向の力が入力して、当接リングの傾斜内周面からシールリングの傾斜外周面に当接リングからの力が入力した際に、シールリングの第1のスラスト面側への分力よりもシール内周面側への分力を大きくすることができる。このため、シールリングのシール内周面とシャフトの被シール外周面との間の面圧を十分に確保して、シールリングのシール内周面とシャフトの被シール外周面との間からの流体の流出を好適に抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ブッシュに対するシャフトのラジアル方向への移動を許容し、且つ流体の流出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態に係るバルブ構造を適用した排気ブレーキ装置の概略構成図である。
図2図1の排気ブレーキ装置のバルブ機構の概略的な部分断面図である。
図3図2の要部の拡大図である。
図4】シールリングの外観斜視図である。
図5】カラーの外観斜視図である。
図6】本発明の第2実施形態に係るバルブ構造の要部の部分断面図である。
図7】ウェーブワッシャの外観図であり、(a)はスラスト方向から視た状態を、(b)はラジアル方向から視た状態をそれぞれ示す。
図8】本発明の第3実施形態に係るバルブ構造の要部の部分断面図である。
図9】シールリングの外観斜視図であり、(a)は小径側から視た状態を、(b)は大径側から視た状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、一点鎖線CLはシャフト13の回転軸の軸心を示す。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係るバルブ構造10を適用する排気ブレーキ装置1は、エンジン2の排気管(ハウジング)3の流路を開閉可能なバタフライバルブ(開閉弁)11にリンク等で連結されたエアシリンダ4と、エアシリンダ4に供給管5を介して作動エアを供給するエアタンク6と、エアタンク6からエアシリンダ4への作動エアの供給をコントロールする電磁バルブ7と、アクセルセンサ(図示省略)や排気ブレーキスイッチ(図示省略)からの入力信号に応じて電磁バルブ7のON・OFFを切り替える電子制御ユニット8とを備える。電子制御ユニット8が電磁バルブ7をONにすると、エアタンク6からエアシリンダ4に作動エアが供給され、バタフライバルブ11が閉弁して排気管3内の排気流れを遮断し、排気ブレーキが作動する。一方、電子制御ユニット8が電磁バルブ7をOFFにすると、電磁バルブ7の排気ポート(図示省略)から作動エアが排出され、エアシリンダ4内のスプリング(図示省略)の付勢力によってバタフライバルブ11が開弁し、排気ブレーキが解除される。
【0025】
図2及び図3に示すように、バルブ構造10は、ブッシュ12とシャフト13とカバー(抑え部材)14とシールリング15とカラー(当接リング)16とを備え、排気管3の外部へ突出するシャフト13の一端側に適用される。排気管3には、互いに対向する位置にボス部3a,3bが形成され、ボス部3a,3bには、貫通孔9a,9bがそれぞれ形成される。排気管3のボス部3a,3bの貫通孔9a,9bには、ブッシュ12,17が嵌合した状態で固定される。ブッシュ12,17は、互いに同軸に配置されるシャフト挿通孔12a,17aをそれぞれ有する。シャフト13は、ブッシュ12,17のシャフト挿通孔12a,17aを挿通して排気管3の流路を横切るように配置され、シャフト13の両端側がブッシュ12,17に回転自在に支持される。シャフト13のうち排気管3の流路内の領域には、排気管3内の排気の流れを遮断可能なバタフライバルブ11が固定される。シャフト13の一端は、ブッシュ12から排気管3の外部へ突出し、シャフト13の他端は、ブッシュ17に支持されて排気管3の外部へ突出しない。排気管3の外部へ突出するシャフト13の一端部には、エアシリンダ4に連結されるレバー9が固定される。すなわち、エアシリンダ4は、レバー9を介してシャフト13を回転し、これによりバタフライバルブ11を開閉する。
【0026】
ブッシュ12は、シャフト13を支持する金属製の部材であって、シャフト13の軸方向(所定の軸方向。以下、単に軸方向という。)に沿って貫通するシャフト挿通孔12aと、シャフト挿通孔12aを排気管3の外部側(以下、軸方向の外部側、または単に外部側という。)に開放する円形の外端開口21とを有する。シャフト挿通孔12aは、外端開口21から連続して排気管3の内部側(以下、単に軸方向の内部側、または単に内部側という。)へ軸方向に沿って延びる大径内周面19と、大径内周面19よりも軸方向の内部側に配置されて軸方向に沿って延びる小径内周面18と、小径内周面18と大径内周面19とを連結する環状の中間面20とによって区画される。大径内周面19は、シャフト挿通孔12aのうち軸方向の外部側の端部に設けられ、所定の径R1で形成され、軸方向に沿って同径(R1)で延びる。中間面20は、軸方向と交叉して外部側へ向く環状の面であって、外径が大径内周面19と同じ径R1であり、内径が小径内周面18と同じ径R2である。中間面20は、外周縁が大径内周面19の軸方向の内部側の端縁に連続し、内周縁が小径内周面18の軸方向の外部側の端縁に連続する。小径内周面18は、シャフト13の径よりも僅かに大きな径R2で形成され、中間面20の内周縁から連続して軸方向の内部側へ同径(R2)で延びる。
【0027】
シャフト13は、バタフライバルブ11を開閉するための金属製の略棒体であって、バタフライバルブ11に固定されるとともに、排気管3側(ブッシュ12,17)に回転自在に支持される。シャフト13のうち、ブッシュ12のシャフト挿通孔12aを挿通してブッシュ12に支持される一端側(外部へ突出する側)は、ブッシュ12の小径内周面18の径R2よりも僅かに小径の円柱状に形成され、軸方向に沿って直線状に延びる。シャフト13は、ブッシュ12のシャフト挿通孔12aを挿通した状態で、ブッシュ12の小径内周面18に支持される被支持外周面22と、ブッシュ12の大径内周面19と対向する位置に配置される被シール外周面23とを有する。シャフト13がブッシュ12のシャフト挿通孔12aを挿通した状態で、シャフト13の被シール外周面23とブッシュ12の大径内周面19と中間面20との間には、シャフト挿通孔12aの一部の領域である筒状のシール空間24が区画される。シール空間24は、ブッシュ12の外端開口21によって外部側へ開放され、その内部には、後述するように、シールリング15及びカラー16が配置される。
【0028】
カバー14は、ブッシュ12の外部側で外端開口21から径方向の内側へ突出する円環状の突出板部25を有し、シャフト13とブッシュ12との間のシール空間24に後述するシールリング15及びカラー16を配置した後に、排気管3及びブッシュ12に固定される。すなわち、カバー14は、ブッシュ12側に支持される。円環状の突出板部25の内径R3は、ブッシュ12の小径内周面18の径R2よりも大きく、且つブッシュ12の大径内周面19の径R1よりも小さい。すなわち、カバー14の突出板部25は、ブッシュ12よりも外部側でブッシュ12の大径内周面19よりも径方向の内側へ突出して、シャフト13とブッシュ12との間のシール空間24を軸方向の外部側から覆う。突出板部25は、ブッシュ12の中間面20と対向する位置に配置されるカバー内面(突出対向面)26を有する。カバー14をブッシュ12側に固定した状態(図3に示す状態。以下、カバー固定状態という。)で、突出板部25のカバー内面26は、シャフト13とブッシュ12との間のシール空間24の外部側を区画し、突出板部25の内周縁とシャフト13の外周面との間には、シール空間24を外部側へ開放する開口が形成される。なお、本発明においてブッシュ12側に支持されるとは、回転する側(シャフト13側)ではなく、回転しない側(ブッシュ12側)に支持されることを意味する。
【0029】
図3及び図4に示すように、シールリング15は、膨張黒鉛製のシートを所定の形状(本実施形態では、所定の軸を中心として巻回した円筒形状)にした状態から圧縮して成形した環状の部材であって、シャフト13とブッシュ12との間のシール空間24に配置される。シールリング15は、略筒状に形成され、その内径が、ブッシュ12の小径内周面18の径R2と略同径に形成され、外径がブッシュ12の大径内周面19の径R1よりも小さく形成される。シールリング15は、シール内周面27と傾斜外周面28と非傾斜外周面30と内部側当接面(第1のスラスト面)29とを有する。シール内周面27は、シールリング15の内周面であって、シールリング15をシール空間24に配置した状態(図3に示す状態。以下、シールリング取付状態という。)で、シールリング15の軸方向の一端から他端に亘って軸方向に沿って延びて、シャフト13の被シール外周面23に当接する。傾斜外周面28は、シールリング取付状態で軸方向に対して傾斜し、シール内周面27の軸方向の外部側(一方側)の端縁から内部側(他方側)へ向かって径方向外側へ拡径するテーパ状に形成される。傾斜外周面28の軸方向の長さは、シール内周面27の軸方向の長さよりも短い。傾斜外周面28の軸方向の内部側の端縁は、ブッシュ12の大径内周面19から径方向内側へ離間した位置に配置される。非傾斜外周面30は、シールリング取付状態で傾斜外周面28の内部側の端縁から軸方向に沿って内部側へ延び、ブッシュ12の大径内周面19から径方向内側へ離間した位置に配置されて大径内周面19と対向し、大径内周面19との間にシール空間24の一部の領域である筒状空間31を区画する。すなわち、シールリング15の径方向の外端は、ブッシュ12の大径内周面19から径方向内側へ離間した位置に配置される。内部側当接面29は、シールリング取付状態におけるシールリング15の内部側の円環状の端面であって、軸方向と交叉してシール内周面27の内部側の端縁と非傾斜外周面30の内部側の端縁とを連結し、ブッシュ12の中間面20(一方の面)に当接する。シールリング取付状態のシールリング15は、後述するカラー16側から軸方向の内部側へ押圧されることによってブッシュ12側に支持される。軸方向に沿ったシールリング15の断面は、略台形であり、その断面におけるシール内周面27と傾斜外周面28との間の角度θ1は、略30度に設定される。
【0030】
図3及び図5に示すように、カラー16は、金属製の環状の部材であって、シャフト13とブッシュ12との間のシール空間24のうち、シールリング15よりも軸方向の外部側に配置される。カラー16は、略筒状に形成され、その内径が、ブッシュ12の小径内周面18の径R2と略同径に形成され、外径がブッシュ12の大径内周面19の径R1よりも小さく形成される。カラー16は、カラー外周面(外周面)34と傾斜内周面33とカラー内周面32と外部側当接面(第2のスラスト面)35とを有する。カラー外周面34は、カラー16の外周面であって、シールリング15の非傾斜外周面30と略同径に形成され、カラー16をシール空間24に配置した状態(図3に示す状態。以下、カラー取付状態という。)で、シールリング15の非傾斜外周面30の外部側の端縁から連続して外部側へ軸方向に沿って延びる。カラー外周面34は、カラー16の軸方向の一端から他端に亘って延び、ブッシュ12の大径内周面19から径方向内側へ離間した位置に配置されて大径内周面19と対向し、大径内周面19との間にシール空間24の一部の領域である筒状空間36を区画する。カラー外周面34とブッシュ12の大径内周面19との間の筒状空間36は、シールリング15の非傾斜外周面30とブッシュ12の大径内周面19との間の筒状空間31から連続して外部側へ延びる空間である。傾斜内周面33は、カラー取付状態で軸方向に対して傾斜し、カラー外周面34の軸方向の内部側(他方側)の端縁から外部側(一方側)へ向かって径方向内側へ縮径するテーパ状に形成される。傾斜内周面33の軸方向の長さは、カラー外周面34の軸方向の長さよりも短い。傾斜内周面33の軸方向の外部側の端縁は、シールリング15のシール内周面27の軸方向の外部側の端縁と略同じ位置に配置される。カラー内周面32は、カラー16の内周面であって、シールリング15のシール内周面27と略同径(R2)に形成され、カラー取付状態で、傾斜内周面33の軸方向の外部側の端縁から連続して外部側へ軸方向に沿って延びて、シャフト13の被シール外周面23に当接する。外部側当接面35は、カラー取付状態におけるカラー16の外部側の円環状の端面であって、軸方向と交叉してカラー内周面32の外部側の端縁とカラー外周面34の外部側の端縁とを連結し、カバー14のカバー内面26(他方の面)に当接する。すなわち、外部側当接面35は、カバー14のカバー内面26側から、カバー14の突出板部25に直接的に支持される。カラー取付状態のカラー16は、シールリング15の軸方向の外部側に配置され、カラー内周面32がシールリング15のシール内周面27と略同一径で連続し、カラー外周面34がシールリング15の非傾斜外周面30と略同一径で連続し、傾斜内周面33がシールリング15の傾斜外周面28に軸方向外部側、及び径方向外側から圧力をかけた状態で当接する。軸方向に沿ったカラー16の断面は、略台形であり、その断面におけるカラー外周面34と傾斜内周面33との間の角度θ2は、略30度に設定される。
【0031】
シャフト13とブッシュ12との間のシール空間24の径方向の長さ(シャフト13の被シール外周面23とブッシュ12の大径内周面19との間の径方向の距離)は、シールリング15及びカラー16の径方向の長さよりも長く設定される。すなわち、シールリング15及びカラー16とブッシュ12の大径内周面19との間には、筒状空間31,36が区画される。シール空間24の軸方向の長さ(カバー14の突出板部25のカバー内面26とブッシュ12の中間面20との間の軸方向の距離)は、シールリング取付状態のシールリング15の内部側当接面29とカラー取付状態のカラー16の外部側当接面35との間の軸方向の長さと同一または僅かに短く設定される。シールリング15の形状は、カラー取付状態のカラー16の傾斜内周面33とシャフト13の被シール外周面23との間に区画される断面(軸方向に沿った断面)三角形状の空間によって規定され、シールリング15の軸方向の長さは、少なくとも断面三角形状の前記空間の軸方向の長さ以上に設定される。シャフト13とブッシュ12との間のシール空間24にシールリング15を取り付け、且つカラー16を取り付けた状態で、カバー14が排気管3及びブッシュ12に固定されてカバー固定状態(図3参照)となる。カバー固定状態では、カラー16及びシールリング15は、ブッシュ12の中間面20とカバー14の突出板部25のカバー内面26との間に挟持されることによって、ブッシュ12側に支持される。
【0032】
上記のように構成されたバルブ構造10では、カバー固定状態において、シールリング15の内部側当接面29が、ブッシュ12の中間面20に当接し、カラー16の外部側当接面35が、カバー14のカバー内面26側から支持される。すなわち、カバー固定状態では、カラー16及びシールリング15が、ブッシュ12の中間面20とカバー14の突出板部25のカバー内面26との間に挟持され、シールリング15及びカラー16の軸方向への移動が、ブッシュ12の中間面20とカバー14の突出板部25のカバー内面26とによって規制されている。このように、シールリング15及びカラー16の軸方向への移動が規制された状態で、カラー16の傾斜内周面33がシールリング15の傾斜外周面28に圧力をかけた状態で当接するので、シールリング15のシール内周面27がシャフト13の被シール外周面23に圧力をかけた状態で当接する。このため、シールリング15のシール内周面27とシャフト13の被シール外周面23との間を好適にシールすることができ、排気管3の内部側から外部側へのシャフト13の被シール外周面23に沿った排気(流体)の流出を抑えることができる。
【0033】
また、シールリング15及びカラー16の軸方向への移動が規制された状態で、カラー16の傾斜内周面33がシールリング15の傾斜外周面28に圧力をかけた状態で当接するので、シールリング15の内部側当接面29が、ブッシュ12の中間面20に圧力をかけた状態で当接する。このため、シールリング15の内部側当接面29とブッシュ12の中間面20との間を好適にシールすることができ、シールリング15の内部側当接面29とブッシュ12の中間面20との間から筒状空間31,36側への排気の流出を抑えることができる。このように、シールリング15のシール内周面27のみならず、内部側当接面29によっても排気の流出を抑えるので、効果的に排気の流出を抑えることができる。
【0034】
また、シールリング15が膨張黒鉛製であり、金属製に比べて弾性を有しているので、カラー16の傾斜内周面33側からシールリング15の傾斜外周面28に圧力をかけることによって、シールリング15のシール内周面27とシャフト13の被シール外周面23との間、及びシールリング15の内部側当接面29とブッシュ12の中間面20との間に、排気の流出を抑制可能な面圧を確保することができる。なお、シールリング15のシール内周面27とシャフト13の被シール外周面23との間、及びシールリング15の内部側当接面29とブッシュ12の中間面20との間の面圧は、シール空間24の軸方向の長さに対するカバー14を取り付ける前のシールリング15及びカラー16の軸方向の長さによって設定することができる。
【0035】
また、シールリング15が膨張黒鉛製であり、耐熱性が高く熱劣化し難いので、シールリング15の耐摩耗性を確保することができる。
【0036】
また、シールリング15は、膨張黒鉛製のシートを所定の軸(シールリング取付状態におけるシャフト13の回転軸の軸心CLと略同軸)を中心として巻回して円筒形状にした状態から圧縮して成形する。すなわち、膨張黒鉛製のシートをシールリング15の径方向に積層状に配置して成形するので、軸方向(スラスト方向)に比べて径方向(ラジアル方向)への弾性が高い。このため、シールリング15のシール内周面27とシャフト13の被シール外周面23との間の面圧を確保して、シールリング15のシール内周面27とシャフト13の被シール外周面23との間を好適にシールすることができる。
【0037】
また、カバー固定状態でシールリング15の非傾斜外周面30及びカラー16のカラー外周面34と、ブッシュ12の大径内周面19との間に筒状空間31,36が区画される。このため、ブッシュ12に対するシャフト13のラジアル方向への移動を許容することができる。また、シャフト13がブッシュ12に対してラジアル方向へ移動する際に、シールリング15及びカラー16をシャフト13の移動に追従して移動させることができるので、被シール部材(本実施形態では、シャフト13及びブッシュ12)に対するシールリング15の面圧を確保した状態でブッシュ12に対するシャフト13のラジアル方向への移動が許容され、且つ排気の流出を抑えることができる。
【0038】
また、シャフト13がブッシュ12に対してラジアル方向へ移動する際に、シールリング15及びカラー16をシャフト13の移動に追従して移動させることができるので、膨張黒鉛製のシールリング15に掛かる圧力を抑えてシールリング15の破損を防止することができる。
【0039】
また、軸方向に沿ったシールリング15の断面におけるシール内周面27と傾斜外周面28との間の角度θ1は、略30度に設定される。このように、シール内周面27と傾斜外周面28との間の角度が45度よりも小さいので、カラー16からシールリング15側へ軸方向の力が入力して、カラー16の傾斜内周面33からシールリング15の傾斜外周面28にカラー16側からの力が入力した際に、シールリング15の内部側当接面29への分力よりもシール内周面27側への分力を大きくすることができる。このため、シールリング15のシール内周面27とシャフト13の被シール外周面23との間の面圧を十分に確保して、シールリング15のシール内周面27とシャフト13の被シール外周面23との間からの排気の流出を好適に抑制することができる。
【0040】
このように、本実施形態によれば、ブッシュ12に対するシャフト13のラジアル方向への移動を許容し、且つ排気の流出を抑制することができる。
【0041】
なお、本実施形態では、シャフト13とブッシュ12との間のシール空間24に、シールリング15を軸方向の内部側に配置し、カラー16を軸方向の外部側に配置したが、シールリング15を軸方向の外部側(他方側)に配置し、カラー16を軸方向の内部側(一方側)に配置してもよい。この場合、シールリング15の傾斜外周面28は、軸方向の内部側(一方側)から外部側(他方側)へ向かって径方向外側へ拡径するテーパ状に形成され、カラー16の傾斜内周面33は、軸方向の外部側(他方側)から内部側(一方側)へ向かって径方向内側へ縮径するテーパ状に形成され、シールリング15の傾斜外周面28とカラー16の傾斜内周面33とが互いに当接する。この場合であっても、シールリング15の外部側の端面(第1のスラスト面)が、カバー14の突出板部25のカバー内面26に当接し、カバー内面26との間をシールするので、筒状空間31,36に排気が浸入したとしても、筒状空間31,36から外部への排気の流出を抑制することができる。このように、カラー16とシールリング15との配置位置を入れ替えても、シールリング15のシール内周面27のみならず、シールリング15の外部側の端面によっても排気の流出を抑えるので、効果的に排気の流出を抑えることができる。
【0042】
また、本実施形態では、シールリング15及びカラー16の軸方向に沿った断面形状を、略台形としたが、これに限定されるものではない。例えば、シールリング15の非傾斜外周面30及びカラー16のカラー内周面32を設けることなく、シールリング15及びカラー16の軸方向に沿った断面形状を、略三角形としてもよい。この場合であっても、シールリング15の形状は、カラー16の傾斜内周面33とシャフト13の被シール外周面23との間に区画される断面(軸方向に沿った断面)三角形状の空間によって規定され、シールリング15の軸方向の長さは、少なくとも断面三角形状の前記空間の軸方向の長さ以上に設定される。
【0043】
また、本実施形態では、膨張黒鉛製のシートを所定の軸を中心として巻回して円筒形状にした状態から圧縮することによって、シールリング15を成形したが、シールリング15の成形は、これに限定されるものではなく、様々な方法でシールリング15を成形することができる。
【0044】
また、本実施形態では、カラー16の外径とシールリング15の外径とを略同一径としたが、これに限定されるものではなく、カラー16の径方向外端及びシールリング15の径方向外端が、ブッシュ12の大径内周面19から径方向内側へ離間した位置に配置される大きさであれば、カラー16の外径とシールリング15の外径とは、異なる外径であってもよい。
【0045】
また、本実施形態では、軸方向に沿ったシールリング15の断面におけるシール内周面27と傾斜外周面28との間の角度θ1を略30度に設定したが、これに限定されるものではない。例えば、軸方向に沿ったシールリング15の断面におけるシール内周面27と傾斜外周面28との間の角度θ1を、30度以外の45度よりも小さい角度にしてもよい。この場合であっても、カラー16側からシールリング15側へ軸方向の力が入力した際に、シールリング15の内部側当接面29への分力よりもシール内周面27側への分力を大きくすることができる。或いは、軸方向に沿ったシールリング15の断面におけるシール内周面27と傾斜外周面28との間の角度θ1を、45度以上90度未満の角度にしてもよい。この場合、カラー16側からシールリング15側へ軸方向の力が入力した際に、シールリング15のシール内周面27側への分力よりも内部側当接面29への分力を大きくすることができる。
【0046】
また、本実施形態では、カバー14の突出板部25を円環状に形成したが、これに限定されるものではなく、カラー16の外部側当接面35を支持可能な形状に形成することができる。なお、シールリング15を軸方向の外部側(他方側)に配置し、カラー16を軸方向の内部側(一方側)に配置した場合には、カバー14の突出板部25を円環状に形成する方が望ましい。
【0047】
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態に係るバルブ構造40は、上記第1実施形態に係るバルブ構造10に対してウェーブワッシャ41を加えたものであり、上記第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。また、各図において、一点鎖線CLはシャフト13の回転軸の軸心を示す。
【0048】
図6に示すように、バルブ構造40は、シャフト13とブッシュ12との間のシール空間24にウェーブワッシャ(付勢部材)41を備える。シール空間24の軸方向の長さ(カバー14の突出板部25のカバー内面26とブッシュ12の中間面20との間の軸方向の距離)は、シールリング取付状態のシールリング15の内部側当接面29とカラー取付状態のカラー16の外部側当接面35との間の軸方向の長さよりも長く形成される。シール空間24には、ウェーブワッシャ41を配置する前に、シールリング15を軸方向の内部側に配置し、カラー16を軸方向の外部側に配置する。シールリング15の内部側当接面29は、ブッシュ12の中間面20に当接し、カラー16の外部側当接面35は、ブッシュ12の外端開口21よりも内部側に配置される。カラー16の外部側当接面35と、カバー固定状態におけるカバー14の突出板部25のカバー内面26との間には、シール空間24の一部の領域であって、軸方向に延びる環状の空間42が区画される。
【0049】
図6図7(a)及び図7(b)に示すように、ウェーブワッシャ41は、薄板環状のワッシャであって、周方向に沿って緩やかな波状に形成され、カラー16の軸方向の外部側の空間42に配置される。ウェーブワッシャ41をカラー16の外部側の空間42に配置した状態でカバー14がブッシュ12側に固定される。外力を受けてない状態のウェーブワッシャ41の軸方向の厚さLは、上記空間42の軸方向の長さよりも僅かに長く設定される。すなわち、ウェーブワッシャ41は、軸方向に僅かに圧縮されて変形した状態で、カラー16の外部側当接面35とカバー14の突出板部25のカバー内面26との間の空間42に配置され、カラー16をシールリング15側へ軸方向に付勢する。ウェーブワッシャ41の軸方向の外部側の面の一部の領域は、カバー14の突出板部25のカバー内面26に当接し、ウェーブワッシャ41の軸方向の内部側の面の一部の領域は、カラー16の外部側当接面35に当接する。ウェーブワッシャ41は、カバー14の突出板部25側から軸方向の内部側へ向かってカラー16の外部側当接面35を押圧してカラー16を付勢する。カバー固定状態では、シールリング15の内部側当接面29が、ブッシュ12の中間面20に当接し、カラー16の外部側当接面35が、ウェーブワッシャ41を介してカバー14の突出板部25のカバー内面26側から支持され、カラー16及びシールリング15が、ブッシュ12側に支持される。
【0050】
上記のように構成されたバルブ構造40では、ウェーブワッシャ41が、カバー14の突出板部25側から軸方向の内部側(シールリング15側)へ向かってカラー16を付勢する。このため、膨張黒鉛製のシールリング15を軸方向に圧縮して、シールリング15のシール内周面27とシャフト13の被シール外周面23との間の面圧、及びシールリング15の内部側当接面29とブッシュ12の中間面20との間の面圧を確保することができ、効果的に排気の流出を抑えることができる。
【0051】
このように、本実施形態によれば、ブッシュ12に対するシャフト13のラジアル方向への移動を許容し、且つ排気の流出を抑制することができる。
【0052】
なお、本実施形態では、シャフト13とブッシュ12との間のシール空間24に、シールリング15を軸方向の内部側に配置し、カラー16を軸方向の外部側に配置したが、シールリング15を軸方向の外部側(他方側)に配置し、カラー16を軸方向の内部側(一方側)に配置してもよい。この場合、シールリング15の傾斜外周面28は、軸方向の内部側(一方側)から外部側(他方側)へ向かって径方向外側へ拡径するテーパ状に形成され、カラー16の傾斜内周面33は、軸方向の外部側(他方側)から内部側(一方側)へ向かって径方向内側へ縮径するテーパ状に形成され、シールリング15の傾斜外周面28とカラー16の傾斜内周面33とが互いに当接する。そして、ウェーブワッシャ41は、ブッシュ12の中間面20とカラー16の内部側の端面(第2のスラスト面)との間に配置され、カラー16の内部側の端面を押圧してカラー16を軸方向の外部側へ付勢する。この場合であっても、シールリング15の外部側の端面(第1のスラスト面)が、カバー14の突出板部25のカバー内面26に当接し、カバー内面26との間をシールするので、筒状空間31,36に排気が浸入したとしても、筒状空間31,36から外部への排気の流出を抑制することができる。このように、カラー16とシールリング15との配置位置を入れ替えても、シールリング15のシール内周面27のみならず、シールリング15の外部側の端面によっても排気の流出を抑えるので、効果的に排気の流出を抑えることができる。
【0053】
また、本実施形態では、カラー16をシールリング15側へ向かって付勢する付勢手段として、ウェーブワッシャ41を設けたが、付勢手段はこれに限定されるものではない。例えば、コイルスプリングや、弾性変形可能な樹脂製のリング等を、カラー16をシールリング15側へ向かって付勢する付勢手段として設けてもよい。
【0054】
次に、本発明の第3実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態に係るバルブ構造50は、上記第1実施形態及び上記第2実施形態のシールリング15に切欠部52を設け、切欠部52に座金51を設けたものであり、上記第1実施形態及び上記第2実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。また、各図において、一点鎖線CLはシャフト13の回転軸の軸心を示す。また、図8は、上記第2実施形態のシールリング15に座金51を設けたものが図示されている。
【0055】
図8図9(a)及び図9(b)に示すように、シールリング15は、シール内周面27と内部側当接面29の角部が切り欠かれた環状の切欠部52(空間)を有する。切欠部52の内径は、シール内周面27の内径と略同じ大きさであり、切欠部52の外径は、シールリング15の外径(非傾斜外周面30の外径)よりも小さい。すなわち、シールリング15の内部側当接面29は、切欠部52の径方向外側に配置される。
【0056】
座金51は、金属製の平板環状の座金であって、シールリング15の切欠部52内に配置可能に、切欠部52と略同じ大きさに形成される。座金51をシールリング15の切欠部52内に配置した状態で、座金51の内径は、シールリング15のシール内周面27の内径と略同じ大きさである。すなわち、座金51は、シールリング15のシール内周面27と略同一径の座金内周面53を有する。また、座金51の軸方向の内部側の座金表面54は、シールリング15の内部側当接面29と略同一平面上に配置される。
【0057】
上記のように構成されたバルブ構造50では、シールリング15が、シール内周面27と内部側当接面29の角部が切り欠かれた環状の切欠部52を有し、この切欠部52内に座金51が配置される。このように、シールリング15の内部側当接面29側(厚肉側)に、膨張黒鉛よりも硬質の金属製の座金51を設けるので、シールリング15の厚肉側の型崩れを防止することができる。
【0058】
また、シールリング15の内部側当接面29の径方向内側(シール内周面27側)に座金51を設けるので、内部側当接面29よりも径方向内側のシールリング15の破損を防止することができ、シールリング15の内部側当接面29とシール内周面27との角部側からのシールリング15の断片の発生を防止することができる。このため、シールリング15の前記角部側からシャフト13の被シール外周面23とシールリング15のシール内周面27との間へのシールリング15の断片の浸入を防止して、シールリング15の断片によるシャフト13の回転の阻害を防止することができる。
【0059】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【0060】
例えば、上記各実施形態では、シャフト13の一端側を排気管3の外部へ突出させたが、シャフト13の両端側を排気管3の外部へ突出させてもよい。この場合、本発明の一実施形態に係るバルブ構造10,40,50を、シャフト13の両端側に適用してもよい。
【0061】
また、上記各実施形態では、本発明の一実施形態に係るバルブ構造10,40,50を、バタフライバルブのバルブ構造に適用したが、これに限定されるものではなく、シャフトが、ハウジングから外部へ突出した状態でブッシュを介して回転自在に支持される様々なバルブに対して適用することができる。例えば、本発明の一実施形態に係るバルブ構造10,40,50を、ボールバルブのバルブ構造に適用してもよい。また、本発明の一実施形態に係るバルブ構造10,40,50を、排気ブレーキ以外のバルブ構造に適用してもよい。
【符号の説明】
【0062】
3:排気管(ハウジング)
10,40,50:バルブ構造
11:バタフライバルブ(開閉弁)
12:ブッシュ
12a:シャフト挿通孔
13:シャフト
14:カバー(抑え部材)
15:シールリング
16:カラー(当接リング)
18:ブッシュの小径内周面
19:ブッシュの大径内周面
20:ブッシュの中間面
22:シャフトの被支持外周面
23:シャフトの被シール外周面
25:カバーの突出板部
26:突出板部のカバー内面(突出対向面)
27:シールリングのシール内周面
28:シールリングの傾斜外周面
29:シールリングの内部側当接面(第1のスラスト面)
33:カラーの傾斜内周面(当接リングの傾斜内周面)
34:カラーのカラー外周面(当接リングの外周面)
35:カラーの外部側当接面(当接リングの第2のスラスト面)
41:ウェーブワッシャ(付勢部材)
51:座金
52:シールリングの切欠部
53:座金内周面
54:座金表面
図1
図2
図3
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図9